研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドラインに基づく体制整備等の実施状況報告書提出に関するお願い

別添2

平成19年10月11日

文部科学省 研究機関における公的研究費の管理・監査に関する検討会 主査
石井 紫郎

 別紙の通り、このたび本年2月15日付文部科学大臣決定「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン(実施基準)」(以下、「ガイドライン」という。)第7節に基づき、ガイドラインを踏まえた体制整備等の「実施状況報告書」の提出をお願いすることとなりました。これは、同節(1)1に、「文部科学省等が実施すべき事項」の一つとして「有識者による検討の場を設け、ガイドラインの実施等に関してフォローアップするとともに、必要に応じてガイドラインの見直し等を行う」とあるのを受けたものであります。
 私は、上記「有識者による検討の場」として設けられた「研究機関における公的研究費の管理・監査に関する検討会」の主査であり、またかつてこのガイドラインの具体的内容を提案した「研究費の不正対策検討会」(注:この検討会の平成18年12月26日付け報告書=「研究費の不正対策検討会報告書」は文部科学省のホームページからダウンロードできますので、是非ご一読ください。)の主査であった者として、この「実施状況報告書」の提出をお願いする趣旨について一言申し添えたく、筆を執りました。
 いうまでもなく、公的研究資金は国民の租税によって賄われる「公金」であり、その支出は、科学の発展を願う国民の負託に応える精神に則ったルールに従って行われなければなりません。むろん、研究資金制度やその運用に関して、研究活動の実態に即さない部分があり、迅速・臨機応変の研究活動に不都合を来たす場合があることは否定できないところでありましょう。しかし、その問題はルールを軽んずることで回避されるべきものではありません。上記「不正対策検討会」の報告書において強調したように、ルール違反は、いかなる「正当な」動機・理由によっても正当化されないのであり、問題はルールとその運用を改善する努力によって解決されるべきものであります。
 ガイドラインを貫く根本精神は、第一に、上記の「研究費の不正対策検討会報告書」に書かれているように、公的研究費の適正な管理は研究機関が構築する管理・監査システムによってはじめて担保される、という点にあります。さらに第二点として強調すべきは、システムの構築と運用ルールの策定は、各研究機関が自己規律の精神と手続に従ってなされなければならず、ガイドラインはあくまでもその自己規律による制度化のための一つの目安として受け止められるべきものである、ということであります。換言すれば、各機関やそれを構成する各部局ごとに、それぞれの研究分野の特性や規模に応じたシステムとその運用ルール作りが求められているのであります。
 今回の「実施状況報告書」の作成に当たっては、このようなガイドラインの根本精神を踏まえて、貴機関の取り組みの現況、そこで直面する問題点等について中身のある記述を是非お願いする次第であります。おそらくいずれの機関におかれても、研究現場と事務サイドとの間にはさまざまな意見・認識の不一致があるに違いありません。研究活動の効率性・迅速性追求と管理・監査業務の適正性追求との間において、双方を満足させる答えを見出すことが容易でないことは我われも十分承知しているところであります。その狭間を自己規律の精神と手続に従って埋めつつ、適正な「公金」管理のシステムを生み出し改善して行く不断の努力を続けることこそ、この問題解決への「王道」であります。「実施状況報告書」は、その険しい「王道」を一歩一歩進んでおられるはずの各機関におけるご努力・ご苦心の跡を記していただくべきものであり、その場しのぎのペーパープランや研究活動の本質から乖離したシステムの構築を期待する趣旨のものではないことを、くれぐれもご理解いただきたいのであります。
 冒頭に引用しましたように、ガイドラインは「必要に応じて見直し等を行う」ものとされております。今回の「実施状況報告書」を記述式のものとしたのは、その「見直し」のための貴重な情報提供・提言を期待するからに他なりません。この点をご賢察の上、ご協力いただけますようお願いする次第であります。

-- 登録:平成21年以前 --