運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン作成検討会議(第5回) 議事要旨

1.日時

平成29年12月18日(月曜日)13時30分~15時30分

2.場所

文部科学省3F1特別会議室

3.出席者

委員

委員17名

スポーツ庁

鈴木スポーツ庁長官,今里スポーツ庁次長(途中退席),藤江スポーツ庁審議官,平井スポーツ総括官,澤川スポーツ庁政策課長(途中離席),
下間大臣官房審議官(初等中等教育局担当)(途中出席),木村参事官(学校運営支援担当),藤岡学校運営支援企画官 外

4.議事要旨

○ 議事(1)について,泉委員から資料に基づき説明があった後,討議し,委員の意見を踏まえて,次のとおり大筋がとりまとめられた。
  ・ 文献や提言,海外の事例等を考慮すると,中学校年代では1週間に2日程度は休むこと,1日当たり2時間,1週間に12時間程度の活動量が適当であること
  ・ NF(スポーツ競技の国内統括団体)に,初心者を含めた部活動指導者用のガイドライン,動画,手引書のようなものを作成いただくこと

○ 議事(2)について,初等中等教育局から,「『公立小学校・中学校等教員勤務実態調査研究』における部活動に関する分析」についての報告があった。
    また,友添座長が,これまで行われた検討会議での論点の振り返りを行った。

○ 以下,委員発言(発言の発言内容を変更しない範囲で校正し,読み易くしています。)

  (淺野委員)
    適切な活動時間は大変理解できましたが,効率的な指導という点では約46%の先生方が専門外ということで,その2時間の練習ですら,どういう練習が何に効いて,どのような効果をもたらすのかを経験則でやられているというのが多くございます。
    今の時代,いろいろなものを検索すれば,いろいろな練習法が出てくるんですが,果たしてそれが正しいものなのか,確実なものなのか,随分迷いがあるという話は現場から聞いております。
    そこで,専門外の先生方でも部活動を短時間で効率的に指導するための指導書であるとか,あるいは子供たちでも自発的に練習に取り組めるような,できましたら動画,あるいは指導書,手引書を一番先駆的なノウハウを持っていらっしゃる競技団体の方から公開していただいて,いつでも,それが見て勉強できる,学べるというようにしていただけると,子供たちの実践も育まれますし,また,先生方も新しい,正しい知識がしっかりと身に付いて指導に当たれると思いますので,是非,競技団体の皆様には,そういうところをお願いしたいなと思っています。
 
  (石塚委員)
    少し民間企業の観点からお話しできればなと思っております。弊社では7年ほど前から杉並区,大阪市で外部指導員の派遣を行っていますが,教員の負担は,実際技能に不安をお持ちの方々のサポート役として,外部の指導員の活用というのは非常に有効的な方法の一つではないかなと思っております。
    実際スポーツの指導者というものは,専門人材を活用することによって雇用促進にもつながるのではないのかなと思っています。
    また,学校教育現場の中で何が起きていて,どう部活動の中にそういった人材を浸透させていくかということの支援をしていくためのコーディネート役のような人材が地域と連携して,学校の中とうまく連携していくことも一つの方法かなと理解しております。
 
  (泉委員)
    私は三十数年,スイミングスクールの経営をしてまいりました。大体500人から600人の選手を抱えておりまして,6時半までは一般の子供たちの授業の時間で,夜の8時からは大人が泳ぎに来るわけです。
    そうすると,その500人なり600人の選手が練習できる時間というのは1時間半です。私のところのチームは,30年間,埼玉県の中でもトップをずっと走っているチームですが,それでも競技力は落ちないです。
    そういう意味では,短い時間の中で効率のいい練習というものができておりますので,時間の制限によって競技力が落ちるんじゃないかと心配されていらっしゃる指導者もいるようですけれども,私の三十数年の経験からすると,それは心配ないのではないかと思います。
    また,日曜日は必ず休みをとりますし,大会の前にも休養をしっかりとって大会に臨むというのは,ごく常識になっているかなと思っています。

  (川原委員)
    発育期は体がまだ不完全な状態でありますので,やり過ぎると健康上の問題も出てくるだけではなくて,競技者として将来性のある子供の芽を奪ってしまうようなことがあることは,トレーニング科学とかスポーツ医学においても共通の理解がされていると思います。
    IOCのエリートアスリートに対する声明においても,ある程度の運動量を制限すべしということは出ておりますし,科学関係のいろいろな機関が,そのようなコメントを出していますが,具体的な日数とか時間ということになりますと,これは個人差とか,練習のやり方にもよりますけれども,量的な面から言えば,いずれの期間でも週1日,2日,少なくとも休養日が必要であるということと,ジュニア期では16時間以上が一つのリスクを高める時間であるということであるということですから,上限として15時間というのは一つの目安かと思います。
    この場合のジュニア期というのは,おおむね18歳以下の場合が多いかと思いますが,中学生,高校生ということになりますと,特に中学生の場合は,発育が非常に大きい時期ですので,高校生とはまた違った配慮が必要でございます。
    研究3では,小学校から高校生までの年代で「年齢×1時間」ということが示されておりまして,そういう意味では,中学生は高校生よりも3時間程度は少ない方がいいのではないかと考えられます。
    そう考えますと,中学生ですと週12時間というのが一つの目安かと思います。それから,休養日としては,高校生より,より配慮するということから考えますと,やっぱり週2日というのが一つの目安ではないかと思います。

  (菊山委員)
    日本中体連としても,科学的な根拠に基づいた資料を全国の仲間に発信して,やり過ぎはいけないんだよということを徹底したいと思っています。
    もう一つ,私たち学校,中学校にいる者とすれば,やっぱり保護者の方へ,どんな啓発活動を行って理解をしていただくか,これが大きなポイントになるんだろうと思います。特に,若手の先生方がストレスを感じるのは,保護者の方とか,あるいは経験のある親御さんがいると,その目をかなり意識して,それが大きなプレッシャーになるというのはあるかと思っています。
    それから,専門でない先生方,あるいは専門であっても古い指導しか分かっていない方もいらっしゃいますので,やっぱり研修の場を定期的に設けていただくということが大きなポイントになってくるのではないかと考えています。
    それから,公立学校と私立学校,全てが同じ土俵で共通に進んでいけるようにしてもらいたい。あくまでも,このガイドラインのポイントは,生徒たちの生活をいかに良くしていくかということが中心だろうと思うんですね。そこへ教員の働き方改革も少しごっちゃになっているところがありますので,そこはそれとして,大人の世界のことですので,区別をしていただきたいと感じています。

  (妹尾委員)
    3点ほど質問がありまして,1点目は,海外の研究成果も多かったと思うんですけれども,日本の子供たちについて考えるときに,少し何か事情が違うんだとか,あるいは,ほぼこういうことは共通なのでとか,何か留意点があれば教えてください。
    2点目は,Ohta-Fukushimaさんの研究4が日本の話だと思うんですけど,なかなか日本についてのこういったデータは,まだまだ少ないという認識で良いかどうかということを教えてください。
    3点目は,幾つかバーンアウトという話が後で出てきたと思うんですが,余り練習をやり過ぎると子供たちが燃え尽きになってしまうというような影響も恐らくあると思っていて,スポーツ人口をむしろ増やすとか,生涯スポーツを親しむ方を増やすということも大事だと思うんですが,そういう観点からも少し,この練習量とバーンアウトの関係も,もし何か分かっていることがあれば教えてください。
  ⇒ 日本体育協会より,1点目及び2点目の質問について,国内でもまだまだ少ないというのが現状であり,日本体育協会で1986年に行った「若年層のスポーツ活動に関する提言」という研究事業の中では,若年層は身体的に未発達な発育過程にあるということを考慮すると,余りにも長いスポーツ活動,あるいは強度が強過ぎるトレーニングに関しては,外傷・障害の発生に深く関係があり,小学生と中学生については,1日2時間以内,それから週に1回は休養をとることが望ましいという提言をしているのが,恐らく唯一の指針になるかと考えていること。また,3点目の質問について,本日の資料に長時間のトレーニングがスポーツ外傷・障害につながることが,結果としてバーンアウトにもつながるという提言がなされており,バーンアウトを予防するという観点からも,まずはスポーツ外傷・障害が発生しづらい環境,状況を設定することが必要ではないかと考えていると回答があった。
   
    現状認識の共有ということと,今後のガイドラインに盛り込んでほしいことについて,少し頭出しをさせていただこうと思います。
    まず,やはり土日の休日をとれていない先生は結構いらっしゃいますということです。2010年のデータになりますが,運動部の顧問で土日の出勤が月に5日以上という方が30.3%と27.3%いらっしゃいますので,6割ぐらいの方が,月5日以上,土日も出ていると。つまり,1か月あれば4回も休みがとれていないような方も結構いらっしゃるということが示されております。
    横浜市の中学校の先生の約5割が月5日以上,休日出勤していることが書いてあります。労基法でも1か月4週間には4日以上休みなさいとなっているんですが,労基法違反と言ってしまえば,そんな状態になっているのではないかということであります。※委員の個人的な見解です。
    非常に大事だと思うのは,学校教育で部活動を行うのであればなおさらのことですけれども,労基法とか,あるいは労働安全衛生法とか,そういった法令無視の部活動運営はあり得ないということを明確に打ち出してほしいと思っています。
    中学校の先生が週60時間から75時間の方,あるいは週75時間以上の方は,授業の準備も一生懸命やっております。9.6時間とか11時間。これ,1週間の時間の使い方なんですが,授業準備も一生懸命やっておられますが,それと同じぐらいか,それ以上,課外活動の指導ということで,例えば週75時間以上の方は13.3時間,課外活動,つまり部活動等をやっているわけです。授業準備も熱心なんだけれども,それ以上の時間を部活動にも費やしているということです。
    教員勤務実態調査の中で,週60時間以上,つまり過労死ライン以上働いている人の1日の時間の使い方と,週60時間未満の方の1日の使い方の違いを示したデータであります。例えば,過労死ライン超えている方は1日平均で51分ということで,やはり過労死ライン超えていない60時間未満の方と比べても非常にこれは大きいということでありますし,土日も合わせると,もっと大きな差になるであろうということは容易に予想できますので,今,働き方改革ということが大きく言われておりますが,やはり部活動は非常に比率としては大きいということを申し上げたいと思います。
    今,中教審で働き方改革について中間まとめが,もうすぐまとまろうとしておりますが,その中で,勤務時間内で業務を行うことが基本であるということで,当然,部活動についても勤務時間を考慮した時間設定を行う必要があるということです。あるいは「超勤4項目」といいまして,超過勤務を命じられる項目に部活動は入っておりませんので,校長は部活動で時間外勤務を命ずることはできないということも,これは今の制度上そうなんだということも確認していかないといけないと思います。
    子供たちの健康という観点からの時間もありましたけれども,こういった法制度だとか,あるいは面からも,しっかり考えないといけないと思っております。しかし,実態としては,部活動が勤務時間外におよぶことは当たり前のようになっていますので,この制度と運用実態が非常に合っていないということです。
    スポーツ庁のガイドラインでも,そのあたりも捉えて,どのような表現をしていけばいいのか考えないといけないと思います。具体例で申し上げますと,今は冬の時間ですので,下校時間の5時半までは部活動を行う中学校は多いと思うんですが,教員の勤務時間でいうと4時45分だったりするわけです。つまり,その間は超過勤務になっているんですけれども,そういった運用がなされているということです。
    教員の悩みは,中学校も高校も,実は授業の準備をする時間が足りませんと言っている方が8割前後ぐらいいらっしゃいます。一番の悩みが授業準備の不足である。あるいは生活のゆとりがないと言っている先生も7割前後いらっしゃいます。こんな状態で,新学習指導要領になって,もっと質を高めていかないという時代にあって,非常に厳しい状態であることは申し上げたいと思います。
    部活動の効果はもちろん私もあるとは思っておりますが,正直言って不都合な真実ももっと見ないといけないんだろうと思っています。授業準備さえ,なかなかままならない,そういう方も中にはいらっしゃるということもしっかり,そういう景色も見る必要があるんだろうなと思います。
    前回,平川委員から,学校でファーストなのは教育課程の実現である御意見というか,強い問題提起がありましたが,授業も,部活動も,あるいは生徒指導も,全部頑張っているという先生も世の中には多いです。一方で,充実した授業準備とか,質の高い授業実践よりも,やはり部活優先でいっている先生も,中には一部にはいらっしゃるということも各種データからは示唆されることなので,こういったことも踏まえて考えないといけないと思います。
    ガイドラインでは,教員の時間外のときに部活動を担うことの是非をどうするのかということに,これも切り込まないといけないのではないかと思っています。少なくとも将来的な像として,本当にこのままでいいのかということはしっかり書かないといけないんじゃないかなと思っております。
    実際,中教審でも働き方改革の中にも,将来的には地域の方に移行していくべきだという方向性も示されておりますが,とはいえ,いきなりは確かに無理ですけれども,このガイドラインでも,どこまで,そういうことも含めて書いていくかは,よく考えたいということです。
    実効性に関係する話ですが,ガイドラインによって学校現場に求めることは言いっ放しではなくて,先生の採用とか評価とか昇任,こういったときに部活動について,例えば先生の採用のとき,あるいは管理職登用のときに,部活動の顧問がどこまで考慮されているのかどうか。このあたりは,はっきり分かりませんけれども,「部活動を重く見るべきではない」といった内容も書いた方がいいのではないかということです。
    それから,若い方ほどストレスが高いとか,やっぱり若い方ほど授業に自信がないという方も多いわけです。中教審でも,私ではない別の委員が,一定期間,例えば初任から3年以内は部活動の顧問をさせないなどの方針があってもいいのではないかという御発言もされました。こういったことも是非議論をしていただきたいなと思っています。
    ガイドラインの実効性を高めるためには何が必要か。前回の議論では皆さん,罰則とかはなじまないんじゃないかという御発言が多かったと思うんですが,私はもう少し踏み込んだ方がいいんじゃないかと思います。例えば,休養日の設定等を守れない学校とかチームは試合に出られませんとか,そういったことも含めて,一定の歯止めを掛けるような方法を考えるべきではないかと思っています。公立学校だけではなくて,私学もしっかり規制をしていかないと全然浸透しませんので,そういったことも考えてほしいと思っています。
 
  (奈良委員)
    科学的な知見やデータに基づいた運動量,時間の制限ですとか,又は休養日の設定ですとか,これは極めて説得力があって,それに例えば練習時間を制限しても,又は休養日を週2日設けても,運動技能とか競技力そのものは低下するものでない,むしろ,パフォーマンスは高められていくというようなことについて,私自身は理解できてきているという思いがあります。
    このことを指導者又は保護者又は関係団体の方々に認知してもらう,これが大事だというようなことがお話の中にあったと思いますが,全国高体連の中でも,「ガイドラインが今年度末までに策定されて以降にどうするのかという議論が必要です」というようなことを言ったり考えたりしています。
    ガイドラインを浸透していくというところが一つ,やっぱり大きな課題だと思うんですね。それに向けた具体的な広め方について具体的に何かあれば教えていただきたいというのが1つです。
    もう一つは,どうしてもトップアスリートを育てるというところが一つ先々にあって,一方では各学校における部活動のそもそもの求めるものという両面があると思うんです。心身の健やかな成長という表現だったかと思いますが,特にこの心の部分,切り分けて話せるものではないと思うんですけれども,やはり運動部活動を通して体力や技術力を高めていく,又は先々には,それこそトップアスリートの世界に入っていく子供も出てくると思いますが,そうではない部活動のニーズもあると思うんです。このことをどのように整理していくのかというのが,私自身も答えはないんですけれども,何か御示唆頂ければ有り難いなと思います。
  ⇒ 泉委員より,日本体育協会としては,いろいろな会議体等で言い続けていくことが大事だということ,指導者から意識改革していくことが大事であり,機関紙など,いろいろな手だてで情報をしっかり流していくといったことが肝心と考えていると回答があった。

  (西岡委員)
    考えてほしいのは,スポーツ施設があまりにも貧弱ということです。体育館種目になりますと,平日でしたら,例えば3時半に開始すると,開始から1時間は男女のバスケットが使い,次の1時間で男女のバレー使い,その次の1時間で男女の卓球とバドミントンが4分の1ずつ使い合う。その次に器械体操が使って,その次に新体操が使うような使われ方が現状なんです。
    そうすると,顧問は勤務時間は終わっているのに,6時ぐらいからやっと部活動を始めるというケースもあるわけですよね。
    都道府県によって全然違いますが,私は大阪で高校教師時代を過ごしましたが,そのときには体育館種目がどんどん増えてしまっているんです。昔はバレーボールも,ハンドボールも屋外でやっていましたが,どちらも今,体育館種目に変わっていますが,施設が全然増えていないんです。
    ということは,それだけやる時間が減るのか,そうでなければ施設を増やさなければ仕方がないということで,結局は勤務時間がどんどん,どんどん延びていく。これはグラウンドの種目でも同じだろうと思います。
    海外教育事情の視察でアメリカに行きましたが,どの小学校行っても,日本の高校よりも施設が立派でした。小学校でです。中学校,高校になると,こんなの日本の大学でもないのではないかいうぐらい施設が整っているんです。
    施設がきちっとあれば,短時間で終われるでしょうけれども,日本の場合は残念ながらそうじゃないという現実があって,それが教員の超過勤務,そこへも影響していっていると思うんです。
    その辺り,一律にはなかなかやれないんだろうなというのが正直なところで,超過勤務の問題と体育施設のことも考えていただきたいと思います。
 
  (望月委員)
    教育法とスポーツ法の分野の研究者の共同研究の報告内容を情報提供として紹介いたします。研究分野としては,教育行政,歴史的国際比較を通じての学校部活動,教員の労働条件及び子供の権利という領域の研究者でございます。
    一の報告は,高校生に対する実態調査を踏まえた報告になっております。討議を踏まえたコンセンサスとしては,日本の部活動には優れた面があり,この長所を生かすことは重要である。しかし,現状の部活動は子供の権利の視点からも,教員の労働条件の視点からも問題があり,このままでは持続可能性が危ういという結論でございます。
    そのために子供の権利を守る,教員の健康と権利を守るという両視点からの提言がなされています。部活動時間の規制は必要であるという点では共通の意見でございましたが,時間規制については,子供の側から,部活動の時間という枠での規制と,教員の側から,所定外労働時間の規制という枠と,2つの考え方が示されたので,正確を期すために各報告書の提言は個別に紹介しております。
    なお,紹介しましたのは,各報告者の個人の意見と参加者の討論を踏まえての大枠の合意であります。報告者や参加者の所属大学,あるいは学会及び主催者団体の組織としての意見ですので,この点は誤解ないようにお願いいたします。
    友添座長からの「練習時間,1週間12時間程度,そして1日2時間程度が,法的に問題があるか」という御質問については,現状を踏まえると,学会や労働弁護団などから労働基準法の観点で指摘をされても,この程度の枠で抑えるとしか言いようがないのではないかという意見でございます。

  (森委員)
    私も現場の一人といたしまして,実際,公私立問わず,現場の中高の先生方,どの程度この実態を分かっているのかというと,恐らく分かっている人はごく少数で,この認識を,やはり現場に広めていくことが一番大事なんだろうと思っています。
    文書を出して全国に回したらそれで済むではなくて,具体的に各都道府県,行政などを通して,現場の先生への研修会をこれから更に強化していただきたいなと思っています。
    部活動が盛んなのは,どちらかというと私学でして,私学で部活動が盛んなのには,生徒募集という意味合いがありますので,経営のためにも運動部を強くして頑張っている学校はたくさん日本中にあります。
    私学の現状はといいますと,今,全国の高校生の中で,私立高校に通う生徒は約100万人。全体が約300万人ですので,率で言うと32%,3人に1人は私学の生徒です。
    ですから,この改革も,私は総量規制を含めて,休養日のことも含めて,大賛成ではあるんですが,いかにこれを現場に浸透させていくかというところが一番大きな課題だと思っています。
    例えば部活動指導員にしても,私学は勝手にやりなさいとなると,それはなかなか難しいところかと思うんです。ですから,前回の頂いた資料の中にも,教育委員会でありますとか,いろいろな団体さんから予算措置をしてほしいという,そういった意見があったかと思いますが。私学にも同様の措置をしていただけるのであれば,もっと広がりを持って浸透していくのかなと思っています。その点は是非,前向きに御検討いただければなと思いました。
   
  (山口香委員)
    非公式な形で,海外のトップアスリートを育てている指導者とか,あるいは海外の現状について聞き取り調査などをさせていただいたんですけれども,その中で感じたことは,やはり海外は,特に中学生の年齢ですと,「やらない子をどうやってやらせるか」という議論はすごくありますが,日本のように,「どうすれば時間を制限できるのか」という議論はないので,若干うらやましい話がありました。
    トップアスリートを目指す現場でも,海外のいろいろな方の話を聞くと,やっぱり「やり過ぎはマイナスだ,特にこの年齢は」と。皆さんがおっしゃるのは,日本ももちろんそうですが,トップアスリートを育てる観点からも,「バーンアウトを防ぐためにも競技者としてのピークをどの時期に持っていくかというのが,まず非常に重要だ」と。社会体育が非常に海外では多いんですけれども,「週3回,1時間半程度の活動が一般的だ」というような話がございました。
    いろいろな議論はあると思うんですけれども,私も,1回2時間程度,そのぐらいでよろしいんじゃないかなと思います。それは,集中力の観点,そして長くやるということは,指導者においてもトレーニングの方法ですとか,やり方を考えずに,結局だらだらやってしまうということもあるんですね。
    ですから,限られた時間の中において効率的に質のあるトレーニングあるいは練習をさせるという指導者の質も向上させるという意味でも,ある程度の時間を制限することは必要なのではないかなと考えております。
    何より,やはり子供の発育発達,そして技術が伸びていく,そして伸び代を残すという観点からも,ただいま提案されたようなことを基にしながら考えていくことが必要なのではないかなと感じております。
    今回,ガイドラインを作って,それを周知させていくということが非常に重要だと思うんですけれども。そこで重要になるのは,どうしても盛り込むべき内容が,あれもこれもとなると,総花的になってしまって,かえって周知できないというか,読まないということにもなるので,本当に骨子というか,ここが今回のガイドラインで肝になるところで,徹底してここは守っていただきたいというようなメッセージ性のあるものを作っていくことが重要になるんじゃないかなと思います。ですから,これをどのように周知していくかということを併せて議論するべきだろうということと,もう1点は,このガイドラインを作るに当たって,指導力不足というか,専門性がない方も指導しなければいけないという現実を鑑みたときに,NFの協力を早急に担保しておいて,このガイドラインに盛り込まないと。NFに,これができてから,じゃあ作ってくださいと言ったら,また1年,NFが作るのに時間が掛かるので,NFにも,もう着手してくださいというようなことを,スポーツ庁なり,こちらの検討会議から要請をして,連携をある程度確実なものにしておかなければいけないと思います。
    NFは,どちらかというと,一般的には何か強化に力を入れているように思われがちですけど,実際には,そのスポーツそれぞれの普及と強化というのが両輪で動いていますので,どちらに対してでも,きちんとしたガイドラインを出せると思いますので,その動きをしながらガイドラインの作成に着手していければと思っています。

  (山口隆文委員)
    日本サッカー協会の指導指針は,トップアスリートを育てるためにということで考えているだけではなくて,一般に部活動とかタウンクラブで指導されている方々に,8歳から18歳までの年代で適切な1週間の頻度,1日の活動時間等々をガイドラインという形で提示させていただいています。
    全日本少年サッカー大会に出場するためにスパルタ的にやっているジュニアの指導の方,中学校,高校の部活動でも想像を絶するような,いわゆる負荷をかけたトレーニングをする方もまだまだいらっしゃるということの中で,しっかりとしたガイドラインを作って,これを徹底していくために作っています。
    13歳から18歳までは,今,JFA(日本サッカー協会)アカデミー福島というロジング型(寄宿制)の,中学生から高校生までの6年間のトップアスリートを育てようという事業でやっていることを一つの例として挙げてまして,これぐらいの量でも十分アスリートを育てることはできることを提示しています。
    これをガイドラインにしながら,中学校の部活動,そして高校の部活動,又はJリーグでやってもらいたいと考えています。
    だらだら,だらだらした心拍数の低いトレーニングを続けると,それになじんでしまう。それをしっかりとコントロールして,試合に近い形での練習をやることによって,試合でいいパフォーマンスが出せるようにする。そのようなことを考えると,13歳から18歳の1日の練習時間は,2時間以内ということが望まれるべき時間だろうと思います。
    そして,週間スケジュールの中で,土日に試合がありますけれども,非常に強度の高い中での反復運動が行われているのがサッカーの競技特性ですので,例えば土日に何試合もやると,1試合1試合のインテンシティが下がります。競技力が世界に追い付くためには,そういう強度の高い中でのトレーニングをしなきゃいけない,試合をしなきゃいけないということで,土日での試合の連戦を避けるという形で組んであります。
    情報の発信について,日本サッカー協会では,2か月に1回,テクニカルニュースというものを,約80ページの,この大きさの80ページぐらいのものを8万2,000人の有資格者の方に送っているんですけれども,そこでよく要望があるのは,やはり練習方法の動画で見たいということです。それに応えるために,最短で2019年の4月にはスタートを始めるため,それを準備することを決めました。
    もう一つは,中学校の体育の授業のサポート,それから部活動のサポートのためのガイドラインの本を作成しようと,準備を進めています。これも2019年度までには発表していきたいと思っています。

  (山﨑委員)
    高校現場としても非常に有り難いお話でありまして,実際,高校にも,その専門的な技術指導について自分自身の経験がない,専門的な技術等に不安があるという先生方は,数多く割合としてはいらっしゃいます。そういう方々が一番困るのは,もちろん日々のトレーニング計画を作ることも,かなり難しいとは思いますけれども,マクロな部分といいますか,年間計画であったりとか,月間のスケジュール管理とか,そういった部分では,かなり御苦労されているのではないかと思います。
    JFAの1週間の活動スケジュールですけれども,これにシーズンを考慮した月間だとか年間とかと,そういうトレーニング方法や強度や頻度とか,そういった負荷を考慮したベースになる計画が当然あるんだと思いますが,そういったものをいろいろな人が情報として共有できれば運動部活動の持続可能性としては今後につながる部分があると思います。
    また,そのような計画を具体化するときに,高校生そのものも参画できる可能性があるだろうと思います。今の学びのスタイルは,まさにそのようなスタイルに変わりつつありますので,一方的にスケジュールが指導者から示されるだけではなくて,自分たちでそれもコントロールできるような,そんな仕組みもあってもいいと思います。

  (山本委員)
    サッカーの指導指針のような形のバスケットボール版を鋭意作成中ということで,今御指摘あったような動画配信というものを考慮しながら作っております。
    この部活動指導ということを対象に特化したものも作りたいなと考えております。
   
  (渡邊委員)
    地域へ移行という言葉が出てくるんですが,その部分については,私は賛同できない部分です。いろいろな考えや取組がある中で,部活動と地域の融合型というプランがとても自分の中でしっくりきたんですね。そこが鍵ではないかと思いました。地域の実情によっていろいろな取組もあると思いますので,その融合型というのを是非プランの中に盛り込んでいただけたらなと思いました。
    それから,総量制限の中で,活動時間が出されているんですが,競技志向であれ,楽しみ志向であれ,休養というのは,どこにも共通の部分だと思うんです。ですから,もっと休養という部分を表に出していくべきであろうと思います。
    ガイドラインを実際に守っていくためには,指導者の意識だと思うんです。たくさん練習すればうまくなる,休めば下手になる,ということではないと思うのですが,スポーツ少年団でも過度な練習が現状となっていますので,指導者の意識改革を含めて,休養という部分をもっと取り上げていったらいいと思います。
 
  (友添座長)
    スポーツ医・科学の観点からのジュニア期におけるスポーツ活動時間につきましては,非常に先行研究,先行文献の少ない発育発達論に関わるところで,スポーツ科学の中でも,なかなか難しいところだと言われております。
    バーンアウトの研究は,スポーツ医学の中でも,また細分化される領域になってしまいますので,また別項目の研究課題になるので,なかなか統合的に分析するという先行研究は少ないと思っています。
    競技力向上に関する研究は非常に多いですが,子供たちを対象にした研究はスポンサーがなかなか付かないということもあって,低調だと言わざるを得ない現実があったかと思うんです。
    ジュニア期のスポーツ指導の指針・方針は,JFAが非常に優れた実績と先行研究,あるいは先行実践を踏まえて提案をされているところであります。特に,中学生年代の1週間の合計時間で想定される練習時間や試合について見てみますと,13~14歳,15~16歳あたりぐらいまでは,いずれも1週間に10~12,13時間までという活動時間が提言されています。
    一部のNFでは,部活動用の指導の指針とか,あるいはガイドラインみたいなものを作っていて,その中で部活動に触れているのもあるんですけれども,どちらかというと,やっぱりレベルの高い子供さん対象の指導指針で,部活動に転用するのは難しいと考えるところでもあります。
    部活動に特化したようなガイドライン。そういう意味での指導の指針,方針を含めて,是非NFの協力を頂いて作っていく,そういうことをやらないと,実際には指導で困っている先生方には全く指針になるもの,羅針盤になるものがない状況ですので。そのようなものを作ってネットで公開をしながら,情報を広く共有していくような試みをやっていってはいかがかなとは思っているところでもあります。
    体育施設は,少子化が進んでいく中で,これ以上施設が増えていくということは,もう現実的にはあり得ないわけですので,知恵の出し合いと工夫のし合いをやっていかなければいけない。もちろん,そういう方向性は,ガイドラインに盛り込んでいくべきだろうと思っているところです。
   
○ 鈴木スポーツ庁長官から,以下のとおり発言があった。
    友添座長が,参考資料2に基づいてお話ししてくださった内容は,まさに,このガイドラインで盛り込んでいただきたい内容です。いろいろと部活動が教育的な意義がある,しかしながら社会情勢が非常に変化していて,改革をしなくてはいけないというのは皆さん,衆目の一致するところだと思います。
    また,教員の負担軽減の問題と,それから生徒のスポーツ機会の確保,これをどう両立させていくのかというのが非常に重要です。そのために地域,あるいは学校,あるいは競技別に,いかに最適なスポーツ活動を明示できるかというのがポイントだろうと思います。
    そして,活動時間の設定とか休日の設定はもちろんですが,運営方針ですとか,活動計画の策定をいかに行うか。そして学校運営の体制,これをどう構築していくのか。あるいは適切な運営のために,この体制の整備をいかにうまくやっていくかという話ですけれども,そのために専門的指導を行える人材をどう確保し活用していくのか。
    部活動が競技力の向上にも寄与しているという観点から,NFと,これからどう連携を図っていけるのか。また地域によっては,この地域,民間と強力な体制で連携をしていかなくてはいけないということで,その辺のあたり。それから先ほど出ましたが,競技大会,これの在り方,こういったものも含めて考えていく必要があるだろうと思っています。
    いずれにしても,今のこの状況を考えると,近い将来,この部活動が恐らく地域にお任せするような形が考えられるわけですが,今,過渡期ですけれども,将来のそういう在り方について議論するということが大事かなと思っています。
    それから,指導に当たっては資格も非常に大事になってきますし,中学校の先生が部活動を今後も引き続きやって指導していきたい場合には,専門的な知識をどう受けられるか。あるいは部活動指導員を配置するときに,教育的な知識等に関する研修をどのように受けていくのかなど,すり合わせをしていきながら,いい形で,このガイドラインの策定を行っていただきたいと思います。
    休養日の設定等の例示については,平成9年の調査研究報告書に示されているわけですが,それが実行に移されていない部分もありますので,ガイドラインでは,そのあたりの違いも示していかなければいけないと思っていますし,その頃と違うのは,家庭の経済格差や,あるいは健康のリテラシーの重要性というのも変わってきていますので,昔よりも踏み込んだ形でのガイドラインというのが望まれるかなと思っています。
   
○ 次回の開催について,1月中旬に開催することとし散会となった。

お問合せ先

政策課学校体育室