宗教法人審議会(第153回) 議事録

1.日時

平成19年6月20日(水曜日) 午後2時30分~

2.場所

東京會館本館 「カトレア・チェリールーム」

3.議題

  1. 会長の選出について
  2. 最近の宗務行政について
  3. その他

4.出席者

委員

池田委員、池端委員、大石委員、清重委員、黒住委員、氣多委員、小林委員、斎藤委員、佐藤委員、滝口委員、田中(佐和)委員、田中(恆清)委員、栃尾委員、長谷川委員、山北委員、山岸委員、芳村委員

オブザーバー

(文化庁)
 青木長官、尾山文化部長、舟橋宗務課長、塩見宗教法人室長 その他関係官

5.議事録

1 開会

○ 宗務課長
 それでは、ただいまから第153回の宗教法人審議会を開会させていただきます。
 私、文化庁宗務課長の舟橋と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日、第23期の宗教法人審議会の初会合ということでございまして、後ほど会長を互選していただくことになりますが、それまでの間、私が便宜上進行役を務めさせていただきます。
 初めに、開会に当たりまして、青木文化庁長官から一言ごあいさつをお願いいたします。

○ 文化庁長官
 第153回宗教法人審議会の開催に当たりまして、一言ごあいさつ申し上げます。
 委員の先生方におかれましては、第28期宗教法人審議会委員にご就任をいただき、また本日は大変お忙しい中をご出席をいただきまして、まことにありがとうございます。
 申しおくれましたが、私、去る4月1日付で文化庁長官を拝命いたしました青木でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 この宗教法人審議会は、ご案内のとおり、文部科学大臣の諮問機関として、宗教法人法に定められた事項を審議するとともに、所轄庁が留意すべき事項に関し、意見を述べることを任務としております。
 これは、宗務行政の実施にあたり、宗教法人の宗教上の特性等を考慮し、憲法に定める信教の自由の保障を担保する観点から設けられているものであり、宗教法人法の柱の1つをなす大変重要な役割を担う審議会であります。
 今日、社会の変化や価値観の多様化が進む中で、宗教に寄せられる国民の関心や期待も高まっていると考えられます。
 その中で、当然のことながら宗教法人制度や宗務行政につきまして、適正かつ公正な運用が求められております。
 文化庁では、委員の皆様方のそれぞれのお立場からの貴重なご意見、ご助言を賜りまして、宗務行政の適正かつ公正な実施を期してまいりたいと考えておりますので、よろしくご指導をくださいますようお願い申し上げます。
 本日は、第28期の最初の会議でありますので、まず、会長のご選出をお願いし、そのあと、最近の宗務行政の状況等につきまして、文化庁からご報告させていただきたいと考えております。
 よろしくご審議いただきますようお願い申し上げまして、簡単ではございますが、ごあいさつとさせていただきます。どうもありがとうございます。

○ 宗務課長
 ありがとうございました。
 続きまして、28期の宗教法人審議会の委員にご就任をいただきました先生方のご紹介をさせていただきますが、今期の第1回の会合ということでございますので、恐縮でございますけれども、先生方から自己紹介という形で、簡単にごあいさつ賜れればありがたいと考えております。
 お手元の資料1に委員名簿をお配りさせていただいております。まことに恐縮ですが、この名簿の順番でお願いいたします。

(委員自己紹介)

○ 宗務課長
 ありがとうございました。
 続きまして、文化庁側を紹介させていただきます。

(文化庁側紹介)

 それでは、次に、本日の配付資料の確認をさせていただきます。
 お手元の封筒の中をあけていただきますと議事次第が入ってございまして、そのあとに配付資料の一覧が入ってございます。

(配付資料の確認)

 続きまして、定足数の確認をいたします。
 宗教法人審議会の規則第6条によりまして、総委員の5分の3以上の出席がなければ議事を開き議決することができないとされておりますが、本日は20名の総委員の中の17名の委員にご出席をいただいておりますので、定足数を充足しているということを報告をさせていただきます。
 それから、最初の議題が会長の選出でございますけれども、それに入ります前に、今回は最初の会合ということでございますので、宗教法人審議会に関する法令と所掌事務につきまして、お手元の資料に沿って簡単にご説明させていただきたいと存じます。
 お手元の資料2をご覧いただきたいと思います。宗教法人審議会につきましては、宗教法人法の第8章におきまして規定が置かれてございます。第71条で設置と所掌事務が書かれておりますけれども、第2項におきまして、「この法律の規定により権限に属させられた事項を処理する」、また、第3項におきまして、「所轄庁がこの法律の規定による権限を行使するに際し留意すべき事項に関して、文部科学大臣に意見を述べることができる」とされてございます。
 第4項においては、「宗教上の事項について、いかなる形においても調停し、又は干渉をしてはならない」という規定がございます。
 以下、委員、任期、会長とございますけれども、委員につきましては10名以上20名以内ということですけれども、「宗教家及び宗教に関し学識経験のある者のうちから、文部科学大臣が任命する」となってございます。任期は2年でございまして、会長につきましては「委員が互選した者について、文部科学大臣が任命する」ことになっております。
 それから、第77条で、その他の細目については別途審議会が定めることにされておりまして、この資料の2枚目をご覧いただきますと、宗教法人審議会の審議会規則がございます。この第6条に定足数として5分の3以上という定めが置かれております。そのほか、第7条では出席委員の過半数で決するということが定められております。また、第12条におきましては、「会長は、必要があると認めたときは、委員のうちから若干名を指名し、特別な事項を調査審議させることができる」とございまして、これに基づいて小委員会が設置される場合がございます。
 それから、3ページでございますけれども、宗教法人審議会の意見を聞かなければならないとされている事項をまとめたものでございまして、1から6まで項目があるわけでございます。
 1が、所轄庁たる文部科学大臣による規則等の不認証の決定ということでございまして、規則や規則変更、合併等につきまして、不認証とする場合にこの審議会の意見を聞かなければならないとされております。
 それから、所轄庁による報告徴収・質問ということで、これは平成7年の宗教法人法の改正で設けられた事項でございますが、宗教法人に対して報告を求めたり質問をする場合に、あらかじめ審議会の意見を聞くこととされております。
 そのほか、事業の停止命令を発する場合、それから、規則等の認証の取消しなどを行う場合にあらかじめこの審議会の意見を聞かなければいけないということになってございます。
 それから、5でございますけれども、規則の認証等の処分に対する不服の申立てがあり、それに対する裁決・決定を行う場合、この審議会の意見を聞かなければならないことになっておるわけでございます。
 6は、宗教法人に作成が義務づけられている収支計算書について、収入額が寡少な法人については作成を免除することとされておりますが、その免除される基準について定める場合には、この審議会の意見を聞くことになっているわけでございます。これについては既に審議会のご意見を聞いて、平成8年に告示がされております。
 次に、5ページをご覧いただきたいと存じますけれども、この審議会の議事等についての申し合わせでございます。3をご覧いただきたいと思いますけれども、まず、会議の公開につきましては、「委員の自由闊達な討議を確保し、信教の自由に配慮して」、非公開とされております。
 その上で、1でございますけれども、行政処分及び不服審査に係る審理を除きましては、議事録を作成してこれを原則として公開することになってございます。
 2でございますけれども、行政処分及び不服審査に係る審理につきましては、原則として議事要旨を作成して公開するとされてございます。
 4でございますけれども、議事録と議事要旨の作成につきましては、(2)をご覧いただきますと、「各委員の自由な討議を確保する」という観点から、議事録等に記載いたします委員の意見は匿名とすることとされております。
 (3)でございますけれども、個別の宗教法人名についても記載をしないこととするということでございます。ただし、答申の中に記載された法人名、あるいは公開される会議資料に記載された法人名についてはこの限りではないという取決めがされておるところでございます。
 最後に、6ページをご覧いただきたいと思いますけれども、先ほどご覧いただいた審議事項の中の不服申立てに関する案件についての審議の流れをまとめたものでございます。下の(参考)をご覧いただきますと、不服申立てにつきましては、その申立てがあってから4月以内に決定をしなければならないとなっているわけでございます。効率的にこの審議を行うということで、上の図にありますような扱いをこれまでさせていただいております。
 まず、なるべく早い時期に一度審議会を開きまして、諮問を行いまして、案件のご説明をさせていただきます。あわせまして、会長から規則の第12条に基づいて、小委員会を発足させていただくわけでございます。その後、小委員会におきまして具体的な内容についてご審議をいただきまして、再度審議会を開き、小委員会からの報告に基づいて答申をいただく形にしてございます。
 ただ、軽微な案件等について、あえて小委員会を開くまでもないと判断される場合には、事務局において先生方とご相談しながら、裁決の案を作成いたしまして、1回の審議会でご審議をいただき、答申をいただくという形にしております。
 それから、2回審議会を開くわけでございますけれども、4カ月という限られた期間で、先生方ご多忙でございますので、定足数を満たさない場合には、例えば第1回目は懇談会という形で開かせていただくこともあるということでございます。
 なお、本審議会は、先ほどご覧いただきましたような審議事項をご審議いただくということですので、不服申立て等の審査案件があるたびごとに、その都度開催させていただくことになっておりますので、定期的に開催するものではございません。
 以上がこの審議会の法令・所掌事務のご説明でございますけれども、何かご質問等ございますでしょうか。

2 議事

議題  (1)

○  宗務課長
 それでは、議事に入りたいと思います。
 宗教法人審議会の宗教法人法第74条第2項の規定によりまして、会長は委員が互選したものについて文部科学大臣が任命するとございますので、会長の互選をお願いいたしたいと存じます。
 互選の方法につきましては、これまでの例から申し上げますと、学識経験者の委員の中から推薦で選出をされておるということでございます。どなたかご推薦をいただけませんでしょうか。
 どうぞお願いいたします。

○ 当審議会の委員、あるいは会長として長いご経験をお持ちの京都大学大学院教授の大石委員に引き続きお願いしてはどうかと思いますが、いかがでございましょうか。

(賛成者拍手)

○ 宗務課長
 ただいま、大石委員に会長をお願いしてはというご発言がございましたが、ご異議がなければ大石委員が互選されたものとさせていただいてよろしゅうございましょうか。

(「異議なし」と呼ぶ者あり)

○ 宗務課長
 ありがとうございます。
 それでは、大石委員に会長をお願いいたしたいと存じます。会長席の方にご移動をお願いいたします。

○ ただいま、会長にご推挙いただきました大石でございます。会長の責務を全うできますよう努めますので、どうぞ皆様方のご協力のほどを引き続きよろしくお願いしたいと存じます。
 改めて申すまでもなく、当審議会は文部科学大臣の諮問機関として、宗務行政の適正を期するために設けられているものでございます。職責の遺憾なき遂行を期したいと存じますので、どうぞよろしくお願いしたいと存じます。

議題(2)

○ それでは、早速でございますけれども、議題2に入りたいと思います。
 これにつきましては、事務局の方から報告がたくさんございます。資料の数から見てもおわかりになると思うのですが、報告が数点にわたりますので、私の判断で説明を2回に分けてするということにいたしまして、それぞれの項目について質疑応答の時間を設けたいと思います。
 中身としては5点ほどございまして、資料で言いますと、資料3から7にわたるところが今から説明をしていただくという部分でございます。よろしゅうございますか。
 それでは、早速ですが、よろしくお願いいたします。

○ 宗務課長
 最初に、公益法人制度改革の状況につきまして、資料3に基づいてご説明をさせていただきたいと思います。
 公益法人制度改革の状況につきましては、昨年の5月のこの審議会でもご説明をさせていただいておりますが、その後、法律が可決・成立をいたしまして、現在、それに基づいた政令の作成等の準備が進んでおりますので、前回と重なる部分もございますが、状況を報告させていただきたいと思います。
 この法の趣旨・概要でございますけれども、この公益法人制度改革の趣旨といたしましては、官から民への流れの中で、民間非営利部門の活動の健全な発展を促進するということで、公益法人の設立許可につきまして、これまでは主務官庁が自由裁量で行っていたわけでございますが、これを改めまして、登記のみで法人が設立できる制度と公益を認定する制度を創設するというものでございます。
 関係法が3つあるわけでございますが、(1)の一般社団法人及び一般財団法人に関する法律に基づきまして、登記のみで法人格を取得することができる制度を創設するというのが1点でございます。
 2点目は、その一般法人の中で、公益性が認定されたものについて、公益社団法人・財団法人として認定するものでございまして、いわば2階建ての制度にするということでございます。この制度改革は、いずれにしても宗教法人そのものは対象になっていないわけでございますけれども、宗教法人に関連する維持財団、護持財団などといったような社団法人、財団法人がございます。そういった宗教法人関係の社団法人、財団法人がこの制度のもとで、公益認定の対象となりうるか、2階建ての2階の部分に上がることができるかどうかということなどが関心事項であったわけでございます。
 (2)の矢印で2点書いておりますけれども、1つは、公益法人として認められるためには、その主たる目的とする事業がこの法律に規定された公益事業に該当することが必要になります。これについては、別表で信教の自由の尊重・擁護を目的とする事業が規定されております。
 この資料の3ページになりますけれども、別表の第13号でございます。これは、当初の案ではこの条項はございませんで、日宗連初め宗教界からの大変強い働きかけが行われたという経緯がございます。
 もう1点、関連の点がございまして、公益法人が解散した場合の残余財産の帰属先について、宗教法人が入るかどうかが問題だったわけでございます。財団法人、社団法人で宗教法人関係のものについては、その宗教法人由来の財産を持っていたりするわけでございまして、解散した後にそれが当該宗教法人に帰属しないということになると大変に問題があるということで、これについても大変強い働きかけをいただいたわけでございますが、これは結局法律の段階では決着がつきませんで、法律に「政令で定める法人」と規定されました。
 この資料4ページでございますけれども、イ、ロ、ハ、ニ、ホ、ヘ、トとございまして、トのところで、その他「準ずるものとして政令に定める法人」ということで、政令に問題が移ったわけでございます。5ページをご覧いただきますと、現在、まだ政令は定まっておりませんけれども、内閣府の公益認定等委員会で政令や内閣府令の方向についてご議論がされておりまして、今月の15日に答申が出されました。
 この答申の中で、この政令に定める法人については、「次のとおりとすることが適当である」というのがございまして、(2)でございますけれども、次のいずれにも該当する法人ということで、アからオの条件が書かれております。
 アにおいては、「法令において、当該法人の主たる目的である事業が、学術、技芸、慈善、祭祀、宗教その他の公益に関するものであることが定められていること」となってございます。そのほか、イでは、「三親等内の親族である役員が役員の総数の三分の一を超えてはならない旨の定めがあること」。またオでは、法令や定款の定めによって「残余財産を当該法人の目的に類似する目的のために処分し、又は国、地方公共団体に帰属させることが定められていること」となっておりまして、これらの要件を満たすものであれば、宗教法人であっても対象になり得るといった方向で検討が進んでおるということでございます。
 この後、この答申を踏まえて政令案がつくられまして、パブリックコメントを経まして、8月下旬から9月初めに政令が策定される予定となっておるわけでございます。これについては、引き続き文化庁としても十分注視をしてまいりたいと考えてございます。
 それから、1ページにお戻りいただきますと、(3)で、(1)と(2)の法律を施行するための関係法律の整備等に関する法律がございまして、この関係では、公益法人の根拠になっている民法の規定が改正になったわけでございますけれども、これについても祭祀、宗教は引続き公益として位置づけられているということです。
 それから、宗教法人法の一部改正がございまして、これは2ページの方にございますけれども、準用関係の規定の整備、それから、従たる事務所の所在地における登記事項の簡略化に関する改正でございます。
 経緯のところにございますように、今後、政令、内閣府令の制定が進んでいくわけでございますけれども、法律は、平成20年12月までに施行される予定になってございます。施行されてから実際に新しい公益法人制度が始まるまでに5年間の移行期間が設けられることになってございますので、実際には平成25年から新たにこの2階建ての制度に移るということになります。それまでの間にそれぞれの法人が一般法人になるのか、公益法人の認定を受けるのか、場合によっては解散という場合もあろうかと思いますけれども、そういったことを検討していくことになるわけでございますので、宗教関係の社団法人、財団法人の今後の動向につきましては、宗教界のご意見もよく伺いながら、文化庁としても十分注意をしてまいりたいと、このように考えてございます。
 それが1点目のご報告でございまして、次に、宗教法人制度の運用等に関する調査協力者会議の意見の概要についてご説明をさせていただきたいと思います。白表紙の冊子になっているものが一番下に入っているかと思います。こちらの協力者会議につきましては、17年度からご審議をいただいておるものでございますけれども、今年度末までのご意見をまとめさせていただいたものでございます。
 この資料の後ろの方になりますが、32、33ページをお開きいただきたいと思います。この調査協力者会議の設置の目的等でございますけれども、宗務行政を取巻く社会情勢の変化を踏まえて、宗教法人制度の運用に関する諸課題等について調査研究を行うということでございます。これは、運用に関する課題でございますので、この検討を踏まえて何かの制度を改正するとか、何か具体的な提言をまとめるという趣旨で行っているものではございません。
 2のところで、この協力者会議の協力者の方々のお名前を書かせていただいております。本審議会の会長の大石先生に座長をお願いしておりますし、この審議会の委員をお引き受けいただいております先生方にもお入りいただいておるところでございます。
 3にございますように、17年11月から順次議論を行っていただいておりまして、協力者の先生方の発表ですとか、それ以外の外部の有識者の先生のヒアリングなどを踏まえて検討を行っております。
 この会議は、今年度も引続きご検討をいただく予定にしてございます。したがいまして、この意見の概要というのは、これでご議論を集約したというものではございませんで、これまでにあったご意見を事務局においてまとめさせていただいたものでございます。
 目次をご覧いただきたいと思いますけれども、目次の3項目、1、2、3とございまして、宗教及び宗教団体の社会的意義や役割について、憲法、法律における位置づけについて、それから、諸制度の意義と運用について、この大きく3点についてご議論をいただいたわけでございます。
 内容についてごく簡単にご覧いただきますと、2ページ以降がこの宗教及び宗教団体の社会的意義や役割でございますけれども、これは、宗教学がご専門の有識者の先生にご発表や取りまとめをいただいたものをもとにご意見をいただいております。
 4ページをご覧いただきますと、主な意見でございますけれども、これはご発表の中で、宗教の理念的な役割と、それが宗教法人の具体的な事業の中でどういうふうに現れているかというご発表をいただいたことを踏まえまして、この意見の3番目でございますけれども、「宗教団体は、宗教活動の延長として福祉活動など様々な事業・活動を行っている。宗教活動と切り離し、そうした事業面だけを捉えて議論をすることにはならないように留意する必要がある」というご意見ですとか、「宗教活動そのものの公益性について、きちんと確認、整理」することが必要だとか、そういったご意見が出てございます。
 それから、7ページ以降が2番目の論点でございますけれども、憲法、法律における位置付けについてのご議論をいただいたわけでございます。憲法の規定はもとより、いろいろな法律の中で宗教に配慮したと考えられる規定があるわけでございまして、その背景となっている考え方について、法学的な観点からご議論をいただいたということでございます。
 8ページ以降に、その有識者の先生のご発表で、アメリカの例を参考にしながら、ご意見のご発表をいただいております。
 10ページに、主な意見が掲げられております。2つ目の○の2行目ぐらいからですけれども、「日本でも、米国ほど意識的・自覚的でないにせよ、宗教が社会的価値や道徳の究極的な源泉だということは否定できないのではないか」というご意見。それから、「宗教法人の税制上の優遇措置を行うことが憲法上要請されるかということに関しては、少なくとも、他の公益法人に対する優遇措置が残っている中で、宗教法人についてだけ優遇措置をなくすということについて、憲法上問題ないとする意見はないのではないか」というご意見がございました。
 12ページ以降は、法律における位置づけの1例として、税制についてのご議論をいただいております。これも、有識者の先生からのご発表を踏まえて意見交換をしていただきましたが、13ページの主な意見の1つ目の○の後段でございますけれども、「政教分離の観点から、国が個々の宗教法人の活動について公益性の有無を判断することは適当ではない。宗教活動そのものに全体として公益性があるとの考え方に立ち、他の公益事業と同様に非課税又は免税にすべきではないか」というご指摘がございました。
 16ページ以降が、3番目の論点でございますけれども、諸制度の意義、その運用についてご議論いただいております。
 17ページはガバナンスの観点ということで、具体的には監査機能のあり方についてご議論をいただきました。1つ目の○でございますけれども、「宗教法人制度においては監査の機関は、任意設置であるが、できるだけ監査機能を設けることが望ましいのではないか」というご意見、3番目の○ですけれども、「個々の宗教法人の置かれている状況等は様々であり、一律に監事を置くようにすべきかどうかについては十分検討する必要がある」というご指摘がございました。
 20ページからは、宗教法人の運営の透明性の確保ということで、宗教法人の事務所備付け書類、帳簿の閲覧制度、この意義や運用のあり方についてご議論を賜りました。21ページの一番上の○ですけれども、この閲覧の請求については、宗教法人が個々に判断することとされているわけでございますけれども、「本制度の趣旨を踏まえ、適正な運用が行われることが重要ではないか」というご意見。あるいは、下から2つ目ですけれども、「正確な情報を伝えるためにも、宗教法人が自ら進んで広報の充実に取り組むことも必要ではないか」というご指摘がございました。
 それから、28ページ以降は、宗教法人が行う事業ということで、宗教活動以外の公益事業、あるいはその他の事業のあり方についてご議論をいただきました。ここについては、まだ事業のデータを十分把握する必要があるということで、必ずしも詳しい議論が行われていない面がございますけれども、28ページの主な意見の2つ目ですけれども、「宗教活動と公益事業とは実際上、密接不可分な関係にあるものも多」い、といったご指摘でございますとか、29ページの2つ目の○ですけれども、先ほど申し上げました新しい公益社団・財団法人制度においては、「公益目的事業の比率が50パーセント以上であるということが条件にされているが、宗教法人の場合、主たる目的が宗教活動であり数値で表すことができないことから、その事業規模についても数値で示すことは困難である」というご指摘などをいただいたところでございます。
 以上、簡単ですが、この協力者会議につきましては、今年度も引き続きご議論を続けていただくことにしておりますので、またその状況についてはご報告をさせていただきたいと考えております。
 それから、この調査協力者会議ともう一つ別の調査といたしまして、海外の宗教事情についても調査をしていただいております。これは、16年度から行っておりまして、19年度が最終でございますので、またこれも報告書がまとまりましたら、本審議会にご報告をさせていただきたいというふうに考えてございます。
 以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○ ありがとうございました。
 以上、資料3の関係で公益法人制度の改革の問題、それから別添の資料ということで、宗教法人制度の運用等に関する調査研究、その2点についてご報告をいただきました。
 後者の運用等に関する調査研究につきましては、資料8の方、前回の議事録がございますが、この議事録の資料8の7ページ以下のところにも、審議会に設置して検討を始めていただくという旨を紹介をしたということが載っておりまして、この件が今のところに相当するところでございます。
 それでは、今の事務局からの報告について、何かご質問等ありましたらお出しいただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
 運用等の調査協力者会議というのは、もう1年度続くのですね。

○ 宗務課長
 はい、19年度も行わせていただくということです。

○ そうすると、それはそれで一応終わった時点でまたご報告をすることになりますね。

○ 宗務課長
 はい、ご報告させていただきます。

○ 資料3の5ページの四角の中の(2)のエのところなのですが、「法人の構成員や役員及びこれらの配偶者又は三親等内の親族に対して特別の利益を与えないことについて、行政機関の許認可等を受けていること」とありますが、これは当然のことに認証も入るわけでしょうね。

○ 宗務課長
 これは入るというふうに思います。

○ そうしますと、通常宗教法人の規則には、エに掲げられているようなことは普通は書いてないわけですけれども、それはここのところは新しい社団や財団が公益認定を受ける場合の、その定款の中にこういう規定を入れておかなければいけないというか、宗教法人の場合にはどういう組織を持った宗教法人でなければいけないかということを、定款の中に書き込まれるというわけでしょうか。
 要するに、公益認定された財団が解散したときに、残余財産を宗教法人に贈与するというようなことだけで定款はよいのかどうかということなのですけれども。

○ 宗務課長
 こちらは、このアからオを満たすのは、公益法人が解散したときにその残余財産の受け皿となる宗教法人の側でどういった規定なりが整備されているかということが問題になるわけでございますので、エのところが許認可というのは、恐らく宗教法人の場合は規則の認証ということになると思いますけれども、規則の中でこういった規定がないということを所轄庁で確認することになるのではないかと思います。

○ そうすると、公益認定法人が解散されたときに、受け皿になるときにこういうことを満足しておればよいのでしょうか。そうでないとしますと、宗教法人が持っておるという言い方をあえてしますと、持っておる財団が公益性が認定されるときに、将来、いつかわかりませんけれども、その公益認定財団が解散されるときに受け皿となる宗教法人は、既にこのアからオまでの要件を満たしていなければいけないということになると、公益認定されるときに受け皿となる宗教法人の規則も改正しておかなければいけないということになるわけで、非常に忙しい話ということになる。

○ そうですね。おっしゃるとおりだと思いますし、それで、実は、将来どの時点でということがわからないわけですから、現在申請する時点でそこまでを本当に要求する趣旨なのかどうかも、実はそこまでまだ固まってないではないかと。

○ 宗務課長
 具体的な、どういうふうにやっていくかということは、まだこれから議論していくことになると思います。

○ 租税特別措置法の第40条のときは、適用を受ける段階で改めて規則を改正すればよいことになっておりますので、できればそういうふうにしていただければありがたいです。

○ そうですね。私も、今こうやって見たらそうだと思いますが、制度設計を具体的にこれからするので……。

○ 宗務課長
 そこはもう少しよく確認をさせていただきたいと思います。

○ 確認をしていただきたいと思います。よろしゅうございますか。

○ 結構です。

○ ほかには。もしこのほかにご意見等あるようでしたら、これはいつごろからパブリックコメントの対象にするのですか。先週に答申が出たばかりと。

○ 宗務課長
 私どもが伺っておりますのは、この6月の末ぐらいから7月の中旬ぐらいにかけてではないかと伺っておりますけれども。

○ では、その段階でもそれぞれの委員なり、あるいは団体の方でご意見がありましたら直接に申し出てもいいし、あるいはこちらで集約してもよいということになりますかね。その旨、よろしくお願いしたいと思います。
 もしないようでしたら、引き続きその他の事項について事務局の方から報告をお願いしたいと存じます。資料4から以下ということで、都合3点ということになりますかね。

○ 宗務課長
 資料4をご覧いただきたいと思います。宗教法人の書類提出の状況でございます。
 これは、宗教法人法の規定に基づきまして、各宗教法人は事務所に備えつけております財務会計書類等の写しを所轄庁に提出することが義務づけられているわけでございます。これの17年中に提出期限が来る分ということで、基本的には16年度の書類になろうかと思いますけれども、これにつきまして文部科学大臣所轄法人については今年の3月末現在、都道府県知事所轄法人については昨年末現在の提出率をまとめたものでございます。
 文部科学大臣所轄につきましては98.1パーセント、都道府県知事所轄につきましては94.2パーセントで、引き続き高い提出率を維持しております。これは、平成7年の改正で導入された制度でございまして、10年が経過したということで、定着していると考えておりますけれども、引き続き制度の適正な執行に努めてまいりたいと考えております。
 なお、参考ということで、過料事件通知書の発出件数がございますけれども、これは4月以内という期限までに提出がない場合に督促をいたしまして、それでもなお相当期間経過しても提出がない場合に、裁判所の方に所轄庁から過料事件通知書を発送するという扱いにしております。
 文部科学大臣所轄の今回の提出分につきましては、前年分より1件少ない発出件数となっております。
 次に、資料5でございますけれども、情報公開に対する対応状況でございます。今、資料4でご覧いただきました宗教法人からの提出書類等の扱いにつきましては、文化庁といたしましては宗教法人及びその関係者の信教の自由を確保するという観点から、登記事項などの公知の事項以外は開示をしないという扱いで対応してきてございます。そして、その旨を処理基準といたしまして各都道府県の知事にも周知をしているところでございます。
 表1は、国における開示請求に対する対応状況でございますけれども、1の提出書類については、13年の情報公開法の施行以後9件ございますけれども、9件とも不開示ということでございます。これは、存在するかしないかも含めて、存否の応答を拒否するという形で国としては対応してございます。
 このほか、規則・認証書につきましては、これは行政行為の結果であるということですので、これについては原則公開にしておりますけれども、印影ですとか代表役員以外の氏名といった個人情報については伏しておりますので、部分開示が何件か出てございます。
 それ以外の添付書類につきましては、既に公になっているような事項以外については、非開示にしてございます。その他の書類についても、信教の自由を確保するという観点から、必要な部分について不開示という扱いにしておるところでございます。
 表2は、文部科学省と文化庁全体の開示請求についての状況を参考にまとめているものでございます。
 それから、表3は、不服申立ての件数ですけれども、これは不開示決定を行ったものに対する不服の申立ての件数をまとめているものでございますけれども、宗務課について2件というのがございますけれども、これはある特定の宗教法人の提出書類の中にございました宗教の会議の議事録の公開請求がございまして、2件とありますけれども、同じ方から同じ法律について2件申請がございまして、2件とも当然不開示にしたわけでございますけれども、これに対して不服申立てがあって、決定済2件とありますけれども、棄却の決定をしているものでございます。
 それから、資料6でございますけれども、鳥取県の公文書開示決定取消訴訟最高裁決定についてでございますけれども、これも先ほどの情報公開の関係でございますけれども、鳥取県におきましては、文化庁の処理基準とは異なる独自の基準をつくられまして、財産目録などの非公知の事項を含めた内容の開示決定をされておったところでございます。
 これにつきまして、開示決定の対象となった当該宗教法人からその開示決定の取消しを求める訴えが提訴されておりまして、これまで地裁、高裁でそれぞれ鳥取県側が退けられる判決が出てございまして、今年の2月に最高裁の決定が出まして、鳥取県の上告が棄却されたということでございます。したがいまして、判決として確定をしたということになってございます。
 控訴審の判決の骨子を書かせていただいておりますけれども、鳥取県側といたしましては、提出された書類を受け取るのは法定受託事務であるけれども、それを管理する事務は自治事務であるので、国は処理基準を定めることができないという主張をされていたわけでございますけれども、この後、地裁、高裁におきまして、提出された書類を受け取るだけでなくそれを管理する事務も法定受託事務であると、そういった判断がなされたところでございます。
 この理由骨子の1の(ウ)というところをごらんいただきますと、書類の提出のみに意義があるのではなく、提出したあと書類を所轄庁が適切に保管して利用することによって、宗教法人の業務・事業の管理・運営の実態を継続的に把握することが重要である、そういった理由になっております。
 (オ)のところでございますけれども、この書類の管理、特に開示についての取扱いを「全国一律の基準に基づいて処理するのが合理的かつ妥当である」、そういった判決になっておるところでございます。
 こういうことで、最高裁の決定におきましても、国の処理基準の正当性、また公知の事項以外は非開示とするという扱いの妥当性が認められたわけでございますので、引き続きこの方針に沿って適切に対応してまいりたいというふうに考えてございます。
 最後に、資料7でございますけれども、これまで本審議会でご答申をいただいた案件で、その後裁判等になりまして、前回の審議会以後に動きがあったものについて、まとめてご報告をさせていただきます。
 まず、1ページおめくりいただきますと、1といたしまして、宗教法人「天理教豊文分教会」の規則変更認証処分に係る案件でございます。これは、15年10月の本審議会で不服申立てに対する裁決につきましてご答申をいただいておるものでございます。
 事案の概要にございますように、これは宗教法人天理教の被包括法人でございました「天理教豊文分教会」、これが被包括関係を廃止いたしまして、名称を「天理教豊文教会」とする旨の規則変更を長野県知事に申請いたしまして、長野県知事から認証を受けたものでございます。
 これに対して、天理教から文部科学大臣に対して長野県知事の認証について不服とする審査請求がございまして、それが棄却されました後、長野県知事を相手として認証の取消しを求め提訴したというものでございます。
 天理教側の主張としては、この名称変更が人格権を侵害していること、あるいは不正競争防止法に違反すること、また、当該宗教法人の規則の中で、天理教甲府大教会代表役員の同意が必要だとあるのにもかかわらず同意を得ていないことで、以上のような理由からこの取消しを求めたということでございますけれども、これにつきましては、昨年の6月に最高裁の決定が出ておりまして、天理教側の上告が棄却されておるということでございます。
 東京高裁の判決理由要旨を書かせていただいておりますけれども、天理教側が主張している人格権や不正競争防止法違反の問題は、規則認証の審査の要件とは関係がないと、そういった理由になってございます。
 それから、甲府大教会の同意というものは、実質的にはこの甲府大教会が天理教の構成員と考えられるということで、宗教法人法第26条第1項後段に基づき同意を得る必要はないという判決になっております。第26条第1項につきましては、2ページの下のところに書かせていただいておりますけれども、被包括関係を廃止しようとする場合に、包括している宗教団体が一定の権限を有する旨の定めが規則にあっても、それによることを要しないとする規定でございます。これに基づいて甲府大教会の同意を得る必要がないといった判決になっているわけでございます。
 それから、2ページの(2)「天理教水京分教会」の規則変更認証処分、これも今ご説明しましたものとほぼ同様の案件でございまして、こちらにつきましては昨年6月に東京高裁の判決が出まして棄却されております。現在、上告中という状況でございます。
 こちらの判決理由のところは、3の1のところが先ほどの豊文分教会と少し違っておりまして、人格権については所轄庁に審査義務がないこと、また、不正競争防止法の適用も、宗教法人の宗教活動については対象外ということで、この点の理由が少し異なっておりますけれども、結論的には控訴が棄却されておるということでございます。
 それから、3ページでございますけれども、宗教法人「気多神社」の規則変更認証処分、これにつきましては、昨年5月に本審議会のご答申をいただきまして、裁決を行ったものでございます。
 事案の概要ですけれども、宗教法人「神社本庁」の被包括宗教法人でございます宗教法人「気多神社」、石川県にある神社でございます。こちらが被包括関係を廃止する目的で認証申請をした規則変更につきまして、石川県知事はこれを認証したわけでございますけれども、神社本庁から審査請求がございまして、この審議会でご審議いただいた結果、石川県知事の認証を取り消す裁決を文部科学大臣において行っております。
 その後、気多神社側から文部科学大臣に対してこの裁決の取消しを求めた訴訟が提起されておるという状況でございます。
 これは、昨年11月にこの訴えが提起されておりまして、現在、東京地裁において係属中となってございます。また、本件につきまして判決等が出るなどの動きがありましたら、本審議会でご報告をさせていただきたいと考えております。
 以上でございます。

○ ありがとうございました。
 たくさんの資料に基づいてご説明をいただいたわけですが、まず、資料4及び資料5に関連して何かご質問等ありましたら、そこの点についての議論をしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
 資料5の方が情報公開ですが、この存否応答拒否のところは表には直接は出ないで、不開示のところに含ませているということなのですね。

○ 宗務課長
 はい、さようでございます。

○ 特にございませんか。もしないようでしたら、続いて資料6及び7の関連でもしございましたら、出していただきたいと思います。資料7にごらんいただきましたように、私どもが答申して、そのまま処分といいますか裁決がされるわけですが、それでは実は終わらないわけでして、その後もこういう形の取消請求等が起きますので、その都度宗務課、宗教法人室はずっと対応している状況です。
 3番目の「気多神社」の関係。気多はこの字でよかったのですか。こういう場合には古い字を……。

○ 宗務課長
 規則上は旧字体の方でございます。

○ 旧字体ですね、氣多先生の「氣多」というふうに書くのですが。資料6の方は、これはずっと前もお話しをしたと思うのですけれども、鳥取県の方ではいろいろなものを公開するということですから、それはおかしいだろうということで起こされた訴訟でございまして、実際上、処理基準というのを出しているわけですけれども、異なる判断をされたものですから、これは宗務課としても非常に関心を持って見ていたところです。
 何か、事案の関係等についての疑義等はございませんでしょうか。なんでも結構ですが。

○ 情報公開に対する対応状況のところで、前年度に対しての件数がどんと増えているのは、単にそれだけの請求がありましたということで、理由は必要ないかもしれないのですが、想像されるところをお答えいただけたらと思います。

○ 宗務課長
 これは資料のつくりがわかりにくく、申し訳ありませんが、この数字は13年度からの類型の合計でございまして、括弧書きがこの中の内数で18年度の件数ということでございます。

○ 資料7、私も多少関わったから経過はわかるのですけれども、新しくいらした方などはこれだけ読んでも、何がどうなっているのかよくおわかりでないかもしれません。人にかこつけて自分がわからないことを言っているかもしれませんけれども。簡単に、これはこういう問題でということを、かいつまんでお話しいただいたら、いいのではないかと思うのですけれども、いかがでございましょうか。

○ 事務局としては、事案の概要のところに主な中身は書いてあるというおつもりだったのですね。今のようなご感想がありましたので、事案の概要をもう少しかみ砕いていただけますか。

○ 宗務課長
 最初の「天理教豊文分教会」と「天理教水京分教会」、これはほぼ同様でございますけれども、宗教法人天理教の被包括宗教法人ということで、「天理教豊文分教会」、「天理教水京分教会」というものがあったわけでございますけれども、これが被包括関係を廃止いたしまして、いわば独立するということで名称を分教会の「分」の字を取りまして「豊文教会」、「水京教会」とするということで規則変更を長野県知事、茨城県知事に申請して、両知事はこれを認証したわけでございます。
 これに対して、天理教側がおっしゃっているのは、同じ「天理教」という文字が入っているので、これは人格権を侵害しているということ。それから、不正競争防止法の中で、他人の商品等の表示で広く認識されているもの、それと同一の表示を使用してはならないなどの規定があり、それに違反するのではないかと、そういう理由でこの訴訟を起こされたわけでございます。
 訴訟の対象としては、長野県知事・茨城県知事がこの規則変更をともに認証しておりますので、その認証を取り消すという旨の訴えを起こされたということでございまして、判決の結果としては、水京分教会の方は現在上告中ですが、これまでは、いずれも天理教の訴えが退けられているわけでございます。
 理由は、この2つの裁判で少し違っておりますけれども、人格権の侵害であるかどうか、それから不正競争防止法違反であるかどうかということについて、豊文分教会の判決においては、それは別途争う余地があるとしても、それは宗教法人法の第28条第1項第1号の要件と関係がないということですので、第28条第1項第1号が1ページの下に書かせていただいておりますけれども、所轄庁が規則変更を認証するかどうか審査するときの判断基準でございますけれども、その変更しようとする事項が、この法律その他の法令の規定に適合しているかどうかと、これを判断するということですけれども、この際に人格権とか不正競争防止法の違反、そこまで審査することは必要ないのだと、そういうのがこの豊文分教会についての判断かというふうに考えます。
 それから、もう1点、天理教側の主張として、この豊文分教会の規則の中に、そういった規則変更をする場合には、天理教甲府大教会の同意を得なければならないという規則があるにもかかわらず、この同意を受けていないのでこの規則変更は認められるべきものではないというのが主張であったわけでありますけれども、これについては、判決理由としては、この甲府大教会というのは天理教の構成員であると。天理教と一体とみなされるものだということだと思いますけれども、したがいまして、宗教法人法第26条、2ページの下に書かせていただいておりますけれども、宗教法人が当該法人を包括する宗教団体との関係を廃止するとき、その宗教法人の規則の中に当該宗教法人を包括する宗教団体が一定の権限を有する旨の定めがある場合でも、この権限に関する規則の規定によることを要しないという規定が宗教法人法にありますので、この第26条の規定によってこの同意は必要ないものであるというのが判決理由でございます。
 水京分教会の方は、理由のところで、先ほどの人格権と不正競争防止法のところが少し踏み込んだ形になっておりまして、人格権侵害については被控訴人、茨城県知事にそこまで審査する義務はないこと、それから不正競争防止法については、宗教法人の宗教活動は適用対象外であることが判断理由になってございます。
 それから、気多神社の関係、3ページでございますけれども、これも宗教法人「神社本庁」の被包括法人である宗教法人「気多神社」が、やはりその被包括関係を廃止する目的で規則変更を申請したものでございます。
 これについて、石川県知事がそれを認証したのですけれども、審査請求が上がってまいりまして、文部科学大臣において石川県知事の認証を取り消す裁決を行いました。その理由といたしましては、この気多神社側の規則を変更した、その変更点は何点かあったわけでございますが、その中で、財産処分に関する規定を削除しております。
 宗教法人法の第12条の中では、「基本財産、宝物その他の財産の設定、管理及び処分」に関する事項を規則に設けなければならないこととされておりまして、財産処分に関する事項は規則の必要的記載事項であるということでございますから、その規則変更は宗教法人法に違反するものであるということで、石川県知事の認証を取り消したということでございます。
 これに対して、現在、気多神社側は文部科学大臣を被告としまして、この裁決の取消しを求めて訴えを提起しておるわけでございまして、これについては係争中でございますので、また結果が出ましたらご報告させていただきたいと思います。

○ では、私の方から多少補います。よろしいですか。
 1と2という天理教に関するものは、直接審議会なり文部科学大臣が当事者であるわけではなくて、長野県なり茨城県なりの知事がされたことを、それはそのとおりであろうということでここでは認めたわけです。したがって、1、2の事件というのは、被告は長野県知事、茨城県知事ということになっております。そういうことで、結果的にはほぼいわば県側の主張、文化庁側の主張が認められているという格好になります。
 最後の気多神社は、これは文部科学大臣を被告とする取消しの訴訟で、もともと平成18年の5月16日というところ、事案の経過を見ていただくとわかりますが、石川県知事が行ったこと、そのもともとの処分を取り消すという、覆すという判断をしたものですから、直接、文部科学大臣が行ったことが取消し請求の対象になったという事案でございます。
 では、今のいろいろ質問がございました訴訟等の案件、あるいは情報公開の関係で、特にあとはございませんでしょうか。

議題(3)

○ そのほかに全体としてご意見があるということで、では承りたいと思います。よろしいですね。

○ 意見とか要望ではなくて、協力者会議での議論の方向性とか、どういう内容であったのか、その辺をお聞きしたいという思いでございます。
 14ページでございますが、宗教法人をめぐる税制についての有識者の発表概要の2でございます。一番初めところで、「宗教法人に対する課税制度は、必ずしも宗教法人に公益性が有ることを前提として優遇措置が執られているわけではなく、宗教法人であるがゆえに非課税であるという側面があると考えている」と、こういう意見が1つありました。
 で、この○の6つ目のところをごらんいただきますと、ちょうど真ん中ですが、「国税の場合には、『公益法人等』の中で非課税措置が画一的にされているという点で、宗教法人に公益性があるのかどうかということが議論されるが」とあります。
 この辺の論理的整合性、この辺の調整と言いましょうか、この辺はどんな議論になっていたのか。私は、これは片方だけの意見でいくとちょっといろいろと……、要するにそういうことなのですけれども。

○ はい、承知しました。私の方で簡単にお答えして、補足があれば課長の方からお願いしたいと思います。
 これは、上に書いてございますように、有識者の方の発表の中身をまとめたものでございまして、その調査する側の意見をまとめたものではないことをまずご理解いただきたいと思います。
 その上で申しますと、できるだけ有識者が発表されたことは、その前後にある種の齟齬、あるいは矛盾があったとしても、こちらはこちらとしてそのままできるだけ意見としてまとめるという方針を立てておりまして、その形で最初に書かれたことと後に書かれたこととの間の整合性が必ずしもきちんとしてないという印象を持たれるかもしれません。
 実際に、いろいろペーパーをいただいた上でその場で発表していただいて、質疑応答も重ねるということをやっておりますので、多分、その点での印象が少し一貫してないというような印象を持たれるところがあるのかもしれません。
 もし必要でしたら、協力者として参加された委員や、事務局から補足していただければ幸いだと思いますが。

○ 私の理解では、一番最初の○は有識者の先生の見解で、6番目の○は議論される内容を指摘しているだけだというふうに理解しています。要するに、公益法人等の中に宗教法人が入っているので、宗教法人に公益性があるかどうかという議論が多くの人でなされていますよという、単なるそういうことではないかなというふうに理解していました。
 要するに、6番目は議論をされておるという認識を述べられたもので、1番目はその有識者の方の考え方を述べられていると。

○ 6番目のところも有識者が述べられたことをまとめたもので、我々の議論の方向を示したものではないと理解していますが。

○ この議論は、この会議で議論されたという意味ではなくて、要するに一般的にそういうふうに議論されているのではないかと、そういうことを言っておられたのではないかというふうに思ったのですが。

○ いかがですか。

○ 宗務課長
 これは、2つ目の○のところにちょっと書いてありますけれども、国税においては「公益法人等」というくくりがあって、その中で取り扱われているけれども、地方税についてはこういった公益法人という位置づけがなくて非課税となっているということで、トータルとして見れば公益法人ということでなくて、宗教法人だから非課税になっていると言えるのではないか。そういうことが基本にこの先生のご発表にあったのではないかと理解しておりますけれども。ここは、この先生のご主張でございましたので、一番目の「公益性があることが前提ではない」ということが、この協力者会議の共通の理解ということではないと思います。

○ よろしゅうございますか。

○ はい、それで結構です。

○ いろいろな有識者の方、一番後ろに名前がありますので、大体この方かなという当てはめはできるかと思いますけれども、いろいろな意見がございまして、まとめる際も談論風発の話もございましたので、まとめるのがきちんとなってない側面があるのかもしれませんが、いわばその先生は、客観的な、いろいろな詳しい議論は出ていませんよということでおっしゃったという内容です。この意見の概要につきましては、主要な論点というのはほぼ出ているように思いますので、じっくり読んでいただきまして、これからの議論の参考にしていただければ、この調査協力者会議の意味があるのではないかというような気がいたします。

○ ただいま、この協力者会議の「主な意見等の概要」となっておりますけれども、この取扱いについてお尋ねをしたいと思います。
 本日は、概要ということでご紹介をいただいておりますが、これは最終の報告書のような形でまとめられるのかどうか。この点についてお尋ねをしたいと思います。
 また、この概要も公開をされていくのか、また、最終報告書になって公開をされるのか、この点も含めてお尋ねをしたいと思います。
 あと1点、先ほどのご説明の中で、ただいま海外の宗教事情についても調査研究をさせておられるということで伺いましたが、この海外の宗教事情についても同じような報告書を作成されるのかどうか、これについてもお尋ねをしたいと思います。よろしくお願いします。

○ 宗務課長
 この協力者会議につきましては、今年度もご議論をいただきますので、その内容によっては、今回まとめた意見の概要を修正するということも考えられるかと思っておりますけれども、意見の概要を修正するか、さらにはこれとは別に最終的な報告書を作成するかということは、今後のご議論の状況を見てと思っておりますので、まだ今の段階では決めておりません。
 それから、意見の概要の扱いですけれども、特に公表するということは考えておりません。今回、本審議会でご報告をさせていただたということと、また、先般、日宗連の理事会でもご報告をさせていただいておりますので、他には特に公表するということは考えておりません。
 それから、海外の調査については、報告書をまとめていただく予定ですので、それがまとまりましたらこの審議会にまたご報告をさせていただきたいというふうに考えております。

○ 大体以上のようなことでございまして、この32ページには、文化庁次長決定として調査研究の内容及び実施方法が書いてございます。こういう形で、いわばオフィシャルにスタートしているものですから、この意見概要を使って何か制度の改正などにつなげるということではございませんけれども、決して隠すというものではございませんので、ご要望があれば、あるいは協力していただいた団体もございますので、当然にこの概要等をお配りするということは用意できているわけですね。

○ 宗務課長
 ご要望があればお配りをさせていただきます。

○ よろしゅうございますか。

○ はい。

○ 資料4のところの、宗教法人書類提出状況とありますが、これは出されていないところに対して、パーセンテージは出ていますが、出されていないところに対しては別にどうということはないのですか。何の処罰とかもなくて、ただ出した出さないだけのこれはパーセンテージで済んでいるのでしょうか。

○ 宗務課長
 これは、宗教法人法上は、提出書類を提出いたしませんと罰則が規定されておりまして、現在、10万円以下の過料に処せられるということになっております。

○ そうなのですか。

○ 宗務課長
 扱いとしては、私ども過料事件通知書というのを裁判所の方に提出をいたしますので、それを踏まえて、あとは裁判所の方で職権で判断されるため、実際に過料が課されているかどうかまでは、ちょっと私ども把握しておりません。

○ そういう罰則制度があってのことなのですね。わかりました。ありがとうございます。

○ ほかにはございませんでしょうか。
 刑法上の罰金とは性格が違いまして、一種の行政罰ですね。過ち料というふうに書いてありますが、そういう形で何とか出していただきたいという強い要望はずっと出しておりますが、なかなかもう数年来のこれは行動パターンでございまして、なかなか変わらない。
 一方では、当然法で定められたことですから、守りなさいというふうに強く出ることもできますが、他面それだけではなかなか動かないという実情はどうもあるようでして、自発的に1件少なくなったというのも関係者のご努力のおかげでございまして、少しずつそういう努力を進めるほかはないかなというのが、これまでずっと事務局の仕事をしている委員から見るとそういう形がいたします。ご理解をいただければと思います。

3 閉会

○ ほかにございませんでしょうか。もしほかにご発言等がないようでございましたら、ほぼ予定の時間が近づいてまいりましたので、これで本日の会議は終了したいと思います。
 長官には、長くおつき合いいただきましてどうもありがとうございました。

お問合せ先

文化庁文化部宗教課宗教法人室

(文化庁文化部宗教課宗教法人室)

-- 登録:平成21年以前 --