平成21年8月28日(金曜日) 15時~17時
文部科学省(3階) 3F1特別会議室
(委員) 白井主査、野間口主査代理、柘植委員、西山委員 (臨時委員) 石川委員、石田委員、竹岡委員、西尾会員、本田委員、三木委員、南委員、森下委員、渡部委員 (専門委員) 秋元委員、井口委員、羽鳥委員、平田委員、牧野委員
大臣官房審議官(研究振興局担当)、研究環境・産業連携課長、技術移転推進室長代理、ほか
科学技術政策研究所 総括上席研究官、富士通総研 経済研究所 主任研究員
午後3時01分 開会
【白井主査】
それでは、定刻になりましたので、ただいまから第5期の科学技術・学術審議会技術・研究基盤部会の産学官連携推進委員会、第3回を開催させていただきます。
大変お忙しい中、ご出席ありがとうございます。きょうは科学技術政策研究所の長野総括上席研究官、それから、富士通総研経済研究所の西尾主任研究員にご出席をいただいております。後ほどご講演をお願いしたいと思っております。
では、初めに委員の出席の確認と配付資料の確認を事務局からお願いします。
(事務局より、出席及び配布資料の確認)
【白井主査】
議題1は、産学連携と知的財産の創出等に関する大学等における意識と動向についてです。まず、科学技術政策研究所の長野総括上席研究官においでいただきましたのでご講演をいただいて、その後、それをもとにして意見交換をできればと思います。
それでは、長野研究官、お願いできますでしょうか。
【長野総括上席研究官】
ただいまご紹介いただきました長野でございます。本日はよろしくお願いいたします。
それでは、スライドを使わせていただきまして、資料1として配付いただいておりますけれども、そちらを用いながらご説明申し上げたいと思います。本日お話しする内容につきまして、ここに書いてありますように、また、机上にも青い冊子としてお配りいたしましたが、昨年度の研究振興調整費により、第3期の科学技術基本計画のフォローアップに係る調査研究の一環としましてイノベーションシステムに関する調査、これは実は5部作になってございますが、その中のうちの第1部としまして産学官連携と知的財産の創出・活用といった内容でまとめたものでございます。これをもとにしまして本日の資料、この中から抜粋といった形になりますけれども、まとめさせていただいたものをご報告申し上げたいと思います。
ここで行われた調査の狙いでございますが、産学連携等の活動が活発な公的研究機関、大学、独法を取り上げております。この機関での意識、活動状況、抱える課題と対応する取組を把握・分析するということ。それから、機関に所属する研究者に着目しまして、活動を活発に実施している研究者の意識、活動状況、及び、課題等を把握・分析するといった形で、これらの結果より今後の方向性について示唆を得ようといったものでございます。
調査分析の対象でございますが、まず、活動の活発な機関と研究者に対する書面調査ということで、具体的には60機関を抽出しております。共同研究の件数、特許出願件数、及び、ベンチャーの設立累計の大きさ、また、大学の属性等も加味しまして60機関を選んでおります。書面調査を担当部署、それから、機関ごとに10名程度の研究者を選んでいただいて、10名の方に書面調査をしてございます。
それから、もう一つがケーススタディーということで、その書面調査の対象機関の中から11機関を抽出しまして担当部署、及び、書面調査の研究者の中から機関当たり1、2名を抽出しましてケーススタディーをしております。これらの結果に基づきまして全体の調査結果の分析をしております。分析に当たっては、まず機関について全体を見る。それから、研究者に対して全体を見るといった形で分析結果をまとめております。これからはその機関、その後、研究者といった流れでご説明を申し上げたいと思います。
まず、機関に対してですが、産学連携活動の重点変化ということで、これは機関に対しての書面調査の対象となった機関についての結果でございますが、2008年8月時点で産学連携活動全体の中で、特に重視・強化している活動は何かといった問いに対するものでございます。ここで1位、2位、3位と3位まで挙げていただくといった形で問いを立てております。その結果、共同研究、受託研究が最も重視され、強化されている活動であるという結果が得られております。また、2003、4年当時より弱まっている活動ということでお聞きしますと、多くの機関でベンチャー支援、奨学寄附金に係る活動が弱まったという結果が得られております。
次にその中身でございますが、共同研究・受託研究についてです。これは機関向け書面調査の結果でございますが、2003年当時から昨年の調査時点の共同研究・受託研究で重視する活動の変化でございます。2003年当時では相談窓口・機能・体制の強化といった機関内体制整備を重視しております。現在では産学のニーズとシーズのマッチングなどの活動を重視している機関が多いということが見られます。
次に大学等発ベンチャーです。国全体で見ますと、各年設立数で見ると2004年度当時をピークにして、その後、各年設立数の減少が見られています。具体的に機関でどのようになっているかということで見ますと、2003年当時と比べると、2003年当時、それから現在、昨年時点ですが、どちらも相談窓口・機能・体制の強化、及び、インキュベーション施設・設備の貸与等を重視するということが多く、ここは傾向としては大きな変化が見られていないということがわかります。
次に知財の創出、管理活用です。同様に機関向け書面調査の結果でございますが、知財管理等で重視する活動の変化は、2003年当時、約半数の機関が相談窓口・機能・体制の強化というのを最も重視しております。次いで全体で見ますと、知財専任職員の確保・充実といった機関内の体制整備に重点が置かれているということがわかります。それと比べて現在は、知財のライセンシング等に向けた活動、それから、知財の維持管理といった知財活用そのものを重視しているといったところに移行している機関が多いということがわかります。
次に産学官連携担当部署での産学連携活動のノウハウの活かされ方です。同様に書面調査ですが、今までノウハウが活かされている、または今後活かしていきたい活動は何かという問いでございますが、これも実績で見ますと特許出願や管理に活かされているという認識、今後どうしたいかといった意向については新たに共同研究先の開拓、及び、保有知財のライセンスといった形で外部に向けた積極的な活動に活用したいという意向があらわれているということがうかがえます。
次に研究者に向けた書面調査の結果からですが、研究者に対して機関の支援体制についての評価というのを伺いました。まず、評価できる点としましては、関係部門の組織、人材を挙げた研究者が最も多かったということがわかります。ここで注意すべきは、この研究者というのは実際に産学連携活動を活発に実施している研究者でございます。かかわっている中で部門の人材等を評価しているということが言えると考えられます。それから、改善の必要を感じる点ということで見ますと、産学連携活動に対する教職員の業績評価の仕組みづくり、及び、企業との継続的な関係構築であると認識する研究者が多いということがわかります。
次に機関として抱える課題は何かということです。これは書面調査の結果の中の自由記述の中から抽出して、それから整理したものでございますが、その中でやはり最も大きかったのは機関の人材育成・確保、及び、ノウハウの承継ということで、全般的な人材不足ということが挙げられるところもございましたし、コーディネーター等の専門人材の確保のための問題、及び、知識・ノウハウの蓄積、承継といったようなことが多く挙げられていました。また、そのほかには機関の組織的な対応、知財の管理活用、知財戦略等の個別活動、また、共同研究、ベンチャー等の個別問題ということが挙げられております。
次に機関の特徴的な取組として、特にケーススタディーの中で機関が抱える課題への対応といったことを中心に特徴的な取組を抽出してまいりました。その結果、専門人材の育成・確保、活用についての取組、他大学等の連携で知識リソースを共有するといった取組、及び、イノベーションの効果的創出を目指した取組としまして、1つのモデル的な取組かと思いますが、大学等をハブ・「場」の機能とするような取組、研究成果を特許出願する際の工夫、及び、取得した知財を実際に積極的に活用するような取組といった形でモデル的な取組も見られているということがわかります。
次に研究者に対してです。研究者に対しての書面調査の結果ですが、まず、産学連携の目的は何かということで見ますと、産学連携に取り組む主な目的というのが、自身の研究成果の技術移転というのが最も多い回答です。それから、外部資金の獲得ということが大きかったというのも見逃せません。次に研究者自身への効果でございますが、これについては出口を意識した研究の実施というのを最も大きな効果と認識する研究者が最も多かったです。また、学生に対する教育的な効果などの研究室の活性化、新たな研究テーマの創出、及び、新領域の研究の進展といったことについても多く認識されております。
次に、研究者が研究を進めていく上での公的研究費の活用状況とその後の動向について、産学連携関係の公的研究費の活用状況で見ています。まず、最初に公的研究費の活用状況ということですが、研究者全体のうち約7割の研究者が何らかの形で公的研究費を活用した経験を持っています。この7割の研究者についてですが、公的研究費を獲得した後の動向を見ますと、その中のうち約2割が公的研究費の終了時点で事業化やベンチャー創出に至ったことがあるといったことで答えられています。
次に研究者の特許と共同研究のつながりでございます。これも書面調査の結果ですが、ここで分析しましたのは、共同研究件数と自らの関係する特許出願件数の両方とも平均以上の研究者、それ以外の研究者に分け、全体でn数(総数)は500でございます。それを2つに分けて特許と共同研究とのつながりの経験について見ております。その結果、共同研究から特許へのつながりを見ますと、上が平均以上の研究者、下がそれ以外の研究者ですが、つながったことが多々あると答えた研究者の割合は平均以上の研究者が相当多いということがわかります。
逆に、特許から共同研究へ発展したかどうかということについて見ますと、これも同様に上側が平均以上の研究者でございますが、発展したことが多々あると答えた研究者が、それ以外の研究者よりも割合が多いということがわかります。これらより共同研究と特許の実績が多い研究者では共同研究と特許との間に結びつきが多い傾向が示されると考えられます。
次に、研究者のインタビューの中で実際に具体的に産学連携活動をどのような状況で行っているかということを調べ、その中でわかった特徴をまとめました。まず、産学連携と教育活動の関係で見ますと、教育効果について相当意識されている研究者が多い。また、秘密保持の考慮、成果公開の条件、学生参画のモチベーションといった形で何らかご苦労されながら独自の取組をされていることがわかります。
次に産学連携と研究者自身の研究活動との関係では、アカデミックな研究とのバランス、自身の研究活動への刺激、及び、産学連携活動における研究資金の確保のためにやっているということで、それぞれ取組が見られます。また、社会との関係、産学連携活動のスタイル・重視する点で見ましても、研究者によって相当異なりますが、産学連携活動の特徴、研究者独自の取組、知財に対する取組・考え方というのを報告書の中ではまとめてございます。
次に、研究者自身が認識する課題ということで、書面調査で見ております。ここで認識している問題点は何でしょうかとお聞きしたところ、圧倒的にアカデミックな研究と産学連携活動のバランスというものを挙げる研究者が多いということがわかります。具体的にどういった課題が出てくるかということで、書面調査の自由記述から挙げておりますが、アカデミックな研究とのバランスの中では基礎的研究との関係や労働バランスの問題、及び、企業側との価値観の違いがございます。また、知財や機密情報といった問題が挙げられております。それ以外には、産学連携活動を実施する際の評価、作業負荷、また、連携先企業との関係、そのほかベンチャー企業の環境、研究分野特有の問題、マネジメントといったような課題が多く指摘されております。
最後になりますが、これらの調査結果を通じ、今まで得られたことをまとめたいと思います。まず、組織についてですが、組織としての状況は変化し、多くの機関が外向けへの働きかけを強く意識しています。一方で専門人材の継続的な育成・確保などに問題を抱えています。具体的には、大学や独法がこれまで機関内の体制整備に注力してきました。現在は機関によって活動状況に差はあるものの、多くの機関が積極的な外部の働きかけを強く意識しています。一方で、多くの機関では、専門性の高い支援人材の継続的な育成・確保などに問題を抱えています。このような課題を抱えながら、機関独自に産学が共同して研究活動を行う場として機能する、また、知財を強力なツールとして発展的に活用するといったモデル的取組も見られると考えられます。
それらから伺われますのは、産学連携を発展させ、イノベーションを効果的に創出するためには、大学や独法が外への働きかけをしつつ、主導してイノベーションのハブとして機能することが求められるのではないかということです。一方、専門的な支援人材の育成や確保が必要であり、国の施策の一層の展開が必要なのではないかと考えられます。
次に研究者ですが、研究者にとって活動の主な目的は、先ほどお見せしましたように研究成果の実用化、及び、外部資金の確保というものが見られました。研究者自身への主な効果としては出口を意識した研究実施と研究室の活性化、新たな研究テーマの創出、新領域の研究の進展といったものも見られました。このように研究者にとっての産学連携活動の位置づけは多様であり、みずからの研究への刺激や教育面という形で社会貢献以外の意義も強く認識されていると考えられます。
次に、機関の支援体制に対して改善の必要を感じる点として挙げていました、活動の業績評価の仕組み、企業との継続的な関係構築といったことが言われました。研究者自身の課題としては、アカデミックな研究・教育活動とのバランスを研究者が認識しているということがわかりました。これらのことから、機関によってどのようなミッション、重みづけの方向性とするか、また、産学連携の業績評価の仕組みづくりを検討すべきなのではないかとうかがわれます。
以上、私どもの行った調査の結果をまとめてご報告申し上げました。ありがとうございます。
【白井主査】
ありがとうございます。
それでは、ご質問、ご意見もあわせてお願いしたいと思います。
【柘植委員】
柘植でございます。どうもありがとうございます。私も産業で技術経営をし、かつ、今、大学の工学の教育に身を置いている者として非常に関心を持っていることは、教育とこの産学連携という大学の意識調査、その変化、この中でも幾つかそういう話が感じられて、特にまとめの中でも、もちろん社会貢献というものもあるのですが、みずからの研究への刺激、教育、社会貢献以外の意識もかなり強く、このあたり私としては非常にいいトレンドだなと思います。
その中で、私の関心事は大学が生み出している博士課程の修了者の産業とのミスマッチという、これはワンパターンでは言えなくて、分野によって、ライフサイエンス系とか、あるいは工学系などはむしろ、進学者は少ないが、産業とのミスマッチはそんなにないとか、そういう分野ごとでこの分析を切ってみるという見方も必要かと思い拝聴しました。今回はそういうことではないのかもしれないのですが、ぜひそういう分野、最終的に1つの結論、解を求めていく方向の中に博士課程の修了者の産業とのミスマッチをどう埋めるか、この産学連携と教育活動の関係、このあたりも今後とも研究してほしいと思います。
【白井主査】
野間口委員お願いします。
【野間口主査代理】
どうも大変いい話をありがとうございます。2009年の3月に出た報告書ということですが、例えば4ページ、5ページの比較、及び、7ページの比較、2003年段階と2008年段階の比較を見まして、私も産業界にちょうどこのころおりましたが、私どもの認識でも、ひょっとしたらこういうふうに変わってきているのかなと思っておりました。私が産業界にいるころ、産学官連携のそういうのに大変関心の高い、理解のある経営者の1人だと思っていましたが、平均的に見ますと、例えば4ページで、点線で囲ってあるような変化を強く認識している産業界のマネジメント層、また、大学の上級教諭の方は認識が薄いのではないか、こういうような気がします。
例えば4ページで見ますと、大学との連携を産業界が考えるときに、奨学寄附金のようなものの重要性というのをほんとうに払拭し切れていないと思います。だけど、現場をあずかる、例えば、R&D担当の役員などのレベルになると、既に2008年の段階でも一番上に点線で囲ってあるようなことになっているということがあります。
また、7ページについて述べますと、産学連携するときに大学が保有している知財に対する関心よりも、むしろ知財の充実、知財活動のレベルアップに関心が向いている、移ってきていることは、知財は成長するものだと産業界は考えていることがわかります。今ある知財やこれまで蓄積した知財を使わせてあげますという形で連携を考えていたらあまり魅力がないです。それをもとにしてさらによい知財に仕上げていきましょうというような取組であればウエルカムというのがあると思います。このような、ほんとうの意味の産学官連携に期待が集まっている時代の動きをこれは反映しているような気がして、これを私自身も薄々感じていたのを非常に明確に示していただいたなと思います。
TLOとか言いますけれども、そういう機関の活動のあり方についても一石を投じるのではないか、というのが私の受けました感想であり、そういう意味では大変いい調査をしていただいて、我々の認識について勉強になったと思うのですが、これを単なる報告書ということで終わらさずに、もう少し産業界、大学、啓蒙するような意見発信をされたらどうかと感じながら聞かせていただきました。ありがとうございました。
【白井主査】
ありがとうございました。
何かございますか。
【長野総括上席研究官】
かえって、ありがたくお話をいただいて、私どももこれから、調査結果もまとめましたので、各大学にもこの報告書をお送り差し上げて、ご活用くださいと申し上げている次第でございます。今後も普及に努めてまいりたいと思います。
【白井主査】
どうぞ、石田委員お願いします。
【石田委員】
ありがとうございます。私もこの報告の内容及びとらえ方に非常に同感であります。ただ1つだけ非常に基本的で、かつ非常に重要だと思っております。それは5.の課題のその2、「アカデミックな研究とのバランス」というところにあります「価値観の違い」、このキーワードに関連して企業側では特許、大学側では論文が重要視されるといった価値観の違いがあります。私は、このニュアンスにもうそろそろ認識が変わっている、あるいは変わるべきではないかという前提認識のもとに、価値観の違いというのを例えば社会貢献とか、国際競争力とか、そういう理念から価値観というものをとらえる時代に入っているのではないかと思います。
すなわち、特許か論文かというレベルでの価値観の違いというとらえ方、これはまとめ方なのか、大学におけるこういう認識はまだまだあると思います。しかし、トレンドとして、こういう資料のまとめ方として特許か論文か、というレベルで価値観の違い、これは少し気になりますが、何かご指摘いただければありがたいと思います。特になければ結構です。
【長野総括上席研究官】
この5.その2のところで挙げております課題でございますが、ここでは書面調査の結果、研究者の方たちが自由記述で、皆さん相当、わりと熱心にたくさん書かれている方が多かったのですが、その中から抽出して私どもなりの分析方針でまとめております。その結果、実は意外と企業と価値観が違って、それで困っている研究者の声が多く、これはなかなか無視できるものではございませんでした。言葉遣いもそういった表現で語っていらっしゃる自由記述が書面調査で見受けられました。それでこのようにまとめさせていただいた次第でございます。これがインタビューですと、もう少し掘り下げた形でお話が聞けるのかもしれないのですが、ここではそのまま書面調査からピックアップした形でまとめさせていただいたというものでございます。
【石田委員】
ありがとうございました。
【白井主査】
ほかには。どうぞ。
【秋元委員】
私も産業界側なので少し変わった質問をするかもしれませんが、産業界の場合、特許というものを考えたら、必ずコストパフォーマンスを考えます。大学というのは予算をもらうことで潰れないから何を出してもいい、ということではなく、やはり産学連携本部、TLOを考えるときにある意味ではコストパフォーマンスを考えなければいけない。しかし、大学がそのようなことをできるかというと、実はハーバードも、スタンフォードも、ウィスコンシンも全部そのようなライセンスのフィーで運営しているわけです。だから、そういう意味では、いつもここで件数というのが出てくるのですが、去年ぐらいから質の問題も考えようということがありますし、やはり何かそこにコスト、あるいはメリット、デメリットを何かメジャメントできる尺度を持ってきたらいいのではと思います。
【白井主査】
何かありますか。
【長野総括上席研究官】
今のご指摘の点に関係する内容としては、きょうはお示ししませんでしたが、報告書でまとめている一部のデータがございまして、各大学、60機関を対象としてですが、特許の出願の件数が伸びています。その中で共同出願の割合がどうか、特に民間企業に焦点を当てようとしたものですが、そういう意味では、JSTからの助成金を受けて共同出願した場合というのは外してございます。それ以外の共同出願の割合を見ると、割合も高まっています。共同出願の件数も高まっているということが見られました。
実際に共同出願の費用の費用負担者はだれか、ということで聞きますと、以前では大学側もある程度出していたものもありますが、その2003、4年当時と現在とで比べてみると、相手側に出してもらうケースというのが相当増えてきている現状があると思います。なので、そこのどういった感覚、どういった戦略で各大学が個別にやっているかは見えませんが、そのような形のデータは1つあるかと思います。
【白井主査】
ほかにはありますでしょうか。平田委員お願いします。
【平田委員】
貴重なご報告ありがとうございました。1つ質問させていただきたいのですが、例えばシートの9番、10番等に機関という言葉が書いてあります。この機関というのは、いわゆる産学連携機関、TLOのような単体の話なのか、それとも大学当局のことを指しているのか、どちらでしょうか。
【長野総括上席研究官】
ありがとうございます。ここでの各シートの言葉遣いが丁寧でなかったかもしれませんが、今回の書面調査の対象としましたのは大学、独法そのものに対してございます。なので、60機関のうち57機関が大学でございますが、大学当局に対しての書面調査です。特にお送りした先が産学官の連携担当部署でございますので、おそらくほとんどの場合は産学連携担当部署の方がお答えになられていると考えています。
【白井主査】
よろしいですか。
【平田委員】
ありがとうございました。この質問をさせていただいた背景には、先ほどから話題になっております価値観の違いとか、業績評価の違いというのがありますが、例えば産学連携担当部署で研究者の業績評価基準ということをコントロールすることは、多分、ほとんどできないと思います。やはり大学全体の学務部が研究者の業績評価をコントロールいたしますので、そのことを例えばこのTLOであるとか、産学連携機関とかに言われてもOut of controlなので、やはり大学当局に働きかけることと、やはり産学連携機関の担当部署がやれることというのは少し分けることで問題解決につながりやすいのではないかということで、ご質問させていただきました。ありがとうございました。
【白井主査】
よろしいですか。ほかにはいかがでしょうか。
では、羽鳥委員、どうぞおねがいします。
【羽鳥委員】
いろいろなすばらしい結果がまとめられて、良いと思いました。そのうちの10ページ、そこに機関の人材育成・確保ということで人材不足のほかに優秀なコーディネーター確保のための有期雇用について出てきます。私も今、慶応義塾でこの問題にチャレンジしているのですが、パーマネントにならなくても有期雇用が更新できれば、かなりインセンティブを持ってまた次の期間に向けて働けると思っています。このような専門家は、大学の従来の制度の中で位置付けが難しくて、不安定な雇用となっています。これを解決するのは各大学が勝手にやればいいのか、それとも何か文科省全体として旗を振ってもらえるようなことがいいのか、何かご感想がありましたらお聞かせください。
【長野総括上席研究官】
科学技術政策研究所としてはなかなか答えにくいことでございますが、インタビュー等で、ここでまとめましたのは、書面調査の結果をまとめさせていただきましたが、これよりさらに他機関のインタビューをしております。インタビューの中でお聞きしたのは、特に国立大学を中心にして専門人材の職員化といいますか、定数に入るような職員化といったような形でやろうとされているような大学もあって、または、そのような形できちっとしたポストを得たいということで、部署の方は苦労されています。なかなか大学本部との折り合いがつかなくてうまくいかないといったような声もお聞きしております。その担当部署の方たちは相当、そういった面で四苦八苦していらっしゃるということはうかがわれた次第でございます。
【白井主査】
どうぞ、西山委員お願いします。
【西山委員】
質問ですが、知財の価値を認めていくというのは、大学全体のマインドが高まっているということで非常にいいことだと思うのですが、大学の中で知財ということに対して学部の先生が、種々学部がありますが、それによって相当ばらつきがあるかもしれないというように思えるのですが、そのような調査はされたのでしょうか。
【長野総括上席研究官】
今回の調査の中では、研究者の方たちに対してのアンケートでは、あまり知財に関して掘り下げた調査はいたしてございません。少し簡単に知財に対して、「あなたの研究領域で重要と考えるか。」ですとか、「あなた自身の研究にとって重要と考えるか。」といった形で問いを起こしておりますが、それに対して相当程度の割合の方が重要だとお答えになっていますので、それ以上掘り下げた調査は今回いたしてございません。
【西山委員】
教職員の業績評価の中に知財ということが入ってくることも重要な評価の1つですが、それにオンリーワンだと全く興味なかったり、そうではないことについて研究をしている人がいたとしたら、その人に対しての業績評価、その人はそっぽ向いてしまうと思います。そういう人がいるとすると、やはり大学全体としては、ある程度評価の仕組みということで言うと多様性を持っていなければいけないのではないかと思います。
もっと端的に言うと、個人差もあるかもしれないが、学部間の差もあるのではないかと思われるので申し上げました。例えば理学部と工学部だったら随分違うような気がします。工学部の先生だったら特許を取ろうという人が多数派になりますが、理学部だったら特許ということについて、工学部に比べたら相対的に興味が少ないのではないかと思われます。そのようなことが大学としての運営全体としては非常に大切なことと思いましたので、あえて聞きました。
【長野総括上席研究官】
補足させていただいてよろしいでしょうか。
【白井主査】 はい。
【長野総括上席研究官】
産学連携活動自身の評価について研究者の方たちからいろいろな意見が出ていましたが、その中でありますのは評価自身、産学連携活動をしているということ自身が評価されていないといったようなご意見、それから、ある程度評価はしようとされているのだが、その評価基準があいまいであるといったようなご意見と2つに分かれるかと思います。そういった意味で評価基準があいまいではないかといったような中には、単に例えば外部資金の受け入れ額が幾らかですとか、特許件数幾らといった、それだけではない、もう少し手間暇かけたような産学連携活動をやっていらっしゃることについての評価もしてほしいといったような声もございました。これはなかなか自由記述からのピックアップでございますので、量的な分析というのは難しいのでございますが、例えばそんなような話があったということをご紹介したいと思います。
【西山委員】
どうもありがとうございます。
【白井主査】
どうぞ、竹岡委員お願いします。
【竹岡委員】
全体的に、この産学連携の推進の委員会に出ていまして、やはり次のフェーズというのはリーダーシップ、特に学長のリーダーシップ、あるいは学部長のリーダーシップというものがないと前に進めないということを非常に感じています。つまり、人材の問題、大学の中に専門人材をきちんと位置づけるという、そういうものが基本的に今までなかったので、つまり、国立大学法人化まで大学の事務職員というのは学生証を発行すること、そういうのが事務であって、今でも庶務的な意識を持っている職員がたくさんいて、教授がいて、こういう体制の中で専門人材という人たちが非常に大事になってきています。その人たちの雇用を含めてきちんと位置づけるということをするためには、大学のリーダーシップが、特に学長レベルのリーダーシップがないとできないと思います。
それから、先ほどの産学連携の評価の問題も、私もいろいろな大学をやっていて、研究者の方からいろいろそういうことについての不満が出てきています。一生懸命やっているが、これは評価されるのかどうか。それについても結局はリーダーシップの問題ですね。上の人間がこれを評価するかどうかということ、だから、こういう報告書をつくるときに、やはりできたらほんとうは学長さんとか、リーダーの方にもアンケートしていただきたかったし、もしそれをしなかったら、今度は報告書のまとめ方としてリーダー向けのメッセージ、「あなたが変えないと大学を変えるというのは難しい。」というようなものも必要だと思います。現場の人たちはみんな矛盾を抱えていますが、「現場の人たちがどうしようもならないから、あなたが変えなければいけないよ。」というメッセージをまとめの中に入れていただけるような、そういう方向性があると、もっとすごく、「今度はその下でこうやらなきゃ。」といってすごいストレスを感じている人たちがすごい励みになると思います。
【白井主査】
ありがとうございました。
それでは、渡部委員お願いします。
【渡部委員】
少し細かい質問になってしまいますが、特許と共同研究のつながりのところで、特許というのは共同研究への発展というデータがあって、要は産学連携を非常にやっている人が50%、この頻度はそんなに多くないでしょうが、それ以外でも20%ありますよね、20%ということは、これがその平均値だとすれば、特許出願は大体7,000件、8,000件ぐらいで、その20%、1,600件ぐらいの共同研究に結びついているという、単純に読むとそう読めて、共同研究の件数というのは大体1万数千件ぐらいだと思いますから、それのうちの数十%ぐらいが特許からリンクして帰結している共同研究が存在すると、そのように考えてよいのかどうかというのと、もう一つは、この場合の特許から共同研究というのはライセンス、技術移転がされた後の共同研究というものなのか、あるいはそうでない意味合いなのか、そのあたりを少しお伺いできますか。
もう一つは、アカデミックな活動と産学連携活動のバランスというのは、バランスというのを意識しているというのは、その教員が同じ時期にバランスをとろうとしているという意味になるのか、何かチラッと時期によってとか言われたような気がするのですけれども、それについて実態がどうだったのか。その2点をお聞かせ下さい。
【長野総括上席研究官】
まず、最初の特許出願件数と共同研究件数との関係から考えて、このデータをどう見るかということかと思いますが、特許出願そのもの全体で見ると、共同出願と単願とございますので、それ全体ではなかなか直接は比較できないかと思います。ここでも特許出願、特許との関係といったときの特許そのものは、共願か、単願かというのは全然気にしないで聞いてございますので、なかなかその全体のマクロ的に見たときにどのように認識したらいいかというのは、今段階ではクリアには申し上げることができません。
それから、その特許について、ここで質問の中では、うろ覚えですが、たしか研究者が発明者としてかかわった特許についてどうかといった単純な問いにしてございますので、その特許自身が、ライセンスがされているかどうかといったようなことはかかわりなくここでは聞いてございますので、そこの要素は入ってございません。
それから、こことは別の話かと思いますけれども、アカデミックなバランスとの関係でございますが、アカデミックなバランスということで考えると、これも研究者によって状況は違います。インタビューの中でいろいろお聞きしていますが、多くの場合はその時点でご自身の研究活動、学術研究と産学連携の活動との関係、労働的なバランス、時間的なバランスもあれば、その研究の内容という意味でのバランスといったようなことも、または大学の中での評価との関係といったようなこと、いろいろなことがございます。
ただ、一部の研究者ですが、そういったことを考えると同時に、実際の取組としては、ある時期は自然と自分自身の学術的な研究、基礎的な研究をやって、それがある程度発展して、その後、産学連携の活動につながって、またそこから何か研究への刺激があって、また自分自身の基礎的な研究になっていくのだと思います。それは自然とそのようになっていくのだといったような研究者が一部ございました。そういったことで、時期的にそういった形でその時々で変わっている方も見られるということで示したものでございます。
【白井主査】
ご質問はありますか。
森下委員どうぞお願いします。
【森下委員】
今の点ですが、バランスというのは意味的に2つあると思って、1つは積極的にバランスをとっているというポジティブな面と、バランスをとるということを言わないと責められるというネガティブな面とが実はあって、おそらく挙げている人の多くはそのように言っておかないとなかなか辛いというのがあって、挙げている人が実は結構多いと思います。今言われたのはポジティブな面を言われましたが、せっかく聞き取り調査をされているのであれば、実際にはそういうふうに至った背景はかなりネガティブな要素があると思うので、あまりいい話ばかりでもしょうがないので、実態の問題点としてどういうところが問題を感じているかというのをもう少し、聞き出してもらうと実際の役に立つのではないかと思います。おそらく多くの方は言わざるを得ないという状況の中でバランスをとっている要素がかなりあると思います。ですから、その辺もぜひ酌み取っていただきたいと思いますし、そういう事例もかなりあったのではないかという気がいたします。
【白井主査】
そろそろ時間が迫ってきたので、よろしいでしょうか。
一応、ここで切らせていただいて、よろしければ一緒にいていただいて、また後でディスカッションがあろうかと思いますので、その機会にずらしていただきたいと思います。
それでは、続けて議題の2になりますが、海外の産学連携の動向についてということで、富士通総研経済研究所の西尾主任研究員においでいただいています。よろしくお願いします。
【西尾主任研究員】
ただいまご紹介にあずかりました富士通総研の西尾と申します。よろしくお願いいたします。本日、私は海外の産学連携の動向について話をしてくれと広いテーマで言われてしまいましたので、ただ、時間も余裕がありませんし、能力もありませんので、アメリカを中心にご報告したいと思います。それはなぜかというと、日本で産学連携の議論が本格化して15年ぐらいたっているわけですが、その間にアメリカも変わっているわけです。さらに言えば、日本の議論の中であまり関心が払われていなかったのではないかということも、重要なことがあるのではないかという私どもの問題意識がございまして、それをベースにご報告したいと思います。本日の報告の構成は、このようになっております。
アメリカと言ってもいろいろと広いので、いつも産学連携、特に研究における産学連携ということを考えるときに、この4つの軸で私は考えておりまして、その中で特許、ライセンシングの話、あるいは大学発ベンチャー、最近は何かあまり出なくなってしまったわけですが、重要な時期だと思っています。ただ、本日は研究協力の視点からアメリカの産学連携を中心にお話ししたいと思います。また、さらに範囲を狭めるようなことを申し上げますが、バイオ、医薬、そういった領域については省かせていただきます。バイオ、医薬とICTとかと動向が違うと思います。
それでは、まず、ここで2つほど政府に関係する提言、産学連携に関する提言をご紹介したいと思います。1つは、アメリカのPICAST(President's Council of Advisors on Science and. Technology)という大統領の科学の諮問委員会といいますか、アドバイザーですが、そこで去年11月、ここに書いてあるようなタイトルで産学連携についてレポートが出ています。その中で幾つか提言があるわけですが、ここで抜粋をしています。恣意的に抜粋しているわけではないのですが、ご関心のある方はここにあるURLをごらんになっていただければと思います。ここで1つは、要は知財とかに関係する産学官の技術移転についてガイダンス、あるいはツールキットをちゃんと開発したほうがいいのではないかという指摘が1つあると思います。
あと、10番目に、要するにアメリカにとっては既存のフレームワークでいいけれど、その上でさらに成功するような、研究のパートナーシップを進めるためのそれぞれのイニシアティブを付加するべきだと思います。その理由はなぜかというと、いろいろなバリアがあります。それは要するにカルチャーの問題もあるし、産学双方のマネジメントストラクチャーの違い、あるいはゴールの違いもあるわけです。さらに言えばIP関係、あるいはパブリケーションに関するポリシーの違い、こういったものがある。そういうことで10番のような指摘をされているわけです。
あともう一つは、産学官の研究者の交流、移動をもう少しフォーマライズするというような件が出ております。アメリカだけではなくて、実はイギリスも似たようなことが出ています。これは2007年、2年前ですが、DIUSという、省庁再編になってしまったので、一応、文部科学省みたいな組織と言っていいのかもしれませんが、ここで政府、あるいはリサーチカウンシルみたいな、お金の出し手に対してアドバイザーというか、諮問委員会が答申を出して、大きく3つに分けられます。1つは、知財について双方がいろいろと言い過ぎている。本来、あまり重要でないところについてまで知財というものを持ち出してきているのではないかというような指摘が1つされています。
もう一つはUnclear messagesと書いてありますが、政府のメッセージが不明確で現場が混乱してしまっているのだというような意見が1つ出ています。それから、最後に要するにネゴシエーションに関してのグッドプラクティスが必要だろう、このような意見が出されております。私も似たような感想を持っておりまして、それでこういったこと、2つの提言を使わせていただいております。
それで、実際の活動についてなのですが、最初にアメリカの大学研究センター、言い方はいろいろとあるわけですが、日本企業が結構会員になったりするセンターですね。これは真ん中に少しあるのですが、実は1990年の時点の調査なのですが、産業界からアメリカの大学に提供される資金の7割が大学の研究センターを通じて提供されているということがあります。ですから、大学の研究センターというものが、NSF(National Science Foundation:全米科学財団)とかが支援をしているわけですが、そういったセンターが実はアメリカの産学連携の中心なわけです。このセンターの特徴というのは、2つ目に書いてありますが、要は学際的というか、分野融合型の研究、あるいは教育をやっているところであるわけです。
それを実際に運営するために1つは企業等の会員制度を使っているわけです。当然、連邦政府は支援をしておりまして、その最大の支援機関がNSFなわけです。この大学研究センターの連邦政府が支援する最初のきっかけとなったのがこのIndustry University Cooperative Research Centerというものがありまして、現在もこの支援モデルというものがいろいろなセンターに適用されています。現在、一応、中心になっているのがEngineering Research Centerと言われているものです。これは先ほど、企業の7割の資金がこのセンターを経由していると申し上げましたが、調査によっては科学者、あるいはエンジニアの二、三割は大学のこのセンターにかかわっているということで、非常に重要な役割を担っているわけです。
このNSFのセンターがこういった重要な役割を担っているわけですが、当然、30年、あるいは20年やっているわけで、方針が変わってきております。その方針の変化というものを見てみますと、1つの大学に対して会員制度、複数の企業が参加するという形が中心だったわけですが、10年ぐらい前からですが、複数大学が1つのセンターを運営する。それに対して企業が乗っかるという形になっているわけです。要するに大学間の資源というものをきちんと合わせて補完し合っているセンターをつくっていこうという動きが1つあります。
それから、最近ですが、海外機関、例えば大学の中では、NSFのセンターで一緒にやろうという話が来ていると思いますが、海外機関、あるいは既存企業というものは、この会員企業になることが多いわけですが、そのイノベーション、実際に実現するためにベンチャーというものをやはりもう少し活用していこうということで、ベンチャー企業もこういったセンターに巻き込んでいこうという動きが出てきております。ですから、この大学研究センターというのが1つの大学から複数の大学になり、さらに海外、あるいはベンチャーというものを巻き込む組織になってきています。
それから、この大学の研究センターの重要な意味というものは、実は拠点を企画する段階から産学が連携していろいろとやってきているわけです。これは、数百あるわけですが、そうすると企画運営、整備運営に対して非常に経験も蓄積してくるわけです。さらに言えば、その経験、あるいはそのノウハウをちゃんと広げるために実はベストプラクティスというものをつくって共有していくわけです。このベストプラクティスについてはまた後でお話ししますが、こういったような大学の研究センターというものがアメリカでは非常に重要な役割を担っています。
これはお手元の資料にはございませんが、2006年のNSFが支援をしているものです。卒業しているセンターがあります。支援しているセンターの数で言えば100を超えるわけです。最近で言えば、NSFではありませんが、DOE(Department of Energy:アメリカ合衆国エネルギー省)が支援しているEnergy Frontier Research Centerというものが今月初めに50近く選定されてエネルギー研究の拠点が大学、あるいは国研につくられるようになっています。
今の話は大学の話なのですが、実は企業が大学との連携戦略をいろいろと変えてきていることが2つ目の特徴であると思います。1つ目は、この企業の方針というか、戦略の変化の1つの結果として、大学との連携を制度化しているということがあります。それは要するに日本企業も同じだと思いますが、多数のばらばらな小さい研究はいろいろとやっていたわけですが、それを1つには長期的、あるいは密接に連携する大学を国際的に絞るわけです。ですから、アメリカの大学もそうですし、ヨーロッパの大学、あるいは中国の大学。でも、日本の大学はほとんど出てきませんが、こういうような動きが1つあります。
もう一つは、要するに1つは絞り込む動きですが、もう一つはより幅広くアイディアを募る動きというものが出てきています。これは1つの研究制度として出てきておりまして、事例として幾つかお示ししていますが、例えばHPのInnovation Research Programというのは、このアイディアを広く集めるという意味で、3年ぐらいやっていますが、去年は日本の機関で言えば国立情報研究所が入っていますが、あとほかの大学は見当たりませんでした。これが1つです。
あと、インテルもいろいろとやっています。これは後で少しお話ししますが、あとIBMで言えばOpen Collaborative Research、オープンソースの研究のプログラムも立ち上げていますし、あるいはCiscoの場合はリサーチセンターを立ち上げて、これはセンターなのですが、むしろ大学との連携拠点、あるいは大学との連携プログラムを運営するところになっています。こういった形でいろいろと制度化をしているわけです。
最後にGE Aircraft Engineと出ましたが、これはなかなかアメリカの企業が、どの程度産業界にお金を出しているかというデータがあまりないのでこれを出したわけですが、これは2002年のプレゼンのときの資料です。平均で43kですから450万、430万ぐらい、これでも日本の倍以上あるわけですが、これでいくと100行かないところで結構あるわけですね。あと、こちらに5,000万というか、そのぐらいあるわけですが、それではだめだということで、これをもう少しこっち側にずらしていくというのがGE Aircraftの試みで1つであります。これと似たような形で絞り込んでいくという動きが1つあるわけです。
それからあともう一つは、大学の近く、あるいは大学内に研究拠点を設置するということです。これは日本企業もやっているのではないかという話がありますが、それをいろいろとやってきています。その目的は何かというと、当然、1つは大学との共同研究があるわけです。それから、社内の研究をやるというのもあります。あるいはIT企業で言えばテストベットを提供します。研究拠点でテストベットを提供するわけでは必ずしもありませんが、そういうような目的があって研究拠点を設置します。研究拠点を設置しているわけですが、何でこのようなものをいろいろとつくるようになったのかというと、これまではある程度定期的な交流だったわけですが、もう少し密接に日常的な交流をやっていこうというのが企業の考えとしてあるからです。ある人は、研究プロセスへのアクセスだというようなことを言っています。それに対してお金を払うという形ですね。
あともう一つは、こういった研究拠点に教員がサバティカルリーブという言葉が適切かわかりませんが、二、三年大学を離れて就任するということが出てきています。要するに交流の拠点になってくるわけです。これはある企業がこういった拠点を大学の近くにつくるときに大学をどうやって選定するのだということです。まず1つは、企業が必要とする領域のトップの大学を選んでくるわけですが、さらにその大学は企業との連携実績がちゃんとあるのか、さらに言えば教員同士の連携がそこでちゃんとうまく行われているのか、要するにこの3つのクライテリアを持って選ぶということを言っております。そうすると、なかなか日本の大学は出てこないというようなことになってくるわけです。
さらに言えば、単に研究の拠点というだけではなくて、もう少し広い意味でのイノベーションネットワークの拠点として、こういった研究拠点を整備しています。これは単にアメリカの企業だけではないです。アメリカの企業はこれだけありますが、SAPとかRolls-Royceというのがあります。ジーメンスは少し趣旨が違うわけですが、これもバークレーに技術をアクセスするための拠点をつくっています。バークレーと上海では、そういうような形で企業は大学の近く、あるいは大学内に研究拠点を設置しています。
それから、やはり新しい動きとして知財管理の仕組みとして、これまで日本で議論しているのとは少し違う動きが出てきています。「Bayh-Dole法の前提とは異なる知財管理の仕組み」と書いてありますが、ここでバイドール法の前提と申し上げたのは、要するに企業なり、だれかが研究資金を出す場合に、その出し手が特許等を持っていればさらに出すインセンティブが増すというようなこと、そういう意味でバイドール法の前提と申し上げております。そこでの知財管理というのは、1つには特許を取得しない方針で企業から結構お金を集めて研究したりするものもありますし、あるいは特許の取得の仕組みは当然入ってくるわけですが、そこで取った特許について言えば、ロイヤルティフリーでだれでも自由に使わせるというようなことも出てきています。
これは特にITが非常にそういうのが多いわけです。ここに書いてある事例、Kauffman foundationですとか、あるいは後で少し申し上げますが、バークレーのCITRIS、あるいはWireless Research Center、あるいはインテルのLabletです。それでは、これはICTだけ特有なものなのかというと、必ずしもそうではなくなってきているのではないかと思います。バイオ系でも研究結果、遺伝子解析の結果に自由にアクセスできるような動きというのがありますし、あるいは農業バイオに関して言えばパテントコモンズというのか、オープンソースモデルというのかよくわかりませんが、農業バイオでも広く使わせるという仕組みが出てきています。
これは、何でこんな動きが出てきたのかなというと、1つにはオープンソースの研究を促進するということがあるわけですが、やはり重要なのは広く地位、あるいは人材を集める仕組みとして特許が1つの阻害要因になってきているのではないかという問題意識もあるわけです。当然、衝突するし、交渉するのに時間がかかるということがあります。市場までの時間が重要なところで言えば、特許での権利の確保というか、この効果と比較の問題ですが、Turn to marketが重要であれば早く結集できる仕組みとして、こういう知財管理というのも1つの方法として出てくるわけです。
その例として、1つはCITRISというところですね。これは企業会員制度をとっているので、一種の寄附なので、日本の税法とは合わないわけですが、年間150万ドルぐらい出す企業もいるわけです。ここでは特許を取得することが好ましい状況が生まれたということで、研究成果を広く公開するということを原則としています。実はここからもベンチャーが生まれてきたりしています。
それから、これは要するに全体的に特許を取らないという方針なのですが、もう一つ、BSACがあります。これは日本企業、何社も会員企業になっていますが、先ほど最初に申し上げましたNSFのIUCRCの1つではあるわけです。これは先生の意向によって特許を取らない、特許を取るということを決めているということです。
それから、企業側の拠点としてインテルのLabletですけれども、現在、アメリカでは確認できるのは3つありまして、あと、スペインとかにもあるわけですが、ケンブリッジはどうも見えなくなってしまって、もしかして閉じたのかもしれません。アメリカで言えばこのOpen Collaborative Research Agreementというものを大学、シアトルであればユニバーシティ・オブ・ワシントン、ピッツバーグであればカーネギーメロンと交わします。これは要するにMaster Agreementとして機能するわけです。これぐらいの規模で、基本的にはインテルの組織というか施設になるわけですが、所長はリーブしてきます。
基本的にここでやるものは現在の事業領域と離れたものだということで、特許は取得しないで広く公開する方針だということで、2007年ぐらいまで取っていないということです。基本的にはインテルと大学だけではなくて、ほかの企業にもオープンに、参加してくださいということでやっているわけですが、まだほかの企業は参加していないようです。ただ、特許について結構細かく書いています。しかしながら特許を取らないという方針でやっているわけです。
最後にベストプラクティスの作成と共有ということで、日本でも事例集というのをいろいろと報告を出されているわけですが、アメリカはもう少しいろいろとベストプラクティスをつくっています。1つは、IUCRCで言えばここに書いてあるようなものが本として出されていますし、あと年2回カンファレンスをやって、それぞれマネジメントに関する議論をしたりするわけです。Engineering Research Centerも、このBest Practice Manualというものをつくっています。さらに産学のボランティアというか、グループが幾つかベストプラクティスをつくっています。代表的なものがここに書いてあるようなものですね。
それで、ベストプラクティスについて1つ1つ説明するのは難儀なことなので、適切なものだということをお示しするためにERCの目次を少しお示ししていますが、ERCは結構、教育を重視していますので、エデュケーションのところが1つ出てきます。括弧内に書いてあるものがページ数です。ですから、結構な分量があるわけです。先ほどリーダーシップの話もありましたが、そこで言えばAdministrative Managementみたいなところを、そういうところが書いてくるわけです。あと、一番上のほうにセクション2のところでリーダーシップの話も出てきます。
それから、複数大学が運営するので最後のほうにMulti-University Centersということで大学間をどうやって調整していくかというようなことも出てくるわけです。このようなものをバージョンアップしていって共有していくということをやっているわけです。
あちこちでばらばらとお話をしてしまいましたが、最後に私が考えている感想は、産学連携についていろいろな意見が出てくるわけですが、企業のイノベーションのやり方って50年でだいぶ変わっているはずです。ですから、それと知財管理も当然変わってきていて、それをどうやって考えるかということが1つあります。その中で産学連携のアウトカムというものがどうなのかという議論が、実は直接的な利益というか、成果というものについて議論はあるのですけれども、アウトカムという観点でいくと、もう少しあってもいいのかなということと、あとコスト、多分、企業がほんとうに大学との連携の成果を活用するのであれば相当コストがかかるのではないかということです。自社の社員をいろいろとつけるということもありますし、成果を自社に持って帰ってきて、また展開をしていくということで言えば相当コストがかかる。その中でアウトカムを考えていく必要があるだろうということです。
あとは、大学の機能って何だろうというと、ネットワークの拠点になるのだろうなと思います。また、日本でもベストプラクティスと言わないまでもグッドプラクティスをつくってみんなで共有していくような仕組みも必要ではないかなと思っております。
以上です。ありがとうございました。
【白井主査】
大変有益なお話をいただいたと思うのですが、何かご質問とかございますでしょうか。
どうぞ、竹岡委員お願いします。
【竹岡委員】
大変有益なお話、ありがとうございました。質問なのですが、どちらかというと調査対象がバイオとかではなくてインフォメーション・テクノロジーとかの事例が多いから、知財分野によってものすごく違ってくるのだろうと思いながらお話を聞いていましたが、この中に、9ページ目、「新しい知財管理の例」というところでUC Center for Information Technology Researchとか何とか出て、これはやはりIT系の研究支援機関だという前提でしょうね。
【西尾主任研究員】
はい。そうです。
【竹岡委員】
この中で特許を取らないというところと書かれていますが、その前提としては逆に、これはアーキテクチャの問題ですが、非常にブラックボックス化というか、特許をかなりしっかり取っていて、その周りというか、共同研究を呼び込むところの特許、それは要するに周辺インターフェース部分、接続部分ですね。何というのか、うまく表現できないですけれども、特許としての接続部分ですが、その部分を公開しているとか、そういうような戦略的なものとか、それからオープンソース、情報系の場合は、そもそもソフトウェアがオープンソースなので、オープンソース系の場合がどうだとか、そのような戦略的なことというのは、こういうところには出ているのでしょうか。つまり、表明されているのでしょうか。それともそのようなものは公開されていないということになるのでしょうか。
【西尾主任研究員】
要は、CITRISでやる研究について言えば、特許を取らないということを言っているわけです。
【竹岡委員】
それは、そういう研究の場合はということですね。
【西尾主任研究員】
そうです。
CITRISって、名前のとおり、実はいろいろなことができるわけです。ですから、バイオも入ってくるわけです。そうすると、実はバイオとはコンフリクトしている形で、その調整が今1つの課題にはなっています。
【竹岡委員】
要するにこういうスキームを組む場合と組まない場合とが当然、選択しながらやっているという、そういう意味ですね。
【西尾主任研究員】
そうです。
【竹岡委員】
わかりました。
【西尾主任研究員】
当然、CITRISでやる場合は、この方針が生かされるわけですけれども、実はCITRISというのはCenter of Center、要するに仲間になるセンターがいろいろとあるわけです。そのセンターの中では特許を取るところもある。ですから、そこは使い手の問題ということです。
【竹岡委員】
使い分けているわけですね。わかりました。ありがとうございます。
【白井主査】
どうぞ、柘植委員お願いします。
【柘植委員】
ありがとうございました。私も今、工学教育のほうの立場にいるもので、最後ですが、ERCのBest Practice Manualの目次の中で、95ページもEducation Programとか、Chapter8ではStudent Leadership Councils、これについてご説明を受けて、質問の背景は、私は、こういう問題意識を持っています。すなわち、米国における産学連携の強み、日本の弱みは、産業界から大学に流れる研究の金が博士課程の学生の教育、研究だけではなくて、いわゆる社会学も含めた教育に生きた金になっているメカニズムがあるのではないかと仮説を見ています。私自身もMITと共同研究したときにそれを感じたわけですが、それとこのEducation Programが充実しているのと関係があるのかどうか、何かご見解があったら教えていただきたいと思います。
【西尾主任研究員】
すみません、最後のお尋ねはわかりません。
【柘植委員】
そうですか。
【西尾主任研究員】
それで、このChapter8ですが、これはこういうカウンシルがあって、そこからお金をもらえるということがあります。それで、Student Leadership Councilsというところがお金をもらえます。センターがお金をもらえるので、そのアプライとか、そういうことを書いてあるので、実質的に、柘植先生のお尋ねのところ、多分、エデュケーションの上のChapter4のところになるかと思います。一通りは目を通しているのですが、要するにどういう形で教育プログラムを組むかというのはあるわけです。あとチーム編成、要するにチームでどういうことをやっていくかとか、あるいは、少し暗い話になってしまうのですが、当然、このセンター、お金がもらえなくなる可能性があり、つぶれたりする可能性があります。ただ、学生は当然、所定の期間があるわけで、その途中でセンターがなくなってしまうということもあるわけです。そのときにどうしたらいいかとか、プラクティカルな話も結構出てきています。すみません、ここはちゃんと準備をしていないというか、思い出さなければいけないところなので、すみません。
【白井主査】
どうぞ、森下委員お願いします。
【森下委員】
こういう仕組み自体、非常におもしろいと思いますし、1つの考えでいいと思うのですが、一番気になるのは、費用がどれぐらいかかるかということです。イギリスの例など、私も聞いている範囲ですと、かなり膨大なコストがかかっていたと思うので、実際のところ、こういうプログラムを動かすことに関して、コスト的に例えば日本でやった場合、賄えるようなものなのかどうかというのを知りたいのですけれどもいかがでしょうか。
【西尾主任研究員】
こちらのプログラムでよろしいですか。
【森下委員】
例えば大学との共同研究の件数とか、あるいは一番多い例ですとCITRISですか、企業等の寄附のです。あるいは、インテルのLabletなんか、これは企業にとってもコストがかかるようなプロジェクトではないかと思うのですが、大体どれぐらいで運用できるものですか。
【西尾主任研究員】
インテルのプログラムにおける金額はわかりません。ただ、研究者の規模で言えば、大学側から20人、企業から20人出るという規模です。金額ではわかりません。それで、CITRISで言えば、数百億円、何百億円というお金で回しています。それは要するに会費だけではなくて、研究費とか全部取ってきますので、非常にでかいセンターです。
【白井主査】
どうぞお願いします。
【野間口主査代理】
新しい知財管理の例というところで、仕組みのところで特許を取らないというのも1つの戦略みたいな考え方の話が出ましたが、例えばインテルの4つ目のポツにあるように「長期的な研究やその適用先を探索」ということなので、結局、プレコンペティティブな領域の研究をやっているというので特許の重要性がそう大きくないと思います。こういう研究で特許を取っても物になるのは特許が切れたころだと思います。
これはよく言われていることですので、今、大変有益な話だなと思って聞いていたのですが、特許を取らなくてもいいのだというメッセージを出すときは、プレコンペティなところとか、それから、パテントコモンズが成り立つような非常にオープン、何といいますか、リナックスみたいな、みんなが知恵を集めてやるような領域とか、それが成り立つ領域があるのだということをあわせて言っていただかないといけないと思います。知財の負担だけは非常に苦労しているというような、大学の先生方から見たら、特許を取らなくてもいいのか、そういう考え方があるのかという間違ったメッセージになるのではないでしょうか。
いみじくも次のページでしたか、書いておられるように、特許については契約書に記載ということで、現在の事業に関係する場合は特許出願とありますが、こういうことを考えながらやっているのだということをぜひ、皆さんの話は影響力が大きいですから、あわせて情報発信していただく必要があるのではないかなと思いました。
それで、もう一つ、これからは質問ですが、先ほどインテルとか、IBMとかの話、なるほどと思って聞いていましたが、日本で産学連携という場合は大企業だけではなくて中堅企業、中小企業、こういうところも非常に多いですね。アメリカとかヨーロッパ、そういうところはどうでしょうか。大企業から中小企業も含めて、日本と似たような構造と考えていいのでしょうか。
【西尾主任研究員】
何をもって多いか少ないかというのは、はっきり言えるメジャーはないわけですが、特段変わりはないと思いますし、要するに中小企業、中小企業の定義は当然違いますけれども、公的資金が入る、要するにR&D費を占める公的資金の割合で言えば海外、アメリカがより多いわけです。日本企業より圧倒的に多いわけで、その大きな要因の1つはSBIRみたいなものがあるので、そうするとある程度、大学、あるいはそれに類する機関との連携は多いのだということは類推できると思います。
【西岡委員】
よろしいでしょうか。さっきからダウト・インテルと出てきているので、私もインテルにおりましたので証言したいと思いますが、これはやはり誤解してはならないと思うことがいっぱいあります。1つは、インテルは基礎研究所というのを持っていません。日本の大きな企業は基礎研究所をいっぱい持っていますが、インテルには、インテルラボというのがありますが、あれは応用研究ばかりやっています。したがって、大学との共同研究がものすごく大事なります。そういう側面が1つあります。
インテルの強みの源泉はx86というアーキテクチャですが、これは特許で防げません。なぜなら、例えばペンティアムというのを開発した責任者がAMDの副社長に行っています。そのキーの技術を持った人が最大の敵の会社の副社長に行っていますので、これは特許のような技術で守ることはできません。インテルの最大の防御点は膨大なる生産能力です。そういう意味で、このビジネスモデルが全然違うので、同じことを日本の企業に何か応用するとか、そういうことが全くできないということを知った上で聞いたほうがいいと思いました。
【白井主査】
ありがとうございます。
【西山委員】
関連してよろしいですか。
【白井主査】
どうぞ。
【西山委員】
今のことと少し関連しますが、今、ここに新しい知財管理の仕組みというのと、新しい知財管理の例が明示されてご説明されましたが、これは非常に新鮮な印象を持ってありがたかったのですが、少し考えますと、1つの企業から見たときに、例えば少しきつい表現になりますが、新しくない知財管理の仕組みと新しくない知財管理があって、新しい知財管理の仕組みと新しい知財管理の例があって、そうすると、1つの企業から見たら、例えばわかりやすく言うとオープンソースがあったときに、そのオープンソースとクローズドを同じ企業が使い分けていてやっている場合は、新しくない管理と表現しているような新しい管理と併存しているように思います。私の理解では。そういうことなのか、かなりかじを切って全面的にこのようにオープンソースになってしまって、クローズドでなくなってしまっているのかというと、そんなことはないのではないかなと私は思っているのですが、それについてはどうでしょうか。
【西尾主任研究員】
私はそういうつもりでこれを挙げたわけではなくて、要するに新しいものが出てきているということを1つお示ししたかったということです。ですから、IBMが非常にいろいろなふうに宣伝をしていますが、ある意味、見せないところが非常にあるんです。ですから、それは要するに企業戦略だと思います。
【西岡委員】
少しいいでしょうか、今、とても大事なポイントだと思いますが、要するにこの産学官の連携というのも、どういうふうに考えるかということだと思います。アメリカの新しいイノベーションというのは必ずしも高度な技術的な要素だけでできているのではなく、いかにシステムで組み上げるかというところが非常にすぐれているわけです。例えばAppleのiPod、あんなの別に大した技術じゃないですよ。ああいうものを提案した発想だとか、それをソフトウェアとしてどういうふうに流通させるかとかがすぐれていますね。
あるいは今、省エネのああいう何かエネルギーのことで地熱発電、技術的要素は日本の会社は、すごく持っていますが、発電したものをどう町に運ぶかという仕組みで日本は全然だめだと思います。鉄道もそうだし、いろいろなところであると思います。だから、そういう意味も考えると、何か技術というものを特許を取ってうちだけというような世の中ではもうなくなってしまっているのではないでしょうか。このことを知っていないと、何かそういうのも少し考慮しないとだめではないかなと思います。インテルとかマイクロソフトの闘いの敵は独禁法ですよ。特許ではないですよ、独禁法ですからね。
【白井主査】
渡部委員、何かありますか。どうぞ、簡単に少しお願いします。
【渡部委員】
きょうの話というのは、基本的にバイドールの仕組みというのがアメリカの場合、1980年からユニフォームな仕組みとしてずっと来ていたわけですが、その中でポスト・バイドールの評価がいろいろ言われる中で、バイオベンチャーに関してはおおむねワークしていますが、それ以外の部分でやはりいろいろな批判があります。それから、もともとそういう分野に加えて新しい企業戦略というか、オープンイノベーション、特にLinuxみたいなもののメカニズムをうまくこういうところに持ち込もうという考え方の中でオプションを増やしてきたというふうに多分考えられるのだろうと思います。
そういう意味で、中心軸が動いたというよりは、これはオプションが増えているのだというふうに理解をすべきなのですが、そういう意味で、ここに出てきた企業で、そのオプションを使っている企業が必ずしも日本の大学と連携がうまくいっていない企業があるような気がするので、多分、そこは重要な話ではないかという気がします。それで、そもそもこういう新しいオプションを増やしたことに対しておそらく批判とか評価もあると思いますが、それについて何か調べられていて見当たったものはありますかというのが質問です。
【西尾主任研究員】
批判というのは、それを目的に聞いたことはありません。ですから、ちょっとわかりませんが、評価としては、例えばCITRISみたいなものって会員が増えています。企業の会員が増えているわけで、そういう意味で言えば1つの仕組みにはなっているのではないかとは言えると思います。
【白井主査】
ありがとうございました。
次の議題もありますので、大変新鮮な話題を提供していただいてありがとうございました。
それでは、先に進ませていただきますけれども、3番目の議題ですが、産学連携の推進に関する今後の重要課題ということで、これは8月25日にワーキングチームが、会が開かれまして、そこら辺の論点を整理したということで事務局のほうから説明をしていただけますか。
(事務局より、資料3-1、3-2、3-3の説明)
【白井主査】
ありがとうございました。
論点整理ということで、たくさん字が書いてあるので書き過ぎで評判が悪いのですけれども、せっかくの労作ですので、これを中心にし、タネにしながらいろいろご意見をお願いします。あと、時間がなくなってすみませんでした。足りないのですが、まだわずか残っておりますのでご自由にご質問、ご意見をお願いしたいと思います。
森下委員、どうぞお願いします。
【森下委員】
幾つかあるのですが、まず、73ページのスライドですが、国際的な産学官連携活動の推進のところですが、実際に私どもやっていますと、海外から物をもらうときのMTAとか、契約で結構、知財本部等が間に入ったときに逆にその契約がなかなかスムーズにいきません。海外の企業側は、当然、その企業のフォーマットでやろうとしますし、大学側は大学のフォーマットでやろうとするので、なかなか入り口のところでとまってしまって肝心なものがもらえなかったり、せっかくの海外からの共同研究をしようという申し出がうまくいかなかったというケースが、私も実際に経験がありますが、結構、地方大学で多いと聞いています。
そういう意味では、東工大とか東大のようにかなり海外との連携がうまくいっているところのフォーマット等が多分いいのではないかと思いますし、やり方がもっと実務的ではないかと思いますので、少しその理由を調べていただいて、具体的にセミナー等で少し実務者研修などもやっていくといった地道なことも1つは要るのではないかと思います。
それから、先ほどお話があったコモンズ、知のプラットフォームの作成ですが、これは非常にいいとは思いますが、これも十分な予算がないと何のためにプラットフォームをつくるのかということで、十分特許が集まらないということもありますし、一方、逆に各大学がくずばっかり放り込むと役に立ちませんので、内容も含めて精査をして、しっかり予算をつけてやっていくというような実が上がるような形でぜひやっていただきたいと思います。
【白井主査】
ありがとうございます。
本田委員、どうぞお願いします。
【本田委員】
未使用特許が結構多いということで、今、82%ぐらいだということですが、文部科学省的には大体どのぐらいの利用率がベターか、適切かというところをどのようにお考えになっておられるのかというのをご意見いただきたいのと、知の新しい施策をしたときに大体それで何%ぐらいに上げていきたいという――下げられればというところを狙っておられるのかというところなのですが、100%というのは実態的にあり得ないと思いますので、やはりかなり先のところを考えて大学側は出願しておりますので、アーリーなものが多くて、実際、契約に至るのは数年後ということもあり得ると思います。何年ぐらいたったときに、大体どのぐらいが適正かというふうに考えておられるのか、もし伺えたらなと思ったのですがいかがですか。
【柳 研究環境・産業連携課長】
非常に難しいお話なので正確に答え切れないところがあるのですが、少なくとも82%の未利用率というのはかなり高いと思っております。ご指摘のところはちょうど23ページでございますが、23ページの右側の表を見ていただくと、国内における業種別の特許利用率というのが書いてございます。一番下のところが教育TLO、公的研究機関の特許の利用率ですが、ほかの業界に比べてかなり低いということがあって、何%が目標かといったときに数字で言うのは難しいですが、明らかにほかのものは5割前後使われています。これに比べて明らかに低いというところは是正していく必要があると思います。
そもそも大学の研究者にとって、これは一般論ですが、純粋に研究をしていく中では、例えば特許を何で取るのか。論文にしてそれを公表していけば、多分、研究者は満足するという世界で、あえて例えば国の支援などによって特許を取っているというのは、それが一般の公表された情報になってしまい、それは産業として使えなくなってしまうということ。ある意味、大学が特許を取るというのは産業利用していくことを前提にしているということを考えれば、使われない特許があるというのは本来の趣旨から大きく離れていくと思います。国が支援している以上は、その死蔵特許みたいな形で82%もあるという形を是正していくべきと考えています。何年たったらということについて、我々、大学がどこまで協力が得られるかというのは、この審議を踏まえて制度構築していく中で理解を得ていきたいと思っております。なるべく広くいろいろな大学に参加していただくということを期待しております。
また、特許自体、過去の例を見ますと、実際に特許を取ってからそれが収入につながっていくまでで10年近く期間がかかってくるということで、今後の収入増ということにも、先ほど科学技術コモンズということを申し上げましたが、そういう中で実際に科学技術コモンズの目的、大きく2つありまして、1つは研究を進めていく中でその特許が障害にならないということと、幅広く使っていただくということで大学側も民間企業に使っていただく機会が増えていきます。実際、イノベーションに使われていく機会が増えるということを期待しております。それによって特許が使われる状態、そしてそれが収入につながっていくということを期待しております。
以上です。
【白井主査】
よろしいでしょうか。
【井口委員】
1つよろしいですか。
【白井主査】 はい。それでは、井口委員お願いします。
【井口委員】
ページの75のところの、今後の産学官連携体制の発展というところなのですが、私は研究大学、国際的にも大学から地域にいって見ると、大きい大学でも課題はいっぱいありますが、地域にいくと、もういろいろなレベルで体制はほとんどないです。だから、地方自治体と地域の大学と、高専、でも、地域の大学でやっているのですが、すごい必死になってやっている人数がほとんどいないです。私も動いていますが、でも、そういうところも見ながら国の施策でやって底上げしていかないといけないのではないかなと思って、この75ページのところ、非常に重要かなと思います。森下委員が最初のところで言われたように、ぜひその辺も、大学でも大変ですが、もう少し底上げのような施策もされてきています。なので、少しいろいろな意味で、こういうところでも提言なりでお願いできればなと、そう思っております。
【白井主査】
ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。どうぞ。
【秋元委員】
これをずっと読んでいきますと、最後の結論にもありますが、1つはやはり人材というのが非常に大事だと思います。ただ育成、あるいは確保と言っているのではなくて、これは抜本的なやり方をしないといけないのではないかと思います。例えば大学における人材育成や何にしろ、これは2回か3回前のときもありましたが、だめな人間が教育してもだめです。そうではなくてほんとうに必要な人間を海外であろうと、どこであろうと引っ張ってくるぐらいのことをまずやらなければいけないと思います。
それをやった上で人材を大学で育成していくというふうに、ほんとうに根本的から考えないと国際的だと言ったって、日本の特許法を解説しているような先生方もたくさんおられるし、そんなようなやり方ではなくて、ほんとうに必要な人間、例えば企業であれば海外の人であろうと、何であろうと、社長より高い給料を払って雇って、それで社内体制をつくっているわけです。だから、そういう意味では、将来、日本の背負っていく、あるいは森下先生も言われたようにライセンシングの人間にしたって、ほんとうに国際的に闘えるような人間をまず何とか確保して、それから日本としてつくっていかなければだめだろうと私は思っています。
【白井主査】
日本の製造業というか産業、結構、貧乏ですね。
ほかに。どうぞお願いします。
【竹岡委員】
やはり地域の問題と、それから、森下先生がおっしゃった専門的人材の問題と、実はいろいろな出方で違う問題のように見えますが、根っこは一緒ですよね。だから、例えば地域の問題で言えば、何年か前から文部科学省は、いろいろな大学間の連携ということをかなり言っていて、特に国際的なこういうフォーム的なところ、この中にあったように弁護士に交渉を任せていたら費用がかかるとか、そんなばかなこと、もちろん弁護士がもうかるのは大変、同業者としては非常に、我々としてはうれしいですが、そんなところにお金を使うのではなくて、やはりそれはちゃんと、そういう交渉は内部人材でやるべきですね。それを1つの大学でやるというのは、帝国大学レベルとか、あるいは慶應義塾大学とか、早稲田大学ぐらいのレベルの大学ではない大学にとっては無理なので、そういう専門人材をプールして、そこをいろいろな大学が使えるような、そのような仕組みをつくる。
それから、先ほど西尾さんのご説明を見ていて少し思ったのですが、大学の周りに企業が来ること、これはやっぱり研究開発というのは本質的にグローバルなものなので、それは地域であっても、ある光る研究をやっている大学があれば、そこに先ほど言ったように国際的なフォーム活動とかを支援する枠組みがあって、そういうリソースが使えて、その周りにそういう企業が集まってくれば、その地域は非常にグローバルな存在になることができると思います。だから、そういう発想を持って既存の大学の枠組みとか、既存の枠組みではなく、専門的な人材というのが、今、非常に時代のキーポイントになるから、これを確保するためには、これを共通のリソースとしていろいろな大学の、いろいろな若手研究者も含めてフルに利用できるためには、どういう体制をつくるべきか考えていただけたらと思います。
【白井主査】
もう一方ぐらい。
【西岡委員】
1ついいでしょうか。
【白井主査】
どうぞお願いします。
【西岡委員】
今のご意見、大賛成ですね。もともとこのプロジェクトの目的って何なのということを少し考えるべきだと思いますが、大学が非常にクリエイティブな研究をしなければならないと思います。それは当たり前のことだと思います。もともとの問題提起はグローバル化だとか、そこで競争力をなくして、だから、何かベンチャーを創出してということがありますが、経済効果を実現しましょうと、こういうことがあると思います。それだったら、ここにあるようにそのために創造力とか、独創力とか、先進的だとか、きれい過ぎると思います。はっきりすると、例えばすごく理論的なことをやっている理学部は今までどおりやっていてくださいと思います。先ほど、西山委員はそういう指摘をされたと思いますが、だけど、工学部というのは工学的価値を出して、経済効果を生むということがあります。
だから、ここでの成果は学生にとっては、例えば学位で100億もうけたらビジネス博士をやるよというような何か具体的に国は指して、そういうところを実現するように持っていかないと、これを全部実現できたらあんまりよすぎると僕は思っているのですが、やはり企業が大学を尊敬するようにならなければいけないと思います。先ほどインテルの例がありましたが、私がインテルで知ったのは、インテルは大学をものすごく尊敬しています。日本ではあのように大学を尊敬していないと思いますので、1回成果を出すのがいいと思います。大学とやったらもうかるということを思わせて、独創的なことは一たん忘れたらどうですかと、そういうふうに思います。
【白井主査】
いや、ごもっともではないかなという気がします。
そろそろ時間なので、きょうは終わりたいと思いますが、いずれにしてもまとめていただいた方向性というのは、ある種、これまでの到達点の次としてはやらなければいけないことだというような、何となくそういうコンセンサスにあると思います。ただ、分野とか地域によって相当目的が違うというようなことももう少し突っ込んで分析した書き方にしていかないと思います。何をやるのか、どうもまた非常に包括的にみんな同じようなことをやるのかというようにとられると思いますので、どこにはどういうことをやって、どれだけの規模のどれだけのお金がかかるかということは、さっき森下委員も、いいかげんなものをつくったって何の役にも立たないと、全くそうだと思うので、これをどうするのか、もう少し突っ込んで組み立ててもらったほうがいいのではないかなという気がします。ぜひお願いしたいと思います。
いずれにしても、どうやら大学の研究そのものが非常に問われてきています。もちろん理学部、工学部とか、そういう学部によっても非常に性格が違いますが、日本のというか、グローバルな産業全体が今みたいな状態になりましたから、その中で日本の産業ってどのようにやっていくのかというと、あまり日本と言うこともありませんが、日本の大学と日本の産業というのがある程度組んでいくことは地域的にいってもある程度必然だとすれば、それをどういう格好でやっていくのか、大学の役割って一体何なのだろうかというようなところをしっかりしておかないと、今のところ、さっきのご報告でもありましたが、何か産学連携をやっていてもほとんど評価されないということになります。それをやっている職員なんかもっと評価されないという、そういう不満がまだ今でもあるわけで、少し変わってきていると思いますが、そういうギャップが非常に大き過ぎます。
これは大学全体の問題ではあると思いますので、とりわけ理工系の中で役割を教育ではどうだ、あるいは研究ではどういうことの役割ができたらいいのか、そのときに産業界とはどういうふうな形でやることがふさわしいのか、社会的に見て決めていく必要があると思います。もちろん理学部がとんでもない基礎研究をやってくれる、これも非常に重要なことだと思います。そういうこともお互いに十分理解した上で大学の役割というのもはっきり決めてかからないと、これまでのように理学部だろうが、工学部だろうが、工学部でも正直言うと論文書けば大体もう満足できるようになっている。別に実用化されようが、されまいが、ほとんどこれまでの研究費、たくさんもらっていますが、まあ、あまり言いたくないですが、ほとんど実用にならないです。ならないけれども、論文は書けています。大学のほうは、論文を書けたらそれで満足なわけです。その姿勢は根本的におかしいと思います。
だから、どういうふうに産学が連携して研究費等々を使って、あるいは人というものを使って現実にこういう研究をやっていくのかということを少し組みかえないと、とても戦えないというところに来たということだと思います。そういう方向ですっきりさせると、そんな難しい議論をしなくても、もう少し短時間でも結論は出るのではないかという気がします。ぜひまた整理していただいて、これだけの方が集まって、この人件費だけでもまた日本国、大変ですので、できるだけ速やかにいい結論を得て、アピールをしてそういう方向に向けたいと思いますので、よろしくお願いします。きょう、特になければ、今後の予定をお願いします。
(事務局より、資料4の説明)
【白井主査】
特にございませんようでしたら、これで終わらせていただきます。ありがとうございました。
午後5時04分閉会
研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室