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我が国の宇宙開発利用の目標と方向性

平成14年6月26日
宇宙開発委員会

−  目  次  −

 

1. 宇宙開発利用の理念

2. 我が国の宇宙開発利用の目的と基本方針
(1) 我が国の宇宙開発利用の目的
(2) 我が国の宇宙開発利用の基本方針

3. 我が国の宇宙開発利用の方向と新機関の役割
(1) 基本的考え方
(2) 新機関の機能

4. 新機関における重点化の方向
(1) 新機関における重点化に際して考慮すべき共通的課題
(2) 今後のロケット開発の進め方
(3) 今後の衛星開発の進め方
(4) 国際宇宙ステーション(ISS)計画の今後の進め方
(5) 将来の宇宙開発利用への展開

5. 宇宙開発活動のマネージメント
別紙1 今後のロケット開発の進め方について
別紙2 今後の衛星開発の進め方について
別紙3 国際宇宙ステーション(ISS)計画の今後の進め方について
別添 「LNG推進系飛行実証プロジェクト」の評価結果について
参考1 宇宙開発委員会における審議経緯
参考2 審議に参加していただいた有識者
参考3 計画・評価部会及び評価小委員会構成員
参考4 利用部会構成員


1. 宇宙開発利用の理念

  20世紀の後半、人類は初めて宇宙に進出した。これは、地球生命の40億年にも及ぶ歴史において、約400万年前の人類誕生、約500年前の米大陸への到達、約100年前の空への進出に続く、人類史上、画期的な飛躍の始まりを意味する。
  資源問題、食料問題、地球環境問題など、宇宙船地球号の有限性が明らかになりつつあることから、我々は、21世紀を宇宙への本格的な進出の時代と位置付け、永続的発展の基盤を手に入れるべきである。
  このような認識の下、我が国は、国民のみならず人類共通のフロンティアとして、無限の可能性を秘めた宇宙を最大限に活用し、各国とともに人類の繁栄と文明の発展に貢献する。

2. 我が国の宇宙開発利用の目的と基本方針

(1) 我が国の宇宙開発利用の目的
  我が国における宇宙開発利用の目的については、1国及び国民の安全の確保、2国民生活の豊かさと質の向上、3知的資産の拡大とする。
国及び国民の安全の確保は、国が本来取り組むべき最重要課題であり、衛星を利用した情報収集、非常通信等は外交、防衛等の安全保障、大規模災害への対応等において大きな役割を果たす。
通信・放送、測位、気象観測、地球環境観測などの衛星利用は、既に国民生活に深く浸透している。また、宇宙科学を含む宇宙開発利用は、最先端の科学技術を結集して初めて可能となるものであることから、技術革新の原動力となるとともに、その拡充は、宇宙関連産業をはじめとする産業の活性化及び雇用・所得の増加などを通じて国民の豊かさの向上に貢献する。
宇宙科学は、地球やそこに住む生命がどのようにして生まれたか、宇宙や太陽系がどのようにして形成され、これからどうなるのかといった人類の根元的な疑問に答えようとする分野であり、大きな意義がある。その成果として得られる新しい知見は、人々の宇宙観、地球観、生命観に大きな影響を与え、新たな文明の展開をも促す可能性を持っている。

(2) 我が国の宇宙開発利用の基本方針
  これまで我が国は、欧米先進諸国に比べて極めて少ない資金・人材ながら、効率的な宇宙開発を行い、発展を遂げてきた。
  しかしながら、これまでの宇宙開発は、投入してきた資源量に比べて活動範囲が広がりすぎていた傾向があることから、経験、ノウハウの蓄積が不十分であり、実利用の促進に当たって課題がある。また、一部の宇宙関連技術は、世界水準に達しているが、全体として見れば信頼性を含む技術力の欧米との格差は、歴然としている。
  一方で、我が国の経済社会は長期にわたる低成長時代に入っており、今後も相当の期間にわたり、厳しい財政事情が続くと考えられる。
  このような我が国の状況とは関わりなく、世界の宇宙開発利用は、欧米を中心に、長期的視点に立って今後も着実に推進されていくものと考えられる。
  我が国としては、このような状況の下、宇宙開発利用に係る研究開発が、その成果が結実するまで長期の開発期間を要することをも考慮し、今後30年程度の展望の下で、以下の基本方針に則り、我が国らしい特色のある宇宙開発利用の実現を目指す。

1 科学技術創造立国の立場から戦略的に推進
  我が国は、国の発展、国民の福祉の向上、世界への貢献の基盤を科学技術に求める科学技術創造立国を目指している。
  宇宙開発利用は、国の存立基盤の確保、産業の発展、国民生活の豊かさと質の向上、知的な国際貢献などにおいて大きな役割を果たす。宇宙開発は、それ自体が先端科学を結集する総合的な科学技術分野であるとともに、そこで得られた成果もまた様々な分野の先駆けとして、広汎な分野における技術突破をもたらし、これらを通じて幅広い技術革新の進展を促すものである。
  これらの観点から、宇宙開発利用については、科学技術創造立国の実現のための戦略的に国が継続的に投資していく。その際、失敗の度にその取り組み姿勢が動揺することのないよう、確固たる信念の下で宇宙開発利用を推進する。

2 世界トップクラスの技術力の獲得による先導的地位の確保と世界最先端の宇宙科学の推進による知的存在感のある国の実現
  宇宙開発は、最先端技術の結集によって初めて可能となるものであり、国の技術力の象徴である。このため、我が国と欧米との技術力の差を踏まえ、全ての分野ではなく、重要な分野で世界に誇れるトップクラスの信頼性を含む技術力を獲得し、国際社会から目標として評価されるに足る先導的地位を確保する。
  また、世界最先端の宇宙科学を推進することにより、人類共通の知的資産の拡大に貢献し、国際社会において尊敬される国となり、国民が世界に向けて誇りを持つことができる国を目指す。

3 自律的な宇宙開発利用活動を展開するための技術力を独自に保持
  宇宙関連技術は、産業競争力向上につながる技術を多く含むのみならず、広い意味での安全保障に密接に関係する戦略的技術であることから、国の存立にとって基盤的であり、国として取り組むことが不可欠な領域である。したがって、かかる戦略的技術、枢要な部品等は海外から常に制限なく導入できるとは限らないことに留意し、他国に依存しないで宇宙開発利用活動を自律的に展開するため、基盤技術を含め必要な技術力を独自に保持することを目指す。

4 国際協力の推進
  宇宙開発利用は、本来、全地球的規模のものであり、国家の枠を超えて各国が協調しながら人類の利益のために永続的に取り組むべき活動分野である。特に情報格差の是正や地球環境問題への対応など、国際的な協調によって大きな成果をあげ得る分野もあり、国際協力の意義は大きい。また、宇宙開発利用は、比較的大規模な経費を必要とし、リスクの高い活動であることから、我が国としても自律性を堅持しつつ、宇宙開発利用における国際協力を戦略的に推進し、先進国に相応しい国際的視野に立ったプロジェクト構想を先導する。なお、その推進に当たっては、我が国と関係が深いアジア・太平洋地域に対する特別の配慮を必要とする。

我が国の宇宙開発利用の方向と新機関の役割

(1) 基本的考え方
  我が国の宇宙開発利用の目的及び基本方針を踏まえ、新機関の在り方についての基本的考え方を整理すると、次のとおりである。
新機関は、ロケットや衛星の開発、打上げ、追跡等に必要な技術・経験を蓄積してきた宇宙開発事業団、宇宙や航空に関する基盤技術の研究開発を行ってきた航空宇宙技術研究所、世界最先端の宇宙科学を推進してきた宇宙科学研究所の機能を引き継ぐものであり、宇宙分野の基礎研究から利用を見据えた研究開発までを担う一体的研究開発機関とすべきである。
  これら宇宙3機関の統合に当たっては、それぞれの人材、経験、データ、ノウハウを結集・融合し、宇宙科学を含む世界トップクラスの宇宙開発及び航空科学技術の中核的機関を目指すべきである。
  また、我が国の宇宙開発利用は30年以上の経験を積み、新機関以外の公的研究開発機関や民間も宇宙関連技術を蓄えてきている。国においても各省庁がそれぞれの行政目的を効率的・効果的に達成するために宇宙開発利用を積極的に推進することが大切である。安全保障・危機管理、通信・放送、国土管理、交通、気象、地球環境、農林水産など多方面において公共サービス機能を向上させるとともに、民間サービスの発展、ひいては広汎な宇宙産業の発展が期待される。
  関係省庁等によるこのような多角的な宇宙開発利用を促進する政策の展開が必要不可欠である。

(2) 新機関の機能
  上記のような基本的考え方に基づき、新機関の機能を整理すると次のようになる。

研究開発利用の推進
宇宙輸送系技術の完成と維持・発展による自在な打上げ手段の確保
宇宙3機関が有する人材、科学技術の蓄積を十分に活用した強力な技術的基盤の構築(基盤技術開発、先端技術開発等)
官民の宇宙利用の拡大に資する技術開発の推進
情報通信、地球観測等技術試験のための衛星による宇宙実証の推進
射場、地上施設の整備・運用
宇宙科学の推進
航空科学技術の推進

社会との連携・協力
産業の発展に資する強固な産学官の連携・協力体制の構築
人的交流の推進
開かれた柔軟な研究開発体制の構築
共同研究開発の推進、技術実証機会の提供
技術移転、民間委託の推進
大型試験施設・設備の供用の推進
利用の発掘
宇宙教育をはじめとする国民理解の増進等社会との対話の推進

国際協力
海外との共同研究開発、人的交流など国際協力の推進

人材養成
次世代の研究開発を担う人材養成、個人の自由な発想による研究の支援

4. 新機関における重点化の方向

(1) 新機関における重点化に際して考慮すべき共通的課題

1 宇宙用部品の確保も含めた基盤技術の確立
  我が国の宇宙開発は基盤技術が不足しており、全分野にわたり基盤技術を確立することが急務となっている。
我が国において、自律的な宇宙開発利用活動を支えるためには、我が国の得意分野を生かしつつ、高い信頼性、安全性及び効率化を実現する基盤技術の確立に傾注し、部品レベルに至るまで宇宙機器を、国内で設計・製造・運用・利用できる能力を維持できる体制を確立・保持する必要がある。
  欧米の宇宙産業界においては、企業統合により、結果としてこのような体制が保持されているが、我が国においては、どのような方策・手法によりこの課題に取り組むべきか、政府・産業界において検討がなされる必要がある。また、新機関もこの課題への対応において、積極的な役割を果たすべきである。
  特に、宇宙用部品については、認定部品の製造システムを維持する企業が減り、宇宙開発事業団が認定している宇宙用部品の数が減少している。このため、新機関において民生部品の評価・研究による国産宇宙用部品の拡大等、長期的な宇宙用部品の開発戦略や安定的な部品の確保の方策について検討を進めることが必要である。
  その上で、ロケット開発においては、世界最高水準の信頼性の確立を目指し、衛星開発においては、高信頼性の確立と同時に低コスト化の実現を目指す。

2 宇宙への参加を容易にする仕組み(「オープンラボ」)の構築
  先端的研究開発の進展は、優れた個人の創意と発想によるところが大きいことに留意し、広く内外の優れた発想を活用し、宇宙開発の場で世界をリードできる先端的な技術開発を行い、新たな宇宙開発利用の可能性を拡大する「オープンラボ」を構築する必要がある。この「オープンラボ」への参加者は、お互いにリスクを負いつつ、資源を持ち寄って先端的技術の共同研究を行い、例えば、超小型衛星、小型衛星等を幅広く活用して、極めて迅速に宇宙実証を行う。また、産業界にとって魅力ある場とするためには、得られた技術的成果や観測情報が、商業市場にも展開してビジネスとして利益が得られるような流れを作ることも重要である。さらに、宇宙への参加者を拡大するため、非宇宙産業等と宇宙関係者との橋渡しを行うと同時に、大学、地域企業、中小企業を中心とした新しい芽を育てるための基盤を提供する。

3 官民の連携・協働体制の在り方の検討
  我が国の宇宙開発利用活動の自律性を確保するために必要な技術を効率的に開発・保持するため、開発した技術の民間への移転を含め、官民の適切な役割分担の下で連携・協働体制を強化する必要がある。そのため、官民の関係者からなる作業チームを文部科学省に設置し、官民の連携・協働体制の在り方について検討を行う。宇宙開発委員会は、その結果報告を聴取する。

(2) 今後のロケット開発の進め方
  情報収集衛星など国として重要な衛星を必要なときに所定の位置に展開できる独自の輸送能力を保持することは、国及び国民の安全の確保に密接に関連した優先度の高い活動である。
  当面の目標として、H−2A標準型ロケットについて世界最高水準の信頼性の確立に傾注するともに、官民の役割分担を明確にした上で、H−2A標準型ロケットの技術成果を民間に移転し、民間移管の促進を図る。また、信頼性確立の一つの方策としても、政府が衛星を打ち上げる場合には、国産ロケットの優先使用を基本とする。
  具体的な今後のロケット開発の進め方については、我が国及び世界のロケット開発の現状や商業打上げ市場動向を踏まえ、別紙1のとおりとする。

(3) 今後の衛星開発の進め方
  政府は、人工衛星を用いて、1通信・放送・測位、2地球観測、3宇宙科学研究、4情報収集、5航空交通管制等の宇宙開発利用を推進している。
1 通信・放送・測位及び2地球観測については、このうち、「我が国の宇宙開発利用の意義への貢献が大きいものであること」、「研究、開発及び利用開拓を一体とした技術開発であること」、「産業界および関係省庁と新機関との円滑な連携・協力体制を構築できるものであること」、「国際協力の戦略的発展が考えられること」、「宇宙関連技術の国際競争力の強化に資するものであること」等の要件を満たすと考えられるものを、重点的に先導的基幹プログラムとして位置付け、地上における利用系の構築も視野に入れて、効率的・効果的に技術開発を進める。その際、衛星の低コスト化と高信頼性の実現を目指す。
  1の通信・放送等の分野では、世界的なIT革命の進展に見られるように技術革新が速く、他の分野に比べて国民生活に直結した実利用が進んでおり今後も利用の拡大が期待されていることから、関係機関と連携・協力し、積極的かつ迅速に先端的な技術開発を推進していく。
  2の地球観測は、安全確保・危機管理をはじめとして、国土管理、気象、地球環境、農林水産分野などに活用され、公共性、国際性が極めて高い活動であるため、国が主体的に実施すべき活動である。また、この分野は、多くの省庁にまたがる場合が多いことから、国全体として効率的な活動を実現するためには、新機関が中核となって、プロジェクトの推進を通じてこの分野の利用促進に積極的に取り組む。
  これらの分野における具体的な今後の衛星開発の進め方については、我が国の衛星開発の現状等を踏まえ、小型衛星による迅速な宇宙実証を視野に入れつつ、別紙2のとおりとする。
  また、3宇宙科学研究については、国民の精神面においてはかり知れないほどの大きな価値を生み出す分野であり、その重要性は、物質的な便益の向上に匹敵するものである。したがって、研究者の自由な発想に基づいた運営が可能となることに留意しつつ、今後も着実に宇宙科学を推進する。
  なお、4情報収集及び5航空交通管制については、政府による利用の段階へ進んでおり、その計画を着実に進めていくことが重要であるが、宇宙開発の中核的機関である新機関としても適切な協力を行う。

(4) 国際宇宙ステーション(ISS)計画の今後の進め方
  国際宇宙ステーション(ISS)計画は、人類として本格的に宇宙に活動の領域を広げていく大きな一歩となる国際協力プロジェクトであり、我が国としてこれまで、日本の実験棟(JEM。愛称「きぼう」)の開発をはじめ着実に計画の推進を図ってきた。
  一方、米国では、ISS計画の予算超過に端を発して、現在NASAにおいて各種見直しの検討がなされている。また、宇宙飛行士のISSでの常時滞在が開始される中、民間企業の参加など、ISSの利用及び運用に関する検討が世界的になされている。
  このようなISS計画を取り巻く近年の環境の変化に対応し、利用計画の重点化、民間活力の導入による運用・利用体制の効率化等の検討を行うとともに、JEM打上げを含むスケジュール及び資金計画について必要な見直しを行い、今後とも引き続き、安全で確実なJEMの打上げ及び有意義な運用・利用の実施に向けて、効果的・効率的にISS計画を推進していく。(別紙3参照)

(5) 将来の宇宙開発利用への展開
  21世紀は宇宙の世紀であり、宇宙開発利用の成果が花開く時であると認識し、これからの宇宙開発利用の新展開のための若木を育てていくことも新機関にとって極めて重要な役割である。そのため、将来を見据えた再使用型輸送系及びその前段階となる使い切り型ロケットの研究開発については、先端的・基盤的なロケット技術の研究開発の一環とし、新機関の中核的業務として位置付け、重要な要素技術の開発を行っていくとともに、開発すべき輸送系の在り方等について、長期的視点に立ち、宇宙開発委員会での検討を継続する。その際、最先端の研究開発を意欲的に行い得るような研究開発環境の整備(施設・設備の整備・更新等)及び将来の射場システムの在り方についても検討する。なお、再使用型輸送系に関する研究開発の本格的な着手は、基礎的な研究開発の成果及び海外の趨勢を十分に評価した上で決定する必要がある。
  また、衛星分野では、将来、多様な利用分野に用いられると予想される編隊飛行技術、高性能観測センサ技術、さらなる超高速通信技術等の先端的技術開発を推進する。
  さらに、将来は、宇宙観光も含め宇宙空間における人類の活動が拡大することが予想されることから、ISSでの活動経験を通して、有人輸送技術の基礎的な調査研究を行い、知見を積み重ねていくことが必要である。

5. 宇宙開発活動のマネージメント

  プログラムとは、政策として決定される中長期の計画であり、一般に複数のプロジェクトから構成される。プログラムを効率的・効果的に推進するためには、プログラムの大きな目標に沿って、構成される各プロジェクトがお互いの成果を引き継ぎながら連綿と展開していくことが必要である。また、プロジェクトの立案に当たっては、環境の変化に柔軟に対応し、適時適切な評価を経て、重点化及び整理・合理化・削減を図ることが重要である。
  プロジェクトを着実に実施するため、宇宙開発委員会は、「宇宙開発に関するプロジェクトの評価指針」に則り、プロジェクトの開発着手前に事前評価、終了時に事後評価を実施する。また、開発着手後に、大きな環境変化等があった場合には、中間評価も実施する。これらの結果については、公表して国民への説明責任を果たす。

-- 登録:平成21年以前 --