24.いじめ対策緊急支援総合事業(拡充)【達成目標2-3-1】

平成21年度要求額:105百万円
  (平成20年度予算額:105百万円)
  事業開始年度:平成20年度
  事業達成年度:平成22年度

主管課(課長名)

  • 初等中等教育局児童生徒課(磯谷 桂介)

関係課(課長名)

事業の概要等

1.事業目的

  児童生徒の問題行動等については、いじめが社会問題化するなど、依然として教育上の大きな課題となっている。いじめ問題の深刻化に対応して、緊急に調査研究を実施し、いじめの未然防止や円滑な問題解決に資する。

2.事業に至る経緯・今までの実績

  いじめを苦にした児童生徒の自殺が大きく取り上げられるなど、平成18年度にいじめが社会問題化した。問題が深刻化した背景として、1児童生徒の自殺が発生した場合などの緊急事態への対応に際して、学校の危機管理体制が不十分である、2いじめ等をめぐり保護者との意思疎通の問題等が生じているなどの理由で、教育委員会や学校による解決が困難な場合がある、等という事情があったと考えられる。また、インターネットや携帯電話を介した「ネット上のいじめ」という新しい形のいじめの深刻化など、「いじめは決して許されない」という意識が児童生徒に依然としてしっかり身についていない状況も課題となっている。
  このため、いじめの未然防止や円滑な問題解決に資するよう平成20年度より本事業を緊急的に実施することとしており、平成21年度も引き続き事業を進めていく。

3.事業概要

1 学校問題解決支援事業

  学校だけでは解決困難ないじめ等の問題行動等に対応するため、外部の専門家等からなるチームの設置・派遣の在り方について調査研究を行う。

2 いじめ未然防止に向けた社会性育成事業

  特に小学生期における適切な人間関係の構築方法等に係る優れた教育実践や、メンタルフレンド等の外部人材の活用や、ピアサポート等を通じた異年齢交流の取組など様々な活動を支援し、ノウハウを蓄積させ、地域での取組の浸透を図る。

3 子どもたちによる「いじめ根絶運動」支援事業

  生徒会等児童生徒自身によるいじめ根絶に向けた活動や、いじめゼロに向けた望ましい人間関係づくりに資する取組など、いじめ問題に対する中・高校生の自主的・主体的な活動を支援し、地域での取組の浸透を図る。

スキーム図

4.指標と目標

【指標】
  1. 「いじめに起因する事件」において、被害少年が相談しなかった割合
  2. いじめの認知件数に占める、いじめの解消しているものの割合
  3. いじめの認知件数に占める、いじめられた児童生徒が誰にも相談していない件数の割合
  4. 学校におけるいじめの問題に対する日常の取組のうち、地域の関係機関と連携協力した対応を図った学校数の割合
  5. 不登校児童生徒数に占める、指導の結果登校する又はできるようになった児童生徒の割合
  6. 不登校児童生徒数に占める、学校内外の相談機関等で相談、指導、治療を受けた児童生徒の割合
【参考指標】

  「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」文部科学省調べ 等

【目標】(現状→目標)

  1.15.0パーセント→15パーセント未満、2.80.9パーセント→90パーセント以上、3.10.2パーセント→10パーセント未満、4.14.5パーセント→30パーセント以上、5.30.4パーセント→40パーセント以上、6.65.6パーセント→70パーセント以上

【効果の把握手法】

  本事業の効果は、毎年、文部科学省で実施している「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」等の結果に基づいて検証する。

事業の事前評価結果

A.19年度実績評価結果との関係

  達成目標2‐3‐1「今後の課題及び政策への反映方針」において、「いじめ、不登校、暴力行為など、児童生徒の問題行動等については、引き続き教育上の大きな問題であることから、相談体制の整備や関係機関と連携した取組を一層進める必要がある。」、「学校だけでは解決困難な問題に対応するための外部の専門家等からなるチームの設置・派遣や、未然防止、早期発見・早期対応につながる関係機関とのネットワークを活用した支援など、各事業の取組をより充実させ、関係機関との連携をより一層進めて、その成果を広く普及させるとともに、警察等関係機関との連携による非行防止教室や学校警察連絡協議会及び学校警察連絡制度の活用等を各種会議等の場を通じて促していく必要がある。」と記述されており、本事業の拡充は不可欠としている。

B.必要性の観点

1.事業の必要性

  いじめ問題については、いじめを苦にした児童生徒の自殺が大きく取り上げられ、社会問題となるなど、依然として教育上の大きな課題となっている。
  問題行動等の原因や背景は個々のケースにより様々であるが、問題が深刻化した背景として、1.学校の危機管理に係るノウハウの集積が不十分であり、児童生徒の自殺が発生した場合などの緊急事態に十分対応できない、2.いじめ等をめぐり保護者との意思疎通の問題等が生じているなどの理由で、教育委員会や学校による解決が困難な場合がある、等という状況が報告されている。また、インターネットや携帯電話を介した「ネット上のいじめ」という新しい形のいじめ問題が生じており、インターネット等に関する専門的な知識も必要となり、学校だけではいじめの発見や発見した後の対応が困難な状況が見られる。さらに、「いじめは決して許されない」という意識が児童生徒に依然としてしっかり身についていない状況も課題となっている。
  こうした現状を踏まえ、いじめ問題への適切な対応を推進するために、未然防止、早期発見・早期対応につながる効果的な取組や、外部の専門家や関係機関等の協力を得た取組に関して、学校や教育委員会による適切な対応を効果的に支援する方策の在り方について調査研究を行い、その成果や課題を十分に検証・分析したうえで、効果的な取組については、全国に普及する必要がある。各種答申等においても、こうした取組の重要性・必要性が求められているところであり、引き続いて、これらの取組を国として積極的に実施する必要がある。

2.行政・国の関与の必要性

  本事業は国の委託事業により行うが、地方自治体や民間団体等の事業として実施することとした場合には、取組内容に限界があることに加えて、成果の普及が限定的になる。また、いじめは「どの学校にも、どの子どもにも起こり得る」問題であり、児童生徒の命の問題に関わることも少なくないことから、いじめ等の児童生徒の問題行動に対する適切な対応の徹底が急務である。
  したがって、いじめをはじめとした児童生徒の問題行動等への対応において、地方自治体の財政状況や取組姿勢による地域格差が生じないよう、国が事業を実施し、優れた取組については、事例集を作成・配付したり、全国連絡協議会を開催したりするなどして、より効率的に全国に普及を図る必要がある。

3.関連施策との関係

1 主な関連施策 施策目標2‐3

  ○問題を抱える子ども等の支援事業(初等中等教育局児童生徒課)
   児童生徒の問題行動等に対する効果的な取組について、1関係機関と連携するなどして、未然防止、早期発見・早期対応につながる効果的な取組や、2不登校児童生徒の実態に応じた効果的な活動プログラム等の開発や不登校等により高等学校を中退後、学校等に復帰した者に対する支援の効果的なプログラム開発等について調査研究を行う。(事業開始年度:平成19年度)

2 関連施策との関係(役割分担・連携状況)

  本事業における「いじめ対策緊急支援総合事業」は、児童生徒に関わる問題に対応する必要がある学校が、その総力をあげて対応する取組を支援するものであり、組織的な問題行動対応能力を高めるためのものである。
  一方、「問題を抱える子ども等の自立支援事業」は、問題を抱える児童生徒一人ひとりに対しきめ細かな支援を行うため、関係機関等と連携するなどして、問題解決を図るものである。両事業が連携することにより、様々な要因・背景のある問題行動等の未然防止や早期発見・早期対応並びに解決が困難な事案及び重大な事案の円滑な問題解決に資する。

4.関係する施政方針演説、審議会の答申等

【教育振興基本計画】(平成20年7月1日閣議決定)

  第3章 今後5年間に総合的かつ計画的に取り組むべき施策

  (3)基本的方向ごとの施策

  基本的方向2 個性を尊重しつつ能力を伸ばし、個人として、社会の一員として生きる基盤を育てる

   2 規範意識を養い、豊かな心と健やかな体をつくる

   ◇いじめ、暴力行為、不登校、少年非行、自殺等に対する取組の推進
  いじめ、暴力行為、不登校、少年非行、自殺等への対応の推進を図るため、問題行動を起こす児童生徒への毅然とした指導を促すとともに、未然防止、早期発見・早期対応につながる効果的な取組や関係機関等と連携した取組、いじめられている児童生徒の立場に立った取組を促進する。その際には、非行防止教室の開催、スクールサポーターやサポートチーム、外部の専門家等からなる「学校問題解決支援チーム」などを有効活用する。

  (4)特に重点的に取り組むべき事項

  ○いじめ、暴力行為、不登校、少年非行、自殺等に対する取組の推進
  いじめ、暴力行為、不登校、少年非行、自殺等への対応の推進を図るため、外部の専門家等からなる「学校問題解決支援チーム」や、「非行防止教室」等を有効活用し、関係機関等と連携した取組を促進する。

【経済財政改革の基本方針2008】(平成20年6月27日)

  第5章 安心できる社会保障制度、質の高い国民生活の構築

  2 未来を切り拓く教育

  • 教育基本法の理念の実現に向け、新たに策定する「教育振興基本計画」に基づき、我が国の未来を切り拓く教育を推進する。
  • 新たに策定する「青少年育成施策大綱」に基づき、青少年の健全育成を図る。
【教育再生会議「第三次報告」】(平成19年12月25日)

  4.学校の責任体制の確立

  (2)子供の教育に専念できるよう教員を応援する

  「学校問題解決支援チーム」を全教育委員会で設置する。

【教育再生会議「第二次報告」】(平成19年6月1日)

  1.学力向上にあらゆる手立てで取り組む

  提言4 学校が抱える課題に機動的に対処する

  ■学校の課題を速やかに解決する体制づくり
  教育委員会は、「学校問題解決支援チーム(仮称)」を設け、学校において、様々な課題を抱える子供への対処や保護者との意思疎通の問題等が生じている場合、関係機関の連携の下に問題解決に当たる。チームには、指導主事、法務教官、大学教員、弁護士、臨床心理士・精神科医、福祉司、警察官(OB)などの専門家の参加を求める。

C.有効性の観点

1.目標の達成見込み

  本事業は、いじめをはじめとした問題行動等への適切な対応の充実の観点から開始され、いじめ等の問題行動が生じた際に、外部専門家等や関係機関の協力を得て、教育委員会や学校による適切な対応を効果的支援する方策等のあり方について調査研究し、効果的な取組については、全国に普及させることを目的としている。
  本事業では、文部科学省で実施する「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」等に基づく各種の指標を用いて、それぞれの指標に対する目標を達成することを目指している。
  平成21年度においては、学校問題解決支援事業を拡充し、調査研究内容を充実させるとともに、より効果的に成果の普及を図ることで、関係機関との連携の促進やいじめ問題の解決に資するものと考えられる。

2.上位目標のために必要な効果が得られるか

  いじめの原因や背景が複雑、多様化し、学校や教育委員会だけでは解決困難な事例が見られ、適切な対応が困難な現状において、本事業を活用し、各地域の実情に応じて、外部の専門家等の協力を得た効果的な取組を展開し、効果的な取組を全国に普及することにより、いじめ問題への適切な対応を促進することができる。
  このように、本事業の実施により、いじめをはじめとした児童生徒の問題行動等への対応の充実が図られ、各種指標の目標を達成することによって、達成目標2‐3‐1にある「いじめや暴力行為、不登校など児童生徒の問題行動等に適切に対応するため、学校内外における相談体制の整備を進めるとともに、関係機関等と連携した取組を進める」という成果に結びつくものと考えられる。

D.効率性の観点

1.インプット

  本事業の予算規模は105百万円である。

  (内訳)

  • 諸謝金 51百万円
  • 職員旅費 1百万円
  • 委員等旅費 18百万円
  • 教職員研修費 35百万円

2.アウトプット

  指定地域において、いじめの未然防止や円滑な問題解決に資する取組に関する調査研究が実施され、いじめ等への対応が充実される。本事業において、外部の専門家等からなるチームの派遣・設置のあり方等の調査研究を行い、いじめ問題への適切な対応に資するという波及効果を考えると、本事業は効率的・効果的に実施されるものと判断される。
  なお、本事業は、毎年、児童生徒の問題行動等の変化を踏まえて、調査研究の内容について、重点化を図るとともに、3年後を目処に事業全体の見直しも検討することとしている。

3.事業スキームの効率性

  本事業の予算規模(105百万円)に対して、アウトプットとして、国が、一定の趣旨、目的のもと、都道府県・市区町村教育委員会等の事業計画等を専門家による精査を経た上で、効果的な事業の成果が見込まれる都道府県・市区町村教育委員会等に委託することを通し、各地域において効果的な取組が行われ、調査研究の成果を全国に普及させることを見込むと、本事業のインプットとアウトプットの関係は効果的と判断する。

4.代替手段との比較

  本事業は国の委託事業により行うが、地方自治体や民間団体等の事業として実施することとした場合には、特色ある取組を広く全国に周知し、他の教育機関等が特色ある多様な取組を実施する波及効果を期待している本事業における十分な効果が期待できない。
  様々な要因や背景のある問題行動等に対応するためには、地方自治体単独の取組ではなく、国の委託事業として行うことにより、各都道府県や市町村の教育委員会等が、全国連絡協議会での情報交換等を通じて、より効果的な取組の推進という効果も期待できる。

E.公平性の観点

  本事業は、都道府県教育委員会を通じて、全国の教育委員会等に対して公募し、専門家による審査を経て、実施する団体を決定しており、公平性は担保できるものと判断する。

F.優先性の観点

  いじめを苦にした自殺が相次いで発生するなど、いじめの問題が社会問題化するとともに、いじめの原因や背景が複雑、多様化し、学校や教育委員会だけでは解決困難な事例が見られるようになっている。一方で、いじめ問題への対応にあたっては、その兆候をいち早く把握し、迅速に対応することが求められている。このような現状においては、学校だけで問題を抱えることなく、外部の専門家や関係機関等と連携したり、「いじめは決して許されない」という意識を徹底しいじめの未然防止に努めたり、効果的な取組を支援、普及していくことが求められ、本事業は優先すべき政策と考えられる。

G.総括評価と反映方針

  以上の評価の結果、本事業が深刻ないじめの未然防止や円滑な問題解決を図る上では、重要かつ有効と判断される。したがって、平成21年度概算要求についても前年同額要求とする。

指摘事項と対応方針

指摘事項

1.事業に対する総合所見(官房にて記載)

  評価結果は妥当。ただし、事業の最終的な目標を検証するための指標だけではなく、事業の実施状況について検証するための指標も設定できないか。

指摘に対する対応方針

  児童生徒の問題行動等への施策は相互に関連しているため、様々な観点から指標を立てて、各事業の成果を検証することとしている。特に、本事業においては、いじめ等の問題行動等に対して、調査研究を実施し、いじめの未然防止や円滑な問題解決を目指すことから、指標の1、2、3、4について、事業の実施状況に関する検証を行うこととしている。

お問合せ先

大臣官房政策課評価室

-- 登録:平成21年以前 --