産学官連携推進委員会(第36回)・大学知的財産本部審査・評価小委員会(第20回)合同会議 議事録

1.日時

平成21年1月22日(木曜日) 13時~14時20分

2.場所

文部科学省 東館3F 1特別会議室

3.議題

  1. 平成21年度 産学官連携関連予算案について
  2. 産学官連携拠点の形成支援(案)について
  3. その他

4.出席者

委員

白井委員(主査)、石田委員(副主査)、秋元委員、飯田委員、石川委員、北村委員、小寺山委員、小原委員、澤井委員、清水委員、高田委員、武田委員、田村委員、柘植委員、西岡委員、西山委員、野間口委員、馬場委員、原山委員、平井委員、三木委員、森下委員、松重委員、山本委員

文部科学省

磯田研究新興局長、倉持研究振興局審議官、田口研究環境・産業連携課長、小谷技術移転推進室長、北郷研究環境・産業連携課長補佐、吉田技術移転推進室長補佐

5.議事録

(1)平成21年度産学官連携関連予算案について

  • 資料1及び資料2について事務局から説明した後、その内容に関する質疑が行われた。
      内容は以下のとおりである。

【白井主査】

 御質問、あるいは何かお気づきの点というのがありましたら、どうぞお願いいたします。

【原山委員】

 すみません、ちょっと4ページのところにあります若手研究者ベンチャー創出推進事業ですが、これは、例えばプレ・インキュベーションというような形でやることなのでしょうか。それともベンチャーを起業したいという人たちに対して、今までの研究と違うやり方というものをサポートする話、つまり、ビジネス面でのサポートをしていくのでしょうか。

【田口課長】

 まず、この事業自体は、例えばこれまではJSTで大学発ベンチャーの創出支援ってやっていたわけですけど、これはあくまでも研究開発が主体の支援でございます。この事業自体は、まず若手のアントレプレナーシップを持った人材ですね、人を支援していこうというのがそもそもの発想でございます。研究者の卵としては、ポスドクのポストというのはいっぱいあるわけですけど、そうじゃなくて、アントレプレナーの卵としてのポスドクのポストとして考えております。また、先ほど説明申し上げましたように、各大学でベンチャー・ビジネス・ラボラトリーというのがある時期設置され、最近それを集めたシンポジウムが開催されていますが、若干、活動が思わしくないということがあって、そういうVBLの活動の活性化とセットで、VBLがVBLらしい活動をしながら、アントレプレナーを持った、これはポスドク、あるいは今、ドクターにいる学生が、来年から研究者としてのポスドクじゃなくて、何らかの形で起業するための準備をこういうところでしていただくということを想定しています。
 それで、起業のところのビジネス・サポートの部分については、もちろん大学自身が今、VBLだけではなくて、産学連携推進本部などでやっている部分もありますから、そういうことは当然やっていただく。それから、JSTが今まで大学発ベンチャー事業をやっている中でできたネットワークも活用しながら、支援をしていくということにしております。

【白井主査】

 よろしいでしょうか。

【原山委員】

 VBLができたときと今日とは状況が違っていて、うちの大学を見ても、変形しているわけですね。進化しているというか、何か。それを、そこにまたこういうものを盛り込むというのが現実として可能なのか、多少、疑問です。それは何もVBLに引っかける必然性はないわけですよね。

【田口課長】

 おっしゃるとおりでございまして、VBLにこだわっているわけではございません。VBLという名前がなくても、若い研究者が起業するためのサポート、大学にそういう機能があります。前提条件となるということでございます。

【白井主査】

 ほかに。どうぞ。

【武田委員】

 何点か、あえてこの審議会は文部科学省下であるということも意識して意見を申し上げます。私は三十何年、企業におりましたが、その間にも経験しなかったような未曾有な世界同時不況に突入しているという状況から、この予算というのは極めて重要であり、事態に対応してフレキシブルに運用していただきたい。
 私が予想しますのは、今までの状況では、一生懸命こうやって仕組みをつくっても、企業側も大学側もそれぞれやっているが、いまひとつ、産学というところでは結びつきがなかなかうまくいかなかったかもしれません。しかし、状況が変わりますと、わずか1億、2億のお金でも、双方にとっては非常に貴重なリソースになりますので、これまでのプログラムの進め方を反省して改善することは大いにやると同時に、必ずしも今までやっていてうまくいかないから、これからも駄目だということでもないので、そういうことも含めて、大いに期待しておりますので、よろしくお願いします。
 それで、そういう観点から質問させていただきますけど、まず事前に見て多少気になったところでいうと、若手研究者ベンチャー創出推進事業です。ここのところが、研究者と所属機関が連名で応募するというときに、この所属機関、あるいはその所属している研究所、これは大学に限定するのか、あるいは我々のような独立行政法人の研究機関にまで広げられるのか、あるいは形を変えて、企業なり何なりも含めて、ある資格を備えればこれを利用できるのかということが1点。
 それからもう1点は、クラスターの問題で、また新しいプログラムで議論があろうかと思いますが、12ページで、地域卓越研究者戦略的結集プログラムというのが、よくわかりませんが、新規と書いてあるので質問させていただきますけれども、「地域の構想を推進させるため」と書いてあるんですが、地域の構想、事業化計画を立てている主体はどこなのか、その主体の計画を見て、お金はその主体に配られるのか、そこのちょっと対応を質問したいんです。

【田口課長】

 まず1点目につきましては、4ページの資料のところに「大学・研究機関のVBL等」というふうに書かせていただきましたので、大学のみならず、理化学研究所も対象になるものというふうに想定して、今、詳細な制度設計を進めてございます。
 それから、2点目の地域のお話、これはちょっと我々が必ずしも担当しているわけではないので、詳細について今、説明申し上げることはできませんが、ここでいう地域の構想は、大半は自治体を中心にした構想でございます。例えばこの前のところで、知的クラスター創成事業とか、都市エリア産学官連携促進事業とございますが、これは自治体が中心になって、大学や研究機関、あるいは企業を巻き込んで、地域の新規産業の創出の構想とかをつくっているところをベースにしております。各地域の地方大学にも優れた研究者は必ずいらっしゃいます。ただ、その先生1人でなかなかサポートがなくてうまくいかないという部分を何とかしようというものでございます。

【武田委員】

 ありがとうございました。4ページのほうは、例えば経済産業省傘下の産業技術総合研究所も含むというふうに考えていいですね。

【田口課長】

 はい。ただ、産業技術総合研究所は、これに類するのを自分たちの中で持っていますので、そこに対して新たに出すかどうかというのは、リソースは限られていますので、政策的に考えなきゃいけないというふうに思っております。

【白井主査】

 はい、どうぞ。

【野間口委員】

 何とか産学官連携でイノベーション力を上げようということで、いろいろ御苦労されているなというのはよくわかりますが、この中で、きょう説明いただいたいろんなプロジェクトで、コーディネートするとか、コーディネーターとか、それから連携支援人材とかいろいろ出ておりますけども、出口に近い「産」にいる立場からしますと、プロジェクトをつくるときにもそうでしょうけども、特に出口に近くなりますと、コーディネーターの役割というのが非常に重要だなと思います。コーディネーターのセンスによって、成果がスムーズに出る場合もあるでしょうし、途中で頓挫する場合もあるかもしれません。このことについて、どう考えておられるのか。また、コーディネーター的人材というのは、説明いただいた中で何種類ぐらいいて、それは横の連携があるのかないのか。
 それと、JSTでもいいし、文部科学省でもいいと思いますが、レベルアップといいますか、そういったことに対する手当はどういうふうに考えておられるのか、聞かせていただけたらと思います。

【田口課長】

 まず、最初の御質問の、このいろんな施策の中に、いわゆるコーディネーターという人材がどういうところにいるかというところについてお答え申し上げますと、まず2ページの産学官連携戦略展開事業の中で、これは文部科学省として平成13年度から産学官連携コーディネーターというのを各大学に配置しており、現在、約80名を配置してございます。
 それから次は、地域の事業になりまして、8ページのところの、この中の知的クラスター創成事業と都市エリア産学官連携促進事業については、この事業を実施するためのコーディネーターがそれぞれおります。したがって、事業の数だけ、実施地点の数だけコーディネーターがいるという格好になります。
 それから、あと一番右側の地域イノベーション創出総合支援事業、JSTでございますが、これは各地にJSTがイノベーションプラザとサテライトというのをつくってございまして、現在全国に16箇所あり、それぞれ3名程度のコーディネーターがおります。
 今、この文部科学省の事業の中では、以上、知的クラスター創成事業と都市エリア産学官連携促進事業を一緒にしますと、3種類のコーディネーターがいるという格好になってございます。御存じのように、コーディネーターという名前かどうかということを問わず、例えば、特許庁でやってございます特許流通アドバイザーであるとか、その下にアソシエートという方がいらっしゃいます。さらに各自治体で雇われているコーディネーター、それから、大学が雇用されているコーディネーター、といろいろ種類がおります。今、JSTでコーディネーターのデータベースをつくってございますが、そこには約1,700人のコーディネーターが登録されている状況でございます。
 今、我々のほうでは、その中でも比較的ボリュームの大きなもの、我々がやっている産学官連携コーディネーターと特許流通アドバイザーは各地域において、大学ごとに一緒に仕事したりしているわけですが、少し広域でネットワーク化を図ろうということで、コーディネーターの全国会議などを開催し、徐々にネットワークを、それぞれの事業のネットワークはあるわけですけど、その事業間のネットワーク同士をつなげていくという作業を始めてございます。最終的には、コーディネーターはやはり個人の力量で動くところがありますので、スキルアップ、あるいはネットワークを広げるという観点で、そういうことをやらせていただいてございます。
 コーディネーターの制度自体は、ここからは若干、私見になりますが、ある意味では日本に非常に特徴的な、例えばヨーロッパとかアメリカの産学連携で見ても、それに類する人たちというのはいなくて、比較的、公的な資金で雇用されている千数百名のコーディネーターが産学官のいろんな局面で活躍をしているという状況だというふうに思っております。これがこれからどうなっていくかというのは、まずはそれぞれのネットワーク化を考えますけど、少し民営化というんですかね、例えば企業側にもこれからはコーディネーターのような方がオープン・イノベーションということで出てくることも考えられます。したがって、そういう将来的なちょっと見通しも考えながら、今いる公的な官製のコーディネーターですね、この人たちの仕事の仕方とか、あるいは若手の育成とか、そういったことを考えていかなければいけないというふうに考えております。

【白井主査】

 いかがでしょう。よろしいですか。

【三木委員】

 1つ質問させていただきます。こういう施策というのは、基本的に現場の主体があって、その現場の主体については、大学だけじゃなくて、民間と一緒にやる場合もありますが、施策が有効になるのは大きく分けて2つだと思います。1つは、現場の主体が「やりたい」とビジョンを明確に持ってやっていこうとしてもリソースが不足しているから、そこを支援するという施策です。もう1つは、現場の主体には幾つかの芽があるけど、残念ながらまだそれが立ち上がっていない。そういう場合に、ナビゲート型で施策を打つという形があると思います。
 大学知的財産本部整備事業は、後者のほうに属すると思いますが、やりたい部分でリソースの不足している部分、それをさらにステップ・ワイズで上げていくという、そういう施策だったと思うんですね。
 先ほどの若手ベンチャー、VBL関係ということで出ていた施策ですけども、これは、現場で十分に芽があるのかどうか、現場がやりたいのか、ナビゲートをしないといけない施策なのかなということが気になります。
 ナビゲートする施策のときには、やはりいろんな多様性を生み出させるということが非常に大事だと思います。大学知的財産本部整備事業でも、ナビゲート型でやりましたけれども、産学官連携戦略展開事業では3つのグループに分けて、多様性を生み出していくことにしました。それと同じように、小さな事業ですけれども、ちょっと注目できる事業だと思うので、その辺の多様性をどういうふうに引っ張り出してくるのかという、その辺のところのお考えはどういうふうになっているのか、ちょっとお伺いしたいと思います。

【田口課長】

 先ほど申し上げましたように、この事業は人に投資するというところをまず第一に考えています。その周辺のサポートの体制は、今、先生がおっしゃったように、こうでなきゃいけないというのを設定するつもりはなくて、いろんなやり方でよろしいと思っています。それぐらいしか多様性ということでは申し上げられないかなと思います。

【白井主査】

 どうぞ。

【森下委員】

 先ほどもちょっとお話があったコーディネーター、あるいはJSTの事業のプロジェクト・オフィサー事業ですね、これに関しての質問ですけども、実際に評価を受けたり接触している側の意見でいいますと、非常にばらつきがあって、レベルが高い方もいれば、そうでない方もいらっしゃると思います。企業の方も、同じ会議で全く逆の意見を言われることがあって、正直どうしていいのかよくわからないといわれているケースがやっぱり存在しているのも多々あるかと思います。
 そういう意味では、少しコーディネーター事業に関しても、かなり時間がたってきましたので、人選をより厳しくし、かつ研修なりをしっかりして、底上げもするようなことも必要だと思っています。事業の中でそういう経費が本来あるんだろうとは思いますが、これだけ数が増えてきますと、やはり均質化というのも非常に重要な問題だと思いますので、そのあたりの目配りが必要かと思います。

【白井主査】

 はい。

【松重委員】

 知的クラスター創成事業において、今度グローバル拠点形成が一つのテーマになっています。グローバルという言葉自体をどうとらえるかにもよりますが、これのスキームの対象となるのは、現在、知的クラスター創成事業が第2期、これは9地域ですか、それから都市エリア産学官連携促進事業が十箇所前後あり、これらの中から、さらにこの何件かを採択するのか、それとも新規なのか。
 それからもう1つ、具体的に、グローバルと言った場合、例えば今、環境とかエネルギーとか、そういったテーマでグローバルに海外企業や大学と一緒にやるということもあり得ると思います。共同研究と書いてありますが、海外企業や大学と一緒にやるときに、予算ですので、そのあたりの制限がどうしてもつくと思うんですけど、海外でも予算が使用できる、そういうようなスキームまで考えてあるのかどうか、そのあたりをまず伺いたいんですけれども。

【田口課長】

 すみません、そこについて詳しくお答えする立場にもないし、実を言うと、後ほど説明いたします産学連携拠点の形成支援の中で、このグローバル拠点をどういうふうに使っていくかというのを、科学技術・学術政策局のほうとも議論しております。その中で、このグローバル拠点自体は、もともと知的クラスター創成事業で広域化を進めていますが、これもグローバル拠点ですね。だから知的クラスターまではいかないけど、そこまでの成長をねらったような活動に対して支援するというのがもともとの趣旨でございます。したがって、後で出てまいりますが、産学官連携拠点の中で、グローバル拠点というのを設定しますけど、そこに選ばれたけれども、知的クラスター創成事業をやっていないよというところにこれを出すことを当面、想定して、始めるということになっております。

【松重委員】

 そのほか、経済産業省で産業クラスターとかやっていて、おそらく地域のほうもいろんな施策があって、それぞれの方向でやる。やはり地域としては、できるだけ方向性をそろえて連携をとられて、そういうような施策もおそらく経済産業省との連携が必要だと思うので、そのあたりの考慮もお願いできればと思います。

【田口課長】

 まさにこの次に説明させていただきます拠点の形成支援自体が、経済産業省文部科学省で地域を少し大きくとらえて、ベクトルをそろえて支援していきましょうよという施策でございますので、この次の議題で説明させていただきます。

【松重委員】

 あと、もう1点、ベンチャーの支援の件が新規として出ています。実は私もずっとかかわってきていて、おそらく各大学、今、50大学ぐらいベンチャー・ビジネス・ラボラトリーがあると思います。言われるように、活発なところもあるし、そうではないところも。ただ、もともとここは施設として利用されているところがあって、必ずしもベンチャー支援とまでは行っていない。そういった面からすると、1.5億ぐらいで、新しいことで刺激策としてはいいと思います。
 それで、実際にこれをやるときに、いわゆる理工系をベースに考えてあるところもあるかと思うんですね。研究費とか。必ずしもベンチャーというのは理系だけじゃなくて、文系との連携もありますから、そういう形で開発経費の枠組みというのは文系でもできるようなもの考えられると思います。
 それからもう1つは、これは施設であって、実は職員がついていない場合が多いんですね。そうすると、ベンチャーを育成するのに、指導とか支援をする人の人件費、そういったところもあれば、ほんとうに支援がプロモートされるのではないかと思います。そういったところまでは、これは考えておられないか。

【田口課長】

 なかなかリソースも限られていまして、はっきり申し上げると、そこまでは考えておりません。そこはむしろ大学の中でもともとVBLなどをつくろうとしたときに、アントレプレナー教育とか、あるいは起業支援を今、産学連携の事業の中でいろいろやっていますから、そういうものをきちんと活用してやってくださいと。この事業では、あくまでも起業主体、それから文系、理系の話が出てきましたが、基本的には理系のポスドク、今までドクターを出て、研究者の卵としてのポスドクしか行き場所がなかったけれども、起業家の卵としてのポスドクみたいなのがあってもいいだろうということで設定していますので、今、理系を考えております。
 したがって、CEOというよりはCTOになりたいという人のためのプログラムというふうに想定して今、制度設計をしているところです。

【白井主査】

 どうぞ。

【清水委員】

 連携人材の話が出ましたが、仕事の中核は人材だと思います。今、お伺いしてびっくりしましたのは、文部科学省管轄下だけで1,700名のコーディネーターがいらっしゃると。我々がずっとモデルにしたアメリカのAUTMでの調査によれば、アメリカの大学全体で900名なんですよね。いわゆるFTC、フルタイムで携わっている方に比べると、日本はアメリカの規模の倍以上であり、それで各大学におりますから、連携人材は3倍も4倍もいるのかもしれないと。
 にもかかわらず、実績からみると、言ってみれば1%、2%という状況だと思うんです。何が違うかというと、やっぱりコーディネートする人材の質が違うのではないかと。私も長いことやってきたんですけども、コーディネートを担う人がそれぞれ構想力と情熱を持ってやらないと成果はあがらないと思います。ちょっとお話にもありましたが、ぜひこのコーディネーターの質の改善を心がけていただきたいと思います。
 それから、先ほど御指摘があったんですが、大学だとか研究機関というアカデミアのほうから一方的にコーディネーションをやっても、うまく進みません。企業の会長、社長という方々はオープン・イノベーションと皆さん言われていますが、実際やっている現場サイドの方々は、一言でいえばライセンス・インが大嫌いです。要するに特別もめない限り、ライセンス・インしないと、これが言ってみれば日本企業の伝統的な考え方で、これを変えるためには、まさにトップの強い意向が重要であり、企業サイドでいいものを見つけてくる、企業の戦略に合ったものを見つけてくるという産業サイドからのコーディネーター的な役割、これはぜひ必要なんじゃないかと思います。
 例えばプロクター・アンド・ギャンブル、P&Gなんかは、CEO自らが「コネクト・アンド・ディベロップ」という大きなスローガンを示し、何と自分たちの新しい製品の50%は外のリソースを使えという手法をとり、見事に成功しているわけでして、まさにオープン・イノベーションを推進していく上では、企業サイドのコーディネーションが大きいと思います。また、そういう環境をつくる意味で、ライセンス・インを促進させる政策的な支援も必要だと思います。
 ついでにもう1つ、今までは個別の大学、個々の展開が多かったわけですが、御説明を伺っていると、大学間の連携だとか、大学と研究法人の連携だとか、これはリソースを大きくしていく上では非常にいいことだと思います。1つのテーマの下に立派な発明が集まれば、それだけプロジェクトが魅力的になるわけでありまして、海外からも注目されると思います。
 ただ、ここで問題になるのは、コンソーシアムだとか産学の大きな共同研究ということになりますと、その成果の知財の取扱いがうまく進められるかということです。特に企業とやった場合は、企業は過去の自分たちのやり方に固執していますし、いつもこれが障害になっております。せっかく個から群という、様々な知財を束ねた形に向かおうとしているのであれば、それに見合った形の共同研究の成果である知財を処理するやり方、これはいろんな処理の仕方があると思います。こうした様々な状況における知財の取扱いについての考え方をあわせて検討していただけると、ちゃんと地についた展開ができるのではないかと思いますので、よろしくお願いいたします。

【白井主査】

 大変貴重な。どうぞ。

【秋元委員】

 今、それぞれの切り口でいろいろな御意見があって、皆様方、御存じだと思いますが、実は日本の先端技術、あるいはiPS等を含めて、知財の戦略をどうしようかということで、官民挙げてコンソーシアムをつくろうという話が官民対話で実は昨年の4月ぐらいにありましたけれども、これはいろんな事情でうまくいかないでつぶれてしまったと。しかしながら、やはり日本から出たようなそういうすばらしい発明については、何とか知財として、日本としてやっていかなきゃいけないというようなことで、実は製薬協の13社が、何の見返りもなしに寄附金を出しまして、製薬協の中にそういう知財を支援するというプロジェクトチームができて、現在、昨年の11月から稼働しております。
 私が実はそれのリーダーもやっておりますけれども、もう既に7つないし8つぐらいの大学、あるいは研究機関を御訪問させていただいて、何かお手伝いできることがありませんかということで活動しております。その中で感じたことは、今、皆さん方が言ったコーディネーターの質云々どうのこうのはさておきまして、大学から、あるいは研究機関から出される出願について、全体的な戦略的な考え方が何もないと。
 それから、グローバルに、ここで例えば3ページ目の技術移転ということを考えたら、産業構造はグローバルにどうなっているか、どういうようなところに必要であるかと、こういうような戦略も一切ありません。3ページの左のほうで特許化支援というところがありますが、ここを見ましても、出願の費用等はかなり計上されていると。しかしながら、特許相談というところに入るかもしれませんが、特許を出願する以前から、そういうような戦略的な考え方をどう持ってくるか。それも全部やるのは非常に難しいので、重点テーマに絞って、これはグローバルに使う基盤技術であるとしたら、どういうふうな戦略的なやり方をするのかということを、出願以前に何らか相談できる。これはコーディネーターでもいいんでしょうし、ほかのところでもいいんでしょうけれども、そういうようなところに使えるような予算、実を聞きますと、やはり予算の中に全体に埋まっちゃって、そういうような相談するような、あるいは戦略を考えるような費用も出ないというような話もあるので、ほんとうに必要なようなものについては、戦略的な出願をする、グローバルにどういうふうにする、そういうふうにしたら初めて企業としても、技術移転のときに、非常にすばらしい基盤技術であるというふうに考えると思うんですが、そういうようなところをぜひ大学でやれるような予算化のシステムであるとか、あるいはそういうところを事前に出願以前に既に考えるような何らかのシステムですね、こういうものをぜひつくっていただきたい。私ども研究者、知財担当、両方まぜて回っていますと、ものすごい損をしているというか、戦略性を出していないということを痛切に感じていますので、ぜひそういう予算の使い方、あるいはそういう戦略性、グローバルを持った戦略性、これをどうするかということについて、お金を使える、あるいはそういうシステムをつくるということをやっていただきたいなというふうに思います。

【白井主査】

 ありがとうございました。

【西岡委員】

 1つ意見をいいでしょうか。こういう国による支援活動の本来の目的は、支援のおかげで、例えば150人のポスドクが2年食い延びて、それで平和にどこかに就職できましたから成果があったと言うようなものではなく、成果は、こういう支援でいい研究ができ、それをもとに、いい事業ができて、結果として日本の競争力を強化するというところまで行かないのでしょう。
 一方、技術系ベンチャーは、半導体やバイオが最たる例ですが、多額の資金が要ります。こういったベンチャーを、ここで議論した施策で成功まで導けると言うような甘い考えは私たち自身がまず捨てるべきだと再度認識すべきです。ベンチャーの成功まではベンチャーを取り巻く多くの環境を整えなければなりません。たとえばベンチャー・キャピタル(VC)もその一翼を担う立場にあります。しかし、日本のVCの一人としての自戒を込めて申し上げれば日本のVCは大変未成熟です。アメリカのVCのようにリードを取れません。アメリカのVCがリードを取ると40億、60億、100数十億までというように成功まで引っ張っていく例が多くあります。ところが日本のVCはファンド規模の大きいところでも、1件当たり1億、5000万と厳格なデュー・デリジェンスもせずに統計的に張っているというのが、申しわけないけど、日本のベンチャー・キャピタルの実態なんですね。 もちろん、VCの話はベンチャーを巡る支援体制の問題点の一面ですが、他にも問題点は山積しています。そういう中で先程来の議論による文部科学省の支援だけでベンチャーが助かるはずはないという視点を再認識すべきだと思います。
 もう1つ、コーディネーターの資質に関する議論がありましたが、本来、まずベンチャーがコーディネーターに頼っているようなものだったらそもそも起業はやめておいたらいいんですよね。コーディネーターになる人には、一般論ですが、イノベーティブな人はいませんよ。ちょっと言い過ぎですが、何かほんとうに成果を出せるような経済原則に則った仕組みづくりをしないとダメだと思います。

【白井主査】

 大変、有意義にして厳しい意見ですが、何かありますか。

【田口課長】

 よろしいですか。すみません、まず事実関係で、先ほど1,700人と申し上げたのは、経済産業省傘下も含めた、あるいは地方公共団体も含めた全体の数でございますので、大学に出入りされている方は、正確に数えたわけではありませんが、おそらく300人ぐらい。先ほどのアメリカの900に対応するところは、そうだと思ってございます。
 御指摘の知財を戦略的にという話につきましては、きょうちょっと資料にはなかったんですけど、来年度から新規の事業で、iPSもそうですけど、JSTの戦略的創造研究推進事業の成果のうち良いものを、これは知財的な観点も入れて、要するに知財のグループをちゃんと最初から設定して、出口に幾つかの産学の共同プロジェクトで持っていくという仕組みを、まだ金額的には来年8億円で小さいですが、まずそれをやってみようという話になっていますので、我々もそのおっしゃったことを意識して何とかしようというふうに思ってございます。
 それから、最後のベンチャーの話につきましては、おっしゃるとおりだと思っていまして、そういう中で、政府全体としては、今、経済産業省がこれから法案を提出しますが、官製ベンチャー・キャピタルに近いんですが、産業再生機構に似たようなスキームで、俗称でイノベーション創造機構と言っていますけど、要するに民間のキャピタルが不足している部分を政府資金でやっていくという仕組みを今つくろうとしているところでございます。
 それから、コーディネーターにつきまして、人材の幅は確かに広いです。それで現実に私がおつき合いしている、あるいは産学官連携コーディネーターから、ベンチャーの社長に転身される方もいらっしゃいますので、必ずしもコーディネーターというのは調整役だけじゃなくて、プロデューサー的なこと、あるいはアントレプレナーを持った方もいっぱいいらっしゃいますので、その辺の個性がやっぱり人によって大分評価が違うねとか、もちろん大学の先生も一緒でございまして、たくさん人数がいれば、いい人と悪い人といるということはありますが、そこの平均値を上げていくために、人材育成も含めてやっていきたいと思っています。

【白井主査】

 すみません、次の議題もあるので、後でまたちょっと機会があったら。
 一応、この議題を、いや、大変すばらしい、いろんな御議論をいただけたと思うので、ほんとうはずっと続けたほうが担当としてはありがたいのかもしれないんですが、一応もう1つ議題がありますので、それと合わせて、またもし関連ありましたらいただきたいと。
 では、次の議題について、それでは説明してください。

 (2)産学官連携拠点の形成支援(案)について

  • 資料3に基づき、事務局から説明した後、その内容に関する質疑が行われた。内容は以下のとおりである。

【白井主査】

 この件に関して何か御質問等、どうぞお願いします。

【武田委員】

 今まで知的クラスターとか、いろんなプログラムがそれぞれ、ある意味では独立に走っていたと思いますが、それをいい意味でコーディネートして、有効な投資に結びつけていくという意味では非常に期待を持っています。私自身の経験でいいますと、四、五年、シリコン・バレーで研究開発とかベンチャー投資をやって、アメリカ型のイノベーションを生み出す仕組みとしてのクラスター、これは皆さん御承知のように、基本的には民間のアクティビティーが強いんですけれども、やっぱりその中心に、シリコン・バレーであればスタンフォードであるとか、ボストン・エリアであればハーバード、MIT、最近、バイオで伸びているサンディエゴ地区でいえば、UCサンディエゴとか、大学というのがかなり中核的な役割を果たしていると。
 一方で、ここ一、二年、ヨーロッパの大きな複数の国でのクラスターのプロジェクトのアドバイザーをさせられて、昨年その1つに行ったんですけれども、ヨーロッパのほうは、どちらかというと研究機関、ドイツであればフランホーファーであるとか、フランスであればCEAとか、研究機関が加速器であるとかいろいろなものを持つところに、むしろ大学を敷地に呼んでというようなことで、どちらかというと公的研究機関の役割が中心をなしていると。そういうような情勢を見ながら、日本ってどういうふうに行くのかなというあたりもしっかり見据えて、政策の実施が必要だと思うんですね。
 その場合に、今までを見ていても、若干気になるのは、ほんとうに配ったお金、いろいろなプログラムを文部科学省からとったり何からとったりというお金を、地域のほんとうの投資として使うためには、やっぱりある意味で地域興しというプランをつくり、かつ責任を持ってそれを進める母体というものが何か必要ではないかと。アメリカの場合、そういう点では参考にならなくて、ベンチャー・キャピタルとかどんどん独自にやっています。ヨーロッパは、この間行きましたら、NPOみたいなのをつくって、例えばグルノーブル・エリアは、1つそういうNPOがあってとか、そういうような格好で、いったんNPOが受けて、そこで大学とかベンチャーとか、その地域で頑張ろうというところがそこに提案して、そのNPOでもって評価をして配分するというような仕組みなんですね。
 これも1つの参考であって、こうやれというわけじゃありませんが、今までの日本の、拠点をやってきた情勢を見ると、どこかやっぱりその地域としての中立的というか、責任を持ってその地域を育てるんだという何か母体を、地元の経済団体とか学識者の方とか自治体や何かでもって、やっぱり何かコア組織を1つつくって、そこでこれまでの投資の見直しだとか情報の共有だとか、何かそういう仕組みを前提にしないと、こうやってプログラム上で今までこうやっていて、これも続けるけど、何か足りなそうなところとプラン間の整合をとるために、追加的にあげますというだけではどうかと思いますので、せっかくこの機会に、何かそういう仕組みは少し考えていただけないかと思うんですが。

【白井主査】

 はい、どうぞ。

【西山委員】

 基本的な考え方のところですけれども、2つ、地域中核産学官連携というのと、グローバル産官学連携拠点、あるんですけども、これを見ていますと、この基本的な考え方は、修正・改善型施策のように見えるんですね。これを見ると、どういうことで選びましょうかというのを見ますと、5ページですか、備えるべき機能、もううっすらと選ばれる対象がかなり限られていて、独創的なことで最初からやろうとする人はなかなか選ばれにくいと思います。例えば既にその後の地図にも浮かび上がっていますように、けいはんなだとか書いてありますね、福岡・北九州・飯塚地区とかね。
 だから、これを打って改善していくということについては、もちろん悪くする人はだれもいないんだから、よりよくしていこうという考え方は大いに結構なんだけども、もう1つ大事な点は、例えばグローバル産学官連携拠点といったら、おのずともうほとんど日本で今、努力しているようなところが焦点に浮かび上がりますよね。だけど一番大事なのは、日本の全体を考えますと、2つあって、例えば沖縄だとか北海道だとか、あまり手つかずで、経済が活性化していないようなところに国が重点的に支援を行い、従来よりはるかに活性化をしていただきたい。例えば北海道は人口500万人ですよね。それと対すると、国が違うから、断定的に比較はできないけれども、デンマークは1つの国だけど、約500万人なんですよ。地政学的にも似ていて、デンマークのほうがどれほど経済的なレベルが高くて、北海道は北海道開発庁があるくらいですから、非常に受け身な状態で運営されていますね。そうすると、もう少し権限と能動性を与えれば、デンマークほどにはならないかもしれないけれども、北海道は飛躍的に活性化する地政学的な価値を持っている地域なんですね。
 ですから抜本的に、例えば九州全体をどうするかとか、そういうような見地で国としては本来ならば考えるべきであって、こういうところにお金があったらとか、多少、悪くしようとして進んでいませんから、必ず改善していく方向で、そこに手を打っても、そういうところはもともと改善しますから、デルタの効果がより小さいように僕は思うんですね。もちろん手を打てばマイナスは1つもないと思うけれどね。それが1つ。
 もう1つは、今まで努力はしているかもしれないけれども、これを提案しようとすると提案しにくいという地域に、やっぱり今まで非常に低いレベルにあったと思っているんだけども、やればおもしろいねというようなことと、やっぱり両極をもっと考えたほうが私はいいように思いますけどね。これだと、既存に挙がっているところについてお金がついて、やや改善させていくというような方向のお金のように見えちゃう。私のこれは問題提起です。

【白井主査】

 はい。

【柘植委員】

 産業人から見ると当たり前なのですけれども、行政からみるとこの産学官連携拠点の形成支援事業を文部科学省と経済産業省がここまで初めてやってくれたかという思いです。
 資料1で何人かの方が「ほんとうにこれで投資して、最終的な社会経済的な価値までたどり着くとは思えない」という趣旨の御発言もあり、皆さんから随分、資料1での施策だけで社会経済的な価値までほんとうにつながるのかという、それが多分、共通の不安だったと思います。
 その不安の根本は、資料1でもどこでも議論されていない言葉、しかしアメリカに行くと必ず出てくるキーワードが、「インターフェース」という言葉です。つまり1つの企業、あるいは1つのベンチャーがもちろん入り口からほんとうのIPO:イニシャル・パブリック・オファリングまで持って行けるならば、これはもうインターフェースは要らないかもしれないですけども、必ずどこかで受け渡し:インターフェースをしていくということが必要になってくる。
 資料1の中で非常に不明確になっているのは、いつの時点でどこに、誰にインターフェースで渡していくのかということがはっきり書かれていない、これが一番の、私から見ますと、あえて言えば欠点だと思うんです。そこを、私は文部科学省と経済産業省が企ててくれた資料3というのは、初めてと言っては怒られるかもしれませんけど、両省がしっかり考えて、国民の税金を使った科学技術投資を社会経済的な価値に結びつけていくぞという、つまり何を:whatというよりは如何に:howの強化を企て始めたと評価します。その意味で、私は資料3の新企画をまず応援するべきだと考えます。
 ただし、今までできなかったことをやろうとしているわけですから、これはむしろ企業的発想で、「失敗リスクをリストアップして、それをつぶしていく」というのが非常に大事な話であると思いながら資料3は見ました。

【白井主査】

 じゃあ、お願いします。

【原山委員】

 第3期基本計画の中に拠点形成数値目標を入れてあることで、かなりそれに引っ張られているところがありますが、この話をするときは、ちょっとそれを横に置いておいていいと思うんですね。
 地域にとって本質的に拠点とは何なのかと、国にとってのまた位置づけというものも考えなくちゃいけないわけなんですけれども、先ほどの、リストアップするときの、5ページに、拠点が備えるべき機能というところで相当のことが書き込まれているんですが、これまでの施策、これまでの実践から学ぶことは、機能を相当埋め込んだという実績がある、しかし、埋め込んだだけでうまく拠点として回る保障はないというのが実感だと思うんですね。ここで知恵を出さなくちゃいけないのは、どうやったら埋め込んだ機能がシステムとして回っていくか。また新たな機能を埋め込むという発想だけではなく、それを回すやり方を考える。
 その回すときに、一番肝心なのは、誰か本気で汗をかく主体となる人が必要なんですね。これは書類上に、主体は何とかですと書くのは簡単です。大概の場合、大学であれば総長の名前を出しますし、自治体であれば首長の名前を出すわけなんですよね。そこまではもう知的クラスターなどでやっているわけですよ。なんですけども、その方たちがほんとうに週のうちの何時間かコミットしてやっているかというと、大概の場合、やっていないわけなんですね。それで権限委譲して誰かほかの方がやっている。その人たちは、大概の場合、このプロジェクトの期間だけ雇われているわけなんです。
 そうすると、さっきのコーディネーターの話にもつながるんですけども、5年間実施して、その後どうなるかよくわからないときに、本気でやる人がどのぐらい出てくるかという話になります。まさにそれは地域の中から地域を変革させたいという人を掘り起こさなくてはならないんですね。知的クラスターも、もうこれは第2期になって、産業クラスターも第2期なんですけれども、何らかの芽が出てきているところとそうじゃないところの差別化が相当出てきているわけです。うまくいっているところは、やはりそこに誰か人がいるわけです。なので、それをうまく、ほかの地域がそういう状況になるにはどうしたらいいかということに知恵を絞る必要があります。
 これを施策として打った場合には、既に誰かがおっしゃいましたが、このクライテリアに引っかかる地域は、もう初めから大体わかっているわけで、そこにまたさらに何か御用聞きに行って、今必要なものは何ですかと言っても、もうとっているところは、資金はそれなりにもっていて、なかなか使い切れないというところもあるわけですね。なので、これを有効に使うためには何をしたらいいかと、ちょっとこれは実際に何をやるのかというところが、支援等、7ページのところはあまりにもざくっとしていて、もちろんフレキシブルに対応するという意味ではいいんですけれども、もうちょっとこれを詰めないと、この施策の付加価値が何だかというのがなかなか見えてこないというのがあります。
 それから、先ほど別の視点でも、三木さんが多様性ということをおっしゃったんですけれども、やはり日本の中の地域を金太郎あめのように発展させちゃいけないと思うんですね。そのためには、地域が自分たちの力というものを、うまくリソースを活用しながら、要は世界的に戦えるような地域にしなくちゃいけない。ということは、一律じゃなくて、複数の多様なものが欲しいわけですね。その多様性というものを地域の方たちが自分たちの価値観として持っているかというと、そうじゃないところが多いのが問題で、その点の認識も変革させていかなくてはいけない。
 なので、相当な仕事だと思います。でも、やりがいがあることです。とは言うもののやっぱりうまくやらないと、また何とかクラスター計画の二番せんじかと言われてしまうと怖いので、それだけは避けましょう。

【白井主査】

 どうぞ。

【平井委員】

 2つあるんですが、まず1つは、これは文部科学省と経済産業省が合同でいろいろ検討されてこれをつくって、非常にすばらしいと思うんですけども、これはもともとは関係府省がこれを集まって議論するというふうになっていますよね。そうすると、やはり厚生労働省、農林水産省、国土交通省、場合によっては金融庁とかそういった各省庁とのさらなる連携が不可避ではないかと思うんですが、その辺のスケジュール感とか、今後のちょっと見通しを聞きたいというのが1つ。
 あともう1つは、先ほどちょっと西山委員からお話があったところと関係するんですが、私はもともと知的クラスターの地域科学技術何とか委員会ですね、あれは一番最初から入っていまして、もともとは知的クラスターをつくろうと、あれ1個のプロジェクトしかなかったんですよね。あれは、要するに集積度を上げて、国際的なシリコン・バレーみたいなクラスターをつくろうというのが最初だった。地域に対するこれまでのいわゆる公共事業みたいな、そういう発想ではなくて、集積度を上げていって、競争力あるクラスターをつくろうということで知クラをやって、その過程で、ああ、もう少し小ぶりなのでいいのあるねというんで、都市エリア産学官連携促進事業をつくったんですよね。そのうち、都市エリア産学官連携促進事業も一般型、発展型と分かれて、知的クラスター創成事業も1期、2期とやって、いろんな形ができてきて、実は北海道も1回、バイオで頑張って知的クラスターをやって、ITのものもやりましたね。ITカロッツェリアというのもありましたし、様々な取組をやっておるんですよね。
 だから地域科学の中では非常にやってきていて、その中で大きい特徴が、変遷としては、当初は集積度を上げていくという、そういう発想が、だんだん地域振興とか、どうやったら地域を盛り上げられるかという色彩が少しずつ付加されて、変化してきているんですね。これが、また拠点という、今こういう概念が入ってきて、さらに今後新しく変化していくと思うんですけども、そういうずっと歴史の中にあって、大事なことは、その歴史を踏まえて、地域振興って一体何なんだろうと、それは従来の列島改造論とかあれとはまた全然違うものがあると思うし、そういうイノベーションと地域振興をどうやって考えていくかという大きな枠組みでとらえないといけないんじゃないかなという気は個人的にはしていますけどね。

【田口課長】

 他府省との連携の話なんでございますが、今、そこに資料にございますような4局6課体制でやっておるわけですが、今の段階では、これ以上広げると進まないだろうということで、まず機動性を重視して、ともかく走らせましょうと。これから拠点を選定してくると、拠点の中でやっている事業ごとに、関係府省というのがおのずと、いろいろ濃淡も含めて出てくるだろうと。そこで、働きかけというか、他府省のほうにしみ出ていこうというふうに思ってございます。
 ざっと考えるだけで、農林水産省と厚生労働省、厚労省の場合は、どちらかというと地域単位というよりは、むしろ今、5カ年戦略とかで3府省でやっていますので、どちらかというと既成とか全体的な話になりますので、昨年選定しましたスーパー特区がございますね、あそこでほんとうに既成のほうでファースト・トラックが使えるならば、こっちにも適用してもらうとか、そういった形で、まずはちょっとこの体制でつくってやろうと。
 そうでないと、最初から全省庁で構えると、何が起こるかというと、この選定作業自体を大学に持っていきましょうねという話になって、ちょっとふわふわっとした中で進んでしまうので、少なくとも現場を知っている役所の担当者がまず、これもちょっと議論はあるんですけど、実を言うと、我々の中では、例えば10カ所と20から30といったときに、それぞれかなりイメージできるところが具体的にあります。ただ、それぞれのところが、例えば今の状態で産業クラスターとか知的クラスターとか都市エリアとかいろいろやっていますけれども、その中でほんとうにうまく動いているかというと、なかなか動いていないわけですね。
 先ほど、知的クラスターは大学の連名だという話をしましたけど、実を言うと、あれは首長さんの名前だけで申請を出してもらっていて、大学は名前かしみたいなところがあって、ほんとうに大学の執行部が知的クラスターの事業にコミットしているかというと、私も両方やってよくわかりましたが、あまりコミットしていないんです。
 という話もありますので、そういう今までのいろんな事業を眺めたときに、ちょっと反省し、経済産業省とも議論しながら、これをうまく進めていきたい。要するに失敗リスクは何かというのをぜひ皆さんにご教示いただいて、それをつぶしながら、うまくいくように進めていきたいと思っております。

【白井主査】

 ちょっとすみません、時間がなくなってきたので。

【三木委員】

 地域のことなので、ちょっと発言します。こういう地域での拠点、しかもグローバル拠点ということになると、この5ページに書いてあるような機能をほんとうに統合的マネジメントするのがどこかということに尽きるんだと思うんですね。
 例えば地域の中ですぐイノベーション・プラットフォームみたいなものをという話が出たら、県の附属の三セクのどこかの財団にそれは置けばいいとかいう非常に単純な話になっていって、これを大学と地域の企業と地域の自治体がみんなで出資してLLPをつくるとか、こういうことをやらないと、このとおりにはならないと思うんです。それをやろうとすると、実は大学の出資規制というのがいろいろありまして、この辺にも穴を開けないと、ほんとうに地域できちんとしたイノベーション・プラットフォームができない気もします。従来の中小企業振興策とは違う、そういったものがつくれないというふうに思っています。統合的マネジメントをやるためにも、そういう次の規制緩和が必要じゃないかということを僕は感じています。
 それからもう1つあるのは、別の施策でITポートフォリオの話が少しありましたけども、これも単独の、地域の大学でポートフォリオをやったって限られているわけですから、難しいと思うんですね。そうすると、例えば今、国立大学第2期中期目標・中期計画をちょうど立てている最中、この時期に、大学がそれぞれの特色をつくって、どこの大学と一緒になってポートフォリオを作ってみる。さらに、学が一緒になって産と一緒にやるようなそういうことを、こういう地域の施策を県に閉じずに、もうちょっと広げて、うまくそういうやり方ができればいいなというふうに思っています。
 以上です。

【白井主査】

 それじゃ、手短にお願いします。

【馬場委員】

 経済産業省と文部科学省が共同でやる事業というのは、大変結構だと思います。昔の通商産業省と文部省の死闘を演じた時代を考えると、考えられない提携だと思うんですね。そこで2つ注文があるんですが、1つは、一種の規制緩和ということですが、自由度をどのぐらい与えるかということで、金の使い方ですね、特に文部科学省と経済産業省と両省から出ているわけですから、ユーザーの立場からすると、どうも両省の温度差が違うとか、制度の整合性がとれないとか、そういうことがないように、自由度をどのぐらい与えるかという。先ほどからも出ているように、短期的な期限つきの雇用創出とか、失対事業に終わってしまうということにならないように、ぜひ制度を運用してもらいたいなということが第1点。
 それから第2点は、この9つの地域が全部成功するとはとても私は思えない。別に悲観的に言っているわけじゃないんですが、結果的には、多分この中で成功するのは、これとこれとこれと3つぐらいちょっと思い浮かぶんですが、あとは多分なかなかうまくいかないんではないかという心配が出てくるわけです。
 それで、注文としては、この評価体制をどのようにするのかですね。その評価も、終わって全部を評価するというんじゃなくて、途中で成功事例が出そうなところには重点的にさらに何か支援策をつぎ込んでいくという柔軟な評価制度を、生きている評価制度をぜひ使ってもらいたいと。それで成功事例を最低でも1つ、2つ出して、あれは知的クラスター創成事業の第2期で出たよというのが後世に残るようなものを1つでも出したら大成功だと思うんですね。そのためには、何年間かやるうちに、柔軟な評価制度で、重点的にできそうなところには支援を集中してやると、そういうことが重要ではないかと思います。

【野間口委員】

 いろいろ意見出ましたけど、私は素晴らしいことだなと思っております。両省が力を合わせてやっていただくというのは大変いいことだと思います。
 いろんな地方へ講演に行くんですが、先ほど来出ている大学の総長さんとか学長さんとか、首長さんが代表者として出されるような資料では、あんまり特徴が出ないんじゃないかと。中央から流れていった人がほとんどですから。地域の商工会議所と地域の大学連携がやっているようなところ、展示会とかそういうところをついでに見せられたりしますけど、ほんとうに地域の特徴がよく出ているなと。ここは、9ページの体制で検討された後、具体的な例を取材してみようかというときは、ぜひ地元の意見の聞き方を工夫していただきたいなと。平均的な優等生の意見を聞いてもしょうがないと思いますから、そこを聞いていただきたいと。そうしますと、5ページのいろんな要件がかなり実のあるものに変わってくるんじゃないかなと思いますので、大いに期待しています。

【白井主査】

 ありがとうございます。

【森下委員】

 さっきのスーパー特区で出た成果から、ぜひこちらに活用していただきたいと思います。それが出ないとライフサイエンス領域は意味がないと思いますので、ぜひお願いします。
 もう1点は、やっぱりこれ、日本国内の評価じゃなくて、世界的にこれで出たクラスターというのが評価されるものをつくらないといけないです。1つでいいですから、ほんとうに上海並みのものをつくるというのが私は一番大事なことで、戦略と集中で、金額も非常に柔軟性を持って、やっぱり成功しているところにはどんどんつけるべきだろうと。各地方、正直、つけ過ぎてじゃぶじゃぶのところもあるのが事実だと思うんですね。私はいろんなところの事業の審査や評価に関係していますが、そういう事例も存在しています。やっぱりそういう意味では、しっかり評価するということと、金額的なメリハリというのは、ぜひつけていただけたらというふうに思います。

【倉持審議官】

 すみません、一言だけ。
 ありがとうございます。ほんとうに委員からの御指摘、大変、重要だと認識しております。経済産業省とも話をしておりますけれども、お互いの悪いほうに水準が合わないように、危機感をしっかり持って、タッグマッチをしっかり組んでいきたいと思います。
 それから、幾つか拠点の数の構想もありますけども、事務局から説明しましたように、準備も大変ですし、始めてから進化もするものだと思いますから、最初から全部動くというよりは、段階的にそういうことも考えたいと思いますし、どちらかというと今いろんな施策を打っているものを、どう横の軸を通すかということでこれはやりますけれども、先ほど御指摘のありました、全く新しい観点をつくっていくという視点が足りないんじゃないかと、こういうご指摘につきましても、ちょっと進化の過程の中で、よく忘れないで取り組みたいと思います。ありがとうございます。

【白井主査】

 ありがとうございました。まだまだ実はたくさん皆さん、お話、しゃべりたいことはあるんだと思うんですが、すみません、何かいろいろ時間が組まれていて、そろそろまとめというか、終わらなきゃいけないものですから、特段のことがなければ、ここのところで閉めたいと思いますが、きょう、大変いろんな貴重なご意見いただいたと思います。若干、本題に少し近づいているかなという意味では、この会も進歩したんじゃないかというふうに、皆さんそういう印象を持たれたんではないかというふうに思いますが、ただ、これは具体的にやっぱり反映していかなきゃいけないと。
 そういう意味では、もちろん文部科学省、あるいは経済産業省も含めて、進化はしている。進化はしているんだけど、どうももう少しこれだけお金を使う、一応、累積してみると、相当のお金になっているんですね。そういう意味でいうと、先ほど言われた、全部、失態事業に使っちゃったんじゃしょうがないんじゃないのという意見、批判は出てくるだろうと思うのでね。だけど、一方で成功しているものも確かにあります。我々やっているほうからすると、少しはやっぱり効果もあるんだよと言いたい面ももちろんある。あるけれども、目覚しいかと言われると、うーん、もうちょっと何とかならないのかなというのは常に考えてきたところだと思うんですよね。
 そういう意味で、今日の御意見、大変貴重だと思うし、先にやるべきことというんでしょうか、こういうものをマネジメントしてほんとうにやっていくんだとすれば、日本ではどういうふうにすれば成功する確率が少しでも上がっていく、あるいは今ちょっと時代が変わりました。景気もこうだし、それから地域振興とか地域活性化とかいうような切り口も大きく出てきた。そういうような状態の中で、どんなふうにプロジェクトを動かせばいいのか。それから国立大学法人の問題もあります。こういうところも重ねて、ぜひ文部科学省はいろんなところへ全部、手をつっこむことができる省庁でなきゃいけないという意味で、今日の意見をぜひ生かして、いろいろやっていただければと。
 しかし、激励している方もたくさんおられましたから、ひとつすばらしいことしのこの計画を実行して、できるようにしていただければと思います。 一応、第4期というのがこれで終わるということのようですが、多分、似たようなものが、また皆さんとやらなければいけないんだと思いますが、とにかくいろいろ貴重な時間を皆さんいただきまして、ほんとうにありがとうございました。
 きょうはこれで閉会にさせていただきます。

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