35.公立小中学校施設の耐震化等(拡充)【達成目標2-8-1】

平成21年度要求額:193,510百万円
  (平成20年度予算額:114,971百万円)
  事業開始年度:昭和33年度
  事業達成年度:平成24年度

主管課(課長名)

  • 大臣官房文教施設企画部施設助成課(岩本 健吾)

関係課(課長名)

事業の概要等

1.事業目的

  児童生徒等が一日の大半を過ごす学習・生活の場であるとともに、災害発生時には地域住民の応急避難場所となる公立小中学校等施設の安全性を確保するため、耐震化等を推進する。

2.事業に至る経緯・今までの実績

  本事業は、国が果たすべき責務である義務教育をはじめとする教育の機会均等と水準の維持向上を図る観点から、義務教育諸学校等の施設費の国庫負担等に関する法律等に基づき、公立学校施設整備に要する経費の一部を国が補助することにより、学校教育の円滑な実施を担保するものである。特に近年は、児童生徒等が一日の大半を過ごす場であるとともに、災害発生時には地域住民の応急避難場所ともなる学校施設の安全性を確保するため、耐震化の推進が喫緊の課題となっており、地震防災対策特別措置法による国庫補助率のかさ上げや、地方財政措置の拡充を行うほか、各地方公共団体に対して耐震診断の完了及び耐震化の推進を要請するなど、多方面にわたり支援・要請を行っている。また、平成19年12月に政府としてとりまとめた「生活安心プロジェクト」等において、大規模な地震による倒壊等の危険性が高い公立小中学校施設(約1万棟)について、早急に耐震化を図ることとしており、これらの耐震化については、特に重点的に各地方公共団体への支援・要請を行うこととしている。このような状況に鑑み、本年6月には地震防災対策特別措置法が改正され、地震による倒壊の危険性が高い公立小中学校等施設(約1万棟)の耐震化事業についての国庫補助率の引き上げ(注)等の加速策が講じられたところである。
  なお、平成20年4月1日現在の公立小中学校の耐震診断実施率は93.8パーセントであり、建物ごとの耐震性能の状況が概ね明らかになっている。また、耐震化率については、平成20年4月1日現在、62.3パーセントとなっており、特に大規模な地震による倒壊等の危険性の高い公立小中学校施設は、10,656棟と推計されている。

   (注)地震防災緊急事業五箇年計画に基づいて実施される事業のうち、Is値0.3未満の公立小中学校等施設を対象とした事業について、以下の通り補助率が引き上げられた。

  1. 地震補強事業・・・補助率2/3(現行1/2)
  2. コンクリート強度等の問題によりやむを得ず行う改築事業・・・補助率1/2(現行1/3)

3.事業概要

  本事業は、地方公共団体が実施する耐震補強や改築事業等の施設整備が円滑に進むよう、地方公共団体からの要望をふまえて必要な予算を確保し、それらの事業に対して、各事業の緊急性、国庫補助の全体事業量、国庫補助単価の適正化、適切な国庫補助率及び地方負担分に対する地方財政措置の設定などに留意しつつ、国庫補助を行うことなどにより、公立小中学校施設の耐震化等を推進するものである。特に、地震による倒壊等の危険性が高い公立小中学校等施設(約1万棟)については、できる限り早急に耐震化を図る必要があるため、各地方公共団体に対して重点的に支援・要請を行う。

公立学校施設の安全性の確保

4.指標と目標

指標(効果の把握方法)

  公立小中学校施設の耐震化率及び大規模な地震による倒壊等の危険性の高い公立小中学校等施設(約1万棟)の耐震化棟数

目標

  公立小中学校、幼稚園、特別支援学校の耐震化率を向上させる。特に、大規模な地震が発生した際に倒壊等の危険性の高い公立小中学校等施設(約1万棟)について、優先的に耐震化を支援し、地方公共団体に対してできる限り早期に耐震化を図るよう要請する。

事業の事前評価結果

A.19年度実績評価結果との関係

  達成目標2‐8‐1は、「B(おおむね順調に進捗しているが、一部については進捗にやや遅れがみられる)」と評価され、「今後の課題及び政策への反映方針」において、「地方公共団体に対して、特に大規模な地震による倒壊等の危険性の高い公立小中学校等施設(約1万棟)についてできる限り早急に耐震化を図るよう要請するとともに、(中略)今後は耐震化の加速により事業量の増加が見込まれるため、地方公共団体の要望をふまえて必要な予算の確保に努める」と記載されている。このため、本事業の拡充は不可欠である。

B.必要性の観点

1.事業の必要性

  公立学校施設は、児童生徒等が一日の大半を過ごす場であるとともに、災害発生時には地域住民の応急避難場所ともなるため、その安全性の確保は喫緊の課題である。しかしながら、平成20年4月1日現在の公立小中学校施設の耐震化率は62.3パーセントとなっており、特に大規模な地震による倒壊等の危険性の高い公立小中学校施設は、10,656棟と推計されている。このため、安全・安心で豊かな学校施設の整備推進を達成するためには、進捗にやや遅れが見られる公立小中学校施設等の耐震化を推進することが必要不可欠であり、特に大規模な地震によって倒壊等の危険性が高い公立小中学校施設(約1万棟)については、できる限り早期に耐震化を実施する必要がある。

2.行政・国の関与の必要性(官民、国と地方の役割分担等)

  公立学校施設の整備は、設置者において一時的に多大な財政支出を要するとともに、年度により地域的な偏在も大きい。このため、特に小規模な地方公共団体においては、公立学校施設の整備に必要な財源が確保されないことが懸念される。したがって、国が果たすべき責務である義務教育をはじめとする教育の機会均等と水準の維持向上を図る観点からも、国において公立学校施設の整備に目的を特化した財源を保障した上で、必要な予算を確保し、公立学校施設整備に国庫補助を行うことは必要である。

3.関連施策との関係

  特になし

4.関係する施政方針演説、審議会の答申等

  • 第169回国会 総理施政方針演説
  • 第169回国会(常会) 文部科学大臣所信
  • 「生活安心プロジェクト」緊急に講ずる具体的な施策(平成19年12月17日 「生活安心プロジェクト」に関する関係閣僚会合)
  • 『自然災害の「犠牲者ゼロ」を目指すために早急に取り組むべき施策』(平成19年12月18日 閣僚懇談会)
  • 経済財政改革の基本方針2008(平成20年6月27日 閣議決定)
  • 教育振興基本計画(平成20年7月1日 閣議決定)

C.有効性の観点

1.目標の達成見込み

  公立小中学校等施設の耐震化は進捗にやや遅れが見られるものの、整備の推進による一定の効果が得られている。(平成20年4月1日現在の公立小中学校の耐震化率は62.3パーセント)
  本事業の実施により、全国の公立小中学校等施設の耐震補強等事業が促進され、現在より多くの公立小中学校等において、児童生徒や教職員等が一日の大半を過ごす場の安全が確保されるとともに、非常災害時における地域住民の応急避難場所の安全が確保される。
  なお、耐震化が進まない原因は地域によって様々であるが、1多くの学校施設が昭和56年以前に建設されたため、耐震化を必要とする施設の絶対量が多いにもかかわらず、耐震化をしていない施設が大量に残っている。2一度に多くの耐震化事業を実施するとなると市町村の財政負担が大きくなり、市町村の財政力の限界を超えることになって事業化ができない。総じて市町村の財政状況は厳しく余裕がない。3地域住民への情報提供が十分でないなどの理由で、地域として地震防災の意識が低いため、他の課題に優先して耐震化に取り組んでいない。4学校の統廃合等の問題を抱えており、施設整備の計画自体が策定されていないため、耐震化に着手できないでいる。などの理由が挙げられる。
  このため、目標を達成するには、地方公共団体の財政負担の軽減等が必要となるが、本年6月に地震防災対策特別措置法が改正され、地震による倒壊の危険性が高い公立小中学校等施設(約1万棟)の耐震化事業についての国庫補助率の引き上げ等の加速策が講じられたところである。これにより、事業量の増加が見込まれるため、本事業の拡充により、地方公共団体の事業の前倒しに対応できるような予算の確保に努めることが必要不可欠である。

2.上位目標のために必要な効果が得られるか

  本事業の実施により、達成目標2‐8‐1「公立小中学校、幼稚園、特別支援学校の耐震化率を向上させる。特に、大規模な地震が発生した際に倒壊等の危険性の高い公立小中学校等施設(約1万棟)について、優先的に耐震化を支援し、地方公共団体に対してできる限り早期に耐震化を図るよう要請する。」が着実に進捗する。
  その結果、児童生徒の学習・生活の場である学校施設の安全性が確保され、施策目標2‐8の「児童生徒が安心して学習でき、教育内容・方法の多様化や社会のニーズに対応した学校施設・設備の整備を推進する。」の実現が図られる。

D.効率性の観点

1.インプット

  公立学校施設整備費 193,510百万円(平成21年度概算要求)
  (内閣府で要求している沖縄県分を含む。)

2.アウトプット

  本事業の実施により、地方公共団体が実施する耐震補強や改築事業等の施設整備が円滑かつ計画的に実施され、全国の公立小中学校等施設の耐震化等が促進される。

3.事業スキームの効率性

  地方公共団体の要望に応じて必要な予算を確保し、国庫補助を行うことで、現在より多くの公立小中学校等において、児童生徒や教職員等が一日の大半を過ごす場の安全性が確保されるとともに、非常災害時における地域住民の応急避難場所の安全性が確保されることから、本事業のインプットとアウトプットの関係は効果的と考える。
  なお、「公立の義務教育諸学校等施設の整備に関する施設整備基本方針」(平成18年4月24日文部科学省告示第61号)において、「建て替え方式から、耐震補強・改修方式に重点を移すなど、より効率的に耐震化を進めることができる手法を選択することが重要である」旨明示されており、この基本的な方針に基づいて本事業は行われる。
  また、一定額の予算を確保したとしても、地方負担分を軽減する適切な国庫補助の設定が行われていなければ、円滑な事業化が進まず、限られた予算の中で効率的な執行をすることが困難である。この点、本事業に関しては、平成20年6月の地震防災対策特別措置法の改正により、特に地震による倒壊等の危険性が高い施設の耐震化事業について、国庫補助率の引き上げを行うとともに、地方財政措置についても拡充しているため、各地方公共団体においてこれらの施設の耐震化事業を優先的に行うインセンティブが働き、効率的な執行を可能としているものと考えられる。

4.代替手段との比較

  公立学校施設の整備は、設置者において一時的に多大な財政支出を要するとともに、年度により地域的な偏在も大きい。したがって、国が果たすべき責務である義務教育をはじめとする教育の機会均等と水準の維持向上を保障する観点からも、国において公立学校施設の整備に目的を特化した財源を保障した上で、必要な予算を確保し、公立学校施設整備に国庫補助を行うことが必要である。
  特に、耐震化を加速させるためには、各年度における整備事業量の増加が見込まれるため、各地方公共団体において負担できる限界を超えることが予想される。地方交付税の総額が抑制される中、地方財政措置だけでは対応困難であるため、国庫補助を主体とした手厚い国の支援が必要である。

E.公平性の観点

  国庫補助の実施にあたっては、「公立の義務教育諸学校等施設の整備に関する施設整備基本方針」等に基づき、各地方公共団体における施設整備事業の必要性・緊急性等に留意しつつ、要望に応じた必要な予算の確保と適切な執行を行うこととしており、公平な資源分配が達成されている。

F.優先性の観点

  公立学校施設の果たす役割に鑑みれば、その安全性の確保は喫緊の課題であり、特に大規模な地震による倒壊等の危険性の高い公立小中学校等施設(約1万棟)については、早急に耐震化を図ることが必要である。このことは、平成19年12月に政府としてとりまとめた「生活安心プロジェクト」等においても、緊急に講ずるべき施策として示されており、平成20年7月に閣議決定された教育振興基本計画においても、示されたところである。

G.総括評価と反映方針

  今回の評価結果を平成21年度概算要求及び機構定員要求に反映

平成21年度機構定員要求内容

  「公立学校の耐震化推進体制の強化」として、企画官1人、専門職1人の計2人の定員増を要求

当該施策目標に係わる21年度概算要求額

  (公立文教施設整備に必要な経費) 193,510百万円

指摘事項と対応方針

指摘事項

1.事業に対する総合所見(官房にて記載)

  評価結果は妥当。ただし、公立小中学校の耐震化率について、これまで思うように進んでこなかった原因の分析について記載する。

指摘に対する対応方針

  指摘をふまえ、耐震化が進まない原因について、C.有効性の観点において記載した。

お問合せ先

大臣官房政策課評価室

-- 登録:平成21年以前 --