サステナビリティ・サイエンスの概要と最近の動きについて

日本ユネスコ国内委員会第126回自然科学及び第115回人文・社会科学合同小委員会配付資料

1.サステナビリティ・サイエンスとは

「サステナビリティ・サイエンス」は、喫緊の地球規模課題の解決に向けて、細分化した学問領域ごとに取り組むのではなく、自然科学と人文・社会科学の多様な学問分野の知を統合して取り組むことを促すアプローチである。

「『サステナビリティ・サイエンス』に関するユネスコへの提言」
(平成23年8月3日 日本ユネスコ国内委員会)のポイント

地球規模の諸問題の解明には、自然科学の知見が不可欠だが、価値観を変えることも含めた真の問題の解決には、人文・社会科学を含めたすべての学問領域の協力が不可欠である。
科学全体を、「持続可能な地球社会という目標を達成するため」のものとなっているかどうかという視点から問い直し、持続可能な地球社会の構築につなげていかなければならない。
今、地球規模の課題に取り組むために必要なのは個別の分科学としての科学ではない。南北格差の是正、世代間の衡平性の確保に加えて、多様な人間の価値観を考慮しながら、人類全体に奉仕するべきものであると同時に、生態系を損なうことなく、地球、社会、人といった異なる時空間スケールでの持続可能性及びwell-beingの追究を目指した統合的な科学の取組が必要なのである。それは、人文・社会科学を含む全ての学問分野の知を統合した新しいアプローチとしての科学の取組である。

2.これまでの取組

○2013年4月
サステナビリティ・サイエンスに関するアジア太平洋地域ワークショップ(第1回)(於:クアラルンプール)
○2013年9月
サステナビリティ・サイエンスに関する国際シンポジウム(於:ユネスコ本部)
○2013年11月
第37回ユネスコ総会(於:ユネスコ本部)において、ユネスコの次期中期戦略(37C/4)及び事業・予算(37C/5)に、サステナビリティ・サイエンスの概念が盛り込まれる。
○2015年3月
サステナビリティ・サイエンスに関するアジア太平洋地域ワークショップ(第2回)(於:クアラルンプール)

3.今後の取組予定

(1)サステナビリティ・サイエンスを世界に普及させるためのシンポジウムの開催

これまでのアジア・太平洋地域における取組等を踏まえ、よりグローバルな取組へと発展させるため、サステナビリティ・サイエンスの普及と政策決定者へのメッセージ発信を目的とする会合(今後3年間に3回程度)を、ユネスコ事務局(自然科学局、人文・社会科学局及び教育局)や他の加盟国、関係の国際機関等との協力により開催する予定。

(2)アジア・太平洋地域におけるサステナビリティ・サイエンスの考えを取り入れた科学事業の推進

日本ユネスコ国内委員会は、ユネスコへの信託基金を活用し、ユネスコ・ジャカルタ事務所を通じて、アジア・太平洋地域の地球規模課題の解決に資する様々な科学事業を実施してきた。※
今後、これまでの実績を踏まえ、同地域において、政府間海洋学委員会(IOC)、国際水文学計画(IHP)及び人間と生物圏(MAB)計画等のユネスコの主要科学事業において、サステナビリティ・サイエンスの考えを十分取り入れた活動をユネスコ本部とも連携し実施していくこととしている。

※これまでの主な取組

(1)政府間海洋学委員会(IOC)
  有害藻類や海洋生物の毒、また海洋汚染に関する一般向け教材の開発。研究者の能力開発のためのワークショップ等。
(2)国際水文学計画(IHP)
  淡水分野の専門能力開発・人材育成を目的するトレーニングコースの実施。IHP活動の実施を円滑化させるためのネットワークの促進等。
(3)人間と生物圏(MAB)計画
  生物多様性の保全、持続可能な発展、学術研究支援を目的として、ユネスコが指定する生物圏保存地域(ユネスコエコパーク)を活用し、自然と人間社会の共生に必要な教育事業や科学調査事業、政策形成支援等を実施。

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