産学官連携基本戦略小委員会(第1回) 議事録

1.日時

平成22年4月26日(月曜日) 14時~16時

2.場所

文部科学省東館3階 3F3特別会議室

3.議題

  1. 産学官連携施策の効果と課題について
  2. 大学等における産学官連携機能の戦略的強化について

4.議事録

 午後2時00分開会

【山﨑技術移転推進室室長補佐】

 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第5期科学技術・学術審議会技術・研究基盤部会 産学官連携推進委員会 産学官連携基本戦略小委員会の第1回を開催いたします。

 本日は、小委員会の最初の会合ということで、冒頭、事務局が進行を務めさせていただきます。本日、事業仕分けの関係で幹部がおくれて参りますので、ご了承いただきたいと思っております。
 本日はオブザーバーとして科学技術振興機構の菊池部長にご出席いただいているところでございます。また、岩手大学の齋藤副学長及び岩手銀行の稲垣部長にご出席いただいておりまして、後ほどご講演をいただくことになっております。

 初めに、委員の出欠確認と配付資料の確認をいたします。まず、委員の出席の確認でございます。欠席のご連絡をいただいておりますのが澤井委員の1名でございます。竹岡委員、森下委員は少しおくれておりますが、それも含めますと出席は10名ということでございます。

 続きまして、配付資料の確認をさせていただきます。議事次第を御覧ください。その4に配付資料がございますが、まず資料1は、この産学官連携推進委員会の産学官連携基本戦略小委員会の委員名簿でございます。続いて資料2でございますけれども、日本のイノベーション牽引エンジン構造強化の視点からの産学官連携基本戦略の提唱ということで、これは後ほど柘植委員からご説明をいただくような形になっております。資料3は産学官連携施策の効果と課題に関する分析ということで、東京大学の渡部俊也先生からご講演をいただくことになっております。
 それから、資料4-1でございますが、産学官連携基本戦略小委員会の検討事項についてということになっております。資料4-2でございますけれども、大学等における産学官連携機能の戦略的強化に関する参考資料ということでご用意させていただきました。それから、資料5が、いわて産学官連携推進協議会(リエゾン-I)の活動についてという資料でございます。資料6は産学官連携基本戦略小委員会のスケジュールについての資料でございます。参考資料の1は、科学技術・学術審議会の関係法令等という資料を用意しております。このほか机上に用意しております配付参考資料は以下のとおりになってございます。

 それでは、会議に先立ちまして産学官連携基本戦略小委員会の発足に当たりまして、事務局を代表いたしまして、研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室長の渡辺より一言ごあいさつ申し上げたいと存じます。

【渡辺技術移転推進室室長】

 第1回産学官連携基本戦略小委員会の開会に当たりまして、一言ごあいさつを申し上げます。

 委員の皆様におかれましては、ご多忙の折、本小委員会の委員就任を心よくお引き受けいただきまして、また、本日の会議に出席いただきましたことを厚く御礼申し上げます。本小委員会は4月14日に産学官連携推進委員会のもとに設置され、今後の産学官連携の基本戦略について専門的な観点から調査、検討を行うことを目的としてございます。我が国において科学技術空洞化等の成長戦略を実現していくためには、大学で生まれた研究成果を持続的・効果的にイノベーションの創出につなぐ産学官連携活動の推進が非常に重要でございます。昨年12月に作成された新成長戦略の基本方針においても、知的財産の適切な保護、活用や産学連携の推進などが提言されてございます。
 このため、大学等の研究成果を社会に還元し、持続的なイノベーション創出に実現するための重要な手段である産学官連携の基本戦略について調査、検討を行う当小委員会の位置づけは大変重要なものでございます。委員の皆様方にはそれぞれのご専門分野、あるいはご知見に基づきまして、さまざまな観点からご意見を承りますようお願い申し上げます。よろしくお願いします。

【山﨑技術移転推進室室長補佐】

 それでは、主査及び主査代理につきまして説明いたします。参考資料の1をごらんください。その8ページにこの産学官連携推進委員会の運営規則がございます。最後のこの参考資料でございます。この8ページに第2条に小委員会というのがございます。この3項に、この主査につきましては、この小委員会に属する委員等のうちから委員会の主査が指名する者がこれに当たるというような規定になっております。また、第7項のほうをごらんいただきますと、小委員会の主査に事故があるときは、当該小委員会に属する委員等のうちから小委員会の主査があらかじめ指名する者がその職務を代理するということになってございます。
これによりまして本委員会の主査について、産学官連携基本戦略小委員会の主査は、産学官連携推進委員会の白井主査から西山委員を小委員会の主査として指名されております。また、主査代理につきましては、西山主査から柘植委員を小委員会の主査代理として指名されておりますことをご報告申し上げます。
 なお、本小委員会の運営につきましては、産学官連携推進委員会運営規則、この8ページの運営規則に基づきまして行ってまいりたいと思います。

 それでは、西山主査、議事の進行をよろしくお願いいたします。

【西山主査】

 西山でございます。主査の責めを仰せつかりました。少し振りかぶりますれば、日本が活性化してそのプレゼンスを上げていくということにつきましては、日本にとってはもちろんのこと、世界にとっても重要だと私は考えております。その中の一要素でありますけれども、産学官の連携活動が一層強化されていくことも、その一翼を担うことだと思っております。私自身は、もとより微力でありますので、本小委員会の専門委員にご就任いただいております委員の皆様方のご協力のもとにその責めを全ういたしたく思っております。今後、産学官連携の基本戦略について調査、検討をお願いいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、早速でありますけれども、柘植主査代理より一言ごあいさつをお願い申し上げたいと思います。

(柘植主査代理より挨拶及び資料2の説明)

【柘植主査代理】

 柘植でございます。主査代理を仰せつかりまして、ごあいさつとともに1つ、簡単ですけれども、この資料2に基づきまして、少し時間をいただいて私の主査代理としての思いを述べさせていただきます。
 

 この小委員会の命題が基本戦略を立てるということでありまして、基本戦略、産学官連携の基本戦略、いろいろな視点があると思います。その中で私としては、その1つの視点として表題に書きましたように、日本のイノベーションの牽引エンジン構造強化という、これが基本戦略の1つになるのではないかと思っておりまして、これからの議論の中の1つのアジェンダに提案したいと思います。
 ページを1枚開いていただきまして図1ですね。これはイノベーション牽引エンジンの変化を日米で比較して私なりにまとめたものなのですけれども、よくアメリカ、米国の場合の、いわゆる中央研究所時代の終焉というのはもう10年以上前からの話で、今、アメリカは大学とベンチャー企業とで、それをまた支えるベンチャーキャピタルというもので、一言で言うと教育研究イノベーションの三位一体が非常に強固に動いていると私は評価しております。それに対して日本の変化は、かつての企業の中央研究所、あるいはNTT等の国を支えていた国研が民営化された結果、現在、ここに抽象的に書いた構造になっていると思うんです。あえて破線で書いたのも、それぞれの組織自体もイノベーション牽引の中で弱い。それ自体も弱い。ましてその研究開発法人、企業の研究所、大学を結んでいるこのパイプも破線で書かざるを得ないぐらい弱い。つまり、教育研究連携が非常に脆弱であって、日本のイノベーション・パイプライン・ネットワークというのは非常に脆弱だということが基本認識であります。
 イノベーション・パイプライン・ネットワーク、一言で言うと非線形・確率的な性格と私は言いますが、横軸がいわゆる知の創造の多様化、学術領域だと思います。縦が知の創造から最終的に市場経済的な価値、社会的な価値であるイノベーション、さまざまなステージがあるのですけれども、このまさに非線形・確率的と言いましたのは、派生技術の活用で初めてイノベーションになったり、あるいは最初からのプロジェクトも他の技術の熟成がなかったら起きなかったというような事例があります。それから、研究者同士の融合というものがなかったら起きなかったし、それも非採用の技術でも結果的に派生技術によって新たなイノベーションが起きたという事例がたくさんあるわけですね。ただ、非常に大事な話は、Back to Scienceのメカニズムを持っていたかどうかというのも、この間の国際賞をとられた岩崎先生の垂直磁気記録なども産業側の卒業生が大学にもう1回、Back to Scienceを持ってきたということで、私は教育と不可分だと思います。
 それで、まさに教育と科学技術とイノベーション政策の一体化が必要だということを確信しております。それを先ほどの非常に脆弱な三者のものをこれに張りつけてみますと、大学が教育研究を担っていまして、研究開発型の法人、今、研究型の独立行政法人でしょうけれども、どちらかというと目的基礎から応用のあたりをねらっていて、当然、産業側のほうは社会経済的な価値を担っているわけでありまして、ここのところのフローとインターフェースということですが、このあたりがまだ非常に脆弱なために先ほどの矢印が、パイプが破線で書かざるを得なかった。これは人材という、これを支えているのは人材でありまして、私はよくこの絵を使って科学技術・学術審議会の人材委員会の昨年の8月の提言にもこれを起こしたのですけれども、いわゆる世界をリードするイノベーションというものは、技術の高さ、それから、横がスペクトルでありますけれども、Type-Dという、いわゆるDifferentiatorの科学技術創造人材、科学者が主に担うと思います。
 Enabler技術の創造人材、これは科学者と技術者のコラボレーションが必要だと思います。それから、やはりイノベーションを起こすものは、まさに基盤科学技術と物づくり力という、この技術者・技能者の育成を怠ってはできないわけでございまして、もう一つ大事な話が、この巨大なイノベーション構造を単なる積み木構造、この1つ1つのコマを単なる積み上げればできるものではなくて、やはりイノベーション構造の縦と横の統合によって社会経済的な価値の創造をする。こういうことができる人材が不可欠であるわけです。この点について、私はこのType-Σ型と名前をつけたのですけれども、この育成のメカニズムは極めて脆弱だということもイノベーション創出構造を考えるときに我々は忘れてはならないわけであります。
 これは先ほどのイノベーション・パイプライン・ネットワークを構成する人材像の上に転写してみますと、D型はこのあたりを担ってくれていますね。やはり知の創造。それから、Enabler型の人材というものは目的基礎から応用あたりを担ってくれている。実際の社会経済的な価値を創造するのがB型人材でありまして、Σ型人材というのは、この縦と横、このインテグレーションをしてくれる人材であります。細かく議論はできないのですけれども、このΣ型は単なる、私はΣ型ではいきなりできないと思うのです。D型か、E型か、B型のどれかの能力を持った上で、初めてΣ型が成り立つということを確信しております。最終的にイノベーション創出構造牽引エンジン、イノベーション牽引エンジンの基本戦略は、私は日本の特色を生かした、かつキーワードはサステーナブルな牽引エンジンでなければならない。ということは、アメリカ型とはやはり違うのではないか。違ったほうが早いのではないか。

 すなわち、ここで言いましたのは、大学群と産業群に対して研究開発法人群というものを三位一体的に取り入れていくという、これが産学官連携の基本戦略の1つの視座になるのではないかと思って紹介させていただいたものです。それは言い方を変えると教育と科学技術とイノベーションの一体推進政策でありまして、今の総合開発会議の基本的な方法を見ると、科学技術、これに実は中ポツが入るのですけれども、それとイノベーションの一体推進政策ということの基本的な考え方が今あるように私は理解しておりますが、私は教育というものも忘れてはならないと思いまして、ぜひとも今回の基本戦略の小委員会では、こういう視点もアジェンダに入れていただきたいと思います。

 以上です。

【西山主査】

 どうもありがとうございました。

 それでは、今、柘植委員からご説明のありました内容につきましてのご質問やご意見等をお願いいたしたいと思います。何かございませんでしょうか。特にありませんでしょうか。

 では、私から1点だけ。科学技術イノベーションと教育、教育をそこに入れてあるのは非常にいいのではないかと思います。問題は、ただすべてのことは教育、科学技術、イノベーションとやりますと、すべてを一体構成するようになりますよね。役割がそれぞれ違うのだけれども、ですから、それが全部がそろってイノベーションに最終的につながっていくことは論を待たないのだけれども、やっぱりそれぞれのイノベーションといっても、時間的な軸があるように思います。10年後に達成すべきイノベーションと、極端な話、50年後に達成するイノベーションは、政策とか取り組みが変わらざるを得ないように思います。ですから、その場合に三者が、産業界と研究開発法人と大学の役割は、そういう時間軸でとらえた場合に若干役割が違うと思うのです。
ですから、それの主たる役割を担うときに、それぞれが協力するというのはもちろん当然のことなのだけれども、今一番、日本が求められていて、残念ながらうまくいっていないのは、10年後のイノベーション、何を達成するかということの実現性が非常にはっきりしていなくて、50年後に達成するような内容のテーマと10年後を区別しないで併存的に行っているという部分が問題であろうかと思います。もう1ランクブレークダウンしたときに、さらにクリアになるように、これ自体が決して間違っているのではなくて、全く正しいのですけれども、そのように私は思っております。

【柘植主査代理】

 まさに今、西山主査がおっしゃったことが今の科学技術イノベーション政策でも、私は大問題だと思っています。ですから、教育を切り離しても科学技術イノベーション政策の推進という命題においても、今、西山主査がおっしゃったことは何とか強化していかなければいけない。ただ、それと付随して、まさにこれは5年以内の話なのだ、これは見えないけれどもやってみるのだ。これがやはり高等教育の、特に大学院教育の場で、先生がこれは5年以内の話、これはわからないけれどもやるのだとか、こういうことを教育の場でも言えるということが非常に大事ではないかなと。そういう意味でやはり教育を今の主査がおっしゃった命題の中においても取り上げて、もちろんそれを実行するのは、例えば中教審の指令のもとで各大学が独自性を持ってやっていくと、こういう話は今までのやり方をあまり壊す気はないのですけれども、司令塔としては教育もアジェンダの1つに入れておかないと、主査のおっしゃった話の時間軸上の話もサステーナブルではないのではないか、こういうふうに思うわけです。

【西山主査】

 わかりました。

 ほかにございますか。

【秋元委員】

 いいですか。

【西山主査】

 はい。どうぞ。

【秋元委員】

 この日本型の研究開発法人という考え方、アメリカに比べて非常に新しいものを持ってきているのですが、具体的にイメージがわかないのですが、どういうようなものを考えておられるのでしょうか。

【柘植主査代理】

 これは実は全く別の場でもこの図6を使ったのは、今、仕分け作業がどんどん進んでいますね。

【秋元委員】

 はい。

【柘植主査代理】

 あの中でもアジェンダになるし、それから、あれは昨年の9月でしたか、閣議でこの研究開発型の、国立研究法人ですか、正式な名前は。それをつくるという方向になったわけですね。そのときに今の独立行政法人をどうするのかという大きな議論になってくるのですけれども、私はA独立行政法人をどうするかという議論の中にこの図の6に示したようなイノベーションの牽引エンジン、日本の牽引エンジン全体のデザインの中で、そのAとか、Bとか、Cというものをどうするかという議論をしないと、その行政法人だけの視点で議論すると、日本のイノベーション牽引エンジンを歪めてしまいますよと、こういうことでありまして、そのときにもこの絵を使ったわけです。ですから、具体的に言うと今の研究型の独立行政法人の強いところをこの牽引エンジンの中に組み込んでいく。当然、仕分け作業のように無駄な話を削っていくというのは当然のことなのですが、そういうイメージの中でこの図6は考えているわけです。

【秋元委員】

 そうした場合、強いところは強いのでうまくいくと思うのですが、弱いところがなぜ弱いのか、あるいはそこにどういうような人なり機能を持ってきたらうまくいくのかということについては、何かお考えはございますか。

【柘植主査代理】

 そうですね。それが2つあって、当該の独立行政法人も研究開発型の法人にするときに、その固有の話としてメスを入れて、その中に当然仕分け作業もあるのかもしれません。あるいは我々の科学技術・学術審議会の役割もあるのかもしれませんが、その個別の話とやはり日本が、例えば今回の新成長戦略などでもグリーンイノベーションとライフイノベーションと2つ立てたわけです。あれを実行するときの中でA研究開発法人はどういう役割をするのだということをはっきり設計の中に入れる。入れることができないのは外さざるを得ないですね。そういうふうに思いますが。

【西山主査】

 ほかにございますか。

 では1つだけ、こういうことをやっていこうとするときに最も重要なのは、結局、人材に帰結してしまうんですよね、最終的にはね。ですから、教育を入れているというのは非常に重要なことだと思います。そのときに私が端的に言いますと、日本は、最近問題が出てきたのだけれども、日本は明治維新のときから成功してきているわけです。明治維新のときには軍事大国を目指すといって軍事大国化を図ってきたわけですね、独立維持するために。だから、国民が能動的にそれに向かって、こぞって行動できるような目標だったわけですよ。それから、戦後の第2次世界大戦に負けた後の復興期は、経済大国を目指すということをやってきたわけですね。ですから、確かに経済大国になったんですよ。それから、軍事大国にもなったんです。
 ところが、1989年のピークを境に日本は何に向かっていくかは、今、はっきりしていないんですよ。そのときに1つは柘植委員がおっしゃるようにイノベーションをやる国だよというのも1つのそういう具体的な目標なのだけれども、今、日本はそういうことがはっきりしなくなってしまったことが日本人全体の力が出なくなった1つの根源的な原因の1つだと私は思っています。そのときにやはり、明治維新のときもそうですし、第2次世界大戦の復興期もそうだけれども、子供のころからの教育でこういうのを目指すべき存在だというのがあって、それがやっぱりリスペクトされる存在であって、そうであったところにみんなが向かっていったわけですね。今、柘植委員がおっしゃったΣ型人材というのは、本来なら日本で最も目指すべき存在で、しかも、目指した結果、リスペクトされる存在だということを子供のころから教育していかないと、こういう人材はなかなか出てこないように思います。

【柘植主査代理】

 よろしいですか。

【西山主査】

 はい。

【柘植主査代理】

 100%、今、西山主査がおっしゃったことです。だからこそというか、現状何が起こっているかというと、科学技術政策、少し足りないと言いながらも相当な金を投入していますね。やっと今イノベーション政策と結びつけて、いろいろな議論がありながらもグリーンイノベーションとライフイノベーションという具体的な国としての進むべき、これは言うならば明治のときの富国強兵化、あれと同じような1つの、国民が目標を持とうとしているんですね。それはやはり明治のとき、あるいは戦後のときの教育に生かされたように、今の教育でも、それこそ小学校から日本はこうやって生きていくのだ。だから、君たちは5カ条を勉強しないといけない。こういう話のためにも、この科学技術とイノベーション政策の中に教育政策を入れないと、主査のおっしゃった話は科学技術とイノベーション政策だけでは国民は乗れないのではないかという気がします。

【西山主査】

 よろしいでしょうか。

 次に移ります。議題1に移らせていただきます。産学官連携施策の効果と課題についてですけれども、渡部委員からご説明いただきたいと思います。

(渡部委員より資料3の説明)

【渡部委員】

 お手元の資料にも配付がございますが、何をやったかというのは、こちらの文部科学省の施策としては知的財産本部整備事業、それから、戦略展開事業というのがございましたけれども、そういう事業が産学連携活動に関してどういう影響を与えているかということでございます。どのような影響を与えているかということを見るときにいろいろなやり方があるわけですけれども、例えばいろいろな成果が出ていますよ、この成果はこの事業から出ましたよというケースを見ていくというやり方もありますが、私のほうで、データで少なくとも定量的に追えるものに限って少し分析をさせていただきました。
 具体的に言いますと、特許出願とか、こういうような定量的に追えるもの、こういうものが増えていますので、これは増えていると言ってもいろいろな要素で増えているわけで、戦略展開事業とかの影響がどうかということを見ようとしますと、ほかのいろいろな要素を差っ引いて見ないといけないわけです。これは共同研究数も増加していますよということなのですが、これは少し整理しますと、平成20年度以前に実施された事業としては知的財産本部整備事業を15年からやられています。それから、20年から産学官連携戦略展開事業、これは国際というカテゴリーと特色というカテゴリーに分けられておりまして、特色に関して言えば「地域」というキーワードで施策が展開されているものが非常に多かったと思います。
その2つに分けて、その事業が採択されたかどうかということを全大学でやってもあまり意味がありませんので、少なくとも知的財産活動をやっている大学が255ぐらいありますので、その255を母集団としてこういう事業をやったか、やらないかでどういう差があるかということですね。それからもう一つは金額というのがあって、事業は採択しても、金額をたくさんもらったほうがどんどんよくなるのかという、そういうのが2番目のカテゴリーです。これについてデータとして追えるものということで国内の特許出願数、外国特許出願数、ライセンスの数と金額、それから、共同研究に関しては中小企業との共同研究、大企業との共同研究の金額、こういうものについてそれぞれの結びつき、採択されたか、されないか、あるいは金額が多い少ないという結びつきについて分析を行いました。
 ただ、当然なのですけれども、こういう事業だけの影響で増えたり減ったりしているわけではありませんので、いろいろな影響がございます。大きな大学だとそれなりにやっぱり有利ですし、それから、研究水準、非常に研究水準が高いところと低いところと同じわけにはいかないということで、これをやるときに重回帰分析ということをやりますけれども、ここの一番下のところでYというのが先ほどの例えば特許出願数だったり、共同研究の金額だったり、それをコンスタントにプラス例えば事業採択を受けた、受けないという、これはカテゴリーからのダミー変数といいますけれども、そういうものにどれぐらいのケースがかかわっているのかとかいうことに対して、ほかの影響もどんどん入れていくわけです。ただ、今回を見ますと、大学教員数とかいろいろやったのですが、科研費の獲得金額というのがものすごく効きまして、これはやっぱり大学の水準をあらわしているので、ほとんどこれでコントロールできるということがわかりましたので、基本的には科研費の獲得金額を整理して、事業の影響を見るということをやりました。

 まず、事業採択の効果なのですけれども、例えば特許出願数で見ますと、やはり本部整備事業が、これは偏回帰係数0.4というのは標準化してありまして、1がほとんど真っ直ぐ、直線から、ゼロが全く関係ない。そういう意味で言いますと、例えば0.4近いというのは結構高い相関ですね。ただ、基盤整備事業に比べると戦略展開事業のほうになるとだんだん少なくなってくるというような傾向のものが例えば特許出願数です。それから、外国特許出願数になりますと、これはどっちかというと本部整備事業の影響よりは、特にこの戦略展開事業の国際の影響のほうが高くなっていまして、これは当然と言えば当然なのですけれども、国際で一生懸命この戦略展開事業、これはまだ初年度の結果ということになりますが、これは非常に大きな影響がある。
 それから、ライセンス収入とか金額は、実はあまりこういう事業の影響が大きく出てきません。これは後で少し説明いたしますけれども、少し特徴的です。中小企業との共同研究数と、それから金額がございますが、中小企業に関しては共同研究数が極めて本部整備事業の影響というのが強くて、恐らくこういう事業をやったことで中小企業との連携というのはやはり相当影響があった。ただし、依然として特に戦略展開事業の特色というところが非常に高いので、これは単年度の直近の特色の中の特に地域で展開しているもの、これの影響が非常に強いのではないかと思います。これに比べますと大企業のほうは本部整備事業の影響が一番大きくて、ほかはそんなに目立たないという感じになっていますので、むしろ基盤ができてきたというふうに見ていいのかなという感じですね。
 金額は、実はこれは直近のものと長期5年間のものとで分けてみましても、そんなに大きな影響はありませんでした。金額については、高く出ているところはやはり少し積み増したほうがより効果が出るということになりますが、ライセンス収入とかのあたりはあまりそういう傾向はありません。それから、中小企業との共同研究金額に関しても、中小企業とのキャパシティーというのはそんなに変わるものではないので、金額を積み増して大きな規模にしても、そこはそんなに影響は出ないというような結果にはなっております。これを少し今までのケースも含めて解釈をしていきますが、国内の特許出願数に関しては、やはり本部整備事業以降の累積的効果はかなり大きい。
 これは当然大きくないと困るので、これをやって何の関係もありませんといったら、これは事業仕分けになってしまう。ちゃんと効果が出ているということでありまして、金額の影響も、そういう意味では非常にある。ただ、それは国内と海外と比べますと、やはり外国特許出願のほうが直近の戦略展開事業の国際の影響は非常に強く受けているように見えます。したがって、仮にこういう事業を今やめたとするとどうなるかというと、国内のほうは何とか減るかもしれないけれども、基盤的に全くできていないわけではないかもしれません。海外、外国のほうはやっぱり基盤的にまだ十分でないようなデータの出方、直近に依存していますのでガタガタになってしまう可能性が強いというような感じだと思います。
 それから、ライセンス収入に関しては、先ほどお見せしましたが、ほとんど影響が見られないのですが、これは実は98年以降、TLO法でTLOに対する補助事業というのが別途行われていますので、その影響をここの中で見ていません。これは実は今、大学とTLOとの関係が複雑なものですから、なかなか見にくいというのもありまして、恐らくそういう影響があって、ある程度基盤的にできてきているのではないかと思います。これは実は今回少しやったものと違う。大分以前にTLOについては、我々、結構詳しくやっておりまして、ライセンスってそんなに簡単ではなくて、進行する、例えば補助金をつければ成績が上がるかというと、そういう簡単なものではないということはもうわかっておりまして、これはその中で何が効いたかって、これは2004年の時点でのデータですけれども、マーケティング重視の活動のほんとうの活動の中身とかがこのライセンス収入にものすごく効いてしまうとか、研究者とのつながりの強さでライセンス収入――これ、縦軸がライセンス収入なのですが、そういうものがものすごく効いてしまうとか、非常に高度なマネジメントが必要です。そういう意味では、基盤ができているところはもうできていて、できないところは実はそんなに補助金の影響って、もう今の時点ではそんなにないのではないかというふうにも思われるようなデータでした。
 あと、中小企業との共同研究に関して言えば、共同研究数はやはり事業採択の影響は本部整備事業の影響、それから、戦略展開事業の特色、地域と言っているものが多いと思いますが、それがやっぱり大きいです。金額についても直近の戦略展開事業の金額の影響、補助金額の影響が共同研究の数に対して影響が及んでいます。それから、研究契約もやはり同じでありまして、本部整備事業等の累積的な効果で基盤的体制もある程度確立している面もありますけれども、やはり直近の事業に対する依存性、特に地域ということで戦略展開しているところはかなりありますので、そういうところで見受けられます。これに比べますと大企業のほうは本部整備事業の採択の影響が最も大きくて、ある程度基盤的にできてきているように見えまして、直近の事業の影響というのはそんなに大きくない。ただし、金額に対する影響はある程度ありますので、例えば仮にやめたとすれば件数は減ると思いますけれども、ほとんどガタガタになってしまうというような状況でも全然なくて、基盤的には整備されてきているという効果が出ているのではないかと思います。
 ここから先は事業そのものの影響ではありませんで、こういう中で少し日本の産学連携の特色ということについて幾つかデータを示します。これについて、これは先ほどのライセンスなのですけれども、日米で比較しますとはっきり出ていますのは、中小企業と大企業のライセンスに行く比率というのはほとんど日米変わらないのですが、日本の場合、大企業は少し多いですね。その分何が変わっているか。ベンチャー企業が非常に少ないというのがやはり特徴でありまして、特にライセンスの通常実施権の許諾の中で独占的通常実施権の許諾はアメリカではベンチャー企業により独占権の許諾が行われています。これが日米の大きな差でありまして、もともとアメリカのバイ・ドール法というのは中小企業優遇ということがあって、プレファレンスがあって、結果的にはベンチャー振興に非常に強く出てきたという格好ですけれども、そういう経緯が日本の場合は必ずしもないでしょうか。
 これは日本の場合のバイ・ドール法というのはプレファレンスが、中小企業とかベンチャーが基本的にはありませんでしたので、大企業中心で考えられてスタートしたと聞いていますのでその影響かもしれませんが、ベンチャーに対してエクスクルーシヴ。ベンチャーはやはり経営資源があまりありませんので、こういう技術のエクスクルーシヴな権利というのは非常に重要です。一方、大企業は、後で出てきますけれども、そんな1件1件の権利がどうこうというのはそんなに、あんまり重要でないケースもあるわけですけれども、そういう意味ではアメリカと違う。もう一つ日本の特徴というのは、この共同出願特許です。これも何回もそういう話題が出てくるのですけれども、日本の場合はおよそ大学特許の7割ぐらいが共同出願で、これは国立大学だけの統計だったと思いますけれども、7割ぐらい出てきてしまうのです。米国では5%以下ということですから、圧倒的に多いです。これはヨーロッパでもこんな多いことはなく、恐らく日本と韓国だけ共願が多いです。
 別に共願が多いのがいい悪いというのは、いろいろな見方があるのですけれども、でも、少なくともこういう財産権みたいなもの、財産というものを共同で権利を持つというのは、必ずしも扱いやすいことではないですね。基本的にできるだけやっぱりどっちかに寄せたほうが扱いやすいという面もあるのと、日本企業の場合はやっぱり未利用特許と言われているものが非常に多い。これは議論がいろいろあるところで、未利用ではないと防衛特許が使っているのだというようなことであれなのですけれども、半分ぐらいは使われていないという統計になってしまうわけですが、これは防衛特許だから、要は人にやらせないために保有しているというものが活用しているのだということになるのかどうかというのは、少なくとも国費原資の成果がそこに入っている以上、防衛に使われるのだったら、ほかの中小企業に実施してほしいというような関係にあるときに、先ほどのような共願の形で出てきて、こういうところに入ってしまっているものがあるとすると、やはりそれはあまり適切ではないというようなことも考えられます。いずれにしましても、共願の問題というのは、日本で固有の問題だと思います。
 それから、最後に大学の特許管理が、今度は特許を一生懸命やると技術移転が進む。これは当たり前なのですが、もう一つは共同研究に対する影響をどういうふうに及ぼしているかということを、これは少し手続が難しくてさっと説明できないですけれども、大学の特許管理が緻密になればなるほど共同研究にどういう影響を与えているかということなのですが、明らかに中小企業と大企業で効果が違います。中小企業に関しては、この小委員会だったか、三重大学のケースなどがよく成功例で出てきますけれども、非常に特許部というか、知財活動をやることによって中小企業等の共同研究につながっているというような報告がかつてありましたが、そういうような意味では中小企業、特に1件、1件の特許の重要性というのは中小企業のほうが大きいのです。そういうようなことがあらわれているのに対して大企業との連携はむしろあまり影響を及ぼしていないというか、場合によっては若干ネガティブなケースもあったりする。これはいわゆる補助の問題とかそういうことも含まれているのかもしれませんけれども、この差というのがやはり気になるところです。
 共同研究のやり方、知財の規定、あるいはマネジメントというのも中小企業と大企業のニーズが違うというのは明らかでありますので、そういうところを今まで以上にもっと工夫する必要があるのではないか。特に大学の知財のスタッフというのは、初期、出願系の方が中心でいられましたけれども、契約に関してもっとやっぱり工夫をしていくということも必要なのではないかなという気がいたします。課題としましては、本部整備事業の施策の累積的効果というのは、少なくともこういう統計的な検定をする限りにおいては非常に成果が上がっていますが、一方でまだまだ基盤的体制ができていないという部分もあるのではないか。特に外国特許とか、中小企業との連携に関しては、今やめると結構まずいですよという感じですね。
 それから、ライセンスは少し色合いが違いまして、別のグラントがある、補助金があるということでありますけれども、ただ、性格的にやっぱりベンチャーに対するライセンスが少ないとか、こういうところをこれから日本はこれをつくっていく上でベンチャーって重要だと思います。どうするか。それから、共同出願が多いという問題、この共同出願がちゃんと生かされているのかどうかというようなところと、結果的に大企業、中小企業で随分ニーズが共同研究に対して違いますので、知財に関する仕組みも大きく分けて考えて、もう少し工夫していくべきではないか。
 最後に、今まで日米の比較をよくやるのですが、ここから先、中国と比較しないといけないのではないかという話でありまして、中国の大学特許出願、右側に書きましたが、猛烈な勢いで3万件を超えて、恐らく4万件ぐらい行ってしまっていると思います。特許です。日本の場合は7,000件ぐらいですね。質を高めるという議論になっていまして、そのとおりだと思います。質を高くしないといけないというのは、そのとおりなのだけれども、でも、これ、こっちの7,000件で漏れたやつがこっちの日本の先生のお弟子さん、特に中国、材料なんかいっぱいいて、それがバーッと出てくるわけですね。これから、今、この3万件は黙っていてくれているんだけれども、いずれ権利行使されるという状況の中で、これから少しこういう目で見ていって、外国出願ということも、今、企業の方もアメリカはともかく中国を出さないといけないと言われるようになりましたけれども、そういうことも大学の産学連携の知財の関係では重視していく必要があるのではないかということでまとめてみますと、こういうことでございます。

 以上です。

【西山主査】

 どうもありがとうございました。

 それでは、ただいまのご説明の内容につきまして、ご質問、ご意見、お願いいたします。どうぞ。

【石川委員】

 純粋に質問なのですが、こういう資料があるということは非常にいいことだと思う。よくまとめていただけたと思いますが、解釈に関してはいろいろと解釈があるので議論になると思うのですが、一番気になったのがライセンスの部分で、このライセンスをどういう統計をとるかというのはなかなか難しいところがあって、渡部先生もおっしゃっていた共同出願に関して、共同出願で相手企業が使った場合はライセンスしたことになっているのかどうか。特にこれはライセンス数ではなくてライセンス金額、収入でやっているので、そこをどう考えたかによってこの統計は大きく変わってしまうのではないか。それに対してどうお考えか、コメントを。
 それから、米国との比較でやると、米国の場合は雷に打たれたような、例えばスタンフォードで言うとコーエン・ボイヤーのようなビッグなやつがあるので、統計が数と金額で相当違った反応を示すと思うのですが、日本の場合まだ数年しかないので、雷に打たれたような何百億円というのがない中での統計ではないかという気がするので、それについてもコメントをいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

【渡部委員】

 前半の話は、これ、ライセンスについては金額と数と両方やっていて、ここのリンケージに関してはそんなに違った傾向は出ていないということです。後半の話はまさしくそのとおりで、ホームランが出るかどうかなんですね。ホームランが出るということは、やはりそれは金額の中にあらわれてくるわけで、金額と件数であまり傾向に差がないというのは、実はホームランがあまりないということかもしれません。
 ただ、少なくともライセンスに関して言えば、これは結構、今回事業との関係で見たデータではないのですけれども、ページで言うと何ページだったかな、10ページですね。これはやっぱりそれなりにマネジメントを反映したパフォーマンスなのだと思います。これはそういう意味では非常にきれいに、これ、横軸なんか非常に凝った変数なのですけれども、いかに日々の活動でマーケティングを何%、ほかの仕事を何%、そのバランスをきちっとやっているかという、そういう変数なのですが、非常に出てくるわけですね。だから、こういうものの積み重ねがやっぱり大きなヒットを生むと考えてもいいのかなと思います。少なくともこっちのほうはやっぱりだめなのですね。それは基盤が全然できていないと考えられますので、そういう意味では参考にならないデータではないと思います。

【石川委員】

 もう一つ、共同研究との関係はどうですか。

【渡部委員】

 共同研究ですか。

【石川委員】

 共同出願が7割あるので、この7割というのがこっちのライセンスアウトに対してかなり統計を乱しているのではないか。要は共同出願した相手側が自己実施した場合には、ライセンス収入はゼロなわけです。ところが、実施はされているわけですね。

【渡部委員】 いや、その辺はよくわからないですね、逆に言うと。そういう統計が、これは大学がライセンスしたものであれば、そういうデータをもらいやすいのですが。

【石川委員】

 収入がある。

【渡部委員】

 共同で73条で言えば、両方実施は自由だと。自由だから、何でそれをという話になってしまうのでわからないというのがそもそもの問題で、もしかするとこの防衛特許とか何かにみんな盛り込んでしまっていると、それはイノベーションシステム上どうかということの指摘をさせていただきたいと思っています。

【石川委員】

 ということは、収入、これは金額ベースでやっていますよね。収入という。

【渡部委員】

 これ、金額ベース、どこのあれですか。

【石川委員】

 例えば9ページだとか。

【渡部委員】

 9ページは、これは件数と金額と両方やっています。

【石川委員】

 そうなのですか。

【渡部委員】

 収入と書いたのですが、件数も両方見ています。

【西山主査】

 どうぞ、三木先生。

【三木委員】

 17ページの中小企業と大企業での特許管理と共同研究に及ぼす影響のところですけれども、これ、その前の15ページの単願、共願との関係で、例えば1つの仮説として中小企業との共同研究に行くルートが大学単独研究から特許出願共同研究という件数が多い。大企業の場合には最初からシーズを見て共同研究がスタートして特許共願という、こういうルートになっているのではないか。

【渡部委員】

 恐らくおっしゃるとおりだと思います。大企業の方が多いので、勝手に大企業の説明をしていいのかどうかわからないけれども、大企業は基本的にはどこの大学で自分たちに関係する研究が行われているかのサーチ能力がありますので。

【三木委員】

 ありますよね。

【渡部委員】

 特許を出す前に仲良くなっているケースがあるわけです。そこで共願で出してくると。中小企業はやっぱり大学がアクセスしないと、いろいろなことが始まらないわけで、最初に特許が出ている状態でアクセスするケースが多い。逆に言うと三重大学のケースで、それはもうはっきりしていたと思うのですが、そういう活動をやっても共同研究の費用としては中小企業が相手だと数十万ですね。

【三木委員】

 そうですよね。

【渡部委員】

 数十万でもやれるというのは、まず単独特許出願があって、将来、ロイヤルティが稼げるかもしれませんという構造の中で初めて大学が動けるという構造があって、そこの部分はやっぱり非常に重要だと思うんです。

【三木委員】

 それともう1点、19ページの中国のデータ、非常に参考になったのですけれども、この出願の分野別、中国の大学が今どこの分野が非常に多く出しているのか、概要を教えていただけますか。

【渡部委員】

 すみません、中国語を今一生懸命読んでいる最中で、実は中国でここの産学連携等実施状況調査に相当する中国産学連携何とかというのがありまして、それを読んでいるところなのですが、クロスセクション全部データが必ずしもなくて、推定していかないといけないのですが、結構、材料科学なんか多いですよね。

【三木委員】

 材料関係。

【渡部委員】

 ええ。その辺はまだ今やっている最中です。

【三木委員】

 はい。ありがとうございました。

【柘植主査代理】 今、17ページを見ているのですけれども、中小企業、大企業、この質問の背景には、この基本戦略小委員会の1つの目のつけどころの中に、旧帝大系のような、とにかく圧倒的に強い、どんどん強くなっていく大学と地域を支えている大学と、それ、多分、戦略が違うのではないかと私はずっと思っているもので、例えば17ページを見ると、実はこの中小企業を支えているのは、この17ページの中小企業対象は、地域の大学が多いのではないか。東大とか、そういうところはやっぱり大企業などがやっているのではないか。そういう地域というか、大きな大学と地域を支えている大学という視点でこの分析を重ねてみる価値があるのではないかなと思っています。何かもしお考えがあれば。

【渡部委員】

 そういう意味では、先ほどの戦略展開事業の特色、あの中で地域を重視した展開をしている大学と、こういう活動とのリンケージはありますので、そこはおっしゃるとおりだと思いますね。ただ、東大が中小企業との連携が少ないかというと、そうではないですよね。非常に多いのです。

【柘植主査代理】

 そうですか。安心しました。

【西山主査】

 どうぞ。

【秋元委員】

 少し教えてほしいのですが、先ほどの中国と少し関連しますけれども、これは中国の企業が中国国内に出した出願件数ですね。

【渡部委員】

 大学です。

【秋元委員】

 大学が出した、中国に出した出願件数ですね。

【渡部委員】

 中国国内です。

【秋元委員】

 海外は非常に少ないと聞いていますが、それはどの程度でしょう。

【渡部委員】

 少ないです。恐らく5%は行っていないと思います。非常に少ない。それはポリシーが、これは全部国費ですよね。今、ともかく中国国内市場における中国のハイテクの権利を確保するというのが目的だと清華大学などのマネージャーが説明していましたので、そういうポリシーだと思います。

【秋元委員】

 そうすると、日本の場合と大分違ってきますね。日本は国内も多いですが、海外にも非常によく出している。

【渡部委員】

 よく出しているというのが、これから中国で、これ、実は企業の方にもほんとうのところを教えていただきたいところもあるのですが、中国の特許の出願の調査は実は結構難しいですよね。ほんとうにどこまで大学の出願がどういうのが出ているか、今おっしゃったようなところはかなり重要で、実はハイテクの供給源が中国の場合やっぱり大学に偏っていますので、企業からあまり出ませんので、例えば日本の大学のハイテクの部分で本来出るものが出ないと、そこがいっぱい出ている可能性があります。そういう構造が将来やはり日本が新興国で事業活動をやる上で非常に問題になる可能性があるなということがかなり心配な部分ですね。

【秋元委員】

 もう1点ちょっと教えてほしいのですが、独占的ライセンスの頻度とか、これは要するにアメリカの全出願についてどのぐらいのライセンスがされているか、あるいは日本の全出願についてどのぐらいのライセンスがされているか。

【渡部委員】

 全出願ではなくて、ライセンス契約の中の独占の比率です。

【秋元委員】

 いや、13ページにはライセンスの頻度というのがありますね。。

【渡部委員】

 すみません、それも全ライセンスを分母にした頻度です。ライセンスをライセンスで割っている。それを中小企業に行ったライセンスなのか、ベンチャーに行ったライセンスなのか、分母はすべてのライセンスです。

【秋元委員】 

 絶対数は大分違うことになりますね。

【渡部委員】

 絶対数は全然違います。

【秋元委員】

 はい。ありがとうございます。

【西山主査】

 ほかにございますか。

【飯田委員】

 ベンチャー企業とのライセンスが少ないということにも関係するけれども、日本の大学の場合は、整備事業が始まってから大学単独で特許権を持つと費用が非常にかさむということで、その費用、マイナスの費用があまり出ないということで共同研究をしていることが実際に多いですね。そうなってくると、少なくとも大学の中でほかの先生から、攻撃されないためにということも心理として働いているのは事実でして、地方の大学になればなるほどその傾向が強い。そこを何かできないかなと思っていたのですけれども、ベンチャー企業が少ないというのも結局はベンチャー企業に対するキャピタルがないから、ライセンスを与えてもうまくいかない。その後の処理が非常に複雑になるということで、現状少ないのではないかなと思うのです。そこらに何か調査されていますでしょうか。

【西山主査】

 私も同じことですが、質問ですけれども、ベンチャーへのパフォーマンスが日米で決定的に違っていますよね。その見方はいろいろあろうかと思いますが、その原因について先生のご見解をお聞かせください。

【渡部委員】

 ものすごく重要な話で、ここの範疇は超えるのだけれども、これ、ヨーロッパの人と話していても、アメリカだけが何かGoogleみたいなものができるというレベルの話と、そもそも種があまりちゃんとできていないという話と何かいろいろな段階があって、どこに絞って話をすればいいのかという問題ですが、少なくとも大学、千何百社できたことになっているベンチャーに関して言えば、相当経営の体をなしていないところがありますよね。まず、その最初の段階が超えていないところの問題、それから、じゃあ、まともな経営者が来て資金調達をしようとしたときに、そういうベンチャーキャピタルなどが整備されて、まあ、その場合は恐らくエンジェルですね。エンジェル的な資金、これが私、アメリカのシリコンバレーで会社をつくったことがありましたけれども、来るんですよね。経営者も来る。最初の創業、立ち上げの研究者は3年ぐらいたつと、もうナンバー7ぐらいに落ちてしまう。上にどんどんいい経営者が来る。そういうようなところの段階を超えて、今度大きなキャピタル、3つ比較して、まあ、かなり全部問題だなという話。

【西山主査】

 ほかにございますか。どうぞ。

【菊池部長】

 ご質問なのですけれども、この共同研究といった場合の経費というのは、大学に対して企業から支出しているという意味ですか。

【渡部委員】

 直接研究経費です。
 民間だけを対象にしました。

【石川委員】

 ただ、こういうアンケートに答える側からすると、正確に分離することはできない。かなりやっているのですが、最後の最後はちょっとわからないものもあるので。

【西山主査】

 よろしいでしょうか。それでは、次に議題2に移らせていただきます。議題2につきましては、大学等における産学官連携機能の戦略的強化についてというのが事務局から説明がありますけれども、もう一つ、岩手大学からのご説明もありまして、これは先に2つの説明をしていただいてから意見交換をさせていただきたく思います。早速ですけれども、事務局からご説明をいただきたいと思います。

(渡辺技術移転推進室室長より資料4-1及び4-2の説明)

【渡辺技術移転推進室室長】

 それでは、まず、資料4-1をごらんいただけますでしょうか。資料4-1、産学官連携基本戦略小委員会の検討事項についてでございます。こちらは前回の産学官連携推進委員会において、この小委員会において今後検討していくべき事項について資料説明させていただいたものでございます。5点ございます。産学共創の場の構築、民間企業との共同研究のあり方、大学等における産学官連携機能の戦略的強化、大学等の知的財産の戦略的管理・活用、それから、産学官連携を担う専門人材の育成ということで、この5つのテーマを今後5回に分けて議論をしていきたいと思ってございます。本日は、この3番目の大学等における産学官連携機能の戦略的強化ということで、まず私から説明をさせていただきたいと思います。
 スクリーンをごらんいただけますでしょうか。まず、これまでの大学における産学官連携施策をざっと説明させていただきまして、その後、課題、それから、最後に機能強化に向けての取り組み事例を簡単に説明させていただきます。まず、これまでの経緯でございますけれども、まず、99年に産業活力再生特別措置法で国の研究委託の成果を受託者へ帰属させることができる日本版バイ・ドール条項が制定されて、さらに2004年に国立大学が法人化されて、国立大学の本人格を取得し、特許の機関帰属というのが本格的に始まるということになってきた。それを契機といたしまして、文部科学省といたしましては、先ほど渡部委員からも説明があった中に出てまいりましたけれども、大学知的財産本部整備事業というものを5カ年させていただきまして、その後、2008年より産学官連携戦略展開事業というものを進めさせていただいているというところでございます。
 したがいまして、文部科学省の主な産学官連携施策といたしましては、こういった形でファンディングもございますし、地域における産学連携強化などもございますが、本日はこの大学等の産学官連携機能の強化、この部分についてご議論いただきたいというところでございます。まず、平成15年度から始まりました大学知的財産本部整備事業でございます。こちらは機関帰属の本格移行ということを踏まえて、大学等における知的財産の創出・管理・活用の基盤整備を図るということで平成15年度より実施してきております。その中で全学的、横断的な産学連携体制の構築、知財ポリシーなど基本的な学内ルールの策定であるとか、知財の管理システム導入、こういったものを国として大学の主体的な取り組みを支援していこうという事業でございます。こういった事業を通じまして平成19年度段階で合計43件に対して支援させていただいてきたところでございます。
 この事業が終わった後に事後評価をさせていただきました。その事後評価の中のコメントといたしましては、全学的、横断的な基盤体制が構築された。国際的な産学連携の推進体制が再構築されつつあるということ、それから、基本的な学内規定が制定されたということ、それから、教職員や学生の知的財産意識が向上したといったことなどが成果として、この際に整理されたところでございます。実際に特に産学官連携ポリシーでございますとか、知的財産ポリシーといったものが対象大学におきまして、この5カ年を終了時点で、ほぼすべてのこの対象大学において、こういった規定が整備されてきたというのは1つの成果ではないかと考えてございます。
 それから、平成19年の8月に産学官連携推進委員会におきまして「イノベーションの創出に向けた産学官連携の戦略的な展開に向けて」という報告書を整理させていただきました。この中で大学等においては主体的かつ多様な産学官連携活動、組織的・戦略的に展開していくことが必要であるということを踏まえまして、この(1)から(9)にあるような今後の産学官連携の方向を推進していくために国として政策的観点から積極的に促進すべき活動を重点的に支援するということで、平成20年度より産学官連携戦略展開事業というものが開始されまして、その中で大学等の活動、体制整備を支援する戦略展開プログラム、この中には国際的な産学官連携活動の推進、特色あるすぐれた産学官連携活動の推進、知的財産基盤活動の強化という大きな3本柱で体制を整備してございます。それとあわせてコーディネーターを派遣するコーディネートプログラムというのも同時に行ってきたところでございます。
 この事業を通じて成果はいろいろ出ているところでございますけれども、これは先ほど渡部委員から説明があったので割愛させていただきまして、しかしながら、昨年、いわゆる行政刷新会議の事業仕分けにおいて、地域科学技術産学官連携事業の中で産学官連携戦略的強化事業も含めて議論されて、そのワーキンググループとしては廃止という非常に厳しい評価が出たところでございます。しかしながら、国民の皆様からいただいた多くの意見を踏まえまして、地域科学技術振興、産学官連携は非常に重要であるということで、国として引き続き支援すべきではないかということで、しかしながら仕分けの評価結果を踏まえまして、対象となった事業を再構築し、継続事業が終了するまでに段階的に終了させていただくということでございまして、これまでのいわゆる地域振興の知的クラスター創成事業などとこの戦略展開事業というものを一本化いたしまして、イノベーションシステム整備事業というものを新しく平成22年度から開始したことでございます。
 その中では、これまで国の委託費という扱いであったものを大学や地域が主体的な活動を行う際に、それを補助金という形で補助するという形で変更させていただいたところでございます。これが地域イノベーションクラスタープログラムというものと大学と産学連携自立化促進プログラムという2つのプログラムでこの整備事業が平成22年度より開始されているわけでございます。その中の自立化促進プログラムにつきましては、基本的にこれまでの戦略展開事業を実施してきた大学に対しまして、それを終了年度、一応、予定では平成24年度までとなってございます。大学等の産学官連携本部との機能強化についての人材、人件費や活動費を支援する。それによって大学等が産学官連携活動を自立して実施できる環境の整備を図るという事業でございます。現在、67機関に対してこの支援をさせていただいているところでございます。
 それから、課題でございます。課題、これは大学等に対するアンケート調査、科政研のほうで実施していただいたアンケート調査の結果でございますけれども、その中で体制の整備につきましては、大学経営の観点からの産学官連携戦略や研究の初期からの知財戦略が必要、地域あるいは広域の多数の大学に対する知財業務を共通的に行う体制が必要、それから、産学官連携活動に係る財源の確保、さらに国外との産学連携を推進する体制、制度の整備といったことなどが課題として挙げられているというところでございます。
 さらに、こちら、この戦略展開プログラムを実施している66機関における産学官連携活動経費につきまして、これが全体でございますけれども、その22%がこれまで国の委託費に依存してきているというところでございます。さらに大学等における産学官連携活動経費の中で、44%が人件費に使われているわけですが、その44%のうち約22%がこれまで国の委託費に依存してきたというところでございます。したがいまして、今後、自立化に向けては自己財源の確保であるとか、活動の最適化・戦略化、メリハリをつけた予算措置等の実施が各大学における課題ではないかなと考えてございます。

 こういった課題を抱えつつも、各大学におきましては、機能強化に向けてさまざまな取り組みを行ってございます。その中で、先ほどの課題の中でも出てまいりましたけれども、産学官連携活動のコストか非常に大きな問題になっているということで、複数機関が連携する、もしくは金融機関と連携するということなどによってネットワーク的なことを進めながら、運営のコストを共有したり、それから、民間機関のコーディネートマッチング機能やマーケティング機能などを活用した取り組みなどが進められてございます。この23ページ以下、それぞれの施策がまとめてございますので、本日は説明いたしませんが、この後、岩手大学さんからこの金融機関との連携ということで事例を説明いただくというところでございます。

 以上でございます。

【西山主査】

 ありがとうございました。

 続きまして、岩手大学から複数の大学等と金融機関で産学官連携のネットワークを構築している事例といたしまして、岩手大学における取り組みについて、岩手大学の齋藤副学長及び岩手銀行の稲垣部長よりご説明を願いたいと思います。
 それでは、齋藤様、稲垣様、よろしくお願いいたします。

(齋藤副学長(岩手大学)と稲垣部長(岩手銀行)より資料5の説明)

【齋藤副学長】

 お呼びいただいてありがとうございます。たくさん事例があるところに岩手という1つのことを取り上げていただいて、これは少し認知していただいたということかなと勝手に考えております。よろしくお願いしたいと思います。私は岩手大学で総務地域連携担当の理事をしております齋藤でございます。一緒に組んでいる岩手銀行の地域サポート部の稲垣部長でございます。よろしくお願いいたします。

【稲垣部長】

 稲垣でございます。よろしくお願いいたします。

【齋藤副学長】

 早速ですけれども、岩手県というと皆さん方、あまり繁栄というイメージはないかと思います。2時間20分で来れますが、ご承知のように人口の減少、これは岩手ばかりではないんですけれども、北東北、青森、秋田、岩手で、まず自殺率、人口の減少率、それから、老齢化率、それに合わせて最近、県民所得が下がっている。製造業の不振、雇用状況とダブルパンチで来ておりまして、せっかく広大な自然がある、食糧自給率は実は104%、カロリー計算ですが、一応食える。それから、誘致企業が結構あります。この北上川の流域というのが戦略拠点ということでも認められておりますが、非常に多い。それから、ベンチャーの立ち上げといったものが二十数件ございます。全部もうかっているかというと、それは現実そうではありませんが、結構伸びているものもあります。このようなところが岩手県の現状ということになります。
 岩手大学はその中で法人化とともに何を考えたか。当然、自立経営ということと、それから、特徴を出すこと。今までは金太郎飴でいいという話が突然、自立ということになったわけで、これは我々、3月に隣の岩手銀行さんの上田支店というところに運営費交付金が入りますから、そのときに給料分がなければ遅配するということが端的に自立経営である。特色経営は、これはもう岩手の顔を出すことである。ですから、我々、当初、岩手大学はきょうから変わりますと。キャッチコピーは岩手の大地と人、これは大学でなくてもよかったのです。後ろに岩手銀行とついても、JA岩手とついても意味は同じですが、要するに地域と一体化した形で特徴を出していくというようなことです。
 役に立つ社会貢献という言葉は随分あったのですが、我々はいま一歩踏み込んで、地域と一蓮托生で、つまり、岩手の大地と人とともに前進をする。これによって大学の知的資産が地域に還元されて、地域課題が解決される。共同研究、技術指導も出ていく。それによって最終的に地域の自立と活性化、それに基づいて日本のすそ野が広がって日本の国力、世界へという、地域は世界につながるということで、地域で回す知的創造サイクルということを目指しました。そのためには地域の産官学民金というすべてのものが一緒に組むということをメーンにしたわけです。岩手銀行さんが独自にこの経営理念を持っておられますので、これについて説明して頂きます。

【稲垣部長】

 私ども岩手銀行は、地域社会の発展に貢献する。それから、健全経営に徹するという経営理念で活動を展開しております。地域の発展なくして当行の発展もあり得ないという自覚を持ちまして、地域経済活性化のための取り組みを進めているところです。いわゆる地域密着金融ということで取り組みをしております。その中で、お客様の経営をサポートするという1つの手法として産学官連携に取り組んできております。いわて産学官連携推進協議会「リエゾン-I」設立する前には、INS――岩手ネットワークシステムという産学官連携組織に地元の金融機関として唯一参加してきておりました。そうした中で大学発ベンチャー企業の設立、それから、県内企業の新たなビジネス創出のために大学のシーズと県内企業とのニーズをマッチングさせる新たな組織づくりを模索していたという状況でございました。

【齋藤副学長】

 それで、何でリエゾン-Iの設立を考えたかといいますと、こういう背景がありまして、ここまで明確に一蓮托生ではないと地域はもたない。自立、活性化というところの線まではベクトルが絞られていなかったのですが、何かせにゃいかん。特に岩手の場合で、この先ほど申し上げました岩手ネットワークシステムという産官学の連携の組織がいろいろな人のつながりの中で共同研究、企業との共同研究というのをかなり増やしてやってきました。これについては先ほどもお話がありましたが、県のほうが支援のお金も用意する。ですから、純粋民間ばかりではないのですが、その辺のお金も入れて大学と共同研究をやるという形のことを始めていましたが、やはり地元の零細企業は研究費を大学に50万出す、100万出す、そのようなものがというのが現実です。
としますと、頼りになるのは結局金融機関である。もちろん、失礼ですが、隣でこういう話をしているのですが、銀行さんはいいところにはたくさん貸します。しかし、くれるということはないわけです。だけど、岩手が右肩下がり、いや、日本がこうなっているところで、今のうちに苗を植えて水をかけて、最後は銀行が全部かっさらっていって、それでもいい。かっさらうようなことができれば、地域はそれだけ活性化したのだと。そういうおつき合いの中でうちの前学長とか、それから、前頭取、同友会の会長さんとかいろいろな役をやっている地元の経済のボスです。そういう方が個人的に幾らでも話をする場があって、単純にちょっとした飲み会で、頭取、こういうふうな形でやってくれんかと。くれるんだぞという、そういうようなざっくばらんな話の中で、それでは銀行も支援をして、地域の企業、ただし、大学も責任を持て。だから、大学が共同研究で、先生が責任を持っている企業のいいテーマにだけ金を出すという、そういう具体的な方針が出ました。
 ただ、これをつくろうと言っているうちに、地元に、小さい県です。大学は5つしかありませんが、一応、5つあります。それから、金融機関、岩手銀行、東北銀行、北日本銀行さん、これが地銀です。盛岡信用金庫さんというのがあります。幾つかありますが、それは決してみんなお友達ではないわけですね。こういうお話をみんなで一緒にして、全部利害が一致するという話は出てきません。ですので、話が合った岩手銀行さんと岩手大学と、それから、政策的に日本政策投資銀行、これは岩銀さんがぜひ入ってほしいということで、その三者でスタートしようということでスタートしたのがこの平成16年の5月です。ですから、当初は3つでスタートして、それからいろいろな話し合いをしていて、現在はこの銀行さん、信金、東北銀行、北日本銀行、岩銀さんに日本政策投資銀行、5つと、それから、岩手大学、県立大学、高専、それから、これは東北農業研究センターという機関、それから、県の公設試、岩手医科大学という、言ってみれば銀行、金融関係と地域の研究機関が全部でトータル16ですか、これでリエゾン-I、「I」は別に愛情の愛ではありません。引っかけていますが、一応、岩手の「I」ということでつくりました。この中でお金を出すという形で事業をスタートしているということです。
 活動として、今、お金ばかり強調いたしましたけれども、なるべく大学の研究内容を知っていただくということで、シーズ集をつくっています。これは何年になりましたっけ、もう4年、5年つくってきました。大分分厚いものをつくりましたが、銀行さんがあちこちへ持っていくのが大変だというので、きょう資料に一番、今年版を持ってまいりましたが、今年度は高校生が読んでもわかるという、それから、銀行の方がセールスで行って話をしながら見せるという、こういうシーズ集をつくっています。それから、年に一遍、マッチングフェアということで、仕方ありません、ホテルを借りてこういうブースの中で企業さんに集まっていただいて、いろいろ相談をする。これは今までトータル100件近い相談があって、そのうちの3分の1ぐらいまでいくか、まだいかないか。そこまでは行かない。2割ぐらいは何か共同研究しようか、しまいかという、ちょっと具体的な話のところまで、実際にそこから共同研究にマッチングで入ったというのは2割まではいかないが、現実に大きなきっかけになっております。
 それと、このイベントのほかに先ほどの育成資金の贈呈、これはせいぜい年間1,000万ぐらいのものですけれども、地域の企業にとっては非常に大きい。その中身は我々の手を離れて銀行さんが独自に目利きの役を養成して、その中で銀行さんが協議をして何件かに資金を贈呈するという仕組みになっております。ですので、その中身は岩手銀行さんのほうから話をしていただきます。

【稲垣部長】

 それで、金融機関からのファンドの提供ということで記載をしておりますけれども、今、齋藤副学長からお話がありましたように、リエゾン-Iという組織をつくりまして、その金融機関で新たなビジネスチャンス、新たなビジネスモデルをつくるという、積極的に支援をするということで、リエゾン-I研究開発事業化育成資金というものを設立いたしました。平成16年11月1日に設立しております。積極的に支援をするというものの、この育成資金を呼び水として大学にある事業の芽、それから、技術の種を県内企業が事業化に向けて研究開発に積極的に取り組むことを期待するということで設立したわけでございます。
 それで、これまでに延べ7回、平成17年6月に4社に第1回目ということで資金を贈呈いたしまして、いわゆる助成金でございますので、これは差し上げるということで助成をいたしまして、今年の2月、第7回まで、延べ36社に4750万円の資金の贈呈を行っているところでございます。この資金については、各金融機関で、参加金融機関で案分をしまして負担をするという方式をとっております。年間総額では上限を2000万、1社上限200万ということで贈呈しております。諸般の事情で21年度は総額1000万ということで、1社の上限100万ということで若干減らさせていただいております。資金の贈呈までの流れということでございますが、基本的には研究機関と民間企業が共同研究をするということで、その新規事業に取り組むということを前提で各金融機関の営業店を通じて、その企業を推薦していただいております。贈呈候補先を募集する。そして申請を受け付けるという段階を踏みまして、その後、岩手県の外郭団体を通じまして専門機関に技術評価をしていただいております。技術評価をした上で、その後、審査会の連成会を行いまして審査会を開催して贈呈企業を決定する。そして贈呈式を行うという資金贈呈の流れになっております。
 これまで、先ほどお話しいたしましたけれども、7回資金贈呈を行っておりまして、平成17年度から21年度まで合計36社、4,750万の資金を贈呈しているというところでございます。設立当初は岩手大学さんと私ども岩手銀行、それから、政策都市銀行さんが入っておりまして、私ども金融機関単独でございましたので、第3回目までは手前どもが単独で資金の贈呈を行いました。4回目以降は各金融機関に入っていただいて、各金融機関案分で負担をしていただいているという状況でございます。育成資金の実績ということで、最近では今年の2月24日、8社に対して資料掲載どおりの資金の贈呈を行ってきたところでございます。これらは地元紙の岩手日報に今年の2月24日、贈呈をした際の報道が載せられた資料でございます。

 次のページからは、それではどういった企業がそういった資金の助成を受けているのかということで、資料を掲載しております。こちら、アイカムス・ラボさんは1回目の贈呈で資金贈呈をした企業でございまして、将来的には上場を目指すというところまで成長してきております。それから、これは21年2月、昨年の2月に贈呈をした企業でございますが、岩手は雑穀生産が日本一ということでございまして、その雑穀をうまく使えないかということで、雑穀を使ったお酒をつくったということで、こちらにも資金の贈呈を行っております。それから、こちらの事例は昨年の2月ですが、資金贈呈を行った企業でございまして、今年の4月、日刊工業新聞、きょうの日刊工業新聞にも記事が載っているようでございますが、コバルト合金の事業を立ち上げて、これが新しい工場を建てるということになったという、こういった企業も贈呈した企業の中にはございます。

 以上が資金贈呈の件でございます。

【齋藤副学長】

 当然、課題等も結構ございます。成果として見ますと、こういう研究機関と、それから、地域の金融機関、これが本格的にお金を介して連携した。これが後で少し申し上げますけれども、いわて未来づくり機構という各会が一緒に地域おこしをしようという、そういうところに結びついております。それから、各銀行さん、正直言って、これは皆さんやっぱり営利企業ですから、ご自分のところの発展を目指すのでありますが、こういう地域という1つの共通理念みたいなものが持たれて、これもある種の地域エゴになるのかもしれませんけれども、まず自分たちの地域をという、そういう理念が生まれてきた。それから、幾つかが共同研究成果として挙がってきたというようなものが見えております。先ほどのアイカムス・ラボは、もう7年、8年たっていますけれども、非常に小さな歯車、不思議歯車という減速機をつくって、カメラのオートの機能のところに今組み込まれて、非常に多くの、うまくすれば来年上場できるかなというような、そういうところまで発展したものもございます。
 それから、そのようなことにつながって、当然、ベンチャー企業も幾つか頑張っていこうというふうになってきたということがあります。課題として幾つか挙げますと、これはほんとうは銀行さんが、その頭取さんの話によれば、1人1人の行員がこのシーズ集を持って各企業で説明をして、こういうので何かできませんかという、そういう売り込みまでするということでやっていますが、銀行の方々にこの研究テーマをいろいろお教えして、勉強して意識を持ってもらうというのは現実的には大変難しく、なかなかそこまでは行ってはいない。それから、この事業化に向けたときに150万、200万のお金で何とかスタートしても、実際に売ってさらに単独事業になるということのためには、ほんとうは桁の違うお金が要るわけです。実際には有望なものについては、さらに融資制度という形でフォローすることを当然考えておりますけれども、その先のフォロー、これをもっと具体的にどうするかというようなことが課題になっております。そのために幾つか次のステージに向かって、1つはシームレスな支援、つまり、これで一たん切れてしまったらだめです。あるいは一たん切れても次のステージに上がっていくときに、もう少しつなげた別の形での支援制度といったものをつけなければいけないだろうと。それから、もう少しこれを売り出していくためには、地域の中ではなく首都圏とか、他地域との連携を積極的に広げる必要がある。それから、実際に動いている、大学の先生もコーディネート能力というのを今つける必要がありますが、銀行関係の方にもそういうふうなことをお願いする。それから、やはり地域でもう少し地域資源の開発、そういうふうな事柄を広げていかなければならないだろうと思っております。

 最後に参考資料として書いてあるのですが、これは岩手ネットワークシステムというのが岩手の特徴で、今、全国的に名が売れてきてちょっと問題があります。裏の組織のようなものでございまして、全員ほとんど個人参加で、今、1100人ぐらいの人が入ってINS、これはお聞きになった方もいるかもしれませんが、INSは「いつも飲んで騒ぐ」会だという人のつながりの中でやっておりまして、ただし、40も研究会があって、それが独自に活動してそこから先生方と会社の人の結びつきが出て、共同研究が発生してきている。今、200件ぐらい共同研究、今ちょっと不況で落ちています。ですが、200件というのは非常に少ないのですが、岩手大学で工学部、農学部の先生が約200なんですよ。その中で200いっていたというのは、ほとんどの先生が共同研究に絡んでいるという、これは率からすればすごいことで、当然、中小企業との関係の比率も全国、すごいというふうに、地域に近いということがあります。
 これをメーンに我々動いてきたのですけれども、それでも先ほどのように数値はどんどん下がってくる。このネットワーク、人のネットワークがなければもっと落ちたのだろうとは幾ら弁解したところで、それでは次にどうするのだというときに考えたのが、先ほどの金融界と企業、これはもっと連携してほしい。おれのところがもうければ、あとはどうでもいいと、大きな会社の方々はもっといろいろ高い見地からお考えになっていただけますが、やはり地方で言えば銀行さんでも、おれのところの売り上げがというのが、当然、岩手大学でも、よその大学に学生はとられたくないという、そういうようなことは当然あるわけで、その認識を外そうということで、ここに知事、これは行政の長です。お金をばらまいて補助金を出すから何とかしなさいという時代ではなくなった。いい施策はみんなでやりたい。
 先ほどのリエゾン-Iをつくったときの岩手銀行の頭取であった永野商工会議所連合会会長と、それから、うちの大学の学長、これが3名で呼びかけ人になって、いわて未来づくり機構、これは特徴があるのは、具体的に偉い方が提言するのはたくさんあります。それではだめだ。各機関から作業グループが出て、実際に汗を流して実践する。今、5つのテーマで一次産品の高機能化、産業基盤の集積と強化、岩手ブランドの国内戦略、地域力を支える人材の育成、それから、医療、福祉の整備といった形のもので作業グループをつくって動いております。ですが、これが今非常に辛くなっているところの話は、これが中心になって北上川沿いに戦略拠点の認定をしていただきました。ですが、ばっさり切られました。それから、いろいろな企業とのこういう研究をやっていくときに、どうしても大学は基礎研究です。
 ざっくばらんに言って、岩手大学で今各先生に分けている研究資金は1人平均40万です。それがJSTさんからシーズ育成型ということで、基礎的研究にいただいているお金が去年8,000万ありました。200万円で40人の研究者が、つまり、これを支える研究としてやってきたわけですが、残念ながら復活しませんでした。ですから、多分、これはボディブローのように効いてくると思います。それから、先ほどのリエゾン-Iといったものについても、特に国がお金を出してほしいとは、あえて言いません。ですが、そういうことを認知して、いいことだ、進めなさいということは、地元のいろいろな関係者がそれではやりましょう、前向きに動きましょうということを考えていくためには非常に大きな力になります。さっき申し上げた北上川の拠点、これもただコーディネーターが1人、まとめ役に走る人が1人いてくれれば、このいわて未来づくり機構はかなり回ります。
 ですから、何億のお金をカンフルというよりは、こういう地域で言うと数百万、あるいは1,000万でも、どちらかというとユンケル黄帝液よりはリポビタンDや、もっと安いものでもいい、継続的に栄養を与えていただけるような、そのようなものになってほしいという願いも込めて、このリエゾン-Iという、そういうこともご紹介をさせていただきました。

【西山主査】

 ありがとうございました。

 それでは、先ほどの事務局のご説明と岩手大学、岩手銀行からのご説明の内容につきましてのご質問、ご意見等を願いたいと思います。どうぞ。

【柘植主査代理】

 渡辺さんの説明した資料4-2の4ページがきょうの特に、この施策の一番上、大学等の産学官連携機能の強化、これがきょうのメーン・アジェンダですね。ここで意見と、それから、後ほど岩手大の話に関連して質問があるのですけれども、この機能の強化がされたというのは何をもって強化されるかという、やはりこの基本戦略を我々立てる以上、ターゲットをいろいろな面で立てるべきだと思います。それと同じように、その下に書いてある自立化促進プログラム、自立化というのは何を達成したら自立化するのかという、これも必要だと思うんですね。産業的に見れば自立化というのは公的な金がなくても大学が生み出す知の創造が産業が求めているイノベーションに対して貢献し、それが当然、対価として大学に入ってくる。その大学に入ってくるお金は大学院生のtuitionだけではなくて、ひょっとしたら生活費まで、言うならばMIT方式だというと、1人の大学院を抱えるのに先生は500万か600万は外から取ってこないと、しかも、それが持続可能だと。いわゆる自立化というのはどういう条件か。私からすると、今言ったMIT方式が自立化だと思います。先生が1人600万ぐらい取ってきて、大学院生を1人きちっと教育もし、研究もし、社会貢献ができていく。こういう意味で機能の強化、自立化というもののターゲットをこの戦略の中で決めていこう、それは多分、先ほど主査もおっしゃったように時系列的に、一遍にできないけれども、最初はここのぐらい、何年先、ここはこういう目的、こういうことが必要だと思うのです。
 それで、岩手県がほんとうに頑張っておられるのは、私も現場を見せていただいたところもあります。この中で残念なのは、自立化という中で、私は必要不可欠なのは、大学院生に対する経済的な支援、当然、それは教育と絡む生きたお金であるわけです。言うならMIT方式的なイメージを持っています。このあたりがあまりきょうの説明の中、あるいは将来の話に対して書かれていないのが気になります。私はやはり産学官連携と自立化というのは、先ほどの繰り返しですけれども、大学院生に生きた金が行く、それは授業料だけではなくて生活費も含めて、そういう鍛えられ方をした大学院生は世界どこに行ってもやっていける人材を育てて、これが究極の産学官連携だと思いまして、その辺を全然触れていないのが気になります。

【齋藤副学長】

 胸を張って触れていないというところがご指摘の辛いところだと正直言って思います。小手先で言うと、例えば今までのTAとか、そんなつけ方とは別に、大学院生に研究そのものをある程度大学として委託するような制度として資金を提供できるような形にならないか。それからあとは企業との兼ね合いの中で、その研究テーマのいいものについては、大学院生自体がそういう実用化できるようなテーマについて、やりながら資金的な援助もしてもらう。あるいは今行くあてがなくて困っているポストドクターが多い。岩手大学でもそうです。
 ですから、そういうところも民間のところとのそういう兼ね合いで何とかやっていければということを考えているのですが、一番切ないのは、岩手にそういうことをやってくださるような企業が実はほとんどありません。ですので、今やっていることは、その企業のところに何か新しい技術、新しいそういう人も送り込む中で成長してもらって、学生も引き受けてもらえる。何かの支援策もやってもらうような、そういうサイクルのところ、それが知的創造サイクルの、その中身を何とか固めていきたいというのが実は法人化後の我々の考えでした。ただ、それがこの経済ショックのダメージで、実に思うようには行っていないということがあります。
 同じように我々役所、市とか何かから研究のサテライトとか、いろいろな寄附を受けています。これは以前、総務省の規制があってできなかったのですが、岩手大学は初めて北上市から金型鋳造のサテライトをいただきました。随分もめましたが。そういうふうなときに、じゃあ、そういうふうに支援をして、一体地域は何がプラスになったのだ。それが説明できないと市議会で市長は戦えないという、まさに同じ問題を全部抱えています。非常に難しいのは共同研究の件数は最高203件から、去年163件に2年間で減っています。金額は何とか維持していますが、件数が減って、これ以上増えるのは無理だろうと思います。じゃあ、県民所得はというと増えない。大学に来る外部資金がこれ以上増えるか、そういうものが出てくれば確かにイノベーションの結果としてやった成果だと言えるのですが、それらが非常に言いにくいところが現実にあって悩んでいるというのが、特に第2次中期計画のところに何をもって我々は成果として評価してもらうのかというところで非常に辛い思いをしております。
 ちなみに、未来づくり機構の中ではまじめに、岩手は確かに貧乏だけれども、多分、東京の3分の2のお金でも暮らしていけるかもしれません。幸せかもしれません。人の生きがいなり、生活の中で何が大事なことでという、そういう指標ももしかすれば見直さなければ、我々がやっている努力を評価してもらえるような結果がつくれないのではないかという、そういう危惧を正直に我々も考えております。ですので、きょう明確なお答えができないというのが大変申しわけないし、残念なところであります。

【柘植主査代理】

 ぜひ頑張ってください。

【西山主査】

 ほかにございますか。どうぞ。

【三木委員】

 渡辺さんの資料で22ページのところに金融機関との連携というところで、きょう、それが1つの大きな主題だと思い、今の岩手銀行さんの取り組みについて少し質問したいと思っております。実は私自身は地方銀行のあちらこちらの取り組みをかなりヒアリングしておりますので、いろいろな状況も把握した上での質問です。
 実はこういうファンディングをするというときには、経済産業省やらいろいろな省庁、それから、県、市、それから、県レベルの財団、県の中に公的資金を入れた投資ファンドをつくっている県もあちこちにありまして、そういうものと、もう一つ金融機関が独自に動く場合に、今までの中でのそれぞれの金融機関でやはり不足部分を感じているところがございます。岩手銀行さんは、どういったところにその不足部分を感じてこういう取り組みに入られたのか。
 それからもう一つ、実は金融機関としては、これはきょうお答えができないかもしれないですけれども、個別にヒアリングすると明快なる期待するリターンを意識されております。1つでもいいですから言っていただけるとありがたい。
 それから、3点目が大事な点なのですけれども、実はこれ目利きでかなり苦労をあちこちの金融機関がされておられます。先ほどのお話では、どこかの技術評価、専門機関に技術評価をお願いしているというような形だったのですけれども、銀行によりましては、もともと創業型で、ある程度大きくなった中堅企業さんの社長さん複数に事業性だけで評価するというような銀行もございます。この目利きの問題についてどのようにお考えなのか、その点も少しお聞かせいただければと思います。

【稲垣部長】

 確かにインキュベーションファンド、確かにファンドもございまして私どもも出資をしております。ただ、なかなか今、出口が見えないという、上場に向けて出口が見えないというところもございますので、我々とすれば、このリエゾン-Iはどちらかというと入り口、事業の開発をするということに、新しい事業を起こすというところに重点を置いて見ておりますので、ですから、どこに不足かといいますと、ただ、我々は新しい事業を見つけてあげたい、そのお手伝いをしたいということに重点を置いて考えています。

【三木委員】

 はい。

【稲垣部長】

 それから、やっぱり金融機関はどうしても期待するというお話ですけれども、今、実は、きょうお話をしました36社ということで、21年度まで36件、重複して受賞しているところもございますので、36件について育成資金を贈呈しております。何らかの形で事業化しているのが、まだ21年度は今年差し上げたばかりですので、それはまだ事業化になっているかどうかというのはこれからなのですけれども、20年度、21年2月までに差し上げた28件のうち、何らかの形で事業化になっているものは11件ございます。ですから、実用化ということ、製品化されていたり、実際に販売されているというところまでたどり着いたのが28件分の11件ということでございます。我々はそこに何を期待するかといいますと、確かにどんどん成長していって、我々金融機関との取引が太くなればいいという期待はしておりますが、なかなかそこまで発展していくには時間がかかりますので、そこは長い目で見ていきたいと。

【三木委員】

 大体時間、スパンはどのぐらいですか。

【稲垣部長】

 最初は17年ですので、差し上げたのが17件で、先ほどのアイカムス・ラボさん、1回目で差し上げておりますので、もう既に5年たっていますね。このアイカムス・ラボさんはある程度、企業としても大きくなりつつあります。ですから、そういった取引先には融資も少しずつ増えてはきております。ただ、残念ながら差し上げた企業の中でも、もう既に廃業されたとか、その事業を取りやめたというものもございます。ですから、各金融機関、同じだと思いますけれども、企業が成長していって我々にリターンが返ってくるというのをそれほど期待しているということでは、正直言ってないと思います。ですから、そこはほんとうに地域貢献の意味合いが強いところがございます。実際に経営陣からは、預金がどれぐらい増えているか、融資がどれぐらい増えているかというのは、調査をしろとは言われております。実際、調査はしております。

【三木委員】

 はい。わかりました。

【稲垣部長】

それから3点目の目利きの件です。

 目利きは、実は大変我々も、金融機関としては多分皆どこの地域金融機関も同じだと思うのですが、目利きについては大変苦労しているというか、正直、我々が専門的なお話に対して、この事業はほんとうに事業化できるだろうか、成長するだろうかというのは大変難しいところがございます。ですので、我々は今のところは共同研究をしている研究機関、あるいはその視点を通じて今どういった事業があるのかというのを推薦していただいて、その上で、先ほどご説明しましたが、資料の10ページに掲載しているとおり、技術的な面については東北大学と、それから、産業総合研究所、これは岩手に産業振興センターといいまして県の外郭団体がございます。ここを通じて技術部門の評価はここで実はしていただいております。その後、審査委員がございますので、県と共同で設置している評価委員会がございますので、そこで評価をしていただく。その結果を見て我々金融機関で、ある程度の採点が決まっておりますので、80点満点ということで点数を決めておりまして、基準を決めておりますので、そこで何点以上であればこの金額というようなことで基準を決めて差し上げている。正直言いまして、金融機関の目利きというのは、まだまだ不足をしている。そういうふうに感じております。

【三木委員】

 ありがとうございました。

【西山主査】

 ほかにございますか。どうぞ。

【飯田委員】

 今の申請から企業決定までの期間は大体どれぐらいですか。特に目利きのところでどれぐらい時間がかかるのでしょうか。

【稲垣部長】

 大体7月に、6月から7月で受け付けをし、贈呈は翌年2月というスケジュールです。その間に、技術評価に1カ月程度は要しますし、その後、審査会の練習会とかをいたしますので、ある程度期間は必要になってきています。

【西山主査】

 ほかにございますか。どうぞ。

【秋元委員】

 渡辺さんのほうに少し質問させていただきます。先ほど柘植委員が言われましたように、やはり機能強化と、それから、自立可能なということがキーワードだと思うのですが、それで22ページに機能強化に向けての取り組み事例、これは事例ですからこのままでございましょうけれども、例えば自立させるといってもなかなか全部が自立するわけにもいかない。あるいは得意な分野を持っているところは、それでも自立できるだろうというようなことで、ある意味では文科省として分野別の横断的なものを考えるということも、これは極めて重要なのではないかと思うのですが、その辺について何かお考えはございますか。

【渡辺技術移転推進室室長】

 それでは、先ほどの資料4-2で見ていただきましたように、その3ページを見ていただきますと、これまで産学官連携施策としては法人化を契機に大学知的財産本部整備事業ということで、まずは大学の中での知財管理の体制を整備しようということをやってきたわけです。それで、先ほどの説明にもございましたように大学の中での体制が整備されてきて、いろいろ知財ポリシーとかが整備されてきたということで、体制が大体整備されてきた。それから、今度はそういったことをさらに戦略的に展開、発展させていこうということで、平成20年度以降、産学官連携戦略展開事業というのが進められてきたということでございます。ですから、15年度から19年度までの知財本部事業というので体制整備の大枠みたいのは整備されてきたのだろう。今度は産学官連携を発展させていくために、産学官連携の機能を強化していこうということで、こういった事業を進めてきたわけでございます。
 どういった機能を今後強化していくか、非常に重要な課題だと思っています。実はこの点につきましては、この戦略展開事業、それから、それを引き継いだ自立化促進プログラムにつきまして、今年の5月から6月にかけて自立化促進プログラムの事業推進委員会というところで中間評価を行うことになってございます。その中間評価を行う中で国際と特色の対象となった機関につきまして、実際にどういった成果が出ているのか。どういった機能が強化されているのかというところをしっかりと評価した上で、今後足りない部分はどういうところか、国としてどういう大学における産学官連携の機能を強化していくかということを議論していきたいと思っています。その結果はこちらの小委員会にもフィードバックをして、ひいては産学官連携推進委員会でもフィードバックしていきたいと思っています。
 それで、今後、自立化ということでどういったことが課題になっているかというのが、先ほどの説明の中でも若干申し上げましたけれども、まずコスト、やはり産学官連携活動を通じて、例えばホームラン特許みたいな形でライセンスがドバッと入らない限りは、自立的にそれだけでやっていくというのはなかなか難しいだろう。ましてや大きな大学さんであれば、大学の運営費交付金であるとか共同研究の間接経費などを使ってランニングすることはできるかもしれない。そういうのができない小規模な大学や地方の大学などに対しての支援をどうするか、そういうのが非常に大きな課題なのかなと考えています。そういった中で1つの解決策としては、きょう紹介した資料にありますように、ビジョンを共有した大学とかがネットワークを組んでやっていくということによって対応していくということがあると思います。
 その中で、先ほど秋元先生からご質問がございましたが、分野別というのをどう考えるかということでございます。このネットワークというのも単に地域ごとにネットワークを組むということではなくて、やり方によっては分野でネットワークを組むというようなこともあると思います。実際に今、東京医科歯科大学さんを中心に医学系大学産学官連携ネットワークというのを立ち上げに向けて準備をしてございます。そういう形で強みを生かした大学の中のある分野のところがネットワークを組んでいく、そういうところを例えば非常にいい取り組みであれば、それを促進させるような支援を行うとか、そういうこともあり得るのかなと。それはこの小委員会などでご意見をいただいて、ぜひそういうところを推すべきだというようなことがあれば、この調査、検討をまとめていく段階で、そういった形で取りまとめていきたいと思ってございます。

 以上です。

【西山主査】

 ほかにございますか。

 私のほうから、渡辺さんのところで、4ページのところに関係するのですが、これは今までやってきたことのまとめですが、今後さらに発展するときに、もちろんお考えなさっていることだと思うんだけれども、冒頭、柘植委員がご説明なされましたように、文科省のレベルでとらえた産学官連携も十分やっていかなければ、展開、発展させなければいけないのだけれども、今、日本では府省横断的に、きょう仕分けの対象になっている理化学研究所だとか産総研、そういうビッグな独立行政法人の役割が産学官連携の1つの中核をなす部門をなしているんですね。それを入れた状態で、今、日本が一番欠けているのは、その部分が欠けているわけですよ。文科省さんだけで取り組むという部分は、文科省さんのご努力によってできる範囲に入っているわけですね。文部科学省だけのご努力でできない部分が、今、日本が一番欠けている部分なんですよ。ですから、産学官連携で取り組むとしたら、その部分をやっぱり視野に入れた中でいろいろなことを考えないとまずいと思うんですね。ですから、発展版としてもちろんお考えになっていることだと思うのだけれども、今後、冒頭、柘植さんもその部分をおっしゃっていますので、ぜひともそれを入れ込んだ状態でこれから議論の対象にさせていただきたいと考えております。これは要望です。

【渡辺技術移転推進室室長】

 はい。

【西山主査】

 それから、岩手大学さんの取り組みの中で、これは質問なのですけれども、産学官連携というのはあくまで手段で、もう釈迦に説法なのですけれども、人材育成がもう一つの重要な目的だと思います。その際にイノベーションをやっていくには文理融合でやっていかなければいけないということは確かなのですね。科学技術オンリーワンではイノベーションに到達できません。ですから、その場合に、でも、冒頭、柘植委員もおっしゃいましたように、Σ型人材の育成が一番重要ですよね。そういうことを達成するに際しては。そうした場合に、その卵としての、岩手大学における最高理工系人材と言われるドクターについて、岩手県、あるいは岩手大学の中でも、大学の中ではなくて大学の外から、銀行さんから見たり、一般の県民の方々から見たときに、岩手大学のドクターの存在というのはどのように評価されているのでしょうか。これは単なる質問です。

【齋藤副学長】

 正直申し上げまして、ドクターコースがあるのは工学研究科と、それから、連合農学研究科、連大のほうは基幹校をなしておりますけれども、人数、32名の定員がありますが、工学研究科の後期は減らして20ということですが、定員が埋まっておりません。そういう厳しい環境もあります。なかなか地元の中でそのドクターの研究成果といったものが、ホームランではありませんが、すべてクリーンヒットとして岩手大学からというようなことがもう少し出てくると、地元の中でそのドクターコースのある意味がよくわかってくる。そういうドクターの人が、ちょっと話が落ちるかもしれませんが、よく市長さんに言います。そういう人が地元の企業に2人か3人残ってくれて、新しい何か研究テーマが小さな会社からでき上がった。ついでにすみませんが、東京に研修にやってお嫁を連れてきて、それで家庭の3つも増えれば各地域に人口も増えた。そうすると、明らかに目に見える地域の1つの拠点として大学があって、ドクターがあって、そこに行政、あるいは企業がお金を入れて、結果的に地域がそれなりにやっていける形が大学の1つの人材育成の大きな結果として、最後、はね返ってくる。何かそういう目に見えるようなことをしたいというのが実は法人化以降の願いですが、残念ながら胸を張って、そこまで行きましたというところができていないのが大変辛いところであります。おっしゃる意味は身にしみて理解できます。

【西山主査】

 どうも。

 ほかにございますか。もしないようでしたら、所定の時間、ほぼ終わりかかっておりますので、種々の意見を賜りました。もちろん次なる議論の対象となるような課題もありましたし、それなりに意見として取り入れて基本戦略の中に入れていかなければいけないということもあったように思います。そのほかについて事務局のほうから連絡等がございましたらお願いいたします。

(渡辺技術移転推進室室長より資料6の説明)

【渡辺技術移転推進室室長 それでは、資料の6をごらんいただけますでしょうか。産学官連携基本戦略小委員会のスケジュールについてでございます。まず、第2回につきましては、5月17日の10時から12時、テーマは民間企業との共同研究のあり方についての検討を行ってまいりたいと思います。第3回は、6月3日の14時から16時でございまして、この回においては産学官連携を担う専門人材の育成についての検討。第4回につきましては、6月10日の15時から17時で、大学等の知的財産の戦略的管理・活用についての検討を予定してございます。それから、第5回におきまして、7月9日、13時から15時でございまして、産学共創の場の構築についての検討を行わせていただきまして、この第5回をもちまして、できることであればこの調査、検討の結果をまとめていきたいなと考えてございます。

 以上でございます。

【西山主査】

 本日は、皆様ご多忙のところご参加いただきまして、さらに貴重なご意見もちょうだいいたしました。まことにありがとうございました。これにて本日の小委員会を閉会といたします。どうもありがとうございました。

 

午後4時00分閉会

 

お問合せ先

研究振興局 研究環境・産業連携課 技術移転推進室

(研究振興局 研究環境・産業連携課 技術移転推進室)