スポーツツーリズム需要拡大のための官民連携協議会(平成30年度)(第2回) 議事要旨

1.日時

平成30年11月26日(月曜日)13時30分~16時30分

2.場所

文部科学省館3F講堂

3.出席者

委員

原田座長、宮嶋委員、中島委員、陳内委員、中村委員、鈴木委員代理、堀委員、後藤委員、藤崎委員、竹田委員、松澤委員、安齋委員、沢登委員代理、竹山委員

4.議事要旨

●「アウトドアスポーツツーリズム」の推進について(実践者からの報告)
〇徳島県三好市のアウトドアスポーツツーリズムの取組について
・ラフティング世界選手権2017について
昨年10月、日本で初めてラフティング世界選手権を開催。参加者と多くの市民ボランティアや中高生の交流、三好市を挙げてのおもてなしなど、高い評価をいただいた大会だった。
三好市は、9割が山間地の集落で構成されている。人口減少が厳しく、典型的な過疎地域である。しかし、直近10年でインバウンドの誘客や外国人住宅率が大きく伸びるなど、移住者が徳島県で最も多かった。さらに、世界農業遺産として認定を受けたことで、益々世界から注目される地域になっている。現在、香港、台湾、シンガポール、フランス、アメリカ、オーストラリアなどをターゲットに、海外に営業活動を行っている。
吉野川では二十数年前からラフティングやカヌーの愛好家が集まる川として、レジャーラフティングでは20もの企業がリバーガイドを抱えてツアーを実施している。年間4万人とも言われる体験者が来訪、一大アウトドアスポットになっている。世界選手権の競技会場としても通用する自然の渓谷コースで、一般の観光客がレジャーラフティングとして気軽に体験ができる大変魅力的な地域である。
世界選手権を開催されるに至った経緯は、同地域で大歩危リバーフェスティバルというイベントが継続開催されていたこと、地元で活動をする女子ラフティングチームがあり体制が整っていたこと、国道・JRが整備されておりアクセスが便利であったことなどが認められ、誘致に成功した。
前年にはプレ大会を開催し、オーストラリアからオープン男子チームも参加して機運を高めた。プレ大会後に課題となった点は4つ。通訳の確保、安全な観覧場所の確保、選手・関係者・観客の宿泊施設の確保及びサービスの統一向上、悪天候の時の対応。このうち、通訳の確保については、人数とレベルと確保に力を注いだ。ボランティアを公募し、阪南大学の国際観光学部とも連携をした。国際ワールドキャンプのメンバーの協力、そしてJTBスタッフにも協力をいただいた。原則として英語で対応を行ったが、宿泊施設宿では指差し確認シート、電話での通訳サービス、通訳が同宿するケースなどで対応した。また、観覧対応については、競技会場周辺は駐車場がほとんどなく、川辺は足場が悪く危険な場所が多いことから、安全に協議を観覧できる体制づくりが求められた。このため、メイン会場には有料の観覧席を設け、メイン会場以外には大型モニター搭載ビジョンカーやパブリックビューイングの設置、地元ケーブルテレビによる県内生中継なども実施をした。
大会実績としては、参加国数22カ国で海外から63チーム、日本チームを含めると71チーム、515人の参加となった。大会に向けては高校生を中心とした若手競技者の育成にも力を入れ、地元の子どもたちにとって、身近に世界を体感する機会になった。

・ウェイクボードの世界選手権2018について
8月30日から9月9日までの4日間、34カ国、147人の選手の参加があった。ラフティングと同じように子どもたちの若手競技者の育成も行い、ウォーターキッズ・イケダコイレブンとして大会に出場した。広報についても、課題であった情報発信の体制構築を目指した。
・二つの世界選手権を開催した上での今後の方向性について
ウォータースポーツのまち・三好市を標榜していく。スポーツコミッションの設置に向けて具体的にステークホルダーとコンソーシアムを形成していく。子どもからトップアスリートまでが集えるまちづくりを進めていきたいというふうに考えている。
ラフティングについては、企業に研修旅行として活用してもらうため、トライアルツアーの準備をしている。また、市民の誇りを取り戻していくため、ウォータースポーツの若手競技者の育成の支援も行っている。
アウトドア客の増加に向けては、プロモーションの強化、新規参入企業の誘致、地元事業者の企業化などを行いながら、ハイシーズン以外についても、誘客が可能な仕組みづくりを考えている。
2021年には「関西ワールドマスターズゲームズ」が開催をされる。三好市ではラフティングとタッチラグビーについて実施をする予定。スポーツツーリズム、インバウンド、日本版CCRC、三つの大きな施策の柱を連携して推進することによって、交流人口から関係人口、さらには定住人口につなげていきたい。

(質疑)
・ホームページについて改善点を提案したい。Googleは、検索エンジンにいかに早く検索されるかということや、スマートフォンに対応してないサイトをどうやったら改善できるのかということを無料で調べられるテスト・マイ・サイトツールを用意している。他の自治体ホームページを分析することもできる。
⇒非常に有難い話である。

〇株式会社美ら地球のアウトドアスポーツツーリズムの取組について
・美ら地球の取組について
自転車とガイドを用意し、世界中から来られるゲストに飛騨の日常を体験するプログラムを提供している。ツアーは岐阜県の飛騨古川をスタートし、自転車で進んで止まって、ガイドが説明をする形で、ツアー時間のうち、自転車にまたがっている時間が3分の1、残りの3分の2は説明をしたり、休憩をしたりする流れである。日本の飛騨の暮らしやライフスタイルを紹介しているため、自転車が最適なツールである。
ツアー参加者の83%が外国人で、イギリス、アメリカ、オーストラリアの3国で半分以上を占めている。それ以外でもオランダ、フランス、カナダ、ベルギー、スイスなど、欧米豪をメインターゲットとしている。満足度も非常に高く、トリップアドバイザーの評価で言えば、96%ぐらいが五つ星、3%ぐらいが四つ星という状況。
ツアー参加者と地元企業や地域の方々などと触れ合う場面があるが、参加者が地域を褒めてくれるため、こちらもやりがいを感じているし、地域への波及効果も生まれてきている。

・日本のスポーツツーリズムについて
スポーツツーリズム定着については、日本ではなかなか難しい印象。ストイックに1つのスポーツをやる人が多く、海外に比べてスポーツを楽しんでいる人が相対的に少ないように思う。
また事業者の立場で考えると、自己責任文化がないために、非常に大きな責任を追ってツアー催行しなければならない。非常にリスクの高いビジネスになってしまっている。

・インバウンド対応について
インバウンドについては、登山で言えば、案内、ガイド、登山届が全て日本語といったことがある。これから多言語化は非常に需要。サイクリストの荷物の搬送も課題である。また、外国人事業者が外国人向けのサイクリングツアーを実施しており、日本人不在のビジネス展開が進んでいる。インバウンドを考える場合は、日本社会に資する形で行われるのが望ましい。

(質疑)
・日本のどこにでもある原風景に外国人がたくさん来て、喜んでいるのは気付きになった。今回の取り組みを他の地域が行おうとした際に、集客力がある観光地との距離間はどれぐらい重要なのか、既にお客様が来ている所との距離間は必要なのか。
⇒観光地との距離間は重要。世界の観光地の距離間はとても遠いが、我々の場合は飛騨高山まで電車で15分ということで、特に外国人旅行客にとっては非常に近い感覚。また、自転車でベースの地点を軸に、半日とかではなく3~5日間くらいの滞在モデルを作れるかどうかが重要。そういった意味では、日本中の地方部で、このスキームの実現は可能と考える。

・サイクリングガイドについて、ガイドのなり手が少なかったり、出口の作り方が難しい。サイクリングガイドの育成や候補者の募集どのように行っているのか。
⇒ガイドの育成については、これまで20名程度在籍していた中で、ガイド経験があるのは1名のみ。それ以外は、自社の育成カリキュラムを経て、高い満足度を維持できている。

・取組についての視察希望が多いと思うが、横展開の事例があるのか。
⇒来年の春以降展開していきたいというのが、2、3件ある。まだ情報発信の途上段階にあり、まだまだこれからだという感じがあるので、今後営業活動などを行っていく予定。

・リスクマネジメントの件について、新しい取り組みほど事業者の責任になってしまうようなことがある。海外で同様のことを行うと、自己責任であることが多い。そういった点において、実際の改善策はあるのか、また工夫をしているのかを知りたい。
⇒基本的にはリスクレベルを下げられるところまで下げるということを行っている。リスクレベルを上げたアクティビティをしようと思ったら、リスクマネジメント人材の確保も大変になってしまう。ジレンマの中で事業をやっているのが現状。

●「アウトドアスポーツツーリズム」に関するスポーツ庁制作映像と今後の展開について
・アウトドアスポーツツーリズム編のコンセプトは、ジャパン・ザ・フォース・オブ・ネイチャー。日本ほど自然が豊かで、都会からすぐに楽しめる国は稀である。自然の美しさ、そして自然のパワー、そういったようなことを世界に伝えていこうということで映像を制作した。九つの分野を対象とした。キャニオニング、ラフティング、カヤック、サーフィン、サップ、スノーボード、サイクリング、トレッキング、トレイルランを取り上げている。関心度が高いこと、全国各地で既に産業化しているものを選定した。

・武道編のコンセプトは、心技体。日本の武道の精神性や価値観を伝えるための映像とした。剣道・柔道・空手道・弓道・流鏑馬の5つのジャンルを取り上げた。

(質疑)
・映像を編集することはできるのか。
⇒編集は可能。

●官民連携協議会で協働して取り組む実験的取組について(福島県いわき市)
・内閣府の地方創生推進交付金を利用し、市民の健康増進につなげる取り組みをしている。市内の団体、商工会議所など69団体が参画して、スポーツによる人・まちづくり推進協議会を発足した。官民挙げてスポーツを軸とした地方創生の体制を構築した。さらに、交流人口の拡大を図るために市役所内にスポーツコミッションを設置し、官民連携でスポーツ大会や合宿の誘致に取り組んでいるところである。いわき市は雪の降らない東北でも稀な地域であり、面積も非常に大きく、東京の23区の約2倍を有している。様々なコンテンツがあるが、いわきイコール何かを打ち出せないでいるのが現状。

(委員提案)
(JTB)いわき市に店舗があり、様々な事業を行っている。岡山県の玉野市でヘルスツーリズムを先行的に実証しているが、いわき市に非常に環境が似ているため参考となる。また、北海道の阿寒ではアドベンチャーツーリズムに関するまちづくり会社を作った。アドベンチャーツーリズムの聖地として、磨き上げをしているところであり、いわき市との連携も可能であると思う。12市町村の復興という観点ではJヴィレッジの活用など、広域連携も必要なのではないか。

(モンベル)ジャパンエコトラックというスポーツツーリズム、あるいはエコツーリズムの視点に立ったルートづくり、そういったものでいわき市と協業できるのではないか。海・海岸線・山とバランスの取れた自然があり、トレッキング、シーカヤックなどの良いフィールドになるのではないか。ノウハウを生かしていきたい。

(Google)いわき市の魅力を届けたい方に戦略的に発信される時の情報発信のプラットフォームとしてGoogleを使ってほしい。具体的にいわき市に行く気になってもらい、いわき市の素晴らしさを発信する、そういったことはどのように行えばいいのかといった相談も可能。

(ルーツ・スポーツ・ジャパン)サイクリングツーリズムでの取り組みで連携が可能である。以前いわき市より、ツールドニッポン開催誘致の相談があったが、受入体制が整わず実現しなかった。今後もイベントの企画は行わせていただく。整備されたサイクリングコースを活用することもあり得る。また、サイクリストの誘客に向けた戦略策定も可能である。

(プリンスホテル)都内のホテルや自社施設等を利用したプロモーションの企画を提案したい。実際、西武ライオンズのファン感謝イベントで自治体が温泉を持ってきて足湯をしたり、物産展を行っている。また、東京都内ホテル近くの公園でヨガや雪を運んできてイベントを開催している。このような場を活用していわき市の施設等を紹介できるのではないか。

(ANA)ONSENガストロノミーウォーキングというイベントを提案したい。今年は全国25箇所で開催した。各地の名産品を楽しみながら、10キロ程度のまち歩きをするイベント。全国で3,000名程度の方が参加している。大分県別府では、留学生が多い立命館大学と連携するなど、地元との交流イベントとしても成果を上げている。いわき市では既に28回を数える震災復興のイベントを行っているということなので、似通らないコース設定などで実施を検討してみてはどうか。

(JR東日本)自転車等を活用した事業をいわき市内で既に展開している。トマト農園を拠点として、トイレインフラ、休憩インフラとして提供しており、ツールドいわきにて提供を行った実績がある。福島や茨城は鉄道と観光コンテンツが離れた場所にあるが、来年Jヴィレッジ付近に新駅が開業するため、福島県の広域スポーツエリアとして開発することが可能であれば、われわれも色々な発想ができる。

(リクルート)若者の行動支援プラットフォーム『マジ☆部』の展開を提案する。マリンアクティビティやゴルフ、スキー場、温泉での開催が可能。また、夜明け市場、グランピングやキャンプ場も若者との親和性が非常に高いため、歴史的なコンテンツも揃えてモデルルートとして見せていくことで誘客が可能なのではないか。

(クロススポーツマーケティング)郡山に本社を置く会社として、いわき市は馴染みの深いエリアで様々な取り組みをしている。その中でゴルフのグランドマスターズという3回目の大会がある。その中で、年齢層や性別を問わずゴルフを楽しめるような仕掛けを行ったり、同時に家族が遊べるようなイベントを実施したりしている。

(スノーピーク)ツーリズムというのはその場所に行って豊かな時間をどう過ごすのかということがポイントと考える。その上で、現地の楽しみ方をいろんな企業の方と連携し、地域とも連携しながら行っている。豊富なコンテンツをどう組み合わせるのかをしっかり考え、現場を見ながら動くことが出来れば、いわき市ならではの野遊びグランピングを提案していけると感じている。

(いわき市)皆さまから貴重な提言に感謝する。JTBとは既に様々な付き合いがある。市内の経済交流会も連携しているため、協力しながら何か取り組めていければと考える。また、モンベルより、シーカヤック、レーシングカヤックという提案があったが、いわき市はマリンスポーツが普及していないという現実があるので、漁港と連携した形での地域振興ができるのではないかと考える。Googleの提案に対し、福島県にガイナックスというアニメの会社が進出しているため、アニメというコンテンツも使いながら何か協力できればと考える。ルーツ・スポーツ・ジャパンのサイクルツーリズムの戦略策定という提案については、いわき市はそういった戦略がないため検討の余地がある。ANAのONSENガストロノミーウォーキングについては、いわき市の湯本温泉が原発事故後、非常に厳しい状況が続いている。旅館はなかなか厳しい状況が続いているので、湯本温泉とタイアップして、温泉と食とウォーキングを融合させた取組ができればと思っている。JR東日本はいわき市と企業版のふるさと納税も行っている。Jヴィレッジと連携という話があったが、Jヴィレッジといわき市のスポーツ施設を連携させながら様々な取り組みを行いたいと思っている。リクルートライフスタイルの提案については、ミレニアム世代へのアプローチということで、若者行動促進プラットフォーム『マジ☆部』との連携に興味がある。クロススポーツマーケティングについては発祥がいわき市なので、是非協力をお願いしたい。スノーピークについては、グランピングは現実に市内で実施されていないので、うまく活用できないかと考えている。

●自由討議
(スノーピーク)今回の動画についての提案になる。ツーリズムにおいて、直接的に関わるスポーツとの関係、そこから幅を広げていく意味での間接的な関係性をどうしていくのかが重要。例えば海外の方が来日して、日本で剣道を楽しみたいといったときに、大会を開催するのではなく、地域の人たちとの交流をする場を作り、非常に楽しんだ事例があった。直接的に競技をしている方、していない方、ツーリズムの観点で動画を見る方と視聴者も幅が広い。今後、地域との連携も映像の中に加えていくとまた違う広がりがあるのではないかと思う。

(Google)オリンピック以後も含めて、どうやって地域のスポーツツーリズムの魅力を伝え、また、その効果を測定し、次の政策に生かしていくかということを考えながら事業を進めてもらいたい。そのためには体制と人材と予算が必要。例えば、武道ツーリズムについては、スポーツ庁の枠を越えた連携が必要。ラグビー、オリンピック、大阪万博と続くが、持続可能な政策に繋げてもらいたいと思っている。また、各自治体がそれぞれ数十種類のパンフレットを作っているが、拡散や見える化が可能なムービーを作ったり、そのムービーを地元の若者が作り続けられるように人材育成を行うなど、持続可能な仕組み作りが必要と考える。

お問合せ先

スポーツ庁参事官(地域振興担当)

(スポーツ庁参事官(地域振興担当))