資料1 健康スポーツ部会(第3回)での主な御意見

【地方自治体における取組について】
○WHOが2009年に発表したレポートによれば、死因の第4位が運動不足である。また、2位のタバコ以外のベスト5の要因(1位:高血圧、3位:高血糖、5位:肥満)についても、運動不足の解消によって解決することができる。

○認知症は生活習慣病だということが確認されてきて、運動不足は認知症に至るリスクが高いと言われている。また、1日の歩数と年間1人当たりの医療費も相関関係があり、生活習慣病対策には、歩くことを含めたスポーツ・運動の寄与が大きい。

○各自治体で良い取組が行われているが、約7割の人には情報も届いていない。情報が届かないから行動を変える価値を認識できず、行動を変えるはずがない。この7割の無関心層に情報を届ける仕組みを考える必要がある。

○無関心層がスポーツを開始するまでには、1回の呼びかけではまず動かず、年平均4、5回聞かないと動かない。また、同じ人ではなく異なる人から、そして自分と親しい人から同じことを何度も聞くと、そろそろやらなくてはという気持ちになる。

○ヘルスリテラシーとは知識と意欲である。知識がないために意欲も伴っておらず、当然自己投資でお金を払う意識が醸成されていない。食事やサプリメントに投資するようにスポーツに対して投資するということを7割の国民が理解していない。

○心筋梗塞を起こした方などにスポーツがいいということが論文等で出ているが、フィットネスクラブでは、一度心筋梗塞を起こしたことがある方は入会を拒否されることがある。エビデンスでよいと言われてもできないというのが今の日本の実態。

○自治体の取組がうまくいかない理由として三点。一つ目は成果にかかわらず役務が達成されると対価が支払われるため安い方に流れること、二つ目は各自治体の事業が小さすぎてポピュレーションアプローチができていないこと、三つ目は事業を大きくすると職員の業務量が増えるためブレーキがかかること。

○自治体の取組では、まちづくり部局も入る必要がある。健康・スポーツだとワン・オブ・ゼムであるが、まちづくりと一体になると政策の一丁目一番地になる。


<三島市の取組の説明>
○健康施策には、健康推進の課、スポーツの課、国保や介護保険の課、産業関係の課、土木関係の課等、全部で20課が関係し、アクションプランを作っている。

○「自然とまちの中を歩きたくなる仕掛け」として、電線の地中化、通りの花飾り等に取り組んだ。また、2つのノルディックウォーキング公認コースを作ってもらった。

○「脂肪燃えるんピック」という3人1組で脂肪量がどれだけ減るかを競う取組も実施した。減った脂肪量と同量の牛肉を賞品とし、223名の参加があった。

○「出張!健幸鑑定団」は、保健師が居酒屋などに行き、飲みに来る人の血圧等を図り、健診の呼びかけをする取組。その居酒屋と提携して、健診を受けた紙を持っていくと1品サービスがあるなどの特典を付けた。


<意見>
○企業、スポンサーも含めて、どうやってマネタイズを図っていくかが重要。

○シークエンスは高齢者、スコープでいうと地域にスポットライトを浴びせたものと認識。他方で、中学校の運動部活の参加率が65%で、それが社会に出るとなぜ急激に減っていくのかというライフステージ毎の問題も考えていかないといけない。

○スポーツ臨床学会などでは、運動器の寿命は80年ぐらいと言われている。お年寄りに運動を勧めることはオーバーユースの問題にもなってくるので、ある程度抑制的に実施していくことも必要である。

○高齢者の場合、まずは、多くの人を対象に推奨していく段階があり、その後、個人のオーダーメードに応じた運動処方を考えていく必要がある。ただ、その段階になると、自治体だけでは明らかに限界がある。官民連携をどのようにやっていくか。


<JAGESの説明>
○JAGESでは、横断研究に加え、10年間の追跡調査も実施。どのような生活をしていた人が、その後、どのような健康状態なのかを分析した結果、1人で何かやるより、グループでやること自体に意味がありそうだということがわかってきた。

○市町村ごとにデータを取ってみると、スポーツの会参加者は、市町村間で12.1%~40.1%まで開きがある。平均では約30%で、関心層3割・無関心層7割という数字にはぴったりであるが、これだけ市町村間で差がある。また、スポーツの会への参加割合が高い市町村では、健康指標が良い。

○同じ市町村でも、さらに細分化し、概ね小学校区圏域単位で分析をすると、同じ市内でも大きな差があることがわかる。仮に、もっとスポーツを振興しなければならないという課題が見えてきたときに、特に深刻な地域はどこかがわかり、限られた資源を集中的に投入するということも可能になる。また、飛びぬけて指標が良い地域は何をやっているのかというヒントを得られることにもつながる。

○市町村単位で、公園面積が広いところの方が、スポーツ実施率が高いという関係が相関係数0.5くらいで出てくる。また、スポーツ実施率が高い地域の特徴として、「ボランティアのスポーツ指導者を養成する講座を毎月のようにやっている」、「スポーツのイベントが年に20回くらいある」ということがあった。

○スポーツ庁も地方スポーツ推進計画の作成を示しているが、そのマネジメント支援システムにこのような調査を活用していただくことが可能である。

○同じ65歳~74歳でも「4倍、転びやすいまち」があることがわかった。その関係を調べてみたところ、出てきたのがスポーツグループへの参加であり、やはりスポーツが大事であることがわかった。

○武豊町で憩いのサロンを実施したところ、予想以上の効果があった。スポーツ嫌いの方もいるし、毎回同じ体操だと飽きてしまうこという声もあったので、体を動かすことも含めていろんなことをやる通いの場を作った。また、そこに来たことがきっかけで、運動を始めた方が5割いた。

○公園のそばにいる人で運動頻度が2割多いという関係がきれいに出てきた。

○実際に運動を始めた人のきっかけとして、保健師が年に1~2回訪問することに加え、地域の何とか体操のリーダーたちが一生懸命言うというのもある。さらに、地域でスポーツのグループを組織する人達は仲間を増やすのに熱心な人が多い。これで4つ目ということで4人(4回)からの声掛けというのは一理あると思う。


<意見>
○鳥取県伯耆町で、町の公共施設内に小型のスポーツクラブを作ったところ、5,000円の月会費を支払って、自分の健康づくりをする方が500人集まった。この次は、介護予防や学習塾などの事業を計画しており、町に住む人々が、自らの意思で運動すること、その活動をお世話するという新たな経済の仕組みを作り始めた。

○スポーツ実施率65%の達成のためには2,000万人の増加が必要ということであるが、様々な事業をやり、その票読みをする時期に来ている。マーケティングではS・T・P(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)と言うが、目標に沿った正しい計画づくりが大切である。

○横浜市で廃校になった中学校の校舎を利活用して健康スポーツ学校にしたらどうかと考えている。

○無関心層になってしまった要因が、生まれつきなのか、家庭の中で保護者と一緒に暮らしているときだったのか、学校体育なのか、無関心になった層を関心層にするという取組と、もう一方では、無関心層を少なくするということが大事。

○運動イベントをやっても、そのときしかやらないという問題がある。昔はそれをきっかけとして自分達でまたやろうとか通常化しようとか考えていた。いわゆる遊びの概念で子供達が経験していくことが、結果的に運動実施率を高めていたと思う。

○公園での遊びがかなり制限されており、ボールを使ってはいけない、バットを使ってはいけない、自転車・三輪車に乗ってはいけない、木に登ってはいけない、最後に、人に迷惑をかけることはやめましょうと書いてある。子供は静かに佇むしかなくなり、家でテレビゲームをやっていた方がよいとなってしまう。



【ビジネスパーソン向けの取組について】
○スポーツ実施率が低い20代から40代を主たるターゲットとして、新たに始めるハードルが低い「歩く」ことを、より広げていく活動を進めていく。

○健康のためにいいとはわかっていても、ただ「歩く」だけではつまらないということもあり、好きなことと一緒に「歩く」ということを勧め、無関心層を取り込んでいく。


<意見>
○20代~40代がウォーキングの楽しさをどの程度実感しているかはよくわからない。「歩く」という運動はあまり楽しくない、やらないよりはよいのだろうが、ウォーキングが十分に有効なのかをエビデンスベースで検証、確認しておく必要がある。

○一番身近な「歩く」という活動を推進していく中で、シューズの問題も重要。通勤の服装に合うウォーキングシューズなど、ファッション面も考慮に入れたものが出てくると、もっと普及すると思う。

○国民運動として、動かすのはファクトである。ファクトづくりに邁進した方がよい。

○障害のある方も参加しやすいということを頭の隅に入れておいていただけると、高齢者であれ、運動の苦手な人であれ、様々な人が参加しやすくなる。

○一般論でいうと、人口密度が高いエリアの方が、スポーツ実施率も高く、歩行時間が長いということが言える。例えば、大手町駅で乗り換えれば、路線によっては800メートルくらい歩いたりして、都市構造により歩かされるという面もある。

○農村地域でもかなり差がある。盛んなところでは、甲子園球児やオリンピック選手を輩出していたりする。その地域では、「スポーツはいいことだ。我がまちの誇るべきことだ」といった文化があったりする。できない理由を考えてしまいがちだが、似たような環境でのグッドプラクティスを掘り起こして分析することも必要である。

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