教科書検定手続きの改善方策に関するこれまでの主な意見(WG及びヒアリング等における意見)

1.検定手続きの透明性の一層の向上

1.議事の公開のあり方

  •  教科書検定について、国民各位からこれまで以上に信頼を得るためにも、検定手続きの一層の透明性の確保についてご努力いただきたい。(全国連合小学校長会)
  •  審議会委員と教科書調査官の役割やその関係について明確にし、審議結果に至る過程を透明化することで、検定に対する信頼度を高めるようにしなければならない。(検定手続きWG)
  •  検定については審議会においてどのような議論がなされ、結論が出たかというプロセスを明らかにしていくことが重要であり、委員についても、どのような形で選任され、選任された委員がしっかり審議しているということを国民に知らせることは重要である。(検定手続きWG)
  •  外部からの指摘を見ていると、審議会の委員がどのように選ばれたかについても関心が高いように思われる。(検定手続きWG)
  •  検定を実質的に行っている小委員会の議事については、例えば昨年の日本史小委員会の報告における対応のように、概要を作成し公表すべきである。(検定手続きWG)
  •  検定審議会のすべての部会・小委員会について、今回の日本史小委員会のような詳細な報告を作成することは実務的には極めて困難であろう。(検定手続きWG)
  •  教科書検定は、静かな環境の中で専門家である委員の知見により、公正・中立に専門的・学術的に審議がなされることが重要であることから、会議自体を公開していなくとも、事後に議事の概要を公表することなどにより、透明性は確保できる。(検定手続きWG)
  •  検定を全て終えるまで外部に漏らすべきでない情報もあり、何でも逐次公開していくことを求めるのではなく、事後的に公表すればよいとも考えられる。(検定手続きWG)
  •  行政施策のあり方等を審議するのではなく、申請図書の合否について審査する審議会の性格上、各委員の具体的な発言を公表することは、自由闊達な議論を妨げることから難しいと思われるので、申請図書に対して、どのような意見が出されたのかがわかる議事の要旨を公表するのが良い方法ではないか。(検定手続きWG)
  •  議事概要的なものを作成し、議論の内容や会議の開催回数などの基本的な情報は伝える必要がある。他方、説明責任を果たすことが必要な論点や論争があるものや、配慮が必要なものなどがある場合は、事後で説明していくことは重要である。(検定手続きWG)
  •  議事の公開方法などについては、審議会全体としての目安となるものを作成し、各部会特有の事情については各部会において検討するのも一つの方法であるのではないか。(検定手続きWG)
  •  審議内容の公開については、どの時点でどの内容を公表するのかが問題である。(検定手続きWG)
  •  誤記・誤植の審議にとらわれるあまり、審議に支障が生じていることから、明確な誤記・誤植などについては審議を行う前に、その対応について部会・小委員ごとに合意しておくことが必要ではないか。(検定手続きWG)
  •  基本的に公開を原則として考えるが、議事や委員会の公開の時期を考慮し、有効に意見等が反映されるタイミングを考慮する。(全国市町村教育委員会連合会)
  •  審議会委員による審査については、審議中は静ひつな環境が確保されるようにすべきである。ただ、審査終了後は審議会の委員による審査によって検定意見がどのように付されたかということがわかるよう公表のあり方を検討すべきである。(検定手続きWG)
  •  検定手続きの透明性の向上を図ることは必要であるが、予断・憶測等の流布防止とともに、静ひつな環境を確保するためには、審議過程での公開は避けるべきであると考える。(教科書協会)
  •  審議状況は公表せず、論理的根拠等を明確に示すことができるようにする。(全国特別支援学校長会)
  •  国民の信頼を確保するために議事を公開していくという観点から考えると、現在公開資料としていない、例えば、教科書発行者から提出された合否についての反論書や検定意見に対する意見申立書などにかかるプロセスについても、公開していく方法が考えられる。(検定手続きWG)

2.各部会・小委員会の委員分属の公開のあり方

  •  検定については審議会においてどのような議論がなされ、結論が出たかというプロセスを明らかにしていくことが重要であり、委員についても、どのような形で選任され、選任された委員がしっかり審議しているということを国民に知らせることは重要である。(再掲:検定手続きWG)
  •  外部からの指摘を見ていると、審議会の委員がどのように選ばれたかについても関心が高いように思われる。(再掲:検定手続きWG)
  •  どのような教科書検定が行われたかについては、社会科に限らずどの科目でも国民の関心事であり、どのような委員において、どのような過程で教科書が検定されているかについて、できるだけ透明にしていくことが国民の要請であると考えられる。(検定手続きWG)
  •  委員の部会・小委員会への分属の公開については、検定プロセスの公開とリンクして考えるべきであって、プロセスを事後に概要としてまとめ公表するのであれば、委員についてもその時に明らかにすればよい。(検定手続きWG)
  •  委員の分属については、調べれば専門分野がわかり、どの部会に属するか推測できるので、はっきりと公表した方がよい。(検定手続きWG)
  •  実際問題として委員が毎年代わるわけではなく、継続して関わっている。分属を事後で公表したとしても、翌年度以降の静ひつな環境が確保されないのではないか。(検定手続きWG)
  •  小委員会の分属を公開する場合は、翌年度以降についてその影響を考える必要がある。(検定手続きWG)
  •  委員の分属に関する透明性の確保と静ひつな環境の確保については、適切なバランスを考えるという発想が必要ではないか。(検定手続きWG)
  •  透明性の確保と静ひつな環境の確保については、相反する面があり、そのバランスが重要である。(検定手続きWG)

3.検定意見の伝達方法等のあり方

  •  教科書検定制度は、検定意見通知などを見ても、行政法規に照らして慎重な手続きになっていると思う。一方で、運用も問われる。(検定手続きWG)
  •  検定意見をつけた趣旨がより正確に理解されるよう、検定意見の伝達の場などでの発行者とのコミュニケーションを工夫すべきである。(教科書改善WG)
  •  検定意見については、指摘事由をできるだけ具体的に記述することや、意見通知時に詳しく説明するなど、意見の意図が発行者に正確に伝わるようにしていただきたい。(教科書協会)
  •  現在では検定意見は公開されており、公開の取組みは増してきているが、それでもなお検定意見の形成過程には不透明さが残る。(検定手続きWG)
  •  より良い教科書の編集・作成のためには、検定意見の伝達に当たって、調査官と発行者とのコミュニケーションについて工夫し、やりとりの中で改善に向けて反映させていくことができれば良いのではないか。(検定手続きWG)
  •  調査審議において特別な手続きを行った場合については、発行者に対する説明の仕方などについて検討が必要ではないか。(検定手続きWG)
  •  国会においても委員や調査官の選定の在り方について問題が指摘されたことについて、検討の視野に入れるべきである。(検定手続きWG)

2.専門的見地からのきめ細やかな審議の確保

1.検定の審議にあたって特に慎重な判断を要する事項についての審議のあり方

  •  教科書検定における審議については、学術的な事項と誤記・誤植などの技術的な事項を分け、審議にメリハリをつけるべきである。(検定手続きWG)
  •  検定意見の中で特に専門的な審議を要する事項をピックアップして審議することは必要である。科目の性格に応じて観点が異なるだろうが、過去の事例や経験を参考にしながら、部会ごとに事項を洗い出していけばよいのではないか。(検定手続きWG)
  •  議事の公開と関連するが、何を重点的に審議するかは部会ごとに状況が違うと考えられるので、抽象的な共通の基準を作成し、それを基に部会毎に判断するのが一般的ではないか。(検定手続きWG)
  •  例えば審議に先立ち、何を重点的に議論するかについて委員間で意志の確認を行うなどによって、メリハリのきいた審議を行う方策が必要である。(検定手続きWG)
  •  「特に判断を要する事項」については、必要に応じ審議会の委員の他に複数の専門家の意見を聴取するなど、特段の配慮が必要である。(教科書協会)

2.専門委員等の活用のあり方

  •  例えば特定事項に対する専門委員の活用のあり方に改善の余地がある。(検定手続きWG)
  •  児童・生徒の発達段階や教育現場の状況に鑑みた「教育的配慮」という観点から、学校現場の経験豊かな人材の活用が望まれる。(教科書協会、全国高等学校PTA連合会)

3.静ひつな環境における公正・中立な審議の確保

1.審議過程における情報管理のあり方

  •  採択する立場からは、どの教科書についても検定を経たということで信頼性が確保されていることが重要。また、審議中は審議会が十分に審議できる静ひつな環境が確保されるべきである。(検定手続きWG)
  •  どのような形で審議における静ひつな環境を確保していくかについては、しっかり議論したい。(検定手続きWG)
  •  透明性の確保と静ひつな環境の確保については、相反する面があり、そのバランスが重要である。(再掲:検定手続きWG)
  •  静ひつな環境の確保が必要であることをどう理解してもらうのかが重要であると考える。静ひつな環境の確保は透明度を下げるということではない。(検定手続きWG)
  •  発行者サイドから情報が流れた場合には何らかの「制裁」を加えることも考えてよいのではないか。(検定手続きWG)
  •  申請図書等の情報管理に関し、どのような対応を求めるかについては、教科書会社、執筆者、審議会委員によって分けて考える必要がある。(検定手続きWG)
  •  関係者の情報管理については、細心の注意を必要とする。(全国市町村教育委員会連合会)
  •  教科書検定においては、検定決定に至るまでの静ひつな環境が保持され、公正・中立な審議が確保されなければならない。検定決定までは、発行者(執筆者を含む)をはじめ検定にかかわる者がそれぞれの立場で、審議内容に関して守秘義務を有することは当然である。(教科書協会)

4.教科書記述の正確性の確保

  •  検定済みである以上はどの教科書を採択したとしても、信頼性が確保されている必要がある。誤記・誤植は教科書会社の問題であり、その数を公開してもいいと考える。(検定手続きWG)
  •  教科書発行者は、誤りは許されないという自覚のもとに、教科書の編集を行うことは当然である。(全国市町村教育委員会連合会)
  •  正確性の確保については、技術的な問題もあると思う。例えば、誤記・誤植については、目に余るような記述が申請図書に見受けられる。(検定手続きWG)
  •  正確性は、何をもって正確かという問題があり、それは教科の特質とも関係がある。例えば、教科書の挿絵の正確性について、審議会委員がどの程度意見を言うのか。(検定手続きWG)
  •  誤植や単純な誤りについても一定数で不合格とするなど、教科書会社側が自ら努力するような、インセンティブの働くシステムづくりが必要ではないか。(検定手続きWG)
  •  誤記・誤植が多いという理由だけで教科書を不合格にするのは厳しすぎる措置である。中間点な対応は考えられないのか。例えば、審議前に一度チェックして、誤記・誤植が多い場合は申請を留保し、修正したものを再申請させるということも考えられるのではないか。そうすれば、実質の審議が遅れることにより、発行者に対してインセンティブが働くのではないか。(検定手続きWG)
  •  例えば、ミスの数に応じて手数料を払うとか、国が編集体制をチェックするとか、それが難しければ教科書会社同士で編集体制のピアレビューを行うとか、編集体制をユーザーにも広く公表するなどの手段も考えられる。(検定手続きWG)
  •  正確性で判断が難しいような記述(例えば、表現が不自然なもの)などは、基準で規制することよりも、自由競争に任せるなど、採択側が望ましい記述ぶりを判断できるようにしてはどうか。(教科書改善WG)
  •  執筆担当者としての責任を自覚してもらうためにも、執筆担当箇者名を明記するなどの手段も考えられる。(検定手続きWG)
  •  監修者を置いている教科書発行者が多いが、この監修者の役割をもっと明確にすべきであるし、誤記・誤植に関しても関わるようにすべきである。(合同WG)
  •  校正の体制ができていない発行者も多い。例えば基本的な編集体制を義務づけることも必要ではないか。(検定手続きWG)
  •  編集体制の基準を作成して、それを各発行者に遵守してもらうということも考えられるのはではないか。(検定手続きWG)
  •  編集体制の透明性と検定手続きの透明性は連動して位置付けられるのではないか。今後、編集体制の透明性を求めていくということになれば、監修者の責任やそれぞれの編集体制のあり方について公開し、ユーザーに公表していくということも必要なことではないか。(検定手続きWG)
  •  これまでも、正確性の確保については審議会として教科書会社に求めてきたが、改善されていない状況にある。教科書の持つ社会的責任の大きさを考えれば、審議会としては教科書会社に編集体制等の強化を要求し、場合によっては、何らかの制度的措置を講ずる必要もあるのではないか。(検定手続きWG)

5.その他改善方策

  •  文部科学大臣と本審議会との権限関係を明確にし、外から見てもわかりやすくするという観点から省令上明記した方がよいのではないか。(検定手続きWG)

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初等中等教育局教科書課