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3.   「みどり2」の開発経緯
(1) 「みどり2」の開発経緯
1 「みどり2」の開発経緯
 「みどり2」は、「みどり」の後継機として、平成7年度から開発を開始した。機構は、開発に当たり、「みどり」の衛星バスを使用し、「みどり」の開発成果を最大限に活用することによりコストを低減し、地球観測のための高度なシステムの開発を目標とした。
 「みどり2」開発期間中に、平成8年8月に打ち上げられた「みどり」が、平成9年6月に太陽電池パドルの不具合により機能停止に陥ったことを受け、機構は、宇宙開発委員会での原因究明及びその対策についての調査検討結果を踏まえ、「みどり2」の太陽電池パドル等の設計変更を行った。
 さらに、機構は、H−2A試験機2号機の打上げ結果を確実に後続号機の打上げに反映させることとし、その結果、「みどり2」の打上げが平成13年度から平成14年度に変更された。このため、延期期間を有効活用し、新たな手法の適用によりこれまで発見できなかった潜在不具合を抽出し、対策をとることで、更なる開発の確実性向上を図ることを目的として「みどり2」の特別点検を実施した。

2 「みどり2」の開発体制
 「みどり2」の開発体制は、製造企業がインテグレーション技術を蓄積し自立化を図ることが、今後の我が国の宇宙開発の発展にとって望ましいとの観点から、「みどり」で採用したインテグレータ方式(注)から、衛星バスに関してはプライム方式(注)を採用した。なお、太陽電池パドル等のバス機器の一部については、「みどり」の開発成果を最大限活用するとの観点から、機構が製造企業を予め指定している(図1−3−1)。
(注)
インテグレータ方式 :機構がサブシステムごとに複数の製造企業と契約し、機構が全体をとりまとめる方式
プライム方式 :機構が製造企業1社と契約し、その製造企業が一元的に全体をとりまとめる方式

(2) 「みどり」の機能停止を踏まえた設計変更
 「みどり」が、平成9年6月に太陽電池パドルの不具合のため機能停止したことを受け、宇宙開発委員会での原因究明及びその対策についての調査検討結果を踏まえ、機構は、同種の原因による異常が発生しないよう、「みどり2」の太陽電池パドル等に対策を講じている。
 太陽電池パドルについては、部分モデル試験等による検証を行った上で、定張力機構の見直し、ブランケットピンヒンジ部の構造等の見直しを実施した。設計変更の妥当性を確認するため、設計検証試験を実施した(表1−3−1)。
 また、軌道上の各種データ収集のため、視覚モニタや加速度センサ等の機器を追加した。

1) 太陽電池パドルハーネスの熱設計
1 「みどり」の太陽電池パドルハーネスの熱設計
 「みどり」の太陽電池パドルハーネスの熱設計では、ブーム部の展開機能不全が重大な不具合を招く(クリティカル)点であるとの認識から、前述のとおり、ハーネスの低温化を防止する目的でハーネスをMLIで巻く設計としている。
 熱解析においては、MLIが細長い形状で太陽電池パドルハーネスに巻かれ、MLIの面積が小さいことを考慮し、NASA(ナサ)の文献も参考にした結果、MLIの実効放射率(注)の値は、低温側に安全となる0.2を採用した熱数学モデルによる解析を行い、詳細設計を確定した。
 その後、太陽電池パドルの熱サイクル環境下での健全性評価の確認を目的とした熱真空試験を実施した。この試験では、ハーネスには微少電流を流しているが、軌道上でパドルに発生するレベルの電流は流していなかった。この熱真空試験の結果を基に、太陽電池パドルハーネス表面とそれを覆うMLIの外表面に装着した温度センサの実測データより、MLIの実効放射率の計算を行い、この計算結果が0.2となったことから、熱数学モデルが妥当であると判断した。

2 「みどり2」の太陽電池パドルハーネスの熱設計
 「みどり2」では、「みどり」と同様の理由から、太陽電池パドルハーネスをMLIで巻く設計とした。「みどり2」の熱解析においては、「みどり」の軌道上の太陽電池パドルハーネス温度を計測していないこともあり、「みどり」と同じ太陽電池パドルハーネスの熱数学モデルによる解析を行い、軌道上温度を予測して問題がないと判断し、詳細設計を確定した。
 その後、「みどり」の機能停止に対する対策として、太陽電池パドルの信号線が増加されたことにより、ハーネスの束ね方が変更されたことを反映し、再度、同じ熱数学モデルによる太陽電池パドルの熱解析を実施した。その結果、軌道上で予測される太陽電池パドルハーネスの最高温度が143ドと、部品メーカーが規定した許容温度(以下「許容温度」という。)(200ド)以下であることから、その温度に問題がないと判断した。
(注)
MLIの実効放射率: MLIで覆った対象物表面とMLI最外層間の各層の放射・伝導熱結合を、実効的に一枚の熱結合に置き換えたパラメータで、熱の逃げやすさをいう。

2) 多層断熱材(MLI)の接地
 人工衛星のMLIは、機構が定めた電磁適合性設計基準に基づき、原則として接地することが要求されている。同基準では、設計上接地が困難な場合には、個別に技術検討を行い、措置を決定することとしている。
 「みどり2」では、開発当時、低軌道衛星の帯電・放電現象について、放電に起因して重大な故障に至る不具合事例が報告されておらず、「みどり」での設計を踏襲し、太陽電池パドルハーネスを覆うMLIを接地しないこととした。

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