宗教法人審議会(第143回) 議事録

1.日時

平成14年6月18日(水曜日) 午前10時30分~

2.場所

霞が関東京會舘 シルバースタールーム

3.議題

  1. 宗教法人「岩間山正法寺」の規則変更不認証処分に係る審査請求について
  2. 最近の宗務行政について
    1 宗教法人の書類提出状況について
    2 宗教法人「明覚寺」の解散命令決定について
    3 情報公開関係
    ・対応状況
    ・情報公開異議申立に対する答申
    ・宗教法人に関する行政文書の開示請求対応について
    4 その他

4.出席者

委員

手島会長、阿部委員、池端委員、石上委員、大石委員、岡野委員、黒住委員、氣多委員、滝口委員、田澤委員、田中委員、栃尾委員、内藤委員、野崎委員、長谷川委員、長谷部  委員、湊委員、芳村委員

オブザーバー

(文化庁)
 河合長官、銭谷次長、遠藤文化部長、鬼澤課長、串田宗教法人室長、井篠専門官、その他関係官

5.議事録

午前10時30分開会

1.開会

○ ただいまから第143回宗教法人審議会を開会いたします。今回、1名の委員について異動がありましたので、事務局から報告願います。

○ 宗務課長
 大竹明彦委員が今年3月末で任期満了となりまして、新たに後任として、本年4月1日付で石上智康委員が就任されております。ご紹介させていただきます。

○ ここで新しく就任されました石上委員から一言ごあいさつを願いたいと思います。

(委員挨拶)

○ どうもありがとうございました。次に文化庁にも異動がありましたので報告願います。

○ 宗務課長
 前文化庁長官佐々木正峰でございますが、国立科学博物館長に異動となり、本年1月18日付で河合隼雄が長官として就任いたしました。

○ 文化庁長官
 よろしくお願いします。

○ 宗務課長
 また、前宗教法人室長の加藤敬でございますが、長官官房国際課国際文化交流室長に異動となりまして、本年4月1日付で前北海道教育庁の企画総務部教育政策課長から異動になりました串田俊巳が就任しております。

○ 宗教法人室長
 串田でございます。よろしくお願いします。

○ それでは、ここで開会に当たりまして河合長官から一言ごあいさつを願いたいと存じます。

○ 文化庁長官
 それでは一言ごあいさつ申し上げます。私は、初めてここに参加させていただくということでございますが、錯覚をしておりまして、何遍も出たのにと思っていたんですが、それは実はそちら側におりまして、出させていただいたのですが、長官になりましてからは初めてでございます。この第143回宗教法人審議会の開催に当たりまして一言ごあいさついたします。
 委員の先生方におかれましては、非常に忙しいところ、ご出席いただきましてまことにありがとうございました。また先ほどあいさつがございました石上委員には本年4月1日付で新たに就任していただきました。どうぞよろしくお願いします。
 もう改めて皆さん方には言う必要もないことでございますが、今は科学技術が大変発展しておりまして、もちろんそのためにたくさんの恩恵をこうむっているわけでございますが、物の豊かさに対しまして心のほうも豊かに持っていかなければならない、そういう心のことを考える上におきまして、宗教の持つ意味は、私は非常に大きいと思っております。このような中で、信教の自由を保障するとともに、宗教法人制度の適正な運営についてご審議いただく宗教法人審議会の役割は非常に重要なものであると考えております。
 文化庁におきましては、今後とも委員の皆様方それぞれのお立場からの貴重なご意見、助言をいただきまして円滑かつ適正な宗務行政を期してまいりたいと考えておりますので、よろしくご指導をお願いいたします。
 本日は文部科学大臣あてに宗教法人の規則変更にかかわる審査請求が1件なされておりますので、その裁決につきましてご審議いただいた後に、最近の宗務行政についてご報告させていただく予定となっております。
 以上で、簡単でございますが、ごあいさつとさせていただきます。何とぞよろしくお願いいたします。

○ どうもありがとうございました。
 それでは審議に入ります前に、本日の配付資料の確認を事務局からお願いします。

(事務局から資料の確認)

○ 次いで定足数の確認をいたします。宗教法人審議会規則第6条により、総委員の5分の3以上の出席がなければ、議事を開き議決することができないこととされております。
 本日、20名の総委員中、18名の出席で定足数を充足していることを確認いたします。
 なお、本日の審議内容の公開について申し上げます。本日の主たる議題は、不服審査に係る案件ですので、当審議会における申し合わせにより、不服審査に係る審議の内容については、議事要旨が公開となります。また、その他の審議の内容については議事録にて公開となります。さらに、当審議会における申し合わせにおいて、個別の宗教法人名は議事録等では公開しないこととされていますが、答申の中に記載された法人名については、この限りでないとされており、公開されることになりますので、念のため申し上げます。

2.議事

議題(1)

● 宗教法人「岩間山正法寺」の規則変更不認証処分に係る審査請求についての文部科学大臣からの諮問に対し、本件審査請求を棄却する旨の決定をすることを適当と認める旨の答申がなされた。

議題(2)

 それでは議題2に入りたいと思います。最近の宗務行政について事務局から報告があります。
 まず宗教法人の事務所備えつけ書類の提出状況について報告をお願いします。

○ 宗務課長
 お手元の資料5に基づいてご説明させていただきます。上段に文部科学大臣所轄の分、下段に都道府県知事所轄のそれぞれの集計を載せてございますが、平成13年中、昨年中に提出期限が来たものについてまとめたものでございます。
 まず文部科学大臣所轄につきましては、980法人から書類を提出いただいております。提出率にいたしますと97.5%になりますが、最終的には97.8%ということで、一昨年と同じ提出率にまでは至るという状況でございます。そういう意味で、この数字はまだ未確定という形で整理しているものでございます。
 下のほうが都道府県知事所轄で、これも集計中でございます。18万2,495法人中、17万1,171法人から提出いただいて、現在93.8%という率でございます。昨年の同じ時期、すなわち平成12年中提出分について同じ時期に94.7%でしたので、若干率としては減っているわけですが、実はこの時点で集計が終了しているのが、現在は10都県でございます。昨年ですと14都県終了していましたので、若干集計、督促がまだまだこれから行われるという、昨年以上に行われる可能性が高いという意味で、そういう意味で若干、率は低くなっていると私どもは考えております。過料事件通知書の発送件数は現在264件でございます。昨年同時期は464件でしたので、そういう意味でも最終的な過料の発送通知はこれからという段階で、督促が丁寧に行われているのではないかということでございます。なお、昨年の最終の過料事件発送件数は1,337件ということで、例年大体このぐらいの数字に最終的には落ちついていくかと思っております。
 以上でございます。

○ ただいまの事務局からの報告について何かご意見、ご質問等ございませんでしょうか。

○ 膨大な量の処理ですけれども、それぞれ事務当局でどの程度、提出書類を精査されているんですか。全部きちっと中身を見ていらっしゃるんですか。抽出的になさっているんですか。

○ 宗務課長
 これはそれぞれ受理するときに一つ一つ確認して、法人によって提出する書類の種類も違いますので、内容、種類を確認した上で受理しているという形で確実に精査の上、受け取っているということです。

○ ご納得いただきましたでしょうか。ほかにございませんでしょうか。

○ この5件、過料事件通知書、拒否ということなんですが、昨年も5件、前年度も5件と、同じ件数だということは同一法人と見てよろしいのですか。

○ 宗務課長
 はい。この法人につきましては実は11年中から同一法人で5法人、かわりございません。

○ わかりました。

○ 毎年度、その年度について過料を課しているという格好になるんでしょうか。

○ 宗務課長
 さようでございます。

○ ほかにございませんか。
 それではご意見、ご質問ありませんようでしたら、事務局からの報告の続きをお願いいたします。

○ 宗務課長
 続きまして、宗教法人の明覚寺の解散命令決定につきましてご報告させていただきます。先回のこの会議のときにまだ解散命令の決定は出ておらず、早急に決定がなされるよう裁判所に対しても求めていきたいというようなご説明をしたわけですが、今年1月24日に和歌山地裁から解散の命令が出されました。その決定書を本日はお配りしております。資料6でございますが、宗教法人明覚寺につきましては、宗教活動の名のもとに組織的、計画的、かつ継続的に詐欺行為を行ったということから、私どもは解散命令を請求してきたところでございます。
 決定書では、具体的には資料の3ページ以下、裁判所が、明覚寺が行った詐欺事実を大きく7件に分けて、ページ数で行きますと11ページまで、詐欺を一つ一つ認定しております。その上で、12ページの下以下で解散命令事由に該当するか否かということを判断しているわけでございます。
 具体的に幾つかの事実関係を認定したわけで、例えば組織的にチラシを作成しているというようなこと、あるいは13ページに行きますと、それをまた組織的に配っている、あるいは詐欺によってだまし取る金額の目標など設定していた、そういう事実を認定した上で13ページの一番下のところでございますが、これは到底、僧侶による個人的犯罪ということはできず、宗教法人たる明覚寺が主体となって行ったという認定をしているわけでございます。
 そして14ページに行きまして、被害件数、被害額は極めて多数、多額に及んでいるということから、著しく公共の福祉を害するものである、さらに組織的に詐欺行為を行うことが宗教団体の目的を著しく逸脱したと認められるということで、私ども解散命令を求めた側の主張を認めているものでございます。
 したがいまして、宗教法人法の第81条1項1号、そして2号前段にいう法令に違反して著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為、さらに宗教団体の目的を著しく逸脱した行為に該当するとして、解散命令を決定したものでございます。
 犯罪行為を理由とする解散命令の決定としましては、オウム真理教に続きまして2番目の事案でございまして、いわば刑法上の詐欺罪に該当する行為を行った場合もこの宗教法人法81条1項の要件に該当するということを認めたケースであると考えているところでございます。
 なお、本件に関しましては明覚寺側が今年1月31日付で大阪高裁に即時抗告を行っておりますので、引き続き大阪高裁で審理がされている状況でございます。今年の連休前、4月時点では当方側からも答弁書の提出をして、お互いの主張が基本的には出尽くしている段階でございますので、いずれ決定が出るかと思いますが、高裁におきましても現決定が維持されることを求めていきたいと考えております。
 さらに関連しまして今年4月8日に明覚寺の代表役員に対する刑事事件の控訴審の判決が名古屋高裁でございました。そこでは代表役員の西川被告あるいは名古屋市に所在する別院の満願寺の住職であります宇崎被告、これについては有罪の判決が維持されたわけですけれども、前代表役員の矢野被告については、一審を取り消して無罪の判決が出たわけでございます。しかしながら、無罪の理由というのは、当人の犯罪への関与がなかったということでございまして、明覚寺自身の、法人自身の組織的な詐欺行為については認められておりますので、解散命令への影響はないものと考えているところでございます。
 以上でございます。

○ どうもありがとうございました。
 ただいまの事務局から報告につきまして何かご意見、ご質問等ございましたら承ります。ご意見、ご質問等ございませんでしょうか。特になければ事務局からの報告の続きをお願いします。

○ 宗務課長
 資料7をご用意させていただいておりますが、まず情報公開法の施行状況につきましてご説明申し上げます。これも前回のこの審議会でも報告させていただきましたので、その後の数字を加えまして、今年5月末時点で整理した数字でございます。昨年4月から施行されています、いわゆる情報公開法のもとにおきまして宗教法人にかかわる行政文書がどういう形で開示されているかという状況でございますが、請求内容を5つに分類させていただいております。
 宗教法人法第25条4項に基づく、いわゆる備え付け書類でございますが、3件の請求がございまして、これはいずれも不開示決定をしております。この不開示は、一番下のほうに注で書いてございますが、存否応答拒否ということで、その書類の存在自体の応答も拒否した形で不開示決定をしているものでございます。
 それから2点目、3点目は、規則に関するもの、認証書に関するもので、これにつきましては行政庁の行政行為の結果を通知する書類でございますので、基本的には開示するということで考えております。したがって、2については全部開示が2件、それから部分開示13件、それから3についても部分開示が1件ということで、基本的に開示でございます。
 この部分開示というのは、例えば法人の印影、あるいは責任役員の氏名など個人情報については開示しないということで、それを除いては開示されているということでございます。なお、認証書に関するものの不開示1件は、そもそも行政庁が保有していなかった、不存在ということのためでございまして、保有していれば本来いずれかの形で開示がされるものであったかと思います。
 それから4点目、認証申請の際の添付書類でございます。2件決定しておりまして、2件とも不開示ということでございます。これにつきましては、やはり宗教法人の信教の自由、とりわけ添付種類については内部情報がございますので、それをもとにいろいろな信教の自由に対する不利益がこうむらないようにということで、原則不開示ということで対応しております。
 それ以外の文書は2件ございまして、いずれも不開示でございますが、2件ともそもそも保有していない文書に対して請求があったというケースでございます。
 以上、全体で24件、前回10月の時点で10件でございましたから、それから14件増えておりますが、全体の24件に対して開示、不開示の決定を行ったということでございます。
 なお、下のほうには、文部科学省、文化庁全体の、宗教法人も含む全体の数字でございます。文部科学省は1,600件あまり、文化庁ですと91件ということでございます。それに対して、開示は部分開示がほとんどでございますが、不開示もそれぞれ55件、17件あるということでございます。文化庁の17件の中に宗教法人関係の不開示8件が含まれているということでございます。
 以上でございます。

○ どうもありがとうございました。ただいまの報告について何かご意見、ご質問等ございましょうか。資料8、9についてはどうでしょう。

○ 宗務課長
 それでは、関連しますので資料8、それから9についてもご説明させていただきたいと思います。
 資料8につきましては、今ご説明申し上げた資料7の表1の4の認証申請の際の添付書類に関しまして不開示決定をしたわけですが、それに対して異議申立てが行われた件に関しまして情報公開審査会から答申が行われました。その答申の本文でございます。
 前回の審議会で、異議申立てがあったということにつきましてはご報告させていただいたわけですけれども、この答申が2月14日に提出されておりまして、その概要につきましては、この資料の4ページ以下をごらんいただければと思います。
 そもそも事実関係でございますけれども、開示請求される方は、まず宗教法人の宗会議事録を請求しました。昭和54年、55年、平成8年、9年、10年、11年、12年、それから宗会規則の開示請求を行っているわけでございます。そして宗会議事録のほうにつきましては、4ページの下から2段目の段落以下になるわけですけれども、まず宗会のような宗教法人内部の議決機関の議事録の写しについては、宗教法人法の25条4項により所轄庁に提出する必要のない書類になっているわけでございます。
 しかし、宗教法人が規則の変更や合併、解散の認証申請を行う場合には、宗教法人法に規定がありますように、規則に定める手続を経たことを証する書類として添付する必要があると規定しているわけでございまして、この規則を経たことを証明する書類として実務上は宗教法人からの議決機関の議事録の写しが所轄庁に提出されているということを認めているわけでございます。
 それで、今回開示請求のあった宗会議事録のうち、昭和54年、平成8年、9年、10年、11年、12年のものについては、規則変更の認証申請が行われていないということで、そもそも諮問庁、文化庁に提出されていない。したがって、保有していないということで、問題になりますのは、残りの昭和55年の議事録であったわけでございますが、この議事録につきましてはその年に規則変更の認証申請がございましたので、添付書類として提出されておりまして、文化庁で保有しているわけでございます。
 しかし、この添付書類につきましては、4行目以下に答申で書かれておりますように、宗教法人の事務所備えつけ書類につきましては、閲覧請求権者をそもそも信者その他の利害関係人に限定している。それから国が宗教法人から提出された書類を取り扱う場合や宗教法人に対する国の行政行為一般につきまして、「宗教法人の宗教上の特性や慣習を尊重し、信教の自由を妨げることがないように特に留意しなければならない」という規定もあるわけで、これを踏まえますと、これらの規定は、宗教法人の書類を一般に公開すると、憲法20条で保障する信教の自由を害するおそれがあることから、これらの書類が保護に値する秘密である、すなわち秘匿の必要性があるということを認めているわけでございます。
 したがって、以下書いてございますけれども、第三者にそういうものが開示されますと、誹謗中傷、あるいは自由な宗教活動を妨害するための材料や、宗教法人の運営に干渉するための材料として使われて、宗教上の活動に不利益を与えるおそれがあると。また信教の自由には、宗教団体としての意思形成の自由も含まれているというようなことも認めているところでございます。
 したがいまして、「本件宗会議事録は」以下のところの段落でございますが、宗会議事録は宗教法人の内部に置かれた議決機関である宗会における管理運営上の重要事項についての意思形成過程を記録したものである、こういった意思形成過程の記録が開示されることによって信教の自由、とりわけ宗教団体としての意思形成の自由が侵害されるおそれがあるので、宗教法人の権利を害するおそれがある、よって55年の宗会議事録は、宗教法人の権利を害するおそれがある書類に該当するということで、不開示を認めたわけでございます。
 それから、5ページの下段からは宗会規則について認定判断しているわけですけれども、6ページの2行目以下でございますが、宗会規則につきましては、その作成あるいはそもそも諮問庁である文化庁へ提出を義務づける規定がない。すなわち作成し、提出することが義務づけられている文書ではないということで、そういう規則を文化庁は保有していないということで、宗会規則は不存在ということを認め、どちらも不開示決定は妥当であるということで答申をいただいたわけでございます。
 この答申を踏まえまして、今年3月18日に不開示決定の異議申し立てを棄却する決定を行っております。この決定に対しては処分があったことを知った日から3カ月以内に処分の取り消しを求める行政訴訟を提起できるんですが、現在のところ、訴状の送達はないということです。以上でございます。
 それから、続けてよろしゅうございますか。資料9でございます。先ほど、資料7、あるいは資料7の異議申立てに対する答申、資料8を踏まえまして、資料9として私どもが宗教法人に関する行政文書の開示請求に対して対応していく場合の、一つのガイドラインといいましょうか、一つの指針を取りまとめたものでございます。
 提出書類に関するものとして、先ほど来話題になっております宗教法人法第25条4項に基づいて提出された書類、役員名簿等々があるわけですが、これにつきましては今、ご報告させていただいたとおり、原則、存否を明らかにすることなく開示を拒否するという扱いで今後進めていきたいと考えております。
 理由については下のほうに書いてございますけれども、一般に公にされていない書類ですから、信教に基づく権利を害するおそれがあるということが基本的な考え方でございます。また、なぜこれを提出いただくかという制度の趣旨が、そもそも宗教法人がどういう形で活動しているか活動状況を所轄庁が把握する、目的に沿って活動しているかということを把握するために宗教法人との信頼に基づいて提出いただいているわけですので、こういう書類を開示しますれば、所轄庁に対する宗教法人の信頼が損なわれるということで、結果として提出が拒否されることが続出するのではないかと。したがって、この制度の趣旨が空洞化するというようなことも不開示の理由でございます。
 さらにそもそも不開示するということだけはなくて、存否を明らかにしない、回答しないという理由につきましては、2ページのほうに記載してあるとおり、要するに不活動状態にある宗教法人についてはそもそも書類が提出されていないわけですけれども、その書類が不存在であると回答すれば、どの法人が不活動であるかというのはわかるということになりますので、不活動法人の法人格を買収するなど悪用の契機を与えることにもなりかねませんので、いわゆる不活動法人の対策に支障を来たすおそれがあるということで、こういったことを主たる理由として存否応答拒否という対応にいたしたいと思っているところでございます。
 それから2点目、提出書類にかかわるものとしては過料事件通知書。事務所備えつけ書類を提出していない法人に対して過料を発するよう裁判所に通知するために作成する文書でございますが、これにつきましては部分開示すると。部分というのは、一部については宗教法人の収入規模とか、事務処理能力の程度等、そういったものが推測可能になるような部分について不開示ということで、未提出欄については不開示にするということでございます。
 それから大きく分けて3ページ以下に、認証事務に関するものについての取り扱いを整理しております。認証申請書は開示ということでございます。それから、認証した規則、認証書も開示ということでございます。留意事項として、法人を代表する者の印影等について、あるいは個人の氏名については若干不開示の部分がございますが、これらについては基本的に開示という扱いでございます。
 最後に認証申請時の添付書類でございます。先ほどの異議申立ても添付書類に関するものであったわけでございますが、これは原則不開示と書いてございます。基本的には不開示と整理しているところでございますけれども、その理由については先ほどの答申でも認定、判断されましたように、信教の自由と非常にかかわる秘匿の必要性がある情報を含むものでございますので、宗教法人の権利を害さないよう不開示とするわけです。
 ただ、添付書類の中でも、例えば公告証明書、あるいは礼拝施設の写真とか、そういうものもあるわけでございまして、不特定多数の者が知り得た内容が記載されている書類については開示するということになろうかと考えております。概要をこのような形で、私ども行政文書の開示請求に対しては対応していくということでございますけれども、あるいは対応しているということでございますが、参考までにこの対応状況を各都道府県に対して参考通知として送りたいと考えているところでございます。ご参考までにご報告させていただきます。
 以上でございます。

○ どうもありがとうございました。宗教法人に関する行政文書の情報公開に関連して、資料7、8、9をまとめてご報告いただきましたが、何かご意見、ご質問、改めてお伺いしたいと思います。どうぞ。

○ 質問をさせていただきたいんですが、資料9は今、各都道府県の宗教法人の係の方に通知されて、これでやっていただきたいというための文書なんですね、行政法上はどういう文書になるのか私もあれなんですけれども。そうしますと、地方ではいわゆる情報公開法以外に、情報公開条例というのがありまして、最初にできたころの条例は企業秘密に重点が置かれるような文言になっておりまして、宗教法人の信教の自由というのはぴたっと当てはまらないような文言が使ってある場合がございますが、そういった条例に基づいて請求された場合でもこれで行きましょうということなのかどうかということが第1点でございます。
 それから資料7ですけれども、表1のほうは文化庁の宗務課で担当されている事例の集計だと思いますけれども、各都道府県で条例等に基づいて開示請求された中身については宗務課のほうで把握されておりますでしょうか。
 この2点をお尋ねしたいと思います。

○ 宗務課長
 今お尋ねがございました都道府県の状況については、まだ私ども、全体は把握し切れていないのでございますが、そういう中で、この資料9をどういうふうに考えるかということも一つの問題かもしれませんが、あくまでこれはいわゆる情報公開法、国の法でございます。それに基づいて文化庁がどういう取り扱いをしているのか、また今後どういう取り扱いをしようとしているのかということを、あくまで私どもの取り扱いを参考としてお示ししているということで、委員ご指摘のとおり、都道府県につきましてはそれぞれ情報公開条例という、情報公開法とはまた違う表現、あるいは規定ぶりになっているかと思いますので、すべての面で全く同様に適用ができるかというと、そういうふうには考えておりません。
 とはいいながら、宗教法人法に基づいて提出される書類でございますので、都道府県によって取り扱いが全く異なる、条例が違えばもちろんそれはやむを得ないんですけれども、同様な考えに立っている場合について、取り扱いが異なるというのも問題かと考えまして、一つの参考としてお示ししているということでございます。
 実は先月、都道府県の担当課長の集まる会議がございまして、その場でこの前の段階の案をお配りさせていただきまして、ご意見をいただいて、本日お配りしているのは若干修正を加えているところでございますが、そういう前提で各都道府県に今度は参考通知という形でお示ししていきたいと考えております。

○ どうもありがとうございました。ほかにございませんでしょうか。

○ 私も資料9について質問させていただきたいのですが、1の宗教法人法の25条4項に基づいて提出された書類を不開示とする結論自体はこれで結構だと思うんですけれども、理由の点でちょっとよくわからない点がございまして、2ページ目の2行目なんですが、「宗教法人からの信頼が損なわれ、過料に処せられることを承知の上で提出を拒否する宗教法人が続出し」とあるのですけれども、先ほどの書類提出状況を見ますと、過料に処せられることを承知で提出しない宗教法人というのは非常に少ないということなんですが、それが急遽このような事態に変わるのかどうかと。
 確かに、現在は利害関係人に開示されるということだけであって、それ以外の一般の人に対して開示されるという状況ではないから、提出を拒否するような宗教法人が少ないのだというご説明もあるかと思うのですけれども、提出する側の宗教法人にとってみれば、信者その他の利害関係人に見られることのほうが、どちらかといえば都合が悪いといいますか、恐れるのではないかと。そうではない人に見られるということで、果たしてそれほど拒否するような事態になるのか、そのあたりのところをご説明いただきたいと思います。

○ 宗務課長
 信者利害関係人に書類を見せるかどうかというのは、宗教法人の判断で決定がされていくと思いますけれども、私どもの預かる書類につきましては、実務上の感覚でございますけれども、取り扱いには十分留意して取り扱ってほしいということを言い添えて提出する宗教法人がやはりございますので、相当行政庁にこの書類がどういう形で扱われるか、特にその情報が外部に出て行かないかということについては神経を使われているふうに受けとめているところでございます。とりわけ、この情報公開法に基づく開示というのは、開示請求者に開示するわけですが、いわゆる、一般、第三者に開示すると同様の意味を持つ。例えばマスコミ関係者から開示請求があれば、当然これは一般に開示されるという結果も伴うようなことでございますので、そういう意味でやはり宗教法人が行政庁に対して取り扱いに対する信頼というものを前提にしますと、慎重に対応していくということで、その対応がとられなければ、やはり提出というものに対してアレルギーといいましょうか、消極的になる法人が増えてくるのではないか、そういう趣旨でここのところは書いているのでございます。以上でございます。

○ 実情を存じ上げないものですから、知らないことから非常に誤解をしているかと思いますけれども、もしもこういった利害関係人以外の者にも開示される可能性があるということになりますと、それぞれの宗教法人の方はやはり提出を拒否されるような方向になるものなのかどうか、そのあたりご意見を伺えればと思うのですけれども。

○ 文化庁長官
 要するに、あなたの言っておられるのは、そういうことをすると信頼関係を失うということが一番大きいわけですね。だからそこにわざわざ具体的なことを書かなくてもいいような気がします。過料を覚悟で出さない人がいるとか、そんなことを言わなくても、信頼関係を非常に失うのでというだけでいいかもしれませんね。実際はそこまで具体的に、どこがどうなるかわからないわけだから、書く必要もないような気もしますけれども。

○ 私も全く同じ意見でありまして、法の趣旨からいっても、1ページの下から5行目のところ、「また」以下のところの、要するに法律上はそれをしなければならないと義務づけているのに、それをあたかも認定する書類のごとくに信頼関係を保護するという文脈が出てくるのはどうもいただけないんじゃないかという気がするんです。ここの段落はなくても全く問題がないので、法上の義務づけを信頼関係の保護という形で理論づけてやるというのはかなり法の趣旨そのものを違って受け取っているんじゃないかという気がするんです。実態はそうだとしても、法律上は提出しなければならないと書いてあるのに、それを信頼関係があってという議論をされるのは、我々は条例のレベルで情報公開の議論を随分やってきたんですけれども、その場合にあくまでも任意のものでいろいろな情報を知りたいので行政側が受け取る、それは公にしないという約束のもとにやるという意味で信頼関係という言葉をよく使うんですけれども、ここはちょっと文脈が違うんじゃないかという気がするんです。

○ 報告ということでございましたが、これを見ますと案となっておりますが、今のご意見を踏まえて何か一語ぐらい消すというようなことは可能なんでございましょうか。

○ 宗務課長
 もちろん皆様のご意見を踏まえて、その上で、もしよろしければということで考えておりましたので、ただいまご指摘の点につきましては、法律上の義務としては1ページの「また」以下のところはもう既に上のところで尽きている話で、「また」以下はいわゆる実態、しかも予測される実態であって、ここまで言う必要はあるのかということでございましょうから、ご意見を踏まえて修正していきたいと思います。

○ 事実としては案外そうならないかもしれないわけですね。どうもありがとうございました。ほかにございませんでしょうか。

○ 資料9の過料事件通知書、部分開示とすると書いてあるんですが、これは部分開示ですから、おそらく名前は請求があれば開示するということになるわけですね。それで皆さんがどういうご意見なのか私は、わからないんですが、さきほど資料7で5件あるという話でしたね。件数だけ出てくるものですから、どうも何となく奥歯に物が挟まったような感じがするので、皆さん方のご意見がありますから、名前を出すのは不適当であるというのならばそれはそれで結構なんですけれども、例えば、もし、この宗教法人審議会の場で5件というのはこういうところであるというようなことを言うとすると、この審議会の議事録公表とか何かの関係でいろいろ問題があるのかどうか、その辺ちょっとお聞きしたいと思いまして。

○ 宗務課長
 私ども、提出を拒否している法人につきまして、改めてこちらのほうから公表するという形の取り扱いはしていなかったわけですけれども、今回、そういう意味では一歩進めて、もし情報公開開示請求があれば、その人には開示していくということを考えているのが、結果的にいうと、資料9の2の過料事件通知書については部分開示する、つまり宗教法人の名称が出ていくということになるわけです。ということは、先ほど申しましたとおり、そういう意味では第三者も含めてその情報が開示されるということでございますので、やはりこの審議会等においても名称を明らかにいくべきことではないかと考えております。

○ 今の過料の件に関して、大変愚問になるかもしれませんが、毎年提出をしない法人があるわけですね。要するにそれは過料を払えばそれで済んでいく、このままずっとそれが続いていく可能性もあるわけですね。例えば交通違反などは科料処分があるわけですが、これは点数によって免許停止になったりするわけです。だからその辺の対応というのは、非常に言い方は悪いかもしれませんが、1万円を払っていれば、会費みたいなもので、それを払っていればもう自分のところの情報は何も出さなくていいんだという、そういうことについて法人間で非常に、これも言葉が妥当かどうか知りませんが、不公平感が生じるのではないかという気がするんですが、その辺の見解はどうでございましょうか。

○ 宗務課長
 なかなか私どもも毎年、単に過料事件通知書を発送して裁判所に過料命令を発してもらうという結論さえ得ればということではなくて、その前の段階で、督促なり、あるいは直接宗教法人に電話をするなりということで、提出するよう求めているわけですが、結果としてここ3年間は文部科学大臣所轄でいえば、同じ5法人が提出していないということでございますし、先ほどの報告で申しましたように、都道府県所轄では、1,300件あまりが提出されていないと、同じように過料を科せられているということでございます。
 ただ、ご指摘のように、過料を何回重ねましても法人の法人格が停止されるとか、取り消されるとか、そういう制度ではございません。、これは法律の義務でございますので、提出いただくということで私どもも粘り強く言い続けるということで、今のところはご理解をいただくように努力はしていきたいと思っていますが、それをもって、提出しない方との不公平感を持つかというのは、また別のことかと思いますので、やはりこれは宗教法人法で定められた法律上の義務でございますので、それは提出いただくというのが当然でございます。その辺については今後ともご理解をいただいていきたいと思っております。

○ それではほかにご質問ございませんでしょうか。特にほかにご質問等なければ、本日の議事につきましては以上でございます。これ以外に何かご質問なり、ご意見なりがございましたならば承りたいと存じますが。

○ 朝日新聞の5月28日付の記事で、非営利法人基本法というのを行政改革推進事務局のほうで進めておられるという記事が載っておりますが、この基本法は宗教法人も含まれると記事では書いておりますけれども、これについて何かここでお話いただけるような情報がございましたら教えていただきたいと思います。

○ 宗務課長
 ご指摘のとおり5月下旬に各新聞で、公益法人制度の改革にかかわりまして、一部宗教法人制度に関する報道もなされたわけですが、これは政府の公益法人改革を進めています行政改革推進委員会の事務局のほうから出たものでございます。
 現在公益法人制度につきまして、民間有識者から意見を伺っている段階で、その中で設立のあり方とか、運営のあり方、税制のあり方、さまざまな意見が出されているようでございます。目標だということでございますけれども、6月中に中間的な論点の整理を行った上で広くパブリックコメントを募りたいという状況のふうに伺っておりますが、政府として方針を固めたということではないということでございます。
 私どもも確認したところ、具体的なヒアリングの中で宗教法人のことが議論されているとは伺っておりませんで、むしろ民法法人を前提にしながらヒアリングが行われたり、意見の交換が行われているという状況でございます。
 ただ、公益法人審査会の会議が終わった後に、主務官庁である内閣の副大臣レクというのがございまして、そのやりとりの中で基本法を考えるということになると、場合によってはほかに宗教法人法や学校法人法や医療法人法もあるので、そういった大もとの基本法みたいなことも論点としては出てくるかもしれないという一言があって、あの記事の報道になったということで、まだ具体的に宗教法人制度をどうするという議論に入っていない、そこまで入っていないと私どもは承知しております。

○ どうも。ほかにございませんか。それではご質問等ありませんようでしたならば、事務局から本日の議事以外の報告等ございませんでしょうか。

○ 宗務課長
 2点ほどご報告させていただきます。第139回の宗教法人審議会で、真言宗霊雲寺派からの審査請求につきまして、それを棄却する裁決を答申いただいたわけですけれども、それに対しまして、霊雲寺派のほうから規則変更の認証を取り消すという訴訟が提起されていたわけでございますが、その結果がこのたび出ましたので報告させていただきます。
 概要につきましてはご案内のとおりかと思いますが、真言宗霊雲寺派の被包括法人であった埼玉県知事所轄の円通寺、それと千葉県知事所轄の弘福院、霊光寺に対して所轄庁が行った被包括関係の廃止に係る規則変更認証申請処分につきまして、被包括関係の廃止が、信仰上、教義上の理由に基づいてなされていないにもかかわらず、このケースの場合は、認証処分を行ったわけです。
 それが違法であるということで取り消しを求めて、千葉地裁、さいたま地裁に訴訟が行われたわけです。昨年12月に千葉地裁、そして今年1月にさいたま地裁、いずれもこの審議会の裁決と同様に、霊雲寺派の主張は所轄庁の審査の及ばない事項を理由としているとして訴えを棄却しております。霊雲寺派は東京高裁に控訴しておりますけれども、今年、平成14年6月6日に、千葉県知事に関する訴訟については控訴棄却の判決がございました。埼玉県知事に関しては明日判決予定でございますが、争点が千葉県知事に関する訴訟と同一ですので、控訴棄却の可能性が高いということで、本審議会のご答申いただいた裁決と同じ考え方で、訴訟のほうも結論が出そうであるということでございます。
 それから2点目は、前回この審議会で商業登記法改正に伴って宗教法人の一部が改正されるということをお伝えしたわけですが、昨年11月にその法律が成立しまして、公布され、今年4月から施行されていますが、ご案内のとおり、極めて一部の準用規定の変更でございます。
 以上、2点ご報告させていただきます。

○ ただいまの報告について何かご質問なりございませんでしょうか。ございませんか。特にご発言がなければ、本日はこれにて閉会といたします。どうも長時間ありがとうございました。

午前12時14分閉会

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文化庁宗務課宗教法人室

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