評価項目4 システムの選定及び設計要求に関連する質問

【質問番号 4−1】

【質問内容】

 全球合成降水マップの作製は今回の評価の対象外かもしれないが、DPRの処理アルゴリズムの開発と校正検証は対象部分であり、それらの方針・計画について少し立ち入った説明がほしい。また、目的の2番目にあるマイクロ波放射計の処理アルゴリズムの開発と校正検証についての方針・計画についての説明もほしい。

【該当箇所】

推進6−2−2

【回答者】

JAXA(ジャクサ)

【回答内容】

 DPRの処理アルゴリズムは、現状のTRMM/PRのアルゴリズムを利用して開発している。レベル1プロダクトに関するアルゴリズム開発は、センサ開発プロジェクトと協力しながら、JAXA(ジャクサ)で開発を行う。また高次プロダクトのアルゴリズム開発については、委託研究、もしくは研究公募により選定された研究者との共同研究で実施する。
 各バンド単独の、一周波としてのアルゴリズムについては、TRMM/PRでの手法が適用可能であり、新規開発となるのは、二周波を用いた降水推定アルゴリズムである。これは各バンドの降雨減衰特性の違いに関する情報を用いて、PRのときに降水推定誤差の大きな原因となっていた雨滴粒径分布に関するパラメータを算出し、より正確な降水推定を行うアルゴリズムである。この手法に関しては、過去の航空機等の二周波レーダ観測データに基づくアルゴリズム研究で提案されている手法を改良して、DPRに適用することを想定している。
 校正に関しては、打ち上げ後に内部校正また校正用レーダ反射器(ARC)を用いた外部校正を初期チェックアウト期間、及び定常運用期間中に行い、校正結果をレベル1処理に反映する。
 検証に関しては、算出する物理量だけでなく、アルゴリズムの中で仮定されているパラメータの検証を行うため、よく校正された地上降水レーダと、降水算出に必要なパラメータを直接測定できるような観測測器を1ヶ所に集めた検証サイトを設定する。GPMについては降雪が大きなターゲットとなるので、降雨と降雪のそれぞれに特化したサイトを南北に1ヶ所ずつ用意する予定である。この他長期的なプロダクトの検証を行うために、アメダスや国交省レーダデータなどのルーチン的に得られたデータを収集して、統計量を用いた長期トレンドの検証も行う予定である。
 主衛星及びコンステレーション衛星搭載の複数のマイクロ波センサ(マイクロ波放射計、マイクロ波サウンダ)のアルゴリズムの開発・検証は、GPMの目標のひとつである、高頻度・高精度の全球合成降水マップの作成にあたっての主要な入力データの作成のために実施する。
 レベル1(輝度温度)のアルゴリズムの開発と校正については、基本的には、各マイクロ波センサの開発・提供元である各機関がその義務を負っているが、センサ間の観測データの差違を吸収するために、国際的な協力の下で、衛星間校正の実施についても研究を進めている。
 レベル2アルゴリズムも、基本的には各マイクロ波センサの開発機関が開発・処理を行うが、GPMとしては統一したレベル2アルゴリズムを適用し、均質なレベル2降水量プロダクトを作成することを計画している。降水推定アルゴリズムの手法は、現在、複数存在し、すでに日本でも開発・運用の実績がある。GPMの降水推定アルゴリズムでは、TRMMの成果を引き継ぐとともに、マイクロ波放射計と降水レーダのデータを積極的に融合するアルゴリズムを検討している。
 レベル3アルゴリズムとなる全球合成降水マップ作成アルゴリズムは、上記の各センサの降水量プロダクトを時空間合成するのみならず、マイクロ波センサの観測がない領域での降水を推定するために、静止気象衛星の赤外センサによって観測される雲の移動情報を利用することも検討しており、日本でも研究・試験運用を実施している。
 GPMではJAXA(ジャクサ)内外の機関・プロジェクトとの協力や、委託・共同研究などを通じてアルゴリズム開発を行う。
 検証については、DPRアルゴリズムの検証で述べたこととも重なるが、陸上についてはアメダスや国交省レーダデータ、よく校正された雨量計網などルーチン的に得られたデータを収集して、統計量を用いた長期トレンドの検証を行う。海上などの地上観測網が発達していない領域については、DPRとの同時観測(主衛星搭載のGMIの場合は常に同期して観測しているが、コンステレーション衛星搭載のセンサの場合は、軌道が交差したときのみ)データを統計的に収集・比較し、検証を行う。

【質問番号 4−2】

【質問内容】

 P36の地上システムでは、運用の低コスト化等の提案があり、NASA(ナサ)との協力により共有のソフトウェア開発を分担するとのことだが、具体的にどのようにするか説明がほしい。

【該当箇所】

推進6−2−2

【回答者】

JAXA(ジャクサ)

【回答内容】

 JAXA(ジャクサ)は一般的に地球観測データの処理時にセンサ毎に読み出しを行うパッケージソフト(以降、I/Oツールキットという)を作成し、アルゴリズム開発者やデータユーザに配付している。
 GPMでは、センサ単独でI/Oツールキットを作成するのではなく、搭載センサであるDPR、GMI、及び副衛星のマイクロ波センサの取り込みも鑑み、複数のセンサの入出力を行うI/OツールキットをNASA(ナサ)主体でJAXA(ジャクサ)の協力により作成する。
 I/Oツールキット本体をNASA(ナサ)で開発し、DPRの各アルゴリズム固有のルーチンをツールキットに組み込む部分をJAXA(ジャクサ)が担当する。
 また、これにより設定されるデータのメタ情報として記述すべき項目については、GEOSS標準化の動きをふまえ、NASA(ナサ)とJAXA(ジャクサ)共同で検討している。

【質問番号 4−3】

【質問内容】

 システム選定及び設計要求において、コストも含めて複数のオプションが比較検討されているか評価にあたって着目することとなっているが、その点については提出された資料から把握することは不可能である。

【該当箇所】

推進6−2−2

【回答者】

JAXA(ジャクサ)

【回答内容】

 コストを含めた技術トレードオフ項目を以下の表に示す。また、この表を資料に追加する。

項目 採用 不採用 評価
レーダ方式 KuPR、KaPRとも
TRMM/PRと同じアクティブフェーズドアレイ
KaPRは、8ビームスイッチング、シリンドリカルパラボラアンテナ 不採用方式では要求性能を満たすことが困難。また、新規技術開発も必要となり、コスト的にも優位性は無い。
システム制御データ処理部 2レーダ同時制御とし、KuPRに主系、KaPRに冗長系を搭載 KuPR、KaPR単独制御とし、それぞれに主系/冗長系の2台搭載 コンポーネント数の削減が図れ、コスト的に採用方式の方が有利。技術的にも不採用方式ではビームマッチング制御が複雑になる。
ゲートアレイ FPGA
Field Programmable Gate Array
ASIC
Application Specific Integrated Circuit
コスト面では、FPGAの方が有利、技術的にはASICの方が実績があるが、製作後のプログラムの書き換えが出来ず、また、搭載ソフトウェアの最終仕様確定が早い時期に必要となる。
EMの構成 32系統部分モデル 128系統フルモデル コスト面では採用ケースが有利、設計及びシステム成立性の確認及び試験手順の確立というEMの目的は採用方式でも達成可能。