【評価委員会所見】国立大学法人等の第3期中期目標期間の開始に向けて

平成27年11月6日
国立大学法人評価委員会

1  平成28年度から国立大学法人及び大学共同利用機関法人の第3期中期目標期間が始まります。平成16年の法人化以降、国立大学法人等は、法人制度のメリットを生かしながら、国立大学改革を着実に実行し、基盤的経費である運営費交付金の大幅な削減という厳しい環境に置かれながらも、質の高い教育研究の実践を通じ、人材育成、学術研究、その成果還元を通じた社会貢献において様々な成果を上げてきました。

2  本日の国立大学法人評価委員会では、来年度から開始する第3期中期目標期間における各法人の中期目標・中期計画の素案に対する意見について審議を行いました。各法人の素案では、一部において強みや特色が明確でない、あるいは事後的な検証が困難な記述も見受けられましたが、多くの法人の素案においては、学術研究を通じた社会的価値の創造、未知の次代を牽引する有意な人材の育成をはじめ、大学ならではの教育研究の特性を根拠とした我が国社会の発展に対する貢献について、第1期・第2期に比べて飛躍的に取組を向上させていこうとする姿が強くうかがえました。
  こうした国立大学の改革に対する意欲を、第3期中期目標期間において確実に形あるものとしていくことが極めて重要です。各法人には来年度以降の取組において、自ら掲げる目標・計画の実現に向けてたゆまぬ努力を心から期待したいと思います。

3  しかしながら、先日の財政制度等審議会財政制度分科会における議論においては、過去12年間を通じて約12%、約1,470億円もの削減をしてきた国立大学法人運営費交付金に関し、これからの向こう15年間においてもさらに毎年度1%ずつ削減し続けていくことが提案されています。 
  国の財政状況が大変厳しい状況にある中、それぞれの立場から財政健全化に向けて尽力することが求められており、また、国立大学法人等が自己収入の確保に向けた努力を図っていくことは重要なことと考えますが、授業料収入・共同研究収入・資産運用収入といった自己収入の拡大により、15年間毎年1%削減に見合う規模の収入を得ることは非現実的なものと言わざるを得ません。

4  我が国の未来を支えるのは人材であり、成長のエンジンとなるイノベーションの源泉となるのは学術研究の振興ということは自明でありますが、それを支える基盤的経費である運営費交付金を長期にわたり機械的に削減すれば、国立大学法人等の質の高い教育研究を通じた社会貢献が立ち行かなくなることは必至です。そのような状況を招こうとする財政制度等審議会の提案は、これからの知識基盤社会の中で我が国が新しい価値の創造を通じて中長期的に発展・成長していかなければならないという観点から断じて看過することができません。また、特に自己収入の大幅な増加を求めることは、授業料の大幅な増額につながりかねず、現下の経済状況や家計状況において国民の理解を得られるものとも考えられません。国立大学法人等が国民や社会の期待に応えていくためには、運営費交付金の確保・充実が必要不可欠であることをここで改めて強く訴えたいと思います。

5  他方、各法人や教職員各位におかれては、極めて厳しい財政状況の下で国立大学の教育研究が国民によって支えられているという事実をさらに強く認識した上で、来年度から開始する第3期中期目標期間以降、国立大学法人等に求められている教育、研究、社会貢献に一層全力を以て取り組んでいただくことを切に願います。

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