総括部会 新教育課程に対応した教科書改善に関するワーキンググループ(第5回) 議事要旨

1.日時

平成20年7月4日(金曜日)13時~15時

2.場所

霞が関ビル33階 東海大学校友会館「望星の間」

3.議題

  1. 新しい教育課程に対応した教科書の改善方策について
  2. その他

4.出席者

委員

秋山委員、安彦委員(主査)、伊藤委員、浦野委員、甲田委員、榊原委員、杉原委員、高倉委員、谷坂委員、富岡委員、西沢委員、橋本委員、長谷川委員、濱口委員、廣部委員、茂手木委員、若井田委員

文部科学省

布村審議官、伯井教科書課長、串田教科書企画官、森山教科書検定調整専門官、佐々木教科書課課長補佐、藤原教育課程企画室長補佐 他

5.議事の概要

  • 主査から、前回の第4回ワーキンググループにおける議事の概要案の確認依頼があった。
  • 新資料2及び資料3について、事務局より説明を行った後、新教育課程に対応した教科書改善について議論を行った。

主な意見等は以下のとおり。

1.教科書改善の方向性について

【委員】
 全国高等学校長協会からの「知識注入型」から「探究型」への転換という意見について、これはお互いに矛盾する概念のように書かれているが、基礎的な知識の習得なくして探究ということは有り得ない。その上で知識を活用する形で探究型の内容を提示していく教科書が望ましいのではないか。

【委員】
 習得・活用・探究など新教育課程の趣旨に対応した教科書の作成については、理解力や学習段階、学習方法について様々な個性をもった子どもたちがいるので、それぞれに応じて知識・技能を習得し、活用、探究していけるような教科書が望ましい。

【委員】
 探究活動の記述については、検定の際にレポートをどのようにまとめるかというスタディ・スキルの観点から意見をつけることも必要である。

【委員】
 言語活動の充実については、教科書作成場面と検定の場面とで、どのように扱っていくのか。例えば、理科の実験等での記録や論述を言語活動の充実の観点から教科書に掲載しても、授業時数の制約からできないことが考えられる。

【委員】
 ICTが進化している中で、基礎資料などの参考資料をあわせた教科書の方向性をしっかり定めなければいけない。

【委員】
 教科書に単元や学習の目標が記載されると、子どもたちが学習する上で理解しやすいのではないか。

【委員】
 教科書の在り方や検定の在り方については、教科や分野によって考え方に差があるようだが、何が一番大切なのか、といったことについては共通した認識を図るべき。

【委員】
 家庭学習など、子どもたちが学校の授業以外でも学ぶことができる教科書が必要ではないか。発展的な学習についても、基礎基本と分けて明記した教科書を学ぶことで意欲がわき、関心が広がる教科書であるべきではないか。

【委員】
 教師が全員に共通して教える部分と生徒の学習状況に応じて教える発展部分とに分けて教科書に示し、子どもたちが見てもわかるようにできれば、子どもたちが学びやすく、家庭でも学習できるような教科書となるのではないか。

2.教科書の質・量両面での具体的充実方策について

(質・量の充実について)

【委員】
 芸術分野の授業は実際に書く動作を伴わなければ成り立たない。そのような中で生徒の感性を伸ばすとなると、教科書の教材は学習のための材料集であるので、材料はできるだけ多いほうがよく、印刷の質もなるべく良いほうがよい。

【委員】
 教科書の質・量両面での充実や発展的な学習の充実が指摘される中で、現行の検定基準の見直しに当たっては、「はどめ」的な規定について見直すべきである。

(はどめ規定について)

【委員】
 学習指導要領に示されている範囲というのは、基礎的、基本的な知識・技能の内容となっており、全ての児童が学ばなければいけない内容であると理解している。また、学習指導要領の中で規定されているカリキュラムを活用し、解決するために必要な思考力や判断力、表現力等を育成していくことになる。学習指導要領以上の内容が発展的な学習であると理解している。今回はどめ規定がなくなったことは、発展的な学習についてのはどめがなくなったということであったように思う。

【事務局】
 そもそも発展的な学習は内容を理解した子どもが個々の興味・関心や学習段階に応じて行うものであり、はどめ規定に関する話とは違うものである。また、習得・活用・探究についても、全ての子どもたちが学ぶ際に活用型の場面、探究型の場面の設定を行うという学習のプロセスの話であり、その点を区別して検定基準上もきちんと整理しておかなければならない。

(イラスト、図について)

【委員】
 イラストの扱いについては、分野によって違う。理科では、例えば地学における地球の内部など、内容の説明・理解のために必要不可欠なイラストがある。ただ単に子どもたちの興味関心を引き付けるためのイラストとは区別して考えなければならない。

【委員】
 学ぶ目的、内容に対する興味・関心を高めることと、関係のないイラストは必要ないということではないか。

【委員】
 目立たせようとする余りに過度に色を使った教科書もある。イラストを使用するのであれば、発行者はカラーコーディネーターを置くなど、見やすい教科書編集に向け、きちんと対応すべきであると考える。

3.教科書の中立性・正確性の確保について

(中立性の確保について)

【委員】
 部会における議論の中で、教科書記述における中立性の確保に関連して「客観性を確保するためにも、従来の学説とは異なる学説や、学術的に解釈が分かれているものなどについては、できるだけ多角的に記述していく必要がある」との意見があったが、著者の一面的な主張が目立つ場合や、学説が錯綜していたり、多様な説がある場合は、両説併記や多角的な記述を認めるような方向で、検定基準の見直しに反映できればよいのではないか。

【委員】
 教科書記述が中立・公正であるべきという点は当然のことである。その際、いわゆる「通説的見解」が重要な役割を果たすが、何が通説的見解なのかは審議会において慎重に議論することが重要である。

(正確性の確保、誤記・誤植について)

【委員】
 「誤記・誤植」の定義について、明確にすべきである。

【委員】
 誤記・誤植については、発行者側に検定審議会でチェックしてもらうという姿勢が見受けられる。審議会において誤記・誤植について指摘するのではなく、発行者に対して誤記・誤植の件数を伝え、再提出を求めるということを徹底することで良いのではないか。教科書の質の確保という点で発行者側にも責任を持ってもらうというスタンスでよい。

【委員】
 教科書協会等での研修会等によって誤記・誤植の数が少なくなることを期待する。

【委員】
 校正に関しては、自らの著作物に責任を負うという意味で、著者自身による校正が少ないのではないか。このような審議会における議論の内容を著者まで伝えなければならない。

【委員】
 著者校正等を教科書作成のワンステップとして要求し、それを手続き的に担保にしてはどうか。

以上

お問合せ先

初等中等教育局教科書課