第5期産学官連携推進委員会(第1回) 議事録

1.日時

平成21年7月8日(水曜日)13時~15時

2.場所

文部科学省東館(16階) 16F特別会議室

3.議題

  1. 議事運営等について
  2. 今後の審議事項について
  3. その他

4.出席者

委員

(委員)
白井主査、野間口主査代理、原山委員
(臨時委員)
石川委員、石田委員、竹岡委員、武田委員、西岡委員、本田委員、三木委員、南委員、森下委員、渡部委員
(専門委員)
秋元委員、井口委員、羽鳥委員、平田委員、牧野委員

文部科学省

研究振興局長、大臣官房審議官(研究振興局)、研究環境・産業連携課長、研究環境・産業連携課技術移転推進室長、ほか

5.議事録

【事務局】

 定刻となりましたので、ただいまから、科学技術・学術審議会 技術・研究基盤部会 産学官連携推進委員会の第 1回会合を開催いたします。

 本日、第 5期の最初の会合ということで、冒頭、事務局が進行を務めさせていただきます。

(事務局より、配付資料の確認)

【事務局】

 それでは、まず資料 1をお手元に用意していただきたいと思いますが、本期、第5期の産学官連携推進委員会につきましては、資料 1の1枚目にございますように、4月 23日、科学技術・学術審議会の技術・研究基盤部会におきまして、知的基盤整備委員会とともに、本産学官連携推進委員会の設置が決まってございます。委員でございますが、 2枚めくっていただきまして、3ページのように指名されてございますが、次の 4ページを見ていただきたいのですが、研究基盤部会の運営規則第2条というのがございます。ここの第 2項に、委員会に属すべき委員、臨時委員、専門委員は部会長が指名するということで、3ページの委員名簿のように、白井部会長から指名されているところでございます。また、委員会の主査につきましては、こちらも 4ページにございます運営規則の2条第3項に書いてございますように、委員会に主査を置き、当該委員会に属する委員等のうちから部会長の指名する者がこれに当たると規定されております。本委員会につきましては、白井部会長自らが主査にご就任するということで、ご就任いただいてございます。さらに、主査代理でございますが、今の 2条の7項のところに、委員会の主査に事故があるときは、当該委員会に属する委員等のうちから主査があらかじめ指名する者がその職務を代理すると規定されていることを受けまして、白井主査より野間口委員が指名され、ご就任いただいてございます。

 それでは、まず白井主査、それから野間口主査代理より一言ごあいさつをちょうだいしたいと思います。よろしくお願いします。

【白井主査】

 それでは、座ったままで失礼します。今、事務局からご紹介、説明があったということで、私が主査を務めさせていただきます。ぜひよろしくお願い申し上げたいと思います。

 野間口委員も主査代理で、私はできるだけ休まないようにしますけれど、ひとつよろしくお願い申し上げたいと思います。

 皆さん、ほんとうにお忙しい中かと思いますが、産学官連携の推進というのは、とにかく 5期ですから、相当時間が経過しましたけれど、こういうような委員会でいろいろ音頭をとりながらやってきたもので、やはり更地でやってきましたから、一応発展が見えますね。ほかのものは力を入れても、何か言っても、あまり効果があるのかないのかよくわからないという委員会がやたらとありますが、ここは成果が見えるという意味で。ただ、やや遅々としているというふうに言われればそうなのだけれど、何もないところからここまで来たという感じは、今になってみると見えるという意味ですが。

 しかし、まだまだやらなければいけないことがありますし、今後、第 4期の科学技術基本計画にも進みますが、そういう中で、まさに日本の産業政策、科学技術、研究政策とか、そういうものとリンクさせて、やはり総合的に考えなければいけない。新しい展開に入るべきではないかという気もされるわけで、ぜひとも皆様方にいろいろなご議論をここでいただければと思っております。

 よろしくお願い申し上げます。

【野間口主査代理】

 主査代理をご指名いただきました野間口でございます。よろしくお願いいたします。

 私は科学技術・学術審議会に入れていただいたのが三菱電機の会長時代でして、経団連の知的財産委員長もしておりますので、そういった立場で産業界の声を産学官連携の取り組みに反映できればと思ってやってまいりましたけれど、 4月から産業技術総合研究所のほうに移りまして、東京と筑波とを行ったり来たりしながら、まさに身をもって産学官連携の重要性を感じているところでございまして、今、白井先生がこの検討委員会は具体的な成果が見えるというお話がありましたけれども、先生のリーダーシップのもとで、できるだけそういった成果が具体的に出ますように、皆様方と一緒に頑張っていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

【事務局】

 ありがとうございました。

(事務局より、委員及び事務局の紹介)

【事務局】

 それでは、事務局を代表いたしまして、研究振興局長の磯田より、一言ごあいさつを申し上げさせていただきたいと思います。お願いします。

【磯田研究振興局長】

 失礼します。本日はお忙しい中、ご参集いただきましてありがとうございます。

 また、前期に引き続いて委員をお引き受けいただいた方、並びに新たに委員をお引き受けいただきました方に厚くお礼を申し上げたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

 今、現場に行きますと、例えば企業の研究者の方々、あるいは、大学の研究者の方々は総合科学技術会議が先週の金曜日に公募を始めました 2,700億の基金の応募のお話で非常に活況を呈してというか、大混乱でございまして、経済産業省の各地区の、例えば近畿経済産業局長たちのもとで、それぞれのブロックごとに企業あるいは大学にお声がかかっておりまして、例えば某大学の教授は、中部からも近畿からも北海道からも声がかかっているけれども、どうしたらいいのかとか、あるいは、大学の中ではちょっと収拾がつかないのではないかとか、そういうお話でございますが、その中のキーワードが、やはりイノベーションとか、あるいは開発研究ということで、基礎的な研究が産学官のいろいろな形の連携のもとに新しい産業を興していくという議論になっているようでございまして、中心的には、総合科学技術会議でご議論いただき、お決めいただくわけでございますが、私ども産学官連携を推進しております省として、経済産業省と手を組みながら準備をしているところでございます。

 そういう当面の話題もあるわけでございますが、これから 2年間、第4期の科学技術基本計画に向けまして、検討を行う時期に当たっておりまして、非常に大事な時期にあると思っております。ある企業の研究者の方からも、ようやく文部科学省の審議会がまじめな議論をするようになったと言われまして、随分反省をしているのですが、しっかりご議論いただきたいと思っておりますし、私どもとしてもできるだけ様々な情報をご提供し、審議の参考にさせていただきたいと思っております。

 また、産学官連携と申しますと、事業化、産業化という視点で議論がなされるわけでございますけれども、実は私どもは学術研究という観点でも産学官連携が必要であり、不可欠であると考えております。あるいは産業界、あるいは社会の中に存在する様々な学の芽を大学が社会とコミュニケーションする中で、どのようにしてそれを研究の素材として、あるいは研究の芽として発展させていくか。そのためにも産学官連携は非常に重要なコミュニケーションのチャンネルだろうと思っております。

 政府のほうからは、経済不況、少子化高齢化への対応、低炭素社会の構築など様々な骨太の方向性が示されております。私どもとしては、政府全体の大きな構造変革の中で、新たなビジョン、あるいは新たな大学づくりに取り組むべきと考えておりますので、どうかそれぞれのご専門分野、あるいはご知見に基づきまして、ご意見、ご指導賜りますようお願い申し上げます。

 どうぞよろしくお願いいたします。

【事務局】

 それでは、以降の議事の進行につきましては、白井主査にお願いしたいと思います。

 よろしくお願いいたします。

【白井主査】

 はい、わかりました。それでは、早速ですけれども、本日の議題に入りたいと思います。

 今日の議題 1は、議事運営等についてですが、事務局から資料の説明をお願いしたいと思います。

(事務局より、資料 2の説明)

【白井主査】

 何かご質問等はございますでしょうか。大体何をやればいいかというのはこれからわかってくるのかもしれないですが。よろしいでしょうか。

 はい。それでは、資料 2のとおり、この規則を決定してよろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【白井主査】

 ありがとうございます。それでは、案のとおり決定することとしたいと思います。

 次は、今後の審議事項ということですが、議題 3になりますか。今後の審議事項について、事務局のほうから内容を説明してください。

(事務局より、資料 3の説明)

【白井主査】

 今の説明で何かご質問とかご意見ございましょうか。役割というのはそういうことで、産学官連携という意味合いから、とりわけ間近な仕事としては、第 4期の科学技術基本計画をある程度意識した意見を技術・研究基盤部会に上げて、さらにそれを上に持っていってもらうということがもう 1つの役割である。ただ、それだけで終わるわけではなくて、ここはここなりの問題意識でいろいろ議論していただきたいということでございます。とりわけこういう問題を扱わなければいけないのではないかとか、後でもちろんご自由な討論をいろいろやっていただきますけれども、何か問題、ご質問とかありましたらどうぞ。

 第 4期の科学技術基本計画に向けた基本計画特別委員会というのが動いていますね。

まだまだ何かまとまっているというわけではないのですが。後でまた若干申し上げたいと思いますけれども。

 大体、そろそろやり方を相当考えないと、日本がちょっとお金をかけてやれば世界をリードしていけるような科学技術を相当の部分で持てるかと、そういう雰囲気ではもう既になくなっているという意味で、どうしたらいいのかというのは、かなりの大きい課題だというふうに皆さん認識されている。だから、もちろん人材を育成しなければいけないとか、基礎研究もきちんとやっておかないとまずいよとか、そういう意見はもちろんありますけれども、それは大事なことだと思うのですが、それでは従来パターンで科学技術優位をもって国際優位だと、それを売って儲けることができて、生きていけるのだというパターンで考えられるのかというのが極めてみんな疑問を持っていることだと思います。

 そうするとどういう戦略があるのですかというので、皆さんなかなか決定打は出ないけれども、知的なそういうもので貢献すればいいと言っているのだが、貢献しただけでは飯は食えないから、どうするのだというところではないかと思います。

 それからもう 1つは、企業の方が言われた中で非常に印象的なのは、やはりイノベーションという言葉を非常に使われている。しかもオープンイノベーションというのは随分昔から言われているわけですけれども、どうもそういう傾向は意識せざるをえない、 1つの日本の戦略の中で大きく考えていかなければならない問題なのだろうと思います。これは、日本だけに限りません。このやり方に対してどういうふうに我々は向かっていくとか、取り入れていくというか、それに乗っかっていくのかということが 1つの大きい問題ではないかということは皆さん意識している。

 イノベーションをやらなければいけないと言っているのだけれども、日本がイノベーションをやることによって、一方的に強くなるというのは、そういうパターンではないのではないか。オープンイノベーションという考え方はひとつ、要するに世界の中で、いろいろな形で日本も寄与する。その中で双方に我々はやらせてもらうというようなものが、イメージできるのかできないのか。大変難しいところに来ているのだろうなと思いました。

 その中で、大学とか国の研究所、独立行政法人もいろいろあるわけですが、そういうものは果たして今のままでいいのか、そういう非常に大きな分水嶺ではないけれども、そういうところに来ているのかなと感じています。今回の計画の中では、大学が日本の産業界と連携して、行動していくときにどういう次元で考えてやっていかなければいけないということを我々としては意見を出さなければいけないのではないかと思っています。

 いわゆる日本のこれまでの大企業の下請け構造みたいなものはほとんど破壊されてきていて、多分中小企業というのは日本の中で多くは立ちゆかない。相当重要な企業も今、はっきり言ってつぶれているところはたくさんあるわけです。ですから、そういう構造に対して、我々大学みたいなところは一体何かできるのかというとなかなかできないような気もする。でも、そこに実際に従事している日本人はたくさんいるし、一体そういうところをどういうふうにして今後展開していくように構造を変えていかなければいけないのか。ここら辺がこの産学官連携の委員会としては、大企業はもちろん大事だし、競争力は大事なのだけれども、それと同時に日本の産業力というのも、ものづくりというものをどうやって保持できるのかということを考えなければならないと思います。

 オープンイノベーションをやると、ものづくりというのは、感覚がまた著しく違います。だから、電気自動車なんかはすごく話題になるけれど、電気自動車は下手すると、そういう技術を持った人たちでぱっと集まるとすぐにできてしまう可能性がある。そういうことは、いくらトヨタでもなかなかそう簡単ではないと思います。もちろんビジネスだから、ビジネス全体の大きさというのは必要でしょうけれども。

 それから、私、メモを用意したものがございますので、全体の話題のときにでも紹介させてもらいます。

 ほかに何かご質問等ございますでしょうか。なければ、資料 3にあるようなことで、今後報告書等々の意見を上げてまいりたいと思います。

 それでは、今日は初回ですから、ぜひ、いろいろな立場でご自由に、いろいろご発言をいただいていきたいと思います。

 では、少し話題ではないけれども、大学における産学官連携の現状と政府の動向について、事務局のほうで説明して下さい。

(事務局より、資料 4、資料5、参考資料2の説明)

【白井主査】

 はい、ありがとうございました。非常にいろいろな関係する組織や、審議会等々で議論が進んでいるわけですが、今のご説明とあわせて各委員の皆様方の大学における産学官連携の問題もあろうかと思います。そのご紹介等々もあわせながら、残り時間ご自由にお話ししていただければと思います。どなたからでも結構でございますので、どうぞよろしくお願いします。

【原山委員】

 今の資料 4、44ページ、すごくインプレッシブで、これだけあるのかという印象なのですが、第 5期ということで考えていただきたいと思う論点の1つなのですが、これだけいろいろなことをやってきて、組織、制度、ルールなどが整備されてきた。では、その結果どうなったか、大学がどう変わったのか、大学の何が変わったのか。それはポジティブな面もあればマイナスの面もあると思います。大学を主体として考えたときに、大学にとってこれらの施策というのは何なのかということを論点として 1回議論したいなと思います。

 何かというと、私の大学を見た場合も、井口先生がよくご存じですけれども、外部資金をとってこなくてはいけないという命題がありますよね。いろいろな、しかも機会というのは増えてきているし、かつシステム改革という視点からのファンディングが非常に多くなっているわけです。先ほど委員長がおっしゃったように大型のものも出てきている。とるということに、外部資金獲得が一義的な目的になってしまって、とったことによって我が大学がどうなるのかとそこまで考える余裕がないというのが 1つなんです。複数の外部資金をとってきてもその整合性がなかなかとれない。

 では、大学全体としてどうバランスをとりながら、どういう大学に向かっていくかという、少なからずうちの大学を見ていると方向性がなかなか見えないというのが現状だと思います。

 やはりそれを大学としてももう 1回棚卸ししながら見直さなくてはいけないという時期にあるような気がします。ですので、それを踏まえた上で、では新たにするべきことは何かということを考えていきたいと思います。

【白井主査】

 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。

【野間口主査代理】

 よろしいですか。資料 4の28ページで、北海道大学の先生の話が出ました。産業技術総合研究所のベンチャー制度を利用してという話がありましたけれども、これは大変いい成果だと思うのですが、産学官連携が進んでいきますと、それから、グローバルな取り組みを進めていきますと、これに類するような日本で生まれた大きな成果が海外で活用されるという例が増えてくると思います。

 そういった視点が資料 2とか、3ですか、この辺少し薄いのではないか。グローバルにやればやるほど、これからこういう問題が出てくる。これは悪いことではない、成果が出るのですから。だけど、成果の活用ポリシーというか、知的財産ポリシーというのを、国境をまたがったものの形で考えておくというのが必要な時代ではないか。そういうフェーズに入ってきているのではないか。

 産業技術総合研究所のベンチャー制度というのは、知的財産は大学で生まれたわけで、起業家へのトライをサポートしてあげたということのように私は理解しているのですが、ヒト由来の抗体の大量製造技術ということで、日本企業もひょっとしたら非常に関心持ったかもしれないのですけれども、ドイツの大変気のきいた企業が注目して、先ほどのような、日本の知的財産のやりとりでは非常に高額な成果に結びついた。あれは海外の資金が日本に入ってくるわけですから喜ぶべきことですけれども、似た事業をやっている日本企業から見たら、これはおれにやらせてくれたら、もっと大きなビジネスになったと後から言うかもしれない。

 そういうのがありますので、日本の国としての成果をマネージするかというのを考えておく必要があるのではないかなと思います。ここには竹岡先生をはじめ、国際的な特に知的財産も含めて成果の活用という点で見識のある方がいっぱいおられますので、そういう視点も入れて検討していくフェーズに突入しているのではないかなという気がいたします。

 それからもう 1つ、今原山先生の言われたことに関係するのですが、補正等で中央にある大学も含めて、非常に先端的な機材が整備される。それは産業界への貢献も考慮しながら整備しなさいということで、恐らく措置されているのだと思うのですが、その補正の効果が効いている年度は設備投資のメリットが非常に活かされている。ところが、その期間が終わりますと閑古鳥が鳴いているということで、これだけ先端的な設備が我が教室にあるのに、産業界がほうっておくから遊んでいるというようなお声をよく聞きます。これは結局取り組みのサステナビリティーというか長期的展望、そういうのをなしに今がチャンスだからそれ行けということで整備されるからそうなると思います。

 やはり研究のロードマップみたいなものをしっかり設計してもらって、それに従って取り組んでいくんだというのもぜひ工夫して、もしくは、工夫するように持っていかなければいけない。そうしなければ産学官連携といっても非常にちぐはぐなものになっていくような気がしてしょうがない。そういった点の重要性もぜひここに指摘してもらいたい、考えてもらいたいなと思います。

 以上です。

【白井主査】

 ありがとうございました。それでは、ほかの方、どうぞ。

【竹岡委員】

 いろいろな大学とか研究独立行政法人の顧問弁護士とかをやっていまして、基本的にどんどん課題が、今まで引き続きやっていた課題も引き続き重要だし、それだけではなくて、例えばグローバル化であるとか、いろいろな新しい課題が降り積もってきていて、今大学とか研究独立行政法人はほんとうに大変だと思いながら見ています。従来型の分と今回の大型予算とかでの特別な科学技術予算というところでやられている大型研究というのと 2つあると思うのですが、1つ大型研究のほうについて少し申したいのですけれども、総合科学技術会議などの委員をやっていまして、これは前からそうなのですが、要するに企業が出している総額で、日本の大学との共同研究とかの額と海外との大学や研究機関との研究費の額を比べてみると、結局、ずっと海外のほうが多い。これは変わっていない。

 そこが一体どうしてなのかというところをやはり考えなくてはいけなくて、もちろん企業が海外展開するから当然海外での研究というのが生じるという意味もあるのかもしれないですけれども、私は研究開発というのは、「第 4次産業」ではないかと思っていまして、21世紀の 1つの新しい国力の基盤なのではないかと思っているんです。大学に「産業」と言うと非常に失礼だし、アレルギー反応を起こされる方もいるかもしれないけれども、やはりここのところが基本的に次の産業、競争力の基盤になっているし、その意味では、研究開発を日本に呼び込む、日本でやるというところが、なぜ日本の大学よりもアメリカとか海外の大学や研究機関と多額のおつき合いをするのかというところは、突っ込んだ分析をしなければいけないのではないか。特にこのグローバル化の中でと思っております。

 総合科学技術会議で、ロームさんが来られておっしゃっていたのですけれども、大学とはただ単純に理科的な共同研究をするというだけではなくて、その先の事業化とか、愛情の変化、市場におけるイノベーションとか、そういうマーケティング面を含めて特許とかを出していきたいし、標準化を考えなければいけないしというところで、やはり海外の大学のほうが大学内のいろいろなリソースというものを使わせてもらえるというお話があった。例えば日本の大学の中で、慶應義塾大学で、地域社会への IT技術等の導入をテーマとする企業との共同研究の中で、理工学部と湘南藤沢の情報系と、それから社会系の、文理融合の共同研究をやっていたりするのはあるのですが、日本はこういう例はすごく少ないです。

 企業が今研究予算を考えているのは、技術開発、研究は一流でも、結局その成果が利益に結びつかない。これはどうしてなのだということをどの企業もおっしゃっている。利益に結びつくということは事業化であり、市場を見たうえでの開発であり、それは大学も一緒に考えてほしいということをおっしゃっている。ここを、海外の大学、研究機関とかが企業のハートをつかんでしまっているところをちょっと強化していかなければいけないのではないかと思っています。

 もう 1つ、例えばスピード。特にシミュレーション系ソフトウェアとかがアメリカのほうが断然強いので、そういう研究開発のスピードが違う。あるいは研究のサポート人材が、テクニシャンを含めてやはり豊富である。そういう研究管理、そして研究開発のスピードが違う。つまり予算を投じてある期間内に成果を出すという企業的な考え方に、もしかしたら海外の大学のほうがよりまじめに取り組んでいるのかもしれない。

 そういういろいろなことを今知るべきだ、考えるべきだと思っています。経済産業省がやはり産学連携についてはアンケートされますが、企業側に都合がいいことばかり言っているのではないか、みたいな受け取り方もちょっとあって、やはり文部科学省に、ぜひ企業、特に海外と共同研究を一生懸命やっている企業に聞いていただいて、むしろ大学にとっては文部科学省は内輪なので、そういう内輪の温かい目で企業側の声を謙虚に拾い上げて、そして施策に反映させるというようなことをやっていただければなと思っております。

【事務局】

 済みません。南委員がいらっしゃいましたので、ご紹介させていただきます。

 今いらっしゃいました南砂、読売新聞東京本社編集委員でございます。

【南委員】

 よろしくお願いいたします。

【白井主査】

 どうぞ、武田委員。

【武田委員】

 野間口委員とそれから竹岡委員、グローバルな視点ということで、 10年ぐらい前になりますけれども、私自身はアメリカの某大企業の研究開発の責任者で、アメリカの大学にいっぱいお金を払った経験があります。それからしますと、お二人の意見でやはり大事なことは、日本の政策を考えるときに、ここでやるのか、ほんとうは総合科学技術会議とか、その下のところできちんとやるべきことだと思うのですけれども、国際的なベンチマークの上で日本のとるべき政策ということをちゃんとポジショニングしないと、いつもこういうところの会議に出てくる資料はわりと日本の中だけの議論にすぐに落ちてしまう。

 そういうことにおいて賛成なのですが、ただし、 1点、今の竹岡委員の話で行きますと、私の実体験からしまして、日米を比較して3つのポイント、アメリカの大学はまず学問の自由ということを非常に強調します。したがって、私も 1大学の1テーマに年間5,000万円出しましたけれども、テーマについては、企業側からは意見を聞くけれども、ディシジョンに関しては一切影響を受けませんと非常に学問の自由を強調します。いくらお金を出してもすべての特許は、 MITにしてもスタンフォードにしても全部大学の持ち物ですと。これも明確です。

 それから、今日ちょっと統計数値を忘れてしまったのですけれども、日本の大学とアメリカの大学の先生方の研究しているテーマを基礎と応用と、どう分けるかわかりませんけれども、ある統計を見ると、アメリカの大学は極めて基礎の割合が高くて、日本の大学は極めて応用の割合が高い。

 この 3点を比較しますと、企業的な発想では、日本のほうが、菓子折1つとは言いませんけれども、先ほどから言っている 200万ちょっとぐらいを年間出せば、特許は共有できます。テーマについても、文部科学省はいつも共同研究の数を実績として挙げて、僕はそれはいつもアラーム出しているのですが、企業と一緒の計画を立てること自身がほんとうに産学連携の本質かと言いますけれども、そこまできめ細かく、企業と示し合わせて、ではこの共同研究しましょうねということも日本の大学のほうが非常に対応がいい。さらに特許の帰属もそうですし、応用に近いことをやっている。どっちのほうが産学連携上インパクトのあることになっているのかということを、やはりきちんと、常にそこに戻って考えないと、若干共同研究が増えた、特許料収入が増えた、こういうところの積み上げで見ていっている取り組みがほんとうにいいんだろうかということはやはり一度議論すべきだと思います。

 それは本来は、すぐにこういう話になるといっぱいいい本が出てくるのですけれども、それは大体ハーバードの先生とか、社会科学というか、ある種のポリシーメーキングだとか、こういうことをきちんと見ていて、そういう世界では既に例えば、バイ・ドールなんか見直そうよとかいろいろな議論が出ている。日本は始まってしまうと、みんな十何年前のアメリカモデルみたいなものを追いかけているところが若干あるので、そこはちょっと危険だなという気がしています。

 私が見るところは 10年前ですから古くなったかもしれませんけれども、スタンフォードの教授とかMITの教授は決してマーケティングだとか、そんなことにたけているわけではありません。たけている人ももちろんいます。だけれども、基本的にはアカデミズムで売っているんです。アカデミズムが生み出したものをどう生かすか皆さん、企業自身で考えて拾っていってくださいという、大学側が産業界のいろいろなことをスタッフ抱えて調べたりなんかし出したら、逆に言うと、僕はどんどん、ちょっと申しわけないのですけれども、先ほどのご意見と逆行するかもしれないけれども、やはりアカデミズムの価値をぎらぎらに磨いていかないと、このくらい先進国になった日本では、インパクトのある産学連携にはならないという気がしていて、若干今の方向がその逆で、大学がもっとこういうことも知っておかなければいけない、産業界のことも知らなければいけないという、とがっているところを一生懸命丸めていく方向に行くのではないかという、ちょっと逆説的でそういうことを感じています。今日はその辺のことを言ってもいいかなということで、申し上げておきます。

【白井主査】

 心強いご意見をいただきましてありがとうございました。

【武田委員】

 特に私が所属している理化学研究所なんて基礎ですからまだまだ全然少ないです。実は昨年企業からのお金が前の年に比べて約倍増して、まだ倍倍で行くつもりですけれども、一切企業の方には、理化学研究所は産業のことはわかりませんと。わからないのが価値ですというのを売りにしています。

【牧野委員】

 京都大学ですけれども、国際化の事業化が始まって以来、どういう方向で行くべきかと考えまして、ヨーロッパとアメリカの東海岸に特化してやってきていますが、要するに、いろいろ調べましたがどんな本を読んでもわからないというので、面倒なので、 20カ月で20回ぐらい現地に行きました。行ってわかってきたことがたくさんあります。そのうちの 1つ、一番大事なことなのですが、何のためにグローバリゼーションをやっているかということなのですが、おっしゃるように、非常に知的レベルの高いところとのリンクをどうやってつくるかに彼らは今一生懸命になりつつあります。例えば、パリ第 7大学の新しいキャンパスの前にシカゴ大学の大きなオフィスがあります。そういうリンケージをつくりつつある。それはどういうことかというと、グローバリゼーションという非常に、ある意味では排他的なものがどうやってつくられるかというプロセスの中に既にあるというふうに判断しています。

 ではその中で、日本の大学はどういうふうになっているかということなのですが、そこがおっしゃったポイントだと思うのですが、日本の大学についてはほとんど知られていない。残念ながらそれが現状だろうと思います。僕らも行っていろいろ話をしたのですが、最初はやはり京都大学を知らないから、だれが来たのかなという話になるわけなのですが、大事なことは、僕は何回も行っているうちに、今大きな大学の学長か副学長レベルが必ず出てくるようになってきました。そこで初めていろいろな本音というのが聞けるし、実はそういうところに、うちの大学がどういうふうに共同で研究をしているかということを、データを与えてあげると、非常に重要な共同研究が進行しているということをやっと発見するわけです。それによってやっと新しい関係がまた構築できる。

 そうすると恐らく、ドイツの大学からこの秋ぐらいに、どこかの 2つの大学とうちの大学とちょっとコンソーシアムを組めないかとか、そういうのが来るというのが大体予想でわかっているのですけれども、そういう話の中に入っていくことができるというわけです。

 そういうグローバリゼーションをやっていかないと、いわゆる国際社会の中で、日本の大学がきちんとした実力を発揮できないまま、おるんだなということぐらいしか認識されない状態になるのではないかなというふうに思っています。

 うちはロンドンにオフィスをつくって人を置いているのですが、ワンマンオフィスですが、ほかのオーガニゼーションにあまりお世話にならないようにしているのですが、やはり独自で情報を、とにかくできるだけつかみたいということです。そういう分析をしていかないと、国際社会でうまくやっていくことができない。企業との話も同じです。

 企業というのは、必ず日本に、大きな企業はちゃんとオフィスがあります。向こうからこっちのオフィスにだれに会ってくれとか、そういう話になってくればだんだん話もできてきまして、そういうリンケージをもっとつくっていくことが大事ではないかなというふうに思っているわけです。

【白井主査】

 ありがとうございました。

【野間口主査代理】

 よろしいですか。何度もしゃべって申しわけありませんが、竹岡委員と武田委員の話に主に関係するのですが、この資料で分析データの、先ほど竹岡委員がおっしゃった一研究当たりの資金とか、文部科学省はよくデータをとっておられますけれども、私の体験で言いますと、日本の場合は、大学と企業の資金の流れは奨学寄附金の伝統からつながっているのではないかと思います。あれは 1件50万ぐらいです。有名な先生の教室との関連。それが共同研究、依頼研究という時代になってもやはり尾を引いている面があるというのはひとつあるような気がしてなりません。卒業生の就職も期待したいしということで、研究を依頼しているのか、よき関係をつくるのを目的としているのか、そういうのがあいまいな形で企業と大学の間が構築されているのが 1つ。

 それから、先ほど日立の例を武田委員が紹介されましたけれども、日立ほどではないですが、私がいました三菱電機でも外国の大学と結構長くやりました。しかし、結局今反省的に考えてみると、企業のグローバル化の一戦略としてやっているような気がしてしょうがないです。やはり目に見えた成果を期待しているというのもあるのですけれども、人材育成とか何とかで、そういうものに頼る人が育てばいいというのがありまして、これまでやってきたという面があります。

 それから、海外との産学連携と日本における産学連携とを比較するときに注意しなければいけないのは、海外の大学と連携できる企業というのは日本で言う大企業ということです。大企業のうちでも大きなほうです。日本の大学とやっている産学連携、これは中小企業も含めて、非常にたくさんの企業が参加していますので、恐らく 1件当たりは基本的に小さくなる性質を持っています。こういうのは、見て本質的に違うことをやらなければいけない。

 そうはいいながらも、先ほど牧野先生からご指摘ありましたように、海外の大学というのは、表現を変えると、産学官連携ビジネス的な構想力というのは、残念ながら日本の大学よりあるのではないかなというような気がします。

 半導体の世界で言いますと、ヨーロッパのベルギーの大学が IMECという大きな半導体デバイスの国際的な連携拠点をつくっています。産業の基盤への出口を考えた場合、全く自分の国の中にないんです。にもかかわらず、世界中の企業とかが集まって、そこで R&Dをやろうということになっている。なぜそれが可能なのか。やはりそうやることによって、そこで知的交流、いろいろな創造が生まれる。そういうのを是として、国の、ベルギーの大学が一生懸命やっています。

 そういうのがほんとうに日本の大学で、そこまで張り切ってやれるかどうかというのは、東京大学でも京都大学でもいいのですけれども、なかなか日本のいろいろな制約の中では、そこまで踏み切れないのではないかと思います。けれども、規模とか思い切った取り組みというのを議論するとしたら、違いみたいなものも認識した上で、そこまでやらなくていい、もっときめ細かい連携でいいというのであれば、それも 1つの哲学ですし、いや、欧米流のああいう、少々乱暴なあれでも負けずにやるというのであれば、それなりのことを考えなければいけない。そういうことじゃないかなと思いますけれども。

【西岡委員】

 ちょっといいですか。

【白井主査】

 はい、どうぞ。

【西岡委員】

 なるほどと思いながら聞いていたのですけれども、産学官の連携をやるときに、イニシアチブをとるのはむしろ産だと思います。市場を一番知っているし、それで、儲けなければならない立場にいるのは産だから、やはり企業が上手に大学を使いこなす、あるいは研究所を使いこなすという能力がないと、学のほうからなかなかこの関係を改善できないと僕は思います。

 そのときに、今の企業がそういう能力を持っているかという問題だと思うのですけれども、非常にもったいないだろうなと。私はベンチャーキャピタルですから、大学発の技術でも、あるいはベンチャー発の技術でも大企業にどんどん紹介しておりますけれども、まず第一声は、うわ、うるさいなと。そんな話を持ってきてほしくないなと。結構有名な大企業がはっきりと、私どもは外の技術は使いませんということを言う会社だってあります。

 だから、今間違いなく彼らはそんなことを言っていられない状況なので。しかしそれが企業の意思になっていないです。だから、そこをどう改めるかというのは非常に重要ではないか。しかしながら、文部科学省では難しいと思います。

 というのが 1つと、もう1つ、今日はこの大部の資料の話を聞かせていただいて、よくまとまっているなと思うのですけれども、やはりあまりよくまとまり過ぎると、ああ、終わったなと。きっとこの問題は 5年後も同じことを言っていると思います。企業が変わらないから。企業から変わっていけば、大学は変われると思います。もっとその視点が要るのではないかなと思いました。

【白井主査】

 はい、どうぞ。

【石田委員】

 よろしいでしょうか。ありがとうございます。私も今までのお話に関連しますけれども、産学官連携ということにつきまして、私は結論的に国の施策あるいは産学官それぞれの役割の認識整理がやはり非常に重要だと思います。したがいまして、このような大きな事業ですから、政策評価がきちんとされるべきだと思います。そのためには、産学官連携についての認識をこの会ではしっかりとコンセンサスにしていくのが私はあるべきだと思います。

 そういう意味で、箇条書き的に幾つか申し上げたいのですけれども、要は、キーワードはイノベーションだと思います。イノベーションを、先ほど竹岡委員からも出ていますように、技術革新というところに限定する考え方で私はいかんと思います。したがって、この資料のあちこちに出ていますけれども、成果の社会還元まで含めたところでイノベーション概念は整理すべきで、そのことは資料に非常に正確に出ていると思います。資料 3の4ページあたりにもそれが出ております。

 大学の学校教育法、教育方法の第三の使命として、社会還元といいますか、社会貢献が入っている中で、産学官連携におけるイノベーションは大学の成果を社会に還元する、このようなターゲットを認識としてはしっかりと持つべきだと思います。それは資料 4の37ページあたりに、大学の特許出願または特許権としての件数は着実に出ておりますけれども、その大学の特許の実施状況、これも非常に高くなっている。これは大学が事業化しているわけではなくて、今もお話ありますように、企業で事業化している。そういう意味では、成果の社会還元ということが着実に伸びている。

 結論として、このようなことで、産学官連携、これは恐らくイノベーションがキーワードで、イノベーションは社会に成果を還元するところまでを見届ける。そういう意味では、大学における、例えばですけれども、特許出願については件数、そして特許率、特許件数、それはよいわけですけれども、社会還元という観点から、これは私の個人的な意見ですけれども、特許出願する前から産学が連携をとりながら、国の国際競争力を上げていくというようなことが産学官連携におけるイノベーションについての非常に重要な筋だろうと思っております。

 結論としては、お話ありますように、産のほうから役割を従来以上に発揮することが、産学官連携におけるイノベーションの社会還元における実効性だろうというふうに思います。

 以上です。

【白井主査】

 ありがとうございました。では、森下委員。

【森下委員】

 大学の側から、一見非常にいいように見えますけれども、問題点がまだ残っているかなというところをご紹介したいと思うのですが、まず 1つ、9ページなんですけれども、多分皆さんもうご存じだと思いますが、特許の実施件数が 28倍も伸びているということで、これだけ見るとすごいのですけれども、次の10ページを見ると、特許料収入はほとんど増えていないという記述があるので、これは一体 1件当たり幾らになっているのかということですけれども、むしろ単純に比較すると、特許料の実施金額が安くなっているではないかという気がするような数字になっていまして、量から質へという中で、そろそろ単純に意見するだけではなくて、やはり身のある意見をしないといけないということで、このあたりも産業界の目が要るというところにもつながるでしょうし、このまま行くと、特許は移転するものの、いつまでたっても大学の知的財産本部はむしろ赤字が大きくなるということになりかねないと思いますので、このあたりも 1つ今後の問題かなというふうに思います。

 それからもう 1つは、27ページ、大学発ベンチャーなのですけれども、日本の大学ベンチャーが今減っている。これは先ほどベンチャーキャピタルの話もありましたけれども、資金的な面も含めて、なかなかつくりにくいという現状もありますし、できたものもリビングデッド、あるいは死んでいっているという状況の中で、ある程度こういう状況はしょうがないのかと思いますが、一方で隣のアメリカを見てもらうと、基本的にやはり新しくできる分は横ばい傾向です。たくさん死んでいますけれども、できるほうはやはり依然とできている。

 日本の大学発ベンチャーの設立というのは、基本的にブームでしかないということを逆に言うと意味していまして、やはり恒常的につくり出すような仕組みになっていないのではないか。そういう意味では、大学発ベンチャーをつくるというのは社会的なインフラだと思いますので、ブームとして、ある年多かったから次の年は減っていてもいいというわけではなくて、大体どれぐらいの数字がベースとして、新しい特許が出て、それが移転されるかという中で必要なのかということを考えると、やはり 100件から200件ぐらいはコンスタントに本来あるべきではないかという気がいたします。

 そういう意味では、一過性のブームで、 10年たってまた年間設立数が10件とかになるようでは意味がないと思いますので、そういう意味では、最近の技術移転の動向の中で、単なる特許移転なのか、それともベンチャーが必要なくなってきたのか、何が問題点であるのか、このあたりももう少し見ていく必要があるのではないかと思います。

  JSTの事業等を含めて、大学発ベンチャーの設立事業は非常にたくさんグランドに出ているはずなのにどんどん減っていっているというのは、やはりどこかに問題点、あるいは単純に外部資金が少なくなっているというだけではちょっと説明がつかないところもあると思いますので、このあたりも恒常的に生み出す仕組みとしての施策というのを考える必要があるのではないかというふうに思います。

 以上です。

【白井主査】

 ありがとうございます。では、渡部委員、どうでしょう。

【渡部委員】

 先ほどから、外国大学との比較という話が出ておりましたので、廃止をしたのですが、私どもの共同研究センターで、主に大企業ですけれども、共同研究先の企業のアンケートをとったことがございまして、ステレオタイプでよく企業の方から出てくるのは、ともかく日本の大学のほうが成果が出ないみたいなことがよく出てくるのですけれども、必ずしもそうではないというデータです。件数がそんなに多くありませんので、統計的にしっかりしているというわけではないですが、比較的大きな企業はよく入っていますので、ご紹介しますと、技術開発に成果があったかどうかとか、特許出願に結びついたかとかというと、日本の大学のほうがむしろポジティブでありまして、外国大学に関しては商品企画とか事業企画に結びついたとか、ベンチャー事業体ができただとか、そっちのほうが外国大学のほうが大きいというような格好になっていまして、比較的川下側のほうで評価されている。

 これは結局、大学の管理の、大学側のほんとうの問題というか、差なのかどうかというのは実はわからなくて、そこの大学の周りというか、エコシステムの問題とかいろいろなことが関係していると思いますが、決して技術開発とか特許出願――特許出願はむしろ外国大学はあまり出ないです。そういう仕組みになっていないので。というようなことからすると、日本の大学のほうがいい。

 それから、外国の大学の特徴というのは、売り込みが熱心というのがすごく出てきます。あと、契約に関しては、日本の大学は契約が柔軟でないというのがかなりスコアとしては出てきます。ただ、これも気をつけないといけないのは、特許のシステムでよく出てくるのは、不実施補償の問題とか、デフォルトがひっくり返っていますので、その部分は少し勘案しないといけないのですけれども、契約に関してはむしろ外国の大学のほうが柔軟だというようなことが出てきます。

 この辺は実は、いろいろなことが言われますが、あまりはっきり、きちんと統計的なエビデンスがありません。今ある資料でどこまで言えているのかということをぜひ 1回整理して、必要だったら、やはり対応しないといけないだろうなと思います。ただし、一般にざくっと言われていることは必ずしもそうでないというふうに思っています。

 それから、知的財産の関係の話で行きますと、最近、大学はパテンティング・アンド・ライセンシングみたいなことで、そういうことをやり始めてきたわけですけれども、特に最近の、製薬、バイオは別ですけれども、 IT系なんかの事業の分野を中心に、環境もそういうところがありますけれども、特許権の集合的な利用というのが非常に盛んに企業で行われるようになってきて、これはパテントプールとかそういうような話もありますし、最近ではパテントコモンズという、環境なんかで海外企業を中心にイニシアチブをとられていますが、こういうものがどんどん広がっていく傾向にあるわけです。

 産学連携特許の使い方で考えると、相手がパテントコモンズで使いました。活用は活用なのですけれども、そういう場合、大学はどうやってそのマージナルコストを回収したらいいかというのはかなり戦略的に考えないといけない局面がいっぱいありまして、そういうことをよく考えていかないと、実はパテントコモンズなんかはオープンイノベーションです。オープンイノベーションというのは、ある意味、非常に危ないところというか、リスクもあるわけで、いろいろなところを戦略的に考えていかないと、大学との関係というのが、少なくとも特許権に関してはいろいろな問題が生じてきつつあります。

 それからもう 1つ、共同研究と寄附金の関係みたいなことが、先ほど奨学寄附金の話がございましたけれども、私のほうでデータを見ている限り、こういうふうに解釈しています。日本はやはり奨学寄附金研究みたいなものがやはり現存としてあって、先ほど 50万と言われましたが、50万はさすがにちょっと少ない。 100万ぐらいではないかという気がしますが、そういうものでやはり暗黙の対価を置こうというのがもともとあったのだと思います。

 実際に知的財産管理ということを入れることによって、予想としてはみんな対価関係にある共同研究に移行するのではないかと思われていたわけですけれども、実はあまりそういう傾向が見られない。むしろ寄附金に若干戻ってしまっているところもなくもないようです。これは調べるのは非常に難しいのですけれども。戻っているのは大体大企業との関係でありまして、ここでこれも引き続き注意しないといけないですけれども、共同研究にしても、技術移転にしても、大企業と大学との関係、それから中小企業と大学との関係、中小企業はベンチャーも分けるべきかもしれませんが、かなり傾向が異なっていまして、特許知的財産管理に関して言えば、中小企業に対して、むしろオポチュニティーを増やしていると思います。技術移転の移転先もアメリカほどではないですけれども、むしろやはり中小企業は半分以上多いということがありまして、恐らく知的財産というシステムを産学連携に入れることによって、中小企業に対するオポチュニティーは増えているのではないかというふうに思います。

 ただしそこで問題があるのは、大企業との関係で、いろいろな契約条項の問題とか、そういうことが障害になって、どちらかというと奨学寄附金に戻ってしまっているような傾向があるように見えます。その辺をどういうふうにとらえるかです大企業は、先ほどの話で、別に人の技術は要らないと言っているのに、わざわざ押し売りする必要もないと考えれば、中小企業とかベンチャーの支援ということが重要だという考え方も当然あるだろうと思いますし、これはアメリカの考え方がそもそも中小企業にはありましたので、それに近いような考え方をすればそういうことになりますし、やや日本の場合はイノベーションシステムの中でやはり大企業は非常に重要だということであれば、そういうことをどうやって緩和していくかということもあるかと思います。その辺は、やはりこれももう少し深い議論が必要ではないかというふうに思います。

 関連して、日本の場合は、共同研究から生まれる特許出願が非常に多くて、共同出願の格好で依然として 7割、8割出てきてしまいます。共同出願に関して、これは役に立っているかどうかがなかなかよくわからない。大学が単独特許のライセンスを行った場合は、それが実用化していればロイヤリティーという格好になってくるわけですけれども、共同出願の場合必ずしもそういう構造になっていないので、そこの行き先がわからないという問題がありまして、これはやはり何かの形でモニターしていく必要があるのではないかなと。

 この話をやりますと、大体特許法の 73条の話とかになってきて、あれはやはり法改正が難しいので、この議論だけで、いくら挑戦しても難しいと私は思っています。

 したがって、やはりそこはソフトなソリューションを考えざるを得ないので、ぜひこの機会にそこをもう少し、これは何度もやっているんですけれども、法改正の話になってしまうと、そこで結局、あれは強行規定ではないから、別に変えなくていいという話になってしまいます。なので、もう少しソフトな側からここをどういうふうに考えるかということは議論すべきだと思います。

 ちょっと長くなりました。以上です。

【白井主査】

 では次の方どうぞ。どちらからでも。

【秋元委員】

 これは産学連携全般に係ることですが、これをうまくやろうというのは、結局人材の問題だと思います。私ども実は具体的なお話を出しますと、ほぼ 1年かけて、40ぐらいの大学、国立研究所を回らせていただきました。そこで唖然としたことは、東京大学、京都大学など、ごく一部を除いて、そういうところにはライフサイエンスの実務家はいるのですけれども、ほんとうに戦略、戦術を考える人がいない。それから、残りの大学は全部皆無である。これは現実です。

 国の予算のかなりの部分がやはりライフサイエンスに行っておりますし、それから同時に先ほど、大学にしても、例えばスタンフォードなんていうのは、コーエン、ボイヤーの特許、制限酵素がありますが、これは数百社に出して数百億円の金が入っている。こういうようなことが実際に日本ではなかなかできていない。なぜだろうかというと、やはりそういうところに派遣する、行ってもらう人材がまずいないということです。

 アメリカはどうしているかというと、例えばヨーロッパから、デュポンとかメルクとかロシュとか、こういうのが戦前からアメリカに入っておりまして、化学とかあるいは医薬とか、こういう分野で非常に強い力を持っていて、 IT業界と製薬業界は真っ向に対立するぐらい、あるいはそれ以上の力を製薬業界は持っている。

 ところが日本は、例えば武田薬品を考えても、十四、五年前に、アメリカ、ヨーロッパでアステラスと全面戦争を闘っただけであって、現時点では、アステラス、第一三共、それから最近では、エーザイ、塩野義製薬、大塚製薬、このぐらいしかいなくて、そこから出てくる人材というのは全然いないわけです。

 だから、大学等においてもそういうことを教える人も全く皆無である。例えば、どこかの地方から来た人とか、大学の先生で非常に法律が勉強されていても、例えばピストルの絵を見た、ピストルをいじった、ピストルを分解して法律をかじってみた。でも、それをどういうタイミングでどう撃ったら一番効果的かということを知っておられる方が実際にいない。そういう方たちが大学の学生を教育していたら、やはりそういう人しかできない。

 だから、ここをどうするかということが非常に大事なことになると思います。と同時に、この計画の中に全般的に書いていないことなのですが、そういうふうにほんとうにそれにすぐれたような学生、あるいはそういう知的財産の方が出てきた場合に、では、この中に書いてあるのだけれども、その人たちを維持する、確保すると書いてあるけれども、具体的にどうやって維持して、どうやって確保するか。この施策が何も書いていない。この辺をやらないと、ほんとうにライフサイエンスに、例えば国の 3割ぐらいの金が出ているのに、日本としてどうしたらいいかということが全然進まないので、ぜひ人材育成ということを、あるいは確保、維持ということを踏まえて、やはりこれは文部科学省あるいは大学で何とか考えていくべきだというふうに強く思います。

【白井主査】

 井口委員。

【井口委員】

 私は今の高等専門学校の立場で少しお話し申したいのですけれども、もともと東北大学で高温材料物理化学、鉄とかセラミックス、シリコンとやって、先ほどの武田先生と私は同じで、アメリカでも研究していたのですけれども、やはり大学はしっかりした基礎研究ということで、世界に、それは冠たるもので行くべきだとは思っております。

 さて、高等専門学校で、参考資料 5のページ19の最後に地域経済の活性化と大学の機能・期待というところが出ているのですけれども、高等専門学校は全国に国立で 55高等専門学校、ほとんど地域にあります。そうすると、先ほどいろいろ議論に出てくる大学と大企業の関係というよりは、地域イノベーションを担うのはやはり地域にそういうふうに散らばった高等専門学校の、それから、中小というより弱小企業との接点を産学連携で持っている。これは秋元委員が言われたように、我々は中学から学生を受けて、毎年 1万人以上の卒業生、中堅技術者を出しているわけですけれども、そういう人材育成で常に非常に重要だと思っているのですけれども、片やもう 1つの教育と研究のほうでは、地域の企業の、ほんとうに小さい企業の困りごとからいろいろなところに技術移転する。こういうこともしておりまして、ぜひいろいろな議論のところにそういう地域イノベーションのところでの高等専門学校の役割みたいなものを、いろいろな議論を出していただくということと、盛んに私どもも大学時代から理科離れということで、私も必死になってやっていましたけれども、高等専門学校はもっとさらに下に行きます。

 したがって、中学校、小学校まで行って、ものづくりとか理科教育ということを必死にやっているわけですけれども、それがいろいろな点で、文部科学省もいろいろな施策を持ってきていただいているのですけれども、大学の先生もそうですけれども、やはり先生方が忙しさというのがあって息切れしているのではないかと。そうすると、教育研究、地域貢献、もう 1つあって、教育は評価しにくいものですから、それでは産学連携というと、55高等専門学校がちょうど東大に近い規模なのですけれども、特許の数は幾つだとか、外部資金をどのくらい得たか。外部資金は 55高等専門学校合わせて東京大学の何十分の一。そうすると、それなりの評価が出てしまう。

 でも、やはりそれは地域規模も小さいなりにもやれるのではないかと思います。したがって、いろいろな議論で、確かに大学とか、グローバルも必要ですけれども、産学連携のときに、こういう地域を考えると、ひとつ高等専門学校とか、そういうところもいろいろな施策に挙げていっていただきたいなという希望とお願いでございます。

【白井主査】

 ありがとうございます。そろそろ時間が来たので、まだご発言のない方がいますが、ぜひ発言していただきたいのですが。済みません、短く、順番にお願いできますか。

【羽鳥委員】

 すみません。先ほど資料の説明を小谷室長から聞いて、いっぱいやらなければいけないことがあるなと実感したところが正直なところでございます。あと、私は慶應義塾ですけれども、慶應義塾でほんとうにライセンス収入を増やしたいなと思っています。これは単に金を儲けるということではなくて、みんながそう言っているわけですけれども、結局は経済のインパクト、それからあと人材交流につながっていくわけで、そういった意味の金を儲けるという意味なんですけれども、直接的にはライセンス収入です。

 そうしたときに、やはり悩みは大きいなと。 20年アメリカからおくれていると言われていますけれども、では20年たったら同じになれるのかといったらどうかなと。着実に進展しているかというとどうかなと、どうも心配なところがいっぱいあります。

 特に、大学の中を見ていると、企業から来た先生方というのは、産学意識が非常に強くて、そこのところの出口は結構いい出口がいっぱいあります。他方で、医学部系はどうなるかというと、そういう人は基本的にいませんので、かつ薬事承認が必要な長期ものですと、それは特許出願の費用ばかりかかって、それでやはり出口にたどり着くまでに大変です。創薬系ベンチャーが非常に苦しい状況なので、そこが何とかならないかな、弱ったなということが基本的な悩みでございます。

 あとは共同研究で、やはり特許は基本的に共有になって非常に使いづらいなと。共同研究の契約チェック、共同出願のチェックに工数がすごく割かれる。技術移転の時間がなくなってしまっている、これも悩みであります。

【白井主査】

 ありがとうございます。

では、平田委員、お願いします。

【平田委員】

 それでは、いろいろ考えるところもありますけれども、 2点ほどお話しさせていただきたいと思います。私は数少ない文科系の教員で経営学を担当しております。

 先ほどからいわゆる特許件数とかということではなくても、やはり社会還元であるとか、あるいは戦略策定ができる人材との連携という話が出ておりますけれども、私どもビジネススクールは不況になるとニーズが増えるという特殊な業界ではありますけれども、実際に例えば専門職のマネジメント系の学校、専門職大学院の 3割が定員割れです。その人たちというのは、はっきり言って、戦略が策定できて、マーケティングができて、それからベンチャーキャピタリストからお金を引き出すことができる事業計画書というのがばっちりつくれる人たちなのです。

 でも、その人たちが実際に起業するということは、やはり文科系の人が多い、理系の方も大分増えてはおりますけれども、やはりどうしてもサービスレベルとか IT系の事業ネタで偏ってしまいます。例えば、この人たちと理系の研究されている先生の研究室とのマッチングする機能というのが全くないです。そのくらい情報が相互に行く仕組みさえもない。私は実は企業の中にも 20年ほどおりまして、企業の中ですと、どこでどういう研究をされているかとか、今度はどういう技術が出てくるのかというのが社員の中で情報が入るのですけれども、大学というところは全く理系の情報が文系のほうに入ってこない、ましてマネジメント系に入ってこないという。なぜなんだろうというくらい情報の、学内でのギャップもありますし、まして学内でもわからないことでしたら、外との情報ギャップというのもほんとうにとてつもなく大きいのではないか。いろいろな動きをつくる、いろいろな仕組みをつくる、もちろん人材もすごく大切ですけれども、そのバックには必ず情報が流れることがないと、人というのは動けないので、そこら辺が 1つ問題なのではないかというのが第1点です。

 第 2点ですけれども、私は某自動車会社に20年近くおりましたけれども、企業というのは必ずしも技術を特許化するだけではなくて、一番大切な技術というのは逆に特許にしないケースというのも結構あります。それにしても非常に組織の中で、秘匿管理がものすごく厳密で、同じプロジェクトにかかわっていても、私どもには例えば知らされない技術というのは結構あります。

 片や大学に行くと、非常に重要な書類が机の上に散らかっていたりとか、わけのわからない学生なのか研究生なのか、よくわからない人が研究室に出入りして、全くセキュリティーがない。こういう価値観が全然違って、しかも時間軸も、企業ですと、ほんとうにあと 1週間で何か結果を出さなければいけないということが結構あるのに、大学ですと、来期ねみたいな。来期っていつ? 来年度のことよという、時間軸も全く違う中でなかなか産学連携というのは難しいなと感じています。そこら辺ももっと、まさにベースは情報になるとは思うのですけれども、もう少し価値観を共有する場というのがないと、会話にならないという部分もちょっとあろうかと思います。ただ、その中で非常に中小企業はやはり技術を非常に欲しがっていますし、そういう場があると、今中小企業は非常に経営が厳しいですので、やはり支援をしてほしいと思っています。お互いに手を伸ばしやすい状況なのではないかと思います。

 先ほど主査の先生からも、中小企業のことも考えなければというお話がありましたけれども、大企業とはまた違う軸で、非常に今はいいチャンスで連携ができる環境なのではないかというふうに思っています。

 以上、簡単ではありますが、よろしくお願いいたします。

【本田委員】

 皆さんの委員の意見をお伺いしていて、すごく共感するところがあって、特に産が変わるというようなコメントをされた西岡委員のコメントというのは、ほんとうに技術移転をやっていて感じるところではあります。

 そういう意味でも、ほんとうに技術移転のグローバル化というのは、非常に重要なのかなというふうに考えています。大学の先生が論文を発表すると、いい研究ですと、まず海外の企業がアプローチされてくることがありますけれども、残念ながら日本の企業というのは、なかなか言語的な違いがあるのかわからないのですけれども、残念ながらそういうアプローチがないという現状があります。

 ですので、私どもから、例えば国内企業にいろいろ情報発信はしておるものの、実際に海外から引き合いがあるというと、日本の企業が興味を持ってくださるということもありますので、そういう形で海外に発信することによって、もう少し国内の技術移転も進むという場面が出てくるのかなというふうに思いますので、やはり産学連携のグローバル化というのは非常に重要な視点になろうかと思います。

 あと、一方で、学のほうも当然変わらなければならないところがあるというふうに考えています。例えば、技術移転というか、法人化して 2004年から考えますと、今6年目に入ってきていて、全体おしなべて皆さん、特許出願しましょうというような啓発の段階は終わっていると思いますので、平等にというよりも、もう少し絞り込んだ知的財産の戦略というのを考えていかないといけないというふうに考えています。

 その中で、共同研究という話が先ほど出ているのですけれども、共同研究から共同出願というのが、ほんとうに、実に多いです。東京大学で行くと、単独で出願するものの 2倍に近いぐらい共同出願件数というものがございますので、先ほど羽鳥委員がおっしゃられたように、そちらのほうの管理であったり、共同出願契約であったり、そちらのほうにかなりの時間を割いていて、本来やるべき技術移転という時間をとれないことも出てくるような状況になっていますので、実際に伺っていますと、この共同出願の意義は何ですかというと、共同研究をしたということの証として出願するみたいなときも残念ながらあります。だから、それは、多分、海外の共同研究とのやり方の違いだと思うんです。大学からきちんと報告書を出さないのであれば共同出願という、出願という形でだれかに代行して書いてもらいましょうという形になってしまっているのではないかというふうに思いますので、そのあたり見きわめながら何に時間をかけるのかというのも、学の中で考えていかないといけないと思います。

 そういう意味で、平等にというところからもう少しいろいろ絞って戦略を立ててというところの知的財産戦略を考えていかないと、いくらマンパワーをかけても出願自体はどんどんどんどん膨れていきますので、そこは学が変わるべきところかなと思います。

 以上です。

【三木委員】  1つだけ。産学連携を考えるのに、基本的にプロジェクトとして考えているものと、それからそれを支えている組織です。こういった問題がよく表層的には整理できているのですけれども、実はいろいろな議論をするときに、そこが混在となって議論されているときがあるというふうに思っています。

 これはどういうことかといいますと、例えば企業にしても、先ほどからいろいろな議論の中であるように、大企業からいろいろな企業がありますし、分野、業界によっても全然違うわけですし、それから、官のほうでも国立研究所水準のものと公設水準のもの、すべていろいろな多様性があるわけです。大学もものすごく多様性がある。ところがそれが 1つ1つのプロジェクトということであれば、そのプロジェクトに対した適格者をそれぞれうまくマッチングさせてやるわけですけれども、今度は組織の問題になったときには、非常にファジーな状態で議論されているというふうに私は思っています。

 フルセットがそろうような大都市圏と、それからそうでない地方というのは、かなり様相が違うと思います。ですから、今後のことを考える場合には、こういった資料も私自身はよくわかるのですけれども、ある程度専門筋の話になっていきつつありまして、納税者にとってわかりやすい話かというと、必ずしもそうでもなくなってきている。

 そうすると、今までつくり上げたものとか、そういったものも、そういう仕組みにしても、知的財産本部にしてもそうですけれども、今やるとしたら、ほんとうに新たにやるのか。そういう視点も必要だと思います。今までいろいろな仕組みができてきていますけれども、そういったものも、場合によったら計画的に破壊して、計画的につくり上げないといけないものがあるかもしれない。そういった議論がこの期に少しできるとありがたいなと思っています。

【白井主査】

 南委員。済みません、時間がちょっと過ぎてしまっているものだから。簡単にお願いします。

【南委員】

 済みません。初回の会合におくれまして、申しわけありません。読売新聞の編集委員の南でございます。

 私はもともと若いときに自然科学を勉強して、大学にしばらくいましたが、読売新聞に転職しているわけなのですけれども、二十数年たってみますと、結局、その当時と今とを比べても、これから国際化をするから大変だと、論文は英語で書かなければ意味がないとか、そういうことをしきりに言われたわけですけれども、今になってみても結局グローバリゼーションということで、現状が非常に今大きく変わりつつあるものの、やはり根底的なところがなかなか変わり切れていない部分を感じています。

 それで、 1つには、情報がこれだけ多くなって、今納税者というお話がありますけれども、今、私も新聞にいて、国民の目線ということで言いますと、なぜ科学技術が必要なのかとか、産官学の連携がなぜ必要かということを、やはり国民が身をもっては全く理解していないということが非常に大きくて、 1つには、やはり高度経済成長が尽きて、これからもっと日本が経済的に伸びないと、国の存続その他、少子高齢とかいう状況を考えても非常にまずい。そこで日本が何で頑張れるかというと、結局こういった知的財産とか科学技術だということは漠然とは国民が理解はしていますけれども、やはりご存じのように、今の社会状況の中で、日々の暮らしが、これだけ格差社会、ワーキングプアと言われるような中では、やはりなかなかそこの議論は国民には響かないだろうと思います。

 やはりその一方で、産官学と言って、非常に笛を吹いて、太鼓をたたいて、科学の有用性とかそういうところばかりを強調していきますと、またそれも非常に危ない部分もありますし、何のために科学をするかというと、それは役に立つからではなくて、やはり真理の探究とか、そういうもっと根本的なところの科学に意義とか、子供、若い人たちが学ぶ意味とか、そういうところからきちんとやっていかないといけないということを感じております。

 ですから、やはり大きな意味での説明をきちんと国民にしていく必要、これが必要で、大きな予算が必要だということを理解してもらう必要があるということを非常に強く感じています。

 今日はちょっとピントがずれていたかもしれませんけれども。

【白井主査】

 ありがとうございました。最後に石川委員、お願いします。

【石川委員】

 ものすごく短く話をします。今日聞いていて、現場とこことの議論のギャップが少しあるなという感じがします。特に企業側、こういう言い方は失礼かもしれません。武田委員を初めとして、現役ではない方なので、現役の現場の企業の方の意見というのはほんとうは聞きたいところであり、私の感じるところ、私が現役で企業と渡り合っていたころの企業の意見と今日の意見は全然違うと思います。ここでの議論では現役としては非常に問題があるかなという。

 それともう 1つは、多様性が出てきた。これはいいことだと思うのですけれども、知的財産、あるいは産学連携、多様性が出てきたので、多様性を維持しながら議論するのは難しいなという感じがします。ぜひとも主査のうまい音頭とりを。多様性の議論は一番難しいので、ぜひとも多様性を維持しつつも、ポイントを押さえた議論をしていただきたいと思います。

【白井主査】

 今日は大変いろいろな話題、非常に重要な話題が指摘されたと思います。私、先ほど森下委員なんかもいろいろ言われたけれども、今言っているのは、大学に TLOはたくさんあるのですが、はっきり言ってほとんど成り立っていないですよね。これはずっと放置しておくというのは極めて問題で、一生懸命やっているけれども全く報われない。そこでやっている人は犠牲的精神を払っているぐらいものすごい情熱を持ってやっている。だけれども、全然利益にも何もならないし、大学にも貢献しないし、教育にもあまり貢献しないし、大学の中では邪魔者扱いなのです。そんなものやめてしまえという意見も強くあるぐらい。それはレベルが低いからだとおっしゃられるかもしれないけれども、多くの大学でそんなに成功していないと思います。

 成功していない理由は幾つかあるのですが、今日ここでそんなことを言う時間はないけれども、ぜひ議論してもらいたい。やはり自立できないようなものがいつまでたっても国の補助金か何かでやっているような事業は続くわけないです。

 特許とか知的財産を、逆に大学にあるものをいろいろ売り込んでいただくような方も実は大分あらわれてきました。あらわれてはきましたけれども、そういう人たちがほんとうに商売になって、やれるようになったときに TLOも自立できるときかもしれない。いずれにしろ、ライセンシーフィーなんかにしても、あまりにも低過ぎて、今経団連によく検討してくれと言っているけれども、努力すれば、最低生きていけるような構造に、いいことをやっているところが生きていけるというのは経済原理で当たり前だと思うが、そんな最低限がまだ 10年もたって達成されていないとすれば、何か異様だという気がするので、これはぜひ考えていただきたいなというのが 1つ。

 それから、では 1つ1つの大学が今みたいにやっているやり方で生きていけるのかといったら、生きていけないだろう。それから大学なんかで知的財産も管理なんかも全然できないわけです。だからそういうのをどうしたらいいのか。

 さっきからグローバリゼーションが出ているけれども、グローバリゼーションの対応なんてできるような力は若干あるところもあるけれども、ほとんどろくなことはできない。これで闘うのというのは、僕はちょっと、そろそろ脱皮しなければいけないのではないかという意味で、ぜひこの 5期は、いろいろな活発なご意見を、少しレポートにまとめられればと思いますので、よろしくお願いします。

 少し時間が過ぎてしまっておりますが、事務局から何か連絡事項はありますか。

(事務局より、資料 6の説明)

【白井主査】

 どうもありがとうございました。

午後 3時17分閉会

お問合せ先

研究振興局 研究環境・産業連携課 技術移転推進室

(研究振興局 研究環境・産業連携課 技術移転推進室)