国立大学法人・大学共同利用機関法人の改革推進状況(平成21年度)

平成22年11月5日
国立大学法人評価委員会

※ ここにあげる取組については、国立大学法人評価委員会が把握した各国立大学法人等(90法人)の特色ある例をまとめたものであり、全法人が一律に行わなければならないと考えているものではない。
 各法人においては、特色を活かし、様々な取組を行っているところであり、過去に取り上げた取組については、具体的取組の一例を幅広く紹介する趣旨から基本的には取り上げないこととしている。

1.管理運営組織の改革と柔軟な資源配分の実施

管理運営組織の改革

 第1期中期目標期間の最終年度に当たる平成21年度においては、これまでの管理運営組織の在り方を検証し、改革が進められてきており、組織のスリム化・効率化及び他大学等との共同実施等の取組を積極的に進めている法人も見受けられる。

1.管理運営組織のスリム化・効率化

(具体的取組例)
○ 事務職員の自主的・積極的な業務改善案を管理運営や経営に反映させ、大学の活性化及び業務の効率化を図るため、ミドルアップダウン型で意思決定を行う新たな試みとして、事務局長の下に5つのプロジェクト企画室を設置して効率化に取り組んでいる。【福島大学】

○ 学長室の下に設置された組織を、将来構想企画室、地域貢献室、男女共同参画室の3室体制に再整備し、効率化を図るとともに、若手教員により構成する「学長補佐会」で、大学の中長期ビジョンに関する大胆な意見交換や海外大学の実情調査を行っている。【埼玉大学】

○ 教育・研究を推進するための総合的な情報戦略の立案・実施のため、教務情報部門や医療情報部門を含む情報関連組織を一元化して総合情報戦略機構を新設するとともに、機構を総括する部長として、民間経験を有する専任の特任教授を登用している。【山梨大学】

○ 複雑化するハラスメントへの機能的な対応を実施するため、従来の組織を統合し、「ハラスメント相談センター」に一元化している。【名古屋大学】

○ 国文学研究資料館、国立極地研究所及び統計数理研究所では、立川市への移転に伴い、共通する役務提供等について、法人の枠を超えた一括契約を締結し、事務の効率化及び経費の節減を図っている。【人間文化研究機構、情報・システム研究機構】

2.他大学等との共同実施等の取組

(具体的取組例)
○ 近隣の国立大学等との間において、トイレットペーパー等の物品の共同調達を実施し、一括購入による経費削減及び事務の効率化・合理化に向けて取り組んでいる。【東北大学、宮城教育大学、山形大学、福島大学】

○ 現在のIT技術革新が求める人材育成に応じるため、4大学(茨城大学、宇都宮大学、群馬大学、埼玉大学)が連携して、情報工学、社会経済学及び医学から編成される大学院教育プログラムの発展型として「4大学院連携先進創生情報学教育研究プログラム」における初の修了生を出すとともに、IT企業の積極的な協力もあり、長期インターンシップの教育効果や、現代のIT産業が求める多面的な視野を有する創造性豊かな人材育成に成果を上げている。【茨城大学】

○ 清華大学美術学院講堂(中国)において、芸術教育、日中両国の大学間交流や文化交流の発展の推進を目的に「日中芸術教育シンポジウム」を開催するとともに、開催に際しては、国公立5芸術大学(東京芸術大学、金沢美術工芸大学、愛知県立芸術大学、京都市立芸術大学、沖縄県立芸術大学)が協力して企画・実施等を行っている。【東京芸術大学】

○ 名古屋工業大学及び豊橋技術科学大学との連携による「愛知建築地震災害軽減システム研究協議会」を通じて、地震防災に関する共同研究プロジェクトを実施し、第3回日本耐震グランプリ最優秀賞を受賞している。【名古屋大学】 

○ 兵庫県内の大学を中心として産学連携活動を推進する「ひょうご神戸産学学官アライアンス」に加盟し、また、教育関連企業と新学習指導要領に対応した教育方法に関する共同研究を行うなど、教育大学としての特色ある産学連携を進めている。【兵庫教育大学】

大学・機構全体としての戦略に基づく法人内資源配分の実現 

 各法人においては、学長・機構長のリーダーシップに基づき、それぞれの法人の特色に応じた資源配分が行われているとともに、その資源配分が適切かつ効果的に行われたかどうかを検証し、その結果を踏まえて見直しを行う仕組みの整備が進められている。

(具体的取組例)
○ 運営費交付金の一定割合並びに間接経費の50%及び寄附金の5%を全学資金(重点配分経費)として留保し、奨学金等の配分や大学の重点事業等に配分している。また、博士号学位授与率等を評価基準とする傾斜配分を実施し、研究科等における教育研究の活性度や改善のための取組の進捗状況に関する評価を予算配分に反映させている。【北海道大学】

○ 環境やエネルギー、水、食料問題等人類が直面する諸課題を総合的に解決するための研究を精力的に進めており、その一環として、幅広い研究分野による特色ある研究プロジェクトを育成するため、「推進研究プロジェクト」制度を導入し29件を認定している。【茨城大学】

○ 副学長の裁量権の強化を図り、教育研究等を戦略的に推進するための「副学長裁量経費」を新設し、各副学長に1,000万円、計3,000万円の予算配分を行い、教育研究の戦略的推進や教育研究改善事業の実施等、迅速な対応が可能となっている。【京都工芸繊維大学】

○ 「大阪の教育課題に応えて-発信する大教大-」とする経営戦略に基づき、地域貢献に要する経費や広報活動に要する経費を新たに設け、従来の若手研究、新任教員への研究助成や安全管理に取り組む事業等を含め1億7,100万円を措置している。【大阪教育大学】

2.法人としての経営の活性化

業務運営の効率化及び合理化

 各法人においては、業務改善等を通じて、学内構成員の意識高揚やスキルアップを推進し、業務運営の効率化及び合理化に努めている。

(具体的取組例)
○ 大学の活性化と学内構成員の意識高揚、スキルアップ及び職員間の情報共有の推進を目的に業務改善ポスター発表会を実施し、1.業務改善の必要性・目的の明確化、2.改善に向けた取組のアイデア、3.効果、課題の把握、4.組織としての取組・協調性、5.デザインの5点で点数化し学外委員を含む委員が審査を行い、学内相互理解と業務改善、効率化への足掛かりとしている。【滋賀医科大学】

○ 大学への貢献意識と豊富な知識・経験を有する事務系再雇用職員を組織化した「KITビューロー」を立ち上げ、入試広報業務等に活用している。【京都工芸繊維大学】

○ 現状の業務に対する課題及び改善案について、広く教職員から意見募集を行うとともに、業務改善の対応策として、自動発行機による証明書の対象拡大、公用車運用業務の廃止等に取り組んでいる。【神戸大学】

人事評価システムの構築

 教職員の個人業績評価システムについては、多くの法人で導入に向けた検討、試行が本格化するとともに、教育・研究・社会貢献・管理運営等、大学の特色に基づいた評価を本格実施し、その結果を処遇等へ反映する法人も増えてきている。

(具体的取組例)
○ 大学運営等に対し、意欲ある者の中から早期に管理職員等に登用するための制度を設けて選考試験を実施し、合格者を登用候補者名簿に登載し、平成22年度から名簿登載者から課長級、課長補佐級、係長級に昇任させることとしている。【島根大学】

○ 教育職員評価を実施し、その評価結果をウェブサイト等で公開し、昇給等への反映や部局長による指導を行うことで個々の教育職員のレベルアップを図るとともに、組織としての教育研究活動の向上に資するための分析を行い、その結果を教育研究の改善に活用している。【九州工業大学】

財務内容の改善・充実

 財務諸表・財務指標の経年比較や同規模大学との比較等、財務分析結果を大学運営の改善に資するとともに、各法人においては、その特色に則した様々な方法により、外部資金の獲得等による自己収入の増加や、適切な予算管理による経費の節減に努力しており、それぞれ一定の成果を上げ、教育研究に活用している。

1.財務分析結果の活用

(具体的取組例)
○ 四半期ごとの予算執行状況調査を実施し、結果の分析と検証により、必要に応じてヒアリングや是正勧告等を行い、適正な予算執行に努めるとともに、事業進捗・予算執行状況に応じて「予算の吸い上げ・再配分」を適宜行い、大学全体の視点で効果的な予算執行を行っている。【小樽商科大学】

○ 役員会直轄の予算委員会において、各予算部局単位で月次単位の予算計画・執行計画を正確に把握・精査を行い、これにより補正予算の策定、四半期単位においては予算流用を行い、計画的・効果的に決算見込額を把握し、予算管理に適切に反映している。【総合研究大学院大学】

○ 教育研究に係る基盤的経費や事業費等について、計画書及び報告書の提出を義務づけており、特に事業費については、例年1回のモニタリングを2回実施し、計画の見直し等の助言を行った結果、不用見込額が生じた事業は、年度途中に回収し、他の緊急性のある事業費に充当している【京都工芸繊維大学】

2.外部資金の獲得

(具体的取組例)
○ 新たに「競争的資金等公募月別カレンダー」を作成し、学内ウェブサイトに掲載することで、情報の蓄積、計画性・利便性等の充実を図っている。【北見工業大学】

○ 景気の低迷により、民間企業からの外部資金獲得が難しい状況である中、受託研究・共同研究の推進支援や産学官連携活動の強化等を図るため、産学官連携コーディネーターを配置するとともに、県内各地で企業経営者・金融機関・商工会・市議会等から地域のニーズを聞き取る地域ニーズ調査を実施するなど、外部資金確保につなげるための取組を行っている。【福島大学】

○ 東京学芸大学60周年記念募金活動の一環として、新たに学生支援等のため「東京学芸大学基金」を設立し、教職員、地域及び企業等の団体に対して、広く財政支援を依頼し、寄附金の受入れを開始している。【東京学芸大学】

○ 教員の研究活動、研究成果、相談に応じられるテーマを紹介した「研究者総覧」を大学ウェブサイトで公開しているほか、「産学連携パートナー・発掘ガイド2009-2010」を発行して、大学全体として研究活動とその成果情報等を積極的に提供し外部資金の獲得や申請を促すことに努めている。【横浜国立大学】

○ 外部資金獲得額に応じたポイント制により非常勤講師を採用することができる制度を拡大し、ポイントを利用して研究支援者等を雇用できる制度等を整備している。【和歌山大学】

○ サッカー部ユニフォームに企業名を掲載することにより、スポンサー料として寄附金を得る仕組みを導入している。【高知大学】

3.コスト削減

(具体的取組例)
○ 建物各室の空調機の運転を監視・制御する「空調機集中管理システム」を導入し、電気使用量削減を図ることにより、省エネルギー推進に寄与している。【東京工業大学】

○ キャンパス間の移動の利便性向上、環境負荷低減を図るため、電気自動車によるカーシェアリング実証実験を開始している。また、テレビ会議システムによる会議、打ち合わせ等の利用回数が大幅に増加し(対前年度比 240%増加)、教職員の両キャンパス間の移動時間の縮減に貢献している。【東京海洋大学】

○ 暖房設備の個別方式への更新や太陽光発電設備設置等の取組を行い、光熱水料は5億5,831万円(対前年度比5,782万円減、9.4%減)となっている。【山梨大学】

○ 光熱水料の削減に取り組んだ結果、電気料金は約7,400万円、ガス料金は約2億6,500万円、水道料金は約2,300万円それぞれ削減している。また、役務契約の複数年契約への移行や、印刷物・定期刊行物の購入・配布部数の見直し、電子ジャーナルの外貨建契約への移行等により約4,800万円の削減を実現している。【京都大学】

健全な財務運営のための定員・人件費管理の推進 

 各法人が中期計画において、総人件費改革を踏まえた人件費削減目標を定めており、この達成に向け、人員配置の見直し等、それぞれの法人の特色に応じた人件費削減に係る取組が着実に行われている。

(具体的取組例)
○ 全学の教員定数のうち90名分を学長裁量で使えるポスト(流動定員)としており、平成21年度は11名の流動定員を新たに配置し、教育研究の高度化・活性化、基盤運営部門の強化を図っている。【新潟大学】

○ 学長を本部長とする重点研究高度化推進本部を設置し、研究支援者等の採用・一元管理、必要部署への研究支援者等派遣を開始している。【福井大学】

施設・設備マネジメントの推進

 各法人において、教育研究の基盤となり、その活動を活性化させるための施設設備について、全学的視点に立った既存施設の有効活用、多様な整備手法による施設設備の充実等の施設マネジメント等の取組が進められている。

(具体的取組例)
○ 大学の自助努力により、産学連携拠点としてコラボ弘大や青森市に青森キャンパスとして北日本新エネルギー研究センターを整備するとともに、白神山地に関する総合的研究等の拠点として白神自然観察園を設置して教育を展開しており、計画的な施設整備に取り組んでいる。【弘前大学】

○ スペースの有効活用に関する規則を策定し、既存施設の使用実態調査・分析を行い、大学の実態に沿った施設の有効活用に関するルールとして、教員及び学部学生・院生の標準面積を定め、スペースの利用方針等について定めている。【岡山大学】

○ 研究者居室の有効利用を推進するため、居室の面積配分や複数キャンパスでの居室使用について指針化した居室等の使用に関する基本方針を策定し、利用居室等の見直しを実施している。また、居室スペース利用状況調査を実施し、新規プロジェクトの開始等に向けて配分可能な居室面積を把握するなど、居室スペースの有効利用を推進している。【高エネルギー加速器研究機構】

省エネルギー対策・地球温暖化対策の推進

 環境保全対策については、全法人において、省エネルギー対策や地球温暖化対策に関する取組を行っており、高効率化機器への更新を目的としたファンドを設ける法人があるなど、全学的な取組や対外的な取組が進展している。

(具体的取組例)
○ これまで大学の環境マネジメントシステムの構築と運用を学生主体で行ってきた千葉大学環境ISO学生委員会がNPO法人格を取得し、学生が理事長以下すべての役員を務めるユニークな特定非営利活動法人として、今後の活動が期待される。【千葉大学】

○ 大規模な建物改修(生体材料工学研究所、2号館等)に併せて、断熱効率の高い二重ガラス窓や内側断熱の採用、インバータ照明器具への交換を促進し、太陽光発電設備を設置するとともに、井戸水活用プロジェクトについて災害時におけるライフラインの確保を含め検討している。【東京医科歯科大学】

○ 省エネルギー対策の観点から、彦根・あかねの両団地においてボイラー暖房を廃止し、GHP暖房(ガスヒートポンプ)に変更するとともに、彦根団地研究室棟屋上の太陽光発電パネルの設置や附属図書館屋上緑化により、温室効果ガス排出削減とともに空調等の運転費削減に取り組んでいる。【滋賀大学】

○ 省エネルギーと環境負荷低減のため、マテリアル総合研究棟新営工事において、高効率機器(空調機・照明器具・高圧変圧器)と複層ガラスの採用や建物断熱の強化及び太陽光発電により、省エネルギー建物とするなど、省エネルギー対策を積極的に実施している。【九州工業大学】

○ 機構全体での一体的な取組として、平成20年度に設立された「省エネ推進経費(省エネファンド)」を運用し、省エネルギーを一義的な目的としたルームエアコンや照明器具等の高効率化機器への更新等を行い、一般需要に係るCO2排出量について、平成20年度比約9%削減という大きな効果が得られている。【高エネルギー加速器研究機構】

学術情報基盤の整備

 コンピュータ、ネットワーク、学術図書資料等の学術情報基盤の整備について、情報セキュリティ体制の構築等による全学的な整備に関する取組や、機関リポジトリ等の充実による、学術情報発信強化に関する取組が進められている。

(具体的取組例)
○ 複数の大学を結び、双方向・リアルタイムの遠隔講義を行うための中心校として、全国18 国立大学法人23 拠点に「多地点制御遠隔講義システム」を導入している。【東京農工大学】

○ 金沢大学学術情報リポジトリ(KURA)と学術研究用データリポジトリ(研究成果データベース)間で、一括検索の仕組みや共通インターフェイスなど、連携や運用法について検討し、検討結果に基づき学術研究用データリポジトリを改良している。【金沢大学】

○ 研究・教育情報システムの更新に当たり、クラウドコンピューティングの活用によるサーバのアウトソーシングの推進、シンクライアントの整備等により、情報サービスの向上及び情報管理の一元化を最小限の投資で実現している。【静岡大学】

○ 附属図書館内に「ラーニング・コモンズ」を完成させ、多様な学生のニーズに対応できる学習教育支援環境を整備し、ITサポート、学習支援など新たな人的支援サービスを試行している。【名古屋大学】

○ 事務局内のパソコン端末をすべてシンクライアント専用機に置き換え、セキュリティ面でのさらなる強化を行っている。また、円滑な情報共有の促進を目的として、 シンクライアント上で利用可能な共有フォルダの運用要領を制定している。【名古屋工業大学】

○ 附属図書館では、平成20年度に試行的に24時間利用可能としていた自習室「学習室24」を本格運用しているほか、部局においても、24時まで開館するなど、利便性を高める施策を講じている。【京都大学】

危機管理への対応

 全法人において、危機管理マニュアル等の整備、適切な運用により、全学的・全機構的な危機管理体制が整備・運用されている。

(具体的取組例)
○ 産学連携により生じる利益相反について大学として主体的にマネジメントするため、学外有識者1名を含む8名の委員で構成する利益相反審査委員会を設置し、利益相反ミナーを開催しているほか、「利益相反の取り扱い」を作成し、全教職員に配布し、周知を図っている。【帯広畜産大学】

○ 安全保障輸出管理の確実な実施を図り、国際的な平和及び安全を維持し、教育研究機関として国際的な安全保障に貢献することを目的とした安全保障輸出管理規程を制定している。【秋田大学】

○ 医療安全推進室及びリスクマネージャー等を中心に医療事故防止体制を強化し、安全管理を継続的に推進している。また、災害対策マニュアルを改訂し、マニュアルに基づく総合防災訓練を実施している。【東北大学】

○ 新型インフルエンザの発生を受け、学長をトップとする感染症対策会議を累次開催し、対策マニュアルを作成し、附属学校を含む全構成員に周知徹底するとともに、附属学校園を含む学内感染状況を、副学長(戦略担当・副総務機構長)の下に一元的に集約し、学級閉鎖、学年・学校閉鎖臨時休校措置や学生課外活動自粛措置を基準に基づき迅速に講じて、感染拡大を最小限にとどめている。【お茶の水女子大学】

○ 夜間パトロールを実施するとともに、防犯・防災マップを作成し、ウェブサイトに掲載している。また、安全管理・危機管理調査として、監視カメラの設置状況、化学物質管理状況の監査及び引継状況調査を実施している。【岡山大学】

自己点検・評価及び第三者評価

 自己点検・評価、認証評価、国立大学法人評価及びその他の外部評価等の結果を活用し、教育研究等の充実が図られており、自己点検・評価の実施体制等の整備が進められている。また、大学独自のデータベースの構築等を通じて、評価作業の効率化に向けた取組も進められている。

(具体的取組例)
○ 国際的視点からの外部評価として、欧州大学協会機関別評価プログラムを受審し、この評価による助言を全学で共有するとともに、自己評価報告書の作成過程での分析等を通じ大学の問題点を明確化するなど、積極的な取組を実施している。【東北大学】

○ 経営協議会学外委員による外部評価を取り入れた組織評価を引き続き実施し、評価結果に基づきインセンティブ経費を配分し、教育研究等の質の向上及び部局運営の活性化を推進している。また、評価の際に取りまとめた各部局の特色的な取組及び評価の実施状況をウェブサイトで公表している。【山形大学】

○ 学生の自主性を尊重した授業評価(教養教育科目等、延べ1,644科目)を実施し、評価結果を担当教員にフィードバックするとともに、授業改善に反映させている。また、授業評価結果等に基づき、全学的なベストティーチャー表彰を実施し、表彰者に教育研究資金の配分を行っている。【群馬大学】

○ 大学の基盤情報システムであるTRIOS(研究者情報システム)、TWINS(学務情報システム)、FAIR(財務情報システム)により集積したデータを抽出し、教員ごとに集計・出力する「教員業績集計システム」を構築・運用することにより、大学教員業績評価業務の効率化・簡素化に取り組んでいる。【筑波大学】

3.社会に開かれた客観的な法人運営

外部有識者の積極的活用

 経営協議会の学外委員をはじめとする外部有識者を積極的に活用し、法人運営の一層の活性化を図る取組が進展している。

(具体的取組例)
○ 元大学長・弁護士等6人の学外委員による「北海道教育大学における倫理・人権教育の在り方等に関する有識者会議」を設置し、提言書「北海道教育大学における不祥事防止策について-快適なキャンパスライフの中にも凜とした雰囲気づくりを-」を受け、倫理・人権教育の在り方等に関する施策を講じることを決定している。【北海道教育大学】

○ より地域に密着した広報を展開するため、広報に特化した市民モニター制度を導入し、公募の結果10名の市民モニターを選定するとともに、公募に当たって応募者から収集した意見を、今後の広報活動の参考としている。【小樽商科大学】

○ 法人支援アドバイザーとの懇談会を開催し、その際の提案「図書館を有効活用して学生に勉強させる習慣を身に付けさせる」を基に、2010年の国民読書年にも合わせ「ドクショノススメ・プロジェクト」を企画し、本を読む習慣を身に付けさせる取組を行うこととしている。【宮城教育大学】

○ 経営協議会学外委員の意見を大学運営に反映できるよう、経営協議会ごとにテーマを定め意見交換する場を設け、学外委員の意見により地元企業と連携して製品化したLED照明をキャンパスの外灯に使用し、環境及び安全に配慮したキャンパスづくりに活用している。【佐賀大学】

○ 大学と関係の深いステークホルダー(大学院生、保護者、高等学校教諭、自治体関係者、企業関係者)で構成される「大分大学ステークホルダー・ミーティング」を開催し、寄せられた意見について報告書をまとめるとともに、平成22年度計画アクションプランの策定等に活用している。【大分大学】

○ 分子科学研究所では、外国人運営顧問2名による業務運営全般に関するヒアリングを行い、その結果を「分子研リポート2009」に取りまとめている。また、研究顧問(国内)2名と所長による教員の研究計画の進捗状況等に関するヒアリングも行い、研究計画の見直し等の改善を促している。【自然科学研究機構】

監査機能の充実

 監事や会計監査人による監査結果を適切に法人運営に反映させる取組が行われている。

(具体的取組例)
○ 構成員に対する研究費不正使用防止のさらなる徹底及び意識の向上を図るため、「会計ルールリーフレット”ちょっと待って”」及び「良くある質問(FAQ)」を作成し、配布及びウェブサイト掲載により周知徹底を図り、研究費等の不正使用の未然防止に努めている。【岩手大学】

○ 内部監査において、研究費不正使用防止にポイントをおいた監査のほか、内部統制の中で重要な「情報管理」の実施状況について監査を行っている。【富山大学】

○ 「内部監査マニュアル」や「被監査部局毎の監査重点項目」を作成しているほか、全学教職員を対象とした「公的研究費使用等に関する理解度調査」を実施し、集計結果等を内部監査に活用するなど、監査がより有効に機能するよう改善に努めている。【和歌山大学】

情報公開の促進

 社会に対する説明責任の観点から、各法人とも、教育研究等の状況について、利用者の立場に立った分かりやすい内容・形で、引き続き積極的な情報提供に努めている。

(具体的取組例)
○ ウェブサイトのデザイン・構成等を全面的にリニューアルし、また、更新作業を容易とするシステム(CMS)を新たに導入し、情報提供の迅速化やコンテンツの一層の充実を図った結果、民間調査機関による大学ウェブサイト調査において、「ウェブサイトの使いやすさ」部門で2位、「総合順位」で5位等にランキングされている。【東京農工大学】

○ 高校生向けの大学案内について、内容の抜本的見直しを図るため、広告代理店等の参加によるコンペ方式の企画入札を行っている。【愛知教育大学】

○ 広く学生の視点から大学情報を発信し、また、より地域住民、高校生・保護者等が親しみやすさを持てる広報活動を行うため、学生広報員「なっきょん's CLUB」を結成し、広報誌の企画・寄稿を始め、表紙・モデルとして起用することで、広報の充実に貢献している。【奈良教育大学】

○ 大学の重要なステークホルダーである学生に対して、財務情報の提供・説明の場として、学内のカフェにおいて、対話形式で説明会を実施するファイナンスカフェを開催している。【広島大学】

○ 「全国大学サイト・ユーザビリティ調査2009/2010」において、3年連続で全国国公私立大学中1位となっている。【徳島大学】

○ 学生を含めた全学的な組織「広報サポートワーキング」の報告書の提言等を受けて、ウェブサイトのトップページに「学部・大学院受験生応援サイト」を設置し、学生の生の声を発信し、大学情報をより身近に感じ取れるよう工夫している。【鳴門教育大学】

4.教育・研究の活性化に向けた取組

 これまでに引き続き、各法人において、法人化のメリットを活かし、教育方法等の改善・充実や研究活動の活性化に向けた取組等が行われているほか、全国共同利用を通じた学術研究の推進や附属病院、附属学校における機能充実のための様々な取組が行われている。

教育方法等の改善

1.指導方法等の改善・充実に向けた取組

(具体的取組例)
○ 教職大学院ストレートマスターの俯瞰実習を附属旭川中学校、附属釧路小中学校、附属札幌小中学校で前後期2度実施し、個々の実習課題に即応した個別の実習内容や共通実習内容等を明確にし、その深化を図っている。【北海道教育大学】

○ 大学院専門職学位課程(教職大学院)では、学校支援プロジェクト連携協力校会議を開催し、同プロジェクトの円滑な運営に努めるとともに、その成果等を検証するため、新潟県教育委員会並びに上越市及び妙高市の小・中学校関係者等を対象とした発表・意見交換を行っている。【上越教育大学】

○ 大学院専門職学位課程(教職大学院)においては、大学院修了時の目指す資質能力育成に向けた授業編成を大学院生が自覚的に学べるよう、資質能力のスタンダードと各授業、実践の関連を「アセスメントガイドブック」に集約し、改訂・運用を行っている。また、学校実践現場での応用を目的として、教育実習における到達度を明確にした独自の評価基準を新たに策定し、大学院生の実践面での資質育成の充実に取り組んでいる。【奈良教育大学】

○ 「導入ゼミナール」「前期ゼミナール」を充実させるとともに「学生生活の技法」といった科目を新規開講し、学士課程1・2年次における双方向教育化・少人数教育化を促進するとともに、大学院課程においては研究発信能力を高めるための科目(発信英語力、プレゼンテーション技法、ウェブコンテンツ管理入門等)を開講し、研究調査能力を開発するための工夫を行っている。【一橋大学】

○ 専門化する「科学知」の総合化を教育の特色の一つとしており、先導科学研究科では生命系の学生には科学・社会系の、科学・社会系の学生には生命系の論文を課す副論文制度、様々な研究分野に触れさせることを目的とした研究室ローテーション制度、国内外の教育研究機関への学生派遣等のプログラムを通じて、高度の専門性、総合性や国際的通用性の涵養のための取組を実施している。【総合研究大学院大学】

○ 教員が自分の都合の良いときに気兼ねなく授業を参観できる「アポ無し公開授業」を実施している。【長岡技術科学大学】

○ 教養教育において、「日本語表現法」を必修化しコミュニケーション能力の向上に努めるとともに、専門教育において、学生の意見を取り入れ、少人数能動学習を含むカリキュラム全般の改正を行い、授業形態や学習指導法の改善を行っている。【滋賀医科大学】

○ 学士課程教育において、専門性を基盤としながら学生の関心分野の拡張、国際性の修得等、学生の自主的・自律的な修学を図り、新たな視点に立つスペシャリストを養成することを目的とした独自の教育プログラム「チャレンジ21」を実施している。【九州大学】

2.個性・特色の明確化を図るための組織的な取組

(具体的取組例)
○ 遠隔医療センターにおいて、遠隔医療システムを用いて道内を中心に国内外51の医療機関とネットワークを形成し、地域間の医療格差の是正、医療過疎の解消に努めるとともに、住民の医療情報や健康情報を住民自身が管理できるウェブサイトシステム「ウェルネットリンク」を開発し、サービス運用を開始している。【旭川医科大学】

○ 多様な文化をもつ外国籍住民と地域住民との共生に資する専門的職業人の養成を行うため、地域協働ネットワークを活用した全学的・総合的教育カリキュラムを43科目開講し、うち28科目では現場での見学・体験等を含む内容・方法を取り入れている。【群馬大学】

○ 多言語・多文化教育研究センターにおいて、学部で開講するAdd-on Program「多言語・多文化社会」、共同研究の成果を社会に向けて発信する全国フォーラムの開催、日本に在住する外国人児童用の教材開発等、教育・研究・社会貢献の3分野での多言語・多文化社会の抱える問題解決に寄与している。【東京外国語大学】

○ 安全専門職として要求される安全技術及び安全規格・法規に関する体系的な知識と実践能力並びにこれらの総合的マネジメント能力を明確に保証し、安全安心社会の構築に寄与することを目的として、国内初のシステム安全エンジニア資格認定制度を創設している。【長岡技術科学大学】

○ 「畜産基地を基盤とした大学間連携による家畜生産に関する実践型統合教育プログラム開発」を私立大学と連携してスタートし、家畜生産現場において、衛生管理から、畜産物の流通、消費までを総合的に見渡せる人材養成のためのカリキュラム作成に取り組んでいる。【宮崎大学】

学生支援の充実

1.学習支援等の充実

(具体的取組例)
○ 国際会議での論文発表、海外インターンシップ参加等、学生が行う国際的な活動を支援するため「佐藤矩康博士記念国際活動奨学賞」を創設し、学生を支援している。【室蘭工業大学】

○ 大学院博士課程に入学した学生及び私費外国人留学生のうち、先端的な研究やユニークな研究を支援するため、研究助成金50万円を支給する制度を創設している。【弘前大学】

○ 大学生活の指導等で必要となる手話単語を共有する基盤を整備し、手話コミュニケーション力の全体的な底上げを担うことを目的として、教育研究等高度化推進事業により、大学生活の指導に係る手話単語の確定研究を推進し、「大学生活に係わる手話」に係るコンテンツをウェブサイト上に設けている。【筑波技術大学】

○ シミュレーターを導入し、スキルスラボ機能の充実を図ったほか、学生グループのプレゼンテーションや講義をビデオ撮影したものをストリーミング配信し、e-Learningシステムを活用した学生間で評価・討論できるシステムの運用を始めている。【東京医科歯科大学】

○ 成績・人物とも優秀かつ大学進学において経済的支援が必要な入学志望者が申請可能な、学部1・2年生を対象とした入学前予約型の奨学金制度(通称「みがかずば奨学金」)を設計し、広報活動を開始している。【お茶の水女子大学】

○ ケアが必要な学生の早期発見とその後の支援のため、「学生支援オールインワンカルテシステム」を導入している。【上越教育大学】

○ 学生の独創的・創造力豊かな研究活動を奨励することを目的に、「e-Project@kyokyo」を実施し、4件のプロジェクトについて採択している。【京都教育大学】

○ 学生の自主性を醸成するプロジェクト型研究(学生による提案書審査により採択プロジェクト)に研究費を支援するとともに、コミュニケーション能力を養う国際会議を企画立案する提案公募型国際セミナー開催支援制度を導入している。【奈良先端科学技術大学院大学】

○ 「身体等に障がいのある学生の支援委員会」を設け、聴覚障害者に学生のノートテイカー(要約筆記者)を付けるなど障害学生の支援を行うとともに、ノートテイカー養成講座を開催している。【大分大学】

2.就職支援、キャリア教育等の充実

(具体的取組例)
○ 学生の保護者等に対し、大学の就職状況、就職支援体制並びにキャリア教育への理解を深めるために、「親のための就職セミナー」を大学祭の一般公開日に合わせて実施し、220名の保護者の参加があり、厳しい環境下での就職状況に対応している。【福島大学】

○ ビジネス関連科目、インターンシップ、キャリア教育、修了課題(ビジネス・プラクティス検定)に加え、ビジネス教育サポートサイト「Y-Career」運用を融合した副専攻「ビジネス・プラクティスプログラム」を導入し、卒業・修了後に必要とされる分析能力・企画能力等を身に付けさせている。【横浜国立大学】

○ 学校法人と連携し、「公認会計士」、「税理士」、「公務員」、「宅建主任者」、「行政書士」及び「簿記」の実学講座を開講している。【山口大学】

研究活動の推進

1.資源の重点配分による研究活動の活性化に向けた取組

(具体的取組例)
○ 国内外の超長基線干渉計(VLBI)天文学共同研究と大学独自の2素子干渉計による活動天体研究を推進するため、宇宙科学教育研究センターと理学部が中心となって国立天文台とVLBIグループ大学と共同しつつ、民間企業から移譲を受けた大口径パラボラアンテナの望遠鏡への改造を進めている。【茨城大学】

○ 大学院等の研究機能を世界水準の研究基盤として充実・強化することを目的とした「千葉大学COEスタートアッププログラム」を実施し、14件を採択し、中核的研究拠点の形成を計画している研究グループへの支援に取り組んでいる。【千葉大学】

○ 重点領域研究(サルを用いた新型インフルエンザ病態解明、核磁気共鳴MR研究、神経難病研究、生活習慣病医学、地域医療支援研究)のために、それぞれに対応するセンターを設置し、研究の支援と推進を図っている。【滋賀医科大学】

2.女性教員・若手教員等に対する支援

(具体的取組例)
○ 若手教員を支援するために「弘前大学若手研究者支援事業」として研究費を重点配分するとともに、大学院博士課程修了者等で優れた研究能力を有する者を特別研究員制度により最長3年の任期付きで3名採用している。【弘前大学】

○ 「女性教員の比率向上のためのポジティブアクション」を推進し、女性教員の採用促進に向けた取組がなされているほか、病児・病後児保育施設や男女共同参画推進室に支援相談窓口(コンシェルジュ・デスク)を設置するなど、仕事と育児等の両立を支援する取組が行われている。【秋田大学】

○ 「女性未来育成機構」の設置により、女性教員の支援体制が強化され、実行に移されている。【東京農工大学】

○ 国内外の先端研究者と情報交換や意見交換を行う「国際サイエンスカフェ」を開設し、国際性豊かな若手研究者の育成と大学院生の教育研究の充実を促進している。【山梨大学】

○ 学生も利用可能な託児室の開設、大学院博士課程修了者を教育研究支援員に配置する「生涯にわたる女性研究者共助システムの構築」を、女性研究者支援モデル育成事業終了後も引き続き学内措置により継続しており、積極的に取り組んでいる。【奈良女子大学】

○ 全学アンケート調査の結果を踏まえ、教職員や学生等の育児と仕事又は勉学の両立を支援するため、「派遣型病後児保育サポートシステム」を構築するほか、女性研究者の研究補助業務を行う「研究支援員制度」を、利用者の意見を踏まえ、文系教員も対象とするなど仕事と育児等の両立支援に積極的に取り組み、女性教員がデータ処理や論文執筆等を行う環境を整備している。【島根大学】

3.柔軟な研究実施体制の整備

(具体的取組例)
○ 複合領域研究により機能再建医療の確立を目指す脳機能医工学研究センターについて、相当程度の規模のセンターをすべて大学の資金で設置しており、積極的に取り組んでいる。【旭川医科大学】

○ プロジェクト研究部の中に設置した複数の研究ユニットを通じて、「小規模コーパスデータ分析のためのツール開発」、「心身論」、「異文化交渉がつくる歴史認識」、「言語の構造的多様性と言語理論」等の機動的な研究プロジェクトを実施している。【東京外国語大学】

○ 浜松キャンパス共同利用機器センターを設置し、工学部、電子工学研究所、創造科学技術大学院、イノベーション共同研究センターに属する20数台の大型評価・分析機器装置を集中管理し、さらなる活用と効率的な運用、経費の節減を図り、教職員等の教育・研究を支援する体制を整備している。【静岡大学】

○ 糖尿病関連の研究及び人材育成等を包括的・総合的に行うため、糖尿病臨床部門と糖尿病研究開発部門からなる糖尿病臨床・研究開発センターを設置している。【徳島大学】

○ 沖縄の地理的、歴史的、文化的特徴に関連した総合的・学際的な研究を推進するため、アジア太平洋島嶼研究センター、移民研究センター、アメリカ研究センター、法文学部附属アジア研究施設を統合し、組織・機能の充実を図り、「国際沖縄研究所」を設置している。【琉球大学】

全国共同利用の推進

※ 全国共同利用とは、大学共同利用機関及び国立大学の附置研究所等において、所有する大型研究設備や資料・データを全国の研究者の共同利用に供し、または共同研究や研究会を組織することにより、大学の枠を超えた当該分野の研究を効果的かつ効率的に推進することを目的とした我が国独自のシステムである。(平成21年度現在、4大学共同利用機関法人・17大学共同利用機関、19国立大学49附置研究所・研究施設において実施。)

1.全国共同利用を通じた学術研究の推進 

(具体的取組例)
○ スラブ研究センターでは、世界において研究の空白となっているスラブ・ユーラシア及び東アジアにおいてBorder Study(境界研究)のネットワークを作り、それを世界の研究コミュニティと接合することを目的としたグローバルCOEプログラムを開始し、全面的に支援している。【北海道大学】

○ サイバーサイエンスセンターでは、大学間の国際無線LANローミング基盤eduroamの運用・開発の国内責任校として、13大学の接続及び商用サービスとの連携を実現し、国際運用を行うとともに、各機関の運用コストを大幅に低減できる代理認証システムと利用申請システムの開発と評価を行い、実用化している。【東北大学】

○ 地震研究所では、全国13大学15部局と協力して、約320か所の地震観測点を設置し、地震及び火山噴火予知を目的とした海中で人工震源を発破する大規模な実験を行い、伊豆大島直下及びその周辺の地震波速度構造の推定を行う共同研究を実施している。【東京大学】

○ 応用セラミックス研究所では、研究所として取組むべき重点研究について5件を特定研究課題として提示し、組織的な共同利用研究を推進している。特に、若手研究者に向けて、3大学3研究所連携プロジェクトに関係する公募研究を推進している。【東京工業大学】

○ 蛋白質研究所では、日本蛋白質構造データバンク(PDBj)の活動を通じて、蛋白質の立体構造情報のデータベース化を推進し、データ登録数は世界全体の26%(2,170件)となっている。【大阪大学】

○ 国立極地研究所では、新たに就航した観測船「しらせ」により効率的な輸送手段を導入するとともに、新たな輸送手段として導入した航空機を観測にも利用するなど、効率的な観測活動を展開している。【情報・システム研究機構】

2.全国共同利用の体制の整備・充実

(具体的取組例)
○ 計算科学研究センターでは、他大学にはない学際的な取組として、計算科学と計算機科学の研究者から構成される「学際開拓プログラム実施支援委員会」が支援する体制を構築している。【筑波大学】

○ 海洋コア総合研究センターでは、高度な研究支援要請にも対応可能な専門知識と経験を有するPD(ポストドクター)研究員5名を公募採用(うち1名国際公募)するとともに、兼務教員を4名、技術職員1名を増員し教育・研究・技術支援体制の強化を図っている。また、外国人研究者の来訪機会の増加に対応するため、英会話能力を備えたスタッフを雇用し、国際化への対応を図っている。【高知大学】

○ 応用力学研究所では、自然科学研究機構の核融合科学研究所との間で、相互の研究分野の特徴を活かした双方向型共同研究を推進している。大学独自の主幹教授制度を活用したプラズマ乱流研究センターを設置し、核融合研究及び非線形科学の国際的な最先端研究拠点としての研究活動を展開している。【九州大学】

○ 生理学研究所では、サバティカル制度等を利用した長期滞在型共同利用・共同研究を行う研究者を客員教授、客員准教授又は客員助教として受け入れる流動連携研究室を多次元共同脳科学推進センターに新設し、長期滞在型の共同利用・共同研究を開始している。【自然科学研究機構】

○ 日本原子力研究開発機構(JAEA)と共同で建設を進めてきたJ-PARC において、ニュートリノ実験施設へのビーム供給が開始され、平成22年2月には295km離れた岐阜県飛騨市神岡町にあるスーパーカミオカンデにおいて、J-PARCから発射されたニュートリノによる反応を初めて検出するなど順調に進捗しており、J-PARCにおけるすべての共同利用実験を開始している。【高エネルギー加速器研究機構】

3.全国共同利用を活かした人材養成

(具体的取組例)
○ 低温科学研究所では、寒冷圏の環境科学や将来研究所の主要テーマになり得る萌芽的研究等、若手研究者への積極的な支援を行うとともに、環境科学院が行っている「国際南極大学」にも参画し、雪氷圏教育プログラムを提供し、国際的な人材育成に貢献している。また、世界で初めて宇宙での水分子の生成機構を解明することに成功するなど、宇宙雪氷学の世界的共同研究拠点として機能している。【北海道大学】

○ 接合科学研究所では、東北大学金属材料研究所、東京工業大学応用セラミックス研究所等と共催の国際会議(ICCCI2009)をはじめ、「国際連携溶接計算科学研究拠点」が中心となった講演会等を開催するとともに、国際溶接技術者(IWE)コースを設置するなど、溶接技術の向上と人材育成に貢献している。【大阪大学】

○ 機構本部では、運営費交付金に加え、外部資金を活用し、各種ポストドクトラル・フェローシップを整備し、若手研究者の育成と流動化に努めるとともに、修了生の進路先調査をはじめとする修了生の現状把握を行うなど、ポストドクトラル・フェローの今後の進路指導や修了生ネットワーク構築に向けた取組を行っている。【自然科学研究機構】

4.研究者等に対する情報提供

(具体的取組例)
○ 空間情報科学研究センターでは、我が国初の試みとして、複数の自治体及び国土交通省と連携し、一般に公開・流通されることのなかった様々な行政情報(道路情報・工事情報・環境情報等)を集積し、様々な研究目的・調査目的に利用するサービスを開始し、大学・民間における研究開発を支援している。【東京大学】

○ 数理解析研究所では、共同研究・研究集会・合宿型セミナーの報告集である「数理解析研究所講究録」を京都大学学術情報リポジトリにおいて一般に公開(掲載累積24,464論文)しており、リポジトリ全体のアクセス数の約15%(約20万件)となっている。【京都大学】

社会連携・地域貢献・国際交流等の推進

1.地域貢献の推進

(具体的取組例)
○ 学生の実践的な育成活動等とともに地域や産業の支援・活性化につなげてきた実績により、サービス産業生産性協議会が行う「ハイ・サービス日本300選」に国立大学として初受賞している。【室蘭工業大学、奈良女子大学】

○ 茨城県北ジオパーク推進協議会を設立し、地域の諸組織を巻き込んだ大規模な活動のリーダーシップを取り、学術研究成果を活かした地域振興に取り組んでいる。【茨城大学】

○ 農学部附属「里山科学センター」を設置し、学部・大学院教育における地域再生人材創出拠点の形成を図るとともに、地元自治体とも密接に連携して5年間で60名の地域鳥獣管理プランナー及び同専門員を養成して認定書を交付することとしている。【宇都宮大学】

○ 製造現場での問題に自ら気づき、考え、行動できる工場長の育成を目指すことを目的に、東海地区の中堅・中小企業の工場長やその候補者等を対象として「工場長養成塾」を実施しており、地域の自動車関連企業の協力による実践的な課題解決型のカリキュラムを開講している。【名古屋工業大学】

○ 社会連携と地域における様々な役割を果たすことを目的として、学外からの提案を聞き取る「福岡教育大学長への提案制度」を創設するとともに大学運営に活用し、ウェブサイトに掲載している。【福岡教育大学】

○ 留学生を講師に中学生・高校生を含む一般市民を対象としたフランス語、ウルドゥ語、ポルトガル語、マレー語、スワヒリ語の5プログラムを開講し、68名が受講している。留学生にとっても、異文化交流の体験や言語指導法を学ぶ機会となっている。【鹿児島大学】

○ 近年の日本人の体力低下の現状を踏まえ、子供から老人までの生活フィットネスアップのプログラム(貯筋プログラム)を作成し、日本国内外での振興を図るための「動ける日本人育成プロジェクト」を地域の高齢者を対象に始動している。【鹿屋体育大学】

○ 総合地球環境学研究所では、地球環境に関するメッセージを京都から広く発信するため、環境省、京都府、京都市、京都商工会議所及び財団法人と共同で「KYOTO地球環境の殿堂」運営協議会を設置し、殿堂入りする3名の表彰式を行うとともに京都環境文化学術フォーラムにおいて国際シンポジウムを実施している。【人間文化研究機構】

○ 国立情報学研究所では、研究所が有する学術情報資源を利用可能とするインターネットツールの公開、学術・文化財のアーカイブ等データベースや地域が取り組む新市場創出促進事業への情報技術の提供、古書の街「神田神保町」との連携、学術機関リポジトリポータル「JAIRO」の正式公開等、社会や地域への貢献に資する取組を積極的に行っている。【情報・システム研究機構】

2.産学連携・知的財産戦略のための体制の整備・推進

(具体的取組例)
○ 知的財産部門を中心に産学官連携支援部門、ベンチャー支援部門とともに、センター内にソフトウェア戦略展開委員会を設置し、ソフトウェアに係る知的財産権の戦略的管理・活用、技術移転体制の整備に向けた研究会を立ち上げ、調査・検討を行い、その成果をシンポジウムを開催して、広く公開している。【電気通信大学】

○ 「産学官連携セミナー」において技術ニーズと研究シーズのマッチングを図るとともに、金属組織の検査装置研究において、石川県工業試験場の研究者と共同研究を進めて新技術開発を目指している。【金沢大学】

○ 知的財産の活用については、大学保有特許分析票「サーモグラフマップ」を開発・活用し、教員の研究支援を行ったほか、特許のライセンス契約のみならず、より有効な技術移転を促進する観点から、企業による保有・活用が有効と思われる発明の譲渡等を積極的に進め、研究成果の社会還元を行っている。【北陸先端科学技術大学院大学】

○ 外部資金獲得に向けて、県内中小企業にMOT研修を行い、地域の金融機関とのビジネスフォーラム、サタデー起業塾を教育学部で開催し、滋賀県産業支援プラザとの共催事業で「ビジネスあきんどひろば」を開催するとともに、彦根商工会議所異業種交流会例会を経済学部附属史料館との協力の下に開催するなど、県内中小企業の新事業への貢献を行っている。【滋賀大学】

○ 希少糖D-プシコースの人における安全性と機能性を確認し、企業と共同でD-プシコースの血糖上昇抑制効果を特定保健用食品として申請している。【香川大学】

○ 各種展示会等に出展することにより民間企業等への技術紹介を行うとともに、放射光研究施設の施設利用に関し、先端研究施設共用促進事業に基づく「フォトンファクトリーの産業利用」においてトライアルユースを実施(平成21年度13件)し、利用の促進に努めている。【高エネルギー加速器研究機構】

3.国際交流、国際貢献の推進

(具体的取組例)
○ 学術交流協定校との連携強化、協定校数の拡大、外国人留学生受入数の拡大、広報等を目的に海外6か国(地域)に「秋田大学国際連携コーディネーター」を6名配置している。【秋田大学】

○ 国際シンポジウム「大学におけるアカデミック・ジャパニーズの現状と課題」の他、5回の研究会を開催し、留学生30万人計画の達成に向けた日本語教育の充実のため、留学生が大学で勉学・研究するために必要な日本語力及び日本語の基準を示した「JLC(留学生日本語教育センター)日本語スタンダーズ」に基づく教材開発を推進している。【東京外国語大学】

○ 各国における研究機関、国際機関や海外の大学と連携し、アフリカ4か国(ウガンダ、エチオピア、ガーナ、ナイジェリア)及びアジア1か国(ベトナム)で共同研究を実施するとともに、ベトナムでは運営体制を見直した上で、ハノイのプロジェクト事務所を運営し、現地における国際会議の開催や情報の発信等を通じてベトナムにおけるネットワークを維持している。【政策研究大学院大学】

○ 教育開発のためのアフリカ・アジア大学間対話事業に取り組み、アフリカ諸国から17大学、アジア諸国から10大学の参加を得て、設立総会を開催し、今後の共同研究等の検討を開始している。【広島大学】

○ ハノイ国家大学外国語大学(ベトナム)とツイニングプログラムの協定を締結し、佐賀大学サテライトを開設している。【佐賀大学】

○ 「国際学長フォーラム(第7回熊本大学フォーラム)」を開催して11か国25大学の学長・副学長と今後の国際高等教育の在り方など多彩なテーマの議論や活発な情報交換を行うとともに、海外大学との交流協定校数を100校まで拡大するなど、学生交流及び学術交流や共同研究の機会拡大に積極的に取り組んでいる。【熊本大学】

附属学校の機能の充実

(具体的取組例)
○ 大学のカリキュラムに反映させるために、附属幼稚園(小金井園舎)では、大学の幼児教育分野との共同で「大学4年間の総合的実習プログラム開発研究」に取り組み、大学と現場の往還過程を実現するカリキュラムを検討することを課題として明確にし、学生の学びが深化するカリキュラムを試行している。【東京学芸大学】

○ 特別支援学校高等部の進路に関して、ジョブコーチ経験者を講師として、年間を通して進路に関わる授業を計画的に行い、進路学習の充実を図っている。【富山大学】

○ 附属池田小学校では、教育課程特例校の指定を受け、「安全科」を設置するとともに、WHO(世界保健機関)が推進している International Safe Schoolに日本で初めて認証を受け、安全に対する取組を行っている。【大阪教育大学】

○ 学部附属から全学の附属学校に移行したことに伴い附属学校部を設置し、大学と附属学校との教育・研究に関する連携方策について検討を行い、「ものづくり教育」に関して工学部と附属学校との連携授業を実施し、400名以上の児童生徒及び保護者が大学で講義を受けている。【神戸大学】

○ 大分県教育センター主催の現職教員研修のフォローアップ研修に附属小・中学校が授業提供を行い、実践協議の講師を務めるなど、地域の教育課題の解決に地域の学校と連携して取り組んでいる。また、附属小・中学校のそれぞれの教員が10年経験者研修に講師として招へいされ、地域の教員の指導力向上に貢献している。【大分大学】

附属病院機能の充実・強化

1.教育・研究面 

(具体的取組例)
○ 培養骨膜、培養赤芽球を用いたトランスレーショナルリサーチ(橋渡し研究)の実施や県立吉田病院・自治医科大学と新潟県工業技術総合研究所並びに新潟県内の民間事業所と連携して、高刺通性次世代型縫合針の研究開発に取り組んでいる等、トランスレーショナルリサーチの研究成果に基づく医療を積極的に推進している。【新潟大学】

○ 魅力的な臨床研修を遂行するために、県内外で内科・救急部門研修が可能なプログラムや、大学病院救急部での通年の救急研修プログラムの作成、研修医に携帯情報端末(PDA)を配付するなど、特色あるプログラムを提供している。【三重大学】

○ 血管再生医療の附属病院での臨床展開や、医学研究科において筋ジストロフィー患者由来のiPS細胞における遺伝子修復技術の開発等、基礎研究と臨床医学との融合を図りながら、トランスレーショナルリサーチ(橋渡し研究)の推進を図っている。【鳥取大学】

2.診療面 

(具体的取組例)
○ 社会的要請が高い周産期医療体制の充実を図るため、新生児集中治療室(NICU)等の周産期医療関係病床の整備を実施している。【千葉大学 他10大学】

○ 新型インフルエンザ発生時には、文部科学省・厚生労働省からの要請に応え、空港等において、医師・看護師が検疫業務の支援に従事しており、大学病院としての役割を果たしている。【千葉大学、東京大学、大阪大学】

○ 医療事故が発生した場合や患者・家族と医療者間で問題発生が起こった場合、双方の意見を聞き問題解決に導く仲介役を行う「医療メディエーター」を配置するなど、医療の質の向上のための人員配置を推進している。【福井大学】

○ 大学病院の中でも特色のある「開放病床」を有しており、これまでの13床から新病棟移転後は28床に増床するなど、地域との密接な連携体制を構築している。【浜松医科大学】

○ 子どもと養育者の心の問題に対応するため、包括的な診断と専門的なケアを提供する「子どものこころの診療部」を開設するなど、社会的なニーズや喫緊の課題に対して積極的に応えている。【九州大学】

3.運営面

(具体的取組例)
○ 国立大学附属病院長会議が取りまとめた「国立大学病院評価指標」に基づき、全54項目の指標と実績評価(平成19年度から平成20年度)をとりまとめ、経営改善の資料に活用するとともに、他大学病院に先駆けて広く一般に公表(病院ウェブサイトに掲載)している。【北海道大学】

○ 医師不足の地域医療現場を支援するため、富山県南砺市の「地域医療再生マイスター養成プロジェクト」に協力し、地域医療再生マイスター養成講座や小児医療・地域医療・保健に関するセミナーを実施し、地域住民の医療知識を高めるための活動に取り組んでいる。【富山大学】

○ 育児に悩む女性医師・看護師等の就労継続・就職復帰を支援するために、24時間保育や病後児保育等を行う保育所を開所するなど、働きやすい職場環境の整備を推進している。【長崎大学 他5大学】

○ 国立大学病院管理会計システム(HOMAS)を活用した分析により、「DPC検証プログラム」と題して、様々な観点からの分析を診療科とともに実施しており、分析結果を活用して経営改善の推進を図っている。【熊本大学】

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高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)