新しい教育課程の実施に対応した教科書の具体的な改善方策について(案)

教科書改善に当たっての基本的な方向性(案) 具体的な改善方策
○ 教育基本法で示す目標等を踏まえた教科書改善
  •  教育基本法や学校教育法の改正で明確に示された教育の理念や目標を達成し、新学習指導要領の総則に示された教育課程編成の一般方針や各教科の目標・内容等を適切に反映した教科書の作成
  •  教育基本法、学校教育法、新学習指導要領についての周知を十分に行い、教科書発行者における教科書の著作・編集の改善を推進するとともに、教科用図書検定基準等の改善を図る
 基本的方向性を受けた検定基準見直しの視点
◇ 教育基本法、学校教育法、学習指導要領に示す教育の目標の達成に 資する「よりよい教科書」への改善を図るための基準の見直し。
(改善方策の例)

○ 教科書は、各学校において教育基本法、学校教育法及び学習指導要領に示す目標を達成するよう教育が行われるための主たる教材であるということを検定基準上明記。

○ 教育基本法に示す教育の目的、目標、学校教育法に示す義務教育の目標に一致していることを検定基準上明確化。(教育基本法第1条、同法第2条、同法第5条、学校教育法第21条)

○ 学習指導要領総則に示す教育課程編成の一般方針や、各教科の目標・内容等に一致していることを検定基準上明確化。

○ 検定基準各教科共通の条件の分類(「1範囲及び程度」「2選択・扱い及び組織・分量」「3正確性及び表記・表現」)について、審査の観点をわかりやすくするよう、例えば、現行の「1」及び「2」の観点に関し、

  •  関係法令との関係
  •  記述内容として取り上げる範囲を示した事項
  •  記述内容の配列や取扱い方に関する配慮を示した事項
  •  その他の留意事項
     などの事項に分けて規定を整理。

※上記の基準見直しに即して、検定申請時の添付書類を整備(学習指導要領との対照に加え、教育基本法等の目的・目標との対照も添付書類とする)。

○ 知識・技能の習得、活用、探究に対応するための教科書の質・量両面での格段の充実
  •  個々の子供たちの理解に応じ、きめ細かい指導ができるよう、補充的な学習や発展学習に関する内容の充実
  •  幅広い教養・豊かな情操と道徳心、伝統と文化を尊重する態度などの教育基本法、学校教育法に示された目的・目標等の達成に資するための内容や話題・題材の充実
  •  基礎的・基本的な知識・技能が着実に習得されるよう、既に学習した内容の系統的な反復学習や、練習問題などによる繰り返し学習に関する記述の充実
  •  知識・技能を活用する学習活動が取り入れられるよう、観察・実験やレポートの作成に関する記述の充実
  •  子供たちの学ぶ意欲を高め、探究する力を育むよう、他教科の関連する内容も取り入れ、学習内容が実生活・実社会に関連付けられるような記述や話題・題材の充実
  •  課題解決の喜びを得るような練習問題や、なぜ学ぶのかという目的意識を取り入れた話題・題材の充実
 基本的方向性を受けた検定基準見直しの視点
◇ 教科書発行者の創意工夫により、記述内容が質・量ともに格段に充実するための基準の見直し。
◇ 国語や英語の題材の充実など、学習指導要領に即した各教科固有の基準の見直し。
(改善方策の例)

○ 「発展的な学習内容」について、個々の子供たちの理解に応じたきめ細かな指導が充実するよう、現行の検定基準における記述上の例外的な扱い(「本文以外の図書の内容」「分量は適切であること(義務1割程度、高校2割程度を上限)」など)を見直す。 ただし、学習指導要領の総則や各教科の目標や内容の趣旨を逸脱せず、適切な関連を有していることが必要。

○ 「補充的な学習」「繰り返し学習」については、例えば小学校算数の学習内容を中学校数学においても取り上げることなどにより記述内容の充実が図られるよう、抑制的に働く側面がある現行の検定基準(「不必要なところはないこと」「程度が低過ぎるところはないこと」「他の教科の内容と不必要に重複しているところはないこと」など)を見直す。

○ 他教科に関連する内容を取り入れながら、実生活・実社会と関連付けられるような記述や題材の工夫・充実が図られるよう、「他の教科・内容と不必要に重複しているところはないこと」としている現行の検定基準を見直す。

○ 教科書発行者の創意工夫により記述の充実が図られるよう、図書の内容について「厳選されて」いることを求める現行の検定基準を見直す。

○ 学習指導要領に示された教材選定に当たっての留意事項に基づき、題材の充実が図られるよう検定基準上明確化。

※学習指導要領に示す教材選定の留意事項
(小学校・国語)
ア 国語に対する関心を高め,国語を尊重する態度を育てるのに役立つこと。
イ 伝え合う力,思考力や想像力及び言語感覚を養うのに役立つこと。
ウ 公正かつ適切に判断する能力や態度を育てるのに役立つこと。
エ 科学的,論理的な見方や考え方をする態度を育て,視野を広げるのに役立つこと。
オ 生活を明るくし,強く正しく生きる意志を育てるのに役立つこと。
カ 生命を尊重し,他人を思いやる心を育てるのに役立つこと。
キ 自然を愛し,美しいものに感動する心を育てるのに役立つこと。
ク 我が国の伝統と文化に対する理解と愛情を育てるのに役立つこと。
ケ 日本人としての自覚をもって国を愛し,国家,社会の発展を願う態度を育てるのに役立つこと。
コ 世界の風土や文化などを理解し,国際協調の精神を養うのに役立つこと。

(中学校・外国語)
 教材は,聞くこと,話すこと,読むこと,書くことなどのコミュニケーション能力を総合的に育成するため,実際の言語の使用場面や言語の働きに十分配慮したものを取り上げるものとする。その際,英語を使用している人々を中心とする世界の人々及び日本人の日常生活,風俗習慣,物語,地理,歴史,伝統文化や自然科学などに関するものの中から,生徒の発達の段階及び興味・関心に即して適切な題材を変化をもたせて取り上げるものとし,次の観点に配慮する必要がある。
ア 多様なものの見方や考え方を理解し,公正な判断力を養い豊かな心情を育てるのに役立つこと。
イ 外国や我が国の生活や文化についての理解を深めるとともに,言語や文化に対する関心を高め,これらを尊重する態度を育てるのに役立つこと。
ウ 広い視野から国際理解を深め,国際社会に生きる日本人としての自覚を高めるとともに,国際協調の精神を養うのに役立つこと。
○ 漢字の指導が充実するよう、現行の検定基準の小学校の国語科における漢字の使用に関する規定(当該学年の配当漢字以外を使用できる場合について固有名詞などに限定)を見直し、振り仮名を付すなどの配慮をした上で配当漢字以外も使用できるようにする。
○ 多面的・多角的な考察に資する公正・中立でバランスの取れた教科書記述
  •  教育基本法において示された教育の目標等や学校教育法に示された義務教育の目標、目的を達成するため、教師が自信と確信を持って子供たちの思考力・判断力・表現力等を育成することに資する、公正・中立でバランスの取れた教科書記述がより一層求められる
  •  一面的・断定的でない多面的・多角的な考察に資するよう、公正・中立でバランスの取れた話題・題材の選定や記述がなされることも重要
 基本的方向性を受けた検定基準見直しの視点
◇ 教科書の記述内容、話題・題材等の扱いについて、教育基本法等に示された目的・目標等を達成するため、児童生徒が特定の事項、事象、分野に偏ることなく、バランスよく客観的な見方や考え方を身につけることができるよう、公正性・中立性をより一層確保するための基準の見直し。
(改善方策の例)

○ 「話題や題材の選択・扱いの調和に関する規定」、「事柄や見解の取扱いに配慮等を求めた規定」について、教育基本法において示された教育の目的・目標等や学校教育法に示された義務教育の目標を達成するため、教科書記述がより一層公正・中立でバランスのとれたものとなるよう、著者の一面的な見解を断定的に記述しているなどの場合に当該規定を適用。

○ 政治・宗教に関する公正な扱いにかかる現行の検定基準について、教育基本法第14条(政治教育)及び第15条(宗教教育)に照らし、適切な配慮がなされるよう検定基準上明確化。

○ 「特定の個人・団体などの権利・利益を侵害するおそれのあるところはないことを求める規定」について、「特定の企業・商品などの宣伝・非難に関する規定」との整合性や、より一層公正・中立な記述を求めるという観点から規定を整備。

○ 「引用する資料等は信頼性のあるものが選択されることを求める規定」について、より一層公正・中立の観点から適切な資料等が選択されるよう現行の検定基準を見直す。

○ 現行の検定基準の社会科「未確定な時事的事象を断定的に記述しているところはないことを求める規定」について、一面的な見解を十分な配慮なく取り上げないことについても明確化。

○ 教科書記述の正確性の確保
  •  教科書の著作・編集、検定の過程において、教科の主たる教材としての正確性が一層確保される仕組みや、申請段階において、客観的に明白な誤記・誤植等をなくすための仕組みを整備することが必要である
  •  発行後においても、客観的に明白な誤記・誤植等が速やかに修正され周知されるような取組を推進することが求められる
 基本的方向性を受けた検定基準見直しの視点
◇ 誤記・誤植等がない正確な記述と実質的な記述内容の審査を確保するための基準の見直し。
(改善方策の例)

○ 現行の検定基準における正確性に関する規定について、客観的に明白な誤記・誤植等を区分して規定するよう見直すとともに、当該誤記・誤植等については、検定審での審議において、他の不正確な内容等にかかる審議と分けて審議を行い、専門的な審議が十分に確保できるよう検定手続きを見直す。また、客観的に明白な誤記・誤植等と判断された箇所数を検定手続き終了後、公表する。

☆ 著作・編集段階における校正体制の強化を図る観点から、校正体制・校正回数等を明示した書類を検定申請の添付書類に追加する。

☆ 責任ある教科書の著作・編集を求めるため、著作者・監修者の具体的な担当箇所・役割等を教科書上においても明記することを発行者に促していく。

○ 子供たちが意欲的に学習に取り組むための、教科書編集上の配慮・工夫の促進
  •  学習指導要領の改訂による授業時数増にも対応し、新学習指導要領に示す内容を不足なく、丁寧にかつわかりやすく記述した上で、個々の子供たちの理解の程度に応じて発展学習やつまずきやすい内容の繰り返し学習、補充的な学習を指導しやすいような教科書構成上の配慮・工夫。また、小学校と中学校の学習内容の円滑な接続への配慮・工夫
  •  記述全てを教えるのではなく、発展学習など個々の子供たちの理解の程度に応じて学習する内容について、編集上の区分の徹底
  •  子供たちが興味関心を持って読み進められるよう、話題や題材の創意工夫
  •  子供たちが家庭でも主体的に自学自習できるよう、丁寧な記述、練習問題、文章量の充実。また、子供たちが学びやすいよう、学習内容を踏まえた教科書の体様への適切な配慮
  •  本文記述との適切な関連付けがなされたイラスト・写真などの活用。一方でこれらの多用によって子供たちの想像力が阻害されないような配慮
  •  障害の有無にかかわらず、すべての子供にとって学習しやすいレイアウト等の適切な配慮の研究
(改善方策の例)

☆ 子供たちが意欲的に学習に取り組むようにするために、教科書の記述内容の充実はもとより、全体的な構成、レイアウト等の教科書編集上に必要な配慮・工夫事項について、発行者に対する通知、説明会等により周知徹底する。また、教科書発行者の配慮・工夫を促すため、必要な改善モデル事業や調査研究を行う。

○ 教科書検定の信頼性を一層高めるための検定手続きの改善
  •  申請図書に対し、審議会や教科書調査官がどのように関与し、結果としてどのような過程によって検定意見が付され、合否判定がなされたかなど審議結果に至る一連のプロセスを一層透明化する。
  •  検定手続きの透明性の向上に当たっては、静ひつな環境における専門的かつ自由闊達な審議の確保との十分な両立を図る。
  •  審議に当たって特に慎重な判断を要する事項を審議会が選定し、より専門性の高い重点的な審議を行う。
 具体的な改善方策については、検定手続きの改善に関するワーキンググループにおいて議論。

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初等中等教育局 教科書課