資料1  第202回ユネスコ執行委員会・第39回ユネスコ総会の結果について

1.第202回ユネスコ執行委員会

期間:平成29年10月4日(水曜日)~10月18日(水曜日)
場所:フランス・パリ(ユネスコ本部)
出席者:小林洋介文部科学省国際戦略企画官他


(1) 総論

ユネスコ執行委員会は、ユネスコ総会での選挙により選出された執行委員国(58か国)のみが参加できる総会の下部機関。会期中は、ユネスコが実施する事業に関する議論がなされたほか、ユネスコの新事務局長候補を選出する選挙が行われた。また、文部科学省からユネスコ本部に拠出している科学に関する信託基金により、サステイナビリティ・サイエンスに関するサイドイベントが実施された。


(2) 主な議論
生物圏保存地域及びユネスコ世界遺産構成資産、並びにユネスコ世界ジオパークのブランド認知度の保持と強化のための戦略及び行動計画の提案
ユネスコエコパーク、世界遺産、ジオパーク等、ユネスコの登録事業のブランド認知度を強化するための戦略と行動計画について報告がされた。各登録サイトの入り口に掲示するための統一のユネスコメッセージを作成することが合意された。


(3)その他
サステイナビリティ・サイエンスに関するサイドイベント
 平成29年10月13日、ユネスコ執行委員会の開催に合わせ、サイドイベントが開催された。本イベントは、サステナビリティ・サイエンスに関する政策ガイドラインの公表・周知を目的としたものであり、各国政府代表者等の参加者に対して当該ガイドラインを配付した。
なお、当日は日本政府を代表し、小林文部科学省国際統括官付国際戦略企画官から、SDGsを達成する上でのサステイナビリティ・サイエンスの重要性を説明した上で、ガイドライン作成を含め積極的に取り組んでいるユネスコに対し謝辞が述べられた。



【参考】これまでの経緯
○ 「地球規模の諸問題の解明には、自然科学、人文・社会科学を含めたすべての学問領域の協力が不可欠である」との認識のもと、日本ユネスコ国内委員会からユネスコに対し、「サステイナビリティ・サイエンスに関するユネスコへの提言」発出。
○ 第37回ユネスコ総会(於:ユネスコ本部)において、ユネスコの次期中期戦略(37C/4)及び事業・予算(37C/5)に、サステイナビリティ・サイエンスの概念を盛り込むことを承認。
○ 我が国の信託基金により、サステイナビリティ・サイエンスを世界に普及させるため、ユネスコ本部等において、国際シンポジウム等を開催(2015-2017年)。
○ 2017年10月のユネスコ執行委員会開催期間中のサイドイベントにおいて、シンポジウムを通して作成したサステイナビリティ・サイエンスの普及に関するガイドラインを各国に周知。

<過去の主な取組み>
2013年4月
サステイナビリティ・サイエンスに関するアジア太平洋地域ワークショップ(第1回)(於:クアラルンプール)
2013年9月
サステイナビリティ・サイエンスに関する国際シンポジウム(於:ユネスコ本部)
2015年3月
サステイナビリティ・サイエンスに関するアジア太平洋地域ワークショップ(第2回)(於:クアラルンプール)
2016年4月
第1回サステイナビリティ・サイエンスに関する国際シンポジウム(於:ユネスコ本部)
2016年12月
第2回サステイナビリティ・サイエンスに関する国際シンポジウム(於:クアラルンプール)
2017年5月
第3回サステイナビリティ・サイエンスに関する国際シンポジウム(於:ユネスコ本部)

2.第38回ユネスコ総会

期間:平成29年10月30日(月曜日)~11月14日(火曜日)
場所:フランス・パリ(ユネスコ本部)
出席者:林芳正文部科学大臣、川端和明国際統括官他


(1) 総論
ユネスコ総会は、2年に1度開催されるユネスコの最高意思決定機関。
会期中は、加盟国による次期ユネスコ事務局長の承認や、ユネスコ次期4か年(2018-2021)事業・予算案に関する審議・承認のほか、第3回ユネスコ/日本ESD賞授賞式が行われた。
11月3日には我が国の政府代表として林文部科学大臣が出席し、一般政策演説を行うとともに、アズレー次期事務局長候補(当時)や各国閣僚等との会談を行った。


(2) 一般政策演説での科学分野に関する大臣の発言
科学分野においては、サステイナビリティ・サイエンスのような分野横断的かつ統合的なアプローチを取り入れることで、ユネスコはこれまで顕著な成果を上げているが、今後も海洋分野や水分野の事業連携による減災や気候変動対策の取組や、ユネスコエコパークやユネスコ世界ジオパークの協働による人間と自然の調和の活動等をより一層促進することにより、SDGsの達成に取り組むことをユネスコに期待する旨、大臣から発言した。


(3) 執行委員会執行理事国選挙及びIHP政府間理事国選挙
我が国が執行委員会の執行理事国として当選した。
また、我が国のIHP理事国としての任期が本総会で切れることから、立候補の意思を表明していたところ、当選が実現した。我が国が所属するGroupIV(アジア・太平洋地域)からは他に、イラン、韓国、スリランカが選出された。


(4)主な議論
39C/5(次期事業・予算案)


自然科学

現在の事業予算案において、IHPに代表される水科学分野の事業が主要項目(Main Line of Action: MLA)ではなく、より下位の達成目標(Expected Results: ER)となっていることを受け、水の安全保障についてMLAに追加する内容の修正案を認める決議案が採択された。また、主要プログラム(Major Programme)II(科学)のMLA1(科学技術イノベーションと持続可能な発展のための知識利用)の柱書に「基礎科学」の文言を加える案が了承された。


IOC
各国からは、IOCはSDGsと連携した事業となっており、津波早期警報システムの整備や海洋観測事業等はIOCの重要な事業である、海洋に関する教育を更に推進すべき等といった意見があった。


人文・社会科学
各国からは、ユネスコは生命倫理、科学倫理に取り組んでいる唯一の国際機関であり、国際生命倫理委員会(IBC)や科学的知識と技術の倫理に関する世界委員会(COMEST)の果たす役割は大きい、サステイナビリティ・サイエンスは今後の持続的発展のために科学に何ができるかの指針である、ユネスコによる異文化対話の取り組み及び社会変容マネージメント(MOST)を歓迎する、など、予算案を支持する多くの声が寄せられた。


国連海洋科学の10年(2021年から)
第29回IOC総会でSDGsに絡めて提案された「持続可能な海洋科学の国際10年」について、国連総会に対し、2021年から2030年までを持続可能な海洋科学の国際10年として宣言し、IOCをそのコーディネーターとして指名するとともに、ユネスコ加盟国に対し、国際海洋の10年の設立を援助しその発展と実行に貢献することを求める決議案が採択された。本提案は平成29年12月に開催された国連総会においても採択され、2021年からの10年が「国連海洋科学の10年」として宣言された。


国際元素周期表国際年(2019年)
2019年が元素周期表の概念が提唱されてから150周年に当たることから、同年を「国連元素周期表国際年」とすることを国連総会に提案することについてユネスコの支持を求める決議案が採択された。本提案は平成29年12月に開催された国連総会においても採択され、国際年が成立した。


国際光の日の宣言
レーザーの世界初の発振(1960年)の日である5月16日を国際光の日として提唱することを求める決議案が採択された。


科学研究者の地位に関する勧告の改定案
1974年に採択された「科学研究者の地位に関する勧告」について、第37回総会において、科学と社会の発展と倫理的規則の変化等に伴う改定案を事務局長に対し示すよう決議されていたところ、このたびの総会において、事務局から修正案「科学と科学研究者に関する勧告」が示され、審議の上、採択された。
また、勧告の実施及びモニタリングにおいて実効性をあげるため、事務局においてモニタリングのための新しいガイドラインを策定することが推奨された。


勧告の構成
1. 勧告の適用範囲
2. 科学研究者と国の政策の立案との関係
3. 科学研究者としての初期的教育及び訓練
4. 研究における権利及び責任
5. 科学研究者の成功のための諸条件
6. 本勧告の活用


旧勧告から新たに追加若しくは強化されたポイント
・ 研究によって得られたデータ、知識や成果へのオープンアクセスの促進
・ 研究において生じる倫理の問題への対処
・ 研究に係る女性への差別・偏見の廃止
・ 加盟国による研究成果の国内の政策立案への反映
・ SDGsのターゲット9.5(科学研究に係る予算や研究開発従事者の数の増加等を通し、全ての国々の産業セクターにおける科学研究を促進し、技術能力を向上させる)に記載された目標に向けた行動の促進

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