平成20年9月24日(水曜日) 14時~16時
霞が関コモンゲート西館37階 霞山会館 「松雪、紅梅」
秋山委員、安彦委員(主査)、天笠委員、伊藤委員、栗田委員、甲田委員、たか倉委員、谷坂委員、富岡委員、西沢委員、橋本委員、長谷川委員、濱口委員、広瀬委員、廣部委員
徳久審議官、伯井教科書課長、串田教科書企画官、森山教科書検定調整専門官、佐々木教科書課課長補佐、藤原教育課程企画室長補佐 他
(1)安彦主査から、資料1について確認の依頼があった。
(2)資料2から資料5について、事務局より説明を行った後、資料4「発展的な学習内容」に関する論点整理メモを中心に議論を行った。
主な意見等は以下のとおり。
【委員】
資料2の二つ目と三つ目、五つ目の柱は基本的に学習指導要領に書かれていることであり、学習指導要領に記載されているものはここで議論するまでもなく、当然のことである。ここでは本文以外の記述や分量といった検定基準において示されている外形的な問題について、検討する必要があるのではないか。
【委員】
二つ目の柱の六つ目の項目について、発展的な学習内容を示しているものではないかと思うが、「なぜ学ぶのか目的意識を取り入れる」点については学習指導要領の内容に限ったものとは必ずしも言えないのではないか。発展的な学習内容の認識については、もう少し教科書発行者に分かりやすく、具体的なものにして示すべきではないか。
【委員】
発展的な学習内容は、現行の学習指導要領において学習内容を3割減らしたものを取り戻す方向の中で示されたものと理解している。現行学習指導要領と異なり、新しい学習指導要領に原則はどめ規定はなく、学習指導要領に書かれている内容が共通に指導される基本的な基準として位置付けられており、個に応じた指導を行う観点からその内容をより充実させるものが発展的な学習であると理解すべきではないか。新しい学習指導要領下で発展的な学習内容は、内容がかなり質的に変化したのではないか。
【委員】
科目によって発展的な学習内容の記述の差があることは大前提にあるが、例えば理科について言えば、基礎から内容を積み上げると発展的な学習内容はないように思うが、ある段階で逆に上からアプローチを行うなどにより、生徒の興味関心を引き付けることができる。そのことから、理科では教科書に発展的な学習内容の記載することが重要になってくる。
新しい学習指導要領下でははどめ規定がなくなるが、仮に一律に上限を定める場合、かなり大きな上限を定めなければ、新しい学習指導要領の理念が生かせないのではないか。
【委員】
現行上の発展的な学習内容の上限を超えてもよいと思うが、最大限度を示すべきである。また、分量が多くなった場合の措置として分冊のことがあるが、繰り返し学習を行う際に前の記述を参照にすることなどに不都合が生じないよう配慮をするべきではないか。
【委員】
発展的な学習内容の分量を教科書で何割、と規定することは意味がないのではないか。上限を定めなくても明らかにおかしな分量であれば、審議会で当然議論が行われる。また、1割や2割と上限が定められていたのは現行学習指導要領においての抑制的な考え方によるものである。新しい学習指導要領下において質・量両面の充実の方向性が示されていることから、すべての児童生徒が一律に学習する内容ではないことがしっかり明示されることが前提だが、発展的な学習内容の分量は教科書発行者の良識に委ねてよいのではないか。
(習得・活用・探究活動と発展的な学習内容について)
【委員】
発展的な学習内容について、学習指導要領改訂の狙いである習得・活用・探究の過程にどのようなインパクトが与えられるのか、議論を深めるべきである。習得・活用・探究の学習系統と発展的な学習内容がどのようにかみあっていくのか、見えてこない。
【委員】
習得・活用・探究と発展的な学習内容をどう結びつけるのかについては、中教審の答申の捉え方でも幅がある。活用型の学習については基礎をしっかり身に付けた上で行うもので必修型の時間で行わなければならないものであり、発展的な学習内容は探究に直結するものである。実際の授業場面では、発展的な内容については自宅学習で行うということも想定され、個々の子供が別々に行うことになり、共通認識を図ることからは外れることになる。しかし活用活動は共通で行わなければいけないものであるので、共通の時間の中で活用も行わなければならないが、そこまで出来るかが疑問である。
【委員】
授業時数の増加の趣旨として、教科書の改善にも受け止めながら改善することが大切である。一般的な理解としては内容の増加と授業時数の増加は関連しているが、今日の改訂においては習得・活用・探究や小・中学校の円滑な接続などが授業時数増の主な趣旨として盛り込まれた。内容の増加はある程度確保しつつ、授業の工夫の充実を図るという観点が中教審の答申にも盛り込まれていたと思うが、その点を教科書編集の際にどういう形で盛り込まれるか、教科書発行者に受け止めてもらえるかという点が重要である。
【委員】
教科書発行者に対しても、発展的な学習の時間に対する共通認識を持たせるにはどうしたらよいか、ということについても議論を行うべきである。図書を申請する際に発展的な学習内容の記述があることはよいことであると思うが、やみくもに発展的な記述内容を入れるようなことも考えられるので、教科書発行者にも理解してもらうような手立てが必要である。
【委員】
中教審の考え方では、効果的・効率的な指導のための諸方策として、従来の一斉指導を重視することに加え、習熟度別指導や少人数指導として発展的な学習内容や補充的な学習が位置付けられる。現場や教科書発行者も学習指導要領を確認すれば、その点については混乱することなく収束するのではないか。
【委員】
資料4の三つ目の柱に記載のある教科書観の問題について、「児童生徒が一律に学習する内容ではないこと」という徹底が重要である。新しい学習指導要領の中にも位置付けられてきたことであり、学習指導要領に書かれたことはきちんと教えるが、余裕があったり個別学習を行う際など、従来教科書は教えてもらうべきものから自宅学習もできるという方向性になったので、教科書観も変わったという点をアピールすべきなのではないか。
【委員】
教科書記述の分量が増加したときに教師が全て教えなければいけないというプレッシャーが生じるという点について、学習指導要領の基本を踏まえれば教科書記述が増加しても最低限を教える方向になっており、全て教えるという概念は薄れつつある。保護者についても、教科書の記述を増やしてその中から教師が内容を選択することについても理解が得られているのではないか。
【委員】
資料4の二つ目の柱の1つ目「本文以外での記述とすること」について、これまでの検定基準においては本文とは違う、本文以外として付録や囲みといった形で発展的な学習内容が記載されてきた。しかし、新しい学習指導要領下では教科書の充実という方向にあると理解しており、本文として記述することについても検討が必要ではないか。その際は発展的な学習内容であるということがしっかりわかる形で記載されるべきである。
【委員】
資料4の三つ目の柱である入学者選抜の観点については、児童生徒が一律に学習する内容ではないということを考えると、発展的な学習内容は引き続き出題対象にしないなどの配慮が必要なのは当然である。これが発展的な学習内容の位置付けとも大きく関係するのではないか。
【委員】
発展的な学習内容の量的な上限はなくしても良いということであるが、資料5の2‐(1)の内容については、量ではなく内容的な制限のことが記載されている。理科についてはこの点は悩ましいところであり、基準がなければ発展的な学習内容をどこまで書いていいのか、という判断基準がなければ審議会にすべて委ねられることになる。この基準に照らしてどうか、といったある程度の基準は必要である。
【委員】
資料5について、検定基準上に「不必要なものは取り上げていないこと」という記載があるが、不必要とはかなり主観的なものであり、不適切であればある程度客観的に判断できる。1‐(2)のこの部分を削除し、発展的な内容の項目として示すのがよいのではないか。また、2‐(7)にも「不必要に重複」という記載があるが、新しい学習指導要領には教科間の連携を重視するような方向性であり、この部分を削除するのがよいのではないか。
【委員】
2‐(13)の内容は大切であると思うが、指導する教師自身、あるいは学校が適切な時間等の確保を配慮し行われる、というような記述がなされてもよいのではないか。今回の習得・活用・探究は適宜時間配分がなされることが重要であるが、これまでの教科書記述の配列はそれらの趣旨とは違った形で時間を置く形になりがちで、授業者が適宜時間の配分を行いづらいものではなかったか。もう少し教師の授業づくりに配慮されるような書き方になってもよいと思う。
【委員】
資料5の2‐(13)について、「児童又は生徒が当該活動することができるよう」と記載があるが、この点については児童生徒、学校、家庭に限定することなく、地域活動などを含む考え方もあってもいいのではないか。
【委員】
今回の論点整理で欠けている点があるように思うが、今回新しい学習指導要領において授業時間数増となっているが、内容の増だけでなく、この学習過程の工夫を目指すことや、小学校・中学校間の円滑な接続がその趣旨として掲げられている。この点を十分に打ち出してもよいのではないか。
【委員】
教科書は基本的に生徒のためのものであり、生徒が読んでわかるものが必要である。また同時に、教師の指導内容を規定してしまうものであるので、その点は望ましい方向、生徒の理解の妨げにならないような工夫があってもよいのではないか。
初等中等教育局教科書課