3.地域の知の拠点・ネットワーク推進事業(新規)【達成目標1-3-2】

平成21年度要求額:280百万円
(平成20年度予算額:‐百万円)
事業開始年度:平成21年度
事業達成年度:平成23年度

主管課(課長名)

  • 生涯学習政策局社会教育課(森 晃憲)

関係課(課長名)

事業の概要等

1.事業目的

  だれもが生涯を通じて学び、自己の内面を磨くとともに、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたってあらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の構築を目指すため、図書館・博物館の活用を通じた住民の学習活動や個人と地域の自立支援の推進を図る。このため、地域や住民に役立つ学習拠点としての機能を果たすべく「図書館機能を活用した「地域の知の拠点」づくり推進事業」及び「地域で輝く博物館連携推進事業」を実施する。

2.事業に至る経緯・今までの実績

図書館機能を活用した「地域の知の拠点」づくり推進事業

  「新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について‐知の循環型社会の構築を目指す‐」(平成20年2月19日中央教育審議会答申)、子どもの読書活動の推進における基本的な計画(平成20年3月11日)において、図書館未設置の市町村にあっては、社会のニーズを踏まえ、今後速やかに図書館の整備に向けた取組に着手することが提言されたことを踏まえ、図書館を「地域の知の拠点」として、地域の実情に応じた情報提供サービスの一層の充実が図られていくようにすることが求められている。しかしながら、市における公立図書館の設置率は高いが、町村における設置率は依然として低い(未設置率 町46.1パーセント、村78.0パーセント(平成17年度)ことが指摘されており、図書館未設置市町村においても住民が求める図書館サービスを受けることができるようにするため、図書館機能を活用した仕組みづくりを実践し、地方公共団体内での地域格差を改善することは緊急の課題である。
  6月11日に公布・施行された図書館法改正により、図書館の運営状況に関する評価の努力義務規定が設けられたが、自己点検・評価を行っている図書館の割合は低く(都道府県26.8パーセント、市町村28.6パーセント(平成15年度))、図書館の評価基準を策定することが求められている。また、平成18年3月に報告された「これからの図書館像」において、図書館独自で危機管理マニュアルを作成する必要があることが提案されている。さらに、「社会教育法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議」において、図書館等の社会教育施設の利便性向上を図るため、指定管理者制度の導入による弊害についても十分配慮して、適切な管理運営体制の構築を目指すことが決議されており、いずれも図書館を振興する上で検討に必要な課題であることから、図書館のリスクマネージメントや指定管理者の実態の調査を行う必要がある。
 「社会教育法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議」において、司書等の各資格取得者の能力が生涯学習・社会教育の分野において、最大限有効に活用されるよう、有資格者の活用方策について検討を進めることが指摘されている。図書館機能を一層高めていくには、地域の司書の有資格者が有する専門的知識を有効活用して、図書館ボランティアや図書館活動の支援者の中核として育成することにより、市民一般による図書館のサポートの充実を図ることが必要である。

地域で輝く博物館連携推進事業

  6月11日に公布、施行し、改正された博物館法では、新たに博物館の運営状況に関する評価の努力義務規定が盛り込まれた。これを踏まえ、今後、「博物館の設置及び運営上の望ましい基準」の見直しや博物館の評価基準を策定することが求められている。また、各地で大規模な地震等の自然災害が相次いでいる中で、博物館における危機管理に関するガイドブックを策定することが求められており、いずれも我が国の博物館を振興する上で喫緊かつ緊急な課題となっている。また、平成19年度より実施している「地域と共に歩む博物館育成事業」においては、3か年計画として博物館の評価やリスクマネージメント等に関する調査研究を行っており、引き続き継続的・発展的にこれらの調査研究を進める必要がある。さらに、「指定管理者制度」が導入されてから5年が経過することから、博物館における指定管理者の運営についての実態を把握することが課題となっている。
  「教育振興基本計画」(平成20年7月1日閣議決定)及び中央教育審議会答申「新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について‐知の循環型社会の構築を目指して‐」(平成20年2月19日)、博物館法等を改正した「社会教育法等の一部を改正する法律」の附帯決議において、広域的な地域連携や館種を超えたネットワークの構築についての必要性が提言、決議されており、多様な博物館のネットワークの構築という新たな課題への対応が求められている。

3.事業概要

図書館機能を活用した「地域の知の拠点」づくり推進事業

  「地域の知の拠点」として地域の実情に応じた情報提供サービスを行うため、未設置市町村等にある図書資料室、市町村の合併後も図書館サービスの遅れている地域での図書館を拠点に、住民の読書の推進や住民が自ら必要とする情報がいつでも収集できるようにするための実践的な研究活動として各5箇所委託し、その成果を全国に周知して、委託を行っていない未設置市町村においても、図書館サービスの地域格差を改善させるための方策の検討に資する。図書館を設置する都道府県・市町村のうち、自己評価・外部評価に新たに取り組む、あるいは意欲的に充実を図ろうとする自治体に対して各5箇所評価の実施を研究委託し、その結果をもとに図書館に対する評価の指針・ガイドラインの作成のための検討を行う。実践研究については、年各5箇所の3か年計画で実施し、23年度までに委託先の地域住民に対する図書館サービスの満足度が80パーセント以上改善することを目標とする。
  また、図書館に関する評価のガイドライン、リスクマネージメント、指定管理者制度の実態についての調査を実施し、研究成果を配付する。このうち、評価のガイドラインについては上記検討を行うこととしており、検討委員会にて分析後、評価指標、ガイドラインを作成した上で、検討結果を配付する。研究成果が周知・普及されるための期間が必要であることから達成年度は23年度とし、達成年度までに、評価実施及び危機管理マニュアルを策定している図書館の達成率を80パーセント以上の目標とする。
  さらに、図書館機能を一層高めていくため、地域の司書の有資格者を活用した図書館ボランティアや図書館活動の支援者を育成するための支援事業を5箇所行う。達成年度は23年度とし、3年間で15箇所実施し、図書館ボランティアのうち有資格者の割合を増加させるとともに、事業の検証を行っていく。
  事業委託は、いずれも都道府県・市町村教育委員会または未設置市町村等に設置する実行委員会組織で行う。

スキーム図

地域で輝く博物館連携推進事業

  博物館関係者及び有識者等からなる企画委員会を設置して検討を行い、委員会のもと、博物館が緊急に対応を求められている評価基準やリスクマネージメントや指定管理者制度の実態のような検討課題について、国内外の博物館の実態や先進的取組等の調査を行う。また、設置者や館種が異なる博物館同士がネットワークを構築し、新たな共同事業を実施することにより、博物館の新たな可能性を開拓することや、学芸員の交流等を通じて、博物館機能の高度化を推進する。博物館法改正等を踏まえた必要な調査研究事項を計画的に実施することにより、博物館制度の充実に向けた施策目標をより効果的に達成していく。平成21年度から実施する博物館ネットワーク構築事業については年24箇所の3か年計画で実施し、事業の評価・検証を行うことにしている。

スキーム図

4.指標と目標

図書館機能を活用した「地域の知の拠点」づくり推進事業

○図書館未設置市町村等における実践研究

  【指標】

  • 委託した市町村の住民の図書館サービスに対する満足度

  【目標】

  • 初年度は住民の図書館サービスに対する満足度が20パーセント以上、23年度までには80パーセント以上改善されていること

  【効果の把握手法】

  • 事業成果報告書の提出による住民の図書館サービスに対する満足度の把握
  • 委託先の住民に対するアンケート調査を実施
○図書館の自己評価・外部評価の実践研究、評価ガイドライン策定のための調査研究

  【指標】

  • 自己評価の実施図書館数及び評価に取り組むことを検討している図書館の数

  【目標】

  • 達成年度までに、平成20年度の時点に比べて20パーセント以上増加していること

  【効果の把握手法】

  • 事業成果報告書の提出による実地図書館数の把握
  • 達成年度における実施状況調査
○リスクマネージメント等の調査研究

  【指標】

  • 危機管理マニュアルの作成及びその作成を検討する図書館数

  【目標】

  • 達成年度までに危機管理マニュアルを策定している図書館の達成率を80パーセント以上増加していること

  【効果の把握手法】

  • 達成年度における実施状況調査
○地域の司書の有資格者の活用を図る事業

  【指標】

  • 図書館ボランティア中の有資格者の数

  【目標】

  • 達成年度までに図書館ボランティアのうち有資格者の割合を30パーセント以上増加すること

  【効果の把握手法】

  • 委託先の図書館にアンケート調査を実施

地域で輝く博物館連携推進事業

【指標】
  • 入館者数(新規入館者数も含む。)
  • 博物館評価の実施や、リスクへの対応方針を策定した博物館数
【目標】
  • ネットワーク事業を実施した園館において館種を超えたネットワークを構築することによって、より幅広い層が来館するよう取組み、達成年度において、ネットワークを構築した博物館全体の来館者層の25パーセント以上が前年度来館していない年齢・性別・地域等になることを目標とする。
  • 評価基準やリスクマネージメント等の調査研究を実施し、その成果を普及することにより、博物館の評価やリスクへの対応方針を策定する博物館の数が20パーセント以上増加することを目標とする。
【効果の把握手法】
  • ネットワーク事業の実施においては、入館者数だけではなく、入館者層の分析を行うことにより、その事業効果の把握に努めることとする。
  • アンケート等により、全国の博物館の評価の実施状況等の取組状況については、把握することとしている。

事業の事前評価結果

A.19年度実績評価結果との関係

  平成19年度実績評価の達成目標1‐3‐1において「地域の図書館サービス充実支援事業」が、「図書館の課題解決支援機能等を踏まえた事業として一定の効果をあげたと解され、平成20年度限りで廃止する」とされた。平成21年度達成目標1‐3‐2にあげた、「図書館(中略)を通じた住民の学習活動や個人の自立支援を推進する」ため、本事業を実施する必要がある。
  また、平成19年度実績評価の達成目標1‐3‐1において「「新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について‐知の循環型社会の構築を目指して‐」(平成20年2月中央教育審議会)や「教育振興基本計画について‐「教育立国」の実現に向けて‐」(平成20年4月中央教育審議会)において指摘されている項目について、調査研究やモデル事業を行い、具体的な成果を抽出することが求められていると考える。また、博物館法や「公立博物館の設置・運営上の望ましい基準」(平成15年文部科学省告示)改正の動きに伴い、博物館に求められている役割の重要性がより一層高まりつつある中で、博物館における施設管理の在り方やリスクマネージメントや自己評価の一般的な基準については、様々な博物館にとって必要な情報となると考えられる。」とされていることから、本事業を実施する必要がある。

B.必要性の観点

1.事業の必要性

(図書館機能を活用した「地域の知の拠点」づくり推進事業)

  「新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について‐知の循環型社会の構築を目指す‐」(平成20年2月19日中央教育審議会答申)において、図書館未設置の市町村にあっては、住民のニーズを踏まえ、今後速やかに図書館の整備に向けた取組に着手することを提言されたことから、図書館未設置市町村等を含め、全国各地における図書サービスの普及・定着のため、図書館サービスの充実に関する調査研究や、先進的取組等の調査研究を行う必要がある。
  また、図書館法の改正に伴う評価の努力義務規定が設けられたが、自己点検・評価を行っている図書館の割合は低く(都道府県26.8パーセント、市町村28.6パーセント(平成15年度))、図書館が自らの運営状況に対する評価を行うためには、国が、外部の視点を入れた図書館の評価及び評価のガイドラインを作成する必要がある。図書館共通に必要性の高いテーマであるリスクマネージメントは、平成18年3月に報告された「これからの図書館像」(平成18年これからの図書館の在り方検討協力者会議)においても、図書館独自で危機管理マニュアルを作成する必要性があることが提案されている。さらに、指定管理者制度の実態については、「社会教育法等の一部を改正する法律」に対する附帯決議において、適切な管理運営体制の構築を目指すことが決議されており、いずれも図書館を振興する上で検討に必要な課題である。
  加えて、改正された図書館法では、図書館が学習の成果を活用して行う教育活動の提供を奨励することが新たに規定されたのに加え、「社会教育法等の一部を改正する法律」に対する附帯決議では、司書等の有資格者の活用方策について検討を進めることが決議されており、地域の司書の有資格者を活用して図書館のボランティアや図書館活動の支援者を育成することは、喫緊の課題である。

(地域で輝く博物館連携推進事業)

  地震等の自然災害が相次いでいる中で博物館における危機管理に関するガイドブックを策定することが求められるとともに、現在、評価を実施している博物館は、31.5パーセント(平成16年度)にとどまり、博物館法の改正に伴って、早急な評価基準の策定が求められるなど、いずれも我が国の博物館を振興する上で喫緊かつ緊急な課題となっている。また、博物館の連携・ネットワーク化についても、行政の壁があり設置者が異なる博物館の連携が進んでいないため、国として連携の枠組みを提示する必要がある。さらに、館種によって入館者層が異なるなど多様な博物館が連携して事業を行うことにより、博物館の新たな可能性を国として検証する必要がある。

2.行政・国の関与の必要性(官民、国と地方の役割分担等

(図書館機能を活用した「地域の知の拠点」づくり推進事業)

  全国の図書館未設置市町村等における図書館サービスの普及、定着や有資格者を利用した支援事業を行うことは、図書館が住民にとって身近な「地域の知の拠点」として、だれもが利用しやすい施設として機能を果たすことにつながる。図書館未設置地域を含めた全地域において、図書館サービスの地域間格差を改善するためには、国が主体となって、図書館サービスの充実に関する実践研究や、先進的取組等の調査研究を行う必要がある。また、図書館が自らの運営状況に対する評価を行い、その結果に基づき図書館の運営の改善を図るためには、透明性・客観性を持った評価指標が必要であることから、国が、外部の視点を入れた図書館の評価ガイドラインを作成する必要がある。さらに、各図書館の自主性を損なわないために、当該調査研究については、民間団体による委託を行う。

(地域で輝く博物館連携推進事業)

  博物館評価の基準やリスクマネージメントのガイドラインを文部科学省が作成することは、国による一律的な規制となりかねず、各博物館の自主性を損なう可能性があることから、当該調査研究については、関係団体に外部委託を行っている。また、博物館のネットワーク化については、行政の壁、館種の壁があるため、国の支援により連携の枠組みを示すことが必要。

3.関連施策との関係

1.主な関連施策

  ○ 優れた社会教育重点推進プラン(生涯学習政策局社会教育課)
地域における公民館等を中心としたコンソーシアム形式による社会教育の総合的な取組について、有識者や専門家等の公正な審査により選定し、特に優れた取組を支援するとともに、これを広く全国に発信することで、全国的な取組の普及促進を図る。

2.関連施策との関係

  本事業は図書館、博物館において、住民の学習活動等の推進に資する施策である一方、優れた社会教育重点推進プランは公民館等の活用を通じた地域の学習拠点づくりに資する施策である。

4.関係する施政方針演説、審議会の答申等

● 社会教育法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(平成20年5月23日衆議院文部科学委員会)(抄)

  政府及び関係者は、本法の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。

  • 一、国民の生涯にわたる学習活動を支援し、学習需要の増加に応えていくため、公民館、図書館及び博物館等の社会教育施設における人材確保及びその在り方について、指定管理者制度の導入による弊害についても十分配慮し、検討すること。
  • 二、生涯学習・社会教育に係る個人の学習成果が、学校、社会教育施設、その他地域において行う教育活動として生かされるよう、各個人の学習活動と地域社会の教育活動との循環につながるような具体的な取組について支援に努めること。
  • 三、公民館、図書館及び博物館が自らの運営状況に対する評価を行い、その結果に基づいて運営の改善を図るに当たっては、評価の透明性、客観性を確保する観点から、可能な限り外部の視点を入れた評価となるよう、国がガイドラインを示す等、適切な措置を講じるとともに、その評価結果について公表するよう努めること。
  • 六、各資格取得者の能力が生涯学習・社会教育の分野において、最大限有効に活用されるよう、資格取得のための教育システムの改善、有資格者の雇用確保など、有資格者の活用方策について検討を進めること。
● 社会教育法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(平成20年6月3日参議院文教科学委員会)(抄)
  • 一、(衆議院附帯決議二に同旨)
  • 四、(衆議院附帯決議三に同旨)
  • 五、博物館については、多様な博物館のそれぞれの特色を発揮しつつ、利用者の視点に立ったより一層のサービスの向上が図られるよう、関係者の理解と協力を得ながら登録制度の見直しに向けた検討を進めるとともに、広域かつ多岐にわたる連携協力を図り、国際的遜色のない博物館活動を展開できるような環境の醸成に努めること。
● 教育振興基本計画(平成20年7月1日閣議決定)(抄)

  ◇ 図書館・博物館の活用を通じた住民の学習活動や個人と地域の自立支援の推進

  • 図書館が住民にとって身近な「地域の知の拠点」として、だれもが利用しやすい施設としての機能を果たすよう促す。
  • 地域住民の参画を得ながら、地域の自然、歴史、文化等に関する質の高い博物館・美術館活動が行われるよう、子どもや地域住民が地域の美術品や文化財に触れる機会等の提供を支援するとともに、広域的な地域連携や館種を超えたネットワークの構築を促す。
● 新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について(平成20年2月19日中央教育審議会答申)(抄)

    図書館においては、レファレンスサービスの充実と利用の促進を図ることはもとより、地域の課題解決に向けた取組に必要な資料や情報を提供し、住民が日常生活を送る上での問題解決に必要な資料や情報を提供するなど、地域や住民の課題解決を支援する機能の充実を図ることが求められる。特に近年、ホームページを開設し、横断検索システムの活用等コンテンツの充実を図っている図書館が増加傾向にあり、今後、さらなる充実を図ることによって、多様な情報源への入り口としての「地域のポータルサイト」を目指すことも重要である。また、子どもの読書活動や学習活動を推進する観点から、学校図書館への支援を積極的に行うことが重要である。

  図書館は、社会教育施設の中でも利用頻度が高く、いわば地域の「知の拠点」であり、その質量両面における充実が図られるべきであり、特に図書館未設置の市町村にあっては、住民のニーズを踏まえ、今後速やかに図書館の整備に向けた取組に着手することを期待したい。

  学芸員等の交流を含む設置主体を超えた広域的な地域連携や、例えば自然史博物館と動物園等の館種を超えたネットワークを構築する等、多様な博物館同士が協力することによって、新たな可能性を追求していくことも重要である。

● 子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画(平成20年3月11日閣議決定)(抄)

  ○ 子どもの読書活動の推進のための公立図書館等の機能強化

  公立図書館が未設置の市町村は、今後、その解消に向けて、図書館の設置について積極的に取り組むことが望まれる。新たな図書館の設置が困難な場合でも、都道府県立図書館や近隣市町村との連携等による読書環境の整備が望まれる。

● 国土形成計画(全国計画)(平成20年7月4日閣議決定)(抄)

  ○地域の文化芸術活動を支える環境整備

  文化芸術活動の拠点である文化施設(文化会館、美術館・博物館、図書館等)については、その整備が相当程度進んできているものの、十分に活用されていないとの指摘もある。このため、複数の施設が相互に連携し、美的・知的関心を抱く地域住民のニーズも踏まえながらネットワーク化を図る。

C.有効性の観点

1.目標の達成見込み

(図書館機能を活用した「地域の知の拠点」づくり推進事業)
  • 本事業により、図書館の未設置市町村など図書館サービスの遅れている地域でのサービスを普及・定着させるための仕組みづくりを記した事例集を各都道府県、市町村立図書館、関係団体へ配付することにより、他地域における図書館サービスの向上の取組が促進され、従来、図書館を利用しなかった住民の図書館利用率の増加など、目標に向けて効果を発揮すると見込まれる。
  • 本事業により、委託を受けた市町村での取組成果と策定された図書館に関する評価のガイドラインを記した報告書を各都道府県、市町村立図書館、関係団体へ配付することにより、これまで図書館の評価を実施していなかった図書館の実施率を向上させるだけでなく、不十分な取組しかしていなかった図書館においても、図書館評価の質を高めることができ、目標に向けて効果を発揮すると見込まれる。
  • 図書館におけるリスクマネージメント等については、図書館における必要性の高いテーマであり、国が外部委託として調査研究を行うことにより、各図書館の危機管理マニュアルの作成だけでなく、自館や他館の情報を共有することで、目標に向けて効果を発揮すると見込まれる。
  • 地域の司書の有資格者の活用を図る支援事業を実施することにより、有資格者の活用だけでなく、地域での図書館サービスの向上につながり、目標に向けて効果を発揮すると見込まれる。
(地域で輝く博物館連携推進事業)

  既に博物館ネットワークを構築している博物館については、従来、来館していない層の入館者が増え、全体的にも入館者数が増大して目標に向けて効果を発揮すると見込まれる。調査研究については、いずれも博物館が緊急に対応を求められている課題であるため、国がガイドライン等の作成を支援することにより、各博物館の取組が進むことが見込まれる。

2.上位目標のために必要な効果が得られるか

(図書館機能を活用した「地域の知の拠点」づくり推進事業)

  図書館の未設置市町村など図書館サービスの遅れている地域でのサービスを普及・定着させるための実践研究を行うことで「地域の知の拠点」として地域の実情に応じた情報提供サービスの一層の促進が図られ、さらに、図書館の必要性について住民意識を高めることとなり、図書館を通じた住民の学習活動や個人の自立支援を推進することにつながると判断した。また、図書館の評価、リスクマネジメント、指定管理者制度に関する調査研究を行うことは、図書館の運営の改善を図るために必要であることから、図書館を通じた住民の学習活動を推進することにつながると判断した。

(地域で輝く博物館連携推進事業)

  本事業の成果の普及を図ることで、博物館の館種を超えたネットワークの構築の一層の促進が図られ、目指す効果が達成できると判断した。また、博物館の運営状況の評価を行うことは、博物館の運営の改善を図るために必要であることから、博物館を通じた住民の学習活動を推進することにつながると判断した。

D.効率性の観点

1.インプット

・ 図書館機能を活用した「地域の知の拠点」づくり推進事業
  • 概算要求額 111百万円
    • 諸謝金 8,511千円
    • 職員旅費 1,617千円
    • 委員等旅費 7,125千円
    • 庁費 32,504千円
    • 委託費 61,140千円
・ 地域の博物館連携推進事業
  • 概算要求額 169百万円
    • 諸謝金 1,474千円
    • 職員旅費 363千円
    • 外国旅費 485千円
    • 委員等旅費 2,258千円
    • 庁費 3,331千円
    • 委託費 160,680千円

2.アウトプット

(図書館機能を活用した「地域の知の拠点」づくり推進事業)

  図書館未設置市町村、または、市町村の合併後も図書館サービスの遅れている地域での図書館サービスを普及・定着させるための仕組みづくりの実践として各5箇所、図書館の自己評価、または、外部評価の実践に関する事業として各5箇所の実践研究を達成年度は23年度とし、3年間で計60箇所実施する。また、図書館に関する評価のガイドライン、リスクマネージメント、指定管理者制度の実態についての調査を実施する。達成年度は23年度とし、達成年度までに研究成果のが周知・普及を図る。さらに、地域の司書の有資格者を活用した図書館ボランティアや図書館活動の支援者を育成するための支援事業5箇所を行う。達成年度は23年度とし、3年間で15箇所実施する。

(地域で輝く博物館連携推進事業)

  自然系博物館を中心とした博物館連携事業8箇所、歴史系博物館を中心とした博物館連携事業8箇所、美術系博物館を中心とした博物館連携事業8箇所の全国24箇所において単年度で事業を実施し、3年計画で延べ72箇所において事業を実施する。また、平成21年度は、博物館評価、リスクマネージメント、指定管理者制度の実態についての調査を実施し、3年間で9テーマの調査研究(継続する調査も含む。)を実施する。

3.事業スキームの効率性

(図書館機能を活用した「地域の知の拠点」づくり推進事業)

  本事業は、図書館未設置市町村を含めた「地域の知の拠点」として地域の実情に応じた図書館サービスの充実および図書館に対する評価の指針・ガイドラインの作成を行うための実践研究であり、実施事業規模は、都道府県・市町村教育委員会または未設置市町村等に設置する実行委員会組織での実施を想定している。1事業あたり5箇所と少ない委託先で効果を全国に普及させることが見込まれ、また、委託費は1箇所あたり150万~250万円の設定となっていることから、本事業の設定は適切であると考える。
  調査研究については、図書館共通に必要性の高いテーマに絞って、国が一元的に調査研究し、各図書館に周知徹底することにより、全国あまねく、その成果の普及が図れる。

(地域で輝く博物館連携推進事業)

  博物館は、全国に約6,500館存在するが、公私立、美術館から動物園・水族館まで多様な施設である。1箇所当たり、5館程度の博物館がネットワークを組み、全国24箇所で連携事業が実施された場合、120館の博物館が本事業を実施することになり、各博物館の入館者の増加、博物館の新たな取り組みなど、全国への波及効果が高い。本事業は、各館をつなぐ、ネットワークを組むための経費のみ負担するため、各館独自の取組と併せて、その費用対効果が高い。調査研究については、博物館共通に緊急性が高いテーマに絞って、国が一元的に調査研究し、各博物館に周知徹底することにより、全国あまねく、その成果の普及が図れる。

4.代替手段との比較

(地域で輝く博物館育成事業)

  博物館の連携については、先行事例はあるものの、その評価も含めて、その取組は十分進んでいない。既に実績がある事業を、全国展開する手段である交付金などの代替手段はとりえない。モデル的に試行し、その成果を評価・分析し、全国への普及につなげていくには、国による委託事業の手段が最適である。

E.公平性の観点

図書館機能を活用した「地域の知の拠点」づくり推進事業

  調査研究が実施される図書館は、図書館法上の図書館だけでなく、未設置市町村における図書館機能を活用した図書館サービスの充実を図る実践研究をしている。

地域で輝く博物館連携推進事業

  全国の博物館を対象にした事業であり、その博物館活動の充実が図られることは、国民の生涯学習にとっても必要不可欠であることから、公平性が担保される。

F.優先性の観点

図書館機能を活用した「地域の知の拠点」づくり推進事業

  図書館機能を活用した「地域の知の拠点」づくり推進事業」については、教育振興基本計画(平成20年7月1日閣議決定)において、図書館が住民にとって身近な「地域の知の拠点」として、だれもが利用しやすい施設としての機能を果たすよう促すことが盛り込まれている。また、中央教育審議会答申や、子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画においても、図書館未設置市町村における整備が明記されている。さらに、図書館法の改正により図書館の評価の実施が努力義務として新たに規定されたのに加え、社会教育法等の一部を改正する法律の附帯決議において、評価のガイドラインの策定、指定管理者制度の実態、有資格者の活用方策等について決議されており、優先性は高いと考えられる。

地域で輝く博物館連携推進事業

  博物館法が改正され、教育振興基本計画、中央教育審議会答申、参議院附帯決議にも明記されていることから、他の事業より優先して実施する必要がある。

G.総括評価と反映方針

  21年度概算要求に反映する。

指摘事項と対応方針

指摘事項

1.事業に対する総合所見(官房にて記載)

  評価結果は妥当。

お問合せ先

大臣官房政策課評価室

-- 登録:平成21年以前 --