21.豊かな体験活動推進事業(拡充)【達成目標2-2-2】

平成21年度要求額:1,146百万円
  (平成20年度予算額:1,012百万円)
  事業開始年度:平成14年度
  事業達成年度:平成22年度

主管課(課長名)

  • 初等中等教育局児童生徒課(磯谷 桂介)

関係課(課長名)

事業の概要等

1.事業目的

  児童生徒の豊かな人間性や社会性を育むため、他校のモデルとなる体験活動を実施する学校を指定し、自然の中での集団宿泊体験活動や社会奉仕体験活動など様々な体験活動を実施し、その成果を全国に普及することにより、学校における体験活動の推進を図る。

2.事業に至る経緯・今までの実績

  高度情報化や都市化、少子化といった社会の変化に伴い、子どもについて、社会性の不足、生命の尊重や基本的な倫理観が不十分であるという指摘がなされており、教育改革国民会議報告(平成12年12月12日)においては、「少子化・核家族時代における自我形成、社会性育成のために、体験活動を通じた教育が必要である。」とされ、子どもの自然体験、職場体験、芸術文化体験などの体験学習の充実などが提言された。また、21世紀教育新生プラン(平成13年1月25日)においては、7つの戦略の1つとして、「多様な奉仕活動・体験活動で心豊かな日本人を育む」ということが掲げられ、奉仕活動・体験活動の充実が提言された。それを受け、平成13年に学校教育法が改正され、学校が、社会奉仕体験活動や自然体験活動などの体験活動の充実に努めることが規定され、平成14年度より、学校における体験活動のより一層の推進を図るため、本事業が開始された。
  本事業においては、事業を開始した平成14年度から指定校数を拡充するとともに、指定校において他の学校のモデルとなる様々な体験活動を実施し、ブロック交流会等を通じてその成果の普及を図ってきたところであり、平成18年度に、全校種において、年間7日間の体験活動の実施が達成されるなど、一定の成果が得られている。
  「豊かな体験活動推進事業」指定校数の推移(当該年度に指定した学校数)

  平成15年度 平成16年度 平成17年度 平成18年度 平成19年度
体験活動推進地域・推進校 708 622 622 749 468
命の大切さを学ばせる体験活動推進校 144 146 136
地域間交流推進校 97 96 75 100 100
長期宿泊体験活動推進校
   (平成19年度より仲間と学ぶ宿泊体験教室)
88 88 198 467
合計(計) 805 806 929 923 1,171

  (出典)文部科学省調べ

3.事業概要

  児童生徒の豊かな人間性や社会性を育むためには、発達段階に応じて、ボランティア活動などの社会奉仕体験活動や自然体験活動を行うことが極めて重要である。
  「豊かな体験活動推進事業」においては、他校のモデルとなる様々な体験活動を実施する学校を指定し、ブロック交流会の開催や事例集の作成を通じて、その成果を全国に普及してきた。平成20年度は「児童生徒の輝く心育成事業」、「高校生の社会奉仕活動推進校」、「農山漁村におけるふるさと生活体験推進校」、「仲間と学ぶ宿泊体験教室」に取り組んでいるとことであるが、平成20年度より、文部科学省、農林水産省、総務省の3省連携で、小学生の農山漁村における長期宿泊体験活動を推進する「子ども農山漁村交流プロジェクト」を実施していることを踏まえ、平成21年度は、引き続き各メニューを実施するとともに、「農山漁村におけるふるさと生活体験推進校」を拡充し、特に重点的に実施していく。

スキーム図

4.指標と目標

指標

  • 学校において体験活動を実施している平均日数

参考指標

  • 豊かな体験活動推進事業における指定校数

目標

  全校種において、学校における体験活動の実施平均日数が年間7日間以上を目指す。
  なお、既に目標値は達成されているが、平成21年度以降、順次、新学習指導要領が適用されることとなっており、それに伴い、本事業にかかる授業時数の確保等、教育課程上の位置づけが少なからず影響を受けるため、現行の目標は変更をしない。

効果の把握手法

  本事業の効果は、指定校において、他校のモデルとなるような体験活動を実施し、その成果をブロック交流会の開催や事例集の作成により全国に普及し、学校における体験活動の推進を図るものである。学校における体験活動の実施状況については、隔年で抽出調査を実施し、各校種における体験活動実施時間数等について検証する。

事業の事前評価結果

A.19年度実績評価結果との関係

  達成目標2‐2‐2「今後の課題及び政策への反映方針」において、「今日の子どもたちは、少子化、都市化、情報化等の社会の変化により、実体験が不足している状況にあり、児童生徒の豊かな人間性や社会性を育む観点から、農山漁村における長期宿泊体験活動をはじめとする体験活動を推進することは大変有意義である。そのため、引き続きモデル事業を実施して、財政的な支援をはじめ、効果的な体験活動プログラムの構築、ボランティアや指導員の確保・活用など様々な課題を解決するとともに、体験活動の教育的効果の検証を行っていく必要がある。」と記述されており、本事業の拡充は不可欠としている。

B.必要性の観点

1.事業の必要性

  近年高度情報化や都市化、少子化といった社会の変化に伴い、子どもについて社会性の不足、生命の尊重や基本的な倫理観が不十分であるといった指摘があり、各学校においては豊かな人間性や社会性を養うのに効果的とされる体験活動に取り組んでいるところである。また、さらに子どもの意欲や協調性の欠如が指摘されており、生活や学習における意欲や、知識やノウハウを実践に結びつける力などの「人間力」、「社会人基礎力」等社会人としての基礎的な能力の養成・強化を図るためにも体験活動を推進する必要がある。
  学校教育において体験活動に取り組むことにより、規範意識や社会性等を養う機会を確保するとともに、平時とは異なる児童生徒の様子を見取ることで児童生徒の新たな一面を発見し、平時の学級経営のいっそうの向上につなげる等のことが可能である。これらは、通常の学校生活とは違う集団において様々な体験活動に取り組む社会教育での体験活動とは異なり、児童生徒の「豊かな心」を組織的・系統的に育む学校教育をより充実させるものである。
  体験活動の理念の浸透や実施の際のノウハウ等は依然として不足している状況にあり、豊かな心を育成するために学校教育における体験活動の推進を図るには、本事業の拡充が必要である。なお、「農山漁村におけるふるさと生活体験推進校」については、農山漁村にある豊かな自然、文化財や伝統的行事、さらには民泊を通じた人と人との触れ合いなど、様々な教育資源の活用が期待されている。

2.行政・国の関与の必要性

  学校における体験活動の充実については、平成20年3月に公示された学習指導要領において、教育内容の主な改善事項の1つとして掲げられており、子どもたちの発達段階に応じ、集団宿泊活動や自然体験活動、職場体験活動を重点的に推進することとしており、国として体験活動の推進を図っていく必要がある。本事業は国の委託事業により行うが、地方自治体の事業として実施することとした場合には、他校のモデルとなる取組を広く全国に普及し、学校における体験活動の推進を図るという波及効果が十分に期待できない。また、地方自治体の財政状況や取組姿勢によって地域格差を生じる可能性がある。
  また、本事業は教育課程に位置づけた体験活動の推進を図るものであり、民間団体等による事業の実施には適さない。
  したがって、本事業は行政・国による関与が必要である。また、国の委託事業として行うことにより、ブロック協議会の開催や事例集の作成等を通じて、全国の学校においてより魅力的な取組が推進できるという効果も期待できる。

3.関連施策との関係

1.主な関連施策

  ○農林水産省の実施する「子ども農山漁村交流プロジェクト」関連施策
   農林水産省では、農山漁村における宿泊体験の受入れ体制の整備に要する経費(受入地域協議会の運営費や農林漁家の改修費等)を支援。

2.関連施策との関係(役割分担、連携状況)

  本事業のうち、「農山漁村におけるふるさと生活体験推進校」は、農山漁村において宿泊体験活動を実施するモデル校の活動経費の支援を目的としている。一方、農林水産省の事業は、受入れ地区の整備に要する経費を支援することとしている。

3.その他

  本事業は、学校教育の一環として各学校段階で主に学年単位で実施される体験活動を推進するための事業である。一方、「青少年体験活動総合プラン」は、青少年教育を目的とし、任意参加の形態事業であり統合はできない。

4.関係する施政方針演説、審議会の答申等

「経済財政改革の基本方針2008」(平成20年6月27日閣議決定)

  記載事項(抜粋)

  第2章 成長力の強化

  2.地域活性化

  (1)地方再生

  【具体的手段】

  (4)農山漁村の活性化
  「子ども農山漁村交流プロジェクト」を実施し、都市と農山漁村の共生・対流を通じた農山漁村の活性化を図る。

  第5章 安心できる社会保障制度、質の高い国民生活の構築

  1.国民生活を支える社会保障制度の在り方等

   (1)地方再生

   【具体的手段】

   2.未来を切り拓く教育
  教育基本法の理念の実現に向け、新たに策定する「教育振興基本計画」に基づき、我が国の未来を切り拓く教育を推進する。その際、新学習指導要領の円滑な実施、特別支援教育・徳育の推進、体験活動の機会の提供、教員か一人一人の子どもに向き合う環境作り・・・など新たな時代に対応した教育上の諸施策に積極的に取り組む。

「教育振興基本計画」(平成20年7月1日閣議決定)

  記載事項(抜粋)

  第3章 今後5年間に総合的かつ計画的に取り組むべき施策

  (3)基本的方向ごとの施策

   基本的方向1 社会全体で教育の向上に取り組む

   1 学校・家庭・地域の連携・協力を強化し、社会全体の教育力を向上させる

   【施策】
  ◇放課後や週末の子どもたちの体験・交流活動等の場づくり
  関係府省が連携して、小学校で自然体験・集団宿泊体験を全国の児童が一定期間(例えば1週間程度)実施できるよう目指すとともに、そのために必要な体験活動プログラムの開発や指導者の育成を支援する。

   基本的方向2 個性を尊重しつつ能力を伸ばし、個人として、社会の一員として生きる基盤を育てる

   2 規範意識を養い、豊かな心と健やかな体をつくる

   【施策】

   ◇体験活動・読書活動等の推進
  生命や自然を大切にする心や他を思い優しさ、社会性、規範意識など育てるため、全国の小学校、中学校及び高等学校において、自然体験活動や集団宿泊体験、職場体験活動、奉仕体験活動、文化芸術体験活動といった様々な体験活動を行う機会の提供について関係府省が連携して推進する。

  第4章 特に重点的に取り組むべき事項

  ◎ 豊かな心と健やかな体の育成

   ○ 道徳教育や伝統・文化に関する教育、体験活動等の推進
  全国の小学校、中学校及び高等学校において、自然体験活動や集団宿泊体験、職場体験活動、奉仕体験活動、文化芸術体験活動といった様々な体験活動を行う機会の提供について関係府省が連携して推進するとともに、子どもの読書活動を推進する。

C.有効性の観点

1.目標の達成見込み

  本事業は平成14年度に、学校における体験活動を充実させるために開始され、他校のモデルとなる体験活動を実施する学校を指定して、体験活動のプログラム等の調査研究を実施し、その成果の普及を図ってきた。
  学校における体験活動の実施状況については、平成18年度に、全学校種において、年間日数が平均7日間以上という基準を達成(小学校:8.2日、中学校:7.2日、高等学校:7.8日)しており、一定の成果が上がっている。しかし、体験活動の理念の浸透や、体験活動の実施のノウハウは依然として不足している状況にあり、引き続き、効果的な体験活動プログラムの構築や指導員の確保、財政的な支援などの様々な課題を解決するとともに、体験活動の教育的効果の検証を行うことにより、学校における体験活動のより一層の充実が見込まれる。

2.上位目標のために必要な効果が得られるか

  社会の変化に伴い、子どもについて社会性の不足、生命の尊重や基本的な倫理観が不十分であるといった指摘があり、各学校においては体験活動を実施することは、豊かな人間性や社会性を養うのに効果的と考えている。また、子どもの意欲や協調性の欠如が指摘されており、生活や学習における意欲や、知識やノウハウを実践に結びつける力などの「人間力」、「社会人基礎力」等社会人としての基礎的な能力の養成・強化を図るためにも体験活動は効果的である。
  学校教育において体験活動に取り組むことにより、規範意識や社会性等を養う機会を確保するとともに、平時とは異なる児童生徒の様子を見取ることで児童生徒の新たな一面を発見し、平時の学級経営のいっそうの向上につなげる等のことが可能である。これらは、通常の学校生活とは違う集団において様々な体験活動に取り組む社会教育での体験活動とは異なり、児童生徒の「豊かな心」を組織的・系統的に育む学校教育をより充実させるものであり、達成目標2‐2‐2にある学校における体験活動の推進という成果に結びつくものである。

D.効率性の観点

1.インプット

  本事業の予算規模は1,146百万円である。

  (内訳)

  • 調査研究委託費
    • 児童生徒の輝く心育成事業 6校 3百万円
    • 高校生の社会奉仕体験活動推進校 6校 3百万円
    • 農山漁村におけるふるさと生活体験推進校 423校 1,107百万円
    • 仲間と学ぶ宿泊体験教室 6校 7百万円
    • 体験活動連絡協議会 47地域 17百万円
  • 本省事業費
    • 諸謝金 0.3百万円
    • 職員旅費 0.7百万円
    • 委員等旅費 0.6百万円
    • 教職員研修費 7百万円

2.アウトプット

  本事業では、これまで他の学校のモデルとなる体験活動を実施する学校を指定して調査研究を実施し、平成19年度には1,171校を指定している。平成20年度は、メニューを大幅にリニューアルし、「農山漁村におけるふるさと生活体験推進校」(235校)に重点をおいた調査研究を実施している。平成21年度も「農山漁村におけるふるさと生活体験推進校」(423校に拡充)を中心とした、指定校における調査研究を計画している。指定校における取組については、ブロック交流会の開催や事例集の作成により、全国にその成果が普及され、学校における体験活動を推進することとしている。
  また、「子ども農山漁村交流プロジェクト」においては、今後5年間で、全国の小学校において、農山漁村での長期宿泊体験活動を実施できる体制を整備することとしており、本事業におけるモデル校での取組の成果を踏まえ、財政的な支援や指導員の確保など様々な課題の解決に向けて取り組むこととしている。

3.事業スキームの効率性

  本事業の予算規模に対して、アウトプットとして国が一定の趣旨、目的のもと、都道府県・指定都市教育委員会等に委託することを通じ、各地域において効果的な取組が行われ、更に事業の成果を国が蓄積し、また提供することにより体験活動の充実を推進することを見込むと、本事業のインプットとアウトプットの関係は効果的と判断する。

4.代替手段との比較

  本事業は国の委託事業により行うが、地方自治体の事業として実施することとした場合には、他校のモデルとなる取組を広く全国に普及し、学校における体験活動の推進を図るという波及効果が十分に期待できない。また、地方自治体の財政状況や取組姿勢によって地域格差を生じる可能性がある。
  また、本事業は教育課程に位置づけた体験活動の推進を図るものであり、民間団体等による事業の実施には適さない。
  したがって、本事業は行政・国による関与が必要である。また、国の委託事業として行うことにより、ブロック協議会の開催や事例集の作成等を通じて、全国の学校においてより魅力的な取組が推進できるという効果も期待できる。

E.公平性の観点

  本事業は、教育委員会等を通じて、全国の国・公・私立学校に対して公募し、専門家による審査を経て、実施する学校を決定することとしており、公平性は担保できると判断する。

F.優先性の観点

  近年高度情報化や都市化、少子化といった社会の変化に伴い、子どもについて社会性の不足、生命の尊重や基本的な倫理観が不十分であるとの指摘、さらには、子どもの意欲や協調性の欠如が指摘されており、これらの問題に対し、体験活動を行うことが極めて有意義であると考えており、新学習指導要領においても重要性を一層明確にしたところ。
  特に、自然の中での集団宿泊活動などは、校外における集団宿泊活動を通して、教師と児童、児童相互の人間的な触れ合いを深め、互いを思いやり、共に協力し合ったりするなどの人間関係を築く態度を育てること、平素とは異なる児童生徒の様子を見取ることで日常の学級経営のいっそうの向上につなげる等が可能である。
  また、いじめをはじめ、児童生徒の問題行動が依然として教育上の大きな課題となっており、「心の教育」のより一層の充実を図ることが必要であり、そういった観点からも、学校における体験活動のより一層の推進を図るため、本事業は優先的に実施していく必要がある。

G.総括評価と反映方針

  以上の評価の結果、本事業が児童生徒の豊かな人間性や社会性を育む上で、重要かつ有効と判断される。その中で、自然の中での集団宿泊活動(「農山漁村でのふるさと生活体験推進校」)については、新学習指導要領への対応、平成20年度から三省が連携して取り組んでいることから充実することとし、平成21年度概算要求に反映する。

指摘事項と対応方針

指摘事項

1.事業に対する総合所見(官房にて記載)

  評価結果は妥当。ただし、指標と目標に関して、体験活動の教育的効果を捉えるようなアウトカム的なものについても検討する。

指摘に対する対応方針

  本事業においては、学校における体験活動の充実により、児童生徒の豊かな人間性や社会性を育むことを目指しているところ。そのため、学校において体験活動を実施している平均日数により、事業の実施状況に関する検証を行うこととしている。

お問合せ先

大臣官房政策課評価室

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