27.青少年体験活動総合プラン(拡充)【達成目標2-4-1】

平成21年度要求額:540百万円
  (平成20年度予算額:264百万円)
  事業開始年度:平成20年度
  事業達成年度:平成24年度
  中間評価実施年度:平成22年度

主管課(課長名)

  • スポーツ・青少年局青少年課(池田 輝司)

関係課(課長名)

事業の概要等

1.事業目的

  次代を担う自立した青少年の育成を図るため、小学校における長期自然体験活動の指導者養成等必要な支援に取り組むとともに、青少年の様々な課題に対応した体験活動を充実するため、地域における経験豊かな人材や施設の協力を得て、自然体験や生活体験等体験活動の機会を提供する事業を実施し、その成果や課題を全国に普及する。

2.事業に至る経緯・今までの実績

事業に至る経緯

  「経済財政改革の基本方針2007」では、すべての子どもが自然体験(小学校で1週間)を経験するよう、またそのための指導者の活動を支援するよう提言している。また、教育再生会議第二次報告書では、より具体的に、小学校で1週間の集団宿泊体験や自然体験・農林漁業体験活動を実施するよう提言している。さらに平成19年1月に取りまとめられた中央教育審議会答申「時代を担う自立した青少年の育成に向けて」においては、「すべての青少年の生活に体験を根付かせ体験を通じた試行錯誤・切磋琢磨」を支援することが重要だと提言している。
  これらを実現するためには、学社連携の理念のもと、前提となる効果的な体験活動プログラムの開発、体験活動指導者の養成・育成、体験活動の場の開発が求められるところである。とりわけ、各小学校に体験活動指導者を配置できるように、今後指導者養成を官民一体となって目指すことが必要である。このため、これらの条件整備に係る事業を総合的に推進するため、従来個別に行っていた事業を見直し、整理・統合・拡充し、平成20年度から「青少年体験活動総合プラン」を実施している。(青少年の課題に対応した取組については、「青少年の意欲向上・自立支援事業」と「省庁連携体験活動ネットワーク推進プロジェクト」を統合させ実施している。)

  「青少年の意欲向上・自立支援事業」と「省庁連携体験活動ネットワーク推進プロジェクト」の経緯は以下のとおりである。
  「青少年の意欲向上・自立支援事業」については、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004」(平成16年6月閣議決定)において,人間力の強化や若者の自立のために,宿泊を伴った共同生活を通じた体験活動の推進や,地域における経験豊かな人材や施設を活用した職業教育及び体験活動等の積極的推進が求められていたことから、青少年が自立した人間として成長することを支援するため,青少年の主体性・社会性をはぐくむ体験活動を推進するため、平成17年度から「青少年の自立支援事業」を開始した。
  また、「次代を担う自立した青少年の育成に向けて」(平成19年1月中央教育審議会答申)においても、直接体験の不足(体を動かす体験、自然体験)、生活習慣の乱れ(夜更かし、朝食欠食)、希薄な対人関係(保護者の関与が少ない、地域の大人の関与が少ない、仲間との接触が少ない)等の理由により、ニート等自立への意欲に欠ける青少年の増加が懸念され、青少年の意欲を高め、心と体の相伴った成長を促すために、すべての青少年の生活に体験活動を根付かせ、体験を通じた試行錯誤・切磋琢磨を見守り支えることが求められている。この答申を受け、平成19年度より「青少年の意欲向上・自立支援事業」に変更し、意欲向上を促す施策と自立を支援する施策の二つの観点から事業を実施した。
  平成17~19年度に実施した青少年の自立支援事業により、自立に支援を要する青少年として、ひきこもり青年、不登校児童・生徒、ニート等を対象とした事業を実施した平成19年度の都道府県数は、平成17年度からは9道府県増加(29パーセント)し、概ね順調に増加した。事業数については、42事業増加(44パーセント)し、それぞれの内訳についても、ひきこもり青年(10から15)、不登校児童・生徒(29から35)、ニート(4から15)と概ね順調に増加しており、この施策については、順調に進捗した。しかし、まだ取り組みが遅れている都道府県もあることから、引き続き取り組んで行く必要がある。

  「省庁連携体験活動ネットワーク推進プロジェクト」については、平成15年度から実施してきた「省庁連携子ども体験型環境学習推進事業」(単一フィールドでの体験活動)を発展させ、平成19年度から実施している。子どもたちの豊かな人間性を育むため、複数の関係省庁と連携し、地域において関係機関・団体等が協働して多様かつ継続的な体験活動プログラムを開発する取組を推進した。
  多様な機会や場を開拓して、青少年の体験活動の機会を増加させることを目標として実施したところ、ネットワークの構築やコアリーダーの育成等が図られ、サマーキャンプやESD(持続可能な開発のための教育)などをテーマにした新しい地域ネットワークづくりが進められ、子ども農山漁村交流プロジェクトの受入れ地域に採択される地域が出るなどの成果を上げたが、青少年の自然体験活動の機会は、減少傾向にある。このため、さらに力をいれて、青少年の多様な体験活動の機会や場を開拓していく必要がある。

事業拡充の背景

  小学校の長期自然体験活動を円滑に進めていくためには、教育振興基本計画に記載されているように、必要な体験活動プログラムの開発や指導者の育成を支援する必要がある。約2万の小学校が効果的に安全に自然体験活動を実施するためには、学校教育における自然体験活動の意義について理解した上で、自然体験活動について一定程度の知識と指導力を有する指導者(全体指導者)が2万人必要である。1校あたりについては、1学年平均52名の小学生が活動を実施するにあたっては、全体指導者のほかに、実際の活動場面で児童の活動を補助したり、安全確保に配慮できる指導者(補助指導者)が4名が必要であることから、8万人必要である。教育振興基本計画において、小学校で自然体験・集団宿泊体験を全国の児童が一定期間(例えば1週間程度)実施できるように目指していることから、小学校の自然体験活動を支援する指導者10万人を緊急に養成する必要がある。

  青少年の課題に対応した体験活動については、20年度の応募の実績として、「意欲を育む自然体験推進事業」は、予算上10件のところ52件、「多様な場を活用した生活体験推進事業」は、予算上10件のところ40件であった。事前評価の際に外部有識者からは、予算が許せば半数以上の事業について実施してもらいたいという意向が述べられた。また、企画提案してきた自治体や団体からは、青少年の課題に対して必要な対応を行うために財政的な支援が強く求められている。
  最近では、秋葉原事件など青少年による凶悪犯罪が増加しており、犯罪対策閣僚会議においても、犯罪対策が議論されているが、このような犯罪の背景の1つとして、社会から孤立する青少年の増加が指摘されており、新たな課題も増えている。
  また、青少年の体験活動の機会が減少傾向にあることから、さらに青少年の体験活動の機会や場を開拓し、青少年に体験活動の機会を提供することを増加させ、青少年の豊かな人間性を育む必要がある。

平成20年度の実績(予定)

  平成20年度は、以下のとおり実施する予定である。

  • 小学校長期自然体験活動支援プロジェクト
    • 自然体験活動指導者養成事業 全体指導者研修会 100回(×1研修20人=2,000人)
    • 自然体験活動指導者養成事業 補助指導者研修会 50回(×1研修80人=4,000人)
    • 小学校自然体験活動プログラム開発事業 24プログラム
  • 青少年の課題に対応した体験活動推進プロジェクト
    • 意欲を育む自然体験推進事業 10件
    • 多様な場を活用した生活体験推進事業 10件

3.事業概要

  次代を担う自立した青少年の育成を図るため、小学校における長期自然体験活動の指導者養成等必要な支援に取り組むとともに、青少年の様々な課題に対応した体験活動を充実するため、都道府県・政令指定都市教育委員会や民間団体に企画公募を行い、採択された機関・団体に委託し、地域における経験豊かな人材や施設の協力を得て事業の実施体制を整備し、自然体験や生活体験等体験活動の機会を提供する事業を実施する。

(1)小学校長期自然体験活動支援プロジェクト

1 自然体験活動指導者養成事業

  小学校が実施する1週間の自然体験活動を支援するため、全体指導者と補助指導者の養成に緊急に取り組む。対象は、受入れ地域の関係者や団塊世代の退職予定者、民間の指導者、学生等を想定している。(5年間で全体指導者2万人、補助指導者8万人を養成)

2 小学校自然体験活動プログラム開発事業

  小学校が実施する1週間の自然体験活動の充実のため、青少年教育施設や青少年団体、民間自然学校が行う特色あるプログラム開発を推進する。
  主な活動フィールド6つ(山岳、森林、河川・湖畔、海岸・海洋、農地、牧場)、小中大の3つの学校規模、6学年を組み合わせるだけでも、108パターンとなる。これに教育課題・課題解決手法・実施時期等を組み合わせると数百以上のパターンが考えられる。中には重複するもの、実効性の低いもの等があると考えられることから、当面は約100プログラムの開発を目指しながら、毎年度評価し、必要なプログラム数を検証することとする。

(2)青少年の課題に対応した体験活動推進プロジェクト

  様々な困難を抱える青少年の自立支援、青少年の社会性や意欲の向上、体験活動の機会と場の開拓など、青少年の課題に対応した体験活動を推進するため、以下のような取組を例として、これらを実施する取組を総合的に支援し、社会全体での取組を推進する。

  1. 自立に支援を要する青少年の体験活動(ひきこもり、ニート、不登校など)
  2. 自律性・社会性を育む交流体験(異世代間交流、異文化交流など)
  3. 青少年の発達段階に応じた体験活動(幼少期の自然体験、サマーキャンプ、青年リーダー体験など)
  4. 環境教育の推進に資する青少年の体験活動
  5. 地域のリソースを活用した青少年の体験活動(都市と農山漁村の交流、廃校を活用した生活体験など)
  6. 関係省庁の連携による地域ネットワーク型の体験活動
  7. 今後必要とされる指導者の在り方に関する調査研究 等

  青少年の喫緊の課題は、時代とともに変化していくことから年度ごとに必要な事業を検討し実施する。21年度は、上記拡充の背景の通り、社会的ニーズが多いこと、社会全体での取組を推進するため、また社会から孤立する青少年の増加等新たな課題に対応するために、「社会性を育む交流体験を追加」し、全体で50件(平成20年度は20件[30件増加])実施する。

スキーム図

4.指標と目標

指標

(1)小学校長期自然体験活動支援プロジェクト

  1 自然体験活動指導者養成事業

  • 養成した指導者が活動した割合

  2 小学校自然体験活動プログラム開発事業

  • 開発したプログラムが参考にされる割合

  (2)青少年の課題に対応した体験活動推進プロジェクト

  • 青少年の課題に対応した体験活動の取組を実施した都道府県数
  • 体験活動の機会を得た青少年の割合
  • (参考指標)委託事業の実施により得られた効果

目標

  青少年の豊かな人間性を育むため、青少年が多様な体験活動を経験できる体制を整備し、体験活動の機会を増加させる。

(1)小学校長期自然体験活動支援プロジェクト

  1 自然体験活動指導者養成事業

  • 養成した指導者が活動した割合を毎年度増加させていく。

  2 小学校自然体験活動プログラム開発事業

  • 開発したプログラムが参考にされる割合を毎年度増加させていく。
(2)青少年の課題に対応した体験活動推進プロジェクト
  • 青少年の課題に対応した体験活動の取組を実施した都道府県数を毎年度増加させていく。
  • 体験活動の機会を得た青少年の割合を毎年度増加させていく。
  • 委託事業に参加した青少年の豊かな人間性を育む。

効果の把握方法

(1)小学校長期自然体験活動支援プロジェクト

  1 自然体験活動指導者養成事業

  • 登録した指導者に対する追跡調査を行い検証する。

  2 小学校自然体験活動プログラム開発事業

  • 国立青少年教育施設での開発したプログラムの活用実績を調査し、検証する。
(2)青少年の課題に対応した体験活動推進プロジェクト
  • 都道府県・政令指定都市に体制整備について調査し、検証する。
  • 国立青少年教育振興機構の調査により把握する。
  • 委託事業実施団体の調査により把握する。

事業の事前評価結果

A.19年度実績評価結果との関係

  達成目標2-4-1「今後の課題及び政策への反映方針」において、「今後は、青少年体験活動総合プランにおいて、ひきこもり青年、不登校児童・生徒、ニート等を対象とした体験活動や青少年の発達段階に応じた体験活動など、青少年の意欲向上・自立のための取組を推進する」また、達成目標2-4-3において、「青少年の自然体験活動への取組については、家族や友だちなどと一緒に自然体験活動を行った小5、小6以外は、減少している。このため、学校・青少年団体において行われる自然体験活動をより一層推進する」と記述されており、本事業の拡充は不可欠である。

B.必要性の観点

1.事業の必要性

  直接体験の不足(体を動かす体験、自然体験)、生活習慣の乱れ(夜更かし、朝食欠食)、希薄な対人関係(保護者の関与が少ない、地域の大人の関与が少ない、仲間との接触が少ない)等の理由により、ニート等自立の意欲に欠ける青少年が増加している。青少年の意欲を高め、心と体相伴った成長を促すために、すべての青少年の生活に体験活動を根付かせ、体験を通じた試行錯誤切磋琢磨を見守り支えることが重視されている。(「次代を担う自立した青少年の育成に向けて」平成19年1月中央教育審議会答申)
  また、「教育再生懇談会‐第一次報告‐」において、すべての子どもに体験活動の機会を提供すると提言されている。
  さらに、「経済財政改革の基本方針2008」において「2.未来を切り拓く教育」の中で体験活動の機会の提供に積極的に取り組むとしている。

(1)小学校長期自然体験活動支援プロジェクト

  「教育振興基本計画」において、「関係府庁が連携して、小学校で自然体験・集団宿泊体験を全国の児童が一定期間(例えば1週間程度)実施できるよう目指すとともに、そのために必要な体験活動プログラムの開発や指導者の育成を支援する。」としている。また、「教育再生懇談会‐第一次報告‐」において、全ての子供への自然体験・農山漁村体験(小学校で1週間)の機会の提供を目指し、関係府省が連携して支援すると提言していることから、小学校における長期自然体験活動の指導者養成やプログラム開発に取り組む。
  この取組を実施することにより、教育振興基本計画において、小学校で全国の児童が一定期間(例えば1週間程度)実施できるように目指している自然体験・集団宿泊体験が効果的に安全に実施され、推進される。

(2)青少年の課題に対応した体験活動推進プロジェクト

  「教育振興基本計画」において、「教育をめぐる課題として、子どもの学ぶ意欲や学力・体力の低下、問題行動など多くの面で課題が指摘されている。」「社会が急速な変化を遂げる中にあって、個人には、自立して、また自らを律し、他と協調しながら、その生涯を切り拓いていく力が一層求められるようになる。」「子どもたちの安全・安心を確保するとともに、質の高い教育環境を整備する観点からも、放課後や週末の子どもたちの体験・交流活動等の場づくりを推進する。」としている。
  最近では、秋葉原事件など青少年による凶悪犯罪が増加しており、犯罪対策閣僚会議においても、犯罪対策が議論されているが、このような犯罪の背景の1つとして、社会から孤立する青少年の増加が指摘されている。
  このようなことから、青少年の課題に対応した体験活動を推進する。この取組を実施することにより、青少年の課題に対応した体験活動を実施するための重要な知見が得られるとともに、青少年の行動の原動力である意欲や、職業的自立の礎となる社会性等が育まれる。また、青少年の体験活動の機会や場が開拓される。本取組の成果を全国に普及することを通じて、各自治体において青少年の課題に対応した体験活動の支援体制の整備が推進されることが期待できる。

  これらの取組により、豊かな人間性を育むために必要な体験活動の機会が増加し、我が国の青少年が自立した人間として成長することが期待されることから、本事業の拡充が不可欠である。

2.行政・国の関与の必要性(官民、国と地方の役割分担等)

(1)小学校長期自然体験活動支援プロジェクト

  小学校の長期自然体験活動を支援するための指導者養成とプログラム開発は、教育振興基本計画にも記載されているように、国の役割である。指導者養成やプログラム開発は、地方自治体では取組は少なく、財政状況等により地域格差を生じる可能性がある。民間においては、独自の団体の指導者の養成やプログラムの開発は行っているが、青少年教育指導者の養成や地方自治体や他の団体等が参考にできるプログラム開発はほとんどなされていない。教育振興基本計画において、小学校で自然体験・集団宿泊体験を全国の児童が一定期間(例えば1週間程度)実施できるように目指していることから、指導者は10万人必要であり、国立青少年教育振興機構だけで養成するとなると、5年間で養成する場合、毎年全体指導者研修会7~8回、補助指導者研修会7~8回を実施する必要があり、また国立青少年教育施設がない都府県もあることから、国の委託事業として実施する必要がある。
  さらに、小学校の長期自然体験活動を支援する指導者の養成やプログラム開発は、これまでなされてこなかったので、国の委託事業として実施することにより、養成された指導者や開発されたプログラムを学校や受入れ地域等が活用することにより、小学校の長期自然体験活動を効果的に安全に実施できる。

(2)青少年の課題に対応した体験活動推進プロジェクト

  青少年の課題に対応した体験活動については、採算が取れないことから民間では実施は難しく、実施するための参考になる取組が少ないため、地方自治体でも実施することが難しい。そこで、国が先導的に青少年の課題に対応した体験活動を委託事業として実施し、成果と課題を得て、普及を図ることにより、各自治体において青少年の課題に対応した体験活動の支援体制の整備が推進される。

3.関連施策との関係

1.主な関連施策 施策目標2‐2 豊かな心の育成

  ○豊かな体験活動推進事業(初等中等教育局児童生徒課)

  児童生徒の豊かな社会性や人間性を育むために、学校教育において様々な体験活動を充実させることが重要である。そのため、他校のモデルとなる体験活動を実施し、その成果を全国に普及させ、小・中・高等学校における豊かな体験活動の円滑な展開を推進する。(平成21年度要求額1,247百万円、事業開始年度:平成14年度、事業達成年度18年度)

2.関連施策との関係

  「豊かな体験活動推進事業」は、学校教育の一環として各学校段階で主に学年単位で実施される体験活動を推進するため、他校のモデルとなる体験活動を実施する事業である。
  一方、「青少年体験活動総合プラン」は、小学校が実施する1週間の自然体験活動が円滑に実施されるよう1長期自然体験活動の指導者を計画的に養成するとともに、2長期自然体験活動を充実させるための新たなプログラムの開発を行う「小学校長期自然体験活動支援プロジェクト」と3不登校やひきこもりなど課題を抱えた青少年の支援方策、幼少期・少年期・思春期などの発達段階に応じた自然体験活動、省庁連携による地域ネットワークの構築など、青少年を取り巻く諸課題に対応するための取組を推進する「青少年の課題に対応した体験活動推進プロジェクト」を実施する事業である。
  学校教育として行う体験活動と学校外における体験活動は、目的、対象、指導方法、活動内容等が異なり、どちらも必要な取組である。

4.関係する施政方針演説、審議会の答申等

○「教育振興基本計画」(平成20年7月1日閣議決定)

  記載事項(抜粋)

  基本的方向1 社会全体で教育の向上に取り組む

  1 学校・家庭・地域の連携・協力を強化し、社会全体の教育力を向上させる
  ◇放課後や週末の子どもたちの体験・交流活動等の場づくり
  (略)小学校で自然体験・集団宿泊体験を全国の児童が一定期間(例えば1週間)実施できるように目指すとともに、そのために必要な体験活動プログラムの開発や指導者の育成を支援する。

  基本的方向2 個性を尊重しつつ能力を伸ばし、個人として、社会の一員として生きる基盤を育てる

  2 規範意識を養い、豊かな心と健やかな体をつくる
  ◇体験活動・読書活動等の推進

○「経済財政改革の基本方針2008」(平成20年6月27日閣議決定)

  記載事項(抜粋)

  第5章 安心できる社会保障制度、質の高い国民生活の構築

  2.未来を切り開く教育
  (略)体験活動の機会の提供、(略)など新たな時代に対応した教育上の諸施策に積極的に取り組む。

○「教育再生懇談会‐第一次報告‐」(平成20年5月26日)

  記載事項(抜粋)

  教育振興基本計画に関する緊急提言

  2.教育再生会議報告の確実な実行

   (1)全ての子供に体験活動の機会を提供する。(略)
  全ての子供への自然体験・農山漁村体験(小学校で1週間)(略)の機会を目指し、関係府省で連携して支援する。

○「経済財政改革の基本方針2007」(平成19年6月19日閣議決定)

  記載事項(抜粋)

  第4章 持続的で安心できる社会の実現

  2.教育再生

   (2)心と体の調和の取れた人間形成

   2.体験活動の推進
  すべての子どもが自然体験(小学校で1週間)(略)を経験、そのための指導者の活動支援(略)

○「社会総がかりで教育再生を‐第二次報告‐」(平成19年6月1日:教育再生会議)

  記載事項(抜粋)

  2.心と体‐調和の取れた人間形成を目指す

  提言2 様々な体験を通じ、子供たちの社会性、感性を養い、視野を広げる
  【全ての子供に自然体験(小学校で1週間)(略)を】

○「次代を担う自立した青少年の育成に向けて」(平成19年1月中央教育審議会答申)

  記載事項(抜粋)

  第3章 青少年の意欲を高め、心と体の相伴った成長を促すために

  1. すべての青少年の生活に体験活動を根付かせ、体験を通じた試行錯誤切磋琢磨を見守り支えよう

C.有効性の観点

1.目標の達成見込み

(1)小学校長期自然体験活動支援プロジェクト

  1 自然体験活動指導者養成事業

  上記のとおり、約2万の小学校が効果的に自然体験活動を実施するためには、10万人の指導者が必要である。平成20年度については、上記のとおり6,000人(全体指導者2,000人、補助指導者4,000人)の指導者を養成する予定であり、今後計画的に養成していく必要がある。また、小学校の長期自然体験活動が実施されるにあたり、教員の負担は増えていくことから、外部の指導者が支援することにより、教員の負担が増えるのを軽減できる。また、支援体制についても学校教育における自然体験活動の位置づけや、教科教育との関連などについて理解した上で、自然体験活動について一定程度の知識と指導力を有する全体指導者と実際の活動場面で児童の活動を補助したり、安全確保に配慮できる補助指導者が支援することにより、効果的にまた安全に実施できる。このことから、小学校の長期自然体験活動には、指導者が必要であり、活用されると考えられることから、養成した指導者が活動した割合を毎年度増加させていくという目標を達成することができると見込まれる。

  2 小学校自然体験活動プログラム開発事業

  プログラム開発については、活動フィールド・学校規模・学年・教育課題・課題解決手法・実施時期毎に多様なプログラムが考えられるが、小学校の長期自然体験活動の多様なプログラム開発はなされていない現状にある。平成20年度に24プログラムを開発する予定であり、毎年度評価し、必要なプログラム数を検証しながら、開発していく必要がある。小学校が実施する1週間のプログラムを学習指導要領との関連、地域資源の活用、具体的な指導体制や教材等も含めて開発することで、教員や外部指導者は実施する際に参考になるため、活用されると考えられることから、開発したプログラムが参考にされる割合を毎年度増加させていくという目標を達成することができると見込まれる。

(2)青少年の課題に対応した体験活動推進プロジェクト

  平成17~19年度に実施した青少年の自立支援事業により、自立に支援を要する青少年として、ひきこもり青年、不登校児童・生徒、ニート等を対象とした事業を実施した平成19年度の都道府県数は、平成17年度からは9道府県増加(29パーセント)し、概ね順調に増加した。事業数については、42事業増加(44パーセント)し、それぞれの内訳についても、ひきこもり青年(10から15)、不登校児童・生徒(29から35)、ニート(4から15)と概ね順調に増加しており、この施策については、順調に進捗した。このことから、国が先導的に青少年の課題に対応した取組を実施し、成果や課題を普及することにより、各自治体が青少年の課題に対応した体験活動を実施できる体制を整備することができ、各自治体において青少年の課題に対応した体験活動の支援体制の整備を推進するという目標を達成することができると見込まれる。

2.上位目標のために必要な効果が得られるか

(1)小学校長期自然体験活動支援プロジェクト

  養成した指導者や開発したプログラムが活用されることで、効果的に安全に小学校の長期自然体験活動が実施され、体験活動の高い教育効果が期待できるとともに、小学校の長期自然体験活動の取組が順調に広がっていくことが期待できる。

(2)青少年の課題に対応した体験活動推進プロジェクト

  各自治体が青少年の課題に対応した体験活動を実施できる体制を整備されることにより、各自治体における課題に対応した体験活動の取組が実施され、青少年の行動の原動力である意欲や、職業的自立の礎となる社会性等が育まれるとともに、体験活動の機会や場が開拓される。そのような取組が広がっていくことにより、さらに多くの地域に波及することが期待できる。

  これらを通して、豊かな人間性を育むために必要な体験活動の機会が増加し、我が国の青少年が自立した人間として成長することが期待され、達成目標2‐4‐1にある青少年の豊かな人間性を育むため、青少年が多様な体験活動を経験できる体制を整備し、体験活動の機会を増加させるという成果に結びつくものと考えられる。

D.効率性の観点

1.インプット

  本事業の予算規模は、540百万円である。

  (内訳)

  • 諸謝金 288千円
  • 職員旅費 419千円
  • 委員等旅費 694千円
  • 庁費 8,920千円
  • 初等中等教育等振興事業費 530,174千円

2.アウトプット

(1)小学校長期自然体験活動支援プロジェクト

  1.自然体験活動指導者養成事業

  21年度は、23,500人の養成(全体指導者養成 4,500人、補助指導者養成 19,000人)を予定している。21~24年度に、毎年23,500人の養成し、5年間で、全体指導者2万人、補助指導者10万人を養成することにより、効果的に安全に小学校の長期自然体験活動が実施される。

  ※5年間の計画

  • (全体指導者:20,000人=2,000人[20年度]+4,500人かける4年)
  • (補助指導者:80,000人=4,000人[20年度]+19,000人かける4年)

  2.小学校自然体験活動プログラム開発事業

  21年度は、24プログラムの開発を予定している。
  毎年度検証しながら、必要なプログラムを開発していくことにより、効果的に安全に小学校の長期自然体験活動が実施される。

(2)青少年の課題に対応した体験活動推進プロジェクト

  21年度は、青少年の課題に対応した体験活動50件の実施を予定している。
  青少年の課題は、時代とともに変化していくことから年度ごとに必要な事業を検討し実施する。
  国が先導的に青少年の課題に対応した取組を50件実施し、成果や課題を普及することにより、各自治体が青少年の課題に対応した体験活動を実施できる体制を整備することができる。

3.事業スキームの効率性

  本事業の予算規模(540百万円)に対して、アウトプットとして、23,500人の指導者、24プログラムの開発、50件の課題に対応した取組を実施することを通し、1小学校の長期自然体験活動の効果的・安全な実施、2青少年の課題に対応した体験活動が実施できる体制の整備、が見込まれ、これらを通して、豊かな人間性を育むために必要な体験活動の機会が増加し、我が国の青少年が自立した人間として成長することが期待されることから、インプットとアウトプットの関係は適切と判断する。

4.代替手段との比較

  地方自治体の事業として実施することとした場合には、指導者養成やプログラム開発に地域格差が生じる可能性がある。また、課題に対応した取組については、参考となる事例も少なく、県域を越えた波及効果が十分に期待できないことから、国の委託事業として実施していく必要がある。

E.公平性の観点

  本事業は、全国の都道府県教育委員会、青少年団体、NPO等民間団体などに対して公募し、外部有識者による審査を経て、実施団体を決定しており、公平性は担保できると判断する。

(1)小学校長期自然体験活動支援プロジェクト

  指導者の養成とプログラム開発により、すべての小学校の長期自然体験活動の支援に対応できることから、政策の効果は公平に分配される。

(2)青少年の課題に対応した体験活動推進プロジェクト

  各自治体が青少年の課題に対応した体験活動を実施できる体制が整備されることにより、各自治体における課題に対応した体験活動の取組が実施されることから、政策の効果は公平に分配される。

F.優先性の観点

(1)小学校長期自然体験活動支援プロジェクト

  教育振興基本計画において、小学校で自然体験・集団宿泊体験を全国の児童が一定期間(例えば1週間程度)実施できるように目指していることから、指導者の養成とプログラム開発に緊急に取り組む必要がある。

(2)青少年の課題に対応した体験活動推進プロジェクト

  社会的自立の遅れや社会的不適応など青少年の喫緊の課題に対応するためには、優先的に取り組む必要がある。

G.総括評価と反映方針

  教育振興基本計画において、小学校で自然体験・集団宿泊体験を全国の児童が一定期間(例えば1週間程度)実施できるように目指していることから、効果的に安全に実施されることを支援するために、計画的に指導者の養成とプログラム開発を実施していく必要がある。また、子ども、若者をめぐっては、いわゆるひきこもり、ニート、不登校など様々な問題があることから、これらに対応するための取組を国が先導的に実施していく必要がある。また、ヒアリング等の指摘を踏まえ、民間指導者の活用や国立青少年教育振興機構との連携、さらに事業成果の普及を行っていく必要がある。

指摘事項と対応方針

指摘事項

1.事業に対する総合所見(官房にて記載)

  評価結果は妥当。ただし、より具体的な数値を目標に記載できないか検討する。

2.外部評価、第三者評価等を行った場合のその概要等

  大学等外部の有識者からなる事業企画評価委員会において、「小学校自然体験活動プログラム開発事業については、教員からの評価を得ることが重要である。」「青少年の課題に対応した体験活動推進プロジェクトについては、これだけいい企画提案が多く出てきているので、予算が許せば半数以上の事業について実施してもらいたい。」「指導者に関する調査は、ほとんど実施されていないことから、今後必要とされる指導者の在り方の調査については、継続していく必要がある。」との指摘があった。

3.政策評価に関する有識者委員からの指摘・意見等

  「青少年の意欲向上・自立支援事業」について、高い効果が上がっていることから、引き続き実施し、成果を普及していく必要がある。

指摘に対する対応方針

  「小学校自然体験活動プログラム開発事業」については、開発したプログラムを活用してもらうためにホームページに掲載することとし、そこに学校との連携や教員からの評価を加えることとした。
  青少年の課題に対応した体験活動については、社会的なニーズや社会全体の取組を推進していくこと、また新たな課題に対応するため、拡充することとし、不登校やひきこもりやニート等自立に支援を要する青少年の体験活動、今後必要とされる指導者の在り方の調査についても引き続き実施予定である。

お問合せ先

大臣官房政策課評価室

-- 登録:平成21年以前 --