文化的表現の多様性の保護及び促進に関する条約の締結に向けた取り組みについて(建議)

 平成22年3月2日、第126回日本ユネスコ国内委員会総会において、「文化的表現の多様性の保護及び促進に関する条約の締結に向けた取り組みについて」の建議が採択されました。 この建議は、我が国としても各国、各民族が互いの文化を理解し、尊重し、多様な文化を認め合うことは重要であると考え、本条約の締結に向けて政府が積極的に必要な措置をとることを求めるものです。

 建議は、3月8日に日本ユネスコ国内委員会会長(田村哲夫渋谷教育学園理事長)より文部科学大臣に手交されました。

平成22年3月8日

文化的表現の多様性の保護及び促進に関する条約の締結に向けた取り組みについて(建議)

日本ユネスコ国内委員会

 文化の多様性は、人類の固有の特性であり、人類の共同の財産を構成し、全人類の利益のために育まれ、保全されるべきものである。文化の多様性によって、選択の範囲が増え、人間の能力及び価値を育成する豊かで多様な世界を作り上げることは、地域社会、人々及び諸国のための持続可能な発展を推進する。民主主義、寛容、社会正義及び人々と文化との間の相互尊重によって繁栄する文化の多様性が地域的、国内的及び国際的な平和及び安全のために不可欠である。

 また、文化的な活動や物品及びサービスは、個性、価値観及び意義を伝達することから、経済的及び文化的性質の双方を有しており、したがって、商業的価値を有することのみで扱われてはならない。情報及び通信に係る技術の急速な発展によって円滑化されたグローバリゼーションのプロセスは、これまでに例のない文化間の相互作用をもたらしているが、同時に、富かな国と貧しい国との間の不均衡の危険性という、文化の多様性に対する試練をも課している。

 ユネスコは、異なる文化間の相互理解を深め、寛容、対話、協力を重んじる異文化間の交流を発展させることを目的として、2001年11月第31回ユネスコ総会において「文化多様性に関する世界宣言」を採択した。それから4年後、2005年10月第33回ユネスコ総会において「文化的表現の多様性の保護及び促進に関する条約(文化多様性条約)」が、我が国を含む148カ国が賛成して採択された。条約は2007年3月に正式に発効し、2010年2月現在、107カ国及び欧州共同体が締結している。一方、我が国は、未だ締結に至っていない。

 日本ユネスコ国内委員会は、我が国としても、各国、各地域が独自の文化を維持、発展させるとともに、世界の様々な文化の交流を通じて、各国、各民族が互いの文化を理解し、尊重し、多様な文化を認め合うことは重要であると考える。また、グローバリゼーションによって懸念される課題に対処する上でも、本条約は意義のあるものであると認識している。

 こうした状況に鑑み、日本ユネスコ国内委員会は、「文化的表現の多様性の保護及び促進に関する条約」の締結に向けて政府が積極的に必要な措置をとることを要望し、ここに建議する。

(建議)

文化的表現の多様性の保護及び促進の重要性を認識し、条約締結に向けて、関係省庁による検討を早急に行い、早期締結にかかる必要な手続きに優先的に取り組むこと。

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