参考1 第41回ユネスコ総会について(答申案)(外務大臣・文部科学大臣)

3受ユ国統第20号
令和3年○月○○日

外務大臣
  茂木 敏充 殿

日本ユネスコ国内委員会会長
濵口 道成

 

第41回ユネスコ総会について(答申)



 令和3年8月11日付け報文協第8107号で諮問のありました標記のことについて、第149回日本ユネスコ国内委員会(令和3年9月15日開催)の議を経て、日本ユネスコ国内委員会は、下記のとおり答申します。


1. 第41回ユネスコ総会における政府代表について

 今次ユネスコ総会については、文部科学大臣が出席するとともに、次に該当する者が政府代表又は政府代表に準ずる資格により出席することが適当であると考える。

(1) 日本ユネスコ国内委員会委員その他学識経験者であって、今次総会の議事に積極的に貢献できる者
(2) 日本ユネスコ国内委員会事務総長(文部科学省国際統括官)
(3) ユネスコ日本政府代表部特命全権大使
(4) その他日本政府代表団が今次総会に積極的に貢献するために必要と認められる者



2. 第41回ユネスコ総会における基本的方針について

 次のような基本的方針で今次総会に臨むことが適当であると考える。

(1)一般事項
 今次第41回ユネスコ総会は、2022-2029年中期戦略(41C/4)案及び2022-2025年事業・予算(41C/5)案を策定し、ユネスコの今後8か年の方向性を決める極めて重要なものである。
 ユネスコは、現下のアフガニスタン情勢を含め、今世界が直面する感染症や自然災害、絶えることのない紛争に対して、ユネスコの理念である平和の構築、貧困の撲滅、持続可能な開発及び文明間対話の実現のため、教育、科学、文化、情報・コミュニケーションの分野の取組の方向性を示し、加盟国や国際社会を導くことが重要である。
 また、2030年までの持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けて、ユネスコにおいては、国連の専門機関として、分野横断的な取組を進め、他の国連機関及び国際機関と調整・連携し、貢献度を更に高めていくことを期待する。
 我が国としては、ユネスコにおける諸改革及び有効な事業運営が実現するよう、人的・財政的な支援を継続していくべきである。

(2)行財政
 我が国を含む加盟国が、厳しい財政状況にあること及び国連をはじめとする国際機関に対する行財政改革の必要性が認識されていることに鑑み、ユネスコ通常予算については、引き続き事務局による事業の精選・重点化及び機構定員・管理運営の合理化・改善への取組が継続されることを求める。
 また、ユネスコは、ユネスコ活動の普遍性と国際的なプレゼンスの向上のため、行財政改革を進め、国際社会において影響力を持つ米国の復帰に向け、他の加盟国と連携して、積極的に努力を続けていく必要がある。
 我が国としては、2017年にアズレー事務局長が就任して以来取り組んできた「戦略的なユネスコ改革」の成果を踏まえ、ユネスコがより効率的な組織運営と確実かつ効果的な事業の実施を実現し、ユネスコの所掌分野において、国連システム内における主導的な役割を確保できるよう、引き続き積極的に関与していくことが重要である。

3受ユ国統第21号
令和3年○月○○日


文部科学大臣
  萩生田 光一 殿

日本ユネスコ国内委員会会長
濵口 道成

 

第41回ユネスコ総会について(答申)



 令和3年8月18日付け3文科統第35号で諮問のありました標記のことについて、第149回日本ユネスコ国内委員会(令和3年9月15日開催)の議を経て、日本ユネスコ国内委員会は、下記のとおり答申します。


 我が国のユネスコ活動を踏まえた、第41回ユネスコ総会における2022-2029年中期戦略案及び2022-2025年事業・予算案等に関する方針について

1.総 論
1)今次総会の主要議題である2022-2029年中期戦略(41C/4)案及び2022-2025年事業・予算(41C/5)案は、ユネスコの今後8か年の方向性を決める極めて重要なものである。
2)両案に関しては、ユネスコが直面する厳しい財政状況や行財政改革の必要性に対して2017年にアズレー事務局長が就任して以来取り組んできた「戦略的なユネスコ改革」の成果が反映され、ユネスコがより効率的な組織運営と確実かつ効果的な事業の実施を実現し、ユネスコの所掌分野において、国連システム内における主導的役割を確保できるよう、加盟国として引き続き積極的に関与していくことが重要である。
3)また、ユネスコにおいては、現行の中期戦略(37C/4)で実施された事業の実施状況・評価結果を踏まえ、引き続き事務局による事業の精選・重点化及び管理運営の合理化・改善への取組が進められることが重要である。
4)41C/4案における包括的目標は、現行の中期戦略と同様、「平和(持続的な平和への貢献)」と「持続可能な開発(持続可能な開発と貧困撲滅への貢献)」であり、特に2030年までの持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けて、ユネスコにおいては、国連の専門機関として、分野横断的な取組を進め、他の国連機関及び国際機関と調整・連携し、貢献度を更に高めていくことを期待する。
5)我が国としては、ユネスコの事業の実施にあたり、41C/4案の地球規模の優先課題である「アフリカ」と「ジェンダー平等」を引き続き考慮するとともに、新たに優先グループとして設定された「ユース」と「小島嶼開発途上国」に留意する必要がある。このため、我が国が提唱した「持続可能な開発のための教育(ESD)」の更なる推進や本年開始された「持続可能な開発のための国連海洋科学の10年(2021-2030)」(以下、「国連海洋科学の10年」という。)、文化、情報・コミュニケーションの分野の各種事業における協力等を通じて、日本の強みを生かした国際貢献を行うことが重要である。
6)現下のアフガニスタン情勢を含め、世界が新型コロナウイルスの感染拡大や自然災害、絶えることのない紛争により混迷する中、70年前の戦後日本が平和を希求しユネスコに加盟したことを振り返り、with コロナあるいはポストコロナの時代において、人類間の格差と分断を解消し新たに世界を繋ぎ直すべく、我が国はリーダーシップをもって取り組むべきである。他方、平和の構築、貧困の撲滅、持続可能な開発及び文明間対話を理念とするユネスコの役割は一層重要である。様々な地球規模の課題に対して、ユネスコが多様なステークホルダーと連携し、教育、科学、文化、情報・コミュニケーションの各分野の視点を統合した「新しい時代における新しい繋がり」を構想、提示し、各分野の取組及び分野横断的な取組を通じて、効率的かつ効果的に対処することを求める。また、我が国としては、以上のような考え方を踏まえ、ユネスコにおける諸改革及び有効な事業運営が実現するよう、支援を継続していくべきである。

2.教育分野
1)新型コロナウイルス感染症による教育への影響
2020年以降、新型コロナウイルス感染症の世界的蔓延による教育の分断が世界的に問題となっている。ピーク時においては世界16億人の子どもたちが学校へ通えない状況であり、「世代を超えた大惨事」とも表されている。特に、コロナ以前から弱い立場に置かれた人々、例えば貧困層や女子等は更に厳しい状況に追い込まれており、ユネスコは、これらの脆弱な人々への支援を実施していくべきである。
また、コロナの影響により、2020年時点で既に進捗が遅れていたSDG4(すべての人々への包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する)の達成が更に遠のいたとも言われている。ユネスコは、SDG4の国連システムにおけるリードエージェンシーとして、41C/4案において示しているように、ポストコロナを見据えつつ、SDG4で掲げられた多様な教育目標の達成に向けさらなるリーダーシップを発揮し、SDG4を強力に推進していくべきである。これに関連して、SDG4推進の加速化のため、本年7月のユネスコ・グローバル教育会合(GEM)大臣会合において、これまでSDG4コーディネーションを担ってきたSDG-教育2030ステアリングコミッティの機能強化が決定され、新たな枠組みとしてSDG4-教育2030ハイレベルステアリングコミッティが今後設立されるところ、我が国としても今後の動向を注視していく必要がある。

2)SDG4-教育2030行動枠組み
我が国は、日本政府信託基金拠出金(JFIT)により、アジア太平洋地域における教育協力及びグローバルレベルでのユネスコ教育プログラムを通じた教育協力を長年実施してきている。特に、アジア太平洋地域においては、2015年にSDGsが開始して以来、SDG4地域コーディネーションのための年次会合であるアジア太平洋地域教育2030会合(APMED)開催を支援するなど、アジア太平洋地域のリーダーとして、当該地域における教育課題への対応等に関する議論をリードしてきている。コロナ禍による教育危機への対応のため強化された新たなSDG4グローバル教育協力メカニズムの下、引き続きJFIT等を活用して、グローバル及びリージョナルレベルでのSDG4の推進に貢献していくことが重要である。

3)持続可能な開発のための教育(ESD)
我が国の提案により国連システムの中で推進されているESDについて、我が国は、2005年の国連持続可能な開発のための教育の10年(DESD)開始時から一貫して、JFITを活用してグローバルな推進をリードしてきている。現代社会の諸課題に取り組み、課題解決に繋げるための知識、技能、態度等を身につけ、人々に新たな価値観や行動変容をもたらすESDは、今般のコロナ危機のみならず、将来起こりうる次の世界的危機へのレジリエンスを涵養するものであり、ポストコロナの文脈において更にその重要性が高まっている。
また、2020年から開始した新たな国際枠組みである「持続可能な開発のための教育:ESD実現に向けて(ESD for 2030)」の国連決議においても、ESDは、SDG4のみならずSDGsの17の全ての目標実現の鍵であることが再確認されており、ユネスコにおいては、SDGs全ての目標実現に貢献するESDの考え方をより一層広く普及していくことを求める。
国内においては、ESD for 2030に基づき、本年5月にESD国内実施計画を改訂し、多様なステークホルダーを巻き込む方策や、国内の各ステークホルダーが実施する取組等が明記され、また、学校教員向けの「ESD推進の手引」も改訂された。我が国は、国内実施計画の推進及び手引の活用等により、日本国内でのESDの更なる推進を牽引していくべきである。
また、ユネスコスクールを引き続きESDの推進拠点とし、ユネスコスクール以外の学校でもESDの実践が図られるよう推進していくことが重要である。なお、ユネスコスクールの活用にあたっては、我が国のユネスコスクールの新たな展開に向けて方向性を示した教育小委員会報告(2021年2月26日)を踏まえ、ユネスコに対しても適切な対応を求めるべきである。
以上の考え方を踏まえ、我が国は、ESD for 2030に基づき、ESD提唱国として引き続きグローバル、リージョナル及び国内でのESDの推進をリードしていくべきである。

4)国際理解、国際協力及び国際平和のための教育並びに人権及び基本的自由についての教育に関する勧告(1974勧告)
今次総会においては、「国際理解、国際協力及び国際平和のための教育並びに人権及び基本的自由についての教育に関する勧告」(1974勧告)の改訂の実施について議論、決定される予定である。我が国にとって重要な本勧告の改訂に当たっては、1974勧告の定期報告プロセスが、ESD及びグローバルシティズンシップ教育(GCED)に関するSDGターゲット4.7のモニタリングとして使用されることとなっているため、改訂の方向性を注視しつつ、必要に応じて、我が国の意向を反映させるよう議論をリードしていく必要がある。 

3.自然科学及び人文・社会科学分野
1)科学、技術、イノベーションを通じたSDGs達成への貢献
ユネスコが、これまでに政府間水文学計画(IHP)、政府間海洋学委員会(IOC)、人間と生物圏(MAB)計画、国際地質科学ジオパーク計画(IGGP)等の国際プログラムを通じて、科学分野において重要な役割を果たし、水(SDG6)、防災(SDG11)、海洋(SDG14)、生物多様性(SDG15)などの持続可能な開発目標に貢献してきたことを高く評価する。また、41C/4案における戦略目標2(A)の成果3(B)のとおり気候変動、生物多様性、水及び海洋管理、防災減災に関する知識強化を推進していくことを強く支持し、我が国の知見・経験を生かし、JFITも活用して積極的に貢献していくべきである。
なお、実施に当たっては、戦略目標2に示すように、気候変動、生物多様性の欠如、極端気象現象、自然災害、水危機の深刻化などが地球規模の大きな課題となっている中で、レジリエントな社会を構築し、持続可能な開発目標を達成するため、ユネスコの各科学事業の専門知を結集し、事業の垣根を超えた分野横断的な連携を更に進める必要がある。
加えて、戦略目標4(C)に示すように、AI、ビッグデータなどの新興技術やデジタルトランスフォーメーションの進展は、これまでに予期していない課題を生じさせると同時に、SDGsの達成を加速させる大きな機会をもたらすものであるとの認識の下、第41回ユネスコ総会で議論し採択されることが予定されているオープンサイエンス、AIの倫理といったユネスコの設定した規範に基づき、国際的な知識の共有に協力していくべきである。

(A)Work towards sustainable societies and protecting the environment through the promotion of science, technology, innovation and the natural heritage
(B)Enhance knowledge for climate action, biodiversity, water and ocean management, and disaster risk reduction
(C)Foster a technological environment in the service of humankind through the development and dissemination of knowledge and skills and the development of ethical standards

2)「国連海洋科学の10年」の推進
海洋科学調査及び研究活動に係る唯一の国連機関として、ユネスコIOCが、海洋科学の推進によりSDGs(SDG14「海の豊かさを守ろう」等)を推進することを目的とし、「国連海洋科学の10年」を国連に提案し、実施計画を策定するなど国連システムを主導していることを高く評価する。今後も、海洋科学コミュニティだけではなく、海洋政策・SDGs政策関係者、ビジネス・産業界、ドナー・財団、市民社会・NGO等の多様なセクターや国連コミュニティ全体を巻き込み、持続可能な海洋の保護と利活用における科学の重要性について普及を図ることが重要であることから、我が国としても、最も効果的かつビジビリティの向上にもつながるJFITの活用などを通じて積極的に協力すべきである。また、ESDとの相乗効果が得られるような教育関係者との協力も含め、SDGsの達成に幅広く貢献するよう分野を越えた連携を推進することが重要である。
我が国においても、本年2月に、産官学民の様々なステークホルダーの参加により、データや知見、各種行事等に関する情報共有や、関係者の合意形成のための連絡調整機能を担う協議体として「国連海洋科学の10年」日本国内委員会が発足した。今後も、同委員会と密接に連携し、我が国の取組や貢献の俯瞰的把握及び広報に努め、国際場裏における日本のプレゼンスの向上につなげていく必要がある。

4.文化分野
文化分野において、戦略目標3(D)の中の成果5「遺産及び文化的表現の多様性の保護と促進の強化」の下に更なる取組が促進されることを期待する。その中で我が国が、人類共通の貴重な遺産である世界の文化遺産を将来の世代に継承するため、我が国の文化遺産保存修復技術やノウハウを生かし、この分野での貢献を継続していくことは、我が国のプレゼンス向上につながり、国益にも資すると考える。こうした観点から、戦略的発想をもって、JFITの拠出や専門家の派遣等の協力を継続していくべきである。

(D)Build inclusive, just and peaceful societies by promoting freedom of expression, cultural diversity, education for global citizenship, and protecting the heritage

1)文化遺産の保護
戦略目標3において、多様な文化遺産の保護促進について言及されていることを評価する。
世界遺産条約に関連し、我が国では昨年度末、文化審議会において、「我が国における世界文化遺産の今後の在り方(第一次答申)」がまとめられた。同答申でも述べられているとおり、地方自治体を含む地域コミュニティとともに世界文化遺産の持続可能な保存・活用に取り組むとともに、世界遺産一覧表の多様性の増進に貢献する文化遺産の登録に向けた取組を推進することを期待する。
また、文化多様性の維持・促進の観点から、無形文化遺産の保護の重要性に対する認識はますます高まっている。現在、無形文化遺産保護条約について、その運用の制度改善を巡る議論がユネスコにおいて進行しているところ、コミュニティを中心に据えた無形文化遺産の保護の重視という同条約の精神を尊重し、同条約が本来の目的を達成できるよう、我が国としても引き続きその運用の制度改善に積極的に参画すべきである。さらに、設立10周年を迎えるアジア太平洋無形文化遺産研究センターの取組を通じ、アジア太平洋地域の豊かな無形文化遺産の保護促進に貢献していくことを期待する。

2)文化多様性
文化多様性の促進は、非常に重要であり、我が国としては、文化多様性条約の締結に向けた検討を進めるとともに、今後、世界の文化多様性を積極的に促進するべきである。また、新型コロナウイルス感染症により疲弊した文化の発信を積極的に進めることにより、文化多様性を促進する役割を果たすことが重要である。

3)創造都市ネットワーク
創造都市ネットワークについて、我が国からは、現在9都市が加盟し、文化多様性への理解増進を図るとともに、国際的なネットワークでの交流及び知識・経験の共有、創造性(creativity)を核とした都市間の国際的な連携によって、地域の創造産業の発展を図り、都市の持続可能な開発を目指す取組として、関心を持つ自治体が増えている。本年の新規申請公募では、SDGsに対してどの様に寄与しているかが登録基準として追加されているなど、SDGsとの関係を意識した事業実施を評価するとともに、今後の発展に期待する。また、我が国においても、優れた取組を行う、本事業にふさわしい自治体が積極的に登録を目指せるよう検討することが必要である。

5.情報・コミュニケーション分野
1)分野横断的取組の必要性
ユネスコの設置目的である国際平和と人類の共通の福祉という目的を促進するために、「コミュニケーション」が果たす役割の重要性を考慮の上、各事業の推進方策について検討する必要がある。
情報コミュニケーション技術(ICT)の利用は、教育、科学及び文化の各分野の事業と密接な関連を有するものであり、分野横断的な活動が推進されることが必要である。その意味で、ユネスコにおいては、各セクターとの連携・協力の方向性をより明確に打ち出していくことを求める。ユネスコとして、教育、科学及び文化を通じた情報アクセスの向上や情報格差の是正のための能力開発、あるいは知識社会を見据えた知の体系化や知識の構造論といった本質的なところで、その役割を果たすことが重要である。

2)ユネスコ「世界の記憶」事業
ICT技術が、経済的利益と利便性の優先の中で、商業ベースで急速に拡大する時代において、国や地域の文化・歴史・言語等のアイデンティティの喪失を防ぐことは重要であり、文化多様性の確保のため、デジタル記録をはじめとする様々な記録物の、記憶としての保存をはじめ、ユネスコによる本事業を通じた、記憶や文化、歴史を伝えていくための国際的なコミュニケーション基盤の整備に対する努力を期待する。
なお、我が国では、本事業について2011年から2017年までに合計7件の国際登録と1件の地域登録がされており、地方自治体においては、本事業を地域振興政策と連携させた取組も生まれている。
本事業は、本年4月、ユネスコ執行委員会において、加盟国政府を通じて申請すること、加盟国からの異議申し立て制度を新設し、問題があれば当事国間で対話を行い解決するまで登録を進めないこと等を含む制度改正がなされたところであり、それを踏まえ、我が国においても国内の審査体制が整備されたところである。今後ユネスコとして、国際登録・地域登録等の区別なく、制度改正の趣旨を踏まえた対応を行うとともに、日本政府においても、我が国としてふさわしい記録物を選定・登録することで、国際社会における日本への深い理解の向上を図り、記録物を利用した国内における地域活性化等に寄与する取組を推進することが重要である。

6.普及分野
1)パートナーシップ
限られた予算の中でユネスコ事業の実施・普及を効果的に推進するために、加盟国政府・国内委員会とともに各国のユネスコクラブ・協会、NGO、学校・教育機関、メディア及び民間企業とパートナーシップを構築し、連携・協力を一層強化していくことが必要である。
そのためには、引き続きユネスコ本部とユネスコ国内委員会との連携を強化するとともに、各国における民間ユネスコ活動の推進や、ユネスコスクール・ネットワークを通じた学校レベルでのユネスコの理念及び活動の普及、ユニツイン/ユネスコチェア事業を通じた高等教育レベルでの交流や協力等を図っていくことが重要である。
さらに、SDGsに対する関心が高まる中、SDGsに取り組む団体等多様なステークホルダーとの連携も必要であり、ユネスコは、国際・地域・国レベルにおいて、このようなパートナーシップ形成の促進に努めるべきである。

2)若者のユネスコ活動への参加
若者が次世代を牽引するステークホルダーであることに鑑み、ユネスコ活動を若者にとって大きな魅力と訴求力を有するものとしていくことが、ユネスコの将来を決定付ける重要な鍵を握っていると言っても過言ではない。働く世代や退職後のシニア層にとって魅力的なユネスコ活動の在り方を追求するとともに、子供や若者層を対象に展開するユネスコ活動の充実を図り、世代を超えて持続可能なユネスコ活動を推進する必要がある。ユネスコの41C/4案において「ユース」が新たな優先グループとして位置づけられたことを踏まえ、若者の意見を国内のユネスコ活動に反映させつつ、ユネスコ等における国際的な活動へも繋げられるよう活性化すべきである。

3)企業のユネスコ活動への参画
持続可能な社会を構築していくことが企業活動にとっても極めて重要との観点から、企業による主体的なSDGsへの取組が、社会貢献活動の一環として行われるにとどまらず、本業として、自らのビジネスを通じて社会活動の解決に取り組む動きにも進展している。こうした大きな変化を踏まえ、積極的にユネスコ活動に民間企業の活力を取り込むこと、またコミュニケーション分野を通じたメディアとの連携を通じて、国際社会や各国でのユネスコの可視性を高める努力が必要である。
ユネスコにおいては、国際・地域・国レベルで、企業のユネスコ活動への参加促進やユネスコ活動への理解と認知度を高めるための役割を果たしていくことを求めたい。また、我が国においても、日本の産業界がユネスコ活動に積極的に参画できるよう、国内における取組を推進するべきである。

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