「教科書検定の見直し」に関する意見(社団法人教科書協会)

平成20年6月16日

教科用図書検定調査審議会総括部会
部会長 杉山 武彦様

社団法人 教科書協会

はじめに

 去る5月28日に開かれた教科用図書検定調査審議会において、「新教育課程の実施に対応した教科書の改善方策」に関して当会の意見を述べさせていただきました。
 今回は、「教科書の検定手続きの改善方策」に関する当会の意見を提出させていただきます。
 以下に、予めお示しいただいた項目に沿って意見を述べさせていただきます。項目ごとに1、2、…で意見・要望を述べさせていただいたうえで、必要に応じてそれらの理由・背景等を(補足)として付しております。
 何卒下記の点について、ご検討くださいますようお願い申し上げます。

検定手続きの改善方策について

(1)検定手続きの透明性の一層の向上

  1. 「議事の公開等」は、検定決定後に行われるのが妥当であると考えます。部会・小委員会の分属の公開も同様に考えます。
    (補足)検定手続きの透明性の向上を図ることは必要ですが、予断・憶測等の流布防止とともに、静謐な審議環境を確保するため、審議過程での公開は避けるべきであると考えます。
  2. 検定意見通知では、指摘事由をできるだけ具体的に記述していただくか、意見通知時に詳しく説明していただくなど、検定の意図が発行者に正確に伝わるようにしていただくようお願いいたします。
    (補足1)平成11年の検定諸規則の改正によって検定意見が文書化され、改正前よりたいへんわかりやすくなりました。ただ、検定意見が検定基準の表現(「不正確な表現」「相互に矛盾する」「理解しがたい表現」等)を使用しているために具体性に欠け、文書だけでは検定意見の意図を十分に理解できないことがあります。
    (補足2)また、同一学習指導要領、同一検定基準の下でも、同一事項について前回検定時とは異なる検定意見が付されるケースがあります。検定基準の解釈・運用が変更になった場合は、その意見の背景について詳しくご説明いただきますようお願いいたします。

(2)専門的見地からのきめ細やかな審議の確保

  1. 「特に慎重な判断を要する事項」、例えば歴史認識や諸外国との関係に係る事項に関する教科書の記述内容については、必要に応じて審議会の委員のほかに複数の専門家の意見を聴取するなど、特段の配慮が必要であると考えます。
    (補足)公教育で使用される主たる教材としての役割を担う教科書は、記述の正確性とともに公正性・中立性が担保されなければならないと考えます。これらのことは、もとより発行者が強く自覚し、責任をもって保障しなければならないことですが、検定の調査・審議においても同様のことが言えるものと考えます。
  2. 現在でも、正確性の観点から当該教科・科目に密接に関連する学問・学術の専門的見地からの検定が行われております。教科書は児童・生徒が使用するものですので、検定においても児童・生徒の発達の段階や教育現場の状況に鑑みた「教育的配慮」という観点が必要になると思われます。したがって、経験豊富な現場教師等の意見聴取も必要であると考えます。

(3)静謐な環境における公正・中立な審議の確保

  1. 教科書検定においては、検定決定に至るまで静謐な環境が保持され、公正・中立な審議が確保されなければなりません。検定決定までは、発行者(執筆者を含む)をはじめ検定にかかわる者がそれぞれの立場で、審議内容に関して守秘義務を有することは当然のことと考えます。

(4)教科書記述の正確性の確保

  1. 正確性は教科書の生命線であり、発行者が最も意を用いなければならないことです。単純な誤記・誤植をなくすことは、発行者の責任において必ず実現しなければならないことと認識しております。
    (補足)教科書協会では2年前から各発行者の枠を超えて、ミス防止研修会を実施するなど、申請図書の完成度を高めることに努めております。今年度においても、二日間にわたって教科別にワークショップ形式の研修会を行うことを予定しております。このワークショップ形式の研修会は,主に中堅層以下の編集担当者を対象に実施する予定でおります。この層の実務遂行スキルの向上が,業界全体のミス防止に大いに資するものと考えております。こうした研修の成果を,各社に立ち戻り追体験を行ってもらい,研修成果をより広範に伝えて行くことも考えております。
  2. 申請図書につきましては、完成度の高い、正確なものを作成することは発行者の当然の責務であると認識しております。但し、検定申請後に、客観的事情の変化等により訂正せざるを得ない事項が出てくる場合があります。完成度及び正確性をより高めるためにも、新たに訂正申請を検定の過程で行えるなどの、検定意見通知以降の手続きについてご検討いただければと思います。
    (補足)発行者が申請図書の完成度を高めれば、検定意見や検定決定後の訂正申請の数が減り、現行規定の範囲で十分対応できるとのご意見もあろうかと思いますが、上記のような状況もございますので、ご検討くださいますようお願いいたします。

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