別紙1 |
今後のロケット開発の進め方について
1.ロケット開発の現状
(1) | 世界のロケット開発の現状 宇宙開発は、高度に複雑なシステムであることに加え、宇宙における実証データが極めて少ないという特徴から、品質・信頼性における不確実性を取り除くため、多くの打上げ機会を通じて、経験及びデータの蓄積を図ることが必要である。米国は、国防総省と航空宇宙局(NASA)において、我が国の10〜20数倍、欧州は、各国の宇宙機関と欧州宇宙機関において我が国の2〜4倍の予算・人員を投じて、宇宙開発利用を行ってきた。その結果、例えば、2002年3月末までに、米国は、デルタロケットで290回(うち、失敗16回)、アトラスロケットで136回(うち、失敗13回)、タイタンロケットで200回(うち、失敗20回)、欧州は、アリアンロケットで149回(うち、失敗9回)打ち上げるなど、多くの実績・経験を積み重ねてきた。こうした大規模かつ長期間にわたる取り組みにより、米国やロシアは、幅広い打上げ能力・種類(ラインナップ)を保持し、欧州は一つの型(アリアンロケット)により、世界の打上げ市場で大きな占有率を確保している。 |
(2) | 我が国のロケット開発の現状 我が国は、米国、欧州等と比較して小規模な体制で、国際的な技術水準を達成しており、H- ![]() |
(3) | 商業打上げ市場の動向 世界の商業打上げ市場は競争が激化している。当面の間、年間30機前後で推移する中、中国やロシア等が参入してきている。今後の市場動向を見る限り、今後10年程度は、5.5トン(静止遷移軌道)までの衛星需要が大半を占めると見られている。 |
2.今後のロケット開発の基本方針
(1) | 自律性の確保 宇宙開発利用活動の基本は、必要な時に必要な物資や機器を宇宙空間の所定の位置に展開する能力を確保することである。 |
(2) | 官民の役割分担の明確化と民間移管の促進 官民の役割分担を明確にした上で、自律性の確保に努める。民間の効率的かつ迅速な経営手法によりコスト低減・信頼性向上を進めるため、H- ![]() |
(3) | 国産ロケット優先使用 民間移管への過程を、国として促進するための方策として、政府が衛星を打ち上げる場合には、打上げ価格、衛星目的達成に重大な問題が生じない限り、国産ロケットの優先使用を基本とする。 |
(4) | 今後のロケット開発の優先度 限られた資源の中で、前述の目標を効率的に達成するため、「H- ![]() ![]() なお、「今後のロケット開発の進め方」については、宇宙開発委員会が適時適切な見直しを行い、内外の環境変化に柔軟に対応していく。 |
3.基幹ロケットの開発方針
3.1 輸送手段の中核としてのH-A
(1) | 我が国の基幹ロケットとしての位置付け 我が国としては、宇宙開発利用活動を視野に入れ、今後の多様な打上げ計画と整合性のとれた輸送手段を確保することが必要である。 現在、計画されている政府の衛星のうち、最も高い輸送系能力を必要とするのは、静止遷移軌道打上げ能力(以下、GTO)で6トン級である。他方、世界の商業打上げ市場では、今後10年程度は5.5トンまでの需要が大半を占めている。 したがって、我が国が自律的な宇宙開発利用活動を展開するためには、GTO6トンまでの打上げ能力を持つH- ![]() |
(2) | H-![]() H- ![]() |
(3) | H-![]() 基幹ロケットとして位置付けるH- ![]() |
(4) | H-![]() H- ![]() |
3.2 H-A増強型の開発の在り方
使い切り型ロケットが宇宙輸送系の根幹であることは当分続くものと予想されることから、H-Aを我が国の基幹輸送手段として、将来にわたって打上げを確実に続けていく。そのためには、ロケット開発・打上げを通じて技術水準の維持・向上、技術の伝承が肝要である。国際宇宙ステーションへの物資補給、衛星の複数打上げによるコスト低減、衛星の大型化に対応するため、H-
A標準型以上の能力を持つ輸送系(H-
A増強型)を開発する場合には、H-
A標準型を基本に民間に主体性を持たせた官民共同開発を行う。そのため、官民の関係者からなる作業チームを文部科学省に設置し検討を行う。宇宙開発委員会はその結果報告を聴取する。
4.中小型ロケットの開発の在り方
政府の衛星については、H-A標準型を優先的に使用していくこととするが、H-
A標準型の補完、柔軟な中小型衛星・科学衛星の打上げ手段確保の観点から、当面の中小型ロケットの開発については、以下のように進めていく。
4.1 民間提唱によるGXロケット開発について
宇宙開発事業団が研究開発を行うLNG推進系について詳細な評価を行った結果、別添のとおり、総合的に判断してLNG推進系飛行実証プロジェクトについては、開発に着手せず、研究を継続することが妥当であると判断した。
なお、LNG推進系の開発は、GXロケット構想自体の内容及び進捗状況に左右される。また、宇宙開発事業団の研究開発は、技術の民間移管を通して、民間の活力を活かしつつ、宇宙開発利用の諸目標に貢献することが期待されている。このため、今回、技術移転先として予定されているGXロケット構想の意義等についても議論を行った。
その結果、
(1) | 我が国が輸送系において自律性を確保する方針との整合性 |
(2) | 国際市場における競争力の優位性確保の見通し |
(3) | 官民の役割分担の在り方 |
などの論点が出された。別添で示されている課題(a)〜(c)への今後の対応を踏まえて、改めて、宇宙開発委員会が評価を行うことが適当である。
4.2 科学衛星の打上げ手段
(1) | 科学衛星打上げのためのロケット 我が国の宇宙科学は、大型中心の欧米とは異なり、ほぼ年1機の中小型衛星の打上げにより、世界水準に成長した。今後10年余りのうちに我が国で打ち上げることを想定している科学衛星は、M− ![]() ![]() |
(2) | 今後の科学衛星の打上げ手段 政府の衛星の打上げにはH- ![]() ![]() なお、M− ![]() |