新教育課程に対応した教科書改善に関するこれまでの主な意見(WG及びヒアリング等における意見)

○教科書改善の方向性について

(教育基本法で示す目標等を踏まえた教科書の改善)

  •  今回の学習指導要領の改訂は、教育基本法や学校教育法の改正により、共通教養としての義務教育の目標が示されたことを踏まえたものとなっている。発展的な学習に対する意見や各教科に関する意見も重要だが、この強調されている義務教育の目標をどれだけおさえているか、といった観点が重要である。(教科書改善WG)
  •  教育基本法が改正され学校教育法に義務教育の目的が明示されたことを踏まえ、関係者一同が自覚して教科用図書にかかわる業務を遂行することが大切。(全国連合小学校長会)

(知識の習得・活用・探究など新教育課程に対応した教科書の充実)

  •  知識・技能を習得させることはもちろん、それを活用させるような教科書、さらには、探究する態度を育てるような教科書が作成されるようになれば、学習指導要領の趣旨を生かすものになるのではないか。(教科書改善WG)
  •  基礎的・基本的な知識・技能の習得と活用を図り、児童が探究できる内容・記述・体裁にしてほしい。また、若手教員の増加に対応して、指導しやすい教科用図書としてほしい。(全国連合小学校長会)
  •  学校の授業を「知識注入型」から「探究型」に大きく転換する必要があり、それに伴い学習活動を支える教科書も転換が必要である。(全国高等学校長協会)
  •  これからの時代に必要な「生きる力」を育成するため、子どもが学びやすい教科書とするため、質・量の充実が必要である。(日本PTA全国協議会)
  •  発行者の創意工夫により、各教科において知識・技能を活用する学習活動に資する記述の充実や教科書のページ数の増加等が考えられる。(全国都道府県教育長協議会)
  •  国語教材について、言語活動の充実を図るため、文章に親しみやすくなるようリズム感のある文章を多く学習内容として取り上げ、表現力を高める教材を取り込むべきではないか。(全国特別支援学校長会)
  •  教育内容の主な改善事項例として、各教科等において、記録、説明、論述、討論といった「言語活動の充実」が示されており、これを教科書作成場面と教科書検定場面にどのように取り入れていくかについて検討すべきと考える。(教科書改善WG)
  •  習得・活用・探究など新教育課程の趣旨に対応した教科書の作成については、理解力や学習段階、学習方法について様々な個性をもった子どもたちがいるので、それぞれに応じて知識・技能を習得し、活用、探究していけるような教科書が望ましい。(教科書改善WG)

(教科書を使用する立場からの教科書の充実)

  •  教科書の多くは教材を提示、提案する形でまとめられており、学習の目的、手段が明確に読み取りにくくなっており、実際の学習目的や学びの手順は教師にまかされている。(全国市町村教育委員会連合会)
  •  教科書は、学習のプログラムとして、子どもたちにとって明確にわかる記述、構成等にするべきである。(全国市町村教育委員会連合会)
  •  教科書に単元や学習の目標が記載されると、子どもたちが学習する上で理解しやすいのではないか。(教科書改善WG)

○教科書の質・量両面での具体的充実方策について

(分量や内容のはどめとなっている基準の規定の見直し)

  •  「義務教育諸学校教科用図書検定基準」の第2章1(2)の「…学習指導要領に示す内容及び学習指導要領の内容の取扱いに照らして、不必要なものは取り上げていないこと」という規定は、見直しが必要ではないか。(教科書協会)
  •  同じく、第2章2(5)の「図書の内容は厳選されており、網羅的、羅列的になっているところはないこと」という規定の、「厳選されており」は見直しが必要ではないか。(教科書協会)
  •  同じく、第2章2(7)の「図書の内容に、他の教科、学習指導要領に示す他の分野又は他の領域、道徳及び特別活動の内容と矛盾するところや不必要に重複しているところはないこと」という規定の「不必要に重複しているところはないこと」の規定は見直しが必要ではないか。(教科書協会)
  •  教科書の質・量両面での充実や発展的な学習の充実が指摘される中で、現行の検定基準の見直しに当たっては、「はどめ」的な規定について見直すべきである。(教科書改善WG)

(発展的な学習に関する記述の充実)

  •  発展的な学習を、今まで以上に教科書に組み込むことが必要。基礎的・基本的な学習内容と発展的な学習内容を、教科書の構成上よりわかりやすくするべきである。(全国市町村教育委員会連合会)
  •  「はどめ規定」の見直しに関し、今後、「発展的な学習内容」の取り扱いをどう考え、教科書検定に反映させていくのか。(教科書改善WG)
  •  教科書には、発展的な学習に関する記述の一層の充実が図られることなどが求められているが、発展的な学習の分量を増やすことには運用上制約があることから、発展的な学習の充実と運用について議論を行うべきではないか。(教科書改善WG)
  •  教師が全員に共通して教える部分と生徒の学習状況に応じて教える発展部分とに分けて教科書に示し、子どもたちが見てもわかるようにできれば、子どもたちが学びやすく、家庭でも学習できるような教科書となるのではないか。(教科書改善WG)
  •  家庭学習など、子どもたちが学校の授業以外でも学ぶことができる教科書が必要ではないか。発展的な学習についても、基礎基本と分けて明記した教科書を学ぶことで意欲がわき、関心が広がる教科書であるべきではないか。(教科書改善WG)

(反復学習の教科書への反映)

  •  新学習指導要領で示されている「反復による指導」の視点を教科書に生かし、教科書検定に反映させていくべき。(教科書改善WG)
  •  学校あるいは家庭学習での反復練習を児童生徒が主体的に重ねることができるような練習問題等の増加及び発展的学習へと続く内容への配慮が必要である。(全国特別支援学校長会)
  •  繰り返し学習については、単に数を増やすだけでなく、児童・生徒の意欲や学習効果を考慮し、段階や系統を踏まえて取り入れる必要がある。(全国市町村教育委員会連合会)

(児童生徒の興味関心や学習段階等に応じた幅広い対応)

  •  児童生徒の立場からすると、興味関心を持って読み進められたり、自学自習できる教科書が求められる。(教科書改善WG)
  •  今後は、個の力に応じた基礎学力定着や上位課題への挑戦促進を目指すことが求められるだろう。学習課題のレベルに配慮しながら、教科書記述の総量を増やし、多様なレベルに対応する必要があるのではないか。(全国高等学校長協会)
  •  教科書は、児童生徒の現実の学習活動を十分理解した上で、日常的に思考力、判断力、表現力等の育成ができる内容、記述、構成等になっていることが必要なのである。(全国市町村教育委員会連合会)
  •  現状では、教科書の学習内容に系統性が不足しているのではないかという意見もある。学ぶ者の立場に立つ、好奇心や学ぶ意欲を刺激する教科書であることが必要ではないか。(全国高等学校長協会)

(教科書に求められる多用な役割)

  •  中教審でも教科書については、薄い、教師がいないと学べない、といった議論が出ている。現在の薄い教科書ではなく、子どもたちが家に持ち帰り、家庭でも学習ができるような教科書が望ましい。(教科書改善WG)
  •  基礎的・基本的な知識・技能の確実な習得のためには、これまでの教材提示型の教科書から、児童・生徒に学習の目的や方法、手順等を明確にし、学び方を学べる内容・構成を考えた教科書が必要である。(全国市町村教育委員会連合会)
  •  教科書に書き込みができるように工夫したり、児童・生徒が自主的に学習できるページを掲載したり、図式化したものを提示するなど、指導内容や資料、ノートなどの要素が織り込まれた、新しい教科書を検討してもよいのではないか。(全国市町村教育委員会連合会)
  •  ICTの進歩は、今後ますます学校教育のあり方に影響を与えるが、その際には基礎資料と参考資料をあわせたような教科書が必要である。(全国高等学校長協会)
  •  資料や演習問題についても教科書に盛り込まれていることが望ましい。(全国高等学校PTA連合会)
  •  学校現場では、保護者も含めて、教科書の内容は全て教えるものであると捉えている。教科書の厚さや内容等、国民の教科書観について議論してもよい。(検定手続きWG)

(イラスト・カラーなどの使用上の留意点)

  •  大型化や、写真、紙質の向上、グラビア頁の増大、カラー頁の増大などによって、教科書の体様が大きく変わってきているが、それがストレートに「質的向上」に結びついているかは議論の余地がある。キャラクターやマスコットや挿絵があることによって、本当に理解の助けになっているか検証する必要がある。(全国市町村教育委員会連合会)
  •  最近の教科書は子どもの興味・関心を引きつける手段として、イラストや漫画を多用し、子どもに媚びているように感じる。教科書は学問の書であるとの認識をしっかり持ってほしい。(教科書改善WG)
  •  学習内容に関係がないと思われるイラストやマンガが多すぎると感じる。多用して理解しやすくなるのか疑問に思う。(教科書改善WG)
  •  イラストやカラーについては、煩雑になるだけでなく、図や絵を掲載することにより、児童生徒が想像できる範囲を限定してしまうことになることにも留意してほしい。(教科書改善WG)
  •  イラストの扱いについては、分野によって違う。理科では、例えば地学における地球の内部など、内容の説明・理解のために必要不可欠なイラストがある。ただ単に子どもたちの興味関心を引き付けるためのイラストとは区別して考えなければならない。(教科書改善WG)
  •  学ぶ目的、内容に対する興味・関心を高めることと、関係のないイラストは必要ないということではないか。(教科書改善WG)
  •  目立たせようとする余りに過度に色を使った教科書もある。イラストを使用するのであれば、発行者はカラーコーディネーターを置くなど、見やすい教科書編集に向け、きちんと対応すべきであると考える。(教科書改善WG)

(教科書の分冊)

  •  教科書の質量両面での充実は重要であるが、量の充実については、単に頁数を増やすことだけではなく、選択肢(冊数・種類)を増やすことも考えられるのではないか。(教科書改善WG)
  •  教科書の重量を考慮し、分冊等の工夫をするなど、生徒が持ち運びしやすくなるようにしてほしい。(全日本中学校長会)

(文部科学省の周知徹底)

  •  新学習指導要領の趣旨を教科書に反映させるために、文部科学省は教科書発行者に対し、しっかりと周知を図ることが重要である。(教科書改善WG)
  •  発行者としては、「充実した」教科書を作成することに全力を傾注する。教科書が分厚くなった場合、学校ないしは学級の児童・生徒の実態に応じて、教科書の記載内容を選択的に取り扱ってよいという教科書観への転換が重要になってくる。その際教育現場や執筆者に周知を図る必要がある。(教科書協会)

○教科書の中立性・正確性の確保について

(教科書の正確性の確保)

  •  単純な誤記・誤植については、採択者に情報を提供することとし、編集がずさんな発行者は結果として自然淘汰されてもしょうがないのではないか。(教科書改善WG)
  •  教科書発行者に対して申請図書提出前までに不正確な記述について、きちんとチェックするように求めておくのは大切である。(教科書改善WG)
  •  誤植について、申請図書には編集段階で普通に見ていればあり得ないような間違いが多い。このような発行者に対しては何かしらのペナルティが必要なのではないか。(教科書改善WG)
  •  教科書協会等での研修会等によって誤記・誤植の数が少なくなることを期待する。(教科書改善WG)
  •  誤記・誤植については、発行者側に検定審議会でチェックしてもらおうという姿勢が見受けられる。審議会において誤記・誤植について指摘するのではなく、発行者に対して誤記・誤植の件数を伝え、再提出を求めるということを徹底することで良いのではないか。教科書の質の確保という点で発行者側にも責任を持ってもらうというスタンスでよい。(教科書改善WG)
  •  校正に関しては、自らの著作物に責任を負うという意味で、著者自身による校正が少ないのではないか。このような審議会における議論の内容を著者まで伝えなければならない。(教科書改善WG)
  •  著者校正等を教科書作成のワンステップとして要求し、それを手続き的に担保にしてはどうか。(教科書改善WG)

(公正・中立な教科書)

  •  教科書の記述は、学問的な成果の上に立って公正・中立に記述されるべきものである。(全国連合小学校長会)
  •  国家・社会の形成者としての資質を養うという調和のとれた義務教育を目指すことが教育基本法等に再定義されたが、教科書も公共の精神や社会の一員としての資質育成の視点から考慮されるべきである。争いのあることはそれぞれの立場で検証すればよいが、教科書としてはあくまでも義務教育の目的に沿って公正・中立なものをつくるべきだし、採択も公正・中立に行うべきである。(全国連合小学校長会)
  •  実際に教科書をつかう現場の声が採択の場に適正に反映されることを担保してほしい。様々な団体がその価値基準にかなったものを採択につなげようと働きかけることも見受けられる。採択に至っても公正・中立性が担保されるべきである。(全国連合小学校長会)
  •  教科書記述における中立性の確保に関連して、著者の一面的な主張が目立つ場合や、学説が錯綜していたり、多様な説がある場合は、両説併記や多角的な記述を認めるような方向で、検定基準の見直しに反映できればよいのではないか。(教科書改善WG)
  •  教科書記述が中立・公正であるべきという点は当然のことである。その際、いわゆる「通説的見解」が重要な役割を果たすが、何が通説的見解なのかは審議会において慎重に議論することが重要である。(教科書改善WG)

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