資料3−2

いままでに出された意見の概要

注:○印は前回第2回目に出された意見

1.科学技術の在り方そのものについて

  • 開発から維持というように、時代の精神というものが大きな変換を遂げている中で、従来のスキルがついていっていないことが問題を引き起こしている。このような状況の下では、人文社会科学と科学技術のサイドとが、一緒のプロジェクトの中で研究するということが必要。  
  • 人間と対象とを分けて考えるのが従来の科学だったが、今後は、人間込みの自然を考えなければいけない。従来の知識体系そのものの転換が必要となっている。  
  • 科学技術について、人間は一体何をどこまで知り得るかという問いとともに、いま何が一体知るに値するかという問いが重要になっており、両者を内在的に関係づけることが必要。  
  • 職業人としてのサイエンティストは、競争にうち勝たないといけない状況に置かれており、研究のスローダウンや環境への配慮等、いろいろ指摘を受けても、競争原理に代わるものが十分確立されていない中では対応が困難。  
  • 学問分野の細分化問題については、現役研究者は、競争に勝ち残るため細分化をいわば強いられる立場にある。現場の声を十分聞きながら検討することが重要。  
  • パースペクティブの長い知の体系を構築する営みが重要。目先のことばかり追いかけていると、世の中の大きな変わり目に対応できない。  
  • 科学は自然現象を知るための知的活動と言われているが、現代科学はそうなっておらず、特別なわかりやすいところだけを取り出してモデル化して見ている。自然を見るというときには、外から客観的に見るだけでなく、人間も自然の中に入ったものとして見る知のつくり方がある。21世紀は人工、人間、自然の関係がどうあるのがよいかということも議論して欲しい。  
  • 生命体としてのヒトの持っている能力、生態学的なことや生理学的なことなどを取り入れた科学技術が重要。ヒトを含む地球上のすべての生態系が、何をすると壊れてしまうのかというようなことを系統的に把握する学問が存在していない。  
  • 20世紀の科学は、多くが線形近似的、直線的な思考で物事を考えてきた。例えば遺伝学では、形質の発現について、遺伝子の作用のみを重視し、環境の作用を見てこなかったのではないか。  
  • 新しい科学の展開として、人文科学と自然科学が融合するために、エネルギーや物質には還元し得ない部分の科学というのが、どこかに出てくるのではないか。  
  • フィールドで研究している科学は、明確にコントロールできない条件下で行わなければならないため、認められないことが多いが、環境問題などの研究には非常に重要。  
  • フィールドワーカーの持っている知識、経験等を今後は重視すべき。  
  • 女性の持つ物の見方、視点というものを取り入れた科学技術が必要ではないか。  
  • 科学者は何をしてもいいが、それを使う側の人間の倫理観がしっかりしていないといけない。  
  • 科学者の中から倫理の問題を考える場所が欲しい。  
  • 科学者の行為も科学技術も、社会と"and"で結びつけられるものではなく、むしろ"in"で考えられるもの。社会の中の1つの活動としてきちんと位置づけられているようになるのが望ましい。  
  • 夢ドリヴンのような科学技術とは別に、日本のように資源もエネルギーも食糧も自給できない国では、21世紀の危機というようなものを予測しての、危機ドリヴン型の科学技術ということも重要。  
  • 学問の細分化が進行しており、狭いことを自分の専門とし、それ以外のことは何も分からなくなってしまうような状況にある。こうした事態を改善するのは、結局は基本的教養に帰結すると思う。そのための時間の不足という問題については、人生80年時代にふさわしい学習形態をいかに形作るかということが重要。  

2.経済産業との係わりについて

  • 今後日本が経済成長を維持する上で、技術進歩の役割は非常に重要。また、そのためのナショナルイノベーションシステムの在り方を考えた場合、特に大学の役割が重要。  
  • 日本は、研究費の額や人口当たりの研究者の数は多いというデータもあるが、研究と経済とのリエゾンがうまくいっていない。米国のように、ダイナミックな流動化が図られることが必要。  
  • 日本の大学は、経済活動とのリンクについて、米国等の例も踏まえて改善して行くべき。  
  • 普通に基礎研究と言われるものの中にも、国益に係わる研究が多く存在しており、諸外国では戦略的に強化しようとしているが、日本はそうした意識が乏しい。  
  • 知的財産権等、技術進歩に係わるルールの国際的な調和を図ることが重要。  
  • 日本国籍を有する企業が日本という国の中で、21世紀も国際競争力を維持できるのか、維持するためには何が必要なのか。産学連携ということが言われるが、本当に効果的なアウトプットが出る形になっているのかという見直しが必要ではないか。  
  • 21世紀の科学技術を考える上では、人類のためにという大きな目標とともに、競争の中で日本自身が産業で競争力を持たなければならない、そのために何をするのかというテーマがあると思う。  
  • 情報通信等の分野で、最近特に日米間の技術格差が開いている。日本が競争力を得るために、重点テーマを国家的に設けて、多くの科学者が取り組むようなシステムをつくるべき。  
  • 科学技術の成果について、国家予算を使って人類のためにというだけではもったいない。科学技術の成果は知的財産との関連性も強く、国益の事も考えて、両者の政策を総合的にセットで考えて行くべき。  

3.情報公開や教育について

  • 科学技術に係わる問題の情報公開について議論をすることが必要。  
  • 科学技術が人々から疎遠になっているのは、研究者にも責任がある。研究者が自己の科学について語ることは重要。  
  • 環境問題について、研究者が持っている知識と市民社会が持っている知識とが乖離している。市民に対する情報伝達をマスコミに一方的に任せているのは問題。  
  • 小中学校や高校での倫理教育や自然教育等も含めて、科学を支える教育の役割が重要。  
  • 若者の科学技術に対する関心の低下が懸念される。  
  • 21世紀の科学技術を語るということは、科学技術の再生産、すなわち現在の教育について問題にすることだ。  
  • 初等教育の段階でヒューマンな先生が物事を教えてくれると、子供たちも科学に対して興味を持ってくれるし、地域の施設の利用ということも重要。  
  • たとえ詰め込みでも、それで教育されていた子供たちは大学で教育できたが、今は、詰め込まれていないため、教育すること自体が難しい大学が増えている。  
  • ヒトの持つ能力を伸ばす時期と、社会の中での知識教育の時期とは全く違うもの。大学になったら記憶を詰め込む知識教育でいいかも知れないが、小学校とか中学の段階では、ヒトとしての能力を生かすようなやり方が必要。  

4.人間との親和性について

  • 教育やコミニュケーションなどの場面での人間関係におけるスキルと、テクノロジーというものとを、どう結びつけて考えていったらよいのか検討が必要。  
  • 人間の技法や技術というものが、テクノロジー化して外在化していくことによって、個人の能力として、人が何を獲得し、何を失うのかということを見定めることが必要。  
  • コンピュータについては、その性質上、思ってもみないことが起きるような創発性を追求するよりも、むしろ安全性や人間との親和性ということについて考えるべき。本当の意味での情報化社会をもたらすにはどうすべきかを考えたい。  
  • 医学の力は世の中に多くのものをもたらしたが、一方で、科学としての医学が進めば進むほど、医学への不信感が増すような状況がある。ゲノムの解読を通じて個の医学の実現を図るとともに、臨床の知というものを発展させることが必要。  

5.科学技術政策について

  • 先見性を備えた科学技術政策を可能とするメカニズムづくりが重要。政策や研究についての評価を、社会的側面についての先見性を持たせる手段にしていく必要がある。  
  • 明るい戦略目標を立てることが、社会全体が暗い方向に向かっているときには、大事なこと。米国のように、多くの人を惹き付けるような戦略目標について議論したい。  
  • 地方公共団体が、科学技術の振興について関心を高めるための方策について考えたい。  
  • 日本人が独創的に、科学技術論や科学技術政策を立てるということはなかなかない。なぜ日本人は自分たちの科学技術に関する考え方を、世の中に広めていくような事ができないのか。  
  • 経済学や国際政治学等でも科学技術の問題を扱っているが、常にマイナーな存在。科学技術のようなものを、政策で本当に高揚できるのか。科学技術を語る際の言語と、社会科学が語る言語とが違っているのでは。両者の整合を図るべき。  
  • 現代社会における科学技術の在り方の中に起こってくる様々な問題を、恒常的に議論し、資料を蓄積していくための組織が必要。行政につくるのか、それとも民間でやるのかという問題はあるが、議論と資料のインテグレーションをきちんと行い、そこから我々の判断や行動を汲み上げていけるような制度があれば、総合科学技術会議を支える組織としても機能するのではないか。  
  • 非常にわかりやすいスローガンのようなものが必要。科学技術で尊敬される国というのは、いいスローガンではないか。  

6.安全保障との係わりについて

  • 安全保障の問題と科学技術の問題とを正面からきちんと考えることが必要。  
  • 科学技術と軍事との関係は非常に重要。  
  • 安全保障の観点というものが重要。  

7.その他

  • 生命科学は、命に対する理解の深化や、人間の健康の保持、新産業の創出、地球上の生命世界の保持など、今後非常に重要な役割を果たすことが期待される。しかし、それを支える教育などの面で、日本の現状は、変えていかなければならない課題を抱えていると考えられる。  
  • 環境汚染について、余り環境重視にとらわれすぎると、別の大量消費・大量廃棄社会をつくってしまうおそれ。安全性をどこまで追求するのか考えるべき。  
  • 科学と技術とは違うのではないか。そのこともしっかりと議論すべき。  
  • 科学と技術は違う。科学的知見が人間のインタープレテーションを経て技術になったときに問題点を生ずることが多いのではないか。  
  • すべて科学技術で語られてしまうことには少し抵抗がある。科学そのもののありようも是非議論して欲しい。  
  • 現在は、科学技術のブラックボックス化や啓蒙的なイメージの衰退により、科学技術が広い国民的な支持を受けにくい状況になっている。どうやって科学技術を再び愛されるようにしていくか。  
  • 20世紀という世紀は人類の歴史の中ではかなり特殊な世紀だったのではないか。20世紀をきちんと見ることも大事だが、もう少し長い時間の中で人間の活動を見て21世紀を考えるということも大事ではないか。  
  • テレビという科学技術の産物が、集中力を持続できない子供たちを生んだ。そうした事態が望ましくないのなら、人間の本性としてこうあるべきという形と両立するような科学技術の姿を探求することが課題。  
  • 科学が非常にグローバル化してきており、巨大な国際会議、国際プロジェクトが行われているときに、日本としてどう対処していくのか、中核になるものをもっと強くすべき。  
  • ポスト・ドクトラル・フェローの後をどうするか、大きな問題ではないか。   

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