以上のような経緯を踏まえ,平成19年11月26日の諮問会議において,重要対象分野として,「少子化社会対策に関連する(
)育児休業制度,(
)子育て支援サービス,(
)ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)の実現に向けた取組」,
「若年者雇用対策」,
「農地政策」の3分野が提示された。
今回,文部科学省では,「文部科学省政策評価基本計画(平成20〜24年度)(平成20年3月31日 文部科学大臣決定)」及び「平成20年度文部科学省政策評価実施計画(平成20年3月31日 文部科学大臣決定)」等に基づき,諮問会議において提示された3分野のうち,文部科学省所掌の政策に関係する「少子化社会対策に関連する子育て支援サービス」及び「若年者雇用対策」について総合評価方式により重要対象分野の評価を行うことになった。本評価書は,そのうち「若年者雇用対策」について評価を行うものである。
若年者をめぐる雇用の状況は,近年の景気回復の影響もあり,好転の兆しがみられるものの,いまだ深刻である。特に,フリーター,ニートについては,その年長化が進み,不安定な状況から脱却することが困難となる者の増加が懸念されており,対策の困難度が増してきていると考えられる。このような状況を踏まえ,諮問会議において,フリーターの常用雇用化,ニートの職業的自立を促進する観点から,雇用機会の確保や職業訓練などの各種施策の効果を検証し,より効率的・効果的な施策を見極めるなど,今後の若年者雇用対策の在り方の検討に資する評価を行うべきであるとされた。
高い失業率,ニートやフリーターである若者の増加など,深刻化する若年者雇用問題に対し政府全体として対策を講ずるため,平成15年4月に文部科学大臣,厚生労働大臣,経済産業大臣及び経済財政政策担当大臣による「若者自立・挑戦戦略会議」が発足し,若年者を中心とする総合的な人材対策のあり方について検討を行うこととなった(後に内閣官房長官,農林水産大臣,少子化・男女共同参画担当大臣も参加)。
本会議においては,平成15年から3年間で若年失業者等の増加傾向を転換させることを目標として掲げ,各府省の既存施策の見直しや,政策の連携方策,経済界などの関係者への協力要請,今後重点的に推進すべき新たな施策などについて積極的な検討を行い,同年6月に,教育・雇用・産業政策が連携した総合的な人材対策として「若者自立・挑戦プラン」を取りまとめた。
この「若者自立・挑戦プラン」において,文部科学省では,義務教育段階からの組織的・系統的なキャリア教育の推進やインターンシップなどの就業体験の促進,フリーターへの再教育の実施など,教育の面から若年者雇用問題などに取り組むことを盛り込んだ。
平成16年6月に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004」において,「若者自立・挑戦プラン」をさらに強化することが盛り込まれ,その実効性・効率性を高めるため,「若者自立・挑戦戦略会議」において,同年12月に具体策を行動計画として取りまとめた「若者の自立・挑戦のためのアクションプラン」を策定し,これに基づき総合的な人材対策を実施してきた。
当該アクションプランにおいては,学校段階からのキャリア教育の推進,働く意欲や能力を高める総合的な対策,産業人材の育成・強化,職場定着に至るキャリア形成・就職支援,若年労働市場の整備その他の様々な施策が盛り込まれ,文部科学省としては,児童生徒の発達段階に応じたキャリア教育の推進,教育と企業実習を組み合わせた実務・教育連結型人材育成システム(日本版デュアルシステム)の推進,フリーターへの再教育の実施,大学などの高等教育機関における高度な専門能力等をもつ人材の育成の推進などに取り組んできた。
また,平成18年1月には,「若者自立・挑戦戦略会議」において,「若者の自立・挑戦のためのアクションプラン」の改訂版を取りまとめ,引き続き若者に対する総合的な人材対策を推進してきた。
その後,政府においては,多様な機会が与えられ,仮に失敗しても何度でも再チャレンジができ,「勝ち組,負け組」を固定させない社会,また,働き方,学び方,暮らし方が多様で複線化した社会の構築を目指し,平成18年3月,「多様な機会のある社会」推進会議(「再チャレンジ推進会議」)を設けて具体的施策について検討を行ってきた。そして,同年12月には,チャンスにあふれ,誰でも再チャレンジが可能な社会を目指すために必要な施策(再チャレンジ支援策)の実効性・効率性を高めるため,本会議において,「再チャレンジ支援総合プラン」を策定した。
当該プランにおいて,長期デフレ等による就職難,経済的困窮等からの再チャレンジや,複線型社会の実現等が支援の重点課題として掲げられた。文部科学省としては,教育分野において再チャレンジを推進するため,若者がフリーター・ニートになることを未然に防ぐための各学校段階におけるキャリア教育や職業教育の推進,生涯学習関連施設・大学・高等専門学校・専修学校と地域の産業界等関係者が連携し,社会人などが地域で実践的な学び直しができる機会の充実に取り組んできた。
平成20年1月には,再チャレンジ推進会議において「再チャレンジ支援総合プラン2008」を決定し,引き続き関係省庁とも連携しつつ,教育面から若者の職業意識の形成支援に取り組んでいる。
平成18年12月に成立した改正教育基本法(平成18年法律第120号)では,教育の目標の一つとして,「職業及び生活との関連を重視し,勤労を重んずる態度を養う」ことが新たに規定されたところであり,学校教育を中心に,若者が適切な勤労観,職業観や職業に関する知識・技能を身に付け,明確な目的意識を持って就職できる資質をはぐくむことが重要な課題であるといえる。
このため,文部科学省としては,各学校段階を通じた体系的なキャリア教育・職業教育の推進や,ニートやフリーターである若者などに対する「学び直し」の機会の提供などに取り組んでいる。
平成20年3月に公示された新学習指導要領においては,中学校における職場体験活動を新たに盛り込むなど,キャリア教育を重視している。各学校段階において,社会科や特別活動など教育活動全体を通じて必要な指導が行われるよう取り組んでおり,中学校における職場体験の実施(キャリア・スタート・ウイーク)や,専門高校におけるものづくり分野等の専門的職業人の育成などに努めている。
また,ニートやフリーターである若者が実践的な職業能力を身に付けられるよう,大学や専修学校等を活用した「学び直し」の機会の提供等にも取り組んでおり,文部科学省では,教育面から若者の職業意識の形成支援に取り組んでいるところである。
文部科学省では,各学校段階を通じた体系的なキャリア教育等の推進や「学び直し」の機会を提供による職業意識の形成支援に取り組んでおり,今回これらの取組のうち,特に今回の「若年者雇用対策」のテーマに直接的な関係が強いと思われる,〈1〉中学校・高等学校におけるキャリア教育,〈2〉専門高校関連施策,〈3〉高等教育関連施策,〈4〉専修学校関連施策等のうち,以下の施策について重点的に評価を実施することとした。
なお,これらの施策は,雇用機会の確保や職業訓練など,若年者雇用に直接的に結びつく性質を有するものではない。また,重要対象分野として提示された若年者雇用対策については,別途厚生労働省及び経済産業省にて評価を行うことになっている。
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〈5〉 | その他
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なお,(b),(e),(f),(h)及び(i)については,事業開始後間もないため,政策効果が十分に現れていない段階での評価となっている。
-- 登録:平成21年以前 --