資料4‐1 国立大学法人等の平成18事業年度財務諸表の概要について(平成19年9月12日プレス発表資料より関係箇所抜粋)

1.国立大学法人等の財務諸表

 国立大学法人及び大学共同利用機関法人(以下「国立大学法人等」という。)は、国民その他の利害関係者に対し財政状態や運営状況に関する説明責任を果たし、自己の状況を客観的に把握する観点から、上場企業と同様の財務諸表(貸借対照表、損益計算書、利益の処分(損失の処理)に関する書類、キャッシュ・フロー計算書、国立大学法人等業務実施コスト計算書)の作成及び公表が義務付けられております。
 国立大学法人等は、財務諸表を文部科学大臣に提出することとされ、文部科学大臣は、国立大学法人評価委員会の意見を聴いたうえで、承認を行うこととされています。

2.国立大学法人会計基準の特徴

 国立大学法人等の財務諸表は、国立大学法人会計基準及び国立大学法人会計基準注解、並びに国立大学法人会計基準に関する実務指針(以下「会計基準等」という。)に従って作成することとされています。
 国立大学法人会計基準は、企業会計原則を基礎としつつ、独立行政法人会計基準を踏まえて、国立大学法人等の主たる業務内容が教育・研究であること、学生納付金や附属病院収入等の固有多額の収入を有すること、国立大学法人間における一定の統一的取り扱いが必要とされることなどの特性に配慮して、必要な修正を行ったものであり、基本的な取り扱い独立行政法人会計基準と共通しております。
 特徴的なものとして、例えば、国立大学法人等業務実施コスト計算書がありますが、国立大学法人等の業務運営に関して国民の皆様の実質的な負担となるコストを表示するものであり、損益計算の対象とはならない国からの無償借り受け資産の賃料相当額などを機会費用として加える一方で、国民の皆様の直接の負担とはならない学生納付金等の自己収入を除いて算定するものです。また、損益計算書において業務費を教育・研究・診療などの目的別に区分しております。
 官庁会計、企業会計、独立行政法人会計と国立大学法人会計との主な差異については別紙1 各種会計の特徴について、国立大学法人等に特徴的な会計処理については別紙2 国立大学法人に特徴的な会計の取り扱いについてをご参照願います。

3.平成18事業年度財務諸表の概要(4大学共同利用機関法人)※別紙3 国立大学法人等の財務諸表の概要を参照。

(1)貸借対照表

(資産の部)

 資産の総額は、4大学共同利用機関法人合計で130億円(前年比3.0パーセント)増の4,420億円(以下、特に断らない限り4大学共同利用機関法人の前年比・合計)です。
 主な増加要因は、建設仮勘定が、研究施設等の整備に伴い、57億円(12.9パーセント)増の503億円、現金及び預金が35億円(12.9パーセント)増の307億円、土地が19億円(1.5パーセント)増の1,267億円、有価証券が、資金運用により新規14億円です。
 主な減少要因は、工具器具備品が、減価償却などにより77億円(9.8パーセント)減の709億円、建物が、減価償却などにより37億円(3.9パーセント)減の917億円です。

(負債の部)

 負債の総額は、58億円(2.9パーセント)増の2,018億円です。
 主な増加要因は、建設仮勘定見返債務(注)が、建設仮勘定の増に伴い100億円(35.5パーセント)増の384億円、未払金が、期末に実施した移転工事の増加などにより30億円(11.2パーセント)増の305億円などです。
 主な減少要因は、資産見返物品受贈額が、減価償却の進展などにより115億円(17.7パーセント)減の533億円です。

  • (注)建設途中の建物等の支払財源が運営費交付金、施設整備費、寄附金等の場合に、建設仮勘定の見合いとなる経過勘定のこと。

(資本の部)

 資本の総額は、72億円(3.1パーセント)増の2,401億円です。
 主な増加要因は、資本剰余金が、建物完成などにより61億円(13.7パーセント)増の507億円、当期未処分利益が6億円(166.8パーセント)増の10億円です。

(2)損益計算書

(経常費用)

 経常費用の総額は、35億円(3.4パーセント)1,013億円です。
 主な増加要因は、財務費用が、借地購入に伴う長期借入金の支払利息増により8億円(770.5パーセント)増の9億円、教員人件費が、退職手当の増加などにより6億円(3.9パーセント)増の183億円です。
 主な減少要因は、一般管理費が、借地購入に伴う賃借料の減などにより22億円(29.0パーセント)減の53億円、研究経費が、一部研究設備の移設による減少及び研究設備の耐用年数の満了に伴う減価償却費の減少などにより16億円(2.9パーセント)減の537億円、受託研究費が、受託研究の減少に伴い8億円(15.1パーセント)減の47億円です。

(経常収益)

 経常収益の総額は、29億円(2.8パーセント)減の1,024億円です。
 主な増加要因は、受託事業等収益が、受託事業の受入の増加により2億円(103.9パーセント)増の4億円、施設費収益が2億円(99.1パーセント)増の4億円です。
 主な減少要因は、運営費交付金収益が、資産取得に伴い、資産見返勘定へ振替えた相当額が増加したことなどにより19億円(2.4パーセント)減の776億円、資産見返負債戻入が、減価償却の進展に伴う資産見返勘定の戻入益の減少などにより10億円(6.2パーセント)減の159億円、受託研究等収益が、受託研究等の減少により8億円(14.3パーセント)減の49億円です。

(臨時損益及び当期総利益)

 臨時損失は、固定資産除却損の減などにより2億円(45.3パーセント)減の3億円、臨時利益は、固定資産売却益の増、固定資産の除却等に伴う資産見返勘定の戻入益の減などにより2億円(37.3パーセント)減の3億円です。これに目的積立金取崩益を反映させ、当期総利益は、6億円(166.8パーセント)増の10億円です。

(3)その他主要表

(キャッシュ・フロー計算書)

 業務活動によるキャッシュ・フローは、超過額28億円(14.1パーセント)増の229億円の収入超過です。投資活動によるキャッシュ・フローは、超過額356億円(65.5パーセント)減の187億円の支出超過です。財務活動によるキャッシュ・フローは、超過額416億円(122.7パーセント)減の77億円の支出超過です。以上により、期末資金残高は、34億円(12.7パーセント)減の237億円です。

(国立大学法人等業務実施コスト計算書)

 損益計算上の費用は一般管理費の減、控除する自己収入等は資産見返戻入、受託事業等収益の増などにより、業務費用合計で39億円(4.0パーセント)減の933億円です。損益外減価償却相当額は、研究用建物など直接収益の獲得を目的としない償却資産の減価償却費などの相当額であり、14億円(14.6パーセント)減の84億円です。損益外減損損失相当額は、研究施設等について使用しないという決定を行なったことなどによる帳簿価額の減少に伴うもので、33億円となっています。
 引当外退職給付増加見積額は、法人職員として承継した国家公務員であった者などに関する退職給付引当金の平成18年度における増加相当額です。機会費用は、政府から出資された土地・建物等の相当額に対する政府の金利負担相当額等であり、金利の下落により3億円(6.9パーセント)減の49億円です。以上により、国民の皆様の実質的な負担額は、17億円(1.5パーセント)減の1,110億円です。

(4)当期総利益(剰余金)の発生要因

 前述のとおり、当期総利益は、6億円(166.8パーセント)増の10億円です。
 前年度実績と比較した主な収益の増、費用の節減の要因については、別紙4 前年度実績からの主な増減要因(4大学共同利用機関法人合計)を、また、各国立大学法人の予算と決算との対比により収益の増、費用の節減の要因を説明した別紙5 予算・決算の主な増減要因(4大学共同利用機関法人合計)ご参照ください。

4.国立大学法人等における当期総利益(剰余金)と目的積立金

 国立大学法人等は、財源措置及び上記会計基準により、基本的に、計画通りに業務を行えば損益が均衡する仕組みとされておりますが、国立大学法人等が計画に比して効果・効率的に事業を実施し、自己収入の増や費用の節減などにより当期総利益(剰余金)が生じた場合には、中期計画に記載された剰余金の使途に充てることを可能とすることにより、業務運営のインセンティブを付与する仕組みとされております。
 具体的には、当期総利益のうち、各国立大学法人等の裁量により事業の用に供することが可能な額(以下「事業実施可能額」という。)を算定し、財務大臣と協議したうえで、改めて文部科学大臣による承認を行ない、それを受け、各国立大学法人等において当該額を目的積立金として、教育研究の質の向上や施設設備の充実などに充てていくこととなります。この仕組みを最大限活用できるよう、各国立大学法人等は、一定の経営努力を行なう計画の下に予算策定し、実施段階においても、一層の自己収入の増収、採用時期の伸延、人員配置の見直し、契約の見直しによる業務経費の抑制など不断の経営努力を行なっております。
 国立大学法人等においては、目的積立金の対象は、基本的に、当期総利益の範囲内で、当該年度に生じたフリー・キャッシュ相当額としております。
 これは、国立大学法人等については、基本的に、業務実施所要額から自己収入の予定額では賄えない相当額を措置する仕組みとしているため、現金収支は均衡しても損益は均衡するとは限らないこと、旧国立学校特別会計における借入金の償還財源を国立大学法人の附属病院収益等から拠出していることなどにより、構造的に当期総利益とフリー・キャッシュ相当額とに差異が生じることなどのため、必要な補正を行なっているものです。

お問合せ先

研究振興局学術機関課