1.専修学校を活用した就業能力向上支援事業(新規)【達成目標1-2-3,1-2-7】

平成21年度要求額:659百万円
  (平成20年度予算額:‐百万円)
  事業開始年度:平成21年度
 事業達成年度:平成23年度

主管課(課長名)

  • 生涯学習政策局生涯学習推進課(上月 正博)

関係課(課長名)

事業の概要等

1.事業目的

  就職・再就職を希望しているが諸事情により就業が叶わない就職困難者に対し、専修学校の持つ職業教育機能を活用した多様な学習機会を提供し、受講者の就業能力の向上と就職機会の充実を図る取組をモデル事業として実施する。モデル校とした専修学校等における取組を広く社会に普及することで、他の地域においても、同様の多様な学習機会が実施される効果を期待する。

2.事業に至る経緯・今までの実績

  • 経済状況等を反映し、企業等の雇用状況に改善傾向が見られる中で、フリーター数についても全体としては若干の減少傾向にある。一方で、過去の就職氷河期に正社員となれずフリーターとなっている若者やニートなどは高齢化する傾向にあり、若年層の離職率も上昇傾向にある。
  • 高齢者の就業については、高齢者側が企業の必要としている能力を必ずしも身に付けず、準備不足のまま再就職に望んでいることがあり、高齢者の就業を阻む原因となっている。
  • 子育てにより就業を中断している女性が、再就職を望む場合、離職期間が長期化した場合などは、職業能力が低下してしまうことが、女性の社会進出を阻む原因の一つとして考えられる。
  • 上記のような就職困難者に対して、文部科学省においては、平成19年度より専修学校の職業教育機能を活用した就職支援事業を実施し、一定の成果を上げてきたところである。
    • 平成19年度事業「専修学校を活用した再チャレンジ支援推進事業」における「若者の再チャレンジ支援プログラムについて」の実績
      • 委託件数 34件/開設講座数 110講座/受講者数 2,085人
      • 再就職状況 講座終了後のフォローアップ調査によると、フォローアップを実施した20件中、再就職者数を回答した11件の受講者302人のうち、246人(81.4パーセント)が再就職した。

3.事業概要

(1)概要

  若者を中心とした早期退職者やニート、定年を迎える高齢者、子育てにより仕事を中断した女性等の就職困難者を対象に、専修学校の持つ職業教育機能を活用した実践的な就業能力の向上に資するプログラムを提供する講座をモデル事業として実施する。

<モデル講座について>
  1. 学習成果を職業キャリア形成に活かす観点から、一定の要件を満たした「実践型教育プログラム」の提供をおこなうものであること。
  2. 企業実習やインターンシップを取り入れ、実践的な内容であること。
  3. 若年層を対象とする講座においては、キャリアカウンセリングをおこなうものであること。 等

  また、上記講座の成果を普及するために、成果報告会の開催や報告書の作成等の取組みを行ない、同種の講座が広く社会に定着し、全国の各地域において、就職困難者に対し多様な学習機会が提供されるよう促す。

(2)事業概念図

事業概念図

(3)事業計画

  基本的な事業活動については、毎年度、モデル講座を企画競争により公募し、有識者による審査を経て委託決定を行ない、講座終了後は成果報告会等を通じ成果の普及を図る。
  初年度は、事業の浸透を図るため、特に周知を積極的に行なうとともに、成果の普及に努める。
  次年度以降、モデル講座の実施と成果の普及につとめ、達成年度においては、各事業について浸透度を把握するための取組みを行なう。

4.指標と目標

指標

  各モデル講座における受講者確保状況及び受講者満足度や再就職率
  成果を普及するための取組件数及びその内容

目標

  各モデル講座において、受講者が十分に確保され、受講者満足度及び再就職率が高いものとなること。
  その成果を広く社会に普及させる取組がすべての講座において十分に行なわれること。

効果の把握手法

  各講座におけるアンケート調査の実施。一定期間経過後のフォローアップ調査。成果の普及状況の把握のための報告書の検証

事業の事前評価結果

A.19年度実績評価結果との関係

  本事業は達成目標1‐2‐3「専修学校において職業教育機能を活用した多様な学習機会の充実を図る。」及び、達成目標1‐2‐7「大学・専修学校において社会人等が学ぶ機会の充実を図る。」と関連があり、本事業の目的が受講者への学習機会の提供及びその取組の普及であるという観点から、両目標に資するものである。

B.必要性の観点

1.事業の必要性

  本事業の目的は、働く意欲のある人々が能力を発揮できるように、キャリア形成を支援し、就業機会の充実を図ることである。人口減少社会・高齢化社会をむかえる我が国にとって、将来の労働人口の確保は経済成長を持続するために喫緊に取り組むべき課題であり、中小企業等における地域人材ニーズや地場産業における後継技術者不足等に対応するためにも、本事業は必要である。

2.行政・国の関与の必要性(官民、国と地方の役割分担等)

  本事業の目的は、できるだけ多くの就職困難者に多様な学習機会を提供することで、人材を養成し、就業につなげることである。そのためには、就職困難者がいつでもどこでも学べる環境を整備することが重要であり、全国的な取組として行政が主導的に成果の普及に努めることが必要である。
  一方、民間で提供される講座においても、人材養成はなされているところだが、各学校等において収益を上げることを目的としているものであり、受講生募集やカリキュラム等のノウハウは各学校が独自に開発しており、対外的に公開しておらず、モデルとして提示できるものではない。
  取組内容を広く社会に普及し、大きな波及効果を呼ぶためには、国の関与が必要である。

3.関連施策との関係

1.主な関連施策 施策目標1‐2

  専修学校・高等学校連携等職業教育推進プラン(生涯学習政策局生涯学習推進課専修学校教育振興室)
  高校生の職業意識を持った自主的な進路選択など、多様な体験の機会の充実を図るため、専修学校の機能を活かして、高等学校等と連携し、高校生等に対する職業に就くために必要な知識・技能・資格等の事例紹介や実践的な職業体験講座を実施し、職業意識の醸成を図ることを目的とした事業(平成21年度要求額147百万円、事業開始年度:平成19年度、事業達成年度:21年度)

  「職業能力形成システム(=ジョブ・カード制度)」(内閣府・厚生労働省・文部科学省・経済産業省)
  主として、正社員として働くことによって能力を育成する機会に恵まれなかった人の中で、所定の職業訓練を終わらせた人へジョブカードを交付し、一定の能力があることを証明する制度である。
  専修学校において提供される講座が、教育研究のノウハウを活用した受講者の職業能力の形成に資するプログラムである場合、「実践型教育プログラム」と位置づけられ、ジョブカードにおける「職業能力証明書」として活用することが可能である。

2.関連施策との関係

  「専修学校・高等学校連携等職業教育推進プラン」との関係については、若者の早期離職者やフリーター・ニートが発生する原因の一つとして、高校生等の若年層における職業意識の不足があげられる。そこで、再就職支援だけでなく、キャリア教育の一環として、主に高校生等に対し専修学校を教育機能を活用した職業体験講座を通した職業意識の涵養を図る事業を展開している。

  「職業能力形成システム」との関係については、本事業において実践型教育プログラムを開設することで、ジョブ・カードへの記載が可能となり、本事業の開設講座を受講したことが、キャリアのひとつとして公的に証明することができるようになる。

4.関係する施政方針演説、審議会の答申等

◇『経済財政改革の基本方針2007(平成19年6月19日閣議決定)』

  第2章 成長力の強化 1.成長力加速プログラム

  1 成長力底上げ戦略

  (1)人材能力戦略

  1. 「職業能力形成システム」(通称:『ジョブ・カード制度』)の構築
      フリーター等の就職困難者や新卒者に対し、協力企業等において職業能力形成プログラムを提供し、履修実績等を記載した「ジョブ・カード」を交付する。
  2. 大学・専門学校等を活用した「実践型教育システム」の構築
      就職困難者や新卒者等に対し大学・専門学校等の教育プログラムを開放し、「実践型教育プログラム」を提供する。
◇『経済財政改革の基本方針2008(平成20年6月27日閣議決定)』

  第2章 成長力の強化 1.経済成長戦略

  1 全員参加経済戦略 1 新雇用戦略

  働く意欲のあるすべての人々が年齢、性別や世帯の構成、就業形態にかかわりなく能力を発揮する「全員参加の社会」を実現するため、個々のニーズに応じたきめ細やかな支援施策に政府を挙げて取り組み、2010年度までに、若者、女性、高齢者の220万人の雇用充実を目指す。

   今後3年間で、1.若者について、ジョブ・カード制度の整備・充実、「フリーター等正規雇用化プラン」による100万人の正規雇用化、2.女性(25~44歳)について、「新待機児童ゼロ作戦」(平成20年2月27日)の展開等による最大20万人の就業増、3.高齢者(60~64歳)について、継続雇用の着実な推進等による100万人の就業増、を目指す。

◇『教育振興基本計画(平成20年7月1日閣議決定)』

  第3章 今後5年間に総合的かつ計画的に取り組むべき施策

  (1)基本的考え方
  2.「縦」の接続:一貫した理念に基づく生涯学習社会の実現
  「高等学校と大学等の学校間,さらには学校教育と職業生活等との連携・接続の改善にとりわけ意を用いていく必要がある。また,いったん学校教育を終えた後や,途中で中断した後に,それぞれのニーズに応じて再度学校教育の場に戻ったり,様々な社会教育を受けたりする機会が設けられていることが重要である。」

  (3)基本的方向ごとの施策
  基本的方向1 社会全体で教育の向上に取り組む

  • 大学・短期大学・高等専門学校・専修学校等における専門的職業人や実践的・創造的技術者の養成の推進
      「専修学校等について,社会の変化に即応した実践的な職業教育及び専門的な技術教育を行う機能が発揮されるための取組を促す。」

  4.いつでもどこでも学べる環境をつくる

  • 「学び直し」の機会の提供と学習成果を社会で生かすための仕組みづくり
      「だれもが生涯のいつでも必要な時に学び,また,何度でも新たな挑戦を行うことができる社会の実現に向けて,情報通信技術も活用しつつ,大学・短期大学,高等専門学校,専修学校等において社会人をはじめとする幅広い学習者の要請に対応するための取組を促す。」

C.有効性の観点

1.目標の達成見込み

  本事業を、過去の事業の実績を踏まえ、経年にわたり実施することで、事業の地域へ定着やノウハウの蓄積がなされ、優れた成果が広く普及されることになる。これにより、各モデル講座において、受講者が十分に確保され、受講者満足度及び再就職率が高いものとなることが期待される。また、各講座における成果普及に関する取組が適切に実施されることで、広く社会に事業が定着することとなる。

2.上位目標のために必要な効果が得られるか

  モデル講座を実施し、その成果を広く社会に普及することは、他の多くの専修学校(や大学等)にとって貴重なデータとなり、専修学校等における多様な学習機会の提供に影響を与えることとなる。これにより講座の提供の促進がなされ、社会人等を対象とした多様な学習機会の提供も行なわれることとなる。

D.効率性の観点

1.インプット

  平成21年度概算要求予定額:659百万円

  〔内訳〕

  • 諸謝金 594千円
  • 職員旅費 974千円
  • 委員等旅費 607千円
  • 庁費 3,108千円
  • 生涯学習振興事業委託費 653,484千円

2.アウトプット

  平成21年度委託予定箇所数は80箇所である。平成22年度以降も同じ委託件数を目標としている。
  本事業のモデル講座が、他の専修学校における同種の取組みの活性化につながることで、就業能力の向上を支援する講座が増加し、さらなる波及効果を生むことになると言える。

3.事業スキームの効率性

  本事業の予算規模に対し、アウトプットとして80箇所に本事業を委託することを通じ、1就職困難者への講座提供及び2成果の普及による事業の全国的な展開が図られることを見込むと、本事業のインプットとアウトプットの関係は効率的であると判断する。

4.代替手段との比較

  本事業は国の委託事業として実施されるが、地方自治体の事業として実施することとした場合、成果の普及が全国に展開されることにならず、全国的な波及効果を期待する本事業の目標達成には十分な効果が得られない。また、国が広くモデル講座を選定することで、各地域における取組が広く情報提供されることとなり、情報交換が活発化され、より優れた取組を生むという効果も期待される。

E.公平性の観点

  本事業は、都道府県を通じ、全国の専修学校に対して公募し、有識者による審査を経て、実施校を決定する予定であり、公平性は担保できると判断する。

F.優先性の観点

  人口減少社会・高齢化社会をむかえる我が国にとって、将来の労働人口の確保は経済成長を持続するために喫緊に取り組むべき課題である。人材養成には一定の時間を要するものであり、本事業は緊急に対応すべき政策であると考えられる。

G.総括評価と反映方針

  ヒアリング等の指摘を踏まえ、過去の専修学校の関連施策における実績を活用し、効率的な事業実施を目指し、21年度概算要求に反映する。

指摘事項と対応方針

指摘事項

1.事業に対する総合所見(官房にて記載)

  評価結果は妥当。ただし、行政・国の関与の必要性や関連施策との関係を整理する。

指摘に対する対応方針

  指摘を踏まえ、対応済み。

お問合せ先

大臣官房政策課評価室

-- 登録:平成21年以前 --