平成14年2月18日(月曜日)10時30分~13時30分
霞が関東京會舘シルバースタールーム
内藤喜之 審議会会長、日暮 眞 会長代理 第一部会(国語) 出雲朝子、戸川芳郎 第二部会(社会) 尾田幸雄、神谷傳造、長沼秀世、羽入佐和子 第三部会(算数・数学) 菅野俊子、和田秀男 第四部会(理科) 伊理武男、中村洋 第五部会(音楽) 徳丸吉彦、茂手木潔子 第六部会(図工・美術・書道) 佐野光一、馬渕明子 第八部会(保健体育・看護・福祉) 袖井孝子、日暮眞 第九部会(家庭・情報・農業) 安藤英義、内藤喜之、長津美代子、林英輔、日暮眞、森地敏樹 第十部会(生活) 尾田幸雄、羽入佐和子
矢野初等中等教育局長、玉井大臣官房審議官、大槻教科書課長、舟橋教科書企画官、その他関係官
○会長から開会が告げられ、議事に先立ち、矢野初等中等教育局長から次のとおり挨拶があった。
教科用図書検定調査審議会総会の開催にあたりまして、一言ご挨拶を申し上げます。先生方には日頃教科書の検定につきまして、多大なご協力をいただいておりますことにあらためてお礼を申し上げます。また、本日はご多用の中ご出席をいただきましてありがとうございます。
さて、ご案内のとおり新しい学習指導要領に基づく教科書の検定につきましては、先生方にご審議をいただきまして、平成12年度中に小学校及び中学校教科書の一巡目の検定を終了いたしまして、昨年採択も終わったところでございます。また、高等学校の主として低学年用の教科書に関しましても、現在一巡目の検定につきまして、本審議会でご審議をいただいているところでございまして、本年度末までに合否の決定がなされる予定となっております。このたびの教科書検定につきましては、子供達の生きる力の育成に資するために、基礎的・基本的な学習内容の確実な定着を図るという新しい学習指導要領の趣旨を踏まえ、実施をいたしたところでございまして、それぞれの教科書の内容につきましても子供達に基礎・基本を確実に身に付けさせ、学習意欲を高める上での様々な創意工夫が見られるものとなったところでございます。また、採択につきましても採択への保護者の参加、あるいは採択に関する情報の公開など開かれた採択の推進が見られたところであります。
しかしながら、同時に今回の教科書の検定、そして採択に関しましては各方面から様々な観点からの指摘がなされたところでもあるわけでございます。もとより教科書につきましては、より良いものを子供達に提供する観点から、関係する制度等について不断の見直しが求められるものでございます。新しい指導要領に基づく教科書の二巡目の検定・採択に向けまして検定・採択の双方について、どのような改善が可能であるか本審議会の先生方に専門的な見地からご議論をいただきながら検討をしてまいりたいと考えているところでございます。具体的な見直しの観点等につきましては、後ほどご説明させていただきますけれども、平成15年度検定の申請図書の編集作業に支障のないよう、遅くとも本年夏頃までには結果を取りまとめ、必要に応じ検定基準の改正等の所要の措置を講じてまいりたいと考えているところでございます。
先生方におかれましては、高等学校の教科書の検定審査を行いながら、併せてこの制度の見直しについてご議論をいただくこととなり一層のご負担をおかけすることになるわけでございますけれども、子供達により良い教科書を提供するために、何卒ご指導・ご協力を賜りますようお願い申し上げましてご挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
○事務局から配付資料の確認があった。
○会長から、本総会の審議内容等の公開について諮られ、会議は委員の自由闊達な議論を担保する等の観点から非公開とすること、議事録を出席委員・臨時委員に確認し、確定した後に公開すること、配付資料は原則として求めに応じ公開するが、教科書制度の見直しに関する検討中の案など公にすることで審議会における率直な意見の交換が不当に損なわれる恐れがあるものなどについては、最終的に検討結果がとりまとめられるまでは非公開とすることが確認された。
○教科書課長から、配付資料1、2、3、4に基づき教科書検定の見直しについて説明があり、質疑がおこなわれた。
○会長
ただいま沢山の資料に基づきまして検定の見直しについて説明いただいたわけですが、本日は自由にご意見をいただいてご議論いただければと思います。どうぞ意見がございましたら出していただければと思います。
○委員
ちょっと長くなるかもしれませんけれども、今の配付資料でも正直いいまして、第2部会すなわち社会科ないしは歴史関係に関して多くの議論がでたわけでございますが、それに関連しまして、教科書の検定の仕方に関しまして日頃より少し制度的に直すべき点があるのではないかという気がいたしますので、この機会に申し上げたいと思います。といいますのは、特に歴史関係の教科書の場合には正直いいまして無数の事実が古今東西に渡って書かれておりまして、少数の調査官あるいは審議委員あるいは調査員等ではとても目を行き渡らすことができないという感じをしておるわけです。そのために、昨年来の審議会等々行政の簡素化等の方向と反するかもしれませんけども、私の個人の考えでは今以上に審議委員あるいは調査官あるいは調査員を増やしていただかないと目が行き届かないんじゃないかという気がいたしております。ちょっと長くなりますけど、端的に申し上げますと先日センター試験がございました。それの世界史B、私の専門の方ですけれども、実は正解とされるものが学問的に厳密にみると必ずしもそうとは言い難い出題を発見しまして、センターの方へ連絡いたしました。ところが数時間して出題委員会が検討して返事をよこした結果は、私の指摘どおりであるけれども現行の半分以上の教科書の記述に沿っているので、申し分けないけれどもこのままとするということになってしまったんです。数年前ですけれどもその問題に関して委員として指摘したはずだったんですけれども、それが教科書編集者・執筆者の方に伝わらなかったのか、なるほど調べた限りでは教科書記述に反映されていない。瑣末といえば瑣末なことなんです。1933年の法であったか1935年の法であったかといったことで、それほど大きな問題ではないかもしれませんけれども、この出題に対して、教科書の記述に沿っているからご理解くださいという答えだったわけです。
従って教科書には十分正確性を確保することが必要です。その正確性を確保するためには特に世界史の場合などは、相当数調査官から調査員に至るまで増やさないと、いろんな専門分野の人を確保しないと、気が付かないことが多い。我々審議委員でも本当に自分が自信を持って言えることというのはごく僅かな部分だけです。ですから、その多くの部分に関して恐らく現行のものでも、あるいはこれからのものでも専門家が見れば、これは誤っているということは、いくらでもあるだろうという気がいたします。従って教科書検定に関しては、現在以上に調査官から調査員に至るまで増やす方向を是非お考えいただきたい。昨年といいますか新しい歴史教科書問題では、はっきり言いまして白表紙本というのが事実上かなり流布してしまって、そこでいろんなところからいろんな指摘があったわけです。ということはそれを逆手にとって白表紙本の段階で相当多数の人の目を通してもらうことによって、少しでも誤りを正すことができるのではないかという気がいたします。これは行政簡素化等々の流れに反する提言かもしれませんけれども、教科書の正確性を十分に確保する。特に歴史関係において近隣諸国等とトラブルを起こさないためにも是非その方向でお考えいただきたいと思います。
○会長
どうもありがとうございました。非常に重要なご指摘でございますけども調査官か審議委員を増やせと言われても今なかなか難しいところがあるには違いないんですけれども、何らかの形で今後改良を是非お考えいただきたいと思います。その他にございませんか。今まで歴史で初めてですか、そういうケースは。
○委員
センター試験は私ずっと見ており、自分の専門外は正直言って分かりませんけれども、専門の分野に関して問題点を見つけたのは今回が初めてです。逆に言いますと出題委員もそのことを良く知らない。結局世界史で、ヨーロッパのこともアメリカのこともアジアのこともまたがったように出題するとなると、どうしても出題には自分の専門分野以外のことは教科書に従うのはしかたのないことだろうと思いますけども、その肝心な教科書自体に、学問的に厳密にみると必ずしも正確でない記述があるということは残念なことです。
○会長
どうもありがとうございました。センター試験の点、何点かによってやはり次のどこをメインの大学にするか決まって来るので、そういうところでいろんなそういう問題があると非常に遺憾なことだと思いますが、しかしまた易しい問題ばかり出しますと、良い点になると区別が付けにくいという試験にいつもつきまとう問題が背後にあると思います。どちらにしても正しい答えがでる問題を出していただかないと、正しい答え、それが原理・原則だと思いますので、そういう方向で今後ご検討いただきたいと思います。その他ございませんでしょうか。
○委員
3部会なのですけれども、算数・数学なので殊に考えるということが大切で、今ここで発展的な内容をもっと多くということを大歓迎したいと思うんです。そして、配慮事項のところを見ていると、一定の割合以下の分量というところが少し気になるわけで、それが大きな制限にならないように進めていただきたいと思います。
○会長
他に、お願いします。
○委員
第6部会ですが、今お話ししているのは部会からの意見ではなくて、社会科などのことに多く関連すると思うんですが、今のシステムだと出てきたものをチェックすると、その次にそれが直っていれば通ってしまうということがあると思うんです。今回ちょっと私も気をつけていました、修正個所があまりにも多いということが非常に数字的に際だっていたと思うんですね、まあ非常に有体に言って修正個所があまりにも多いということは、それは、やはりもともと教科書としてちゃんとできてはいないのではないかという気がするわけです。一般にですね、ある程度までしか精密度のないものをもってきまして、それを調査員だとか審議会で必死になって直すわけですよね、大変な苦労をしてこちらもいろいろ調べたりして、直して、そうしてそれを戻すと向こうがそうですかと言って、それが今度教科書になって出てくるというような、こういうことでいいのだろうかということをちょっと考えたわけです。実際に第6部会でもそういうことがありまして、どこでこんな古い資料を使っているんだろうと思うことがあります。そういう、やはり教科書を作る側の精度というかそういうものが大幅に欠けているものが、修正個所さえ直せば通るのかというのが私は今回非常に不思議に思いました。普通、著書などはそういうものでありますと、それは元の質が悪いということだと思うんですね、平坦な言い方をさせていただくと、それがちょっとシステムとして非常に不思議に思いましたので申し上げさせていただきます。
○会長
検定の段階であまりにも見直しが多いものは、資格なしとするという一つの判断があると思うんですね。労働を外のほうに預けて自分のとこはそれで直してもらうということになりますね。そういうのは、やはりそれが毎年続くような所には、見直しでも相当きつい見直しをするという必要があろうというご提言だと思います。
○教科書課長から、配付資料3、6に基づいて教科書採択の見直しについて説明があり、質疑がおこなわれた。
○会長
採択につきましてもなかなかいろんな多くの問題があるということが説明でわかりましたが、この件につきましてご意見等ございましたら遠慮なく出していただきたいと思います。
○委員
一つ質問させていただきますが、先ほどの配布資料の参考の方にスーパー・サイエンス・ハイスクール、スーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクールという欄があります。この学校が国立であれば、校長が独自の判断で教科書を採択することができるわけですね。それに対して公立であれば、当然採択地区の原則に従わざるを得ないわけで、個性化をしなさいという考え方と採択の地区を決めるという発想がどうも相入れなくなってくるような気がするんですけれども、その点はどうお考えでいらっしゃいますでしょうか。
○事務局
説明が不十分なものですから、あるいは誤解があったのかと思いますが、ご説明いたしましたのは、小中学校において共同採択をするということでございまして、今、委員からご指摘のございましたスーパー・サイエンス・ハイスクールないしスーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクールといのは、その名のとおり高等学校です。高等学校につきましては、学校毎に、設置者である都道府県の教育委員会が決めているということになっております。したがって、このハイスクールであれば、学校毎にそれぞれの教育内容に応じてお決めいただけるということでございます。
○委員
では確認させていただきますが、スーパー・サイエンス・ハイスクールの場合、中高一貫でございますね、中高一貫であっても高校扱いをするということですか、中学につきましても同じですか。
○事務局
中高一貫の取扱いでございますが、中高一貫の形態は、大きく分けて3つあります。中等教育学校というタイプ、併設する高等学校と中学校を中高一貫とする併設型というタイプ、それからもう一つが連携タイプということになっております。中等教育学校と併設型につきましては、義務教育相当部分についても学校毎に採択ということになっておりまして、そこに含まれる採択地区の中にあっても、例えば市立の中等教育学校あるいは中学校であっても、その市が含まれる共同採択とは別の教科書を教育委員会が採択することができます。ただし、連携型につきましては、ごく一部、その中の一部の教育課程を連携するという、整理すればそういうことになっておりますので、それは共同採択の中で行っていただく。勿論、教科書というのは主たる教材ですので、重要な位置を占めるわけですが、また、教科書は主たる教材でしかないわけでもございますので、副教材等適宜それぞれの学校の判断で補っていただくということになるわけでございます。
○委員
ありがとうございました。今のお答えでよくわかりました。もう一つちょっと一般的なことを伺いたいんですが、この制度が始まったのは確か昭和30年代の終わりだったかと思うんですけども、それによって教育委員会の力は非常に大きくなったというふうに考えることができるんですが、例えば先ほどご説明いただいた教科書展示会で保護者その他の人たちが教科書見本を見ることができるわけですが、その人達の意見が反映する道筋というものがあるのかどうかというのが質問の第一点です。それからもう一つは、38年より前、みんなが勝手にといいますか、かなり楽に選んでいた時代があるかと思うんですが、そのころの経験者がもう今はいないのかもしれませんが、私どもも大学で30年も授業をしていますと、他人が選んだ教科書を使って授業しろと言われることに大変な苦痛があるわけです。このへんについて中学校、小学校の現場の先生方は何か文部科学省に対して要望のようなもの、あるいは意見といいますか、それに類するようなものがあれば、ご紹介いただきたいということでございます。
○事務局
まず一点目でございますが、保護者の意見がどういうことになるのかということでございます。私どもが教科書採択に当たって、少なくともこの10年来都道府県、市町村教育委員会にお願いしておりますのは、きちんとした調査研究をやっていただきたいということが第一点。二点目は採択に当たって保護者の意見が反映できるようにしていただきたい。それは具体的に言えば、都道府県であれば都道府県の選定審議会への保護者の参加、あるいは市町村であればそういった色々な市町村レベルでの採択関係の組織への保護者の参加ということをお願いしてまいりました。その結果、10年前といってもあまり進んでいなかったわけでございますが、近年のいろんな地方分権とか情報公開の流れも受けたものと思いますけれども、昨年の小中学校の教科書の採択にあたっては、都道府県の殆ど10割に近い組織で保護者の参加、委員としての参加があったということは申し上げられます。それから三つ目で、私ども力を入れましたのは、情報の公開ということでございまして、情報の公開もかなりの程度進んできたと思っておりますが、情報が公開されますとそれに基づいて委員以外の方も色々な場で意見が言えるのではないかと思っております。それからもう一つ教科書展示会。これは展示会は法律で行っていただくと決めているわけでございますが、そこでどのように実際運営されるかということは、それぞれがお決めになっているわけですが、地区によっては展示会に意見箱というようなものを置いて、そちらにお見えになった、それは教員でも住民でも保護者でもいいわけでございますが、そういった方の意見を入れていただいて、それを一つの参考にしながら採択をしていくというようなところもあるやに聞いております。
それから二点目でございますが、法律で無償措置が決められました昭和38年に先ほどご説明したような共同採択制度ができたわけでございますが、できる当時の実態はちょっと正確な数字は忘れましたが、殆どの都道府県で教科書を市町村毎に単独で選んでいたのではなくて、ある一定のまとまりで選んでいたという実態があったということでございます。それは、具体的に言えばいくつかの市や郡が集まる等、県によってまちまちでございまして、例えば県には教育事務所というのがあって、一定の地域的なまとまり毎に教育事務所が置かれて色々な教育研究上、教育行政上のまとまりとして運営がされているわけでございます。例えば、教職員の人事、あるいは先生方の自主的な研修ないし行政的な研修もそういった事務所単位で行うということがあって、実態として共同採択が行われていた一つの背景には、そういった人事や研究で交流のある範囲で同一の教科書を使っていけば、研究で先生方が自主的に教科書を研究して授業研究する時にも色々なメリットがあるだろうといこともあって、行われていたように承知しております。それで、他人が選んだ教科書でどうかという話でございますが、確かにインセンティブとしては、そういう面もあろうかと思いますが、一つ考えられますのは、我が国の学校の実態といいますと、小学校、中学校ともに1学年1クラスの学校が一番多い。そうすると、小学校でいえば百数十冊の全教科にわたる教科書があって、学年毎にと言ってもかなりの量をいろんな種類の中から選ぶというのがどれ程できるのかということですね、キャパシティでできるのかということとアビリティでできるのかということもあるのかと思います。そういった点で力量のある、教科毎に特化した先生方がお選びいただくというのも、一つの効率的な観点ではないのかなというふうにも思ったりしております。そこは一つの方法が一番良いということは勿論ないわけで、色々なそれぞれにメリット・デメリットもあろうかと思いますので、そういった点はご意見を賜ればと思っております。
○会長
他に教科書の採択関連でご質問とかご意見ございませんでしょうか。前に戻って検定のことでも結構でございます。
○委員
恐らくこの今回の審議会というのは、1月17日の文部科学省のアピール「学びのすすめ」これを前提とするという趣旨だと私は理解いたします。ですから辛口の意見になるかもしれませんけれど申し述べます。まず、参考資料の2頁でございますけれども、下から半分に枠入りの1から5まであります。その上の文章下から三つ目の段落に新しい学習指導要領のねらいとする確かな学力の向上というのが2回でてきます。その次のパラグラフの2行目にもでてきます。今それで学習指導要領を見たのですが、かぎで引用している確かな学力というこの文言は、指導要領そのものに出てくる言葉かどうかというのが質問の一点です。それから枠入りの、「学習指導要領は最低基準であり、発展的な学習、理解の進んでいる子供が発展的な学習で力を伸ばす」という文言について、文部科学省の大臣も含めて、今まで対外的に説明されていることを方針の転換という言葉を使われていないんですけども、マスコミはみんな方針転換したと言っています。文部科学省はそれに対して全然反論されてない、つまりそうなんだということを暗に言ってるんだと思うのですけども、その辺はいかがですか。
○事務局
まず、最低基準性というところからちょっと経緯を含めて申し上げますと、もともと学習指導要領は最初のころは参考という形で大変分厚い、ガイダンスみたいなものから戦後出発しているのですが、昭和30年代に、これを基準という形に直していったわけであります。その当時、今で言いますと文部科学省の告示という基準というものに変えてまいりました。それが昭和30年代でございますが、その時にそういう性格を明確にするために当時の教育課程審議会が答申を行い、それを受けて今までの参考であったものを基準という形で性格を変えていったわけでございます。その時の答申の中に国のカリキュラムの最低基準としての性格を明確にせよということがまず言われたわけでございまして、そして基準として告示に変えてまいりました。従って、その当時から法的拘束力を持った告示という性格を明確にしていったわけでございますが、ただし、中身が当時大変分厚かったということも色々ありまして、実態として最低基準として十分なものであったかというと色々議論は別れたところであります。しかし、もともと性格は最低基準、全ての学校において全ての子供達に必ず教えるべきものであると、従って指導要領の総則のところには必ず今までもずっと昭和30年代から書いておりますけれども、全ての子供に教えるべきもの、ただし内容を加えても良いと、負担加重にならない限り内容を加えて良いということはずっと総則で述べてきたわけでございますので、そういう意味で最低基準という性格は基本的には変わっておりませんが、ただ実態として量が多い時代と、この10年間のように精選し更に厳選した時代では、実態としてやはりちょっと色々議論はあるんだろうと思います。従って今回は私どもかなり厳選をしておりますので、最低基準としての性格は極めて明確になったと思います。だから共通に教えるべきものと、それからそれぞれの個に応じてより発展的学習をすべき子供もいれば、補充的な学習で繰り返しやはり基本を身に付けるべき子供も現にいるわけでございますから、そういう性格のものとして指導要領をより明確にし、また施策もより明確にしていったというのが、今の形でございます。それを受けて私どもは確かな学力という言葉を使っておりますけれども、これは別に指導要領が学力ということをいちいち言ったり、確かな学力とかあるいはもっと広い生きる力という形で特定のことを言っているわけではなくて、まさに指導要領は教えるべき子供達のトータルの学力の基準というものを表しているわけでございます。それを私どもがよりわかりやすく言うために、今回確かな学力とこういう言い方をしているのは、例えば暗記だけで沢山の知識を身に付けて、そして試験の時だけ覚えて後は忘れてしまうという学力ではなくて、確実に身に付く、そしてその身についた基礎的な基本的なものを使って、更に子供達自身が自ら考え自ら学ぶようなそういう考える力だとか、学ぶいわば習慣づけといいますか、こういうものを狙っているものですから、それをアピールするために確かな学力という言葉を使わせていただいているわけでございます。
今申し上げたようなことを言いますと、実はもともと昭和50年代から沢山ただただ知識の量を増やせば良いと、教科書も分厚くて、満遍なく教えるのが残念ながら日本の実態でありますので、教科書を新幹線教育だとあの当時批判を受けましたけれども、次から次へと、とにかく教科書を全部教えねばならない。従って何頁もいっぺんに教えてしまうと、本当に身に付いているわけではないというご批判があった中から精選をし、基礎基本は確実に身に付ける、しかもそれは例えば理科であったら沢山の実験をいくつもいくつも繰り返すよりも、むしろ理科の実験ならば少し限定をして、それをいわば手作りの形で準備も含め探求し、仮説を立てその子供達とって本当にじっくりと身に付ける。確実に身に付けるこういう方向に実は昭和50年代から転換をしてきております。従って転換してきたこの約20年余りかけた方針の上に今回の新しい指導要領があり、こういうふうに学びのすすめがあります。従ってそういう意味で私どもは方針の転換ではないと思っておりますが、色々ご批判をされるマスコミ等からみると変わっているんじゃないかと言われております。
ただ、同時に学びのすすめの中で、もう一つ私どもやはり一つの課題があるということも併せて言ってるわけです。つまり今まで進めてきた方向に沿って、単に知識の量を増やすのが良いという学力ではなくて、基礎基本を確実に身につけながら、自分で物を考えていくそういう思考力や判断力を身につけさせようという基本的な方向は変わっておりませんが、しかし国際的な調査結果であるIEA(国際教育到達度評価学会)の結果や昨年の12月にオープンになったOECDのPISA(生徒の学習到達度調査)の結果から見ると日本の子供達は得られた知識つまりテストのために得られた知識、これは上位にある、しかもまたそれなりにものを考える力も上位にあるけれども、そもそも勉強しようとする意欲だとか、あるいは自ら学校以外でも勉強することが実は参加国中ほぼ最低に近いと、そういったやはり基本のところからもう一度子供達にしっかりと身につける、そういうことも大切であろうということでの学びのすすめを言っておりますので、従って確かに課題としての新しい要素も加わっております。しかし、基本は先ほど来申し上げた昭和50年代からの基礎基本を確実に身につけながら、自ら学び自ら考える方向に持っていこうという基本的な方向は変わっておりません。
○委員
ありがとうございました。大変ご丁寧な説明をいただきまして、そういうことが、マスコミの一般論調にかき消されてしまって伝わっておりませんので、是非議事録に丁寧に書いていただきたい。それから続きまして、同じ2頁、参考の2頁です。関連したことですが、小中学校というのがアピールの最初の行に出てますから義務教育ということで理解してですね、そうしますとここの2頁の1から5までの特に2ですね、発展的な学習で力をより伸ばすというのは、枠のすぐ上に各教育委員会においては適切な指導・助言をお願いしますという趣旨ですから、義務教育の場合には教科書レベルではなく、教育現場での指導の段階のことであり、他方、高等学校の選択履修科目については、教科書レベルでこれをおり込もうというふうに私は理解しますがそれでよろしいですか。
○事務局
この学びのすすめは、まず基本的には目の前にこの4月から小中学校について、新しい学習指導要領が全面実施になります。従ってそれを期に特に小中学校についてこの新しい学習指導要領の狙いとすることを再確認していただくと同時に、国際的な調査結果などで明らかになっている課題も含めて各学校そして各教育委員会にご努力願いたいというアピールでございます。従って高等学校は入っておりませんけれども、高等学校も基本的には新しい学習指導要領が15年度から学年進行で始まりますので、新しい指導要領の狙いは基本的に似たような所がございますから、直接は言っておりませんけれどもそれぞれ学校もご理解いただけるんだろうと思います。ここで言っているのはあくまでも小中学校を前提として、そして発展的な学習というのは、先程来昭和33年の教育課程審議会の答申から申し上げましたけれども、もともと小中学校でも本来付け加えて許される。ただし、その教材としては教科書というよりも、他の教材を使ってもいいわけですし、それは大いに工夫をしていただきたいわけですが、しかし、こういう色々な声の中では教科書に一切なくてもいいのかというご議論があったので、改めてこの審議会で先生方にもご議論いただきながら、検定基準も含めて小中学校についてもどうお考えになるのか検討願いたい。そして更に、高等学校の必修選択つまりは1年次目で大体習う部分については小中学校とほぼ同じ形になっておりますので、ここについても発展的な学習についてどう検定基準を含めてお考えいただくのか、それをまたご検討いただきたい、こういう趣旨でございます。
○会長
よろしいですか。その他ございますでしょうか。
○委員
検定とは少し違うことかもしれませんけれど、アピールの中の自ら考えさせる力を身に付けるということを考えるんですけれども、考えるためには言葉を十分教えていなければならないので、例えば小学校においては国語の時間を2倍にするくらいの、つまり内容を少なくするのではなく、考えるための言葉を十分に教えなければいけないという気がするのです。だから国語を大切にして考えたりするのですが、また同時に周りを正確に見るための言葉が数と図形なので算数も小学校の低学年においては、十分教えなければ時間をかけて教えなければいけないという気持ちがあるので、そのことも配慮してもらいたいと思います。
○会長
今のお話について事務局からお願いいたします。
○事務局
授業時間数を各教科でどうするかというのは大変難しい問題でございまして、過去から学習指導要領の授業時間数の各教科への配当というのは、いつも教育課程審議会でも大議論になってきました。各教科は各教科としてそれぞれ必要だと良くわかるんですけれども、子供は一人でございますので、それぞれの子供達の発達の段階に応じてどれくらいがバランスとして適当であろうかというのが専門家の中で議論してきたわけでございます。その中で先ほど国語のお話がございましたけれども、今回の新しい指導要領は国語に限らず子供達が表現し、発表し、討論するということを大変重要視しておりまして、国語の今申し上げたことが、果たして国語だ、勿論国語は基礎的なところでそれは必ず身に付けるわけですけれども、それだから他の教科でそういうことはいらないんだということではないんだと思います。更には、今回新しい学習指導要領で新しく創設した総合的な学習の時間がございますが、これの趣旨が今先生がおっしゃったようなことにかなり関わりが深いものでございます。つまり、各教科のそれぞれの縦割りで、身に付くべき力と縦割りを越えてより総合的、より横断的に子供自身が自らものを考え、調査し、研究し、討論し、そして自ら物事を学ぶそういう学び方をその場で学ぶということを新しい時間で作り上げていったわけでございます。これはなかなかまだ難しいところがあろうと思いますけど、まさしくここの中で子供達がもう既に移行措置で小学校はほとんどの学校で週一、二回やってきましたし、中学校もほぼ週一回くらいやっております。この一、二年で、課題は多いんですけれども、ここで多くの人たちがみなさん異口同音におっしゃっているのは、子供達は教科の時間よりやはり興味関心はかなりあると、それをうまく引き出してまたそれを教科の時間に戻していく、また教科の時間で得られた更に培われた力をもういっぺんまた総合学習の時間でより総合化していく、こういうことをやればかなり私どもは狙いが出来るんではなかろうかと思っております。ご主旨はよくわかりますが、そういうことも含めながらトータルで指導要領は組み立てて行っているということでございます。それから、もう一つ大切なのは、こういう指導要領がいよいよ出発いたしますけれども、常に検証が必要でございます。そのために私どもは各学校での自己点検、自己評価の仕組みをこの春以降是非設けていきたいと思っておりますし、そのための私どもなりの把握の仕方もあるし、それから全国的な学力調査、もう既に始めておりますけれど、これを定期的に行うことによっていったい子供達にどこまで身についているのかと、よく検証しながら必要があれば当然その検証結果に基づく施策も講じていきたいと思っております。
○会長
はい、どうもありがとうございました。
○委員
ゆとり教育や学びのすすめについては、お話を伺っていると非常にすばらしいものに聞こえますし、非常に理想的に運営されれば大変結構だと思うんです。ただ、実際に私は最近まで小学生だった息子を持っておりまして、実際に非常にいろんな場面に遭遇いたしました。それで結局、このゆとり教育は課題が多いと私は思いましたので、子供を私立にやりました。つまり、環境ができていないと思うんですよ。例えば先生の力が非常にあり、連携が非常によく進んでいれば、このゆとり教育というのは非常にうまく機能するし、総合学習も大変うまく行くと思います。それから学びのすすめで書いていらっしゃるようなことも、少人数教育で教員の力があって、それから地域のサポートとかあるいは例えば休日に博物館に行ったり美術館に行ったり、あるいは何処かに見学したりする時に、そういうところの専門委員が非常に熱心にいろんな事を教えてくれたりとかですね、そういうような環境がうまく整った上で、初めて機能するものだと思うのですが、例えば今既に準備段階でいくつかそういう試みを私実際目にいたしましたけれども、やっぱり先生方は戸惑っていらっしゃるんですね。それから、子供達もそれについていけないというような状況もあって、やはり私はちょっとこれは世間のいわゆるマスコミがいろんな事を言っている裏には本音と建前がどんどん別れて来ている。実際には子供にある程度の勉強をさせたいと思う親は子供を塾にやり、そして私立にやっているとうい事実がどんどん進行していて、それをこれで歯止めをかけられない状態に来ているんじゃないでしょうか。それは私がこういうことを申し上げると身もふたも無くなっちゃうんですけれども、やはり理想というものはあくまでも追求すべきものであるならば、もっと実施の面で教員の数を増やして少人数のクラスを作るとか、あるいは子供達が何かスポーツをするならそういう場を確保することが必要ですが、いろんな美術館、博物館などもどんどん人員を減らしたりして、中の人間は本当に何もできないぐらいの状態になっていて、そこに子供達がどっと来たらどういうことになるかというようなことが進行してるわけなんですね。そういう連携ができていないということを認めていただかなければ、このままずるずると日本の教育はここまで教えればいいんだというところで、いつのまにか終わってしまうという危惧が私には非常にあるんですね。ですから考えていらっしゃる事というのは本当にもっともですし、本当にこれが理想的に進めば、どんなにすばらしいだろうというふうに思うので、基本的にこれは私は間違いだということは全く申し上げていないんですが、現実とギャップがあるというのが、マスコミがずっと批判をしている理由だろうと思います。今からでも遅くないと思うので、これを直すということではなくて実施のいろんなシステムが本当に機能するのかどうか、例えば一年後にチェックしてみたらかなり悲惨な状況になるのではないかと危惧をもっております。教育というのはもっと総合的にお金を投資して人員を投資してみんなでやっていかなければならないことなので、それはこういう形でゆとり教育をなさるということは、本当に大変な決意だと思いますので、システムのチェックは是非やっていただきたいと申し上げます。
○会長
どうもありがとうございました。ただいま非常に率直なご意見がありまして、私も関連して発言させていただきますと、今日本の教育を支配しているのは親なんですね。受ける本人では決してない。受ける社会でも決してない。親なんです。親の考え方をいかに変えるかということが、教育がそれを反映できる教育体制になれば親の意見も自動的に変わると思うんですが、現在親は子供にいい大学に行くことをまず相当の親はそれを考えていますね。学力があるとかは全く関係ない。とにかくいい大学に入ればいい、とにかく問題が解ければいいという。私は今後もこういう今ここにやろうとしていることは非常にいい事ですから、その方向でやっていただくことは間違いない方向なんですけれども、先生方の意識も相当変えていただかないといけない。それから日本は昔からよく言われてますが、与えられたものを解くのは最高なんですが、新しいものをつくるのは最低なんです。今後の新しい初等中等教育は与えられたものを解くのではなくて、新しいものを考え出す力に集中すべきではないかと思います。私は大学の入学試験は問題を出すのではなくて問題を作れと言っているのです。それで解かせると、作った問題のレベルによってその本人の力は分かりますから。類題を解いても意味がないというぐらい強くやれば、そういう方向である入試のグループから今までと違う大学生もしくは国をしょって立つ人間が出るのではないかと常々思っているんです。要は今回いい石を投げていただいたと思います。2002年アピール学びのすすめをこのとおり社会が幾ほど体制を準備しろといわれましても、今の財力いろんなことからいっぺんにはいきませんけども、そこで目標を立てて今後進んでいくということが非常に重要なんじゃないかと思っております。
時間がまいりましたのでいい議論がまだ続くかもしれませんけれども、今日は以上をもってこの会合を終わらせていただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。それではこの後の予定をお願いします。
○事務局から今後の開催日程について説明があり、会長より閉会が告げられた。
初等中等教育局教科書課
-- 登録:平成21年以前 --