資料1-2 新型コロナウイルス感染の危機的状況に伴う「教育の未来」に向けた長期的な重要課題に関する見解

「教育の未来」国際委員会委員  
東京大学名誉教授、元日本国文化庁長官  
青柳 正規  

 世界中で新型コロナウイルスが猛威を振るっているが、私たちは無力ではない。人類と感染症との闘いの歴史の中から、私たちはすでに多くのことを学んできた。健康・安全に関する知識を伝達する教育の役割が重要であることは明らかであり、また、外出規制や隔離が続く中でも人々が連帯の気持ちを忘れないことが、コロナ後の世界を生きるカギとなるだろう。一方で、ウィルス拡散防止策としての隔離や孤立の方策が国家的な集団主義や孤立主義につながって個々の市民権を脅かす恐れのあることを指摘し、地球規模での協力こそが真の拡大防止につながる方策であることを伝えるのも教育の責務であろう。

 技術革新の恩恵により、遠隔教育の充実など現時点でもできることはたくさんある。「教育の未来」が描く構想案の中で言及されているように、「知識は、世界規模の公益物として尊重されなければならない。教育は、絶え間ない不釣り合いに言及する一方で、地域の知識、固有の知識、異文化間交流、知識の大多数及び流動性といった、様々な異なる声を取り入れ考慮しなければならない」。こうした観点を満たした新しい学び方を実現に導いていくことが、ユネスコに期待されている。

 コロナ後の世界では、外出規制や隔離によって生じた分断を、地域と世界の両方とのつながりの中で癒し、一人一人のレゾンデートル(自身の存在価値)を形成・復活させていくことが求められるだろう。現在の状況が収束した後には、特に、未来を創る若者が共通の活動を通じて繋がる経験や、共に考える機会を提供するプロジェクトを行うことが効果的であると考える。

 学習によって大きな可能性が開くと同時に、複雑化をましている世界がさらに多くの困難を抱えつつあることをより多くの人々に理解してもらい、だからこそ教育の意義を一層深く考えてもらいたい。

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