ここからサイトの主なメニューです

新しい教育課程の実施に対応した教科書の改善について(建議)(平成10年11月13日教科用図書検定調査審議会)

1998年11月13日 答申等
教科用図書検定調査審議会

目次

  • はじめに
  • 第1部 これからの教科書に求められるもの
    1. これからの教育内容の改善の方向
    2. これからの教科書に求められる内容・記述の在り方
  • 第2部 新しい教育課程の実施に対応した教科書の改善
    1. 基本的考え方
    2. 教科書の著作・編集の在り方
    3. 教科用図書検定基準の改善
    4. 検定手続等の改善
  • 第3部 教科書の改善に関連して
    1. 教科書採択に当たって
    2. 今後の検定スケジュール
  • 今後の検討について
  • 今後の教科書検定スケジュール

はじめに

 教科書は、「教科課程の構成に応じて組織排列された教科の主たる教材」として、児童生徒の教育に極めて重要な役割を果たしている。
 このように「主たる教材」として重要な役割を果たす教科書は、民間による著作・編集、文部大臣による検定、教育委員会等による採択等の手続を経て、児童生徒に提供されるものであり、よりよい教科書の作成のためには、それぞれの段階での充実・改善が図られる必要がある。
 その中にあって、教科書検定制度は、昭和22年に制定された学校教育法(昭和22年法律第26号)に基づき、著作者・編集者の創意工夫を生かしながら、教育水準の維持向上、教育の機会均等の保障、適正な教育内容の維持、教育の中立性の確保などを実現することを目的として実施されている。この制度の果たす役割の重要性にかんがみ、本審議会においては、これまでも、検定制度の在り方について検討を行い、適時その改善が図られてきたところである。

 教育課程審議会においては、平成8年8月27日、文部大臣から諮問を受け、完全学校週5日制の下で、ゆとりのある教育活動を展開し、子どもたちが自ら学び自ら考える力などの「生きる力」の育成を重視した教育の実施を目指して、教育内容の厳選、選択学習の幅の拡大など教育課程の基準の改善について検討を行い、本年7月29日、文部大臣に答申を行った。そこでは、特に教科書に関し、教育課程の基準の改善の趣旨が適切に反映された教科書が作成されることが大切である旨の指摘がなされている。
 また、行政改革委員会からは、教科書検定に対する国民の関心に応え、教科書に対する国民の信頼性を高める観点に立って、平成9年12月12日、検定意見の文書化を含む教科書検定の一層の透明化が必要である旨の指摘がなされている。
 本審議会は、以上のような指摘も踏まえ、本年4月17日から、教科用図書検定調査分科会制度改善特別部会を中心に審議を行い、1)これからの教科書に求められるもの、2)検定基準・手続等の改善方策について検討を行ってきたが、以下のように結論を得たので、ここに建議するものである。
 なお、教科書の改善は、検定制度の改善のみならず、著作、編集、採択及び発行の各段階を通じた改善が図られてこそ実効あるものとなると考え、以下の提言は、検定基準・手続等の改善のみならず、教科書の著作・編集や採択、発行等の在り方の改善を含むものとした。

第1部 これからの教科書に求められるもの

 今日、我が国の社会においては、国際化、情報化、科学技術の進展、環境問題への関心の高まり、少子・高齢化など社会の様々な面での変化が急速に進んでおり、これらの変化は今後も一層激しさを増すものと考えられる。
 今般の教育課程審議会答申は、このような社会の変化にかんがみ、多くの知識の習得に偏りがちであったこれまでの教育の基調の転換を図り、生涯学習の基礎として、自ら学び自ら考える力、他人を思いやる心や感動する心、たくましく生きるための健康や体力などの「生きる力」を育成することが重要であるとしている。また、特に教科書に関し、教育内容の厳選、学び方や問題解決能力の育成の重視など、教育課程の基準の改善の趣旨が適切に反映された教科書が作成されることが大切であると指摘している。
 教科書は、授業における教師の指導の下に使用されることを前提としたものであるが、同時に、児童生徒が学習を進める手掛かりとなるものでもある。したがって、このように、教育課程の基準の改善が図られようとしている今日、教科書においても、知識の習得・伝達に偏りがちで網羅的・羅列的であると指摘される状況を改め、この改善の趣旨を適切に踏まえたものとならなければならない。
 このため、本審議会においては、まず、教育課程審議会等において示された教育課程の基準の改善のねらいを踏まえ、これからの教育内容の改善の方向を明らかにし、そして、教科書としての内容・記述の在り方はいかにあるべきかについて検討を行った。

1 これからの教育内容の改善の方向

(1)自ら学び自ら考える力を育成すること。

 激しい変化が予想されるこれからの社会においては、多くの知識を一方的に教えることになりがちであったこれまでの教育の基調を転換し、学習者である児童生徒の立場に立って、自ら学び自ら考える力を育成することを重視した教育を行うことが極めて重要である。そのためには、知的好奇心・探求心をもって、自ら学ぶ意欲や主体的に学ぶ力を身に付け、論理的に考え判断する力、自分の考えを的確に表現する力、問題を発見し解決する能力を育成し、創造性の基礎を培い、社会の変化に主体的に対応し行動できるようにすることなどを重視した教育活動を積極的に展開していくことが必要である。

(2)豊かな人間性、社会性を育成すること。

 教育は、本来子どもたちの豊かな人間性の育成、自我の形成、個性の伸長を扶けるものである。子どもたちを取り巻く環境の変化、いじめ問題等の深刻さ、社会性の不足、規範意識の低下、都市化や少子化などに伴う社会体験や自然体験の減少などを考えるとき、自我の形成と調和のとれた豊かな人間性や社会性の育成を図ることを、これからの学校教育において一層重視する必要がある。

(3)国際社会に生きる日本人としての自覚を育成すること。

 国際化が急速に進展する今日、国際社会に生きる日本人としての自覚を育成するという視点に立った教育の展開は、今後一層重要なものとなっている。このためには、我が国や郷土の歴史、文化、伝統に対する理解と愛情を深めるとともに、広い視野に立ち、異文化を理解し、これを尊重する態度や異なる文化をもった人々と共に協調して生きていく資質や能力を育成することを一層重視する必要がある。

(4)教育内容の厳選を徹底し、基礎・基本の確実な習得を図ること。

 前述のように、これまで知識の習得に偏りがちであった教育から、自ら学び自ら考える力などの「生きる力」を育成する教育へとその基調を転換していくためには、ゆとりのある教育課程を編成することが不可欠である。そのためには、教育内容を厳選し、基礎・基本の確実な習得を図ることが強く求められる。そして、もっぱら覚えることに追われていると指摘されるような状況をなくし、厳選された基礎的・基本的内容について、児童生徒が繰り返し学習するなどにより、ゆとりの中で確実に習得させることが必要である。

2 これからの教科書に求められる内容・記述の在り方

(1)正確かつ公正で、適切な教育的配慮が施されたものであること。

 教科書は、教科の主たる教材として、児童生徒に対し、個人として、また、国家・社会の一員として社会生活を営む上で必要な基礎的・基本的な内容の学習を確保し、かつ、心身の発達過程にある児童生徒に提供される図書である。したがって、その内容は、児童生徒の心身の発達段階を考慮し、適切な教育的配慮の下、正確かつ公正なものでなければならない。児童生徒自らが主体的に学習することを重視した教育への転換を図っていくことを考えるとき、このような観点は一層重視されなければならないと考える。
 このため、教科書の著作・編集に携わる者は、教科書が、児童生徒のための図書であり、自己の学術研究の発表の手段ではないことを改めて認識し、正確で適切な内容であるか、一面的な見解に偏らず、広く受容されている内容となっているか、公正な内容となっているか、児童生徒の既習の知識や理解力、批判力等に即したものとなっているかなどの観点から、十分な吟味がなされなければならない。

(2)基礎・基本の確実な習得を助けるものであること。

 今回の教育課程の基準の改善においては、完全学校週5日制の下で、創意工夫を生かしたゆとりのある教育活動を展開し、児童生徒に自ら学び自ら考える力などの「生きる力」を育成することを重視する観点から、教育内容を厳選し、基礎・基本の確実な習得を図ることが特に強く求められている。
 教科書は、この教育課程の基準に基づいて作成された教科の主たる教材であり、この教育内容の厳選の趣旨を踏まえた教科書の作成が強く求められるのは当然である。教科書に盛り込まれる内容は、枝葉末節の知識を扱うのではなく、学習指導要領に定める教科の目標、内容等に基づき、その後の学習や生活に必要なものとなっているか、児童生徒の心身の発達段階に即して適当か、真に継承していくべき内容であるかなどの観点から、絶えず十分な吟味がなされ、基礎的・基本的な内容となるものでなければならない。

(3)学び方、考え方の習得が図られるものであること。

 激しい変化が予想される社会においては、いかに社会が変化しようと、自分で課題を見つけ、自ら学び自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力を育成することが特に重要である。
 このような視点に立って教科書の内容を考えるとき、これからの教科書は、知識、技能の網羅的な詰め込みに陥ることなく、「何を学べばいいのか」といった学習のねらいや目標、「いかにして学ぶのか」といった学習の仕方が児童生徒にしっかりと認識され、児童生徒自らが学習の方法を工夫し、考えるきっかけとなり、また、それらを助けるものとなることが必要である。
 教科書については、学習の結果として得られる知識の記載に偏りがちで網羅的・羅列的であるとの指摘もある。上記のような観点から、計画の立て方、調べ方、観察や実験の仕方、話し合いや報告の仕方といった学習活動の過程が分かり、児童生徒自らが工夫し、考えることができるような教材の構成となるように配慮し、学習する内容の理解に至る過程が重視されるべきである。

(4)児童生徒にとって分かりやすく、ていねいなものであること。

 児童生徒の主体的に学習する意欲を高め、自ら学び自ら考える力など「生きる力」の育成に資するものとなるためには、教科書が、学習意欲を喚起し、学習の課題や方法を示すものとして、また、学習内容を整理し、理解させるものとして、児童生徒の学習の確かなよりどころとなるものでなければならない。
 教科書は、予習の場面、授業における導入・展開・まとめの場面、自学自習や復習の場面といった様々な場面において効果的に使用されるべきものである。そのためには、児童生徒が自分で読み、つまずくことなくその筋道が理解でき、自分で考え、自分なりの疑問や結論を引き出せるようなものとなり、また、授業での学習内容を確実に理解し、習得するために、学習内容を整理、点検することができるものでなければならない。
 このためには、教科書の著作・編集に携わる者は、教科書が初めて学ぶ児童生徒のための図書であることを改めて認識し、より分かりやすく、よりていねいで、また、児童生徒の思考過程や感性に合ったものとなるようにすることが必要である。例えば、主語・述語は明確で、文章の長さは適切であるか、文章は児童生徒の思考過程に即しているか、論理的な飛躍はないか、言葉の意味は理解できるものになっているかなどの観点から、十分な吟味がなされるべきである。

(5)心に響く美しいものであること。

 現代の子どもたちは、テレビなど様々なメディアに絶えず接し、まさに映像文化、視聴覚文化の中で育った世代であると言える。それに伴って活字による言語表現への接触は少なくなりつつあり、基本的に文章を中心とした教科書は、児童生徒にとって活字に触れる貴重な機会でもある。
 活字による言語表現は、論理的、抽象的な思考力、想像力、情操を育てる上で欠かせないものである。このような文章記述の真の価値、意義を深め、豊かな人間性や社会性、国際社会に生きる日本人としての自覚を育成するものとなるよう、より児童生徒の心に響く教材を選択するなどにより教科書の内容を適切に構成する必要がある。また、教科書の文章は、論理的に構成され、知的好奇心に訴え、美しい表現でなければならない。
 また、教科書における写真・挿絵・図表などの視覚に訴える表現は、児童生徒に現実にはなかなか捉えがたい事物、現象を分かりやすく描き出し、児童生徒の知的好奇心を喚起し、学習意欲を高め、また、豊かな感性を育てる上で大きな役割を果たすものである。先に述べたように、教科書は、基本的には文章を中心としたものではあるが、これら視覚的表現の利点を生かし、文章表現との一層の有機的連携を図ることが求められる。したがって、写真、挿絵、図表などの掲載に当たっては、学習内容と深く関わるものであるか、学習効果を高めるものであるかといった観点から入念な配慮を施しつつ、児童生徒の心身の発達段階に応じた積極的な工夫がなされるべきである。

(6)知識・技能が生活において生かされるよう配慮されていること。

 教科書を基礎的・基本的な内容に厳選すると、ともすれば、抽象的な内容に陥り、児童生徒が実生活で見聞し、体験することから遊離しがちとなる。学習内容を実生活と密接に関連させることは、児童生徒の学習意欲を喚起し、身近な課題を学習し解決していこうとする態度や能力を育成する上で極めて有効であり、自ら学び自ら考える力を育成する上で意義が大きいと言える。特に、児童生徒の社会体験や自然体験が不足している現状などを考えるとき、その意義は一層重要であると考える。
 このことについては、教師の指導の在り方に負うところが大きいと思われるが、教科書においても、例えば、取り上げる事例や教材などを児童生徒にとって身近な例に求めたり、教科書に掲載された内容が、実生活を見直し、実生活へ活用できる基礎となるような工夫を図ることなどにより、習得した知識や技能が実生活において生かされ、総合的に働くようにする配慮がなされるべきである。

 本審議会としては、教科書の著作・編集に当たって、以上のような観点が生かされ、質の高い教科書が作成されることを強く望むものである。また、今後とも教科書の質的改善に関する調査研究が進み、教科書の著作・編集の向上に資するものとなることを期待するものである。

第2部 新しい教育課程の実施に対応した教科書の改善

 第1部においては、今回の教育課程の基準の改善の趣旨を受け、これからの教科書に求められる在り方を述べた。これを踏まえ、教科書の質的改善を図り、かつ、先の行政改革委員会からの指摘等に適切に応えるためには、検定制度の改善をはじめ、民間による著作、編集及び発行、教育委員会等による採択、学校での使用等の各段階を通じた改善が不可欠であり、以下に、各段階における具体的な改善方策について述べることとする。

1 基本的考え方

(1)教育課程の基準の改善の趣旨を踏まえた質の高い教科書

 今般の教育課程審議会答申においては、教育内容の厳選、学び方や問題解決能力の育成の重視など、教育課程の基準の改善の趣旨が適切に反映された教科書が作成されることが大切である旨の指摘がなされている。このことを踏まえ、今後の教科書においては、第1部で述べたように、1)正確かつ公正で、適切な教育的配慮が施されたものであること、2)基礎・基本の確実な習得を助けるものであること、3)学び方、考え方の習得が図られるものであること、4)児童生徒にとって分かりやすく、ていねいなものであること、5)心に響く美しいものであること、6)知識・技能が生活において生かされるよう配慮されていることが求められている。
 このような観点に立って、教育課程の基準の改善の趣旨を踏まえた質の高い教科書が作成されるよう、発行者の取組を含め、適切な改善を行う必要がある。

(2)より開かれた教科書制度

 教科書は、学校教育において重要な役割を果たし、国民の関心も高く、よりよい教科書を求める国民の要請に適切に応え、教科書の信頼性を高めることが重要であり、検定をはじめ、著作・編集、採択の各過程において、その透明性を高めるよう努めることが重要である。
 この点に関しては、これまでも、検定申請図書と検定合格後の図書、検定意見箇所の一覧表、主な検定意見の概要等を公開展示するなど、教科書検定の結果の概要の公開が行われてきたが、検定意見の文書化や検定結果の公開の促進に努めるなど、教科書制度全体をより一層開かれたものにする必要がある。

(3)社会の変化に柔軟に対応し得る教科書制度

 国際化、情報化、科学技術の進展など、社会のあらゆる分野において急激な変化が進んでいることから、教科書においても、これらの変化に適切に対応していく必要が生じている。このような中にあって、著作者・編集者は、変化の激しい社会における教科書の役割について十分認識し、著作・編集に取り組む必要があると考える。
 このためには、著作者・編集者の自助努力と創意工夫が一層促進されるとともに、その自助努力等に適切に対応できるよう、検定済図書の訂正を含む検定の仕組みをより簡素かつ柔軟なものにする必要がある。

 我々は、以上に述べた基本的考え方を基に、著作・編集及び検定等の各段階において、それぞれ次のような改善方策が講じられることが必要であると考える。

2 教科書の著作・編集の在り方

 我が国の教科書検定制度は、民間の著作・編集を前提とするものであり、よりよい教科書が作成されるためには、まず、著作者・編集者の創意工夫が求められるところである。すべての著作者・編集者は、第1部で述べたように、今回の教育課程の基準の改善の趣旨が適切に反映された質の高い教科書が作成されるよう、これまで以上の創意工夫を図らなければならない。
 教科書検定制度については、昭和62年の臨時教育審議会答申を踏まえ、適切な教育内容を確保し、個性豊かで多様な教科書が発行されることなどをねらいとして、平成元年に、検定手続と基準の大幅な簡素化・重点化を行うとともに、著作者・編集者に対し、よりよい教科書の作成に努めるよう求めたところである。著作者・編集者は、この検定制度改善の趣旨を改めて認識し、申請図書の完成度をより一層高めるなど、これまで以上に自覚をもって著作・編集に当たり、主体的に一層の創意工夫に努めることが強く期待される。
 さらに、学校教育において重要な役割を果たす教科書については、国民の関心も高く、教科書の信頼性を高めるためには、著作・編集に当たって、その責任の明確化が求められている。
 このため、特に、以下のような配慮を行うことが必要である。

(ア)教育課程の基準の改善の趣旨が適切に反映された質の高い教科書の作成のために、教科書発行者は、今回の教育課程の基準の改善の趣旨を十分理解し、研究機関との連携も図りつつ、教科書の改善に向けた不断の研究に努め、その成果を教科書の著作・編集に反映させるとともに、より優れた著作者・編集者を確保するなど、著作・編集機能を一層向上させるよう努める。

(イ)教科書においては、その著作者等の氏名を明らかにしなければならないこととされているが、これが実際の著作・編集等に対応していないのではないかとの指摘もあるところである。教科書の監修者・著作者・編集者としての自覚を高め、教科書の信頼性を確保する観点から、著作、編集等において果たした実際の役割、分担等の責任に応じた著作者名等を示すようにする。
また、翻訳、翻案、編曲、採譜等が施されて引用、掲載された教材等においては、その旨を明らかにするようにする。

3 教科用図書検定基準の改善

 文部省は、検定における基準として義務教育諸学校教科用図書検定基準及び高等学校教科用図書検定基準を定めている。これらの検定基準においては、検定審査の基本方針である総則のほか、各教科共通の条件及び各教科固有の条件について、「範囲及び程度」、「選択・扱い及び組織・分量」、「正確性及び表記・表現」の3つの観点から具体的な規定が定められている。
 前述の「教育課程の基準の改善の趣旨を踏まえた質の高い教科書の作成」については、教科書の著作・編集における取組に負うところが大きいが、これを実効あるものとするためには、特に、教科書に記述される内容が、基礎的・基本的内容に厳選され、児童生徒がゆとりをもって学習することができるようにするとの観点から、検定基準においても配慮を行うことが求められる。
 したがって、検定基準については、以下のような観点から改善を図ることとし、その具体的内容について、学習指導要領に定める各教科等の目標、内容等を踏まえながら、今後検討を行うことが必要である。

(ア)教科書に記述すべき内容の範囲、その選択や扱いについては、教育内容の厳選を図り、学習を効果的に進める上で適切なものとする観点から、図書全体を通して基礎的・基本的な内容に厳選され、不必要に拡大、深入りしないようにする。

(イ)教育内容の厳選を図るため、複数の教科に関連する内容の各教科書における扱いについては、今回の教育課程の基準の改善に当たり、教科間で重複する内容の精選を図ることが示されていることにかんがみ、学習指導要領に定める各教科等の目標、内容及び内容の取扱いに示された範囲にとどめ、不必要に他の教科等の内容と重複した内容が扱われないようにする。

(ウ)実践的、体験的な内容のうち、各学校における創意工夫を生かした特色ある指導に委ねることが適当と認められるものについては、教科書に記述することを要しないことなどとする。

(エ)写真、挿絵等の掲載については、一層の信頼性の確保が図られるようにする。

4 検定手続等の改善

 申請された図書については、最初に、誤記、誤植又は脱字に関する審査が行われ、その後、教科用図書検定調査審議会に置かれる調査員による調査、教科書調査官による調査を経て、審議会において、申請図書が教科書として適切か否かを判定し、文部大臣に答申を行い、文部大臣は、この答申に基づき合否の決定を行っている。その際、審議会において、必要な修正を行った後に再度審査を行うことが適当であると認める場合には、文部大臣は、合否の決定を留保して、検定意見を通知することとしている。
 また、検定済図書について、教科書発行者は、誤記、誤植、脱字若しくは誤った事実の記載又は客観的事情の変更に伴い、明白に誤りとなった事実の記載があることを発見したときは、文部大臣の承認を受け、必要な訂正を行わなければならないこととしている。また、学習を進める上に支障となる記載又は更新を行うことが適切な統計資料の記載があることを発見したときは、文部大臣の承認を受け、必要な訂正を行うことができることとしている。
 これらの手続に関しては、平成元年に、検定基準及び検定手続の大幅な簡素化・重点化を行うとともに、検定済図書の訂正の要件の緩和を図ったところであるが、社会の変化に柔軟に対応するためには、より一層簡素かつ柔軟な仕組みとすることが必要と考えられる。また、行政改革委員会からは、検定意見の文書化を含む教科書検定の一層の透明化が必要である旨の指摘がなされている。
 以上のことを踏まえ、以下のような改善を図ることが必要である。

(ア)申請図書について検定手続の冒頭に行われる誤記、誤植又は脱字に関する審査については、手続の簡素化を図る観点から、廃止することとするが、検定審査においては、図書の正確性の観点について従来同様留意するとともに、検定申請前に教科書発行者がより綿密な編集を行うことを促すこととする。

(イ)検定意見の通知については、現在は口頭で行われ、その際、検定意見の該当箇所等を示した指摘事項一覧表を交付するとともに、補足説明や質疑応答等を行っているが、検定の透明性を一層高める観点から、文書により検定意見の趣旨を示すこととし、申請者側の便宜も考慮して補足説明や質疑応答等を行うこととする。

(ウ)申請者は、検定申請後に、誤記、誤植や、客観的事情の変更に伴い明白に誤りとなった事実の記載を発見した場合などに、検定意見に従った修正をする際に併せて自主的にこれらの記載の修正ができることとなっている。しかし、こうした修正の機会があることについては、検定手続を煩雑なものにするとともに、検定申請時の図書の完成度の向上を妨げる要因となっているのではないかという指摘もある。
したがって、こうした修正については、検定決定後に申請者による自主的な訂正を行うことができる機会もあるため、検定手続の簡素化を図る観点からも、検定決定後の検定済図書の訂正において一括して行うこととする。

(エ)検定済図書の訂正については、上述の検定意見に従った修正以外の修正も一括して行うことに対応し、また、社会の変化や実際の使用上の経験に基づく要請により柔軟に対応する観点から、訂正の申請要件の緩和及びその運用の改善を図る方向で、今後具体的な検討を行うこととする。
また、文部大臣の承認を必要としている訂正事項のうち、客観的に明白な誤記・誤植・脱字や、同一性をもった資料により統計資料の年次更新を行う場合など、一部のものについては、手続の簡素化の観点から、届出事項とする方向で、今後具体的な検討を行うこととする。

(オ)上記のような改善により、検定手続等の簡素化が図られることから、検定意見に従った修正に要する期間の短縮化を含め、検定審査に要する期間を全体として短縮化する方向で、今後具体的な検討を行うこととする。

第3部 教科書の改善に関連して

1 教科書採択に当たって

 教科書は教科の主たる教材として重要な役割を果たしており、今回の教育課程の基準の改善の趣旨を踏まえた教科書が作成されるためには、教科書の著作・編集及び検定における上記のような改善を図ることが必要であるが、教科書採択もまた質の高い教科書が作成される上で重要な役割を果たしている。したがって、採択に当たっては、教育課程の基準の改善の趣旨を踏まえ、それぞれの地域において最も適した教科書は何かという観点に立って、教科書内容の綿密な調査研究を行い、これに基づき、採択権者がより一層の自覚と責任をもって採択に当たることが強く望まれる。

2 今後の検定スケジュール

 教科書の検定は、現在の検定制度の下では、それぞれの教科書について、4年ごとの周期で行われ、これに伴い、義務教育諸学校用教科書については、4年間同一の教科書を採択することとしている。また、従来から学習指導要領の改訂に伴う教科書の検定は、小学校から高等学校まで順次段階的(小学校、中学校、高等学校の低学年、中学年、高学年の順)に、5年の期間をかけて行われ、また、それぞれ検定が行われた翌年度に採択、発行が行われ、翌々年度から各学校で使用されることとされてきた。
 一方、新しい教育課程に関しては、小・中学校の教育課程が平成14年度から同時に実施されることとされており、教科書の著作・編集、検定、採択及び発行の各段階において、短期間における同時並行的な対応が求められるところである。したがって、新しい教育課程に対応した質の高い教科書が確実に提供されるようにするためには、教科書の著作・編集、採択及び発行に係る関係者の協力とともに、円滑かつ効率的に検定を実施するための方策が講じられる必要がある。
 このため、教科書の著作・編集、採択及び発行との関連を十分考慮し、検討を行った結果、以下のような点に留意し、別紙のようなスケジュールで検定を行うことが適当であるとの結論に達した。

(ア)新しい学習指導要領に基づく小学校用教科書の検定は、学習指導要領の告示の約1年後に検定申請の受理を行うこととする。また、中・高等学校用教科書の検定申請の受理時期については、小・中・高等学校用教科書の検定申請に係る事務の重複を避けるよう、それぞれ相当の間隔をおくこととする。ただし、新しい学習指導要領に基づく中学校外国語の教科書及び高等学校の職業に関する教科・科目に係る教科書の1巡目の検定については、それぞれ小学校、中学校において同一の教科・科目が設けられていないことから、他の教科書より早い時期に検定申請を受理することとする。

(イ)新しい学習指導要領に基づく小学校用教科書の検定については、可能な限り早期に検定決定を行い、小学校用と中学校用の教科書の採択、発行に係る事務の重複を避けるよう努めることとする。

(ウ)新しい学習指導要領に基づく教科書の2巡目の検定時期については、小学校用を平成15年度、中学校用を平成16年度とし、2巡目以降の教科書の検定が、従来通り順次段階的に行われるようにする。また、これに伴い、平成14年度から使用される小学校用教科書の使用期間は、3年間とする。

(エ)平成12年度以降に行われることとなっている現行学習指導要領に基づく高等学校用教科書の検定については、当該教科書の使用期間が1年と短い上に、当該教科書に要する編集期間が、新しい学習指導要領に基づく教科書の編集期間と相当程度重複するものと考えられるため、検定申請を受理しないこととし、その時点における検定済図書を引き続き使用することとする。

今後の検討について

 本審議会においては、この建議の後、これに対する関係各界の意見も踏まえ、教科用図書に係る検定規則及び検定基準等の改正案について審議を進め、新しい学習指導要領の告示の後、速やかに所要の改正が行われるよう、引き続き審議を深めることとする。

お問合せ先

初等中等教育局教科書課

-- 登録:平成21年以前 --