教科書検定手続きに関する国会の指摘事項

1.検定手続きの透明性の一層の向上

文部科学委員会議録第二号

平成一九年十月二十四日

【西委員】
 例えば調査官から教科書会社に対する通知というのですか、これなども、表面上は一言、短い文章ですが、具体的なサジェスチョンはまた口頭であるような感じも受けておりまして、個々の問題に対してきちっとした透明性、公開性、これをできるだけ確保するようにお願いをいたしたいと思っております。

文部科学委員会議録第二号

平成一九年十月二十四日

【石井(郁)委員】
 そこでお聞きしますけれども、では、教科書調査官の日本史担当の方のお名前、出身大学、学部、専攻学科を教えていただきたいと思います。

【金森政府参考人】
 お答えを申し上げます。
 各調査官の出身の学部、学科や専攻につきましては、個人情報に該当するため、お答えすることは差し控えさせていただきたいと存じます。

【石井(郁)委員】
 ここで個人情報を盾にとられて。おかしいですよね。だって、文科省の職員なんですから。何で卒業学部、学科、専攻を言えないんですか。しかも、明らかにしてほしいと。
 これは大事なんですよ。何で個人情報、了解を得ないんですか。得て断ったのなら、それはそういうこともあるでしょうけれども、得もしない。これが文科省のやり方なんですか。私は大変問題だというふうに思います。

【金森政府参考人】
 お答えを申し上げます。
 それぞれの教科書調査官の専門分野に関しまして、だれから指導を受けたかということにつきましては、個人情報に該当するため、お答えすることは差し控えさせていただきたいと存じます。
 ただ、教科書調査官の職務といたしましては、学問的、教育的見地から教科書が適切なものとなるよう、公正かつ中立的な立場から調査を行っているところでございます。

【石井(郁)委員】
 何でこの審議会委員の、専門委員の名前は出せないんですか。おかしいでしょう。公正中立な審議会だ、そこで学術的に審議を行っているというわけですから、どういうふうにそれが行われたのかという点で、どなたがその専門委員なのかということは最低必要な、明らかにすべきことだと思うんですが、おかしいんじゃないですか。
 この点は、大臣はいかがお考えですか。

【渡海国務大臣】
 この委員の先生方につきましては、実は名前が知れたことがありまして、非常に、家までマスコミが押し寄せるというふうなことが起こりまして、そして、そういう環境下では静かな議論をしていただけないというふうなこともありまして、今公表を控えさせているということを御理解いただきたいというふうに思います。
 名前を出さないから中立、公平、公正にならないということではないというふうにも考えます。その点は御理解をいただきたいというふうに思います。

【石井(郁)委員】
 これは先日の朝日新聞だったんですけれども、文科省の、いつごろでしょうか、教科書検定課長の方が登場されていましたよね。それでこうおっしゃっていましたよ。「当初の意見がなぜついたのか、説明が十分されているわけではない。この経過をどう社会に説明するのかは、文科省に課せられた宿題だ。」やはりそうおっしゃっているじゃないですか、中の方自身が。国民はやはり納得していませんよね。何でこういう検定意見がついたんだ、急に今ついたのかという問題ですよ。

文部科学委員会議録第二号

平成一九年十月二十四日

【小宮山(洋)委員】
 渡海大臣は、十月九日の閣議後の記者会見で、検定審議会が非公開で開かれていることなど、今までのやり方でよかったかどうか検討してみたい、変えなければいけない部分があれば当然変えていく、基本は公開ということだが、さまざまな疑義が生じないようにという面において、公開ということが大事なのではないでしょうかという趣旨のことを述べていらっしゃいます。
 透明性をこれから高めていくということが大事だと思いますが、大臣のそれについてのお考えを伺いたいと思います。

【渡海国務大臣】
 そういうふうに申し上げました。その後、いろいろな可能性について、私なりには、ああ、こういうこともできるかなとか考えておりますが、最終的には、やはりこれも審議会の先生方の意見も聞かなきゃいけない。と申し上げますのは、やはり大事なことは、審議会というものが、先ほどから盛んにお話が出ていますように、いわゆる政治的圧力がかかるとか、政治的じゃなくてもいろいろな圧力がかからないような静かな環境の中でやっていただく必要があります。そうしますと、今考えられるのは、やはり後からいろいろな疑義がかからないように、終わった後に何らかの公開というものを図れないかなと。
 基本的には、審議会は、特に部会は、今までも議事録も非公開でございますが、それを全部そのままいくのかどうか、そういったことも含めて、今、予断を持たないで、少し、審議会の委員の先生方にも御意見をいただきながら、今回これだけ疑義が出たわけでありますから、やはりその反省としてそういったことを考えていきたいという意味で申し上げた次第でございます。

文教科学委員会会議録第二号

平成一九年十月三十日【参議院】

【谷岡郁子君】
 公開の議事録もない、そして非公開であるという審議の在り方、こういうものを考え直すときに来ているのではないかというふうに考えます。
 以上、これが公正で中立と言えるのか、そしてこの当事者意識のなさということを放置してよいのか、そして審議の在り方を考え直すべきときではないかということについてまずお尋ねいたしたいと思います。

【国務大臣(渡海紀三朗君)】
 ただ、ただ最近私は申し上げておりますのは、そういった今日の先生を始めいろんな、例えば人選がおかしかったんじゃないかといろんな疑義が呈されているわけでありますから、そのことに関しては我々はもう少し透明性を上げていくなり公開性を上げていく努力というのはしなければいけないんじゃないかというふうに、これは国会でも記者会見でも答弁をさせていただいております。やっぱりそういう努力をしていくということは、これは私の責任においてやらせていただきたいというふうに思っております。

2.専門的見地からのきめ細やかな審議の確保、静謐な環境における公平・中立な審議の確保

参議院会議録第五号

平成一九年十月五日

【福島みずほ君】
 教科書検定について質問をします。
 沖縄の集団自決への軍の命令、強制について削除するという教科書の検定について撤回すべきだと考えますが、いかがですか。また、集団自決について、軍の命令と強制があったことについて、未来を生きる子供たちに伝えるべきと考えますが、いかがですか。また、沖縄近現代史の専門家を検定審議会に入れるべきと考えますが、いかがですか。

【内閣総理大臣(福田康夫君)】
 沖縄の集団自決に関し、検定意見の撤回、子供たちへの伝え方、審議会委員の人選についてお尋ねがございました。
 沖縄戦が住民を巻き込んだ悲惨な戦いであり、多くの人々が犠牲になったということを私はこれからも学校教育において子供たちにしっかりと教えていかなければならないと思います。
 ただ、教科書検定は審議会における専門的な審議を経て実施されることになっております。沖縄の集団自決に関する教科書検定の件については、知事を始め沖縄県民の思いを重く受け止め、文部科学省において審議の方法も含めしっかりと検討いたしております。

決算行政監視委員会議録第二号

平成一九年十月十二日

【横光委員】
 皆さん、お聞きになったと思います。本当に、沖縄の歴史が変えられようとする審議会の中に沖縄戦の専門家がいなかったということなんです。私は、正直言って、信じられない思いです。

【渡海国務大臣】
 横光議員の質問に率直にお答えをいたしました。今回そのようなヒアリングは行っていないというふうにもお答えをさせていただきましたが、従来からそういった証言等を学術的に、そして専門的に研究をした結果としてあのような判断を下したというふうに思っております。

【横光委員】
 学術的に、専門的に全然研究していないじゃないですか、専門家もいないのに。よく言えますね、そのことが。どこに専門的に研究したんですか。専門家、いないじゃないですか。しかも、一番聞くべき人たちには聞いていない。無視している。そして、大きな転換を図ろうとしている。大変なことだと思いますよ。

文部科学委員会議録第二号

平成一九年十月二十四日

【西委員】
 現在、審議会の透明性の確保や情報公開、さらに沖縄条項の設置なども検討課題となっているというふうに聞いておりますが、あわせて制度上の問題を見直すということを提案したいと思います。
 例えば、調査意見書にかかわる専門家の意見の聴取を、先ほどのように歴史認識にかかわる大きな変更の場合には義務づける、それから、変更の根拠となった資料等をきちっと添付する、それから審議会の専門家の議論の確保を要請する、それから議論となっているテーマの周知などが少なくとも必要ではないかというふうに私自身は考えておりますが、このことについて御意見を賜りたいと思います。

【金森政府参考人】
 ただいま御指摘いただきました、例えば調査意見書に関する専門家の意見の聴取の義務づけでございますとか、変更の根拠となった資料の添付、審議会での専門家の議論の確保につきましては、教科書検定における専門性を向上させるための一つの御提案と受けとめているところでございます。
 また、議論となっているテーマの周知につきましては、教科書検定における審議の公開性を向上させるための一つの御提案として受けとめているところでございます。審議の公開性の向上につきましては、これまでも、従来口頭で行っていた検定意見の通知を平成十二年には検定意見書による通知で実施することに変更したり、また、平成十三年には、検定結果の公開資料に検定意見書や修正表を追加するといった取り組みをしてきたところでございます。
 今後とも、専門的な見地からの学問的な正確性を確保いたしますとともに、審議の公開性の向上と静ひつな環境の確保についてバランスのとれた審議を行ってまいりますよう努めてまいりたいと存じます。

文教科学委員会会議録第二号

平成一九年十月三十日【参議院】

【谷岡郁子君】
 公正で中立な検定のためには、やはり幅広いバックグラウンドを持った人が当然必要になるかと思われるのに、なぜこのような状態が放置されているのか。変わるべきだとは思われませんか、大臣、お答え願いたいと思います。

【国務大臣(渡海紀三朗君)】
 教科書調査官は学術的、また専門的な審査をしていただくということでありますから、選考においては、それぞれの専門的な学問成果に関しその学識を有することや、視野が広く、初等中等教育に関し理解と識見を有することなどの能力の適性を総合的に判断して、公正適切に教科書用図書の調査を行えるかどうかという観点から慎重に人物評価を行っておるわけでございます。
 隔たりなく多様なバックグラウンドを持った人材から任用すべきとの議員の御指摘については、例えば複数の候補から選考を行うように努めるなど、能力、適性を総合的に判断をして職責に見合った人材が選考されるように取り組んでいきたいというふうに考えております。
 ただ、これは随分我々も議論をうちの内部でもいたしました。公募というような方法が本当になじむかどうかですね。というのは、なかなか、教科書調査官というのはある専門性を有してなければできない仕事であります。高度に学術的な知識、能力も必要であり、総合的にまた人物を見極めること、こういうこともありますから、必ずしも公募により難いというふうな面もございまして今のところ公募ということは考えていないわけでありますが、先ほど申し上げましたように、よりバランスのある、隔たりのない人選ということを今後努めてまいりたいというふうに思っております。

文教科学委員会会議録第二号

平成一九年十月三十日【参議院】

【亀井郁夫君】
 次に、教科用図書検定調査審議会との関係についてお尋ねしたいと思いますが、特にこの教科用図書検定調査審議会というのは中立的だということで大臣も大事にしておられますけれども、実は沖縄の問題について大集会が行われて、そこから沖縄県知事も大臣のところに陳情に来られたというふうなことで、非常に大臣も大事に考えておられるわけでありますが、これについては、教科用図書検定調査審議会に任せるんだというようなことをよく言われているけれども、そういう点についてはどのように考えられますか。これが変更するとすれば、これ委員の選任は文科省が選んだ委員ですから、そうすると選任の仕方がいろいろ問題があるんだと思いますけれども、これについてはどう考えられますか。

【国務大臣(渡海紀三朗君)】
 そして、今回、委員の件についてお尋ねがございました。今回の検定に当たりましても、先ほど申し上げましたような趣旨にのっとって審議が行われたわけでございますが、お尋ねの委員の件に関しましては、日本史の教科書検定、これにおける委員というのは古代から現代の分野にわたってバランスよく構成をされておりまして、審議会においてはその知見を生かした専門的、学術的な調査、審議がなされておるというふうに理解をしておりまして、この委員の選任に問題があったというふうには考えておりません。

【亀井郁夫君】
 せっかく検定について、これ委員会の委員の方で修正するよといって修正させて、再度それを直すというのは、やはり委員に、委員の中立性がいろいろ問題があるんじゃないかと思いますね。

【政府参考人(金森越哉君)】
 教科用図書検定調査審議会の委員の選任についてお答えを申し上げます。
 現在この審議会では、社会科に関する学識経験を有する者を含めて、正委員、臨時委員合わせて百二十六名が任命されているところでございますが、教科用図書検定調査審議会の委員につきましては、各年度において検定が実施される学校種なども勘案しつつ、各専門分野ごとのバランスにも配慮しながら、学識経験に優れた候補者の中から文部科学大臣が任命しているところでございます。

文教科学委員会会議録第二号

平成一九年十月三十日

【仲村委員】
 ただいま時間が参りましたので終わりますけれども、私が申し上げた、文科省の調査官がこういうふうな書きかえをしなさいといって検定委員会に差し出して、もう検定委員は一言も言わずにそのように決まった、こんな検定のあり方は全く許される話ではありません。

3.その他

決算行政監視委員会議録第二号

平成一九年十月十二日

【横光委員】
 私たちは、検定制度の必要性を認めながらも、検定過程に疑義が生じた場合にはもう一度審議会に差し戻すことができる、そういった旨の検定規則の改正を行うしかないと思っておるんですよ。

文教科学委員会会議録第二号

平成一九年十月三十日【参議院】

【谷岡郁子君】
 そうしますと、二回目、約五時間にわたる会議、三百分、このうちには十分のトイレ休憩も含んでいるわけですけれども、この中で審議が行われた。二百八十余項目の訂正について意見が闘わされたというふうに聞いております。これ、読み上げる時間も含めて一項目当たり一分内外という大変短いところでございます。これを審議を上げなきゃいけないということになりますと、なかなかあだやおろそかでは意見を言いにくいというような環境がここに生まれてしまうのではないかというふうに考えます。
 しかも、私は様々な方々からそれが実際にどのように行われたかということを聞きまして、五時間余にわたる長い会議の中で、もちろんお疲れの方、少し腰を伸ばされたい方、また生理的な欲求というものがあるというようなことで席をお立ちになる方が審議の続行中にたくさんあるということを聞いています。言わば緊張感を欠いていた、しかも全員、出席委員が必ずしもチェックをした形ですべての項目が決まっていないということが明らかになっております。もちろん、沖縄戦については意見は何も出なかったということがこれまでも言われてきました。これで公正中立な慎重な審議が獲得されているとお考えに大臣はなるのでしょうか。
 そして、政治介入をすべきでないというお話はよく分かりますけれども、それならば、四月以来、沖縄の方々がここまで悲痛な行為をされてきたということに対しては、審議会自身が本当に公正で慎重な審議が行われたかどうかということを自らチェックするということが当事者としての責任ではないかというふうに私は考えます。このプロセスと結論というものをちゃんとチェックされていない、審議会は一度も三月以来開かれていないということを感じます。これでは、幾ら公正中立な審議会に任せたいといっても、審議会自身が当事者意識がないところで放置しておいていいのか。公開の議事録もない、そして非公開であるという審議の在り方、こういうものを考え直すときに来ているのではないかというふうに考えます。
 以上、これが公正で中立と言えるのか、そしてこの当事者意識のなさということを放置してよいのか、そして審議の在り方を考え直すべきときではないかということについてまずお尋ねいたしたいと思います。

【政府参考人(金森越哉君)】
 少し経緯も含めまして御説明を申し上げたいと存じます。
 教科書検定は、教科用図書検定調査審議会の専門的、学術的な調査審議に基づいて公正中立に実施しているものでございまして、今回の検定も同審議会における所定の手続に基づいて行われたものと承知をいたしております。
 具体的に申し上げますと、今回の検定におきましては、それぞれ申請図書について、教科書調査官からの調査意見書の指摘箇所につきまして個々に説明をし、委員に審議を求めるという方法で調査審議を行いました。
 沖縄戦の集団自決に係る指摘箇所につきましては委員から特段の異論はなかったわけでございますけれども、この各分野の専門家である委員で構成される教科用図書検定調査審議会は学術的、専門的な立場から調査意見書を参考に申請図書の記述について検定意見を付すかどうかの判定を行うものでございまして、調査意見書のとおりに意見が付される場合もあれば、そうでない場合もございます。
 今回の検定におきましては、集団自決に係る記述に対する検定意見は教科書調査官の作成した調査意見書と同じ内容になってございますけれども、これは、審議会の各委員の専門的、学術的な知見に基づき調査審議した結果、調査意見書と同じ内容の検定意見を付すことが適当であると判断されたものと理解をいたしております。

【国務大臣(渡海紀三朗君)】
 項目によっては非常に長く掛けた部分もあるし、それから、まあこれは問題ないねということでさっと行ったと、それは一つ一つ承知していないわけでございますが、今も局長から説明しましたような経緯であります。
 私は、基本的に審議委員の先生方から、これじゃ時間が短いとかもう少し時間がないとできないとか、そういう声は出ているのかということはしっかりと確かめさせていただきました、先生のこの質問もいただいて。そういう意見は今のところ実は出ていませんという報告もいただいております。

予算委員会会議録第三号

平成一九年十月十七日【参議院】

【山内徳信君】
 三点目に、今回の事態を反省し、検定制度の真実性、中立性、客観性、透明性を今後どのように確保していくお考えか、お答えください。
 特に、私はここで真実性を提起をしてございます。

【国務大臣(渡海紀三朗君)】
 先ほど半分はお答えをしたと思いますけれども、この中立性、公正性、また専門的に学術的にどうやればもっともっとこの検定制度というものが良くなるか。これは繰り返しになりますが、今回そういった面ではいろんな意見が寄せられたわけでありますから、これは私が責任であるというふうに先ほども申し上げましたけれども、こういったものを、これ独断的にこちらでやるわけにいきません。やっぱり審議会の先生方の御意見も聴きながら、もう少し上げていかなきゃいけないんじゃないかなというふうに思っております。

文部科学委員会議録第三号

平成十九年十二月五日

【保坂(展)委員】
 要するに、検定意見が誤ってつけられる場合はあるんですよ、今はっきりしたように。誤ってつけられたときの手続が、過失のない、落ち度のない執筆者側の、あるいは教科書会社からの訂正申請しかないという仕組みはやはり考え直すべきだったんじゃないか。今その問題にまた直面しているわけですけれども、その点についていかがですか。

【渡海国務大臣】
 個人的な見解でございますが、制度の問題というのは常に議論があっていいんだろうと思います。しかし、制度がある以上、それが法律なり、施行規則なり、運用規則なりで決まっている以上、やはりそれにしっかりと従ってこの検定制度というものをやっていくということでなければならないというふうに思います。
 これでよろしいですか、答えとしては。

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