日本ユネスコ国内委員会第516回運営小委員会議事録

1.日時

令和5年8月4日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省12階国際課応接室(対面とオンラインのハイブリッド形式での開催)

3.出席者

〔委員〕
濵口委員長、井上委員、大枝委員、沖委員、佐藤委員、道傳委員、道田委員※、吉田委員
(※専門小委員会委員長代理)
〔運営小委員会に属しない委員・外部有識者〕
髙橋委員、溝内委員、林川ユネスコ事務局ジャカルタ事務所所長
〔事務局〕
岡村事務総長(文部科学省国際統括官)、匂坂副事務総長(同省国際交渉分析官)、白井事務局次長(同省国際統括官付国際戦略企画官)、小野事務総長補佐(同省国際統括官付国際統括官補佐)、その他関係官
 

4.議事録

【濵口委員長】  本日は御多忙中にもかかわらずお集まりいただきまして、ありがとうございます。定刻になりましたので、会議を開始させていただきたいと思います。
 最初に、定足数の確認をお願いいたします。
【小野補佐】  事務局から失礼いたします。
 本日は、出席の委員が7名で、過半数ですので、定足数を満たしてございます。
【濵口委員長】  ありがとうございます。
 それでは、ただいまから日本ユネスコ国内委員会第516回運営小委員会を開会いたします。
 本日は、前回同様、日本ユネスコ国内委員会運営規則第21条の「委員長は、必要と認めるときは、運営小委員会に属しない委員、その他の関係者を会議に出席させ、その意見をきくことができる」という規定に基づき、運営小委員会のメンバーに加え、各専門小委員会の委員長代理にも議論に参加していただくこととしたいと思います。このため、本日は、科学小委員会委員長代理の道田委員に御出席をいただいております。どうぞよろしくお願いします。
 また、ヒアリングを実施するため、ユネスコ・ジャカルタ事務所の林川所長、髙橋委員、溝内委員に御出席をいただいております。よろしくお願いいたします。
 本日の会議は、対面とオンラインのハイブリッドでの開催となります。傍聴及び取材を希望されている方に対しては、国内委員会の規定に基づき、YouTubeを通じて公開いたします。御発言は、そのまま議事録に記載され、ホームページ等で公開されますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、本日の会議の配付資料について、まず事務局から説明をお願いいたします。
【小野補佐】  事務局から失礼いたします。
 本日の配付資料は、Webexの画面で共有させていただいておりますとおり、1つのPDFでお配りしております。配付資料の中身の構成としましては、配付資料として資料1から4、附属資料、参考資料という構成になってございます。
 
【濵口委員長】  ありがとうございます。
 それでは、議題に入ります。
 議題1は、「国際情勢を踏まえたユネスコ活動等の推進について」であります。
 初めに、事務局から資料の説明をお願いいたします。
【白井企画官】  失礼いたします。資料1を御覧いただければと存じます。
 これまでも、昨年11月にこの運営小委員会で論点整理をいただきまして、また、前回の運営小委員会でも、道傳委員をはじめとするヒアリングを行わせていただきました。そういったものを踏まえまして、今後の議論のたたき台という形で、こちらの「国際情勢を踏まえたユネスコ活動等の推進について」ということでメモとして作成させていただいております。ごく簡単に内容を御説明させていただきます。
 1つ目が、直近の国際情勢の変化及びユネスコが目指す普遍的な理念という点です。最近の国際情勢でございますけれども、ロシアのウクライナ侵略が続く中で、特に、これは道傳委員からも御指摘をいただきましたが、「グローバル・サウス」の台頭等に伴って、国際的な合意形成が更に複雑化している。7月には、米国が、特にAI等を中心とした規範設定に参加をしたいということで、ユネスコに再加盟をしました。特にユネスコにおける合意というのは、先進国を中心としたG7やOECD等の枠組みと異なって、世界のほとんど全ての国による合意であって、更に米国が加わったことで、より実効性のある合意となっていくということが見込まれております。また、「南・北」だけでは捉えられないような、「南・南」協力であるとか、三角協力とも言われるようですけれども、「南・南・北」の協力の枠組みもあって、合意形成が更に複雑化しているという状況があるかと存じます。
 さらに、紛争や貧困、気候変動、世界経済の安定といった課題に対応していくためには、各国間の連携が必要になってくるということがございます。人的・財政的資源に乏しいSmall Island Developing States、SIDSと呼んでおりますけれども、島国、それからアフリカへの支援の必要性。
 加えて、デジタル化の進展に伴って、いろんな情報が瞬時に流通する一方で、誤情報等の問題も顕在化してございます。
 科学技術の分野では、例えば、AIであるとかニューロ・テクノロジーといったような新しい技術に関するような議論というのも、ユネスコの場で更に活発化しているという状況がございます。
 一方で、こういった国際情勢の変化と対照的に、ユネスコとして変わらない理念ということもあるかと存じます。例えば、人間の尊厳、幸福の尊重、持続可能な開発、共生、文化多様性、遺産の保護といったような観点かと存じます。
 2ページ目にお進めいただきまして、こういった国際情勢の変化あるいは普遍的な価値というものを踏まえて、ユネスコにおける日本としてのリーダーシップの発揮というのを2つ目の論点として掲げてございます。
 特に規範設定に関する議論の主導ということが重要ではないかということは、これまでも御指摘をいただいたところでございます。ユネスコ等における規範設定を主導することで、日本の社会・経済・文化的な価値を適切に反映して、日本への裨益も確保するとともに、国際社会にも貢献していく。
 さらに、ユネスコにおいて知的・人的貢献を強化するとともに、日本のプレゼンスを向上する。各種の政府間会合や専門家委員会、各種事業等に若手の研究者を含めた人的貢献を通じて、日本のプレゼンスを強化していくということ。実際、道田委員はIOCの議長という形で日本のプレゼンスの向上にも大きく貢献していただいております。また、こちらもこの運営小委員会でも御議論いただいてまいりましたけれども、ユネスコ事務局に日本から研修生を派遣したりとか、あるいはユースを積極に派遣することで、将来的な人材育成にもつなげていくということもあろうかと存じます。
 加えて、ユネスコの事業に対して日本が戦略的かつ積極的に関与していく。日本から任意拠出金という形でお金を出しておりますけれども、それをより戦略的に用いていく。また、ユネスコに対して、事業の在り方についても、日本の実情も踏まえつつ、積極的に精選や重点化も進言していったらどうかという点を書いてございます。
 3点目です。国内活動における留意点ということでございます。
 ユネスコ活動のネットワークのさらなる活性化、これは以前から建議等でも御指摘いただいているところでございますけれども、登録・加盟のみを目的としないで、その後の取組が大事である。特に、ユネスコ登録事業等と、産業界、ユースを含めた多様な主体・年代との連携や共感が大事である。ユネスコ登録事業等の相互連携、例えばユネスコスクールとユネスコエコパークであったり、ユネスコ世界ジオパークであるとか、そういった連携が大事である。さらに、登録事業、本来、多くのものが国際的なネットワークをつくっていくということが重視されております。国内で登録されたから終わりということではなくて、国際的にも連携を進めていったらどうか。また、民間のユネスコ活動ということで、実は同じような活動をされている方もたくさんいらっしゃいます。そういった方々と連携していったらどうかという点を書いてございます。
 一番下の丸になります、ユネスコ登録事業における関係者の役割の明確化と書いてございます。登録・加盟、これ、本来、多くのものが各申請者、例えば自治体であったり、ユネスコスクールであれば学校であったりという方のイニシアチブの下で行われてございます。そういったものに対して国としてどこまで関わっていくべきなのかということは、1つ考えたい論点でもございます。例えば、国として必ず通るような厳しい審査を行っていくのか、それとも民間の取組を後押しするような形で緩やかに審査を行って、それをなるべく支援していくのか、いろんな考え方があると存じますので、その辺りも是非御議論いただければと思っております。
 最後、3ページになります。ユネスコ活動の認知度、連携強化のための戦略的な広報の強化という点です。ここは特に治部委員にも御指摘をいただきましたけれども、メディアとの積極的なコミュニケーションによって、ユネスコ、ユネスコ登録事業等の認知度を向上させていくべきである。それから、ESDや防災、海洋等、日本が強みを有する分野についての活動の好事例等を収集して発信していったらどうか。産業界を含めた多様な主体、ユースを含めた多様な年代との連携強化を促進するための広報の在り方、これを充実していったらどうかという点を書いてございます。
 こちらにつきましては、また本日の御議論も踏まえまして修正をして、更に委員の先生方の御意見も踏まえて、今後、9月以降の議論に向けて準備をしていきたいと考えてございます。
 説明は以上でございます。
【濵口委員長】  ありがとうございました。しっかり今お話しいただきましたが、世界情勢が激動を続ける中で、改めてユネスコの基本的な価値を堅持するとともに、今日的な活動をどういうふうに展開するかというのが問われる時代になってきていると思います。お茶の言葉だったと思いますが、不易流行という言葉があります。現在の社会に適応したユネスコ活動というのをよくこれから議論させていただきたいなと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします。
 それでは、ヒアリングに入ります。まず、林川事務所長から、「これからの時代におけるユネスコ活動の推進」について御発表いただき、質疑応答の時間を設けたいと思います。その後、産業界との連携方策について、髙橋委員、溝内委員から御発表をいただき、質疑応答をまとめてお願いしたいと思います。
 それでは、発表に入ります。
 初めに、林川事務所長、どうぞよろしくお願いいたします。
【林川ジャカルタ事務所長】  ありがとうございます。おはようございます。今、御紹介にあずかりました林川眞紀です。ユネスコのジャカルタ事務所に7月の頭にパリの本部から赴任してまいりまして、約1か月経とうとしているところです。今日は、ユネスコ活動、現在の取り巻く時代における変容の中でユネスコが今後どうしていくかということについて、考えを共有させていただく機会を頂き、ありがとうございます。
 私がこれから触れようと思うことは、ほぼ既に白井企画官からかなり大まかにまとめていただいている感じもあるんですけれども、どちらかといえば、例えば皆様からの御質問がもしあれば、それにお答えできればと思います。
 最初に、今、白井企画官から最近の国際情勢の変化を大体おさらいしていただいて、それに対して、現在、ユネスコはどういう対応を取っているかというのをざっとまとめてみました。もちろん、これは全てやっていることをまとめているわけではないんですけれども、ちょっとキーポイントという形で、最近特に話題になっていたりとか、加盟国からの注目を集めている課題・問題点について明記したんですけれども、例えば米中対立ということですけれども、現在、ユネスコでは米中欧露と私は言いたいと思うんですね。ここ1年間の例えば執行委員会なんかの議論を見ていると、今まで、7月25日まではアメリカがいなかったので、ほとんどが中欧露の世界で、EU諸国対中国対ロシア、ロシアが台頭してきたのはウクライナ危機の問題もあったせいでもあるんですけど、それでも、いずれにしろ、ロシアという国は、加盟国の中でもかなりユネスコの普遍的価値観に時折疑問を投げかけるような国でして、それに対して欧州が対抗して、中国はその辺の中立的な立場を取ろうとしたりする議論がよく繰り広げられてきて、これからアメリカが入ってくることによって、またそれがいろいろと議論の仕方・方向性が変わってくるのではないかなと思うんですが、これはまだアメリカが戻ってきたばかりなので、今後、秋の執行委員会から様子を見ていく感じだと思うんです。
 ただ、1つ大きな特徴として、特に中国とヨーロッパの対立が大分長く続いておりまして、その対立関係を何とか解消する妥協点として、つい最近、中国に新しいCategory 1 Institutes、要するにユネスコの正規予算から出ている研究所ですね、今、パリに既にある国際教育計画研究所とか、ハンブルクにある生涯教育の研究所とか、同じレベルの研究所として、新しく理数科教育センターを上海に開設する方向性が決まりました。これは結局、中国がずっと、ジュネーブにある国際教育ビューローですね、本来はカリキュラム関係の仕事をしているセンターですけれども、そこが今ジュネーブにありまして、ジュネーブから本拠地を変える、所在地を変える、移転させようという話になったときに、中国がうちにどうかと。それに対してヨーロッパ諸国が非常に抵抗したと。カリキュラムというのは非常にドメスティックな国内の教育の政策や政治的に絡みやすいということで、非常にその辺が敬遠されて、長い間、対立が続いていたのが、ようやくちょっと妥協点という感じで新しい理数科教育センターを上海に開設する方向性に至りました。このように、やはり教育とか文化とか、ユネスコの本来のマンデート、ユネスコがやるべき仕事の本来は政治的関与を、色を付けるべきではないところなんですが、結局そういう話が出てきてしまって、でも、その妥協点も何かしらプログラムに関係した方向で解決していこうという努力は今でも見られている感じで、その中で事務局が最近かなりハイレベルな交渉舞台に関わるようになっているのは、ユネスコの中でもここ10年ぐらいの間に随分変わってきたことではないかなと思います。
 でも、その一方で、例えばつい最近、1974年勧告、これは「国際理解、国際協力及び国際平和のための教育、人権、基本的自由における教育に関する勧告」ですけど、簡単に言えば、1974年勧告と通称で言われているんですが、これの改正、アップデートですね、今の世の中を反映する内容にもう少しアップデートするという作業がここ2年ぐらいずっと続いておりまして、世界中で加盟国ともコンサルテーションしながら、ようやく改正版が出来上がり、ここでは大変日本の貢献も頂きましてありがとうございます。ようやく2回の加盟国とのディベートを終えて、今度、今年の11月総会で採択される予定なわけですが、これもやはりこの2年間におけるコンサルテーション、加盟国のみならず、例えばユースとか青少年たちとのコンサルテーション、それからNGO、市民団体とのコンサルテーションは、かなり長く深くやっていて、これはやはり1974年勧告が非常に今の世の中に必要であるという意識の高さが見られると思います。この勧告のコンサルテーションにおいてもいろんな加盟国の対立も多少見られたんですけれども、やはり目指すところは国際理解、国際協力、国際平和ということで、かなりいい方向に最終的には落ち着いたのではないかなと思います。
 もちろん、今、ユネスコの特に事務局の中で一番盛り上がっていることはアメリカのユネスコへの復帰でして、先週7月25日にようやくアメリカの国旗をユネスコの本部で掲げることができまして、これで多分、ユネスコは国連の中でも一番加盟国の多い非常に普遍的な組織になったのではないかと思います。このアメリカの復帰のおかげでユネスコの予算的な状況もかなり一変しまして、事務局としては非常にうれしいことですけれども、大体1億ドル相当ぐらいの予算のアップになりまして、来年度からの新しい予算年度、プログラム年度が始まるのですが、それに向けて、今、次のプログラム予算のアップデートをしているところで、かなりプログラムの充実化を図れるのではないかと思います。もちろん、アメリカの復帰によって、またプログラムの方向性に影響が出てくる可能性もあると思います。アメリカが加盟国として入った上で、アメリカの政治的関心というのが表立っては出てこないでしょうけれども、でも、いろいろと要所、要所でそれが反映されていく可能性があり、これがまた更に特に中ロの間と対立というか、少し緊張感が生まれる可能性もなきにしもあらずということで、非常に事務局としても慎重に動いているところです。もちろん、優先順位、予算が増えたことによって優先課題の強化ができるので、今、事務局としてはそれをまとめているところなんですが、やはり優先課題は主に本当に国際情勢を反映したものが多くて、例えば紛争地域での支援の強化とか、それから防災ですね、自然災害への対応に対する支援の強化とか、また、世界遺産の保護。これも、今までみたいに単に遺跡そのものを保護するというものではなくて、遺跡と例えばその周りにおける紛争地域における遺産の保護の仕方または自然災害からの防災における世界遺産の保存の仕方などの協力がどんどん進んでいくのではないかなと思います。
 また、もちろん、加盟国間の対立のほかに、いろんな新しく出てきた課題がありますよね。ニューロ・テクノロジーですね。急速な人工知能の進出に全てのセクターでかなり混乱・困惑が広がっているのは明らかで、特に教育に関しては、教育の現場でどうやってAIが学習過程に影響してくるのかという議論が大分進んでいるんですが、実は、ユネスコが人工知能の倫理に関する勧告を2年前に出してから、かなりユネスコは国連の中でもAIに関する議論はリーダーシップを取り出しているのは確かです。この辺、ユネスコは今まで教育とか文化しかないと思われたところで、AIに関するリーダーシップを発揮できているのはいいことかなと思うんですが、ただ、倫理に関する勧告を出したということで、それがどのように実施につながれていくのかというのがちょっとまだ不明なところであって、実は意外にも教育におけるAIの影響に対する議論があまり深くされていなかったことで、急遽、今年5月に教育大臣会議を開いたぐらいでした。だから、まだかなり新しい議題なんですけれども、でも、この大臣会議のおかげで、今、ガイドライン作成に向かっていて、ほかに、科学技術の教育、社会、文化、コミュニケーションなどにおける影響も、今、各セクターでリサーチが進んでいる状況です。ですので、ここはユネスコとしては、実はAIなどの利用に関する活動だけでなく、やはりユネスコが本来非常に強みとされている勧告とかガイドラインとか指針作りの作業に非常に関わってくるのではないかなと思っております。
 なお、もちろん自然災害、地球温暖化の深刻化が進んでいる中で、防災に関する活動も非常に拡大・強化されているんですが、特に、私は今、ジャカルタにおりますけれども、このジャカルタ事務所は、そもそもアジア太平洋地域における防災、DRRの地域リーダーとして長年活動してきていまして、これを私も個人的に続けたいと思うんですが、このDRR、防災というのが必ずしも自然科学分野だけでなく教育や文化の中にもかなりつながってきていて、活動の仕方に(音途切れ)地球温暖化、自然災害の深刻化によってユネスコの中でも横断的な事業につながっているという、どちらかといえば、積極的につなげていこうというよりは、否応なしに横断的な作業の方向性に向かっていると言ったほうがいいのかもしれませんが、要するに、ユネスコのプラン、かなりプログラムごと、分野ごとに特化してきた作業の仕方ではこのような地球規模の課題には対応できないという、皆、事務局の中でもそういう気づきがあったといってもいいかと思います。
 この中でも、今、ユネスコとして教育局が立ち上げて推進しているものですが、去年の国連事務総長のイニシアチブであった教育変革サミットの中で立ち上げられたGreening Education Partnershipを、大々的に推し進めていまして、これは教育セクターがもちろん中心になっているんですけれども、実はこのパートナーシッププログラムは、ユネスコの内部では自然科学やコミュニケーション、そして文化局とかなり密接に作業しており、また、ほかの国連機関もパートナーシップとして、UNEPとかUNFCCCとかかなり大々的に入っています。もちろんこれは、ユネスコにとってみれば、後ほど話しますが、ESDの枠組みの中での一つのパートナーシップという形で立ち上がっています。ユネスコとしては、これを教育だけのプログラムという形に制限されるものではなく、全てユネスコの事業に関わるものとして進めていく予定でいます。
 あと4点目に、今、国際情勢で一番、ユネスコとしては今まで不慣れな分野だったんですが、国際情勢の中でやはり紛争が広がっているウクライナ、アフガニスタン、南スーダンなど、またほかの中東湾岸地域とか、今、西アフリカでまたいろいろと情勢、政治状況が不安定になってきていますけれども、そういう分野って緊急事態にあまり向いていないんですが、いかに貢献していくかという議論が大分ここ数年続いていまして、教育と文化の分野においてはかなりメカニズムが出来上がってきたかと思います。要するに、緊急事態、紛争状況下でも、特に教育の権利はそこで否定されるわけにいかないと。これは多分、特にここ2,3年でコロナとかも起きて、どんな状況でも教育・学習が続けられる状況にシステムを変えていかなきゃいけないという作業が大分広がったおかげで、例えばウクライナの紛争が始まったときも教育としてはすぐに乗り込むことができ、最近のマイクロソフトとかグーグルとか、そういう企業と一緒に仕事ができるようになってきたかと思います。文化のほうでも、やはり紛争地域、紛争によって文化遺産が特に被害を受けて、それをどのように保護するか、もちろん規範作りだけでは決して守れないので、具体的にどういう支援に乗り込むかということで、規範作りをいかに実践に持っていくかという支援の仕方に移行しているため、ユネスコとしても大分こういう紛争地域での活動が広がっているようになっています。
 次のスライドをお願いします。ですので、だんだんユネスコとしては、今までもちろん5つの特定の分野で仕事をしてきて、かなりばらばらに仕事・作業をされてきていることが長年続いていたんですが、その中でもちろん一番大きいのは教育なんですけど、一番有名なのは文化という形で、なかなか横断的検証作業をしてこなかったんですが、現在、ユネスコを取り巻く国際情勢の変化によって、必然的に必要に応じて横断的に取組を進めていかなきゃいけないという状況になっています。
 実はユネスコとしても、もちろん加盟国の強い依頼で、ずっとインターセクトラルという形で作業しろと。過去には何度かインターセクトラルプログラムというプログラムまでわざわざ立ち上げて、5つの各分野の局が作業しようと。ちょっと人工的にやらされることも多かったんですが、そういうふうにやらなきゃいけないといわれたときにやっぱりうまくいかないもので、予算的にも分野ごとにしか予算配分がされていないので、予算の共有という形になると教育が一番多くて、それで社会科学が一番少なくて、予算のバランスが悪いことによってなかなかうまく協力できなかったんですけれども、最近、ここ数年は、特にこの2年ぐらいの間ですね、かなり横断的に事業に取り組まなきゃいけないということが、別にプログラミングというか、計画を立てる段階でそうしろと言われたのではなく、必然的にこういう流れになってきたと思います。
 ここで1つちょっと例を挙げてみたんですけど、例えば文化局が世界遺産・文化遺産の保存・管理事業をきちっと行って、この文化が最終的には今の特にSDGsにどのように貢献できるのかとなると、すぐには結びつかないんですが、やはり文化事業をすることによって、今、例えばGPSマッピングをしなきゃいけない、そのためには教育分野でもっと理数科教育を強化して、それがまた高等教育を通じてGPSの専門家を育て上げていくとかいう事業がきちっと、プランニングする際にそれがかなりはっきり出てきて、そうすると、きちっとこの文化遺産保存の事業が持続可能な形になっていくと。そのほか、例えば水資源管理、これは特に、もちろん全体的に持続可能な教育を通じて水管理の話とか防災の話をしているんですが、なぜ水管理なのか。実は私も今週の初め、ボロブドゥール寺院へ視察に行ったんですけれども、そこでも水管理の仕事の知識が非常に必要であるということを聞いてきまして、ですので、例えば文化遺産一つ、保存一つの事業を取ってみても水管理の作業が必要になってくる。これはユネスコの本来のやり方でいえば自然科学局が独自でやっていたことなんですけど、これからは自然科学局と文化局が手を結んで文化保存の活動に従事しなくてはいけないという意識が非常に強くなってきています。もちろん、そうなると教育でも、例えば遺跡の周りに住んでいるコミュニティに対して、水資源の管理の仕方を学び、どうしてそれが重要であるのか、どうしてそれが遺跡の保存に関係するのか、それから自分たちの生活にどう関わってくるかという形でESDの事業に結びついていくという形に、自然の流れでそうなってきていることが多く、非常にいい方向に向かっているのではないかなと思います。
 もちろん、この背景には、国際情勢のみならず、やはり人々の意識改革というか、意識の変化が見られることと、それから、特に今、私がいるジャカルタ、インドネシアは、ほかに4か国カバーしているんですけれども、やはりこれらの国の教育レベル全般の向上も非常に大きな要因があるのではないかなと思います。ただ、もちろん、教育の発展だけを待っているわけにもいかないので、全ての分野同時進行になるんですけれども、同時進行するためにも、改めて全ての文化、自然科学、教育という、今までだったら別々に活動していたところをきちっと結びつけていって、最終的にはSDGsに貢献できるようにという流れを作っていく必要があって、それは多分、ユネスコの中でかなり進んでいるのではないかなと思います。
 最後のスライドになると思うんですが、ESDに特化したのは、やはりESDというのが日本の優先課題でもあると。一番、ESDにおいて日本の支援をユネスコは頂いているんですけれども、私としては、ESDは決して日本だけのものではないし、世界でユネスコの中だけでもなく、全てユネスコの5つの分野をきちっと結びつける唯一のアンブレラですかね、傘下だと思うんですね。概念としてはユネスコ全体の理念にもすごくマッチしているところがあって、でも、それは意外と事務局の中で気づきがないというのがあって、それが多分、この間のサミット、それからこれからSDGサミット、今年9月にありますけれども、それらの議論の中以外にも出てきていると。また、ESDに関しては、去年、ESD for 2030 Global Networkが立ち上がったわけですけれども、非常に加盟国から大きな支持を受けていて、これは別に教育のプログラムだからというだけでなく、現在のいろんな課題全てを取り込める唯一のアプローチであるということで非常に強い支援を受けています。
 もちろん、もう一つ大きな貢献といいますか、ESDの推進をプッシュしてくれているのは、多分、去年行った教育変革サミットでして、そのときにやはり国連事務総長が自分のビジョンステートメントを出したときにESDのレファレンスをしています。やはりそのレベルから加盟国にきちっとコミットメント、フォローアップをしろという提案が出ると、そこで大きく前に進めるように道が開かれたのではないかなと思います。ESDのアプローチの再評価が行われたということです。
 そして、そのときに、特に今の世の中の状況を踏まえて気候変動に関する議論に非常にフォーカスされていったんですけれども、飽くまでもそれは最終的にESDに貢献するということで、ユネスコの事務局長もそのように継承しています。この(音途切れ)も、今回、今年から教育パビリオンが常設化されることになりました。これもやはり、今までESDの概念が根底にあって、それで多少地球規模課題にもっとシステマチックに対応できるように、取り上げられるようにするために、COP28でも教育パビリオンが常設化されるようになり、そこでユネスコがかなり中心的な役割で、今、準備を進めています。もちろん、ほかに、実はESDは1974年勧告の中にもはっきりと参照されていまして、今回は、1974年勧告の改正にも、ESDの分限ですね、概念と、それからESDの参照がかなりされていて、国際理解、国際協力、国際平和にはSDG4.7「教育を通してSDGs達成に貢献する」がやはり中心になって進めていくべきであるという認識が強まってきているんだと思います。
 このスライドにおいて最後になりますけれども、ユネスコスクールですね、ユネスコではASPnetと言っていまして、今後、もしかしてこの名称を変えるのではないかという気もするんですが、ユネスコスクールを通じてESDの促進もあるんですが、それ以外の活動ももっと広めてもらう、大事なネットワークとして強化していく予定があるんですが、ここでESD促進といっても、やはりユネスコスクールを通じて促進していくものはいわゆる純粋に学校の中の教育というものだけでなく、ネットワークで推進していくものは全て横断的な課題であって、その中で文化、社会、人文科学、通信、コミュニケーションなどを進めていく上に、やはりESDの枠組みは非常に有用ではないかなと思っています。
 こんな感じでざっとまとめてみたんですが、私としては、やはり事務局内にかなり長くおりますので、発表というよりは、皆様からの御質問にお答えする立場で今日は参加させていただけたらなと思っていましたので、もし御質問、御意見ありましたら、できる限りお答えできればと思います。ありがとうございました。
【濵口委員長】  林川事務所長、ありがとうございました。
 それでは、ただいまの御発表について、御意見、御質問等ございましたら挙手をお願いいたします。オンラインにて御参加の委員におかれましては、挙手ボタンを押していただきますようお願いいたします。いかがでしょうか。沖委員、お願いいたします。
【沖委員】  どうも非常に貴重なお話ありがとうございました。今のお話の中で、水資源管理というのと文化遺産の保存・管理というのを結びつけられたところに非常に関心を持ちました。私、水が専門で、この会議にもIHPの担当ということで参加しておりますけれども、水資源管理というのが自然科学の中に入っておりますが、各地固有の正に文化そのものとして水の管理というのがこれまでなされてきていて、もちろん、水に関する科学的な知識というのはIHPでやっているわけですが、必ずそこでは地域の歴史に基づく水資源管理を大事にしようとかいうことが常に議論されます。そういう意味で、本日のお話で少し御紹介あったんですが、御覧になった文化遺産と水との関係についてもう少し、どの辺に強い結びつきを感じられたか教えていただけると大変うれしく思います。よろしくお願いいたします。
【濵口委員長】  いかがでしょうか、林川さん。
【林川ジャカルタ事務所長】  御質問ありがとうございます。正直申し上げると、私、ずっと30年近く教育分野だけで特化して仕事してきたので、今回、所長になってほかの分野に触れることになって、非常に私自身も勉強しているところなんですけれども、前々から、教育分野から見て、もちろん水資源管理は非常に大事で、教育の中で正規の学校教育の中のみならずノンフォーマル教育でも、生活に関わる水は、どのように地域として地元の知識を活用し、更にそこに科学的な知識を加えて水資源管理を進めていくかということだったんですけど、今回は、具体的にボロブドゥール寺院に上がりまして、雨が多いときに、寺院はブロックでできているわけですけども、その岩のブロックに水が入っていってしまうとやはり崩れてきてしまうと。そのためにきちっと遺跡の中に水路を造っていかなきゃいけない。この水が流れることによって、またそれが周りにある田んぼにちゃんと来て流れていくようにして、それがちょうど稲作の田んぼのところにきちっと水資源として流れていくようにすると。それでないと、岩に含まれて岩が崩れていってしまう。一方で水がきちっと畑に行かない。そういうつながりが結構あるんだなというのが私個人的にも初めて明らかになってきて、それにおいて、やはり地域においてなぜ水管理が大事であるかという活動もしていかなきゃいけないということで、実際に今行われていたわけではなかったんですけど、今後していかなきゃいけない。ただ、一方で、青少年のグループがありまして、ユネスコがサポートしているんですけど、そのグループに対しても、世界遺産と自然管理、特に地域の自然管理の重要性を啓発活動していまして、もちろん自然環境の保存が、中には水資源管理も入っているんだろうと私は思います。今後これは非常にきちっと見ていかなきゃいけない分野かなと思いまして、文化遺産は非常に科学的な作業であるということを改めて私自身も思いました。
【沖委員】  了解いたしました。ありがとうございます。
【濵口委員長】  ほかの方。道傳委員、どうでしょうか。
【道傳委員】  道傳でございます。林川様、今朝は御発表ありがとうございました。大変に勉強になりました。インドネシア政府のコミットについて伺いたいのでございますけれども、ちょうど今出ております表の中でも、文化、自然科学、教育、これは文化のところでは、よく皆様も御存じのように、インドネシアにはたしか10近い文化遺産、自然遺産があると。また、自然科学のところでは、インドネシアは洪水や地震や津波など大変災害が多い国・地域としても知られていると。ただいま御指摘がありましたように、教育の分野でも、たしか、私も何度か取材をしたことがありますけれども、たくさんの島から成り立っているために、教育や、例えば母子保健などの分野でも平準化がなかなか難しいという課題があると。そういった中で、インドネシアは去年G20の議長国でしたし、今年はASEANの議長国でもあって、「グローバル・サウス」としての存在感もますます強めているところでございますけれども、どうでしょう、こういったユネスコの掲げる理念や取組について、御指摘がありましたように共同事業と捉えて密接な調整をしていくことも大事という、そういったところへのコミットの強さというのはどのように感じていらっしゃいますでしょうか。
【林川ジャカルタ事務所所長】  ありがとうございます。そうですね、インドネシア、まだ私も来て2か月弱なので、インドネシア専門家とは到底言えないんですけれども、ユネスコが関わっている分野での政府としてのコミットメント、かなり強いのではないかと思います。特に、私が今まで教育をやってきたからというわけでもないんですけれども、やはり教育における国のコミットメントはかなり強くて、つい最近、去年の教育変革サミットにちょうど間に合う感じで新しい教育改革を始めているんですね。エマンシペーション・エデュケーションというので、解放教育みたいなものです。すごい名前なんですけれども、それで非常に包括的な人材育成をすると。そして、教育がきちっと労働市場に結びつく。それから、教育というのは、一律で全ての人に同じような内容であってはいけない。特にこのインドネシアみたいに多様性の非常に大きい、文化的にも地域的にも言語的にも非常に多様化した国においては、地元の知識をきちっと促進するというのも大事であるということで、今、新しい解放教育というんですかね、エマンシペーション・エデュケーションのリフォームの中では、例えばカリキュラムの中に地元に関する知識を加えるということで、ちょっと具体的なパーセンテージは忘れてしまったんですけども、2,3割ぐらいな感じでカリキュラムにローカルカリキュラムを入れるという方針になってきていますし、あと、それに関してやはり教員の研修が非常に大事になってくるというので、いろんな教員研修の企画がなされています。そのほかに、インドネシアとしては、今、ASEANのチェアマンシップで、最後にリーダーシップサミットが今度9月にありますけれども、G20、そしてASEANチェア、両方連続で兼ねて、全ての分野で非常に活気があると思います。
 割と、地域における存在感を高めるだけでなくて、国内でも非常に強い国というか、台頭できる国はどういう国であるかということをかなり国内でディベートされている感じはあります。特に今もう既に、来年選挙ですので、最後に大統領がどこまで自分のやりたいことをできるかというのを一生懸命推し進めている感じなんですが、1つ、来てすぐに私として気づいたのが、選挙運動、正式には9月か10月かららしいんですけれども、既にもう小さい規模で選挙運動が始まっているんですね。その中で一番気づいたのは若者ですね。毎週日曜日に中央通りが歩行者天国になるんですけど、そこで青年たちがいろんな政治的なメッセージを抱えて行進しているんですね。もちろん、その内容はちょっと読めないんですけれども、同僚に聞いたら、最近、若者が政治にすごい関心を示していると。こういう形で参加してきているから悪いことではないんですけれども、一方で、ユネスコのコミュニケーションの仕事の面から見てくれば、かなりメディアに対する規制も強くなっていることも確かなので、メディアを通じてできないところは若者が台頭して、実際に外に出ていろいろと意見・考えを広めていっているのかなという気はします。
 そのメディアのことなんですけど、やはり今すごく心配されているのが、選挙活動が始まった時点でいかにメディアが規制されるかということなんです。ユネスコ、私のジャカルタ事務所で今やろうとしているのが、選挙運動が始まり、選挙中のメディアの保護と、それからきちっと発言の自由、報道の自由が規制されないように、今、インドネシアの放送協会とかメディア協会とちょうど協議を始めているところです。
【道傳委員】  ありがとうございました。
【濵口委員長】  挙手されている方が見えますので、吉田委員、お願いしたいと思います。
【吉田委員】  吉田です。林川所長、本当にどうもありがとうございました。これまで、パリでSDG4のグローバルの立場から推進される一番大事なところにいらっしゃったということと、それからジャカルタの所長になられて、本当に御発表いただいた点、ユネスコの国内委員会にいるわけですから共鳴するところが非常に多いというのは当然なんですけども、改めて1つ感じさせられたことを共有しながら、ちょっと確認させていただきたいところを併せて発言させていただきます。
 やはり分野横断ですね。2枚目のスライドのところに出てきましたけども、その分野横断ということの重要性、特に、例えば文化というものは、やはり社会の特徴だったり価値観が、歴史や自然や民俗、こういったものを通して表現されているものですから、ユネスコの中では文化遺産というものが大きく取り上げられていますけども、非常にアクティブに、ダイナミックに我々の生活と関わっているものと捉える必要がありますし、そうすると、おのずと教育とか科学とかとは不可分な関係にありますよね。そこに加えて、文化というのが、まずSDG4.7の中にESDと一緒に非常に重要なSDGs全体の価値観を示す言葉として掲げられているということは、非常に意味が大きいと思います。それに加えて、昨今の世界情勢の中に見られるコンフリクトの重要な問題とか、自然災害とか、こういうのと併せて社会のレジリエンスをどういうふうに構築していくか、そこの中でまた教育の役割というのも大きく取り上げられていると。こういうことになると、今申し上げたような点って全部つながってきて、本当に分野横断的に捉えて、そこの中における教育の役割というのをもっともっと真摯に考えて、実践につなげていかなければいけない重要なときになっているなということを改めて感じた次第です。
 それに加えて、1つ、ちょっと確認といいますか、お伺いしたいんですけども、特に林川所長のように本部だったりユネスコの立場から見ていて、日本のESDについての取組、そしてそれがASPnetという形の中で、日本の場合はその中でもESDの取組が非常に中心になっていると、こういう形でこれまでずっと取り組んできているわけですけど、先ほどちょっとおっしゃった名称の変更とか、ASPnetの活動をもう少し幅広く捉えて促進していこうという動きが見られるということをお話しされましたが、そういう点から見て、日本のASPnet、ユネスコスクールを通じたESDに関する取組について、どのようにかお考えか、感じられているところがあったらお聞かせいただきたいと思いました。
 以上です。
【林川ジャカルタ事務所長】  ありがとうございます。先ほどお見せした2枚目のスライドですよね。1つ加えると、もちろん、文化だけではなくて、これは、たまたま文化をエントリーポイントに使っただけで、多分、ユネスコのやっている5つの分野全てエントリーポイントになると思うので、実際のところは本当に横断的なというよりも包括的な取組をするべきであって、最終的には、多分、ユネスコの活動というのは、エントリーポイントをどこでやろうとネットワークのように表現されるべきなのではないかなと思うんですね。ASPnetの名称が変わるという点ですが、これはもちろん、まだ具体的な話は進んでなくて、ただ、たまたまこちらに移ってくる前、本部におりましたときに、ASPnetのユニットが私の部署に移ってきて、それで初めてそういう議論を内部で始めて、それで、なぜASPnetの名称を変えたほうがいいのではないかとなったかというと、学校ネットワークというと学校同士だけが話し合っていればいいみたいな感じで非常に狭い範囲のイメージがあったのと、それから、プロジェクトという名前がまだくっついていて、これはユネスコスクールって日本で言うとすごくいいんですけれども、ASPnetプロジェクトというと何か期限がついたプロジェクトのような印象があって、加盟国によっては意外と全然知らない国もあったりしまして非常にがっかりだったということで、もう少しユネスコの現場における一番身近なパートナーとして学校という現場をどうやって活用できるかと。そのためにも、形から入るわけではないですが、やはり概念とASPnetの本来立ち上げのときに掲げられた目的をもう少しきちっと反映された名称にしたほうがいいのではないかという話を始めたところで、私、こっちに移ってきてしまったので、これからの議論だと思うんですが、その中で、ESDがテーマになるというか、今のユネスコスクールが、世界中のユネスコスクールをつなぐものがESDという概念だったらいいなと私も思います。なぜかというと、ESDは先ほども申し上げたように、やはり教育局の仕事だから教育分野、教育省だけの仕事ではないというのが非常に明らかで、ESDの概念を本来の意味で広めていくとすれば全ての省庁が関わらなきゃいけなくなるし、先ほどのスライドにある全ての文化、自然科学、教育、情報科学、社会科学をつなげる根底にあるのではないかなと思うので、やはりASPnetの一つの目的は、ESDを通じてSDGsを進めると、特に残りの7年間で進めるというのは大きな課題になるのではないかなと思っております。
 (音途切れ)いいかどうかというと、はっきり申し上げて私も日本国内で行われているユネスコ関係の事業・活動をそんなに詳しく知らないので、何とも言えないんですが、ただ、今回、ESD for 2030 Global Networkが立ち上がったりとか、その中でESDの枠組みが広がってきて、それから、国中心の、国主導の活動、イニシアチブに重点が置かれているということは、いろんな形でESDを進めるということができていいのかなと。日本のESDは日本の形でやるし、また、中国とかインドネシア、またフィリピン、それぞれのESDの進め方があるのではないかなと思いまして、国の文化とか社会とかに特化したものがきちっと出来上がらないと本当の意味で地元に受け入れられていかないのかなと思うので、いろんな多様性のあるESDがあってもいいのかなと私は思います。
 ただ、最終的にESDの目的はSDGsの17全部のゴールが達成できるものとしての基盤作りに貢献してもらいたいと。先ほどの新しく立ち上がった気候変動のイニシアチブですけども、それも飽くまでもESD全体を進めるための一つのプッシュであると思います。それだけに特化していたらESDは達成できないのかなと思うので、そのトレンドとは言いませんけど、そのとき一番重要な課題に特化できるのもESDの特徴だと思っています。
 すみません、あんまりうまく答えられないんですけど、特に日本の活動をもっと勉強しなきゃいけないなと思っているんですが、ただ、1つ言えるのは、インドネシアにおいて、この間、ESDの会議がありまして、インドネシアがホストしたんですけれども、それ以来、今回、私が来て本当にすぐに教育省のほうからこの会議のフォローアップをしたいと。ESDは今のインドネシアの新しいリフォームの中で非常に共感できるところが強くて、これはすごく進めたいので、次のフォローアップをしてほしいと言われていますので、今後またいろいろと日本の皆様には御相談させていただきたいかなとも思っております。
【濵口委員長】  ありがとうございます。お時間押しておりますので、ここら辺で質疑を終わらせていただきたいと思います。
 少しコメントしますと、道傳委員が言っておられたように、インドネシアは島嶼国でありまして、島が実に1万5,000程度あるんですね。その中で国是としてずっと言われているのが、多様性の中の統一という言葉でございます。これ、現代的な意味でもユネスコ活動の象徴的なシンボルになるようなフレーズにも私は思えるんですけど、なかなか難しいですね。
 それから、ジャカルタはASEANの事務局がある。インドネシアは非常に若い国で、俗にVIPと言われるベトナム、インドネシア、フィリピンを合わせると7億の人口があって、インドネシアは特に平均年齢30代だったと思いますね。ただ、問題点は、イスラムの意識が非常に強くなっている部分が、我々といわゆる多様性の中でどういうふうにして協調していくかという課題にもなってくることであると思います。
 所長、これからもどうぞ御活躍されますようお願いいたします。
【林川ジャカルタ事務所長】  ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
【濵口委員長】  ありがとうございました。
 それでは、続きまして、髙橋委員から御発表をお願いいたします。
【髙橋委員】  髙橋でございます。今日はお時間を頂きましてどうもありがとうございます。
 私の方からは、日本のユネスコ活動と産業界の連携について、主にSDGsの視点からということでお話しさせていただきたいと思います。私自身のキャリアですが、もともと銀行出身で、主に財務企画とか経営戦略を担当していましたが、2年ほど前に銀行を卒業して、今は、上場企業の社外役員を中心に活動しています。今日お話しする内容は、産業界の意見と言う位置づけになっていますが、産業界の総意みたいな話ではなくて、むしろ、私が国内委員会のいろんな会議に参加させていただいて、民間企業出身者として感じたことを少し述べさせていただきたいと思います。
 最初に、このSDGsと企業経営の現状を簡単にサマリーすると、新型コロナで企業を取り巻く環境が激変する中で、企業経営者の意識というのはやはりSDGsに対して真摯に向き合わなきゃいけないというふうに加速化しているように思います。本業を通じて社会課題を解決する経営がこれからの企業経営の新常態になっていくんだろうと思います。また、足元「PBR1倍問題」で、日本の企業の価値が相対的にグローバルに低いということは問題になっていますけども、PBR1に近づけていくためにも、社会課題に取り組む姿勢をしっかりと投資家・市場に示していくことが必要だという意識はすごく高まっていると思います。
 ただ、その中で、SDGsの17のゴールに対する企業の取組を見ると、関心が高いと思われるゴールと、相対的に見るとそこまでいっていないゴールに分かれているように思います。SDGsを企業経営の目から見ると、自社と関連のあるゴールを定めて、そこに自社の経営資源を投入して社会課題の解決に貢献し、それがひいては自分たちの中長期的な企業価値の向上につながっていくという道筋がちゃんと見えないと、なかなか対応できないということだと思います。結果として、こういう関係が比較的明確なものから優先的に取り組まれているということだろうと思います。そういった観点では、気候変動等々の問題についてはそういった道筋が割と見えやすいですし、貧困・飢餓・教育となると、自分たちがやっている事業とどういう関係があるのかという見いだしがなかなか難しいということがあるかと思います。各企業ともそういった活動をやってはいますけども、現時点では、どちらかというとCSRの延長線上のような活動になっているのではないかと思います。
 その中で、日本のユネスコ活動については、国内委員会のいろんな会議に参加させていただいて、持続可能な開発のための教育は、SDGsの17の全てのゴールの達成に寄与するという観点から積極的に取り組まれているということは認識をしております。そのESD推進拠点としてのユネスコスクールの位置付けをしっかりと認識し、民間企業との連携も視野に入れながら、「ユネスコ未来共創プラットフォーム」を構築されているということで、民間企業、産業界との連携についても意を用いてユネスコ活動がされているというふうには認識をしています。
 こういった中で、更に産業界との連携を強化するのには何が必要かということを考えたときに、SDGsのゴールの中で民間企業の取組が、例えば環境問題等に比べて比較的弱いと思われるような社会的課題の取組に待ちの姿勢ということではなくて、むしろ積極的に民間企業を巻き込んでいくというような活動も必要ではないかと思います。民間企業の経営資源を積極的に活用して、ゴール4「質の高い教育をみんなに」というところに取り組む企業をどんどん増やしていくという積極的な活動が必要ではないかと思いました。
 では、その民間企業を巻き込むためにどうしたらいいかということなんですけども、ここをやや即物的に考えると、民間企業にとっては、SDGsの取組が着実に企業価値の向上につながる道筋が見えないと、やはりなかなかそこに経営資源を投入できないので、そうであれば、そういう道筋が見えやすくするためにいろんな枠組みを作ってあげればいいのではないかと思いました。例えば、脱炭素とかという話になると比較的その道筋が見えやすいので、脱炭素への取組を強化すると、民間企業は、統合報告書に脱炭素にこれだけ取り組んでいるということをSDGsのゴールのワッペンをぺたぺた貼って対外的に開示し、アピールすることができます。やはりそうなると、脱炭素のような道筋が見えやすいものから取り組んでいくということになるんだろうと思います。
 仮説ということで下に書いていますが、やはり新型コロナ禍を経て企業経営者は、環境等はもちろんなんですけども、やっぱり社会課題をしっかりと解決するために自分たちも取り組んでいかないと、日本の社会自身が地盤沈下してしまったのではどうにもならないという意識を強く持っていると思います。ただ、なかなかそれが例えばゴール4への取組の裾野の拡大につながらない理由の一つとして、本業との関連とか、それがどういった形で企業価値向上につながる道筋があるのかということがなかなかイメージできないということがあろうかと思いますので、合目的にそこの背中を押してあげるような工夫をすればいいのではないかという整理をしました。
 2ページ目なんですけども、では具体的にどんなことが考えられるかと言うことですが、これはあくまでも仮説ということなんですが、既に文科省においてはそういう取組をされていると思いますので、私がただ単に知らないだけだと思いますが、霞が関における横の連携として経産省とか金融庁とSDGsの審議会とか検討会が開催されていますが、そこにも文科省として積極的に参加をする必要があるのではないかなと思います。経産省がよく使うやり方だと思いますが、しっかりゴールを定めて、バックキャスティング的に合目的に審議会を立ち上げて、半年程度、主にそれに賛意を表する委員の方々を集めて議論をして、レポートを作って、それをマニュアルないしテンプレートにまとめて発表する方法を検討したら良いのではないかと思います。それを読んだ民間企業は、これにアジャストすると少なくとも社会的な評価は高まるのではないかという形でどんどん参画をしていくという流れが現にあると思います。例えば伊藤レポートとか、ああいったようなものがどんどん出ていますけども、現に伊藤レポートの効果で日本のガバナンス改革はスピード感を持って進んでおり、そういった工夫も必要ではないかと思います。
 それと、民間企業との連携を深めるために、例えば経済同友会とか全銀協・地銀協との連携を深めたらいいのではないかと思います。、経済同友会、地銀協と言っているのも私の個人的な意見なんですけども、経済同友会は比較的県単位の地域での活動が盛んですし、大企業だけではなくて中堅的な企業も参画されています。地銀協は、今、地銀が置かれている経営環境を考えると、地域経済の発展ということについてかなり意欲を持たれているので、こういったところとの連携を深めると良いと思います。
 では具体的にどうするかということなんですけども、民間企業でSDGsとかサステナビリティを担当しているセクションですが、大企業の場合はそこに人も張ってやっているので、比較的自律的に活動していますが、中堅企業以下になるとなかなかそこに人が張れないと言う現実があります。したがって、例えばゴール4に企業として取り組むということは、企業として一体何やったらいいのかという具体的なイメージがなかなかできないのだと思います。例えば銀行であれば、金融教育ということなので金融リテラシー教育をやるということは確保されているんですが、そこにとどまるケースが多いですし、また、中堅企業の場合、もともとそういったことを検討するところに人が張れていないということもあるので、やるべきだとは思うけども、検討が進まないということがあろうかと思います。
 SDGsが企業にもたらすメリットとか、具体的なSDGsの取組の方法やそれを推進する体制のように、それを経営トップから、例えば「ゴール4について自分の企業はやりたいんだけども、これを具体的に検討しろ」って指示を受けたSDGsを実際に推進する担当者が最初に悩む点は大体決まっているので、であれば、それに対して分かりやすいガイドラインみたいなものをつくって提示してあげたらいいのではないかと思います。例えばゴール4と本業のひも付けを分かりやすくするためのSDGsの取組の手順、それをサポートするマニュアルないしテンプレートを作ってあげると効果的だと思います。そうすると、それを担当している人は、それを見ながら、あ、こういう形で展開していけばいいんだという道筋がつながっていく。例えば、ユネスコ活動としてゴール4に関係する活動を行っている団体にヒアリングをして、民間企業に一体何を期待するのかとか、民間企業にこういうことをやってほしいというようなことをヒアリングして、それを起点としてPDCAをベースにしたガイドラインみたいなものを作ったらいいのではないかと思います。いろいろ調べてみると、環境省さんが作られているガイドライン、比較的よくできているのかなというふうには思いました。
 この2ページの下の点線の中に書いていますけども、ここに書かれているような項目について展開して手順を示すと、比較的、ゴール4に関連する企業としての活動を推進する入り口にはなるのではないのかなと思います。例えば、こういったマニュアルがあれば、これをベースにして、民間団体との連携を通して、ゴール4を自社のSDGsの活動に取り組む企業を拡大することができるのではないかと思います。特に中堅企業のSDGs活動を支援するためには、こういったような仕掛けも必要ではないかと思います。足元の日本のSDGsの活動は、大企業については、人も張れていますし、グローバルベースでの展開も含めていろんな活動をされていますけども、やはり残念ながら、裾野を広げようと思うと、中堅企業、特に地方において中核を担っている企業さんのところまでなかなか裾野が下りていないということがあるんだろうと思います。やっぱり中堅企業の参画が、今後、日本全体で、特に地方においてSDGsないしユネスコ活動を広めていこうとすると、地方のいろんな企業さんを巻き込んでいくということが必要だとすると、こういったガイドラインとかマニュアル、テンプレートみたいなものを作って、比較的、自分たちの企業活動がどういう形でユネスコ活動につながっているのかということをイメージしやすい枠組みをつくるということも一つ手ではないかなと思います。
 3ページ目ですけども、もう一つは、民間企業が例えばゴール4へ取り組むとすると、それを見える化して認知度を上げることに繋がることも重要です。既にやられていると思うんですが、例えば、ゴール4絡みの話について、ないしユネスコ活動と関連する取組について、登録・認定制度を拡大していくことも選択肢だと思います。何かそういうものがあると、自分たちがやっている活動がユネスコ活動ないしSDGsにつながっているということが客観的に、「あの企業やっているよね」という認知度のアップに繋がるので、企業としては取り組むインセンティブになっていくと思います。例えば表彰制度、このところ、日経新聞さん等が主催するDXとかSDGsに積極的に取り組んでいる企業さんの表彰とか、いろいろそういうものがありますけども、その中にゴール4の取組ももう少し、例えば評価するときの評価基準を上げてもらうとか、そういった取組も必要だろうと思います。また、ユネスコ活動とかゴール4に直結するような表彰制度をつくってもいいのではないかというふうにも思います。
 最後ですけども、銀行出身ということなので、こういったユネスコ活動ないしゴール4に対する取組にファイナンスをつけていくということも一つ必要ではないのかなと思います。やっぱり民間企業、SDGsの活動とか、例えばゴール4に取り組もうとすると、当然そこに経営資源を投入するので、活動のための予算をどう確保するかということが一つの課題になってきます。CSR活動の延長線上だと考えればこれまでもあったんですが、取組に係る経費、コストという扱いになりますので、儲かっているときにはやるんですけども、収益状況が厳しくなると途端に予算を削って「やめます」という話も出てきます。やはりSDGsの活動は、企業価値の向上に中長期的につながる投資という位置付けに物の考え方を変えていく必要があるとすると、必要な予算は投資に対する資金調達として位置付けていくことも重要だと思います。
 これは、今、SDGs債とかサステナブルファイナンスって言われているものになるわけですけども、ゴール4に関係する活動とかユネスコ活動がこのサステナブルファイナンスの活用領域の中にしっかり組み込まれていくということが大事なんだろうと思います。特に地域における社会課題を解決するに当たっては、やはり地域銀行が果たす役割はすごく大きいだろうと思います。今、7割の地銀さんが金融サービスを通じて地域のSDGs活動への貢献をやりたいという宣言をされているんですけども、なかなか金融、教育以外では目ぼしい実績がないということがあると思います。地域銀行自身は、自らゴール4に取り組むということだけではなくて、地銀さんのお取引先のSDGs活動をファイナンスの面でサポートするということも求められていますので、地銀協等とも話しながら、各地域におけるユネスコ活動に例えばファイナンスとしてどういうことが必要なのかという整理をしていくと、そこにファイナンスをつけていくということは、地銀さんにとってみると、サステナブルファイナンスの活用領域を広げていくということにもつながりますので、こういったことも併せて検討することは必要ではないのかなと思います。
 思いつきのような話で恐縮なんですけども、民間企業にとってみると、やはり、SDGs活動はしっかりと対応しなきゃいけないと思ってはいますが、現実的にそれをやることが具体的にどういう効果として自社につながってくるんだというひも付けが明確なものから優先的に対応していることは事実ですので、そういう意味でいえば、ユネスコ活動ないしゴール4に関係する活動が企業価値の向上につながっていくという道筋をガイドライン的なものでもう少し具体的に示すことができれば、うちの企業もそういったところに積極的に参画をしていきたいということになっていくのではないかと思います。
 思いつきのような話で恐縮なんですが、以上でございます。
【濵口委員長】  ありがとうございます。非常にプラクティカル、具体的なお話で、ためになる思いがしました。
 続きまして、溝内委員から御発表をお願いして、その後、議論を進めたいと思います。
 溝内委員、お願いいたします。
【溝内委員】  髙橋委員もお話しされていらっしゃいましたとおり、企業が活動するためには、その活動を通して儲からないと回っていかないということです。SDGsは取り組みやすいので全てのステークホルダーの目標になっています。全てのステークホルダーには、ノンプロフィットのところもあれば、プロフィットのところもある。つまり、プロフィットの事業体が事業として取り組めるものが含まれているということです。投資家サイドでいえば、ESGのEとS、発行体の立場からいえばクリエーテング・シェアード・バリューというふうな言葉で表現されます。その取組をすることで、企業の利益が守られたり、利益が伸びていったりするようなところを促進するということです。投資側としては長期的なリターンを得られるような対象を探そうとするし、企業としては持続的な成長のネタを探そうとする。そういうプロアクティブに取り組める課題がSDGsの中に含まれておりますので、非常に取り組みやすいというところがあります。
 私は、本日は、私自身ESDの理解が十分でないところもあるのですけども、ESDと重なっていると思われる弊社の取組の事例を御紹介させていただきたいと思います。
 まずは次のページ、SDGsスタートブックです。これは東京書籍さんが無償で小学校、中学校に配布されているSDGsのサブテキストでございます。その中のゼロハンガーの事例として、「午後の紅茶」によるスリランカの紅茶葉農園のレインフォレスト・アライアンス認証取得支援が紹介されています。これは、環境に優しいだとか、人権が保護されているというような農業の認証でございます。日本の輸入する紅茶葉の約4割がスリランカで、「午後の紅茶」はその4分の1ぐらいを使っていますので、キリンにとってはスリランカは大きな買い付け先でございます。そこの認証取得をサポートすることで、我々としては、高品質な紅茶葉の安定的な調達が確保できます。また地域にとっては、認証を取ることによって販売する紅茶葉の価値が上がりますし、環境の持続性あるいは人権等の向上にもつながります。これは、商品にひも付いたような活動をSDGsのサブテキストで御紹介いただくことによって、商品のマーケティングにもなるし、SDGsの教育にもなるというふうな事例でございます。
 次のページの例は、キリンスクールチャレンジという名前で、環境関連の認証の普及啓蒙をしているものです。対象としている認証の1つは先ほど御紹介したレインフォレスト・アライアンス認証で、もう一つはフォレスト・スチュワードシップ・カウンシルという持続的な森林から作られた紙の認証です。トレーニングはこども国連環境会議推進協会というNGOと共同で毎年行っているものでございまして、自発的に中高生の方に環境問題について考えていただいて、御発表いただくというふうなことをやっています。これは環境教育という意味でも、自発的に考える力を育てるという意味でも、ESDと共通点はあるのではないのかなと思っています。こちらも認証のついている商品のマーケティングになります。我々としては認証マークの認知度を高めると同時に、そのことによってブランド価値を高め企業価値の向上にもつながります。
 次は、サプライチェーンに関する教育の支援でございます。スリランカの農家は比較的高地にありますので、小学校の設備が充実していないということから、2007年から1校につき100冊の本を寄贈させていただいており、これまで200校以上に寄贈しております。100冊の選択は学校のほうにお任せして、それを購入して本棚と一緒にお納めするというふうな活動です。これは、農家の方々の生活水準の向上、コミュニティの発展をサポートすることを通して、我々の紅茶葉の安定的な供給につながるということで、企業価値の向上なるものであると考えます。
 続きまして、これは上田市でやっております環境教育と植生再生活動でございます。こちらに私どものヴィンヤードがありますので、こちらもサプライチェーンに関する取組でございます。弊社はシャトー・メルシャンという日本ワインを造っていいます。ワインの場合はシャトー・メルシャンの品質が評価されるだけでは国際的には認めていただけません。ナパだとかブルゴーニュだとかボルドーだとか、地域で評価されることが必要ですので、弊社もシャトー・メルシャンだけではなくて、地域のワイナリーも含めて品質が高くなるようなサポートを行っています。地域全体がワイン産業として知名度を高められることを目指しています。これは生物多様性の取組ですけれども、。弊社のシャトー・メルシャン椀子ヴィンヤードは「自然共生サイト」の認定相当と環境省から認めていただき、、30by30イニシアチブという国際的なイニシアチブのOECMという自然環境保護地として認められるような予定が立っております。そういうことを含めて、ワインを造る地域としての上田市椀子の知名度を高めていく。そういうことを学校のお子様方に御理解いただいて、地域の誇りとしていただくというふうなことでやっております。
 6ページは、コミュニティの活動です。いくつかの工場にはビオトープがありまして、その地域の小学校の方々を御招待して環境を考えていただく取組をしています。ここで紹介しているのは岡山工場の例であります。コーポレート・シチズンシップとしての活動ですので、これは事業価値を高めるというよりは、もうちょっとCSR的な活動になります。
 更に7ページはよりCSR的なイニシアチブで、利益とは全く関係ないのですけれども、もう終了しましたが国連大学とのジョイントプロジェクトで24年間、、東南アジアの食糧の研究者を日本に招待し、食糧の安定供給についての研究活動を1年間支援するというふうなことをやっておりました。
今回御紹介させていただいた弊社の取り組みは、ESDの中の範囲内に入るのではないかなと考えています。ユネスコ側のアクターも、その地域の企業の商品や特性を加味した上で個別の御提案をユネスコESDとして企業に持っていけば、ESDを企業にサポートしていただける、実践していただける道は結構たくさんあるのではないかなということが御理解いただければということで、弊社の御紹介をさせていただきました。
 以上でございます。
【濵口委員長】  ありがとうございます。
 それでは、ただいまの髙橋委員、溝内委員の御発表について、御意見、御質問等ございましたら挙手をお願いします。佐藤委員、お願いします。
【佐藤委員】  佐藤です。今のお二方の御発表、ありがとうございます。昨今の「グローバル・サウス」が台頭する国際情勢と、日本ならではのユネスコ活動、それが髙橋委員の御指摘にあった企業の取組が難しい貧困教育との関連でちょっと意見を述べさせていただきたいと思います。
 まず、貧困教育の問題の現実ですけれども、先月初めに、私、ネパールを訪問しまして、私どもが現地と協力して行っている寺子屋、これは20ぐらいありますけれども、これの実態把握と、現地の教育省の方、それから日本大使とも意見交換をしてまいりました。ネパールというのは「グローバル・サウス」とも言えない最貧国で、国は教育に予算を配分できずに、教育体系もインフォーマルな教育支援を前提にしているような国です。識字率は71%と言われていますけども、その格差は大きくて、私どもは、貧しくて学校に行けない子供たちに21か所の寺子屋で識字教育を行っています。訪問した寺子屋では、幼稚園から小学校低学年・高学年クラスを中心に、そしてまた大人向けに、農家向けには牧畜の知識学習とか、ミシンのわらの籠作りの実践とか、パソコン教室なども、インドでITを学んだ若者が戻ってきて、そういうものも始まっておりました。どこの寺子屋も、地域住民を巻き込んでそれなりに順調に運営されていると思いました。しかし、寺子屋というのは、今日を生きるためには必要ですけれども、あしたの成長にまではつながっていかないと思います。これを続けて人々は豊かになるかというふうに考えてしまったのも事実であります。
 そして、ネパールの産業構造というのは、零細農家が80%、商業が15%を占めて、生産性が低いままです。北はヒマラヤで行き止まって、インド経由は物流コストがかかると。それから、100以上の言語とカーストがあります。私たちのNGOが行っている寺子屋の支援は必須ではありますけれども、このような逆境ですね、地理的・文化的制約を打破して今後成長する方法はないのかと考えましたが、インドのインド工科大学、IITと呼ばれていますけれども、長期的な視点に立って、高等教育によるIT等の先端技術で世界をリードできる人材育成をすべきだと痛感しております。これは、その他の発展途上国にも共通することだと思います。
 今回、何よりも感じたことは、日本は自国の利益のために駆け引きをする国だとは思われない、世界で信頼されている国であるということであります。日本の産業界、先ほどの御指摘もありましたけれども、それから大学には、先端技術の人材教育を支援するノウハウや力があるのではないかと思っております。お金や物の支援から、人材育成面のノウハウやソフトによる新しい価値を生み出す支援を行って、日本のユネスコが世界のリーダーとなる活動を実現できたらよいなと考えました。方法論は髙橋委員の考えにも賛成するところが多いと思いますけれども、現地の大学へ日本ユネスコの寄附講座を行うとか、留学生を招致して行うとか、資金の手当てなどの方法はあると思いますが、みんなで知恵を出し合えばこれが実現できるのではないかと考えました。
 以上です。
【濵口委員長】  ありがとうございます。
 それでは、続きまして、大枝委員、お願いいたします。
【大枝委員】  大枝です。先ほど髙橋委員と溝内委員から発表いただきまして、お二人の発表で大変感銘を受けたんですけども、髙橋さんの発表は非常に明確に論点を整理していただいて、それを踏まえて具体的な提言をいただきまして、私としては全く異論のないところであります。ありがとうございました。
 それから、溝内さんのほうは、キリンでやってこられた具体例を分かりやすく説明いただいたということで、これも非常によかったと思います。キリンさんのCSV活動というのは産業界でも非常に有名な、先端を行っているということで私も思っておりまして、やはりキリンさんの経営トップと、それからCSV活動の担当役員、溝内さんだと思うんですけど、このお二人がトップダウンでしっかりと真摯に進められていることだろうと思っておりまして、心から敬意を表したいと思います。
 それで、私は1つだけ意見を申し上げたいんですが、もうお二人ともおっしゃったのでちょっと重複するんですが、今、民間企業というのは、だんだん経営のトップがSDGsを経営の中心に据えてとか、そういう会社がどんどん増えてきておりますが、ただ、やはり民間企業ですから、SDGsのためのSDGsということではなくて、いろんな形で企業価値の向上につながるという、これが必要だと思っております。したがいまして、日本ユネスコ国内委員会が、今後、産業界と連携をするということでいろいろ検討するということでいいと思うんですけども、やはり産業界との連携ということになりますと、民間企業のほうの企業価値の向上に資するものという、そういう観点で是非いろいろ検討いただければと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 以上です。
【濵口委員長】  ありがとうございます。本当に、ずっと私、ユネスコをやっていて感じていますのは、大学とかユネスコ協会の方々は結構動いておられるんですけど、日本の大きな、ある種のボリュームのある集団である民間企業の方々にどうやってユネスコ活動を理解していただき、一緒に活動できるような場を作るかって、これ、かなり大きな課題だなと思っています。今日、いろいろ具体的な御提案、それから活動をお聞きして、もう少しどうやるかということを相談しなきゃいけないなと、それ、すごく実感として持っております。ありがとうございました。
 それでは、沖委員、お願いいたします。
【沖委員】  ありがとうございます。まず、髙橋委員のお話、皆さんおっしゃっているとおり、非常に具体的で、認証制度が必要である、登録、もうこれを是非国内でということではなくて、やはりユネスコ本体がこういう企業のESDあるいはSDGsのゴール4への取組に対して何らかの検証あるいは登録を持つということが非常に大事ではないか、日本企業も皆さんグローバルですので、国内の制度にしてはいけないのではないかと考えます。
 他方、金融は金融教育ぐらいしかとおっしゃったんですが、やっぱり金融教育とかボケーショナルな教育というのはなかなか大学の現場ではできません。小中高も含めてできませんので、そういうところでも正に貢献していただくというのは非常に大事かと思います。私、国連大におりましたときに、私募債の発行手数料の中から寄附金を出すというような取組が始まりまして、一部、国連大でも途上国の留学生を受け入れることに使いました。そうすると、結局、銀行側は、それ、プロモーションの一部なんです。ある意味でいうと広告費用にし、また私募債を出す側は追加的な負担なしに自分が社会貢献しているということを認証できるということで、割とうまくいって、今でも続いていると思いますので、そういう取組を是非やっていただければいいのではないかなというふうに、進めていただければと思います。
 また、溝内委員のお話、これ、僕は非常に大事だと思いますのは、日本企業というか、日本社会がSDGsを考えるときに、つい国内のことしか考えないということが、今、すごく起こっていますが、本来のSDGsはやっぱり「グローバル・サウス」あるいは最貧国をどうやってよくしていくのかというのがすごく大きなアジェンダで、それに加えて、各国の中にも格差があるでしょうというお話だったので、こういうことが非常に重要ではないかと思います。そういう意味では、先ほどと同じように、やはりユネスコ本体で認証制度を持って、こういう取組に対して何らかきちんと認知するということが日本企業の取組をエンカレッジすることになると思いますし、是非大学レベルでの人材育成にもちょっと御関心をいただけると幸甚です。私が、知っている中では、電機メーカーが工場を造ろうとするようなところにおいて、日本から数人が行って、1週間ぐらいワークショップをして本当に手間暇かけて奨学金をかけて選んで、優秀そうな人を日本の大学で学ばせて現地へ戻す。しかも、それが、必ずしも専門のところだけではなくて、その地域社会がよくなるようにいろんな分野の、理工系にその場合は限られていましたけれども、奨学生を出すみたいなことをやられています。そういう取組がなくてもこれまでやられているわけですが、更に強化され、広がるような仕組みが是非あるといいのではないかなと思いました。
 以上です。ありがとうございます。
【濵口委員長】  ありがとうございます。
 議長があんまり質問してはいけないとは思うんですけど、お二人に、それから佐藤委員にもお伺いしたいのは、例えばスリランカなんていうのは、今、すごく政情不安定になっていますよね。ベルト・アンド・ロードが失敗して負債がすさまじい状態で増えているという状況の中で、恐らく活動も結構大変ではないかと思うんですね。ネパールも同じような問題がございますし、こういうときに、やはり日本人というのは割と腰が引けることが多くて、特に大学生を見ていても腰が引けているんですね。勇気を持って入っていくというところがなかなかできないんですけど、何か具体的に、リスク管理も含めて考えておられるようなことはありますでしょうか。実際、問題ないと思っておられるかもしれないんですが。
【溝内委員】  スリランカに関しましては、コロナの規制がありましたので過去3年間は行けておりません。ただし、レインフォレスト・アライアンス認証のチームと我々をサポートしてくれているチームは現地におりますので、地域のチームはコロナの制約の中で一定水準の活動は続けていただきました。本年は規制が解除されましたので、「午後の紅茶」を製造販売しているキリンビバレッジの社長だとか、サプライチェーンを担当している役員だとかが直に行ってエンゲージメントを進めております。毎年毎年、誰かが必ず行ってエンゲージメントを続けて、やってもらいっ放しではなくて、プログラム提供者として直接現場を見て、直接現地のオペレーターあるいは農園の方とお話しして課題を認識して、その課題解決のために新たな取組をやるというふうにしております。スリランカは御指摘のとおり非常に混乱していましたが、幸い、紅茶はスリランカの基幹産業でございましたので、その中では割と政府の保護もあり、我々が訪問する際のサポートはしっかり頂いておりましたので、大きな影響を避けることはできておりました。
【濵口委員長】  ありがとうございます。
 佐藤委員、何か御工夫はありますでしょうか。言い換えますと、一見、リスクがありそうな地域に積極的に参加する人材、特に若い世代を増やす工夫みたいな、あるいは仕組みみたいなものは、体験的にはございませんか。
【佐藤委員】  私が行ったときは、7月の初めですけれども、全く、いや、もともと私、インドとかそういうところは慣れているので、汚いところは全く大丈夫ですし、コロナも全然気にしていませんでした。それから、治安もそんなには悪くはなかったけど、気にしておく必要はあると思います。だから、そういう意味の、それほど何か特別に考えなきゃいけないというようなリスクというのはないのではないですか。
【濵口委員長】  基本的にはだから、持続的に活動を続けるということと、それからパートナーを確保するということ、それから、そのネットワークの中に若い人たちを引き入れる何らかの働きかけというようなことでしょうか。
【佐藤委員】  今おっしゃったとおりだと思いますけれども、そこに、継続できないとか途中で断念しなきゃいけないなんていうことは、今のところ考えなくていいと思います。
【濵口委員長】  現実的には、私、大学にいたものですから、アジアのいろんな国へ学生を連れて行っていたんですけど、ネパールのようなところにもしも日本の小学生、中学生、高校生が行くと、自分たちがどんなに恵まれているのか、日本というのはどうしていくべきなのかというのを、もっと肌で感じる体験ができるような気がするんですね。ユースが結構今元気になってきて、ああいう人たちをヨーロッパに送るだけではなくて、こういうところにも行かせて体験させると、すごい厚みができる人材が育ってくるようにも思うんですけど、そうするにはどうしたらいいのかなというのは。
【佐藤委員】  今回訪問した向こうの提携先の責任者に、「私たちが学生を連れて行きますけど、そういうスタディーツアーを引き受けてくれますか」って言ったら、「オーケーです」と。それはもう前にやっていたんです。
【濵口委員長】  あ、そう。コロナで大分止まっていたみたいな。
【佐藤委員】  はい。カンボジアでもやっていますし、そういうことはやっているんです。それは結構受け入れられると思うんです。
【濵口委員長】  その人たちのお話をもっと聞けると、この国内委員会も変わってくるような気がして。
【佐藤委員】  特にカンボジアは、行った高校生が、その後、すごくユネスコ活動に強力に活動するようになって、去年なんかは、実際コロナで行けなかったんですけど、オンラインで向こうの学校と、小学生なんかが勉強しているところと対話をして、それから、その子の家を訪問して、「ここが井戸です」とか「これが家です」とかといって家庭訪問するとか、そういうことを今もその人がやっています。
【濵口委員長】  そういうお話をちょっと聞かせてもらうようなチャンスがあるといいんですよね。
【佐藤委員】  是非機会があれば。
【濵口委員長】  はい、お願いします。
 キリンはどうされています? 若い社員に「おまえ行け」と言ったら、終わりになります?
【溝内委員】  いや、弊社の場合は、トップも若いのも一緒に行っておりますので、「行け」ではなくて「一緒に行こう」です。
【濵口委員長】  一緒に。失礼いたしました。
【溝内委員】  いえいえ。
【濵口委員長】  私もいろいろやっていて、例えば、ベトナムに、人権法による支配、民主主義というのを教えるロースクールのサポートをやっていたんですけど、一度行ったときに、通訳をやってくれる女の子がベトナムの服を来ていたんですけど、どう見ても日本人だなと思ったら、名古屋大の学生でして、法学部の学生。今彼女はベトナム法と日本法、両方熟知した専門弁護士として育っていて、長い目で見るとすごくこういう活動って大事だなと思うんですね。それがユネスコの「教育」というキーワードの概念的なものの中に実体が入るような気がしてならないんですけど、何か考えられないかなと思っております。宿題。
 すみません、大分時間が押してしまって申し訳ないんですけど。
 道傳委員、手が挙がっております。どうぞ。
【道傳委員】  道傳でございます。髙橋委員、溝内委員、どうもありがとうございました。大変に具体的な今日から始められそうなことと、あと将来的に大事なことと、その両方をお聞かせいただきましてありがとうございました。時間もありませんので手短に申し上げますけれども、見える化が大事というお話があって、顕彰制度、表彰制度については沖委員も御提案になって、恐らく、国連などで、ユネスコで大きく時間かけてそういった制度を作るということも大事なのかと思うんですけど、より早く何かそういう制度ができたほうが、恐らく既にそういう取組をしておられる企業の方というのはあるかもしれなくて、そういった事例を発掘して広めて、それで、全ての皆さんがそうではないかもしれませんけど、ほかの企業がそれで表彰された、顕彰されたということで、ちょっといい意味での競争意識も生まれたりすると、こういった取組がデュプリケートされるのではないかなと思いました。
 例えば、こちらの委員も務めておられますけど、講談社などではインドで、「もったいないおばさん」の絵本化、それはもともとは、将来、インドの大きな市場が拡大していくということを見越してeブックなどでセールスのためにやっていくということも踏まえての絵本の活動だったんですけれども、それなどは正にこのSDGs4そのものみたいな活動ですし、そういったことは、ビジネスの利潤ということも考えて、正にサステナブルなこととしてやっておられる活動でもあって、そういった事例というのは恐らく先行してたくさんあるのではないかなとも思っております。
【濵口委員長】  ありがとうございます。本当、いろんな事例をもう少し発掘しながら、活動の実態が実感できるようにする、それを組織化できるように、髙橋さんが言っておられるシステム化するような工夫があると、活動ももっと力強くなってくるかなと。
 はい、吉田先生、どうぞお願いします。
【吉田委員】  どうもありがとうございます。手短に申し上げます。
 まず、髙橋委員、溝内委員のお話、経済と我々の生活は本当にそのもの、表裏一体ですので、ここでのSDGsの議論というのは、どのように経済活動等に反映されているかというのは本当にいい試金石になっているんだと思います。その中で、髙橋委員から、貧困や飢餓や教育のような社会課題への取組が、自社との関係性のひも付けが難しいというお話にありました。それに対してキリンさんのお話のほうは、言わばグッドプラクティスなんですけど、自然とかフェアトレードとか、気候変動の先を見た取組というのを今からもう既に始めていらっしゃると。こういうことが実は企業としての価値を高めて、そして持続可能な営みにつながっているということが、やはり経済界全体の理解と行動様式というふうに広まっていってほしいなというのを非常に感じましたし、髙橋さんのお話で、銀行がそういう案内役になり得るということ、それから、そこから進めれば、関連して入り口の銀行、それから出口の監査、そういうところが全部が一緒になって、まだ直接SDGsとの関連性が肌で感じにくい企業さん、特に中小の方も本当に手を取り合って一緒に活動していかないと、そういう企業活動そのものの将来性が危うくもなりかねない。こういう考えというのは、やはり社会全体の意識として経済の方々とも協働を強めていかなければいけない。そうなると、私は大学にいますけども、ユネスコもそうですが、今議論しているように、企業の活動との接点というのをもっともっと増やしていかなければいけないと思いました。
 ちょっとついでにあと10秒だけ。昔、こういうことがありました。小学校の教科書がアフリカの奥地に届かなくて全然勉強ができなかったようなところに、コカ・コーラに頼んで田舎の奥地まで教科書を運んでもらうと。コカ・コーラって、どんな田舎にも大体あるんですよね。そういうふうに、自分たちが持っている企業力を使って教育も含めSDGsに直接貢献できるようなことというのは、気が付けばできるというところだと思いますので、やはりそういう視点をより広い人たちと共有していくことによって企業そのものが生きてくる、そういうところをみんなで盛り上げていけたらいいなと感じました。
 以上です。ありがとうございます。
【濵口委員長】  ありがとうございます。
 それでは、井上委員、お願いいたします。
【井上委員】  ありがとうございます。お時間がないので手短に。髙橋委員、そして溝内委員、本当にありがとうございました。大変勉強になりました。特にゴール4への取組というふうなものをお示しいただいて、我々博物館とか美術館業界にこれは非常に参考になることだろうなと思いました。さらには、溝内委員がお示しくださったことは、これは、企業が学校教育だけではなくて社会教育施設、我々の例えば博物館、美術館というふうなもので行っている特別展は、実は企業の皆様の御支援、そして御協力がないとできないというふうな状況にも今陥っているんですね。やはりSDGsミュージアムというのを我々は望みたいとは思っておりますけれども、そのときに企業の方々がどのように社会教育施設に参画していただけるのか、その辺のところの取組を是非進めていただけるとありがたいなと思う次第であります。ありがとうございました。
【濵口委員長】  ありがとうございます。
 本当、私、今日は深く謝らなきゃいけないことがありまして、実はもう一つ議題がありまして、この附属資料の「国際情勢を踏まえたユネスコ活動等の推進について」、これも御議論いただかなくてはならなかったのですけども、もう全く時間がない状態になりました。ただ、今日いろいろ御意見いただいたことは、この内容を深める上ですごい示唆に富んだことが多かったなと改めて思います。それで、もう一度これ、今、御意見をいろいろ聞いた上での印象を基にこの文章をちょっと一度読んでいただいて、御意見いただけることがありましたら、事務局のほうへまずメールで送っていただけますでしょうか。それで、8月中には、この資料の修正案を作成して、もう一度、皆様方に照会させていただき、運営小委員会の意見としてまとめたい。本当はだから、これ、すごく議論しなきゃいけないので、大変申し訳ないなとは思っておるんですが、率直な意見を是非いただいて最終案を固めていきたいと思います。
 最終的な取りまとめは事務局と私のほうに一任させていただければ幸いでございます。よろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【濵口委員長】  
 今日は本当に長時間ありがとうございました。今後、9月前半の各専門小委員会と、9月21日の国内委員会総会において御議論いただいた後、今年度中を目途に取りまとめを行いたいと思いますので、引き続き御協力をよろしくお願いいたしたいと思います。
 あと少し、1分ぐらいありますけど、そのほか審議すべき案件はありますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、これで第516回運営小委員会を閉会させていただきます。今日はどうもありがとうございました。
 
―― 了 ――
 

 

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