日本ユネスコ委員会第138回国内委員会議事録

1.日時

平成28年2月1日(月曜日)15時00分~17時00分

2.場所

東海大学校友会館 阿蘇・朝日の間

3.出席者(敬称略)

〔委員〕
 安西祐一郎(会長)、古賀信行(副会長)、羽入佐和子(副会長)
秋永名美、安達久美子、安達仁美、有里泰徳、礒田博子、井手明子、稲葉カヨ、植松光夫、榎田好一、及川幸彦、相賀昌宏、岡田元子、岡田保良、長有紀枝、川井郁子、河内順子、黒田一雄、黒田玲子、郡和子、小林真理、今みどり、西園寺裕夫、重政子、島谷弘幸、妹島和世、高尾初江、立川康人、土屋定之(文部科学事務次官)寺本充、中西正人、二瓶和敏、濵口道成、早川信夫、林梓、平野英治、観山正見、山脇良雄(日本ユネスコ国内委員会事務総長(文部科学省国際統括官))、横山恵里子、吉見俊哉

〔欠席・委任〕
 青野由利、阿部宏史、伊東信一郎、猪口邦子、宇佐美誠、内永ゆか子、内山田竹志、小此木八郎、加藤淳子、齋木昭隆(外務事務次官)、田中一穂(財務事務次官)、那谷屋正義、西尾章治郎、丹羽秀樹、野村道朗、松野博一、松山政司、見上一幸

〔外務省〕
新美潤外務省国際文化交流審議官

[文部科学省]
馳浩文部科学大臣、豊岡宏規大臣官房国際課長

[スポーツ庁]

今泉柔剛スポーツ庁国際課長

〔事務局〕
 松浦晃一郎日本ユネスコ国内委員会特別顧問(前ユネスコ事務局長)、福田和樹日本ユネスコ国内委員会事務次長(文部科学省国際統括官付国際戦略企画官)、その他関係官

4.議事録

【安西会長】  御多忙の中、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。定刻でございますので、始めさせていただければと思います。まず、事務局に定足数の確認をお願いします。
【野田補佐】  申し上げます。本日は、出席委員が現時点で38名でございます。委員の総数が58名でございますので、過半数30名以上を満たしております。定足数を満たしております。
以上でございます。
【安西会長】  ありがとうございました。事務局から定足数が満たされるという御報告がありましたので、第138回日本ユネスコ国内委員会を開会させていただきます。
国内委員会の規定に基づきまして、今日の総会は一部の議題を除いて、傍聴の希望者に対して公開をいたします。
また、御発言は、非公開部分を除きましてはそのまま議事録に掲載され、ホームページ等で公開されます。今日
の会議には、外務省の関係官に出席を求めておりますほか、松浦日本ユネスコ国内委員会特別顧問にお越しをいただいております。松浦特別顧問には、後ほど御意見を頂く予定でございます。
続きまして、今日の配付資料について不足等がありましたら、会議の途中で構いませんので、挙手にて事務局までお知らせください。
審議の前に、去年7月14日に開催されました前回の国内委員会総会以降、委員の異動がございましたので、事務局から報告をお願いしたいと思います。
【野田補佐】  申し上げます。お配りの資料の参考1を御参照ください。
まず、平成27年12月1日付けで再任の委員としてお二方、加藤淳子委員、本日御欠席でございますが、そのほか岡田保良委員が就任されております。
また、新任の委員としまして、秋永名美委員、安達久美子委員、有里泰徳委員、本日御欠席でございます、伊東信一郎委員、相賀昌宏委員、小林真理委員、今みどり委員、高尾初江委員、立川康人委員、寺本充委員、濱口道成委員、平野英治委員、また田中一穂委員が御就任いただいておりますが、本日欠席でございます。
このほか本年1月28日付けで衆議院より指名に基づきまして、丹羽秀樹委員、本日御欠席でございます、郡 和子委員。それに加えまして、退任の委員としまして、衆議院議員の中川正春委員と萩生田光一委員、さらには参議院議員の松山政司委員が退任してございます。
このほか事務局で山中伸一委員が文部科学事務次官を退職しましたので、新たに8月4日付けで文部科学事務次官土屋定之が事務局に就任してございます。
以上でございます。
【安西会長】  ありがとうございました。
なお、昨年12月1日付けで古賀信行委員が日本ユネスコ国内委員会副会長に就任しておられます。新しい委員の皆様のお力もお借りいたしまして、我が国のユネスコ活動を一層推進してまいりたいと思いますので、どうぞ皆様よろしくお願い申し上げます。
古賀副会長もよろしくお願いいたします。
【古賀副会長】  よろしくお願いいたします。
【安西会長】  まず、会議開催に際しまして、御多忙の中、馳文部科学大臣にいらしていただいております。馳文部科学大臣から御挨拶を頂ければと思います。馳大臣、よろしくお願いいたします。
【馳大臣】  皆さん、こんにちは。
昨年10月に文部科学大臣を拝命いたしました馳 浩と申します。目の前に郡先生がいらっしゃるので緊張しておりますが、冒頭でありますし、また大変申し訳ありませんが、諸般の用もありまして御挨拶の後退出をする無礼を、おわびを最初に申し上げて御挨拶をさせていただきます。
昨年11月に私、文部科学大臣として10年ぶりにユネスコ総会に出席をし、一般政策演説を行いました。記憶遺産事業の在り方について、ガバナンスや透明性の向上を含む改善を早急に実現するよう加盟国に呼びかけるとともに、事務局長の強いリーダーシップを要請したほか、ESDの重要性を指摘いたしました。
また、ボコバ事務局長との協議においては、記憶遺産事業における「南京事件」に関する資料の登録について、改めて我が国として極めて遺憾である旨を伝えるとともに、記憶遺産制度の改善を強く働きかけました。一方で、ユネスコとは透明性の向上など制度改善の必要性について問題意識を共有するとともに、ボコバ事務局長が見直しに向けて検討に着手したということを確認いたしました。
併せて、昨年取りまとめいただきました日本ユネスコ国内委員会の会長ステートメントに触れ、多様性の尊重と持続可能な社会の実現に向けたユネスコの役割の重要性を強調したところであります。
ユネスコ活動は、ESDや1,000校に迫るユネスコスクール、このたび正式事業化された世界ジオパーク事業など、多様な取組が展開されているところです。特にESDについては、ユネスコ総会出席時にユネスコ/日本ESD賞の第1回表彰式がユネスコ本部で開催されたことから、私から受賞した3団体に副賞を授与してまいりました。
また、世界遺産の分野においては、先月15日に「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」の推薦が閣議了解され、ユネスコに推薦書を提出したところであります。
無形文化遺産の分野においても、一昨年に「和紙:日本の手漉和紙技術」が登録されるなど、国民にとって文化分野におけるユネスコ活動は大変親しみやすいものとなっております。これらの事業が地域の活性化及び文化多様性への理解をさらに増進できるよう、国内委員会としてもさらなる取組をお願いしたいと思います。
結びに、安西会長、羽入副会長、古賀副会長並びに委員の皆様方には、今後とも一層の御指導を賜りますようにお願いを申し上げまして、冒頭の御挨拶とさせていただきます。どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
【安西会長】  ありがとうございました。馳大臣にはユネスコに大変御尽力を頂いているところでございます。この後、大臣には御予定がおありになりますので、ここで御退席になられます。どうもありがとうございました。
【馳大臣】  どうぞよろしくお願いいたします。お世話になります。
(馳大臣退席・拍手)
【安西会長】  それでは、審議に入らせていただきます。
昨年11月にパリのユネスコ本部におきまして第38回ユネスコ総会がございました。今、馳大臣がおっしゃったところでございます。これに関しまして、事務局から説明をお願いいたします。
議題1「第38回ユネスコ総会の結果等について」という議題でございます。よろしくお願いします。
【福田国際戦略企画官】  失礼いたします。
資料1を御覧頂きたいと思います。第38回のユネスコ総会の結果につきまして御報告申し上げます。
まず1ページでございますけれども、先ほど大臣からも挨拶の中でございましたとおり、馳文部科学大臣が10年ぶりにユネスコ総会に出張をしたところでございます。その中で、この(1)にございますとおり一般政策演説というのを行うとともに、(2)でボコバ事務局長との協議を行ったところでございます。内容につきましては、先ほど大臣より説明のあったとおりでございますが、ユネスコ記憶遺産の事業の在り方について問題を提起するとともに、引き続きユネスコとの間で連携を図っていくという旨に関しまして、意見交換を行ったところでございます。
次のページ、2ページ目をお開きいただきたいと思います。このほかユネスコ総会ということでございますので、各国より参加のありました閣僚などと意見交換を行ったほか、(4)でユネスコ/日本ESD賞の授与式を行ったところでございます。この授与式に関しましては、馳文部科学大臣のほかボコバ事務局長も出席し、受賞者に対して大臣より副賞を授与したところでございます。
次に下の2ポツでございます。日本ユネスコ国内委員会会長ステートメントの手交ということでございまして、本国内委員会総会及び各小委員会でも御議論いただきました会長ステートメントにつきまして、安西国内委員会会長が11月初めにかけて、ユネスコ総会に出席し、そしてボコバ事務局長に直接このステートメントを手交したところでございます。
このステートメントの内容につきましては既に御承知のとおりでございますけれども、ユネスコに対して「知的リーダー」としての新たな時代の国際社会の形成に貢献していくべきとするとともに、持続可能な社会あるいは多様性を尊重する社会の実現への貢献を求めたところでございます。
次に下の3ポツでございます。この他の本総会における主な決定事項についてということでございます。まず、1の「持続可能な開発のための2030アジェンダ」、いわゆるSDGsの推進につきましてでございます。ここにありますとおり、昨年首脳レベルで合意がなされましたこの2030アジェンダに基づき、ユネスコにおいてその関係分野、具体的には教育を中心とする各国の取組を主導していくことが確認されたところでございます。その具体的な枠組みといたしまして、「教育2030行動枠組み」が採択されたところでございます。この中ではESDなどについても触れられているところでございます。
次のページでございます、3ページでございます。2ユネスコ世界ジオパークの正式事業化でございます。これは科学分野の取組でございますけれども、地質学的な遺産を保護し、それを研究に活用するのみならず、例えば観光資源として地域に生かすなど、そういったことを目的とした世界ジオパークにつきまして、既にこれまでも取組がなされていたところでございますけれども、これを新たに「ユネスコ世界ジオパーク」としてユネスコの正式事業化することが決定されたところでございます。
この1、2の取組につきましては、また追って詳細を御説明させていただきたいと思います。
以上でございます。
【安西会長】  ありがとうございました。今の御説明の中に、いわゆる会長ステートメントにつきましては、総会の委員の皆様、また委員会の方々に大変貴重な御意見を頂いて、まとめられたものでございます。会長ステートメントというよりも国内委員会ステートメントという名称にしたいと申し上げたのですが、会長ステートメントでなければだめだということでございましたので、そういう名称になっておりますが、総会としてのステートメントだと理解しております。改めて感謝を申し上げたいと思います。
今の事務局からの御説明につきましては、後ほど御質問、御意見を頂くことにいたしまして、その前に、ユネスコ総会のリーダーズ・フォーラムに出席いただきました松浦日本ユネスコ国内委員会特別顧問にお越しいただいておりますので、松浦特別顧問の御報告、御意見をまず伺わせていただければと思います。
それでは松浦特別顧問、よろしくお願いいたします。
【松浦特別顧問】  それでは、私から今御指摘がございましたユネスコ総会、最後に開かれましたユネスコの70周年行事、それと併せてリーダーズ・フォーラムが開かれました。その点について、全体の動きに私個人の見解を交えて御報告させていただきます。
ユネスコ総会に関しては今、大臣からも、事務局からも御報告されましたように、いくつものポジティブな成果があったと思います。私から見て一番よかったのは、ちょうどその前に、9月にニューヨークで国連サミットが開かれて、SDGsが採択され、17の目標が決まり、その中に教育が入り、それを踏まえてユネスコ総会において、同じく2030年をにらんで、ユネスコが教育に関してSDGsに定められた一連の目標をしっかり達成するための行動計画ができたことであります。
それからさらに申し上げれば、日本がかねてからとっております重要な国際的なイニシアチブのESDが、SDGsの中にサブターゲットの1つではありますけれども、明記され、そしてユネスコの行動計画の中にもしっかり位置付けされたということであります。これはさらに言えば、日本がこれだけ音頭をとって日本でESDを主目的とするユネスコスクールも1,000を超える状況に至りましたので、是非日本においてこのESDの模範的な実施状況を実現していただいて、それをしっかりユネスコにフィードバックしていただきたいと思います。
それから、今御報告ございましたけれども、私にとって個人的にもうれしかったのは、ジオパークがようやくユネスコの正式事業になったことであります。これは私が事務局長時代である10年以上前に学者の方々の提案を受けて、ジオパークに提案した経緯があります。しかし、メンバー国が話にのってこなくて、ユネスコが支援している事業、正式の事業ではないけれども支援する事業として始めさせていただきましたが、その後世界各国でしっかり動き出し、そして日本も現在非常に盛り上がっております。先日北陸の白山市で全国大会が開かれて、私も招かれて講演いたしましたけれども、日本で日本ジオパークあるいは世界ジオパークに向けて、日本各地でいわばジオパーク、日本語で地質遺産と呼んでいいかどうか自信ありませんけれども、強いて言えば地質遺産ということになると思いますけれども、そういうものがしっかり日本各地で関心を呼び、人気を呼んでいるのを非常に私はうれしく思っております。
それから、これはあまり日本で報道されていませんが、コソボのユネスコ承認が認められませんでした。これは前回も申し上げましたように、2011年にパレスチナを認めたのは、私は長い歴史の流れでは悪くないと思いますけれども、時期尚早であったと思っております。その結果、アメリカが22%の分担金を払わないで、今ユネスコは大変な財政危機に陥っておりますけれども、コソボもまだまだ国際的なコンセンサスが成立しない状況でユネスコが認めるということは、まだ早過ぎると思っていました。私の言葉で言えば、幸いにして認められませんでした。もちろんコソボを支持した国にとっては非常に残念なことのようですけれども、これは日本で全く報道されませんでしたけれども、結果として悪くなかったと思っております。
しかしながら、私が今申し上げた70周年行事に出ましたし、そこに出席した何人かの各国の大統領ともお会いいたしました。それから私の後任のボコバ事務局長とも1対1で、かなり長い時間お話しいたしましたけれども、今、ユネスコにおいては3つの問題を抱えております。一番大きいのは何といっても、今までも何回も触れました、アメリカが分担金を支払わないことです。22%に及ぶ予算の重要な柱になっている分担金を払っていないし、さらに言えばこの間ケリー国務長官がユネスコ総会前に、ユネスコを訪れて、法律改正をして払うようにすると、そういう努力をするとは言っていますけれども、実際問題としてアメリカの議会は御承知の下院上院、共和党が多数を占めています。今度の選挙でどうなるかにもよりますけれども、そう簡単に法律は変えられないと思います。ということは、当分アメリカが支払わないと、そういう状況で非常に今財政難です。
それからさらに、これもあまり報道されていませんけれども、分担金という義務的な経費のみならず任意拠出金もアメリカが止めています。私は非常に努力して、かなり任意拠出金はアメリカのみならず、他の先進国あるいは民間団体からもらって、通常の一般予算とほぼ匹敵する拠出金の総額を得ていましたけれども、これをアラブの国等の拠出金で補ってはいますものの、とても補い切れない状況です。全体として非常に財政難です。事業計画を縮小するのみならず、ポストの削減、スタッフの首切り、ユネスコの宝はスタッフです。それに手を付けざるを得ないということで、残念ながら非常に厳しい状況になっている。
それから2番目は日本に関係いたしますが、日本は今までユネスコとの関係は非常にポジティブに来て、あまり日本で注目されていませんが、今年は日本がユネスコに加盟して、1951年ですから今から考えるとちょうど65年になります。
10年前は日本で大々的な行事が行われたのを覚えておりますけれども、いずれにせよ日本が非常に大きな柱になってユネスコを支援し、ユネスコと協力する国になっていたのが、先ほど来大臣も触れられました記憶遺産の関係で、日本との信頼関係が傷付きかけている。私は傷付いたというのは言い過ぎだと思っています。これを何とかしっかり是正しなければ、これは日本側においても、それからユネスコ側においても、あるいはその他の関係国においても努力をしなければいけないことで、これがまだ残念ながらめどがしっかり立っていないというのが2番目の不確定要素であります。私はこれを是非解決していってほしいと思っていますが、アメリカと違って、これは関係国が努力すればできることだと思っています。
3番目は、私の後任のボコバ事務局長が国連の事務総長に立候補すること。本人も意欲を持っていますが、ブルガリア政府の支援体制がまだ確定してないこともあって決まっておりません。しかしながら、うわさは先行しております。国連事務総長選挙はこの秋になりますけれども、そこがどうなるかということがもう1つの不確定要素で、いろいろなうわさが飛び交っていて、事務局の職員でなくてもユネスコの現地の各部の代表の間においても、残念ながらちょっと不確定で、この3つの不確定要素が先ほど来申し上げたポジティブな点は他の点でも申し上げませんけれども、新しい点もしっかり決まり、従来のもしっかり進めるようになっていますけれども、この3つの不確定要素があるということを申し上げて、さらに言えば日本として是非、特に2番目の点は日本もしっかり対応して、できるだけ早く解決するようにしていただきたいと思っております。
以上でございます。
【安西会長】  ありがとうございました。
それでは、ただいまの松浦特別顧問の御報告、先ほどの事務局の説明も含めまして、御意見、御質問があればお願いできればと思います。特に70周年ステートメントを踏まえました今後の取組の在り方について、是非御意見を頂ければと考えております。
どなたでも結構でございます。よろしくお願いいたします。
【福田国際戦略企画官】  失礼いたします。論点につきまして、事務局から一言説明させていただければと思います。
【安西会長】  お願いいたします。
【福田国際戦略企画官  失礼いたします。資料5の方をお開きいただきたいと思います。「ステートメントを踏まえた今後の取組の在り方について」という資料でございます。
このステートメントの中身につきましては、この資料4のところで配付させていただいているところでございます。先ほど申し上げたとおり「知的リーダー」としての役割、持続可能性、それから多様性という柱を打ち出したところでございます。また、馳文部科学大臣の一般政策演説の中でも、このユネスコが実施する事業が「人の心の中に平和のとりでを築く」とのユネスコの基本精神に基づき、ボコバ事務局長が強調する「分断ではなく融合を」もたらすため、加盟国の間の相互理解、それから連帯を一層強化するためのものでなければならない旨を強調したところでございます。
他方で、先ほど松浦前事務局長からあったとおりのような状況もある中で、このユネスコにおける加盟国間の相互理解と連帯を促進するため、どのような取組というものがこのステートメントの柱にも沿った形で求められるかというようなことについての論点というものをいくつか書かせていただいた次第でございます。
関連する取組の例といたしまして、1つには持続可能な開発のための教育の推進というものがございます。1つには、先ほど御説明させていただいたとおり、昨年の総会においてもユネスコ/日本ESD賞を授与したほか、一昨年にはユネスコ世界会議、これを日本で開催するなどの取組などを通じまして、国内外において取組が広がっているところでございます。
他方で、ESDの在り方についてさらに新たな考え方ですとか、新たな方向性というものについても検討していくべきではないかというような意見もあるというところでございます。
次にもう一枚お開きいただきたいと思います。
2ページ目、1つ目はサステイナビリティ・サイエンスの推進でございます。これは科学分野における取組として既に御承知のとおり、地球規模課題の解決に向けて、細分化した学問領域ごとに取り組むのではなく、自然科学と人文・社会科学の多様な学問分野の知を統合して取り組むことを促すアプローチというものでございまして、その基本的な考え方につきましては、既に国内委員会でも提言をおまとめいただいたところでございます。
このことにつきましてもユネスコにおける事業として取り込まれ、そして近日中には国際シンポジウムなどが開催される予定でございますが、その具体的な進むべき方向性について、さらに御議論いただくということができればというふうに思っております。
もう1つ、このグローバル・シチズンシップ教育の推進というものでございます。ESDですとか、あるいはサステイナビリティ・サイエンスといったような我が国が提案しているような概念だけでなく、他にも様々な提案というものがユネスコの中でなされており、その1つの例ということでございますけれども、グローバル・シチズンシップとは、広範なコミュニティー及び共通の人類に属するという感覚を指し、地域、国家、グローバルのそれぞれの層における政治的、経済的、社会的及び文化的な相互依存と相互連環、これを強調するものである。GCEDはそういった感覚を育む教育とされているところでございます。
この経緯といたしましては、藩基文国連事務総長が開始したグローバル・エデュケーション・ファースト・イニシアチブにおいて、その3つの優先分野の1つに掲げられ、ユネスコ事務局でも取組が強化されているというものでございます。
こういった経緯もあり、例えば韓国ですとかこういった国などがこのGCEDの推進に関しては積極的であるというふうに言われているところでございます。
この論点につきまして、先立って開かれました各小委員会でも御議論を頂いたところでございます。
次のページ、3ページ目をお開きいただきたいと思います。小委員会における意見として、各委員の方からあった意見について、そのいくつかを取りまとめさせていただいております。例えばこのESDの在り方につきまして、どうしても小学校、中学校、高等学校が中心であるけれども、大学にも広げていくことが重要である。その上でサステイナビリティ・サイエンスは、大学がESDに取り組む上でよいアプローチになるのではないかといった御意見。
次に、GCEDに関してでございますけれども、ポジティブな観点からは、例えば国際的に懸念されているところの不寛容、それの拡大防止にこういったGCEDという考え方は役立つ取組であると。したがってESDを推進する我が国としても、その連携の在り方について検討していくべきであるといったような御意見。
他方で、このGCEDにつきましては、教育に関わる国際場裡の動向、つまりほかにも様々な議論というのがユネスコですとか、あるいはほかにもOECDといった国際機関でもなされているというような動向、また国内における教育政策との整合性、あるいはこれまで懸命にESDに取り組んでこられた学校現場への影響、こういったものなども踏まえると慎重に対応すべきではないか。また、このESDというのは、本来多様な概念でございますけれども、その中にはGCEDが提唱するような考え方も含まれているというようにも考えられるのではないかといったような御意見も頂いたところでございます。
この他の論点として、例えば多様性というステートメントにある柱に関しまして、身近な多様性の問題として女子教育をはじめとするジェンダー、これを積極的に取り上げていくべきではないかといったような御意見。
また、世界津波の日、これは国連総会で定められたものでございますけれども、そういった取組を含め、津波に関する各国の意識を高める取組を我が国としても推進していくべきではないかといったような御意見などもございました。申し遅れましたが、この世界津波の日は、これは我が国の提唱で国連総会で決められたというものでございます。
もちろんここにある論点に捉われるものではございませんので、是非様々な観点から御議論を頂ければと思っております。
以上でございます。
【安西会長】  ありがとうございました。
それでは、御質問、御質問を頂ければと思います。
黒田委員、お願いいたします。
【黒田(一)委員】  ありがとうございます。会長ステートメントに関しましては、元々安西ステートメントにしていただければなと思っていたんですが、この委員会ステートメントと安西ステートメントの間をとって会長ステートメントになったというふうに理解しておりますが、本当に最終的にすばらしいものになったというふうに私は思っております。
特に持続可能な社会というところは当然なわけですけれども、多様性の尊重ということを入れていただいたこと、これは本当にユネスコの今後の方向性、それから日本の役割、貢献可能性ということを示す意味で非常によかったなというふうに考えています。昨今の国際情勢を見てみましても、元々のユネスコ憲章の前文にありますような政府の政治的、経済的取組に基づく永続する平和ではなく、精神的連帯の上に平和が築かねばならないという形になっておりますので、それが残念ながら現実になっているのが昨今の国際情勢なんだというふうに思います。
そういう意味で、ユネスコがある意味で原点に立ち戻って多様性の尊重ということを機関としての、国際社会に対する貢献として役割を持っているんだということをもう一度確認していただいた、そこに日本の貢献可能性も含めて確認していただいたということは本当によかったと思います。
ですので、これを是非会長ステートメントとして終わらせないで、継続的に国内委員会としてももう一度戻ってこられるようなバックボーンにしていくべきだと思います。その意味では、この3つの今出していただいた方向性といいますか、ESDとサステイナビリティ・サイエンス、それから可能性としてのグローバル・シチズンシップ・エデュケーションということは当然この3つの方向性というのがあるのかなとは思うんです。
前者2つについても、これまで日本でESDとそれからサステイナビリティ・サイエンスというのはユネスコに対して最も大きな貢献として日本がやってきたことですので重要な部分だと思うんですが、最後のグローバル・シチズンシップエデュケーションについても、これは元々、藩基文事務総長のグローバル・エデュケーション・ファースト・イニシアチブから来ていますので、韓国がやはり非常に推進役になっております。そこで、マスカットで行われました2015年以降の枠組みの準備会合のときに、日本政府と韓国政府がESDとグローバル・シチズンシップ・エデュケーションをめぐって対立・競争するのではなく、お互いに協力してこの2つのコンセプトを2030以降の枠組みの中に入れてほしいということをやったことは、すばらしかったと思うんです。日韓関係必ずしもよくなかった時期だったわけですけれども、この点については非常に戦略的に、日本と韓国が協力したことに非常に意味があったと思っています。
確かに、グローバル・シチズンシップ・エデュケーションのコンセプトがESDに含まれるんではないかとか、その反対の議論ももちろんあるのは承知しておりますけれども、一方でそこのコンセプトをきちんと整理していって、例えばこれから2015以降の枠組みについては、インディケーター作りなるものも国際的な焦点になってまいりますので、どうやってESDとグローバル・シチズンシップ・エデュケーションを、概念的に整理してインディケーターを作っていくのかというようなところについて、日本と韓国が協力しながら国際社会に発信していくというようなことも含めて考えていくことによって、この考え方を世界に対して提示していって、なおかつユネスコの本当にオリジナルな役割を果たせるような状況を作っていけるんではないかというふうに考える次第です。
この協力関係をどう作っていくか、協力どころか一緒に推進していくための枠組み作りというところに、日本は役割を果たしていけるんではないかと思います。
【安西会長】  ありがとうございました。今の黒田委員の御意見に対してでも結構でございます。
岡田委員、お願いいたします。
【岡田(元)委員】  民間ユネスコ代表として、今回の先ほど黒田委員が言われた新しいGCEDという言葉、民間ユネスコの中ではまだそんなに浸透している言葉ではないのが実情ということが、私の正直なところです。
ですから、是非ともこれを今からさっき言われたように、韓国と日本という今から未来のこともあるので、是非今から前向きでこれをどういうふうにしていったら世界に向けてということもあるんでしょうけれども、是非国内の人に向けても、私たち民間がやっているのはもちろん世界に対してもやっているんですが、足元からユネスコの精神をやっていこうということをやっているので、是非国内の人にも目を向けていただけるような普及活動の面からもいって、そういったところで、これも資料については小委員会の方でいくつか御意見を頂いていますが、できたら普及小委員会なんかでも議題に上げていただけたらいいなというのが正直言ってあります。
もう1つは、ここの会長さんのステートメントなんですが、この中にも1ページ目の後段の方にも民間ユネスコのことを書いていただいているのが、民間ユネスコの方からもうれしいことだなというのを午前中の話し合いの場でも意見が出ましたので、御報告いたします。
以上です。
【安西会長】  ありがとうございました。いわゆる会長ステートメントのことと、それからグローバル・シチズンシップ・エデュケーションとの関係といいましょうか、その2つが今出ております。
16時過ぎまで時間はとれると思います。西園寺委員、お願いいたします。
【西園寺委員】  恐れ入ります。会長ステートメントということではないんですけれども、先ほどの松浦特別顧問のお話の中で、記憶遺産のお話が出てまいりました。
これはやはり2つの大きな問題があると思いまして、1つは記憶遺産の透明性などの制度の問題です。それからもう1つは、個別のイシューだと思います。
馳文部科学大臣がボコバさんと協議をされて、日本側の意見を述べられたということですけれども、これはやはりかなり具体的に作戦を立ててアプローチをしていかないと、ずるずる行くような気がいたします。
また2年後には慰安婦の案件を中国と韓国が共同でというような話も出ております。南京の問題につきましては、私の記憶では、松浦先生が新聞に書かれたのは、この案件自体を取り下げるというのは恐らく難しいだろうと。しかし、内容については少し意見を言って、不適切な部分は変えてもらうとか、そういう可能性はまだ残っているのではないかというようなことを書かれていたと思います。これから国内委員会として、具体的な方向性というものをどう考えていったらいいのでしょうか。事務方は今交渉を進められているのかもしれませんけれども、その辺の現状と今後の見通しについてご説明いただけますか。
【安西会長】  ありがとうございました。松浦特別顧問、お願いいたします。
【松浦特別顧問】  実は私が申し上げるのは非常に気が引けますが、私の感じをちょっと申し上げます。ですから、今後のことを考えますと、まさに言われたように「南京事件」で登録された中国側が出した11の文献の詳細が少しずつ分かりかけてきているわけで、本来はこんなのは最初に全部公表されてしかるべきであったと、もちろん中にはもう既にいろいろな形で公表されているものもあったわけですけれども、いずれにせよ、中国が申請した段階でそれがしっかり公表されて、さらに言えば、仮に公表されても中国語ですから中国語ができなかったら分からなかったわけですけれども、それに対するコメント、あるいはそれに対する日本側に残っている反対の文献があれば、そういうものをしっかり出していくというのを、そういういわばフォローアップの問題が大事で、それからより大きいのは制度改革、今言われた今後の慰安婦をにらんでの制度改革。
「南京事件」の一番の問題は、今日ちょうど外務省の責任者もいらっしゃいますけれども、日中間で対話が持てなかったことです。本来こういう問題は日中間でしっかり話し合いをすべきなのを全てユネスコに持ち込まれたと。しかもユネスコの制度も、これは私も今になって責任を感じていますが、もっとしっかりした制度にしておくべきだったと思います。それがなってなかったということで、したがって日本の方では、逆に今日国内委員会の関係者もおられますけれども、国内委員会に来る日本の一般の国民の方からの投書は圧倒的にユネスコけしからんという投書が来て、恐らくユネスコを弁護するような投書は一般に出さないから、そう思っていても書いてないので、むしろユネスコけしからんと、分担金も止めるべしというような意見が圧倒的に多く来ているわけですよね。
しかし実際は、一番の根源は何といっても中国がそういう形で推進したというところに問題があるので、今回の投書でも本来は中国けしからんということになるべき、必ずしもそうなってないのは、特に私のような立場の者は感じるわけです。
今後のこと、今の慰安婦の問題でも同じ問題があるので、本来であれば日韓間で解決するというのが柱ですけれども、新聞は御覧のように日韓間での慰安婦問題の全体に関してはいい合意ができたと思いますけれども、あくまでも総論の段階です。各論になってくると、この慰安婦の登録問題、とりあえず偶像の問題が一番もめていますけれども、慰安婦の登録問題に関しても意見が責任者同士で分かれているわけです。
ですから、残念ながら今までとても日韓間で慰安婦関係の文献をどうするかということは、政府同士で話がつくとは残念ながら思えません。その努力をすべきと私は思いますけれども、そうすると結局それがユネスコに持ち込まれることになります。そうするとまた一般の国民から見ると、またユネスコけしからんということになるわけですけれども、要は今度の2年後の登録をにらんで、それに間に合う形で制度改革ができるかと思います。
それは先ほど大臣はユネスコの事務局長のイニシアチブを期待すると言われて、これも私は正論だと思います。しかしながら、現状で言えば、結局メンバー国の当然韓国、中国とも入ってまいりますから、そういうところと一体どこまで話がつくのかという、これは制度改革がどこまで話がつくのか。ですから具体的には、今度の4月にユネスコの執行委員会があります。執行委員会で諮問委員会の規約は執行委員会の規約にそのまま変えなくても反映できるようなものは、どこまで中国や韓国も含めて出せるかと、なかなか難しいところです。
それからもう一つは、今度諮問委員会レベルで今あるガイドラインが不十分ですから、そのガイドラインをどこまで、先ほど来大臣もおっしゃった透明性を持たせる形で、あるいはいろいろな関係国の意見を反映する形で、文献を出してくるだけではなくて、それに関係する国の意見を反映する形のガイドラインがどこまで、この次の審査に間に合うような形でできるか。5月の末が今度新しい2年後の登録をにらんでの歴史的な文献の提案期限が、通常は3月ですが今5月に延びていますけれども、それに間に合うような形でできるかどうか、さらにはどこまでできるかと、これは非常に難しい問題ですが、是非私はやってほしいと思っています。
私が何か全体像を話してしまいましたけれども、むしろ外務省あるいは文科省から説明していただいた方が、より経緯がわかるかと思います。
【安西会長】  ありがとうございました。今の件は、事務局は何かありますか。
【野田協力官】  松浦特別顧問からお話がありました。政府としてやはり記憶遺産制度自体は、先ほど大臣からもありましたように透明性の向上のような課題、あるいは関係国との対話の仕組みなど、今は申請書自体も公開されていないし、そのような透明性のあるプロセスになっていないんじゃないかという問題意識があります。その点については、ボコバ事務局長も総会のときにも大臣に対して課題があるという点は認めていますので、どのような形でそれを具体的に改善していくかということを、まさに先ほど松浦顧問がおっしゃったような、関係国の合意の下で進めていくということが大事だろうなということで、今進めているところでございます。
【安西会長】  よろしいでしょうか。 それでは、岡田委員、お願いいたします。
【岡田(保)委員】  ありがとうございます。私、文化領域の方の小委員会委員という立場もございますので、ただいまの松浦先生からの記憶遺産の問題提起に関しては非常に心を動かされるものがございます。
周りから届く声はユネスコに対して批判的で、分担金の問題が取り沙汰されていますけれども、それは恐らく決して多数ではないんだろうと、多くの方はユネスコとともに歩もうと、日本が分担金を直ちにどうこうしようなんていうことは望んでないんではないかというふうに思いたいと思います。
そのこととは別に、松浦特別顧問が何らかの解決方法はあるはずだということで、私も何かお手伝いできることがあれば議論に参加したいと思います。
このことは1つに、記憶遺産のことだけではなくて、世界遺産の方でも昨年、明治日本の産業遺産の登録の際に、やはり韓国の間であつれきが生じたことは皆さん御存じだと思います。それがその後どのように両方の理解が進んだのか、ちょっと文科省なり外務省の方からお話が伺えればと思います。
実はそのことは明治産業遺産だけではなくて、今後さらに日本が推薦しようとしているほかの案件についても関わりのある問題なので、記憶遺産の問題と併せて世界遺産の観点からも、日・中・韓の東アジアの緊張をできるだけ緩和する方向の対話が進まないかというのを期待するわけなんですが、ちょっとお話伺えればと思います。お願いいたします。
【安西会長】  ありがとうございました。
【松浦特別顧問】  私が産業遺産の方を答えましょう。
明治の産業遺産は私も最初から絡んでいました。産業遺産は実は文化庁ではなくて、内閣官房で所管しています。他の世界文化遺産候補は御承知のように文化庁が所管している文化審議会で学者の方が意見を言って、それを踏まえて、文化庁や日本政府全体で決めますが、明治の産業遺産の方は内閣官房で、私は実はその最初からそこの有識者会議のメンバーで、その資格でお答えします。
ですから、私の理解では残念ながらその後進んでいません。今フォローアップで問題になっているのは、インフォメーションセンターを作ることを日本が約束しています。 そのインフォメーションセンターを2016年の末までかあるいは来年末までに作る約束をしている。
【新美外務省国際文化交流審議官】  2017年。
【松浦特別顧問】  2017年末までにインフォメーションセンターを作る。 それは複数です。インフォメーションセンターをどこに作るのか。ただ構成資産が23ありますから、九州だけでもかなりあるわけで、どこに作るのか、これも問題です。
もう1つより大きな問題は、その中身をどうするのかと。その中身はもちろん韓国側は、佐藤地大使が日本政府を代表して世界遺産委員会で表明した基本的な考え方を踏まえて、それをさらに掘り下げて書いてくれることを韓国側は期待していますけれども、その中身は私の承知している限り、むしろそこだけではなくて、むしろインフォメーションセンターですから、今の明治の産業遺産8県11都市にまたがる広大なもので、その全体を紹介するセンターです。ですから、何も韓国との問題(日本側は戦時徴用と言っており韓国は強制労働と言っています。)だけに焦点を当てるわけではないのですが、そこも入ってくるわけです。その全体をどうするかということが、中身をどうするかということが今いろいろ内閣官房で検討していますけれども、まだ固まっていません。
ですから、私が知っている限りでは、日韓間でそれについてその後話し合いが行われたということはないんではないかと思います。
ただ今、岡田委員が言われたように、関係するのは、これは今度文化庁の問題になりますけれども、次の世界遺産候補をどうするかということ。来年に関しては宗像・沖ノ島を出すということで、準備が進んでいますが、その次をどうするか議論するときに、従来から残っている有力な候補は2つです。
1つは佐渡金山、もう1つは百舌鳥と古市の古墳群です。佐渡金山は同じ問題があります。ちょっと言葉は当時の言葉ですから韓国人というよりも、広い意味で朝鮮人という言葉を使わざるを得ないので申し訳ないんですが、かなりの数の朝鮮人を比率で言えば使っているわけです。ですからその問題をどう考えるか。今の2017年末というタイミングが非常に微妙になってくるものですから、ですからこれは私が一民間人、今私は民間人ですから、民間人として申し上げれば、早く明治の産業遺産のインフォメーションセンターをどこに作るか、それからその内容をどうするかと決めて、韓国と手を握るということを早くやってほしいと。そうすると、今申し上げた学問的に見て次の世界遺産の候補が、古墳群がいいのか、佐渡金山がいいのかというのがしっかり学問的に議論してもらえればいいことで、決めていただければ、これは文化審議会の下の世界遺産作業部会で決めてもらう。
ところが、佐渡金山の方が今の問題が掛かってきますので、これでなかなかもう動かないということになるので、私は両方に関係していることもあって両方を見ていますけれども、佐渡金山への影響を心配しています。
以上です。
【安西会長】  ありがとうございました。私も個人的に見ているところでございますけれども、世界遺産あるいは記憶遺産、また、ユネスコ世界ジオパークの事業、他にもいろいろな事業をユネスコがやっておられることに対して、日本政府はもちろんですけれども、この国内委員会がどのような関係にあるのか、もちろん意見は申し上げられると思うのですけれども、それがどのようになっていくのかということが、一つ一つの事業がいろいろな経路をとっておりますので、なかなか分かりにくいところが出てきているように思います。
そういうことについては一度事務局の方で整理をしていただきたいということは、事務局には申し上げたところでございます。また、他国との関係につきましても、先般私の出席いたしました運営小委員会ではいろいろ議論がございました。また、皆様もいろいろなことをお考えになるところはおありになるかと思います。そういうことを国内委員会として、ここで意見をまとめて、それではそれをどうするのかということについて、昔よりも多少はっきりしなくなってきているというのでしょうか、そういう気もしないでもないところがございますので、そのあたりは事務局にはいろいろまたお聞かせいただければありがたいということを申し上げたところでございます。
長委員、お願いいたします。
【長委員】  長です。全く別の質問でよろしゅうございましょうか。
【安西会長】  お願いいたします。
【長委員】  同じく松浦特別顧問にですが、コソボの加盟が認められなかったという、その点について御質問させていただきます。
日本政府のお立場はどうだったのかということと、その理由と、それから大勢で見て圧倒的賛成だったのか、反対だったのか、その辺のところをもし教えていただければと思います。不勉強でごめんなさい。よろしくお願いします。
【松浦特別顧問】  これはむしろ外務省の代表にお話をしてもらった方がいいと思いますが、外務省の方も文科省の方もしゃべりにくいと思ったので私がまとめて申し上げました。今の具体的な質問は外務省の方に答えてもらった方がいいと思います。
しかし、私からちょっと申し上げたいと思うのは、先ほど私が申し上げたことが誤解を与えてはいけないのでもう一回繰り返しますが、日本はコソボを早期に承認した国の1つです。ですからユネスコの中の扱いは、コソボはもちろん国連にも入っていませんけれども、伝統的にセルビア共和国の一部になっているわけです。御承知のようにセルビア・モンテネグロの場合は、モンテネグロが国民投票して、それからセルビアの方も理解して、モンテネグロは独立したわけです。しかしながら、コソボに関して言えば、セルビア正教の聖地なんです。それがまた世界遺産にもなっているものですから、セルビア共和国は最後まで反対するし、そしてもちろんその後ろにはロシアその他の国がいます。
さっきのパレスチナと逆ですけれども、アメリカ等々は逆に推進派に回りました。ですから、私が先ほどちょっと申し上げたかったことは、どうしてもユネスコにニューヨークで解決できない問題、パレスチナの場合もいわゆるP5が拒否権を持っていますから、パレスチナはアメリカが拒否するのは明らかですから、ニューヨークでは取り上げず、ユネスコの場合は執行委員国の58ヵ国の拒否権はありませんから、ですからユネスコに持ち込んで、その結果として、先ほど来何度も申し上げている一番ユネスコの大きな危機が起こされているわけです。もちろんコソボが認められたからといってその裏返しが起こったと私は思いませんけれども、私が申し上げているのはユネスコの在り方からいっても、ニューヨークで解決しない政治問題をユネスコに持ち込んで、そして政治的な混乱を起こすというのは、私はユネスコの在り方からいって望ましくないと思います。先ほど来申し上げていることです。これはバックグラウンドで、今の御質問に関してはむしろ外務省代表の方からお答えいただいた方がいいと思います。
【安西会長】外務省からお願いいたします。
【新美外務省国際文化交流審議官】  外務省でございます。今松浦特別顧問の方から御説明があったとおりなんですけれども、若干事実関係も含めて補足させていただきますと、このコソボの加盟申請問題についてはユネスコの執行委員会にまず掛けられまして、その後総会に上がりました。執行委員会では僅差でコソボの加盟を認めると可決されましたが、総会では僅差で必要な票数に届かず、コソボの加盟は今回は認められなかったというのが、まず事実関係でございます。
ちなみに日本政府の対応は、一貫して今回は棄権、賛成も反対もせずに棄権いたしました。その理由及び背景については松浦顧問から御説明があったところと、おおむねそれを踏まえておりますけれども、一言で言うと、このコソボの加盟問題についてはまさに僅差での投票になったと。通常ユネスコで投票になるということはなかなか少ないんですけれども、そういう意味で、まだコソボ及びセルビアはじめ関係各国の話し合い、ユネスコに加盟することについての意見が大きく割れているという状況で、それを認めるのは過早ではないかというような考え方もありまして、棄権をしたということでございます。
【安西会長】  よろしいでしょうか。
そろそろ次に行かせていただきますが、他にはいかがでしょうか。
記憶遺産のみならず世界遺産のことにいたしましても、今のユネスコ加盟のことにいたしましても、これは私の記憶では、私自身はほとんどこの総会あるいは委員会の場で聞いたことがありません。そういう報告もほとんどないように思います。
ただ、やはりユネスコ国内委員会といたしましては、今の御質問等々は大変大事なことだと思います。多少個人的になりますが、ユネスコ国内委員会はユネスコの活動全体について御報告も頂き、また意見もさせていただくということが、本来はその在り方なのではないかと思いますけれども、またの機会にと、そういうこともまたお考えいただければと思います。
いずれにいたしましても大変貴重な御意見を頂きまして、ありがとうございました。多岐にわたる小委員会でいろいろな御意見を頂いておりまして、総会はそういった御意見をいろいろ御報告していただくだけで、なかなか時間が過ぎてしまうということでやってきたように思いますが、今日はそういう意味では大きな御質問も頂いておりまして、ありがたいことだと思います。
それでは次に行かせていただきます。

今日頂きました御意見を踏まえまして、もちろんユネスコの活動、特にユネスコスクールあるいはESD等々、この日本のユネスコ国内委員会が推進してまいりましたことは多々ございますので、もちろんそれを中心にして議論させていただければと思っております。
それでは次に、第38回ユネスコ総会における重要議題について、事務局から報告をお願いします。
【福田国際戦略企画官】  失礼いたします。それでは、先ほど総会の報告で、その他決められた主な事項が2つあるというふうに申し上げましたが、その点についてやや詳細を御説明させていただきたいと思います。資料6及び資料7の方をお開きいただきたいと思います。
資料6、これは横のポンチ絵でございます。「持続可能な開発のための2030アジェンダ」でございます。
このアジェンダにつきましては、これはユネスコのみのお取組ということではございませんで、国連の方で全体としての様々な事項、それは教育であるだとか、あるいは保健の分野であるだとか、あるいは平和の構築であるだとか、そういった事々について持続可能な開発目標というのを定めたというものでございます。
これは過去2000年から2015年までの同じ開発目標というのが「ミレニアム開発目標」と呼ばれておりましたけれども、これを今度2015年から2030年に関しては「持続可能な開発のためのアジェンダ」というようにされたというものでございます。つまり先進国であれ、あるいは開発途上国であれ、持続可能性に配慮しながら開発を進めていくべきであるということが首脳レベルで共有されたということでございます。
他方で、それは先進国も開発途上国と同様に持続可能な開発に配慮した形での目標というものを設定して、そしてその実現に向けて取り組んでいくということが決められたということでもあるということでございます。
その教育分野における詳細につきましては、2枚目の方をお開きいただきたいと思います。この中で「教育2030行動枠組みについて」というようにされております。先ほど申し上げたとおり、教育分野の具体的な実施に関しましてはユネスコがこれを主導していくということにされております。そして、やや下の方に「主な内容」としてございますけれども、この中で例えばこの下線を引いているような、「全ての人々にとって包括的で公平な質の高い教育と生涯学習の促進」、あるいは「アクセス」、「インクルージョン」などといった目標が掲げられているというものでございます。
また、下の方に先ほど若干御議論いただきましたが、ESDですとか、あるいはGCED、こういったことについても記載があるというものでございます。
なお、次の3ページ目につきましては、これは参考でございますが、2015年で終了したミレニアム開発目標の達成状況について、併せて資料を添付しているものでございます。説明は割愛させていただきます。
次に、資料7の方を御覧いただきたいと思います。資料7「世界ジオパークのユネスコ正式事業化について」でございます。
冒頭御説明申し上げたとおり、ジオパークというのは地質学的な遺産、これを活用していくというものでございます。既にこの取組というのは、この下のところに書いてありますが、世界ジオパークネットワークというところが審査、認定を行っており、そして日本からも8つの地域が世界ジオパークとして認定されてきたところでございます。
今回これがユネスコにおいて正式事業化されたわけでございますけれども、2ポツにあるとおり、これらのジオパークについてはこの正式事業化と同時に、ユネスコにおける世界ジオパークとしても認定されたというものでございます。
実際のこの審査につきましては、正式事業化後も同様にこの世界ジオパークネットワークですとか、こういったところの連携の下、ユネスコの世界ジオパーク・カウンシルが行い、そして、ユネスコの執行委員会が正式な決定を行っていくということでございまして、これまでの枠組みを尊重した形で各国の地質に関する専門家の方々の協力を頂きながら進めていくということになっております。
従いまして、我が国におきましてもこういった経緯というものに鑑みまして、日本の中でも日本ジオパーク委員会という地質学の専門の先生方により構成される組織がございます。委員長は以前京都大学の総長を務められた尾池先生がされておられますけれども、日本ジオパーク委員会を日本ユネスコ国内委員会といたしまして、我が国におけるジオパーク・ナショナル・コミッティーとして認証するとともに、ユネスコの正式事業化されたこの事業における登録審査業務を行う権限ある機関として認証するということで、手続を進めているところでございます。
なお、2枚目の方をお開きいただきたいと思います。横表で少し字が小さくて大変恐縮でございます。先ほど安西会長からもお話しいただいたところでございますけれども、ユネスコにおける登録制度といたしまして、このジオパーク、それから先ほど御議論になった記憶遺産、また世界遺産、そのほかにも無形文化遺産、エコパーク、そしてクリエイティブ・シティズ・ネットワーク、こういった登録制度がございます。それぞれ条約に基づくもの、そうでないもの、また専門家がそれを決定する権限を有するというもの、あるいはそうではなくて委員国というものが設定されて、その国が基本的に議論していくというようなもの、また申請の手続ですとか、あるいは1回に何件に提出できるのかだとか、そういったことについてもそれぞれの違いというものがございます。もちろんこれは、それぞれこれまでの経緯などがあったりですとか、あるいは文化、科学それぞれでのまた性質の違いといったようなものもございますけれども、今後登録事業というものが増えてきている、あるいは非常に注目が集まっているということも踏まえますと、こういった形で俯瞰的にまた検討していくということが非常に重要であるというようなことでございますので、また会長の御指示を頂きながら、事務局としても検討を進めてまいりたいというように思っております。
最後に、そのほかユネスコ総会における様々な決定事項ということでございますけれども、資料が後ろの方で恐縮でございますが、参考5の冊子になっているものを少しだけ御覧いただきたいと思います。
この参考5で開いていただきまして、目次の後、第1部の概要報告のその後の1ページのところがございます。「第38回ユネスコ総会の概要報告」というものがございます。本日事務局の方から必ずしも全容を説明することができませんでしたけれども、例えば先ほど御議論いただきましたコソボの扱いにつきましては、1ページの下の方で「本会議では、コソボのユネスコ加盟を承認する決議案が、投票の結果否決された」などなど、様々な事項につきまして詳細をここに載せているところでございます。
また、会長から頂いた御指示も踏まえまして、事務局としてもどのような形で今後国内委員会で御議論いただくことがよいか、引き続き検討してまいりたいと思っております。
以上でございます。
【安西会長】  ありがとうございました。ただいまの事務局からの報告について何か御質問、御意見ありますでしょうか。
よろしゅうございますか。気が付かれたら後でも結構でございますので、次に進めさせていただきます。
引き続き、アンチドーピングに関する取組について、事務局から報告をお願いいたします。
【今泉スポーツ庁国際課長】  失礼いたします。スポーツ庁国際課長の今泉でございます。どうぞよろしくお願いいたします。座って失礼いたします。
資料8を御覧ください。これまでユネスコについてスポーツに関する取組に関しまして、この日本ユネスコ国内委員会の皆様方に御報告する機会がなかなかなかったものですので、今回安西会長の御厚意によりまして、このように御説明させていただく機会を設けていただきました。この場をおかりして安西会長どうもありがとうございます。
昨年10月29日、30日にユネスコにおきまして、第5回スポーツにおけるドーピングの防止に関する国際規約締約国会議というものがございました。これには昨年10月に発足いたしましたスポーツ庁の初代長官であります鈴木大地長官に出席していただきまして、この締約国会議に参加いただいたところでございます。
この締約国会議の基盤となる「スポーツにおけるドーピングの防止に関する国際規約」とは何ぞやというところでございますが、平成17年10月第33回ユネスコ総会で採択されたものでございます。
概要については3枚目にお示しさせていただいているところでございます。その当時、ドーピング違反が世界的に注目されたこともありまして、その前に、1999年に世界ドーピング防止機構、略称がWADAというものでございますが、これが設立されております。そして、そのWADAにおいて2003年にWADA規程というものを設けまして、世界的なドーピング防止の規程を設けたところでございます。
これを実際各国において国内体制として整備していくために、このユネスコ総会で採択された、本日御紹介させていただきますこの国際規約がございます。そこの中では、競技者の健康、フェアプレーの原則、不正行為の撲滅など、そういうことが記載されているところでございますが、具体的には規約の中では各国の国内、または国際的な規模でのアンチドーピングに関する措置を取ること、またドーピングコントロールを行えるよう資金を供与すること、ただいま紹介いたしましたWADAの重要な任務を支援すること、またそのWADAに対して資金供与を行う原則を支援すること、さらに国内・国際的なドーピング防止に関する教育、研修の計画を支援すること、またはそれを実施すること。さらにドーピング防止に関する研究を奨励し促進すること、このようなことが規約に書かれているところでございます。
我が国におきましては、このユネスコ総会で本規約が採択された翌年に国際規約を締約しているところでございます。そして、そのさらに翌年2007年に国内発効いたしまして、さらにその翌年2008年に文部科学大臣のガイドラインとして、アンチドーピングに関する国内ガイドラインを作成しているところでございます。
この国際規約ができてから昨年で10年になるわけでございますが、締約国数が183か国というふうな形で、かなりの国においてこの締約がされているところでございます。
この締約国会議でございますが、2年に1度ユネスコ本部で開催されるものでございます。昨年10月に開催されましたので本年の開催はございませんけれども、また翌年の開催がございます。ここの締約国会議においては、具体的に2年ごとに行います議長・副議長の決定、あとドーピング防止基金がございますが、その運用方法の決定、さらにドーピング防止活動計画の策定などを行っているところでございます。
このユネスコの活動とWADAの活動、そして国内体制との関係については、資料8の2枚目に図でお示しさせていただいているところでございます。ただいま御紹介したこのユネスコの国際規約がございます。それに対してWADAは支援・協力をお互いにし合うという形でございます。このWADAにおいて先ほど申した防止規程が策定されておりまして、それに基づいて、各国においてはドーピング規程というものを設けて対応しているところでございます。
我が国におきましては、文部科学省におきまして国際的、国内的なドーピング防止活動の推進を行っているところでございます。国内において言えば、具体的にアンチドーピングの活動を行っている、ドーピング検査を行っているのはいわゆるJADAと言われる日本アンチ・ドーピング機構でございます。ここでドーピング検査の中で陽性が判明した場合、隣にあります日本スポーツ振興センターが所管している弁護士から成る規律パネルにおいて、弁護士等の第三者の意見も聞きながら、そのドーピングの違反行為の是非について決定することとなっております。
また、日本スポーツ振興センターの中には、役割としてはこのアンチドーピングに関するインテリジェンス、単に検査だけでは分からない巧妙化されたドーピング違反に対して、関係機関等の情報を収集しながら対処する、そういう機能もJSCの役割に入っているところでございます。
これら3者の役割に対しまして、各国内競技大会は所属選手に対する教育・啓発活動を実施すると、そういう構造になっているところでございます。
昨年10月に御存じのとおりスポーツ庁が発足しております。これからユネスコのスポーツ活動についてスポーツ庁として更に積極的に関与してまいりたいと思います。
具体的にはMINEPSと言われるスポーツ担当大臣の国際会議がユネスコにございますし、またその下に政府間委員会としてCIGEPSというものもございます。そういうものに我が国としても積極的に関与してまいりたいと思います。その際には皆様からの御指導を賜りたいと思いますので、どうぞこれからもよろしくお願い申し上げます。
以上でございます。
(川井委員退席)
【安西会長】  ありがとうございました。何か御質問、御意見があればお願いいたします。
【松浦特別顧問】  今のお話伺って、私非常にうれしく思いました。というのは、まさにこの規約は私が力を入れて作ったもので、ただ、言い出しっぺは当時のIOCのロゲ委員長だったんですが、IOCも御承知のように国際的には民間団体なもので、こういう契約ができないので、是非ユネスコにというので、事務局の中でも反対があったんですけれども、押し切って作成した経緯が今も183か国で非常にうれしく思います。
最後にお話になられたユネスコがスポーツ大臣会議も開いているんですけれども、いつも日本からは審議官レベルだったんですが、これからスポーツ庁長官がお出になって、しっかり日本のプレゼンスを示されるというのは非常にうれしく思います。
以上が第1点。
第2点はちょっと細かいことで申し訳ないんですけれども、2ページ目にある具体的な点で、私は実は帰国後いろいろなところに関係しているんですけれども、実は囲碁に非常に関係している。いわゆる囲碁がチェス、ブリッジと並んで国際的には、碁というのは国際的にありますけれども、日本語では頭脳スポーツ、英語ではマインドスポーツということになって、全部の国際大会じゃなくてオリンピック絡みの大会だけではあるんですが、やはりドーピングのテストをやるというので、なかなかスポーツ選手は当然受け入れても、囲碁の選手はなかなか受けられない。日本は碁になると文化庁の所管になるということもあって出だしでなかなか難しいんですけれども、是非この各種競技団体というのが1つ挙がっています。この中にいわゆる伝統的な肉体スポーツだけではなくて、そういうマインドスポーツもこの中にしっかり取り組んでやっていくと。
中国、それから韓国では、囲碁は対関係を見ているところが見ているんですが、日本は文化庁で、これはそういう側面が非常にあるからいいんですけれども、是非マインドスポーツもその対象になっているということを是非、もっと国内で周知徹底していただければありがたいと思います。
【安西会長】  ありがとうございました。今の件について事務局からお願いできますか。
【今泉スポーツ庁国際課長】  1つ目の点につきましては、ありがとうございます。おっしゃったとおりでございまして、今このような形で国際的にも取組が進んでいるところでございます。我が国としてもこの取組がさらに推進するように貢献してまいりたいと思います。特に教育・普及活動については、我が国が他の国に先立って取組を進めているところでございますので、この国際的な教育・普及活動にさらに努めてまいりたいと思います。
2つ目の囲碁についてでございますが、おっしゃるとおりマインドスポーツとして位置付けられている国際競技大会の場面もございます。このアンチ・ドーピングの体制に入るかどうかにつきましては、囲碁の協会がどう考えるのか、いわゆるそのこともありますので、御指摘を踏まえまして囲碁の協会と打ち合わせさせていただいて、彼らがJADA等のアンチ・ドーピングの管轄に入りたいということであれば、そのような斡旋等のアレンジをさせていただきたいと思います。
【安西会長】  他にはいかがでしょうか。先ほどの2030アジェンダ、それからジオパークの事業の御意見でも結構でございます。
よろしいでしょうか。 それでは、アンチドーピングまでのところはここまでにさせていただきます。どうもありがとうございました。
(今泉スポーツ庁国際課長退席)
【安西会長】  それでは、ユースの世代、若い世代のESDへの取組につきまして、西園寺委員から御報告を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。
【西園寺委員】  ありがとうございます。
日本ユネスコパートナーシップ事業というものがございまして、その委託を受けまして、文部科学省と日本ユネスコ国内委員会と私どもの財団が主催という形で、ESD日本ユース・コンファレンスというものを開催いたしました。
その実は背景をちょっと御説明させていただきたいと思うんですが、ちょうど2年前のユネスコの国内委員会の総会のときに、平成26年3月31日付けでございますけれども、「多様化の時代におけるユネスコ活動の活性化についての提言」というのがこの国内委員会から出されたわけです。この中には2つの大きな柱がございまして、1つが若者及び企業の参加によるユネスコ活動の一層の促進ということです。それから2つ目が、学校教育、社会教育等を通じたいわゆるESD、持続可能な開発のための教育の一層の促進と、この2つの大きな柱を基にこの提言書というものが作られております。
その1つ目の若者の参画ということに関しまして、具体的に言われている今後取るべき方向ということで、一方では日本ユネスコ協会あるいはACCU、地域のユネスコ協会、大学のユネスコクラブといった団体が組織的にユネスコ活動に取り組んでいくことが、引き続き大変重要であるということです。
一方で、これらの組織によるユネスコ活動の重要性を勘案しつつも、組織に加盟しなくてもユネスコ活動に若者や企業等が参加できる機会を拡大していく必要があるということで、その非組織化された形ですけれども、ユネスコ活動に積極的に参加する意欲のある若者が中心になって、自主的、自立的に議論を行う場、いわゆるプラットフォームを設けて具体的な方策を検討するとともに、可能なものから実施していくと、こういう提言が出されたわけであります。
今回のESD日本ユース・コンファレンスに関しましては、実はこの位置付けの中での1つの取組というふうに考えていただいていいと思います。きっかけになりましたのは2014年11月、御存じのとおり愛知県名古屋市でESDに関するユネスコ世界会議が開催をされました。そしてその関連事業としまして、岡山市において世界の若者たちを集めたユース・コンファレンスが行われました。これは毎回申し上げておりますけれども、50人の枠に対して5,000人の世界の若者たちが応募してくれました。その約半年前に第1回目のESD日本ユース・コンファレンスを、日本人対象に開催をしまして、ここにありますように「世界会議に向けたESDの普及・促進」ということを話し合っていただきました。また、その場において世界会議の代表選出ということで、日本から2名、その1名は今日も参加されている秋永委員を選出したということです。ですから、代表選出という目的も含めまして、この第1回目のESD日本ユース・コンファレンスいうものを開催したわけであります。
世界会議を踏まえまして、是非2回目のESD日本ユース・コンファレンスを開催しようということで、文科省の日本/ユネスコパートナーシップ事業の委託を受けまして、2015年10月にこれを開催いたしました。その事前にもオンラインディスカッションという形で話し合いをしていただいたわけであります。更に、その2回目のユース・コンファレンスの数か月後、2016年1月にフォローアップ会議を行い、先程出てまいりました、いかにプラットフォームを作っていくかということを中心とした議論がなされたわけであります。
日本国内の2回のESDユース・コンファレンスの開催プラス、フォローアップ会合を経た成果といたしまして、1つは若者主体の共同プロジェクトが始動したということ。それから、自主的にワークショップなどを行える、つまりリーダーシップを持った若者たちが出てきたということ。それから3番目としましては、フェースブックやLINE、ウエブサイトなどのオンライン・プラットフォームというものが形成をされたということ。それから4番目は、彼ら同志が交流する機会、これは地域ごとに集まったり、同窓会的なものが開催をされたりと、直接会ったり、直接話し合う機会が増えてきたということです。
今後のプラットフォームのビジョンといたしましては、多様なユースがつながって同志を見つけられる場、それから、ユネスコ活動、ESD活動を通じてお互いに意識を共有し、つながりを感じられる、いわば心のよりどころになる場。ESD実践者との勉強会やワークショップ開催など、生きたESDを学べる学びの場になるということだと思います。それから大事なことは先ほど申しましたようにACCUや日ユ協やESD-Jや大学ユネスコクラブなど、ESDを推進しているほかの団体とのコラボレーションを進めていくということ。更には他のステークホルダースである産官学民などの連携を推進して、できれば政策提言みたいなものを進めていくということ、こういうような今後のビジョンというものを彼らとしては打ち出したわけであります。
参考までに、ちょっと次のページを御覧頂きたいんですけれども、その若者たちによっていろいろなプロジェクトが、プラットフォームを作るためのプロジェクトというものが提案をされました。9つあるわけですけれども、これは細かくは御説明しませんけれども、例えば1番目のESDつながりマップや、その次のページ、顔写真が出ているのがございますね。東日本編と西日本編、つまりこれは参加した人たちが一体どこに、どういうふうに存在している、これは2回目の会議の参加者だけですけれども、これをどんどん、どんどん膨らませていって、日本国内でどれだけの多くの若者たちが実際に活動しているかというのが見える化をしていこうじゃないかということです。そしてネットワークを作っていこうじゃないかということです。
その次のページにあるのが、いわゆるシンクタンクみたいなものを作ろうじゃないかという提案です。シンクタンクって何かと言えば、いろいろな活動している人たちのアンケートをとって、情報を収集して、一体活動のどこに問題点があるのか、どういう課題があるのかということを分析していこうじゃないかと。その次のステップで、その問題課題を解決するために何が必要なのか、どういうステークホルダースと結び付いていけばいいのか、そしてできればその後に政策提言に結び付けていこうじゃないかというのが、彼らの考えた提案であります。
それに対して、国内委員会はじめ我々としてどういうサポートができるのかということを考えますと、やはりこれはあくまでも彼らの自主性というものは尊重しつつ、常に彼らの動きという状況を把握しながら、必要なときに必要なサポートがしてあげられるような、物心両面、物の面はかなり大変かもしれませんけれども、物心両面のサポートをしていくということ、あるいはこのユース・コンファレンスのような定期的に集まれる場、学びの場というものを提供していくということ。それから、他のステークホルダーである産官学民との関係・連携を促進していく。例えば企業との照会をしてあげて、彼らのプロジェクトというものがより発展していくような手助けをしていくと。あるいは、先ほど申しましたように、世界では本当に多くの若者たちがESDや、ユネスコ活動に興味を持って活動している。そういう人たちとの橋渡しをしていくということだと思います。
そういう意味で、側面的はありますけれども、こういうサポートを継続していくことによって、ユースの活動というものが拡充していくんじゃないかというふうに考えております。大事なことはやはりそのプラットフォームというところは、情報があって、そして仲間とのつながりができて、そしてお互いに協力し合いながらプロジェクトを推進できるような形がとれて、そしてそこから提言ができる、あるいはステークホルダーとのいい関係を作っていくことによって、日本のユネスコ活動、ESD活動というものが若者の中で大きく広がっていく。そういう意味では、この世界会議が日本で行われたというのが1つのいい契機であったんじゃないかなというふうに考えております。
この会議には国際統括官室からも出席をしていただいて、いろいろなアドバイスをしていただきましたし、委員のお一人であります安達委員も御出席をいただきましたので、安達委員から、何か御感想があれば是非一言お願いいたします。
(土屋文部科学次官退室)
【安達(仁)委員】  お願いします。私はこのユース・コンファレンスの第2回目のコンファレンスの1日目と、あと先月の23日に行われたんですが、プラットフォーム会合に参加させていただきました。ユースの集まりを見させてもらって、本当に多様なユースが集まっています。先ほどのつながりマップを見ていただいても分かるとおり、学生もいれば先生もいて、自分で活動を立ち上げてやっている人もいればというような、多様なユースが集まってのディスカッションが行われていました。
プラットフォーム会合の方なんですが、一番最後に、このプラットフォーム会合は私にとってどんな場所かということをそれぞれが、参加者が言ったんです。ちょっとそれを少しだけ紹介したいなと思いますが、こんなのが出てきました。「私にとってプラットフォーム会合は、新たな考えを与えてくれる場」とか、「戻ってくることができる場」、「同志を見つけていく場」、あと「力を付けて自分を高めてまた戻ってくる場」ということで、自分なりのアクションをとって、いつかこの場で皆さんに再会して、また何かを感じたい、学ばせていただきたいと思っているということで、参加者それぞれがこのプラットフォーム会合、またコンファレンスを通じてすごく刺激をし合って、またお互いに高め合って支え合っているような、そんな場がたくさん見られました。
先ほど西園寺委員もおっしゃっていたんですが、これからということで、このプラットフォームを持続的に続けていくことも大切かなと思いますし、また広げていくことも大事かなと思います。特にユース、18歳から35歳という年齢は、大学に入学したり卒業したりとか、あとは就職したりとかというふうに変化が激しいときかなと思いますので、そういう中でどんなふうに緩やかに心のよりどころとなるような場を持続的に作っていくのかというところ、あとは今回もプラットフォーム会合に関しては、コンファレンスの参加者以外の仲間たちも集まってきたんですが、まだまだESDというキーワードでつながれるユースがたくさんいると思います。
先ほどもおっしゃっていただいたんですが、大学ユネスコクラブもあります。11月の昨年の28日には、大学ユネスコクラブのサミットというものが開かれて、大学のユネスコクラブ同士でつながっていこうというような、そんな動きもあったりしますし、あと私が所属している民間のユネスコ協会の青年も全国に500人以上いたりします。そういうような、まだ多様なつながりの可能性があるかなと思いますので、また今のプラットフォームを広げて、固めて、深めつつ、また新しい仲間をどう広げていくのかというところも今後の課題かなと思いますので、また是非今後とも御支援いただけたらなと思います。
【西園寺委員】  ありがとうございました。
【安西会長】  ありがとうございました。何か御質問、御意見ありますでしょうか。
高尾委員、お願いいたします。
【高尾委員】  民間ユネスコの高尾と申します。今までのお話を聞いていまして、ユースの方達もとてもすばらしい活動をしているのだと感じております。私たち民間として活動している立場からお願ができるのであれば、資料の、参考2のところに「ユネスコ活動に関する法律」というのがあり、「第4条の方に国及び地方団体の活動の支援云々」があります。国内委員会や文部科学省として、再度県や生涯教育や市にも広く告知して頂けるとありがたく思います。子供たちの未来を創造していく一端を担う教育現場の教育者がもっとユネスコを理解して頂く事で、より円滑な活動や連携ができて行くと思います。
また、小学生からユネスコを身近に感じる事ができれば、継続して大きな広がりを持っていく事ができるようになると思いますので、どうぞよろしくお願いします。
【安西会長】  ありがとうございました。他にはいかがでしょうか。
今御説明のありましたユースの活動については、私が拝見していてもやはり若い世代が自分たちで作ってきてというのでしょうか、元々は世界会議のときに五井平和財団の共催を頂いて、世界から5,000人の応募があって、そこから50人選ばれたところから始まっているわけでありますけれども、その後はやはり若い世代が、自分たちであまり周りがああだこうだ言わないままに作り上げてこられたという非常に特徴のある活動でございまして、それをどのようにサポートしていったらいいのかということは、これの事務局側もまたいろいろ検討いただけると聞いております。
協会の方はまた少し別のことだと思っておりますけれども、いずれにしましてもいろいろなセクターが活発に活動していって、それが緩やかにつながっていくことが望ましいと思います。

他にはよろしいでしょうか。
【妹島委員】  感想なんですけれども、同じようにこのマップを見ると、いろいろな人がいろいろなところから参加されたんだなというのがよく分かって、今いろいろな方がおっしゃっていますけれども、どんどんレベルに広がっていけるような、そういうサポートシステムがうまく作れるとすばらしいなと思いました。
【安西会長】  ありがとうございました。
それでは、秋永委員、お願いいたします。
【秋永委員】  済みません。初めまして秋永と申します。12月1日付けでこの委員に就任させていただきました。どうぞよろしくお願いいたします。
バックランとしまして、サステイナビリティ・サイエンスを収めているということと、今理事長に紹介いただきました第1回目の日本ユース・コンファンスに参加をさせていただき、その場で選出いただきまして、世界会議の方まで参加させていただきました。ここの経験を踏まえて御紹介、お伝えしたいことが2つあります。
まず1つ目は、こうしたユースの集まり自体がESD、若しくはユネスコ活動に関する認知を高める意義があるということです。ESDという言葉やその意味自体を知らない状態で、このコンファレンスに参加するユースは大変多くおりました。ただ、ユース同士の議論や文科省の方々からのお話等を聞きながら、ディスカッションを通してESDの意義、その大切さに気付いていくというような意義があったことを、まずお伝えしたいと思います。
そして2つ目は、このようなコンファレンスを一度開くことでは、やはり参加者としてはまず物足りないということと集まり続けたいという思いがあることと、活動の意義としても第2回で五井平和財団さんの方にも発展を進めていただいているとおり、より長い時間、宿泊型で2回目をやられていますが、より長い時間ディスカッションしたり、フォローアップ会合を行って再び集まるという連続したアクションが非常に意味があると考えております。
実際、世界会議のユースの方の事例を1つ御紹介したいんですけれども、世界会議で50人1週間集まった後に、先ほどのユネスコ/日本ESD賞の応募がありました。実はこの3つのうち2つは今回の世界会議のユースの中から選ばれたということで、大変ユースとしても誇りに思っている事例があるんですけれども、このように会合で集まった先に何か自分たちの計画を提言するですとか、応募をする、より具体的な連続的なアクションを起こすということが本当に大事だと考えております。
ですので、下に「必要なサポート」ということでまとめていただいているんですけれども、(2)番のような定期的な開催や他国のユースとの橋渡しというのはもちろんのことですし、何かアクションを、いつも課題に思うのは、ユースの会議で再び集まることですとかオンライン・プラットフォームを形成することだけがゴールになってしまう場合があるんですけれども、その先の何か事業化ですとか、政策提言の仕方といった面で、委員の皆様や文科省の方々にも支援を頂きながら進めていきたいと思っております。
以上です。ありがとうございました。
(妹島委員退室)
【安西会長】  ありがとうございました。秋永委員は選ばれた方で、代表の方でいらっしゃいますけれども、こういう若い方々が本当にみずから主体性を持って活動しておられるのを、どのようにサポートしていけるのかということだと思いますので、委員の皆様、是非こういう活動をやってネットワークを自分たちで作っていっている若い世代がおられるということは、是非御認識いただければうれしく思います。よろしくお願い申し上げます。どうもありがとうございました。
(規定により非公開)

【安西会長】

それでは、ここで閉会とさせていただきます。大変貴重な御意見を頂きまして、御多忙の中、誠にありがとうございました。


―― 了

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