参考資料 科学技術・学術審議会基本計画特別委員会における主な意見

第1回 科学技術・学術審議会 基本計画特別委員会における主な意見(項目別整理)

○日時:平成21年6月2日(火曜日) 15時00分~17時30分
○場所:文部科学省 第二講堂

<第4期基本計画に向けた主な論点及び今後の科学技術政策に関する基本認識について>

【我が国の目指すべき方向性】

○ この委員会は平成23年から28年の科学技術基本計画に資するものという位置づけであるが、その対象期間よりさらに長く我が国は尊厳と繁栄を保たなければならない。そのために明確な国の姿・課題を議論しなければならない。

○ 現在は歴史的な転換点に差し掛かっている。目先の事で右往左往するのではなく、20年後を見据えて議論しなければならない。20年前にベルリンの壁が崩壊し、それ以後米国主導の極端な資本主義、新自由主義が跋扈し、つい先日破綻した。そして現在から20年先、新しい秩序が生まれるだろうが明確には見えていない。ただし、将来は中国はじめアジア勢が台頭し、世界の勢力地図が大きく変化することは確実だろう。

○ こうした状況を見て、我々に我が国の姿を議論する資格が本当にあるのだろうか。私の世代は、過去数十年間新自由主義の尻馬に乗り、我が国を混乱させ、相対的地位を低下させた張本人である。おそらく今後の国の姿を語る資格はないのではないか。また、指導的な地位にあった方々は全く責任が取れていない状況があるのではないか。

○ 今後、我が国の具体的な方向性を議論するのであれば、色々な場面で、20年先の指導者たるべき志のある若い方々の意見を十分に取り入れるべきである。

○ 我が国の目指すべき方向性として、世界から信頼され尊敬される国が挙げられる。現在、研究開発をフルセットで行える国は日本とEUと米国くらいであり、研究を行いたくても自前で行えない諸外国は多くある。このような状況の中で、日本は世界に対して責任を有しており、グローバルな世界の中での日本の位置づけとして、知的に信頼され尊敬される国となることを明示すべきではないか。日本があって良かったと思われる国づくりを進めるため、まずは日本の強みを把握することが必要。

○ 我が国の今後の在り方については、日本学術会議で「日本の展望」が議論されていると承知しており、適宜、ご報告いただきたい。

【科学技術基本計画の在り方】

○ 国立大学法人の現状を見ると、基礎研究や人材の育成に関する取り組みが難しくなりつつある。基本計画に記載されていることが着実に実行できるようにすることが最も重要。

【研究開発投資の在り方】

○ 科学技術創造立国を目指す我が国にとって、民間の研究開発投資の割合が8割程度(国は2割程度)という現状は、政府の負担割合が低いという印象を受ける。国だけの取組みに論点を置くのではなく、科学技術政策の全体の在り方を俯瞰した上で議論を進めていくべき。

○ このような現状の結果として、我が国の基礎科学の疲弊と高等教育へのしわ寄せが生じている。産業界の投資を続けていただくのはもちろんだが、政府も公財政支出を増やす必要がある。

○ 大学の改革とともに、高等教育費の充実が不可欠。OECD平均に達するためには、3兆円程度の予算が必要であり、政治課題にしていくことが必要。教育目的税を作るべきというのが個人的な意見。

○ 科学技術予算の負担について、民間が基礎研究予算を増やすというのは、今の時勢では考えづらい。限られた予算の中で、我が国として未来に向けて一層の投資をしていくべきか、若しくは高齢者の年金等の経費を削減すべきか、という我が国の大きな方向性を考えた場合、私は未来に向けて投資をしていくべきと確信している。社会全体でノンプロフィットな予算を未来に向かって使うことについて、逃げずに議論することが必要。

○ グーグルがスタンフォード大学から事業化したことが良く話に出てくるが、研究開発の最初の段階から全てベンチャーキャピタルが資金支援してきたというのは嘘であり、事業化の最後の段階でベンチャーキャピタルから資金が出てきたにすぎない。事業化までには長い経緯があり、公的資金等のノンプロフィットな資金が着実に投入されている現状や、純粋にプロフィットに基づく資金というのは米国でもそれほど多くないということを正しく把握した上で、公的な資金の投入の重要性を勇気を持って議論すべき。

○ 厳しい財政状況の中で、科学技術への投資も我慢しようというコンセンサスが出てくることは危険である。このような状況にあるからこそ、投資が必要と言うメッセージを発信していくべき。

【基礎研究と課題解決型研究の在り方】

○ 我が国の方向性や国の姿を考える上で、課題解決に向けた研究も大切だが、課題に振り回わされることなく数十年後を見据える必要もある。

○ 基礎研究を着実にサポートしていくことが技術の多様性を生み、我が国の知的な存在感を高める事になる。

○ 問題解決型の研究に重点を置きすぎると、問題発掘能力が疎かになる虞があり、留意すべき。

○ 基礎研究の多様性は重要であり、これのサポートを具体化するための方法論が必要。

○ 世界をグローバルに見渡せば、日本が従来のような改善・改良型の研究開発を進めても勝負は見えている。独創的でリスクの高い基礎的な研究を地道に行うことが求められる。

○ 基礎研究と課題解決型研究の資金の支援の在り方や評価について、異なるシステムで運営していく必要がある。基礎研究にまで成果や期間が求められるのは望ましくない。

○ 基礎研究と課題解決型研究という二者択一型の議論ではなく、研究開発には多様性があることを踏まえつつ、基礎から開発までの研究段階それぞれに施策を講じていくという理念を持つことが、長期的な国の在り方につながるのではないか。

○ 基礎科学とイノベーションの双方とも重要であり、それぞれを分けて両方の議論を積み上げるべき。

○ サイエンスとイノベーションをつなぐ橋渡しの仕組みが必要なのではないか。

○ 厳しい財政状況の中で、国として取り組むべき分野を明確にすることが必要。基礎科学については国が責任を持って進めることが重要であり、民間に任せられることは民間に任せるべき。また、優れた指導理念を社会に与えることにより、民間企業も将来の国のために取り組んでいるという意識を共有していくことも必要。

○ 基礎研究というと大学の個人研究を想像するが、それ以外でも、システムとして基礎研究をどのように振興していくか、また国家基幹技術のようなインフラをどのように取り扱っていくかについても整理が必要。

○ 議論の進め方について、サイエンスならサイエンス、イノベーションならイノベーションというように、それぞれの部分に分けて建設的に議論するということが必要。また、目標設定について、非常に抽象的であったり、極端に数値目標に振れたりすることがあるので、問題解決型、課題設定型、アスピレーション設定型等の目標設定の在り方にメリハリを設けることが必要。

○ 基礎研究と応用研究については、比率の問題があり、国として、基礎研究にどの程度の予算を配分し、またイノベーションに配分するべきか考えるべき。強い技術だけではなく、弱い部分もある程度進めなければイノベーションは起こらない。

【融合研究の在り方】

○ 研究者が自発的に学際融合型の基礎研究に取り組むための方策についても議論していく必要があるのではないか。

○ 単純に科研費や運営費交付金を増やせばいいというものではない。基礎研究の推進においては、研究者の知を統合させていくことも極めて重要である。このような研究のシステムを作っていく必要がある。

○ イノベーションで一番チャンスがあるのは融合分野。融合的な基礎研究を大学で振興していくことが必要であり、こうした人材がイノベーションを生み出す流れをつくるべき。

【人材育成の在り方】

○ 人材育成について、科学技術人材の育成となっているのは違和感がある。本当に優れた人材は、科学や技術に親近感を持った人材を育てる中からしか生まれない。第三期基本計画における科学技術システムの項目から、より格上げして記載すべき。

○ 人材育成について、科学技術の国際活動や科学技術と社会をつなぐ人材の育成が極めて重要であり、このような新しい人材を、意識的に一定数育成していくことが必要。

○ 今は、広い視野を持った博士課程レベルの者を活用して、社会的なイノベーションを生み出していく時代。博士課程の在籍者への経済支援や、産業界が求める博士のビジョンやモデルの明確化を図り、大学と産業界のミスマッチを解消することが重要。このためには、公的財政支出が必要。

○ 我が国の国際競争力強化の基本戦略は人材立国戦略であり、この問題を真正面から捉えることが必要。我が国の人材育成の目指す目標は、第一に世界トップレベルの人材育成であるが、さらに、我が国の科学技術全体を幅広く支える若手研究者の育成が重要。欧米をはじめアジアの他国と比較しても、我が国の科学技術を世界トップレベルに持ち上げるため、高等教育と人材育成の明確なビジョンを打ち出すことが重要である。高等教育に対する予算を明日への投資と考え、国民の協力も得た上で、戦略的かつ実行可能で、具体的な人材育成の方策を科学技術基本計画に盛り込んでいくことが必要。

○ 中国人は(年間)4,300人の学生が米国でPhDを取る。韓国人は1,300人。一方で日本人は220人に留まる。中国はこの人脈が大変な力を発揮する。このような現実の中で、今後、日本はどのように生きていくのか、という視点を持った上で博士の育成を考えていくべき。

○ 企業が求める人材を考える場合、明らかに需要と供給の関係があり、供給サイドが需要サイドのニーズを汲まなければ、そこに雇用は生まれない。大学が企業の求める人材を輩出しているのかという議論が必要。

○ 日本がグローバルな人材をどのように捉え、また育成していくのかが重要であり、具体的方策について盛り込んでいくべき。

○ 日本では学生に対する支援が圧倒的に足りない。また、博士の学生に資金を渡したとしても、修士の学生が博士課程に進まない原因は、キャリアパスが全く見えないため。博士になることで何が良いのか、また企業に就職する際にどのようなキャリアパスがあるのか、を見せることが必要。さらに大学においても、テニュア制度など、優れた人材を残すような仕組みを根付かせる必要がある。

○ 日本の大学院後期課程学生の多くは、出身学部と同一の大学に進学。上位大学の優秀な学生ほどこの傾向が強い。流動性を高める仕組みを考えることが必要。海外の研究大学に留学して、PhDの学位を取得するような流れをつくることも非常に重要。

○ 学生の引きこもり、学生のインブリーディングは避けるべき。学生が海外に行かない理由は、帰ってきた時に、安心して働ける環境に不安があるため。

○ 人材の育成・確保だけではなく、キャリアパスを見据えた人材の活用についても検討することが必要であり、学生に対して、今後のキャリア形成の在り方をメッセージとして伝えていくべき。

○ 日本は博士が多すぎるのではないか。国の大きさから見ても、大学や大学院の数が多すぎる。研究所や大学は研究を進める博士を欲しい、また民間でも応用の利く博士は欲しいといった需要があることから、今後の博士育成の全体の在り方について整理が必要。

○ 博士については、質と量の両方を拡充していくべき。

○  産業界には博士モデルの提示を期待したいし、このような議論を積み重ねていくべき。

○ 今の博士課程では、大学側も上手く進まないことは理解している。それをどのようにしたら良いかというところを芯に据えて検討し、盛り込んでいくべき。

○ 我が国では、人材政策が責任を持つ形で行われてこなかったのではないか。内閣府で人材問題をどうしていくのか、きちんと考えた上で、強い要望を出していくべき。

○ 日本の雇用制度の在り方が一番大きな課題。大学として何かできることがあるのか、この点を視野に入れつつ議論すべき。

○ 知を生む研究者と事業家が同じであるような例はほとんどない。一人で全てを担うことを期待すること自体が間違っており、それぞれの役割に応じた人材を育成し、かつ多様性を持たせるということでネットワークの形成が重要となる。

【科学技術国際戦略の在り方】

○ 人口減少期の研究者の在り方を考えた場合、海外からの研究者の受け入れについても、積極的に考えていくことが必要である。

○ 国際化には様々なレベルがある。若い研究者は自らの意欲を試すということで移動は容易だが、ある程度エスタブリッシュされた研究者でネックとなるのは給料問題。

○ 留学生に関しては、優秀な研究者を日本に根付かせるということが重要。英語の授業を増やすばかりではなく、留学生に対して日本語教育を実施し、就職先の面倒もみるという取り組みを進めることで、日本を好きになってもらうことが重要。

○ 海外の研究者の旅費等のサポートも必要。本当に優れた研究室であれば、世界の情報が流通しており安心だが、そうでない研究室の場合は常に不安で世界中を飛び回りたいと思うようになるのではないか。

○ 海外に若手を出さなくてはならない、また呼び寄せなければならない。外国人研究者の日本での適応策についても、きちんと提言していく必要がある。

○ テニュアトラックを国際化の端緒として進めているが、テニュアトラックであれば根付くと言う人が応募してきており、また適当なサポート体制があれば、若手研究者は自ら生活様式等を学び、スムーズに馴染んでいる。ただし、大学側が長期に渡りこのような海外の研究者を採用するつもりがあるのか疑問であり、この点、未だ大学は保守的。

○ 日本人にとって英語というのは本質的な問題。イノベーションやネットワーク作りをする際は、どうしてもネックになる。ここを解決しなければ先に進まない。

○ 海外の研究者が日本に定着するか否かのボトルネックとして、英語で議論をする上での物足りなさもあるのではないか。

【科学技術と社会の関わり】

○ 科学技術政策がいかに社会ニーズを捉えるのかという点についても議論が必要。社会システム全体をイノベートする中で、科学技術政策がどのような点で役割を果たせるのか、またどこが役割を担うのかという点も含めて議論すべき。

○ 「専門知を活用できる社会」を目指すべき。科学技術のみで課題を解決できるという議論になりがちだが、課題解決のためには、様々な専門家、専門知をもった方々の活用による社会全体のイノベーションが必要であり、一般国民の協力も不可欠となる。このような視点を持った上で政策立案を行うべき。

【科学技術政策の科学】

○ 「科学技術政策のための科学」に各国が取り組んでいる。より戦略的に科学技術政策が運営されるよう、エビデンスに基づいた政策立案が行われ、また実行され、評価されたのかを把握することが重要。これに資するため、今後は統計情報の体系的な整理が必要。

【運営費交付金の確保】

○ 基礎研究の多様性の確保は重要であり、これを支える運営費交付金の確保が必要。

○ 大学の若手教員数が減っているが、これは運営費交付金の1%減と人件費削減がダブルパンチで効いているためであり、大変な危機感を持っている。

【大学改革】

○ 大学は基礎研究や人材育成といった非常に重要な課題に応答するため、どのような活動をしてきたのか疑問。日本の大学のグローバル化はどのような状況にあるのか、という点について把握した上で議論を進めるべき。また、基礎研究を取り巻く状況を把握した上で、今後の大学における研究の在り方を検討していくことが必要。

○ 人材育成やグローバル化を含めた大学改革の一層の推進を図ることが必要。

【大学の施設設備の整備】

○ 海外の大学生にとって魅力ある大学を作るため、先進的な施設設備の整備を進めていくべき。

【科学技術の情報基盤整備】

○ 学術情報のオープンアクセスを促進するため、第三期基本計画からより踏み込んで「論文の無償公開を義務化する」等の記載も必要ではないか。

○ 科学技術情報のデジタル化は欧米諸国と比べて圧倒的に遅れている。第四期基本計画では環境基盤整備をより強化していくべき。

○ 日本の場合は、全ての論文をすぐにオープンアクセスできるようにすることは難しい。分野によっても状況は異なることから、論文公開の時期等には幅を持たせた対応が必要。

【人の動く仕組み作り】

○ 海外と日本の研究費の特徴を比較すると、海外では国の資金が民間に流れ、また民間の資金が大学に流れる。これにより人も動くことになるため、このような仕掛けも必要。

科学技術・学術審議会 第2回基本計画特別委員会における主な意見 (項目別整理)

○日時:平成21年7月7日(火曜日) 15時00分~17時30分
○場所:文部科学省 第二講堂

<今後の科学技術政策に関する基本認識及び第4期科学技術基本計画に向けた検討に当たっての論点整理について>

【科学技術の政策目標として目指すべき国の姿】

○ 21世紀は科学技術を中核とする知識基盤社会であり、最高の知の府である大学・大学院に国の内外を問わず志のある最優秀の若者を集め、世界最高の人材を育成しなければならない。これを阻むものは、大学院の体制が世界水準でないこと、大学人や学生の意識の欠如、公財政支出の決定的な不足の3点であり、第4期科学技術基本計画にあるべき姿を盛り込み改革することが必要である。

○ 若い世代を育てていくことが特に重要であり、子ども達が自らの未来のイメージを描くことができ、自らが社会を作るという気持ちや志を持てる社会を目指すべき。

【科学技術・イノベーションの位置づけ】

○ 新たに科学技術・イノベーション政策を柱として取り上げるのであれば、これまでの科学技術基本計画とは明確に異なる点を分かりやすく打ち出していくべき。

○ 科学技術・イノベーションの定義を明確にすべき。イノベーションが社会システムの変革をも含むと定義するのであれば、科学技術・イノベーションを進めていくことで、目指すべき国の姿が実現できるというメッセージを出していくべき。

○ イノベーションを創出するためには、ある程度の社会実験を行う必要がある。科学技術の成果を社会に実装していくためには、自然科学の研究者とは異なるマネジメントのスキルや技術が必要であり、こうした観点からも人文社会系の研究者との連携も必要である。

【研究開発投資及び科学技術の戦略的重点化】

○ 科学技術・イノベーションに取り組むに当たり、どのような分野で、どの程度の規模・スケールが必要なのか、またどのような形で取り組みを進めていくのかについてきちんと議論すべき。

○ 国家財政が厳しいとは言え、必要な投資額を明確に示すべきであり、例えば現在の目標額の倍増が必要ならば、それをきちんと提言すべき。

○ 次期基本計画では、何にどの程度の金額が必要となるのかという投資目標を明確に入れ込むべき。

【国際活動の戦略的推進】

○ 国際的なネットワークづくりのための具体的な仕組みや予算措置を行うべき。また、海外からの留学生に対する経済的な支援も、日本人に対する支援と同様に進めるべき。

【人材養成】

○ リーダーシップを持ち、世界で活躍できる人材を育てることが、世界貢献になると認識すべき。

○ 人材育成においては大学院の在り方が極めて重要であり、特に学生に対する奨学金や学生の流動性を高めるための具体的施策について盛り込んでいくべき。

○ 社会には多様な人材の要請があるが、既存の大学のシステムがこれに十分対応できる形になっておらず、今後、大学自らも大きく変わっていくべき。

○ 社会の要請に応える人材が必要であり、産業界が、大学と強く連携して、大学院教育に建設的に参画していくべき。

【その他】

○ 教育研究機関である大学を、論文生産性等のコストパフォーマンスをもって評価するということは慎重であるべき。効率的に論文を出すということのみではなく、教育効果がどの程度あり、どのような人材が輩出されてきたのかという点を評価すべき。

○ 研究開発の成果事例集が科学技術政策研究所により作成されているが、このような資料を活用し、基礎研究の成果が基になり、産業競争力の強化につながっているということを、社会に対して広くアピールしていくべき。

○ オープンイノベーションに関しては、ネットワーク化した社会の中で、一つの研究テーマに膨大な研究者が集まり、研究開発を行うという取り組みが進むと考えられる。このような状況を予測した上で、世界の流れに乗り遅れないように、必要となるシステムを構築して行くべき。

○ オープンイノベーションが進展する中で、大学側は成果や情報を外に出したいと考える一方、知的財産を確立しなければ出せないというジレンマに陥っており、この課題をどのように扱っていくのかを議論すべき。

○ デザインやサービスといった無形資産に対する投資が新たな価値創造の上で重要。

科学技術・学術審議会 第3回基本計画特別委員会における主な意見(項目別整理)

○日時:平成21年7月27日(月曜日) 15時00分~17時30分
○場所:東海大学校友会館 阿蘇の間(霞ヶ関ビル35階)

<科学技術・イノベーションの国際戦略について>

【国際戦略の必要性】

○ 何故、国際戦略が必要なのかを明確にすることが重要。現在の日本は鎖国のような状況にあり、世界が大きく変化している実状を国民全体に知らせていくためのメッセージが必要。

○ 国際戦略の意義は、日本人の価値観の正当性を海を越えて理解してもらう、その結果として信頼感を得るということ。

○ 我が国は諸外国と比べて、国としての国際戦略が明確ではなく、産業競争力の強化に向けて、科学技術によって先端分野を切り拓かないと生き残れない、と明確に位置づけることが必要。

○ イノベーションの観点では、人材の多様性が決定的に重要。新たな価値は、互いの意識をぶつけあうことで生まれてくるため、どのように世界から知的人材を日本に取り込むか、特にアジアの人材を取り込んでいくかが重要。

【国際戦略の在り方】

○ 「戦略」ということであれば、どこに、どのくらいの資金が必要で、その結果、どのような成果が出るのか、という点を明確にすることが必要。

○ 国際協力・国際協調のための国際戦略をどのように進めるのか、我が国が強みを有する部分がどこか、どのような国や地域と付き合っていくのか、という具体的な議論を進めることが必要。

○ 日本の科学技術は評価軸が曖昧であり、誰もが理解でき、納得できるグローバルな評価軸を明確にすることが国際化のために必要。

【頭脳循環(ブレインサーキュレーション)】

○ 「世界中から優秀な人材を採り、科学技術創造立国で立つ」という姿勢を、国の意志として明確にすべき。

○ 現在の日本社会は、多様な人材を受け入れて活用していくための社会の仕組みがインフラとして整備されていないことが問題。

○ 海外に留学しない理由のみならず、海外に留学した経験のある人は、何故リスクを取ってでも留学したのか等の理由を調査すべき。

○ 日本人と外国人の研究者の価値観の違い、あるいは国籍を乗り越えるためには、外国人と研究開発を積極的に行う必然性を見い出せる仕組みを構築することが必要。

【我が国の情報発信力】

○ 情報発信力については、研究者レベルではある程度の取り組みが行われているが、政治家や、官僚、さらにはマスメディアの発信力が弱いことが問題。

○ 日本が国際化を進めたとしても、現実には、日本に来た研究者は多少の日本語を話すことが求められることから、日本も中国の孔子学院に相当するような海外の日本語教育の場を設けるとともに、海外で日本の魅力・文化・情報を発信していくべき。

○ 科学技術アタッシェの役割は非常に重要。日本では、職務のローテーションが短く、諸外国の方々とのネットワークが作れていないことが問題。人の絆は長い人間関係から作られるものであり、スペシャリストとして長く職務を続けていくことができる仕組みをつくり、信頼関係を構築していくことが不可欠。

○ 国際的なプレゼンスの向上に資するよう、PH.D人材をどのように配置していくべきか考えるべき。

【その他】

○ 大学院生は企業のニーズに極めて敏感であり、日本がより一層国際化を進めるに当たっては、企業側から強力なメッセージを出していくことが必要。

○ 博士号取得者に求める能力について、大学と企業との間にミスマッチがあるのは確かだが、一方で、博士号取得者を採用した企業の満足度は高い面もあることから、互いにコミュニケーションを取るための場を設けるべき。

○ 日本の大学院生の英語力が下がっており、きちんとした語学力をつけさせることが必要。

○ 国際標準は知財戦略の一環としてではなく、ODA、共同研究、ブレインサーキュレーション等のあらゆる施策や考えを総動員して取り組むべき問題。また、先進国のみではなく途上国とも協力した取り組みも必要。 

科学技術・学術審議会 第4回基本計画特別委員会における主な意見(項目別整理)

○日時:平成21年8月19日(水曜日) 15時00分~17時30分
○場所:東海大学校友会館 阿蘇の間(霞ヶ関ビル35階)

<科学技術・イノベーションの人材戦略について>

【総論】

○ 戦後続いてきた古き良き時代が終わり、企業も大学も従来の方法では立ちゆかなくなってきたということを共通認識として持ち、今後の科学技術・イノベーション政策を実現していくためには、人材育成を政策の中核に据えなければならないという姿勢を明確にすべき。

○ 科学技術人材の育成について検討する際には、工学や理学など、それぞれの分野の現状を踏まえて議論すべきである。例えば、数量的に十分なのか、あるいは質が確保されているのか等を明確にしていくべき。

○ 大学のグローバルな人材獲得競争という世界の潮流から日本は孤立しており、世界の中での我が国の人材養成の位置づけを考えていくべき。

【企業の採用活動の早期化】

○ 企業が早期の採用活動を行うのは大学教育を信頼していないことが一因であり、企業と大学とが学生に求める能力を共有した上での人材育成を考えていくべき。

○ 青田刈りのデメリットを無くすため、学生のゴールが「採用」でなく「卒業」にあることを明確にした上で、採用が決まった後の大学院教育も充実・徹底するべき。

○ 学部4年生のはじめに内定が決まり、残り一年間学ばないような状況にあるのは日本だけ。産業界は、採用活動の早期化の是正に向けて積極的に提言を出していくべき。

【学生の質の確保】

○ 学生支援機構の奨学金の多くの部分は返還しなければならず、大学や国からの経済的支援が少ない状況で、大学院生の質を確保するのが困難な状況。

○ 工学系のドクターのレベルを産業界と一緒に考える機会が必要。分野によって状況は様々であり、きめ細かい対応を検討すべき。

○ 社会人ドクターについて、週末に1回だけ授業を受けて博士号を取るような状況で良いのか疑問。社会人が博士号を取得するための仕組みを考えるべき。

○ 学生が、初等中等教育を通じて、学習する人間として教育されていないということ自体が基本的な問題。

○ 企業や組織の中でのイノベーション創出を実現するため、中核となる人材をどのように継続的に生み出していくのかを考える上では、日本が本来強みを有する学士等の中堅層の厚さを保持あるいは強化していくことが必要。

○ 諸外国に比べ、教員の数に対して学生の定員数が多すぎることが問題。

【テニュア・トラック制】

○ テニュア・トラック制について、「いい人材を残す制度」という趣旨をより明確にすることが必要。今後、テニュア・トラック制の運営の在り方について指針を出すべき。

○ 現在の20倍もの応募状況では、優秀な学生であったとしてもリスクが高く挑戦しにくい。これでは「競争」ではなく「くじ引き」になってしまう。キャリアパスとして確立できるよう、テニュア・トラック制をより充実していくべき。

【その他】

○ 科学技術人材の育成は重要だが、より幅の広い人材育成の観点も必要であり、社会科学、人文科学等のバックグランドを持つ科学技術人材の育成を進めていくことが、我が国の幅広い人材の育成につながるのではないか。

○ はみ出し人材をどのように育てていくかが課題。米国では各州で子どもたちの才能教育を行う仕組みがあり、そこで育った子どもたちが様々な場で活躍するなど、多様なキャリアパスを特別の才能教育が支えており、日本においても検討すべき。

○ 学生が大学院博士課程に進学しない理由として、博士の研究の能力が給料等に適切に反映されない点が挙げられる。

○ SSH(スーパーサイエンスハイスクール)について素晴らしい成果があがっており、中長期的に全国の全ての高校に広げていくべき。

○ (秋田県を例として)博士号取得者を小中学校の教員として特別に採用するという試みを全国的に進めれば、新たなキャリアパスとなる。こうした取組を初等中等教育に採り入れるべきではないか。

お問合せ先

研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室

(研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室)