国立大学法人及び大学共同利用機関法人の各年度終了時の評価における財務情報の活用について

平成18年3月9日
文部科学省

1.基本的考え方

 国立大学法人及び大学共同利用機関法人(以下、「国立大学法人等」という。)に関する財務情報は、当該法人の財務状況を客観的に表示するものであり、国立大学法人等の活動状況を多面的に理解する上で有用である。また、平成17年度以降は、経年の財務情報が蓄積されること等から、財務情報は、評価における参考情報として一層活用されることが期待される。

2.財務分析の方法

 国立大学法人等の財務分析にあたっては、他の国立大学法人等の財務情報が参考となると考えられる。国立大学法人については、その多様性にかんがみ、財務分析の便宜のため、平成16年度評価と同様、法人の財政規模、収支構造に着目した別紙の分類を行う。
 財務分析にあたっては、財務諸表そのものや財務指標を用いて、経年比較を含めて分析を行うことが考えられる。なお、各法人の損益の発生要因について、特に赤字法人についてその要因を把握する必要があるが、文部科学大臣による財務諸表の承認に際して、各法人の説明が求められることから、これらの資料を活用して把握・分析を行う。
 また、特に附属病院について、セグメント情報を把握・分析することが考えられる。

3.財務指標(例)

 財務指標による分析にあたっては、分析の観点が重要となる。国立大学法人等においては、財務の健全性・効率性及び活動性、更に附属病院を有する場合は収益性及び健全性が重要と考えられる。

流動比率=(イコール)流動資産÷(わる)流動負債

 一年以内に償還又は支払うべき債務(流動負債)に対して、一年以内に現金化が可能な流動資産がどの程度確保されているかを示す。

自己資本比率=(イコール)自己資本÷(わる)(負債+(たす)自己資本)

 総資産に対する自己資本の比率であり、当該国立大学法人等の健全性を判断する一指標となる。

人件費比率=(イコール)人件費÷(わる)業務費(又は、経常収益)

 業務費(又は、経常収益)に対する人件費の比率である。

一般管理費比率=(イコール)一般管理費÷(わる)業務費

 業務費に対する一般管理費の比率であり、当該国立大学法人等が管理運営を行う際の効率性及び管理運営等に要する財源が確保されているかを判断する一指標となる。

外部資金比率=(イコール)(受託研究収益+(たす)受託事業収益+(たす)寄付金収益)÷(わる)経常収益

 経常収益に対する外部から獲得した資金の比率であり、当該国立大学法人等の外部資金等による活動の状況及び収益性を判断する一指標となる。

業務費対研究経費比率=(イコール)研究経費÷(わる)業務費

 業務費に対する研究経費の比率であり、当該国立大学法人等における研究の比重を判断する一指標となる。

業務費対共同利用・共同研究経費比率=(イコール)共同利用・共同研究経費÷(わる)業務費

 業務費に対する共同利用・共同研究経費の比率であり、当該大学共同利用機関法人における共同利用・共同研究の比重を判断する一指標となる。

業務費対教育経費比率=(イコール)教育経費÷(わる)業務費

 業務費に対する教育経費の比率であり、当該国立大学法人等における教育の比重を判断する一指標となる。

学生当教育経費=(イコール)教育経費÷(わる)学生実員

 学生一人当りの教育経費。当該国立大学法人の教育活動の活発さを判断する一指標となる。

教員当研究経費=(イコール)研究経費÷(わる)教員実員

 教員一人当りの研究経費。当該国立大学法人等の研究活動の活発さを判断する一指標となる。

経常利益比率=(イコール)経常利益÷(わる)経常収益

 経常収益に対する経常利益の比率であり、当該国立大学法人等の事業の収益性を判断する一指標となる。

診療経費比率=(イコール)診療経費÷(わる)附属病院収益

 附属病院収益に対する診療経費の比率であり、当該国立大学附属病院の収益性を判断する一指標となる。

附属病院収入対長期借入金返済比率=(イコール)(長期借入金返済+(たす)財務経営センター納付金)÷(わる)附属病院収益

 附属病院収益に対する長期借入金返済の比率であり、当該国立大学附属病院の健全性を判断する一指標となる。

4.留意事項

 国立大学法人等の評価にあたって財務情報を活用するには、法人の様々な活動実態と併せて総合的分析を行うことが必要であり、財務情報のみを用いた一面的な評価とならないよう留意する必要がある。したがって、上記の財務指標についても、国立大学法人等の活動状況を多面的に把握するための参考情報の一つであり、評価の内容に直ちに結びつくものではないことに留意する必要がある。
 また、国立大学法人の分類については、財務分析にあたっての便宜的なものであり、各法人の性格・役割を規定するものではないことに留意する必要がある。
 国立大学法人等は、独立採算制の法人ではなく、行うべき業務を予定通り行い、かつ、相応の経費削減や収益の増となるよう運営することにより収支均衡となるよう予算措置を受けていることから、民間企業における財務指標等による財務分析をそのまま適用することはできないこと、また、国から承継した資産、負債による損益要因等、法人の裁量によらないものもあること等に留意する必要がある。

(別紙)国立大学法人の財務分析上の分類

区分 大学
Aグループ
<13大学>
北海道大学、東北大学、筑波大学、千葉大学、東京大学、新潟大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学、神戸大学、岡山大学、広島大学、九州大学
Bグループ
<13大学>
室蘭工業大学、帯広畜産大学、北見工業大学、東京農工大学、東京工業大学、東京海洋大学、電気通信大学、長岡技術科学大学、名古屋工業大学、豊橋技術科学大学、京都工芸繊維大学、九州工業大学、鹿屋体育大学
Cグループ
<8大学>
小樽商科大学、福島大学、筑波技術大学、東京外国語大学、東京芸術大学、一橋大学、滋賀大学、大阪外国語大学、
Dグループ
<4大学>
旭川医科大学、東京医科歯科大学、浜松医科大学、滋賀医科大学
Eグループ
<11大学>
北海道教育大学、宮城教育大学、東京学芸大学、上越教育大学、愛知教育大学、京都教育大学、大阪教育大学、兵庫教育大学、奈良教育大学、鳴門教育大学、福岡教育大学
Fグループ
<4大学>
北陸先端科学技術大学院大学、奈良先端科学技術大学院大学、総合研究大学院大学、政策研究大学院大学
Gグループ
<25大学>
弘前大学、秋田大学、山形大学、群馬大学、富山大学、金沢大学、福井大学、山梨大学、信州大学、岐阜大学、三重大学、鳥取大学、島根大学、山口大学、徳島大学、香川大学、愛媛大学、高知大学、佐賀大学、長崎大学、熊本大学、大分大学、宮崎大学、鹿児島大学、琉球大学
Hグループ
<9大学>
岩手大学、茨城大学、宇都宮大学、埼玉大学、お茶の水女子大学、横浜国立大学、静岡大学、奈良女子大学、和歌山大学
  • Aグループ:学生収容定員1万人以上、学部等数概ね10学部以上の国立大学法人(学群、学類制などの場合は、学生収容定員のみ)
  • Bグループ:医科系学部を有さず、学生収容定員に占める理工系学生数が文科系学生数の概ね2倍を上回る国立大学法人
  • Cグループ:医科系学部を有さず、学生収容定員に占める文科系学生数が理工系学生数の概ね2倍を上回る国立大学法人
  • Dグループ:医科系学部のみで構成される国立大学法人
  • Eグループ:教育系学部のみで構成される国立大学法人
  • Fグループ:大学院のみで構成される国立大学法人
  • Gグループ:医科系学部その他の学部で構成され、A~Fのいずれにも属さない国立大学法人
  • Hグループ:医科系学部を有さず、A~Fのいずれにも属さない国立大学法人

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