日本ユネスコ国内委員会総会(第146回)議事録

1.日時

令和2年2月21日(金曜日)14時30分~17時00分

2.場所

ホテル ルポール麹町 2階「ロイヤルクリスタル」

3.出席者(敬称略)

〔委員〕
濵口道成(会長代理)、古賀信行(副会長)
秋永名美、石井尚子、礒田博子、市丸祥子、井上洋一、猪口邦子、大枝宏之、大串正樹、大野希一、翁百合、越智隆雄、加治佐哲也、片山勝、木間明子、肥塚見春、小林真理、斎藤嘉隆、西藤清秀、佐藤美樹、佐野智恵子、杉村美紀、鈴木郁香、角南篤、髙橋秀行、立川康人、道傳愛子、西尾章治郎、丹羽秀樹、野村浩子、蓮生郁代、長谷川洋、林朋子、東川勝哉、日比谷潤子、藤田みさお、見上一幸、箕浦有見子、吉田和浩

〔欠席・委任〕
秋葉剛男、伊東信一郎、漆紫穂子、相賀昌宏、大島まり、岡崎環、岡本薫明、萱島信子、河野健、小長谷有紀、髙木錬太郎、野本祥子、芳賀満、羽田正、平野英治、福岡資磨、細谷龍平、山口しのぶ

〔外務省〕
志野光子 国際文化交流審議官、森尊俊 国際文化協力室長

〔文部科学省〕
萩生田光一 文部科学大臣、藤原誠 文部科学事務次官

〔文化庁〕
石田徹 文化資源活用課文化戦略官

〔事務局〕
松浦晃一郎 日本ユネスコ国内委員会特別顧問(前ユネスコ事務局長)、大山真未 文部科学省国際統括官、大杉住子 文部科学省国際統括官付国際戦略企画官、その他関係官

4.議事

【濵口会長代理】 それでは、御時間になりましたので、開始させていただきます。本日は、御多忙中にもかかわらずお集まりいただき、ありがとうございます。
まず、事務局から定足数の確認をお願いしたいと思います。
【秦国際統括官補佐】 失礼いたします。本日は、出席の委員が37名で、委員の過半数ですので、定足数を満たしております。
【濵口会長代理】 ありがとうございます。
それでは、定足数が満たされるとの報告がございましたので、第146回日本ユネスコ国内委員会を開会させていただきます。
なお、国内委員会の規定に基づき、本日の総会は、一部の議題を除いて、傍聴の希望者に対して公開いたします。御発言は、非公開部分を除き、そのまま議事録に掲載され、ホームページで公開されますので、どうぞよろしくお願いいたします。
まず、非公開議事を開始させていただきます。議題1、日本ユネスコ国内委員会の構成についてお諮りします。この議題では、国内委員会委員長の互選を行います。国内委員会委員の人事に関する事項について審議するため、会議の議事を非公開といたします。
(中略)
【濵口会長代理】
ここからは、再び会議を公開といたします。傍聴の方々及び報道関係者の方が入場されますので、しばらくお待ちください。
(傍聴者等入室)
【濵口会長代理】 よろしいでしょうか。それでは、再び開始させていただきます。
本日の会議には、萩生田光一文部科学大臣に御出席いただいております。まず初めに、萩生田大臣の御挨拶をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【萩生田文部科学大臣】 皆様、こんにちは。文部科学大臣の萩生田光一でございます。第146回日本ユネスコ国内委員会の開会に当たり、一言御挨拶を申し上げたいと存じます。
日本ユネスコ国内委員会におかれましては、昨年10月、ユネスコ活動の活性化について建議を取りまとめいただき、深く御礼を申し上げたいと思います。本日は、建議の実現に向けた具体的な方策について御議論をいただくと賜っております。委員皆様の御知見と忌憚のない御意見を頂きますと幸いに存じます。
さて、国際社会全体の開発目標である持続可能な開発目標、SDGsの達成に向けた取組は、確実に広がりを見せています。ユネスコにおいても多様な事業によりSDGsの実現が目指されています。我が国の提唱により開催された持続可能な開発のための教育の推進においては、新たな国際枠組み「ESD for 2030」が昨年12月の国連総会で採択されました。科学分野においても、我が国が貢献を図ってきた海洋科学分野において「国連海洋科学の10年」が開始をします。本日は、世界最多のユネスコスクールによる活動など我が国のすばらしい蓄積を受け継ぎつつ、日本のユネスコ活動全体を一層推進するため、委員の皆様の御知見を頂きたいと思います。
先ほど新体制について委員の皆さんからお諮りをいただきましたので、私の方では速やかに手続に入らせていただきたいと思っております。実は私自身も若い頃、ユネスコの国内委員を真面目に務めさせていただいた経験がございますので、この会の持つ役割の重要さは十分承知をしているつもりでございます。是非、活発な御意見の場となることを祈念し、私からの御挨拶にさせていただきます。大変御苦労さまでございます。(拍手)
【濵口会長代理】 ありがとうございました。萩生田大臣は、この後次の御予定がございますので、ここで退席されます。どうもありがとうございました。
(萩生田文部科学大臣退席)
【濵口会長代理】 それでは、次の議題に移らせていただきたいと思います。次に、昨年9月12日に開催されました第145回国内委員会総会以降、委員の異動がございましたので、事務局から紹介をお願いいたします。
【秦国際統括官補佐】 失礼いたします。前回の国内委員会の総会以降、国会の推薦により日本ユネスコ国内委員会委員に就任された委員の方々をお名前で御紹介させていただきます。
初めに、大串正樹委員。
斎藤嘉隆委員。
【斎藤委員】 よろしくお願いします。
【秦国際統括官補佐】 井上委員。
【井上委員】 よろしくお願いします。
【秦国際統括官補佐】 加治佐委員。
【加治佐委員】 よろしくお願いします。
【秦国際統括官補佐】 肥塚委員。
【肥塚委員】 よろしくお願いいたします。
【秦国際統括官補佐】 佐藤委員。
【佐藤委員】 よろしくお願いします。
【秦国際統括官補佐】 鈴木委員。
【鈴木委員】 よろしくお願いいたします。
【秦国際統括官補佐】 角南委員。
【角南委員】 よろしくお願いします。
【秦国際統括官補佐】 髙橋委員。
【高橋委員】 よろしくお願いいたします。
【秦国際統括官補佐】 長谷川委員。
【長谷川委員】 よろしくお願いいたします。
【秦国際統括官補佐】 林委員。
【林委員】 よろしくお願いいたします。
【秦国際統括官補佐】 見上委員。
【見上委員】 よろしくお願いいたします。
【秦国際統括官補佐】 また、本日御欠席ではありますけれども、お二方、漆委員と大島委員が御就任されています。
先ほどお呼びさせていただきました委員の方々は、新しい委員の名簿の方にも反映させていただいておりますので、御参照ください。以上でございます。
【濵口会長代理】 御紹介ありがとうございました。
本日は、関係省庁や、議題3でヒアリングに対応いただく方々にも御出席をいただきましたので、よろしくお願いします。
報道関係の皆様に関しましては、写真撮影はここまでとさせていただきますので、どうぞ御了承いただきますようお願いします。
なお、本日は、前回よりペーパーレスの会議となっております。議事に先立ち、事務局からタブレットの使い方等、説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
【秦国際統括官補佐】 本年度から本委員会では資料のペーパーレス化を進めさせていただいています。既に前回の総会でもペーパーレス化させていただいておりますけれども、ユネスコがやはり全てのSDGsに貢献する取組を推進しているという観点からも、御理解を賜りたいと思います。
また、本日、ペットボトルではなく、グラスでの水の配付とさせていただいております。適宜、無くなりましたら、係の者が近くにありますお水と交換させていただきたいと思っておりますが、御理解いただけたらと思います。
また、資料の方ですけれども、議事次第とリーフレット類の配付資料を除きまして、会議資料は御手元のタブレットに全部格納させていただいております。本日の会議の資料の構成については、議事次第中の一覧のとおりでございます。操作方法につきましては、念のため、タブレット・PC簡易操作マニュアルを机上に置かせていただております。
資料は一つのPDFにまとめてございます。各ページの下に通し番号を振っております。画面の左側にはしおりという形で表示がありますので、こちらの資料番号、タイトルをクリック又は指でタッチしていただくという形で該当のページが出てまいりますので、そちらの方で御操作をお願いいたします。
また、何か不都合や御不明な点がございましたら、後ろの方に職員が控えておりますので、御不明なときにはお近くの職員をお呼び止めいただけたらと思います。
説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。
【濵口会長代理】 ありがとうございます。マイクロプラスチックの汚染の問題もありますので、どうぞお水に関して御理解を賜りたいと思います。よろしくお願いします。
それでは、議題2、最近のユネスコ関係の動きについてに移りたいと思います。初めに、前回の国内委員会総会以降の最近のユネスコ関係の動きについて、事務局及び関係省庁より御報告を頂きます。一連の事項を続けて御報告を頂きますので、それでは、よろしくお願いいたします。
【大山国際統括官】 ありがとうございます。それでは、文科省の国際統括官をしております大山と申します。よろしくお願いいたします。
まず私の方から、タブレット上、資料1-1のところをご覧いただけますでしょうか。ユネスコ執行委員会の結果についてでございます。執行委員会と申しますのは、ユネスコの総会に次ぐ意思決定機関でございまして、通常、例年、春、秋2回ございます。昨年令和元年10月の執行委員会でございますが、主要議題の結果にございますように、教育関係のほか、「世界の記憶」、こちらは価値のある記録物の保全を目的としたユネスコの登録事業の一つでございますが、かねてより制度改善の取組が進められておりましたが、引き続き、加盟国のワーキンググループで議論を進め、今年2020年の秋の執行委員会にこの事業の見直しに関する議論の結果について最終報告を提出するという決議が採択されております。また、このほか、AIについての状況調査の報告等が行われております。
続きまして、資料1-2をご覧ください。ユネスコ総会の結果についてということでございます。こちら、総会は2年に1回の開催でございます。昨年9月のこの国内委員会の総会で、ユネスコ総会での我が国の方針を御議論いただいております。それを踏まえて対応させていただいております。
我が国からの対応出張といたしましては、上野通子文部科学副大臣をヘッドということで、上野副大臣から一般政策演説を政府を代表して行っていただいています。内容としては、全体概要のところにございますが、火災がございました首里城の復旧への決意、あるいは「教育の未来」プロジェクト、これはユネスコのアズレー事務局長主導によります新しいプロジェクトで、世界の中での教育の役割、ユネスコのリーダーシップ等について各国有識者が議論をして報告をまとめるというものでございまして、日本からも元文化庁長官の青柳先生に入っていただいております。こういったプロジェクトとか、あるいはESD、持続可能な開発のための教育等について日本が引き続きしっかり貢献をしていくといったことを発信してございます。
また、上野副大臣は、日本の財政支援で創設されましたユネスコ日本ESD賞の授賞式にも参加しておりまして、これが、タブレットの資料上スクロールしていただきますと、この資料1-2の3ページ目、4ページ目にかけて写真で御紹介させていただいております。
タブレット上、資料1-2の5ページから、全体会合における主要議題の結果ということで、ポイントのみ御紹介いたします。例えばマル1ですが、ESD、持続可能な開発のための教育の次の実施枠組み「ESD for 2030」、2020年から2030年の枠組みが承認されましたほか、同じページの下の方に参りますと、オープンサイエンス、科学研究の成果の共有の在り方等についてとか、次の6ページに参りまして、人工知能の倫理「AIの倫理」に関して今後も議論を進めるといったようなことになっております。
また、高等教育の資格承認についての世界規約について最終報告ということで、こちらはこの後すぐ高等教育局から説明させていただきたいと存じます。
続けまして、次のページ、7ページ目に参りまして、ユネスコの組織改革、マル7でございます。真ん中辺りですが、こちらもアズレー事務局長の主導による戦略的変革に関する諮問有識者会議が開かれておりまして、ハイレベルリフレクショングループと申しますが、こちらの第1回会合が開かれまして、本日も御参加の猪口邦子先生に御参加いただいております。
このほか、その他にございますように、世界各国のユースが諸課題をテーマに議論を行うユースフォーラムも開催され、日本の若者も参加しております。
私からは以上でございます。
【濵口会長代理】 ありがとうございます。続いて、石田文化戦略官から御報告いただくことになりますか。よろしくお願いします。
【佐藤国際企画室長】 先に、失礼いたします。高等教育局の佐藤と申します。ページ6にあります、マル5の高等教育の資格の承認に関する世界規約に関する最終報告について簡単に御説明させていただきます。ページ9のポンチ絵をご覧いただけると分かりやすいと思います。こちらの高等教育の資格の承認につきましては、そもそも学生のモビリティの向上に伴って、世界6地域におきまして六つの地域規約が存在してございました。学生のモビリティに伴う、まさにそれぞれの学位とか入学資格といった資格を相互に承認し合うということを目的に各地域の規約があるわけですが、今般それの世界版をまとめようとなり、今回の総会においてこの世界規約が採択されました。
全体の議論としましては、世界各国からこの世界規約の採択を支持する前向きな御発言がありました。一部日本からも修正等の意見も出しましたが、最終的には全てまとまりまして、今後ユネスコの手続を経て各国が加盟する手続に移っていくということになります。以上です。
【石田文化戦略官】 続きまして、文化庁の方から、世界文化遺産「琉球王朝のグスク及び関連遺産群」首里城跡で発生した火災の被害状況の報告概要をさせていただきたいと思います。文化庁で文化戦略官をしております石田と申します。
先ほど大山統括官の方からも説明がございましたけれども、ユネスコの世界遺産の関係で、昨年10月31日首里城で火災が発生いたしました。それを受けまして、第40回ユネスコ総会の際に、11月15日でございますけれども、上野副大臣の方からロスラーユネスコ世界遺産センター長との会談を行っていただきまして、そこで、遺産の持つ価値には基本的に問題ないという認識をユネスコから頂いたところでございます。また、そのとき併せまして、ユネスコの方からは、専門家を派遣する用意があること、それから、できるだけ速やかに状況の報告を受けたいという話がございました。その話を受けまして、今年の1月29日にユネスコ世界遺産センターの方で火災の発生状況等について報告させていただいたところでございます。
資料1-3の概要ペーパーに詳細がございますけれども、今回の首里城の資産の概要、それから、火災の概要、それから、顕著な普遍的価値に与える影響、こういったことについてロスラーセンター長に説明いたしますと同時に、4番の今後の復旧に向けた基本方針にありますが、基本方針として、復元時の基本的な考え方を踏襲して復元を図っていくこと。具体的には、首里城正殿について、1712年に再建され、1925年に国宝指定されたものに基づいて復元することを原則とする等といったことを説明しました。また、併せて、日本政府として引き続きユネスコと緊密に連携しながら進めるという旨の確認をしてまいりました。
簡単でございますけれども、以上の説明となります。
【大杉国際戦略企画官】 続きまして、次期ユネスコ中期戦略の策定に向けてということで、資料の方は、資料1-4、ページ数で申しますと11ページをご覧いただければと存じます。
ユネスコの中期戦略ですけれども、8か年ごとに策定されて、加盟国が承認ということになっております。ユネスコの事業運営に関する基本文書ということで、現行の中期戦略は2014年から2021年ということで、2022年から2029年までの8か年の戦略の議論が始まっているというところでございます。中ほどにスケジュールがございますけれども、現在、各地域・加盟国のコンサルテーションのプロセスが開始されておりまして、春には報告書がまとまり、執行委員会、総会で順次議論をされるというような段取りでございます。
現段階で様々な視点が示されておりますけれども、Aの(1)にございますような横断的な課題、グローバルな優先課題と優先課題のグループということ、それから、運用及び構造に関する課題ということで、例えばユネスコによる行動の影響を増加させていくべきではないか、あるいは様々な統合的なアプローチをしっかり適用していくべきではないか、次のページに参りまして、現地事務所への分権化などの視点、それから、Bのように分野別の重点課題が示されているところでございます。日本としましては、昨年おまとめいただいた建議なども踏まえながら、これらにしっかり対応していきたいと考えているところでございます。
続きまして、資料1-5に参ります。資料1-5、ページ数で申しますと15ページ、ポンチ絵で、横の表で載せさせていただいておりますけれども、予算について御説明を申し上げたいと存じます。
まず文科省分の予算でございます。国内外におけるユネスコ活動の推進ということで、緑の部分、信託基金を通じたユネスコ事業への協力という部分が前年度と同額。予算状況厳しい中でございましたけれども同額を確保いたしまして、アジア太平洋地域の教育、それから、ESD、地球規模課題解決のための科学、「世界の記憶」と、四つの拠出金ということで確保させていただいております。
それから、その下が、国内のユネスコ活動の活性化ということで、昨年の建議でも御提言いただきましたユネスコの未来共創プラットフォームを立ち上げまして、SDGsの担い手など新たな担い手とこれまでのユネスコ活動の担い手がしっかりと協力していけるようなプラットフォームを立ち上げていきたいと考えてございます。
次の16ページ目にこのプラットフォームの詳細がございます。プラットフォーム事務局の構築・運営、分かりやすいポータルサイトの運用なども含め、こういった事務局を立ち上げていくということ、それから、ユネスコスクールの拠点、ジオパークの拠点、エコパークの拠点それぞれとしっかりつながったようなプラットフォームを立ち上げて、建議に沿ったユネスコ活動の更なる活性化を図っていきたいというところでございます。
【森国際文化協力室長】 続きまして、外務省から、外務省の関連のユネスコ予算について御報告を申し上げます。
まず令和2年度の概算要求ですけれども、ユネスコの分担金として約31.4億円、これは義務的な分担金です。それから、外務省からの任意の拠出金については約3億円。これは前年に比べますと0.5%増ということで、全体的に厳しかった状況の中ではユネスコの重要性を認めていただいたと理解しております。これらの予算が財務省に承認されて、現在国会審議中でございます。
また、私どもの方では、こういった厳しい財政状況を反映して拠出金の予算が伸び悩む中で、補正予算の獲得にも努めております。先日国会の方で成立をした令和元年度の補正予算では、ユネスコに約2.1億円認められております。例を御紹介しますけれども、一つは、アズレー事務局長が今力を入れているのが、イラクのモースルの再生事業なんですが、これは教育文化関連施設を再建しようということでやっています。そこのモースルの若者の職業訓練の事業が含まれています。また、日本人で横関祐見子さんが所長を務められているアフリカの人材開発国際研究所、IICBAがございますけれども、その横関さんがされているアフリカの教育人材育成プロジェクト、そういったものにも今回補正予算が認められています。
外務省の分担金、それから、任意拠出金の御紹介をしましたけれども、予算が伸び悩む中で、更にユネスコと協力を強化していくという努力の中で、私どもはODAを通じた支援も可能な場合にはやっていきたいと思っています。一つ、アフガニスタンのバーミヤンのプロジェクト、これは2003年の世界遺産に登録されて、危機遺産にも登録された訳ですけれども、このバーミヤンの危機遺産リストからの脱却に向けてずっと日本が支援をして取り組んできております。今現在、ODAの無償資金の協力を通じて、バーミヤンの破壊されてしまった西大仏の安定化、それから、壁画の修復といった事業を行うべく調整をしているところでございます。こういった努力をしているということもこの機会に御紹介させていただきたいと思います。
【大杉国際戦略企画官】 続きまして、御報告事項の最後になります。大変駆け足で恐縮ですけれども、資料1-6をご覧いただければと存じます。今後のユネスコ国内委員会の開催予定についてということになります。総会ですけれども、本日2月21日、すみません、時間が消えて枠の外とかに出てしまっておりますけれども、日付はしっかり表示されてございます。今回146回で、次回147回ですけれども、委員の先生方の御都合を踏まえて夏から秋の間に再度開催させていただきたいと思います。
今日から次回までの間に、その下にございます各専門小委員会で本日の議論を踏まえた議論を更に深めて御議論をいただく予定でございます。それぞれ小委員会、開催予定を入れてございますけれども、本日の議論を更に深める小委員会の議論を持っていただき、147回の総会でまたそれを御報告いただくという段取りで考えさせていただいております。
それから、次のページ、資料1-6のマル2ということでページ数18ページ目になりますけれども、ユネスコの関連会議の今後の予定ということになります。今月末には日本信託基金のレビュー会合などもございますけれども、ESDの関係で6月にベルリンの会合があるなど様々会合がございますので、国内委員の先生方にも御協力をいただきながら対応して参りたいと考えております。
大変駆け足になりましたけれども、報告事項は以上です。
【濵口会長代理】 ありがとうございました。それでは、これまでの報告事項について質疑応答、意見交換の時間を設けたいと思います。委員の方で御意見、御質問のあられる方はどうぞ挙手をお願いいたしたいと思います。いかがでしょうか。
はい、西尾先生。
【西尾委員】 資料1-2の6ページの総会関係のところですけれども、マル4で人工知能に関して倫理的問題が書かれています。その問題について、勧告等に向けたいろいろな活動が展開されているのですけれども、国内の体制はどういう状況になっているのかということを知りたく思いまして質問させていただきました。というのは、倫理の問題及びデータの知財等の問題、いわゆるELSIの問題は非常に重要ですので、質問させていただきました。
【濵口会長代理】 いかがでしょうか。
【森国際文化協力室長】 外務省からお答えをします。今まさに御指摘いただいたとおり、昨年の11月の総会でAIの規範的文書、これは法的拘束力は持たない勧告という形式で、これから2年掛けて専門家が議論をして策定をしていくということになっておりまして、実は日本からは、私ども外務省の方からこの草案文書策定を行う専門家会合に対して資金的拠出を行う予定でございます。今現在この専門家会合に出る先生方のセレクションが行われていまして、日本としても可能であればここに専門家を出したいというふうに思っております。「AIの倫理」についてはやはりいろいろな考え方がございますので、そうした中で日本は人間中心の考え方ということできちんと考えもまとめておりますので、そういった考えがきちんと反映されるように積極的に関与していきたいと思っております。
【西尾委員】 どうもありがとうございました。日本の立場というのは非常に重要だと思っておりますので、是非今おっしゃったようなことを進めていただければと思います。よろしくお願いいたします。
【濵口会長代理】 ありがとうございます。非常に重要なポイントを頂きました。アメリカ、中国とは違う第3極を、ヨーロッパは日本と一緒に人間中心のAIで展開したいという意向が学会側からも非常に強く出ております。是非よろしくお願いしたいと思います。
ほかいかがでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。
それでは、次の議題に移らせていただきます。次の議題、建議のフォローアップと今後の取組の在り方についてお諮りいたします。昨年9月の国内委員会の審議を踏まえ、10月に建議「ユネスコ活動の活性化について」が採択されました。本議題では、(1)のフォローアップ状況等において、建議の項目ごとに現在の取組から今後の見通しまで状況を把握します。
その後、本日は資料3にある7名の有識者の方々にお越しいただいておりますが、具体的な取組の好事例や先進的な取組についてヒアリングを行います。7名の先生方におかれましては、大変御多忙中にもかかわらず御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
ヒアリングの後、共有いただいた情報を参照いただきながら、今後の取組の在り方を全体討議の形式にて御討議いただきたいと思います。なお、今回の全体討議の内容を踏まえ、更に詳細な論点については、今後開かれる各小委員会にて御議論いただき、その結果を次回の総会で御報告いただく予定でおりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それではまず、(1)のフォローアップ状況等に入ります。事務局から説明をお願いいたします。
【大杉国際戦略企画官】 それでは、まず資料2-1をご覧いただければと思います。ページ数で申しますと20ページになります。資料2-1が、昨年11月にこの総会での議論を踏まえておまとめいただきました、「ユネスコ活動の活性化について」の9年ぶりの建議ということでございます。ユネスコ活動は様々な意味で節目を迎えるということで、1951年に加盟ということで、来年には加盟70周年を迎えるというところでございます。こういった状況の中で、改めて活性化を図っていくための御提言をこの総会で頂いたというところでございます。
具体的な提言項目は2ページ目、全体のページ数で申しますと21ページの下からになりますけれども、5点御提言を頂きました。1点目はSDGsの達成に向けたESDの推進における主導的な役割。日本が提唱したESDということをしっかり充実させていきつつ、一方でSDGsの中での位置付けが分かりにくいというような、そういった声にも応えていかなければいけない、あるいは国際協力との関係性ということも往還ということをしっかり意識していくというようなことでございます。
2点目が、「国連海洋科学の10年」に向けた活動の活性化ということで、2021年から始まりますので、ここで具体的に日本がどのようなことをしていけるかということ。
それから、3番目が、加盟国間の友好と相互理解の促進という観点からのユネスコ改革への貢献ということで、特に今ユネスコがプライオリティとして取り組んでいる「AIの倫理」とか「教育の未来」といった面でも日本がしっかりと貢献していくということ、それから、政治家の議論が加熱しないようにということで、しっかりと貢献していくということでございます。
それから、4番目が、ユネスコ活動のメリットを生かした地域創生や多文化共生社会の構築ということで様々な登録の仕組みがございますので、これを地域の活性化あるいは多文化共生社会の構築ということにしっかりと生かしていく、また、地域のユネスコ活動につきましても、地域と世界がつながっているというメリットをこれまで以上に発揮していくということの御提言を頂いております。
そして、最後に、プラットフォームということで先ほど予算事業として御紹介をさせていただきましたけれども、ユース、地方自治体、NPO、民間企業等とともにユネスコ活動の更なる活性化を図っていくプラットフォームの構築ということで御提言を頂きました。
まだまだ10月に御提言頂いたばかりですので、これからしっかりと取り組んでいくという部分が大きいわけですけれども、取り急ぎ現時点で実績あるいは今後の予定ということをまとめさせていただいております。それが資料2-2になります。横表になりますが、オレンジの部分で先ほどの5項目、そして、左側に、これまでの実績、そして、今後の方向性ということを書かせていただいております。
1点目、SDGs達成に向けたESDの推進ということでは、国際動向の中にございますように、「ESD for 2030」、ユネスコのみならず国連においても決議が採択されるようにということで、これは日本からも働き掛けて実現されたところでございます。三つ目の丸でございますけれども、このロードマップをユネスコが作成するということで様々なコンサルテーション会合が開催されておりますけれども、こちらには教育小委の委員長の杉村先生にも御参加いただくなど、日本としても積極的に貢献を行っております。また、国内ハイレベルウィークにおいてESDのサイドイベントを行ったり、また、ユネスコのみならず国連大学を通じたESDの推進も取り組んでいただいております。
今後といたしましては、右側にございますように、まずはドイツでのキックオフイベント、6月のイベント、これにしっかりと日本としても参加するのみならず、サイドイベントの開催などを通じて、愛知、岡山からつながるESDのこれまでの蓄積をしっかり振り返るようなイベントを実施したいということ、また、国連本部のサイドイベント、国連大学の取組なども引き続き検討していきたいと考えてございます。
その下に、国内における推進ということで、外務省さんでお取りまとめいただいておりますSDGs実施指針あるいはアクションプランにしっかりとESDを今回位置付けていただきました。今後ですけれども、右側にございますように、環境省さんなどとも連携して、ESDの国内実施計画のレビューを取りまとめるという予定にしてございます。これは後ほど御紹介をさせていただきます。また、新しい国内実施計画に向けた議論あるいは指導要領の改訂などを受けて、ESDの手引あるいはユネスコスクールのガイドブックの改訂なども予定しております。それから、文科省としても様々なフォーラムなどのイベントも予定してございます。
それから、その下にユネスコスクール等のネットワークですけれども、現在世界一の規模を誇るユネスコスクールの数ですけれども、右側にございますように、今後も活動の質を維持していくために、現在、登録申請・解除の手続などが、ナショナルコーディネーター、それから、ASPUnivnetという大学間連携、これらの役割をもう少し明確にしていく必要があるだろうということが指摘されておりますので、来年度、教育小委においてこういった手続の在り方を再度御議論いただく予定でございます。また、先ほど申し上げた改訂した手引・ガイドブックを踏まえて、更に活動の充実、全国大会や地域ブロック大会なども引き続き行っていきたいと考えております。
それから、次のページ、25ページ目に参りまして、「国連海洋科学の10年」ということです。現在は計画策定段階ということでございますけれども、こちらにも日本から植松先生等に御参加いただいて、しっかり貢献をさせていただいております。引き続き、IOC分科会主査の道田先生など各委員に御協力をいただきまして、この計画策定に貢献していきたいと考えております。また、国内でも様々関係機関と連携してパンフレットの作成などを行っておりますので、学会、各種イベントで幅広くこの「10年」がしっかり周知されるように努力していきたいと考えております。
それから、3番目でございます、ユネスコ改革への貢献です。ユネスコ改革につきましては、国内委員会委員でもあられる猪口先生にハイレベルリフレクショングループということでパリの会合に御参画いただいております。後ほど詳しく御紹介があるかと思います。
また、「教育の未来」につきましては、信託基金の効果的活用も含めて、プロジェクトへの貢献。また、「AIの倫理」、先ほど御紹介がありましたけれども、外務省の信託基金も活用しながら草案作成支援を行っております。また、「世界の記憶」につきましては、制度の包括的見直しにしっかり参画していくということ、併せて、人材育成などにつきまして、ワークショップあるいはポリシー・フォーラムをしっかりと日本としても貢献していきたいというところでございます。
それから、4番目、ユネスコ活動のメリットを生かした地域創生や多文化共生社会の構築ということで26ページ目になります。様々な事業を活用いたしまして、あるいは世界遺産サミットなどのイベントも活用いたしまして、登録が目的ということでなくて、そこからどういうふうに活用していくのか、また、ネットワークとして広げていくのか、それぞれの登録ごとに様々な事業を行わせていただいております。今後もこうした取組を続けていきたいと思います。また、一番下にございますように、我が国の大学、ユニツインやユネスコチェアの推進ということもございますので、申請も含めこれらの活性化も図っていきたいというところでございます。
最後、5番目でございますけれども、27ページ目、プラットフォームの構築ということで、現在、事務局を担う事業者を募集している段階でございます。それから、国内委員会委員による活動ということで、ご覧いただいたような会合、様々な会合に国内委員にも御協力を頂いているところでございます。今後もユネスコ関連の各種のコンクール、コンテスト等もございますので、こういったこと等も含めて引き続き御協力を頂きたいと考えております。SDG-教育のステアリング・コミッティ、吉田委員が共同座長ということでこちらも御貢献いただいているというところでございます。
それから、広報大使でございますけれども、現在3名のユネスコ広報大使に御活躍をいただいております。さかなクンさん、それから、平野啓子さん、それから、末吉里花さんということですけれども、この3名の広報大使に引き続き広報活動に従事していただくということで考えております。
続きまして、次のページ、少しサイズが異なりますけれども、28ページ目から、こちらが先ほど少し御紹介しました、環境省と協力しながら作成させていただいておりますESDのアクションプログラムのフォローアップ状況でございます。2020年から新しい枠組みになりますので、旧枠組みにおける活動状況をしっかりと総括をしまして次につなげていくということで、ESD関係省庁連絡会議などの議もこれから経まして、レビューを公表していきたいと思います。
基本的には計画に沿ってしっかりと実施されたというところでございますけれども、一番右側に今後の課題ということで、更なる活動の質を高めていくための提言をさせていただく予定ですので、これを新しい枠組み「ESD for 2030」の国内実施計画につなげていきたいと考えているところでございます。
少々長くなりましたけれども、現在の建議のフォローアップ状況につきましては以上になります。
【濵口会長代理】 ありがとうございました。それでは、ただいまの説明について、何か御質問、御意見ございますでしょうか。はい、どうぞ、お願いします。
【松浦特別顧問】 ユネスコ活動の活性化についてのフォローアップ、詳しい御報告ありがとうございました。一つだけ質問させてください。それは、「世界の記憶」についてですが、私も大体の流れは承知していますけれども、政府間のワーキンググループで検討を進めて、今年秋の執行委員会に最終報告書を出すということになっていると御説明がございました。その間、先ほどの今後のユネスコ関係の予定の中に、5月に「世界の記憶」グローバル・ポリシー・フォーラムがパリで開かれるということが書いてありますけれども、この会議の目的はどういうことなのか。今の政府間、加盟国間のワーキンググループとどういう関連があるのかというのが第1点です。
それからもう一つは、加盟国間のワーキンググループの検討状況です。その後の検討状況、更に言えば、見通し。残念ながら、「世界の記憶」は全体としては非常にポジティブだと思うんですが、ネガティブな面で今、凍結状態にあるわけですけれども、その再開の見通しなどについて教えていただければ有り難いです。以上です。
【大杉国際戦略企画官】 ありがとうございます。まずは私の方からグローバル・ポリシー・フォーラムについて御紹介をさせていただきたいと思います。これは制度の包括的見直しの議論とはちょっと離れまして、文書の保存に関する人材育成といった面で専門家の知見を交換したり、更にその情報交換を基に新しい枠組みを考えたりということで、日本の信託基金を活用して開かれているものでございます。次回が第2回ということになりまして、日本からも国立公文書館さんとか、あるいは各大学の専門の先生に御協力いただきまして、特に日本は防災という意味で記録物の修復とか災害からの保護という面で非常に期待をされておりますので、こういった知見を各国から集まった専門家と共に議論するといったような、そういうフォーラムでございます。
【志野国際文化交流審議官】 すみません、外務省の方から「世界の記憶」の制度改善の現状について御報告させていただきます。昨年1年間ワーキンググループを作りまして加盟国間で議論を深めてまいったんですけれども、かなりの部分について議論が深まって、いろいろな点で合意点を見出すことができたんですが、最後の最後の詰めのところで合意を作ることができなくて、これ、コンセンサスで成立させることが望ましいだろうということもありましたので、合意について、全ての点についての合意が成立しない限り合意は無しとみなすという形で押し切られた形で去年は合意ができなかったという経緯がございます。
去年は議論したい国が出たり入ったりいろいろとしたものですから議論が集中しなかったことがあるんですけれども、今年はメンバーを絞ってきちんと議論をしていこうということで、ワーキンググループのメンバーを限定した形で開始する予定になっておりまして、これから議論の方を深めていく予定です。昨年かなり深めたところもございますので、今年こそは何とか制度改善がまとまるように進めていきたいと思っております。以上です。
【濵口会長代理】 よろしいでしょうか。
【松浦特別顧問】 ありがとうございました。先ほど私、質問しそびれたんですが、このグローバルな「世界の記憶」と同時にアジアの「世界の記憶」というのがあって、韓国が熱心に推進して、たしかその検討の本部が韓国に置かれたかと思うんですが、アジアの「世界の記憶」は今どういうふうになっていますでしょうか。
【大杉国際戦略企画官】 MOWCAPの枠組みという、地域ごとの地域登録の枠組みにつきましては、国際登録の枠組みと足並みをそろえて改善するということが決められております。そういう意味では、国際登録の状況を現在、各地域登録の枠組みが見守っているというふうな状況であります。
【濵口会長代理】 よろしいでしょうか。
【松浦特別顧問】 はい。
【濵口会長代理】 ありがとうございます。ほか御意見ございますか。後の全体討議の質疑応答の際にも本事項の質問が可能でありますので、もし何かありましたら、後半でまたお願いしたいと思います。
それでは、(2)の具体的事例のヒアリングに入りたいと思います。本日ヒアリングの御発表者は、資料3にある7名の方々でございます。御多忙の中、また、遠方から御出席くださいまして、誠にありがとうございます。
それでは早速ですが、建議の事項別にお話を伺いたいと思います。なお、個別の事例についての質疑応答は、ヒアリング終了後にまとめてお受けし、その後、全体討議に移ることとさせていただきます。
初めに、SDGs達成に向けたESDに関連して、横浜市教育委員会・初中学校企画課の石川課長より、横浜市のESDの取組について御紹介をいただきます。石川課長、よろしくお願いいたします。
【石川課長】 御紹介いただきました、横浜市教育委員会事務局の石川でございます。よろしくお願いいたします。私からは、34ページにございます、横浜市の公立学校におけるESDの取組についてお話をさせていただきます。
1ページおめくりいただきまして、横浜市は、これまでの取組でございますけれども、平成28年度からグローバル人材の育成に向けたESDの推進事業を行っております。ESDは、学校教育の中には新しく入ってきたものといいますか、教職員がまず知るために、右の方にちょっと小さくなっているんですが、教員研修資料を作りまして、全ての教職員に配付いたしました。大きくなっている左側のところが、その中の1ページでございます。
それから、おめくりいただきまして、次のページ、36ページでございます。横浜市は、小中高、特別支援学校も含めまして500校程度あります。その中で4校のユネスコスクールをはじめとしたESD実践推進校を中心にしまして、グローバル人材の育成に向けたESDの推進事業を行ってございます。
そこにありますのは、その中の年度末の交流報告会の様子でございます。一番左は、ユネスコスクール全国大会での横浜の取組紹介、真ん中は、参加の児童生徒が交流報告会でポスターセッションをしましたり、あるいはワークショップをいたしましたりして、お互いの実践を交流する。右側は、有識者の講演やワークショップなどで教職員が学びを深めるという様子でございます。これは年度末に行ってございます。
次のページに行っていただきまして、また、大学や関係機関と連携して事業を進めていくために、コンソーシアムを組織し、学校のESD推進を支えました。東京都市大学の佐藤真久教授をはじめとする有識者の方にコンソーシアムの設立から深く関わっていただきまして、様々な御示唆を頂いてございます。右下にあります実践報告というのは、その年その年の実践をまとめて冊子を作ってございます。有識者の皆様、コンソーシアムの皆様にもこれをバックアップしていただいてございます。各学校に配付をしています。
次のページでございます。38ページです。今年度はESDの推進、広げるということに加えて、ESDの教育効果の評価・普及に向けても取り組んでございます。ESDの評価というのがなかなか難しいものでございまして、言葉の意味を価値を引き出す活動として捉えて、大きく三つの方法で推進してございます。一つは、学校の授業をはじめとしたカリキュラムに関わる部分として、ESDの構成概念と重視する能力・態度に関する内容で研究をしてございます。
おめくりいただきまして、実践例としましては、そこの画面にございます、39ページにありますのは、よく学校であります指導案と言われる、授業をするときに教職員が作成する計画でございます。その中にESDの視点を評価規準に位置付けて授業研究を行っています。教科等で育成を目指す資質・能力とともに、ESDで育む資質・能力についても検証し、指導の改善を進めてございます。
おめくりいただきまして、児童生徒の変容を捉えるため、評価をするために具体的な評価の方法としては、アンケート調査、イメージマップ、テキストマイニングなどが挙げられます。価値を引き出す活動として取り組んでいる評価を通してESDの良さを改めて認識しているところでございます。
次のページです。協働型プログラム評価の導入でございます。昨年度ユネスコスクール全国大会が本市で実施されました。みなとみらい本町小学校の教職員によるロジックモデルの構築を東洋大学、米原あき先生の支援を受けて取り組んでいるところでございます。
42ページでございます。詳細は実践報告書にまとめています。ロジックモデルの構築と実践の取組は、カリキュラムマネジメントだけでなく、学校を変えるという意味合いの学校経営の評価指標にもつながるものだと考えています。
次のページでございます。43ページ。三つ目は、国連大学の調査への研究協力です。世界的に見ても指標が少ないESDについて、評価の枠組みや改善のためのメカニズム構築に向けた調査に本市の推進校の教職員が協力しているところです。
次のページに行きます。研究に携わる東京大学、北村友人准教授からは、ESDの推進に効果的と考えられる取組について、分析の結果を御報告いただいております。
次のページでございます。また、教師が重視している考えや成果についても報告がありました。この結果を基に、児童生徒を対象とした調査を視野に入れてございます。
次のページが、教育委員会が行っている児童生徒に対する評価でございます。ESDに関する理解が着実に進んでいることが分かります。
次の47ページでございます。これからも学校の状況をよく把握している教育委員会が、学校と企業、行政、大学といったステークホルダーをつなぐハブとしての役割を担います。そして、児童生徒や教職員が成果を共有する場の提供はもちろん、世界のESDの動向を踏まえた助言や情報提供、研修を充実させることにより、更にESDを進めたいと思います。
最後の、次のページでございます。成果につきましては、積極的に発信したいと考えております。皆様と共にESDの更なる推進に寄与できることを切に願っております。以上でございます。ありがとうございました。
【濵口会長代理】 石川課長、どうもありがとうございました。
それでは次に、五井平和財団の宮崎理事より、ESDとユースの活動について御紹介いただきます。それでは、宮崎理事、よろしくお願いいたします。
【宮崎理事】 それでは、ESD日本ユース・コンファレンスの取組について、資料に沿ってお話しさせていただきます。3-2です。
まずコンファレンスの概要についてですが、ユース世代のESD活動を推進することを目的に、日本/ユネスコパートナーシップ事業として私ども五井平和財団が実施させていただいております。2014年にESDユネスコ世界会議の一環として岡山市でユース・コンファレンスが開催されましたが、そのプレ会議として第1回を開催しました。その後毎年全国からESDを実践する18歳から35歳の若手リーダー約50名が選抜され参加しています。
2日間の合宿形式のイベントですが、リーダーシップ育成のほか、対話やグループワークを中心にユース同士が学び合い、具体的な取組や共同プロジェクトを生み出しています。図がその流れですが、事前オンライン・ミーティングに始まり、コンファレンスの後は約4か月のアクションプラン実施期間を掛けてプロジェクトを形にしていきます。そして、コミュニティ・ミーティングで成果報告を行いますが、ここでは世代を超えたESD関係者の方々にも御参加いただき、ネットワーキングの機会になっています。ですので、ユース・コンファレンスは、年に1度のイベントというよりも、一連の継続したユースの活動になっています。
次のページです。先週末ちょうど第6回のコンファレンスが行われまして、これまでのコンファレンス参加者は約300名になりまして、ESD日本ユースコミュニティのメンバーとして全国各地、様々な業種や分野で活躍しています。ユースというくくりではありますが、まさにマルチステークホルダーのネットワークと言えると思います。
ESD日本ユースとしての活動ですが、例えばESD関連イベントで分科会やワークショップを担当したり、ユネスコやESDの国際会議や委員会にユース代表として参画したりしています。また、ESDユース・マルシェという名称で定期的な勉強会や情報交換会を開催しておりまして、コンファレンス参加者だけではなく、広く若者が参加できる場を作っています。最近では、ユネスコの「教育の未来」プロジェクトに対しフォーカスグループを作って、ユースの提言を取りまとめていこうという動きも始まっています。
次のページです。コンファレンスやその後のネットワーキングの中から様々な連携や共同プロジェクトが生まれておりますが、その中で特に建議5でうたわれている地域課題の解決に資する事例をここに三つ挙げました。
一つ目は岡山の事例ですが、岡山地域から参加したメンバーたちが岡山市役所と連携し、SDGs市民ネットワークの若者部会を設立しました。地域で活動する若者を幅広く巻き込み、SDGs未来都市としてのまちづくりに貢献する活動を継続しています。ちょうど今週末、年次の大会を予定しているようです。
次は宮崎の事例ですが、地域活性化に関わる2人のメンバーが、「稼ぐ地方をプロデュースする」と称した共同プロジェクトを企画し、宮崎県新富町で6次産業化に取り組む農家の支援など地域市民のエンパワーメントに取り組んでいます。
そして、三つ目が、外国人留学生のメンバーの取組です。コンファレンス参加後、全国各地のメンバーとのつながりを生かして、地方創生事業を彼は始めました。外国人留学生と地方の人々をつないで、その地域の課題解決に一緒に取り組むというプログラムを実施しています。これは建議4の多文化共生にも資する事例かと思います。
最後のページです。ESD日本ユース・コンファレンスへの今後の期待ですが、まずSDGsの達成という視点から、社会のより幅広い分野世代のステークホルダーともっとつながること、そして、環境、経済、社会のバランスの取れた持続可能な社会作りに向けて、先ほどの事例のようなユース世代の取組が更に加速することを期待しています。そのため、例えばグローカルな視点からの課題解決への貢献や、地域が実際に抱える課題へのアプローチなどが特に重要になってくると思っています。
そのような前提から、ユネスコ未来共創プラットフォームへの期待について幾つか挙げてみました。一つは、各地域におけるユースの取組への支援の輪がもっと広がることです。ユースらしいイノバティブなプロジェクトの実現のために、自治体や企業などから提供いただけるサポートの形は、助言だったり、資金だったり、場所の提供だったり、いろいろあると思います。
また、逆にユースが提供できるものもたくさんあるので、ほかのステークホルダーの取組に彼らが参画する機会がもっと増えればいいなと思っております。例えばNPOで活動するユースがユネスコスクールで出前授業を行うとか、既にそういう事例もありますが、豊富な人材をもっと活用できるのではないかと思っております。
また、日本と海外のユースが交流し連携できる機会がもっとできるといいなと思っています。数年前、ユース・コンファレンスと抱き合わせで、ESDをテーマに日中韓大学生交流プログラムを実施したことがありますが、平和で持続可能な未来について一緒に考える大変有意義なものになりました。例えばユネスコと共同セミナーを予定されていますが、その一環で国内外のユースが意見交換できるセッションなどがあってもいいと思います。
最後に、ユースは一つの組織に縛られず、自由に関係性を築きながら活動を広げていく場合が多いので、このプラットフォームにおいても、多様なステークホルダーが有機的につながり合い、フラッグシップ的な事業のみならず、大小様々なプロジェクトや連携を育むようなそんなプラットフォームになればいいなと思っています。
以上、駆け足でしたが、ユース・コンファレンスの詳細については、ウエブサイトがありますので、そこをご覧いただければと思います。ありがとうございました。
【濵口会長代理】 宮崎理事、どうもありがとうございました。
それでは次に、東京都市大学教授の佐藤先生より、国際動向を踏まえた日本のESDの活動について御紹介いただきます。佐藤先生、よろしくお願いいたします。
【佐藤教授】 次の資料3-3でございます。54ページでございます。現在、大学の教員をしておりますが、今、ユネスコのGAPのPN、パートナーネットワークの政策の共同議長をさせていただいております。その提携の中で、これを踏まえた中での今後の展望について述べさせていただければと思います。
55ページのスライドを見ていただければと思います。ESDそのものが、今までの世界人権宣言から始まる様々この一連の開発のアプローチと、あとは、72年からのストックホルムの環境会議のこのような流れがつながった形でESDが提示されてきております。近年におけるGAP、そして、その後の2030という文脈の中で、SDGとESDが深く関わった中で世界的に大きな役割が求められているのが現状でございます。
私自身もそのような中で自身のキャリアを積んできたわけですが、次のスライドを見ていただければと思います。国内の教育活動と国際協力の成果が往還したESDの取組を紹介させていただきたいと思います。
1点目は、学校、特に総合学習の教科統合的アプローチというのは、彼らにおいても非常に高く評価されているという点。
そして、2点目としては、ユネスコの理念を生かした学校教育実践として、支援ネットワークが構築されている点が特徴として挙げられます。例えば大学間支援ネットワーク等につきましては、バルト海を中心としたネットワークはありますが、大学間がユネスコスクールと連携したものは非常に特徴的なものとして位置付けられております。
マル3に関しましては、ユネスコの理念の活用をした市民活動、社会市民(教育?)の様々な協働取組事業、公民館活動、民間ユネスコ活動についても高い評価が得られているということ。
そして、4点目として、JFIT、そして、JICAがやられているような協力隊、現職教員の特別参加等の取組、教師海外研修、そして、NPO、企業がやられているような様々な研修プログラムも高く評価されている状況であります。とりわけ2019年5月の入管法の改正に伴い、これから外国籍の方々が増えていく状況の中で、このような国際的なつながりがグローカルに浸透していくことが非常に重要とされていると。そういう中でも、今までの経験を生かしていく必要があるのかなと思うわけです。
5点目として、ESDの実践における協働プラットフォームがあるということ。環境省と文科省が実施しているESD活動支援センター、そして、実施されている全国フォーラム等もプラットフォームとして大きく機能しているということが特徴として挙げられます。
また、文科省をはじめとする様々な取組が報奨制度、助成メカニズムとして機能しながら、UNESCO-JAPANのESD賞、SEAMEOのESD賞、ESD岡山アワード等の文脈の中で、このような現場の取組をサポートする仕組みの特徴があるかなと思うわけです。
7点目として、先ほど指摘がありました、国内実施計画における環境を基盤にした公正で社会包容的な取組の展開に特徴が見られております。ドイツが貧困、国際、環境、スウェーデンが民主主義といったテーマの中で、日本は環境を軸にしていると。2050年、100億人を迎える今日において、自然を大切にしながら社会と経済を機能させていくという、この特徴的な取組を全国でやることがこれからも重要なのかなと思うわけです。
これらのことを踏まえまして、幾つかの提案をさせていただきます。赤字だけ見ていただければと思います。1点目、「国連ESDの10年」の経験を生かすということでございます。様々な国研をはじめとする研究、そして、様々なところの中で、社会・感情的な知性、キー・コンピテンス、そして、横浜市でありましたとおりのレンズを生かすといったような、様々なノウハウが最近蓄積されているということ。
そして、SDGsの本質に対応することも重要です。SDGsの17に対応する時代から、より複雑な問題に対応して、テーマの統合的、テーマ横断的に、そして、ステークホルダーでやっていくようなそのような取組を今後生かしていく必要があるのかなと。ESDはまさに共通言語としてSDGsを使いながら、そして、連携・協働のツールとしてSDGsを使いながらこの学びを深めていくということが今後非常に重要なのかなと思うわけです。
次のスライドお願いします。3点目としては、日本の社会課題に向き合い、価値を創造すると。今回の建議の文書も読ませていただきましたが、課題先進国としての日本に対して、SDGsのローカリゼーションによる地方創生への貢献、この取組を決して海外から持ってきたものではなくて、我々のこのグローカルな文脈を位置付けることによって日本と世界をつなげていく必要があるのかなと。変動の激しいVUCA社会に対応しながら、グローカル探求の重視がされているわけです。ドイツ等は今、幼児教育、そして、職業訓練も軸にした国内実施計画を作りつつあります。日本におかれましても、幼児教育、職業訓練も踏まえた中で捉えていくこと、そして、AIの技術革新を踏まえた中での課題探求、そして、価値創造が求められております。
4点目としては、ユネスコの特徴を生かすということが非常に重要なのかなと。ユネスコスクール、ユネスコエコパーク、ユネスコ世界ジオパーク、世界遺産、無形文化遺産、創造都市ネットワーク等を教育や学習に最大限に生かしていくことが重要になるかなと思うわけです。私も今回無形文化遺産センターのプロジェクトに関わらせていただきましたが、このような財産を日本の学校現場にも生かしていくことが非常に重要なのかなと。ユネスコでできることとして、文化を軸にしながら、この特徴を生かしていく必要があるのかなと。
5点目として、社会生態系を構築するという側面。これはまさに先ほどの指摘もありましたとおり、マルチステークホルダーとしてのパートナーシップの推進です。そして、能力開発も、従来の問題解決のアプローチだけではない、統合的な問題解決、そして、価値共創を図る能力開発をしていく必要があるかなと思うわけです。また、このような取組を組織的にサポートする上でも、ESD活動支援センターやコーディネート組織の拡充、中間支援機能の強化等が重要なのかなと。ユースの取組はまだまだ日本の中では拡充していく必要があるのかなと思います。シニア、マイノリティが生かされる仕組み。
そして、このようなものを全体としてサポートする制度・仕組みを構築する必要があるのかなと。ホールスクールをやっているところはまだまだ少ない状況の中で、どういうふうにこういうものに対して考えていくのか。人事的な戦略的な配置、そして、様々な研究、そして、経験の成果の往還が求められております。また、パートナーシップネットワークの中でも御指摘がありましたが、実践と研究の連携の強化、省庁間の連携、省内部の部課署の連携、そして、ナレッジマネジメントと共有プラットフォームの構築、そして、アジア太平洋地域のESD施策の企画立案段階からの整合性を向上しないと、日本だけではない、アジアとの連携の中でこのようなことも進めていく必要があるのかなと思います。
最後になります。60ページを見ていただければなと。1番から6番を全てつなげていく中でデザインをしていただければと思います。国連の文書にも書いてありますが、ESDはSDGs達成を実現する手段であると言われているぐらい、非常に重要な意味合いを持っております。是非、内容面、方法論、そして、この様々な制度設計を含めて全体を御検討いただければと思います。以上で発表を終わります。
【濵口会長代理】 佐藤先生、どうもありがとうございました。
それでは次に、2021年からの「国連海洋科学の10年」に関して、日本ユネスコ国内委員会自然科学小委員会・IOC分科会主査の道田教授より御発表を頂きます。道田先生、よろしくお願いいたします。
【道田教授】 御紹介ありがとうございます。道田でございます。ただいま自然科学小委員会の下での政府間海洋学委員会(IOC)分科会の主査を務めております。本日は御時間を頂きまして、ユネスコに関係する海洋に関する最近の動向、特に昨年10月の建議に盛り込んでいただきました持続可能な開発のための「国連海洋科学の10年」の準備状況について御説明を申し上げたいと思います。資料は3-4、62ページからとなります。
63ページをめくっていただきますと、本題に入ります前に、まずIOC、よく御存じの方も多いかと思いますが、話の流れでお話を差し上げたいと思います。ユネスコの中に1960年に設立され、今年で60周年を迎えています。海洋は一つでございますので、もとより国際協力が不可欠でございますけれども、国際的な海洋科学に関する協力を推進するための機関として設立されたものでございます。
たくさんの成果を挙げていますが、その中でも特に顕著なものとしては、そのページにあります津波の警報システム。2004年12月のスマトラ沖地震、これで22万人もの多くの犠牲者を出してしまいましたが、これを機に、インド洋に加え、北東大西洋及び地中海、カリブ海に新たに津波警報システムがIOCの指導により出来ています。それまでの太平洋に加えて現在では四つ動いていると。このような成果を挙げている組織でございます。
次のページ、64ページを見ていただきたいと思います。「国連海洋科学の10年」は、2017年12月の国連総会決議に基づくものでございます。その資料にございますように、来年2021年1月1日から10年間を持続可能な開発のため、すなわち、SDGsの達成のための「国連海洋科学の10年」と宣言するということが決定されています。その中で、IOCに対しては、準備及び実施状況に関して定期的に報告するようにということで、IOCがリーダーシップを取って準備をし実施していくと、こういう枠組みになってございます。
65ページをごご覧ください。SDGsの中で海に関係するところはSDG14でございますけれども、そこの中にあるゴール、目標等を六つに再整理いたしまして、現在、「国連海洋科学の10年」では、ここにあります六つの社会的目標を設定しています。縷々申し上げることはいたしませんけれども、一つ目、例えば汚染のない海洋。これは昨今問題になっております海洋プラスチックの削減対策も含まれた非常に重要な社会的課題でございますが、これには海洋科学の推進が不可欠であると、こういう観点で六つの社会的目標に向けて海洋科学を推進しようと、こういうものでございます。六つ目の、万人に開かれ誰もが平等に利用できる海、これはほかのもの全てに共通する、例えば情報の共有とか、教育とか、人材育成、それから、能力開発、こういったものをしっかり進めていく必要があると、そういう観点でございます。
66ページをご覧ください。御手元に印刷物としてお配りされているかと思いますけれども、昨年作りました、一般向け、一般の方々にもこの取組を理解していただくためのパンフレットを作っております。今資料にございますのは、その見開きのページでございまして、様々な社会的目標に向けてみんなで挑戦していきましょうという趣旨でございます。後ほど御時間があればお読みいただければと思います。
次のページでございますが、準備状況です。先ほど文科省の方から御説明もございましたが、計画策定グループ、世界の19人の専門家で構成されるExecutive planning Groupがございますが、これに日本からは植松光夫東京大学名誉教授、私の前任のIOC分科会主査でございますが、この方が専門家の1人として議論に参画して、現在準備活動が進んでいると、こういうことでございます。
次のページ、ここに至るまでの国内動向を幾つか申し述べました。この中では、上から幾つ目でしょうか、2019年7月に、昨年の7月から8月にかけてですけれども、東京において北太平洋地域のワークショップを開催しています。文部科学省からの支援を頂いて、IOC西太平洋地域小委員会(WESTPAC)と、それから、北太平洋海洋科学機構(PICES)の共催でもって開催したもので、「国連海洋科学の10年」はグローバルなものでありますけれども、地域の視点も必要ということで、地域的な課題に関して議論をしています。
これにつきましては、次のページに資料がございます。関係各国から161名の参加を得て、「国連海洋科学の10年」を進めるために、特に北太平洋地域ではどんなことが課題になっているのかということについて頭の整理をし、いずれこのことがグローバルなプランニングにつながっていくと、こういうワークショップを開催いたしております。
次のページ、「国連海洋科学の10年」の国内政策上の位置付けでございます。2017年の国連総会の決議を受けまして、2018年5月に取りまとめられました海洋基本法に基づく第三期海洋基本計画においてこのようなことが書かれています。「『国連持続可能な開発のための海洋科学の10年』(2021~2030)の宣言を踏まえ、当該10年の実行計画策定及びその実施に積極的に関与し、SDGsの達成に向けて我が国として貢献する」ということが述べられておりますし、先ほど来御案内のありましたこの委員会からの建議にも「国連海洋科学の10年」が位置付けられていると、こういうことでございます。
次のページ、今後の動向でございます。間もなく、来月でございますが、Global Planning Meeting、世界のミーティングが行われまして、6月にはリスボンで第2回の国連海洋会議、これの大きな議題の一つになると思われます。IOC執行理事会の決定を受けて、今年の末の国連総会での決定を受けて、来年1月1日から開始と、こういう段取りになっています。
課題がたくさんございますが、我が国は関係省庁たくさんにまたがっておりますけれども、どのような貢献ができているのかということについて少なくとも可視化して、国際的な場に発信する必要があるということとか、それから、一番下のところにありますように、共通課題の解決策に鋭意取り組んでいく必要があるだろうということで、例えば海洋リテラシー、海洋教育、先ほど一つ前にESDのお話がございましたけれども、こういったところとも密接に連携することによって、全体として「国連海洋科学の10年」の実現、達成に向けて努力をしてまいりたいと思います。
科学の中での連携はもとより、教育あるいは文化との連携も一層強化することによって、皆様方の御支援を得て、実りある10年にしてまいりたいと思いますので、よろしく御協力・御支援をお願いいたします。私からの報告は以上でございます。ありがとうございました。
【濵口会長代理】 道田先生、どうもありがとうございました。
それでは次に、ユネスコ改革に関連して、「教育の未来」について、事務局より御紹介をお願いします。
【大杉国際戦略企画官】 それでは、資料3-5をごご覧いただけますでしょうか。「教育の未来」に関しまして、委員をお願いしております青柳先生が本日出席かないませんでしたので、私の方から、第1回会合において青柳先生が御提出されたペーパーの御紹介をさせていただきます。
ちなみに、「教育の未来」ですけれども、これからまた2回ほどこの国際委員会が開催されまして、2021年11月のユネスコの総会でレポートが報告されるという方向性でございます。知識のガバナンスの在り方とか、そういう中での教育、これからの学校の在り方という非常に大きな御議論をいただいているというところでありますので、青柳先生のペーパーも、世界はどこへ向かうのか、私たちはどういう存在となることを目指すべきか、学校や教員はどうあるべきか、ユネスコに何ができるかという、四つの問いに応じる形でまとめていただいております。
世界はどこへ向かうのかというところでは、レゾンデートル(自身の存在価値)の喪失ということ、あるいは社会的分担ということの中で教育がしっかりと役割を果たしていかなければいけないということ。あるいは、ホリステックなアプローチということで、専門分化するのではなくて、より統合的なアプローチを目指していくべきではないかということ。あるいは技術革新の負の側面ばかりではなく、プラスの側面にも目を向けるというようなことを御提言頂いております。
次のページ、74ページでございます。そういった中で、self-buildingという言葉を使っていただいておりますけれども、自分自身をこの複雑な社会の中で形成していく、そのためには教育の中で絶対解のない問いに対して対話を重ねて思考をしていく、試行錯誤を重ねていくという経験がますます重要になってくるんじゃないか。あるいは、グローバルとローカルの両方の自分のアイデンティティをしっかり形成していく必要があるのではないか。あるいは、伝統文化の担い手ということを、地方の活性化、国際協力ということを仕事としてしっかりと担っていくような環境が必要ではないかというような御提言を頂いています。
そういった中での学校や教員の在り方、そして、一番最後に、ユネスコに何ができるかということで具体的な御提言を幾つか頂いております。75ページです。高校生などユースも含めて意思決定ができるような、「教育の未来」についても高校生自身が議論するような場があってもいいのではないかということとか、国境を超えて子供たちが協働活動を行うというような場をユネスコが創造できるのではないかといった、文化を超えた協働ということを様々御提言を頂いております。
また、一番最後には、SDGsにつきましても、17のゴールを要素的に捉えるのではなくて、それを統合的に捉えて持続可能な未来の作り手の育成を目指していくべきではないかというような御提言を頂いております。
76ページ目からが英語版ということになりますけれども、現在この青柳先生の御意見なども踏まえてユネスコの本部の方で報告書の取りまとめ作業が進んでいるという状況でございます。以上です。
【濵口会長代理】 ありがとうございました。
それでは次に、地域創生や多文化共生社会の構築に関連して、金沢市都市政策局の髙桒部長より、ユネスコ創造都市ネットワークの取組について御紹介をお願いいたします。
【髙桒部長】 ありがとうございます。金沢市の企画部門を担当しております髙桒と申します。よろしくお願い申し上げます。
それでは、1枚お開きいただきまして、まずまちの特性を一言だけお話ししますと、1583年に大名・前田利家が金沢城に入城いたしまして、城下町としての歴史が始まりました。藩政時代の280年間、歴代の藩主が学術と文化を奨励してまいりました。今現在、歴史的な町並みなどと並びまして、この文化というのが根付いております。
1枚お開きください。他方、古いものをただ守るというだけではなくて、それに革新を与えてまいりました。例えばその代表は金沢21世紀美術館などの存在でございます。公園のような独特の外観を持つ美術館で、新しい文化の創造とまちのにぎわいに貢献をしております。
続きまして、金沢市の主な伝統工芸を御紹介いたします。金沢箔、加賀友禅、金沢漆器、金沢九谷、加賀繍、金沢仏壇、これらは国が指定する伝統工芸品でございます。例えば金箔でいいますと、全国の99%の生産高を占めておりまして、金閣寺に20万枚の金箔が使われております。このほかにも、現存する伝統工芸が22種類ございますし、そうしたものをベースとした新たな工芸が若手作家さんなどを中心に行われているところでございます。
他方、伝統工芸産業は、他の産地同様に、ライフスタイルの変化、それから、安価な海外製品の流入などによりまして厳しい状況に置かれております。課題としまして、需要低迷、事業者数減少、従事者の高齢化、後継者不足、そして、道具・材料の確保難など様々な課題を抱えているところでございます。
続きまして、創造都市金沢としての取組についてお話しいたします。2009年に工芸の分野、クラフト&フォークアートの分野でユネスコ創造都市に認定されて10年がたちました。三つの柱に沿って御紹介をしたいと存じます。一つ目が文化と産業の連携、二つ目が担い手の育成、そして、三つ目が世界への発信でございます。
一つ目の文化の産業の連携では、次のページをお願いしたいんですけれども、金沢箔や加賀友禅についての研究所などを設立して、ブランドの発信力強化に向けて、技術の支援、新製品の開発などを行っております。また、東京の銀座に、金沢の工芸と食の発信拠点などを設けております。また是非どうぞ御利用ください。
続きまして、今後の取組として、文化や産業にイノベーションが起きる仕組みとしまして、廃校となった小学校の校舎を活用しましてスタートアップの支援を行います。これは単に起業の支援ということだけではなくて、そこで作家やクリエーターなども含めて交わっていく、そうした施設を来年オープンさせる予定でございます。
続きまして、2番目の柱、担い手の育成ですが、市立の美術工芸大学を設置しておりますほか、金沢に卯辰山工芸工房を設けまして、陶芸や漆芸、染め物など、全国から公募した若手作家を育成しております。修了生は約300人おりますけれども、その半数が金沢周辺に定着しております。また、職人大学校を設けまして、中堅の職人の養成、これは瓦、左官、造園などの技でございます。こうしたものの継承も図っております。また、子供の頃から文化や工芸に親しみを持っていただけるように、子ども塾も開催しております。
続いて、三つ目の柱です。世界を引き付けるためにということで、2015年ユネスコ創造都市ネットワークの会議、すなわち、総会を金沢で国内で初めて開催しました。27か国61都市から142人が参加いたしました。会議と併せ、工芸、食、芸能などを体験していただくようなプログラムも御用意いたしました。
続いてのスライドですが、今後の取組として、地方創生の取組の一環としまして、東京の竹橋にある東京国立近代美術館の工芸館、こちらが金沢に移転いたします。今年、東京オリパラ前の開館を予定しております。工芸作家、それから、大学の学生、更に市民が刺激を受けるような施設になると期待をしております。
続きまして、ネットワークを活用した事業について御紹介します。2015年の総会におきまして、エリア内、すなわち、東アジアの交流の強化、それから、異分野の連携の促進について、本市の市長から提言をいたしました。エリア内、東アジアの交流では、中国、韓国との作家の交流が続いており、また、異なる分野でも、例えばフランスの創造都市などとの交流が行われております。
具体的には、続いてのスライドで、中国・景徳鎮市から陶芸作家をお招きしてアーティスト・イン・レジデンスの活動を行ったりとか、その次のスライドですが、韓国の食文化の創造都市・全州市、そこと金沢の工芸を融合させるような事業をやってまいりました。
最後のスライドになります。昨年10月には創造都市認定の10周年を記念して、クラフト&フォークアート分野のユネスコ創造都市の分野別会合を本市で開催いたしました。来賓として本委員会の平下副事務総長をお迎えして、台風の影響で参加国は若干減ってしましましたが、各都市が抱える課題、それから、SDGsとの関わりなどについての議論を行ったところであります。この創造都市ネットワークの活動のほか、ユネスコスクールの取組など含めまして今後もユネスコ関係の施策を推進してまいりたいと考えております。ありがとうございました。
【濵口会長代理】 髙桒部長、どうもありがとうございました。
それでは次に、日本ユネスコ国内委員会自然科学小委員会委員並びに日本ジオパーク委員会を代表して、大野委員より日本のジオパークの取組について御紹介いただきます。それでは、大野委員、どうぞよろしくお願いします。
【大野委員】 皆様、こんにちは。大野と申します。日本ジオパーク委員会、日本のジオパークを審査する公認の組織でございますけれども、そこにおけるジオパークの活動あるいは日本国内に今、ユネスコ世界ジオパークが9地域ございますので、そこでどのような活動をしているかというお話をしたいと思います。
95ページを1ページめくっていただきまして、私が今日御紹介するのは、現場でどのようなことが行われているかという、かなり地域住民の側に沿った活動事例になります。
1枚更にめくっていただいて、まずユネスコ世界ジオパークというプログラムが何を目指すかということを簡単に御紹介します。
98ページ目をご覧ください。ジオパークのプログラム、ユネスコのプログラムの理念をかなえるものとして、地域社会の持続可能な発展を通じて、そこにある地域資源を守り、未来に引き継ぐものということになります。そこで守るべき対象になりますのは、人間が作り出してきたものである、歴史、文化、伝統はもちろんですが、更にそれらを培ってくる、土台となる地球が作り出してきたものです。自然環境だけではなくて、その自然環境を長い年月を掛けて作り上げてきた地形、更には地質、岩石、こういったものも保護の対象といたします。ここがジオパークプログラムの大きな個性となります。
次をめくっていただきまして、このジオパークプログラムを使って理念をかなえるためにどういう活動が行われているか。大きく四つに分けられます。一つ目は、人々の暮らしや地球活動を含めた地域資源に関する研究活動です。これは学術関係者によって、今まで特に価値がなかった岩石に対して学術的な価値を付けていただくという行為が必要になります。
更に、その価値を地域住民や様々な人が知り、その価値をきちんと認識するために必要なことが教育活動になります。ですので、地域資源が持つ学術な価値をきちんと認識するための場が必要になります。
更には、その資源を持続可能な形で活用することによって、地域を活性化させていく地域振興、更には観光活動を通じて経済活動も発展させ、地域を持続可能な形で発展させていくという活動が伴われます。
更に、これらと同時並行で、地域資源を実質的にあるいは法律によって守っていく保護・保全活動が必要になります。
これら四つの取組をバランスよく実施することによって、持続可能な地域社会が構築できる。それはSDGsの達成にも貢献するだろうという感覚でジオパークというプログラムを行っております。この絵を見ていただくと分かるように、例えば行政だけとか学術関係者だけでジオパークプログラムを推進することはできませんので、様々な方々の御支援・御協力がなければ、地域とそこにある資源が守れないということになりますので、実際に様々な方に御協力をいただきながら、持続可能な地域社会を構築していこうという取組を行っております。
その具体的な実例として、今回提供しますのは、教育の部分と地域振興の部分になります。それでは、101ページ目のスライドをご覧ください。まずは教育事業ですけれども、これは糸魚川ユネスコ世界ジオパーク、新潟県にありますが、こちらで行われている教育事業の一例です。「子ども一貫教育基本計画」を糸魚川市が作りまして、0歳児から18歳児までを対象に地域学習をジオパーク教育の柱として位置付けております。それを実際にスムーズに執り行うために、真ん中にあります「まるごと糸魚川資料集」、これは実際に現職の学校の先生とジオパークの協議会に所属している専門員や学芸員が協力して、ジオパークの内容に特化した教材を作成したというものです。
次のページをお開きいただいて、その概要がそこに書いてあります。0歳児から18歳児まで四つの発達段階に応じて、それぞれの段階に応じてジオパーク学習の展開を行っております。その中で特に真ん中の部分、ジオパーク学習の目的のところで特に強調されておりますのが、ふるさとへの愛着を大事にする、更にはふるさとへの誇りを形成することと同時に、グローバルな視点、課題解決の視点、持続可能な地域社会を担う担い手になると、そういう世代を育てていくということを目的としております。これは今日たくさんお話が出ているESDの話とまさに合致する活動だと思われます。
糸魚川ユネスコ世界ジオパークのこのプログラムはかなりかちっと作られているんですけれども、それ以外のジオパークでも実質的に現場で教育活動が展開されております。103ページ目を見ていただきますと、特に左上の写真、これは北海道にあります洞爺湖有珠山ユネスコ世界ジオパークの教育事例です。特に子供たち、防災を含めた取組が日本は特に個性がありますので、それを中心にやったり、あるいはアイヌという地域文化を学ぶ取り組みを施設で行ったりしております。小中学校、高校生の活動も下の方に挙げております。
それから、産業振興、104ページ目になります。実際に地質・岩石を産業振興に使うのはなかなか難しいのですが、一つの具体的事例として、四国にあります室戸岬の辺りの室戸ユネスコ世界ジオパークでは、本来なら水平にたまるはずの地層が逆立ちしています。それを模したケーキを作る。あるいは、風景の一部を切り取ってお菓子にした、ジオ菓子と呼ばれるものを開発する伊豆半島ユネスコ世界ジオパーク、更には、ガイドさんによる活動を通じて地域資源の価値を観光に生かそうとする取組もしております。地域産品のブランディング化をしている阿蘇ユネスコ世界ジオパークや、情報発信を通じて離島の観光客を増やす隠岐ユネスコ世界ジオパークなどの取組もありまして、それぞれ地域資源を上手に活用する形で取組を進めております。
最後が、洞爺湖有珠山で出されております、地域の農水産物と地球活動の関わりを紹介したカードになります。ながいも、ホタテ、じゃがいも、にんじん、我々がふだん目にするものが、実は地球活動の産物でできているということを手短にまとめたカードを配り、農家の方や地域住民にその価値を促すという取組です。まだまだなかなか効果は出てきていないんですけれども、現場レベルでは非常に皆さん頑張ってやっております。是非皆様の活動にジオパークも加えていただければと思います。
ジオパーク活動が目指す取組や、現在どの地域がジオパークに認定されているかというのを紹介した、日本のジオパーク活動と呼ばれるパンフレットがありますので、御時間のあるときにご覧ください。御清聴ありがとうございました。
【濵口会長代理】 大野委員、どうもありがとうございました。
それでは最後に、ステークホルダー連携深化のためのプラットフォームの構築に関連して、これまでの民間ユネスコ活動に係る御発表を、日本ユネスコ協会連盟の川上事務局長から御紹介いただきます。川上事務局長、よろしくお願いいたします。
【川上事務局長】 どうもありがとうございます。それでは、私からは、資料3-8に基づきまして、多様なステークホルダーとの連携について話をさせていただきたいと思います。
まず公益社団法人日本ユネスコ協会連盟とは何なのかということですが、戦後間もなくユネスコ憲章の理念に感銘を受けた人たちによって草の根で世界で初めて立ち上げられた民間の組織です。NGOです。私たちは、2026年までの10年間のビジョン・ミッションを掲げて、そのミッションは、特にSDGsの目標4の教育を通じた平和な世界の構築、そして、持続可能な社会の推進としています。
私どもの全国組織の連盟体としての活動は、スライド109ページです。左上、途上国における教育の支援ということで世界寺子屋運動の名の下に行ってきましたが、これは当該国の教育省との連携なくしてはできないことです。また、その右側、減災教育と自然災害発生後の教育支援、これは国内で実施しているもので、当該地の教育委員会との連携が必須になってまいります。左下、世界遺産のみならず、未来遺産運動という形で私どもは独自の活動を展開しています。100年後の日本の子供たちに残していきたい自然や文化、環境を当該地の団体とともに実施しているものでございます。これも企業や当該地の団体との連携で行っているものです。右下になりますが、SDGs達成に向けた次世代育成。こういったプログラムは多数行っているのですが、そのうちの一つ、ESDパスポートは、地域の課題を児童生徒が自ら見付け出し、ボランティア活動を通して課題解決までのアクションを起こしてもらいたいということで行っているものです。
次のページです。私ども、全国的な組織の日本ユネスコ協会連携という名前から表されますように、地域で活動するボランティアのユネスコ協会やクラブの連盟体です。地域のユネスコ協会は全くボランティアで任意組織が多いんですけれども、様々な苦労を重ねながら、熱意を持って地域に根差した活動を展開しています。現在、278のユネスコ協会・クラブがございます。
そのうちの幾つかの事例を紹介させていただきます。スライド111、名古屋ユネスコ協会の場合です。先ほどのESDパスポートのボランティア活動の体験発表会を市内の高校や中学6校と毎年行っています。この学校との連携を通して、高校が会場を提供してくれたり、高校の先生がユネスコ協会のメンバーになったり、また、発表した高校生たちはもちろん発表を通してそれぞれの活動を学び合い、切磋琢磨するわけなんですけれども、この高校生たちも、実は名古屋ユネスコ協会の青年部に若鯱組があるのですが、そこに是非入らせてほしいというような希望を毎年頂いているようでございます。
次は、他団体との連携で鎌倉ユネスコ協会です。SDGsみらい塾ということで2018年から始められたものですが、月1回土曜日午後、9か月にわたってSDGsの各目標に関連する他団体の人たちにリソースパーソン若しくはファシリテーターとして来ていただいて、ワークショップ形式で開催されているものでございます。こちらは鎌倉市内でも先進的な活動ということで、先般教育長にお会いしましたけれども、大変高い評価を頂いております。
次に企業との連携で、富山ユネスコ協会の場合は、北陸電力さんと連携しながら、ユネスコ科学フェスティバルinワンダー・ラボを実施しています。電気工作のブースといった北陸電力さんが得意とする分野、そして、普段私たちはなかなかそういった分野は得意ではないので補完し合いながら、ユネスコ協会の方では、ユネスコクイズを楽しんでもらおうということで、小学校4年生以上を対象としたプログラムとして春や秋の連休に毎年行っているものです。
こういった活動を114、115スライドに幾つか、青い文字は行政との連携、緑色は学校との連携、そして、赤い文字は企業や他団体ということで載せさせていただいておりますけれども、本当に様々な活動を実施するに当たって、それぞれの知見や協力を頂いて活動することでその活動が広がっていくということを実感しております。
最後に、ユネスコ未来共創プラットフォームに期待することです。こちらについては、私どもの会長、佐藤美樹が今般国内委員にもなりましたので、佐藤の方からコメントさせていただきます。よろしくお願いします。
【佐藤委員】 今説明いたしましたとおり、これまで当協会連盟では、教育を中心にして、貧困、不平等、環境破壊といった課題の解決に向けて様々な活動を草の根運動として展開してまいりました。
ところで、一組織が単独でやれることについては限界があると考えております。これを一層の展開を図るためには、更に多くの団体と協力し合うことが必要だと認識しております。そのような中、今回創設されますユネスコ未来共創プラットフォームでは、ユネスコ活動の活性化に向けまして、本日発表いただいたようなすばらしい事例がありましたけれども、多様なステークホルダーとの連携強化が図られることになりまして、非常に期待が大きいものであります。
各地には地域に根差して地域活性化に取り組んでいる団体が数多く存在しております。そうした団体と協力関係を築いていくことができれば、メリットは大きく言うと三つあると思います。一つ目は、私たち自分たちだけでは気が付かなかったであろう新たな発想が生まれると思います。二つ目は、多くの人が集まって得意分野を補完し合うことによって、活動内容の充実とスケールが広がる。そのことと、それによって周囲からの理解と資金面も含めたより多くの協力が集まってくると期待されます。三つ目としまして、そのような団体に参加にしている地域の若い人の中から、ユネスコ活動の次世代の人材を作っていけると考えております。加えまして、海外との連携強化によって、相互理解や多文化共生がより一層図られるというふうに期待しております。
このプラットフォームの実現とその活用に向けては、皆さんで知恵を出し合って、使われるより良いものにしていく必要があると考えております。このプラットフォームの活用を通じてユネスコ理念の一層の普及とSDGsの推進を図るために最大限協力していきたいと考えております。どうもありがとうございました。
【濵口会長代理】 どうもありがとうございます。発表者の皆様、ありがとうございました。本当に多様で深い活動をされていることを改めて深く認識しました次第であります。
それでは、ただいまの御説明を踏まえて意見交換の時間といたします。今の御説明への御質問及び今後の取組の在り方についての御意見等を頂きたく存じます。なお、本議題の冒頭にも申し上げましたが、更なる詳しい論点につきましては、本日の議論を踏まえ小委員会で続けて議論いただくことになります。したがいまして、本日は、建議の実現に向けた方向性や方策について自由な発想で討議いただければと存じます。
それでは、御質問、御意見がある委員の方は、挙手をお願いいたします。いかがでしょうか。はい、どうぞ。
【蓮生委員】 大阪大学の蓮生と申します。きょうは、建議4のユネスコ活動のメリットを生かした地域創生や多文化共生の構築として、ユネスコチェア及びユニツインの事業について、大阪大学が現在取り組んでいる試みを、追加的な事例として御報告させていただきたいと思います。
本チェアは、青柳先生が今、コメントで御提案してくださいました「未来の若者」というキーワードに関連しております。参考資料は、附属資料12の参考をご覧になってください。
大阪大学におきましては、『グローバル時代の健康と教育―健康のための社会デザイン』というテーマでユネスコチェアを設立いたしました(スライド番号68参照)。本チェアは、フランスのクレルモン・オーベルニュ大学と協力して、学校やコミュニティにおける子供や若者の健康を促進することを目指しております。スライド70をご覧なっていただきますと、問題意識がわかりますが、本チェア設立の背景には、社会格差が健康格差を生み、健康格差が更なる社会格差を生む悪循環があるという認識がございました。それを断ち切るためには教育が重要と考え、2018年10月に本チェアを正式にローンチいたしました。
具体的な活動を簡単に申し上げさせていただきますと、スライド17にございますように、本分野において世界をリードする様々な研究機関とグローバルなネットワークを構築し、健康を阻害し得る社会的・文化的要因に関する実証的研究を推進することによって、健康な生活を促進する社会作りを目指しております。将来的には、特にSDG3及びSDG4の実現に貢献しうると考えております。すでにロンドン大学、オックスフォード大学との共同研究や、国際学校保健コンソーシアム等との連携で成果を上げております。以上、簡単ながら、未来の若者に対する貢献という観点から阪大のチェアのご紹介をさせていただきました。皆様、ご清聴感謝申し上げます。

【濵口会長代理】 ありがとうございます。それでは、野村委員、どうぞ。
【野村委員】 先ほど具体的な事例の御説明ありがとうございました。ひとつ質問です。これは文科省の事務局の方にお伺いした方がよろしいかと思いますが、先ほどユネスコの2014年からの8か年計画で、アフリカとジェンダー平等の2点が優先課題として設定されたとありましたが、今までのユネスコの動きについて、それから、建議のフォローアップ活動でジェンダー平等に向けての取組が少し見えにくかったので、お伺いしたいと思います。優先課題の一つであるジェンダー平等に向けての取組、若しくは今御紹介いただいた取組の中でそのような視点を持ってなされた活動があるのかどうか、あるとすれば、その成果と見えてきた課題などを御説明いただければと思います。
【濵口会長代理】 いかがでしょうか。
【大杉国際戦略企画官】 失礼いたします。資料1-4ですと、一番最後に、14ページに実は現在の中期戦略、2021年までのイメージが載っておりまして、そこでも、すなわち、現在でもジェンダー平等は優先課題の一つとなっているというところでございます。様々いろいろ事業が展開されておりますので、また少し分かりやすくまとめてと思いますけれども、例えば理数教育などで女子教育が課題になったという中で、女性のためのSTEAM教育をどうするのかとか、そういった観点も含めていろいろな、日本もそういった事業に貢献する形で事業が展開されておりますので、またこの部分の取組を分かりやすくまとめて情報提供させていただきたいと思います。
【濵口会長代理】 御指摘のとおりで、世界各国と比較しても、日本はこのジェンダー問題、140位ぐらいです。韓国と並んで非常に悪いので、国立大学の教員も30%に到達するのは、少しずつ増えてはいるんですけれども、2060年という予測がありまして、3割になかなか到達しないという非常に深刻な問題があります。幅広くこれは議論する必要があると思います。
それでは、猪口先生、お願いします。
【猪口委員】 どうもありがとうございます。数々の重要な報告を伺いまして、私からもリアクションがあるんですけれども、まず私、ユネスコのハイレベルリフレクショングループに参加してまいりましたので、それについての簡単な報告と、今、アフリカのジェンダー平等の話もありましたが、そのアフリカとも関わりますので、マイクでお話しさせていただきます。
まずユネスコのハイレベルリフレクショングループですけれども、参加者は世界6地域から2名ずつ選出されていて、12名から成る、そのような有識者グループでありまして、アジアからは韓国のアン元大使という方と私が参加しております。バックグラウンドは様々で、学者であったり、元首相さんもいたり、あるいは作家とかジャーナリストとかいろいろでございます。
それで、今、アズレー事務局長は、ユネスコの改革、特にストラテジックトランスフォーメーションという戦略的な転換、これを目指していらっしゃって、それについていろいろと助言してほしいということで、私が理解したところ、アズレー事務局長は、主として三つの大きなフォーカスを持ってこの改革を進めようとしていると。
その一つがやっぱりAI。これは報告にも出てきていますけれども、AIをどうしていくのか。それからもう一つは、エシックスといって、やっぱり倫理の感覚というのは、国連のいろいろなエージェンシーズで扱うのはここだけだろうと。例えばAIにおいてエシックスとか、科学技術においてのエシックスとか、いろいろなエシックスのことを考えたいと。それから、3番目にアフリカへの視点の強化ということを言っておられます。それから、既にたくさんの議論が出た青柳長官の御貢献も大きい「教育の未来」、これは国連のエージェンシーズで例えばILOだったら「労働の未来」ということをやっていますし、ユネスコは「教育の未来」ということで、非常に重点化して御議論されています。
そこで、日本としては、いずれのテーマにも非常に深く関わることができてきていると思っております。例えば去年の夏、TICADが開催されましたけれども、これはまさにアフリカについて日本が先駆的に非常に熱心に取り組んできて、アズレー事務局長も評価して自らおいでになりまして、それで、アフリカの例えば映画を、これを発信力として提案し、上映されて、そこには先ほどいらっしゃった萩生田大臣もおいでになった。
それから、先ほど事務局からの報告にありましたアフリカでの教育人材育成プロジェクト、これもやはりアズレーさんのそういう認識を反映して、これは日本人がリードしているんですけれどもやっていて、非常に評価されている。そういう中で多分アフリカのジェンダー平等とかそういうことも重視されている。もちろん我が国もこれが大きな課題だというのは会長の御指摘のとおりでありまして、そういう流れがあります。
あともう一つ大きなのは、やはりモースルの再建ではないですけれども、やっぱり伝統文化。破壊され、破壊の理由は、多くの国の場合、テロ、我が国の場合、大きな震災あるいは災害。自然災害の中で破壊されたものも確実に修復していく。首里城の火災などもそうですが、そういう技術を持っていて、世界に貢献していくというような課題について高い評価を得ています。ODAの枠でも今後そういうことを是非お願いしたいと思っています。
それから、「海洋科学の10年」、これはSDGsの完成年度の10年、これがまさにオーシャンサイエンスと国連が規定していて、先ほどIOCの御報告が道田先生からありましたけれども、日本はオーシャンサイエンスといいますか、政府間海洋学委員会などを通じて多大な貢献ができる余地があると思いますので、一層、2030年に向かう「海洋科学の10年」を頑張っていただきたいと思っております。
あと、世界でのやっぱり特徴は、先ほど五井平和財団からの報告や、あるいはユネスコスクールの報告にもありましたけれども、やっぱりユースですね。注目はユースです。やはり環境問題でのグレタ・トゥンベリさんのインパクトもあって、ユース、特に女子たちは、女子学生たち、高校生たち、大きな役割を果たすので、私の希望としては、ユネスコ・ユース・フォーラムやそういう機会に、日本の若いユース、特に女性がどういうインパクトを持てるのかということをやってほしいと思っています。
最後に、「教育の未来」につきまして、試行錯誤ということもありますが、私はやっぱりPDCAサイクルを教育においても全ての人がちゃんと回していって、非常に加速化して地域集約型の社会に今なりつつありますので、我が国の教育においても、世界への教育発信においてもやっぱりPDCAだということで、何かめくらめっぽうに何かやっているということでもなくて、非常に系統的に合理的にPDCAを回しつつあると思うので、何か変えるということについてポジティブな見方を持つといいと思うんです。
アズレーさん自ら手本を示していると思うんです。別に今までユネスコがやってきたこと、パリ本部がやってきたこと、どれも評価すべきなんだけれども、でも、ずっとそのままではだめなんだということなんですね。ストラテジックトランスフォーメーションに勇気を持ってPDCAサイクルを回しながら取り組んでいこうと。その際には、世界からも日本からも知見をもらいたいと。
きょう私は全部メモを取って伺っておりましたので、次の第2回ハイレベルリフレクショングループに対して、日本からの知見としてまた発信してまいりたいと思っています。ありがとうございます。
【濵口会長代理】 ありがとうございます。それでは、どうぞ、お願いします。
【片山委員】 どうも発言の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。私は長浜ユネスコ協会の会長をしております片山と申します。地域的なユネスコ活動の領域を代表する者といたしまして、近畿の36のユネスコ協会の代表として昨年任命された者でございます。
建議4に資する追加の事例を簡単に紹介させていただきます。スライドでは26ページをご覧になっていただきたいと思います。実績のところに世界遺産サミット開催という欄がございまして、ここには日光での第6回の世界遺産サミットの開催が記載されております。全国で今、日本中、ユネスコといいますと世界遺産が有名になっております。
私ども長浜ユネスコ協会や世界遺産に登録されている自治体の教育委員会、この趣旨に賛同する団体等が既に10回目を迎える次世代の育成を狙った世界遺産学習サミットを開催しています。過去に岩手県の平泉町、島根県の大田市、福岡県の宗像市、2022年には屋久島でサミット開催が予定されています。世界遺産のある自治体だけではなくて、地域の歴史や文化、自然への関心を高める行動を促す教育プロジェクトとして展開していきたいと思います。きっと新しいこのプラットフォームに参加していけるものと期待をしております。どうぞよろしくお願いいたします。
【濵口会長代理】 ありがとうございます。
それでは、お隣の木間さん、よろしくお願いします。
【木間委員】 朝日生命ユネスコクラブの副会長、東京都ユネスコ連絡協議会の事務局長を務めております木間と申します。よろしくお願いいたします。本日、日本ユネスコ協会連盟の報告で幾つか地域の事例が紹介されました。今、片山さんからも世界遺産のお話がありましたが、連携のキーワードとして「世界遺産」、「地域遺産」も重要であり、これらをキーワードとしたプラットフォームの連携が進んでいるという点を補足させていただきたいと思います。
東京都の例になりますが、豊島区では雑司が谷の未来遺産登録をきっかけとしてユネスコ協会と地域の市民団体、学校などの連携が出来て、今一緒に活動しておりますし、未来遺産に登録された玉川上水ネットでは、ユネスコ協会・クラブ3団体をはじめ地域の市民団体、玉川上水の自然保護団体など約25団体約3,000名以上が連携して活動しております。更にそこに大学の研究者、企業も加わった大規模な連絡会も設立されています。まさに多様なステークホルダーによる連携が実現しております。
また、現在、東京都では、国立西洋美術館が世界遺産登録を果たしており、東京オリンピックの前回・今回の会場となる国立代々木競技場も、世界遺産登録を目指しております。東京都ユネスコ連絡協議会では、明後日、国立西洋美術館と国立代々木競技場をテーマに世界文化遺産の講演会を開催いたします。世界の注目が集まっている東京オリンピックの機会に、会場となる国立代々木競技場がユネスコ世界遺産登録を目指しているということをユネスコ活動に関わる私たちが発信していくことも、ユネスコへの理解を深め広めて、様々なステークホルダーとの連携を図っていくことにつながっていくものと思います。実際、今回の講演会は渋谷区も後援してくださいましたし、この企画をきっかけに渋谷区内の大学の教授がユネスコ活動に関心を持ってくださいまして、大学内にユネスコクラブを設立したいということで、具体的に準備を進めてくださっています。
このように、「世界遺産」、「地域遺産」もキーワードにして連携を進めていくとよいと思います。もう一つは、せっかく東京でオリンピックが開催されるのに、どうしてユネスコは余り連携していないのかという思いがあります。せっかくの機会ですので、東京オリンピックという機会を生かしてユネスコの理念の普及を図っていくような取組みをもっと検討していってもいいのではないかと思います。以上です。よろしくお願いいたします。

【松浦特別顧問】 先ほど来の皆さんの御報告を伺って、日本の各地で、更にはいろいろな分野でユネスコ活動が活発に行われているので非常に嬉しく思いました。その中で私は、創造都市ネットワークで一言提言させていただきたいんです。先ほどの金沢市の話は非常に興味深く、まさに2009年、私がユネスコ時代に創造都市ネットワークに登録されて、当時の市長が私に是非来て認定書を直接渡してくれというので金沢市に訪れたのを覚えていますが、その後活発にやっていらっしゃるので非常に嬉しく思うんです。
遡れば、創造都市ネットワークというのは2004年に私が立ち上げたんですが、ユネスコはそれまで文化遺産の保全、これはもちろん今も非常に大きな柱ですけれども、非常に力を入れてきたんですが、同時にそれを踏まえて新しい文化を作ること。それが人類の文化の多様性の維持・強化に必要であるという認識を持って提案しました。残念ながら日本の都市は最初関心を示してくれなかったのが、その後非常に関心を持っていただいて嬉しいんですが、現段階で実は7分野あるんですけれども、文学が欠けている。つまり、文学で創造都市ネットワークに登録されている日本の都市がないのは、私はかねてから非常に残念に思っています。皆さん方で、せっかく日本の文学というのは世界でもいろいろと注目されているわけですから、創造都市ネットワークに私は文学に関連する日本の都市が是非登録されてほしいと思っていますので、いいところがあれば、これは窓口は文科省かと思いますけれども、提案して、是非実現させていただければうれしいと思います。以上です。
【濵口会長代理】 ありがとうございます。ほかいかがですか。はい、道傳さん。
【道傳委員】 NHKの道傳愛子でございます。きょうもまた大変に勉強になりました。ありがとうございました。
先頃インドのデリーにありますユネスコのMGIEP、マハトマ・ガンジー平和のための教育研究所というユネスコのカテゴリー1の研究機関の理事会に出席する機会がありましたので、若干の情報共有をさせていただきます。これは設立の経緯も含めて松浦特別顧問がよく御存じの機関でございまして、私は縁がありまして、今、理事を務めております。
先頃、アズレー事務局長もデリーのこの本部を訪ねられて発言をなさったところでございます。
皆様よく御存じのように、アジア太平洋は途上国での教育の普及や、あるいは排他主義や過激主義の防止という課題を抱える一方で、中進国や先進国、先進国の中には当然シンガポールや日本、韓国などが含まれますけれども、はたして子供たちが心身共に健康に学びを深めているのかということも大きな課題としての問題意識がございました。
その中で、先ほど東京都市大学大学院の佐藤先生の御発表の中にもありましたけれども、例えばエンパシー、感情的な知性、マインドフルネス、批判的に考える力、検証的に物事を捉える力、あるいは主体的に学びを深めているのかといったような大変に真剣な問い掛けが研究所の中でもなされていました。
その中で、SDGs、ESDを進めていく中での日本の役割についても言及がございました。なぜかといいますと、すべての子どもに教育を、といった教育の普及の課題を乗り越えて、先進国がかかえる教育の課題にも向き合う国として日本に対して大きな期待が寄せられているからでございました。情報共有させていただきますとともに、私も参加しております教育小委員会などでも議論を深めて、今後も私自身も発信などに努めていきたいと考えております。引き続きよろしくお願いいたします。
【濵口会長代理】 ありがとうございます。それでは、杉村さん、お願いします。
【杉村委員】 発言の機会を頂きまして、ありがとうございます。私からは3点、一つは御報告と、それから、ただいま素晴らしい、良い取組、具体的な取組を伺いまして、コメントを2点申し上げたいと思います。
1点めは、先ほど事務局からも御報告も頂きました「ESD for 2030」のロードマップ策定に関し、昨年秋、非公式コンサルテーション会合ですが、パリのユネスコ本部での会合に教育小委員会を代表して出席させていただきましたので、補足させていただきます。これにつきましては、附属資料の4の方にも概要を挙げていただいております。この会議には16か国からの参加がありました。もともとはフィジーが加わっていたようですが欠席でしたので、16か国の代表が集まって行われた会議でした。アジアからは日本だけでございました。
この会合は、先ほどから皆様が重視しいろいろ御発言いただいているESDに関して、具体的にそれをどうやって各国で実践していくかというロードマップを作る作業を行うもので、そのたたき台をユネスコが提案して、それについて意見を交わし、より良いものにしていくというものです。
会合では幾つかのポイントがありました。
その中で非常に印象的だったのは、先ほどからも出ているように、各国の政策、学習の環境、若者のエンパワーメントと活動促進、地域社会における持続可能な発展、それから、それらをどうやってうまくつなぎ合わせていくかというマルチステークホルダーのイニシアチブといった観点がについて話し合われたことです。
他方、課題として各国の代表からたびたび指摘されたのが、ESDを実際に学校現場で実践していく際に、それをどうやって評価するか、あるいはモニタリングをどのように実施していくかということです。恐らくこれから2030年に向けて、ESDの活動が日本のみならず各国で注目され活発化されていくと思います。その際、評価とかあるいは振り返りをする時に、どのような視点でどのような観点から各国間のモニタリングをしていくかということについて様々な意見が出されましたが、ロードマップ案の中にはそうした視点が具体的にはまだ書き込まれていませんでした。現在、ロードマップは、意見交換しながら修正案が作られているところですけれども、そうしたことが今後明確になってくればよいのではないかと思いました。
これも先ほど事務局からの御報告がありましたとおり、本年6月2日から4日にドイツのベルリンで「ESDに関するユネスコ世界会議」が開催されます。同会議ではESD2030のロードマップのまとまったものが紹介され、各国で共有することになります。ロードマップ自体は非常に大きなフレームワークですけれども、このロードマップの作成に向けて、日本からも是非、さきほど御報告がありましたような日本のすばらしい取組を何らかの形で入れていただければと思います。
ロードマップには実践例も含められるとよいと考えますが、それらを入れる余裕はありません。そのため、ロードマップ会合の際にも、ITの技術を使って、読み取りのバーコードをロードマップの中に付けて、そこへピッとアクセスすると各国のいろいろな良い取組につながるようにすべきだということが議論され、先日示された修正版にはそうした工夫もなされていました。日本の実践の大きな蓄積を是非今後いろいろな形で発信していくことができればと思います。
さらに、日本のESD賞については非常に高い評価を得ていて、グッドプラクティスとしてロードマップの一つの項目の中にそのイニシアチブについて書き込まれると思いますので、合わせて御報告申し上げます。
次に先ほど皆様が御報告くださった具体的事例を伺いコメントを申し上げますと、日本には本当にたくさんの、しかも密度の濃い実践をいろいろなステークホルダーの方が取り組まれていて、今後はいかにそれらを世界に向けてよりよく発信していくかということが非常に重要なのではないかと感じました。そのことは、その会合に行ったときも強く思いました。
各国ともいろいろな取組を行っています。今日の附属資料の3のところに挙げていただいていますけれども、「ESD for 2030」という中で取り扱われている分野には、先ほどご指摘がありましたようにジェンダーやアフリカのようにユネスコが重点を置いているものや、それと併せて申し上げれば幼児教育あるいは高等教育、それから、遠隔教育とか、あるいは職業技術教育などがあり、非常に幅広い分野をEducation for 2030は視野に入れて動いていこうとしています。そうしたときに日本の実践で取り上げられている地域コミュニティとの連携や自治体との連携、あるいは、企業、大学、学術機関との連携等のいろいろな実践例を何らかの形でうまく世界に発信し、逆に世界のいろいろな国の事例との比較ができるとよいのではないかと思いました。
先ほど、御発表者の方の中からも、ユネスコの未来共創プロジェクトに非常に大きな期待を寄せていただいているというご意見がありましたが、こうした共創プラットフォームを作る中でうまく連携ができて、それを是非国際社会に発信することができればいいのではないかと感じた次第です。
最後に、もう一つのコメントといたしまして、このユネスコ国内委員会にはたくさんの委員の先生がおられて、すばらしい編成になっていると思いますが、私は現在、教育小委員会で大変御世話になっていますが、本日の議論にもあったように文化遺産だとか、それから文化都市だとか、各委員会で話し合っている内容をうまく連携し、そして、機動的に国内委員会全体が動いていけると更に勉強になるのではないかと思いました。
教育小委員会といたしましては、ESDについて、各委員会で御議論いただいている内容を是非参照させていただきたいと思います。逆に教育小委員会の議論の内容についても共有させていただきたいと考えます。今日の委員会の組織自体は、恐らく長い歴史と伝統の中で作られているものだと思いますけれども、何かうまく機動的に動かせられるような仕組みが出来るといいのではないかと考えます。この点につき事務局の方ともまた御相談させていただければと思っております。以上でございます。ありがとうございました。
【濵口会長代理】 ありがとうございます。杉村先生は、教育小委員会の今、委員長を務められておりますが、今日本当に密度の濃い、幅広い活動を各地の活動でお話しいただきましたけれども、これを杉村先生の方へお返ししてまとめていただいて、世界へつなぐという道筋ができると本当にいいですね。
【杉村委員】 頑張りたいと思います。この間ユネスコの会合に行かせていただき、これは個人的な感想ですけれども、日本のこのすばらしい活動をアピールをしていきたいなと思いました……。
【濵口会長代理】 皆さんは当たり前のことだと思っておられるかもしれんけど、世界で比較すると、物すごいことを実はやっとるんだと思うんです、私、アフリカとか中央アジアを見ているとですね。
【杉村委員】 全然当たり前ではないと思います。すばらしい取組だと思います。
【濵口会長代理】 だから、もっとこれ、各国にとってもモデルになると思うんです。だから、自慢じゃなくて、モデルとして、各国がロードマップを描いていくときのイメージをどう作っていくかという参考になることですので、とても大事なことですので是非、小委員会の方でも議論していただきますけれども、事務局もちょっと相談されておりますけれども、各小委員会が縦割りになっているのを、もう少し横串を入れる、融合するというようなことをこれからの活動の中に少し入れていただいて、連携が高まるように、密度の濃いアウトプットができるようなことができるといいかと思いますけれども、事務局、何か御意見ありますか。
【大杉国際戦略企画官】 御相談しながら、具体的な機動的な体制を検討させていただきたいと思います。ありがとうございます。
【濵口会長代理】 よろしくお願いします。大分御時間も押してまいりましたが……、はい、どうぞ。
【吉田委員】 ありがとうございます。今の杉村先生の御発言に触発されまして、それと、会長の反応を見ると、それがブーメランでこっちに戻ってきそうなのでちょっと怖いんですけれども。吉田です。SDG-教育2030ステアリング・コミッティの共同議長も仰せつかって務めています。
そういった国際的な立場から日頃仕事をしていて、本日のように具体的な取組について国内の本当にすばらしい実践例をお聞きすると鼻が高いんですけれども、今、会長がまとめられたとおりなんですが、具体的に申し上げたいと思います。というのは、日本は実践力は非常にあるけれども、発信力が弱いと。それはどこに問題があるのかというところの分析とそれを改善するための取組がどんなに言われても何も進んでいない。
二つに大きく分けて申し上げたいんですけれども、国際的に発信するときは、事例集としてだけ出していくと、情報として拡散していって、結局、「日本はよくやっている。あれはすばらしい取組だ」で終わってしまうんですね。それを発信する際に、どうしてそういう効果が持続するような取組を長期的にできているのか、それを可能にさせている仕組みは何なのか、制度的な何かがあるのか、それを全体として支援している政策的な枠組みがあるのかどうかと、あるという前提で検証するべきだと思います。
それと、そういうことを世界的に発信する際に、じゃ、その結果、SDGsの一番大切なものは、ユニバーサリティもそうですし、トランスフォーマティブネスもそうですけれども、成果を重視しているわけですから、特に行動変容を促すようなESDがSDGs全体のkey enablerだと。それを世界で胸を張って実践している国が日本だというときに、じゃ、それがどのように日本の国内においてやる気がもっと広がって拡散していったのか、そのプロセスはどこに秘訣があったのかということを発信できるかどうか。そして、その結果、確かに広がっていった結果、どのような成果が起こったのかということをまた発信できるかどうか。
日本が制度・政策レベルで発信するということと、実践的にうまくいっているところのコツの両方がうまくいくと、それのメッセージ力というのは、例えば今ほぼ頓挫するに近いSDG4.7の国際的に測るべき指標のどこをどう見るべきなのかという議論に本当に強力で有効な一石を投じることができると思うんです。
ですから、今のような視点を持って、例えば日本が取り組んでいるSDGs全体の成果をどのように捕捉するのか。これは外務省さん、そして、内閣府全体の責任になってくると思います。そして、その中核になっていると言ってもいいESDを所掌する文科省、そして、それをこのように議論している当国内委員会は、今言ったようなモニタリングの仕方、そして、評価の仕方、エンカレッジメントの仕方、そういうものを議論の枠組みの中にどのように置いているのかどうか。
そういうようなやや中間的なメタ評価のような仕組みを入れていかないと、どんなに指摘してもなかなか具体的に進展していかないというところで少し、またそれで私の方に戻ってくるような気もするんですけれども、日本の中でせっかくそういうメッセージがあるということを発信できる形にするまでのそのプロセスをどこがどのようにしているかという、そこの責任も明確にしておかないと、せっかく、私もステアリング・コミッティの共同議長をするのはあと今年1年という賞味期限ですので、是非そのような立場に日本人がいるということを有効に活用する上でも、今のような申し上げた点を積極的にプロアクティブに実施に移していくようなことを検討いただきたいと思います。
【濵口会長代理】 ありがとうございます。大変重要な御指摘を頂いたと思います。今、多分この国内委員会の一つの大きな課題は、それぞれが非常に高い実践力を持っているところがうまく統合でき切れていないのではないかと。それをきちんと統合して、メッセージとして事務局を核にして発信していくシステムを今年作れるかどうかということかなと今ちょっと思っておりますが、いかがでしょうかね、事務局。
【大杉国際戦略企画官】 様々分析能力を持つ広島大学さん、あるいは国立教育政策研究所などいろいろなところと連携しながら、また発信の在り方、プラットフォームの活用も含めて検討したいと思います。ありがとうございます。
【濵口会長代理】 それでは、秋永さん、お願いします。
【秋永委員】 ありがとうございます。リバネスの秋永です。まず私、ユースのコンファレンス第1回の参加者ということで、それ以来御縁を頂いて、この場に参加させていただいております。そういった意味では、五井平和財団の皆様をはじめ、ユースの活躍の場、集まり続ける場を作っていただき、皆様に感謝を申し上げます。
本日たくさんの事例を頂いたのですけれども、先ほど吉田委員からもありましたように、SDGsの本質とは何かというのをやはり国内委員会でいま一度言語化し、ならば、2020年の会長ステートメントなのか、何かしらの我々の総意を発信できないかというふうに考えております。
我々、SDGsの推進という意味では世界的にリードをしていると思うのですが、サステナブルディベロップメント、持続可能性というものが何を指すのか本質的な議論をしたことはあるでしょうか。各個人や各地域、組織でその議論はなされていると思いますが、いま一度、国内委員会若しくは日本としての言語化ができるのではないかと思います。
実際、東南アジアをはじめ、様々な教育機関や大学機関でプレゼンテーションの中にSDGsのロゴを使う方が大変増えてきたことを世界でも感じています。ただ一方で、ロゴさえ使えば注目を集められるのではないかとか、ロゴさえ入れればお金が集まるのではないかというような印象を受ける、時にはそうした危機感を覚えることもあるのです。一方で、ESDやSDGsという言葉を使っていなくても、ロゴを入れていなくても、そのような考え方を持ち合わせて活動している方は多くいるはずなんです。
といった意味で、本日、都市大学の佐藤先生に話題提供いただきまして、SDGsの本質とは何かということを幾つか言語化いただいたと思います。大変勉強になりましたし、そこにあったような複雑な問題に包容力や変容力を持って適応するとか、あとは、実は東大のサステナビリティ学教育プログラムの立ち上げをされた味埜教授の退官講義に先日参加したんですけれども、そこでも、サステナビリティの本質はしなやかさという言葉で表現されており、サステナビリティに取り組むのはある意味「態度」の話であるといえます。
2015年の会長ステートメントにも、知的リーダーとして多様性を尊重するといった言葉がありましたので、是非いま一度そうした本質的な議論をこの国内委員会でして、世界に発信するペーパーなどを出せたらと。そして私もそこに貢献したいと思っております。以上です。
【濵口会長代理】 ありがとうございます。すごい大きな宿題を頂いたように思うんですが、大杉さん、いいですか。
【大杉国際戦略企画官】 そうですね、御時間も迫ってまいりましたので、是非皆さんの御発言を頂いて、事務局としてしっかり様々な宿題をこなしていきたいと思います。
【濵口会長代理】 しっかり受け止めて進めさせていただきたいと思います。
どうぞ、石井さん。
【石井委員】 民間のユネスコ協会で活動しています神奈川県の厚木の石井です。きょうの会議で具体的事例のヒアリングが良かったです。私が国内委員になって初めてこういう機会があったのではないでしょうか。どの事例もそれぞれの分野で努力していらっしゃるもので、興味深く聞かせていただきました。
私は民間人ですので、最後の日本ユネスコ協会連盟の川上事務局長さんが報告なさったことを本当にありがたく思いました。日頃から民間で活動していることを、厚木ではこういうことをやっているよとか小事例を報告するのではなく、全国的な活動をまとめて発表していただいたので、民間ではこんなにたくさん活動しているということを皆さんにお分かりいただけたと思うのですね。だから、本当に嬉しく思いました。
こういう機会を是非これからも続けていただければとても有り難いなと思いました。5分という発表は短くて、何か皆さん大変苦労していらっしゃったんですけれども、その分討議の時間が短くなりますが、それはこれからも続けていけば、だんだん時間的に慣れてくるのかなと思います。きょうは本当に良かったと思っています。ありがとうございました。
【濵口会長代理】 ありがとうございます。
古賀さん、締めの発言を行いますか。
【古賀副会長】 本日は実例に基づいた非常に有意義な議論が交わされ、私自身大変勉強になりました。私からは、この度の建議の主旨でもあるユネスコ活動の活性化の観点から、一点申し上げます。先ほど吉田委員や秋永委員からもご指摘いただきましたように、もう少し一般の人々にもわかりやすい形のアジェンダに変える努力が必要ではないかという点です。
以前この総会の場で申し上げた通り、例えばESDという単語は、おそらくユネスコ活動に深く関わるごく一部の方にのみ定着している言葉だと思います。そういった中で、ESDという単語を発信するだけで、その意義を世間に広く浸透させることは難しいと思います。一方でSDGsは、世の中に広く認知されてきたと言えます。例えばESDについてSDGsという普遍的な目標に到達する近道や方策といった表現で世の中に問い掛けた方が、一般的にはわかりやすいのではないでしょうか。より広く共感を得ることができれば、ESDの発展に向けて活用できる要素が今以上にこの委員会へも集まるのではないか、という気がいたします。ESDという単語を前提とするのではなく、その理念の浸透を目指すよう御努力いただきたい、と思った次第です。
【濵口会長代理】 ありがとうございます。宿題をもう一つ頂きましたけれども……。
【古賀副会長】 よろしくお願いいたします。
【濵口会長代理】 宿題満載の委員会になりましたが、御時間も来ましたので、ぼちぼち締めとさせていただきたいと思います。いろいろまだ御意見ございます方おみえになると思いますけれども、どうしても入れておきたいという御意見があったら、メールで頂ければ、事務局が180%受け入れてやっていただけると思います。よろしくお願いします。
それでは、議題4ですが、議題4はその他であります。これまでの議題に、特に報告、審議すべき案件がありましたらお願いしたいんですが、いかがでしょうか。もう言い尽くしましたでしょうか。よろしいでしょうか。
なければ、最後に事務局より事務連絡をお願いいたします。
【秦国際統括官補佐】 どうもありがとうございます。本日、机上資料はお持ち帰りいただけたらと思いますが、郵送の御希望の場合は、机上にある郵送のところにマルを付けてお名前を書いておいていただければ、事務局の方から発送させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
【濵口会長代理】 それでは、これで閉会します。本日は、御多忙中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
この後の会合については、事務局が誘導いたしますので、御登録されている方は是非御参加をお願いしたいと思います。移動をお願いします。
本日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――
 

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