産学官連携推進委員会(第29回) 議事録

1.日時

平成18年5月18日(木曜日) 15時~17時

2.場所

学術総合センター 特別会議室 101・102

3.出席者

委員

 白井(主査)、石田、北村、清水勇、武田、田村、平井、森下、清水啓助、本田、三木、渡部

文部科学省

 清水研究振興局長、佐野研究環境・産業連携課長、井上技術移転推進室長、上田研究環境・産業連携課長補佐、笹川技術移転推進室長補佐 他

オブザーバー

説明者
 渡部委員

4.議事録

  • 議事に入る前に事務局より新しく加わる委員として石田委員、渡部委員の紹介があった。

(1)最近の産学官連携の動向について

  • 資料2-1、2-2、2-3、2-4に基づき、事務局より説明があった後、質疑応答が行われた。
    その内容は以下の通り。

(◎…主査 ○…委員 △…事務局 □…説明者)

委員
 共同研究の件数がこの資料2-3で伸びているというグラフがありましたけれども、金額ベースで、1件当たり研究費に関しての最近の状況についてお知らせください。

事務局
 先ほどの資料2-3の8ページをちょっとごらんいただけますでしょうか。先ほどちょっと説明を省略してしまったのですが、共同研究の件数はふえていますが、共同研究1件当たりの規模というのはやはりちょっと横ばい傾向が見られるというのが、この8ページの表にも出ているところでございます。また受託研究のうち、民間からの受入額というのは少し低迷しているのかなという感じがしているところでございます。さらに、9ページにいっていただきますと、大学の研究費における企業からの資金の割合というのは諸外国に比べますと比率としては、データの取り方にもよりますが、こういった結果になっているというところが見てとれるかと思っております。

(2)今後の産学官連携の推進について

  • 資料3に基づいて渡部委員から説明があった後、引き続き、資料4に基づき事務局から今後の産学官連携・知的財産戦略の推進に係る主な論点について説明があり、自由討論が行われた。
    その内容は以下の通り。

委員
 先ほどから渡部先生の言われた問題で重要なところが多いと思っていまして、特に国際的な産学官連携活動に関しては、国内の特許は多いのに海外に出すのは非常に少ないという、これは大学の財産上も非常によくない状況だと思うんです。TLOができた当初も国内出願しかやらないというTLOもあったりして、やはり海外のところに関しては非常にアンバランスな特徴となっているのではないかというふうに思います。その一つの理由として、実際に知財本部にいらっしゃる方が海外に特許をあまり出したことがなかったり、そういう分野に対してあまり特許を出さないような領域の方がいたりしますと、どうもそういう傾向があるのではないかと。逆に創薬とかバイオ分野の方がわりと多いような知財本部は、最初から海外の話がかなり入っているケースがあるように感じますので、やはりこのあたりは知財本部事業なりあるいはその次の国際的な連携事業なりの中で、そういう人材を育てて、海外に対する視点というものを強化していかなければいけないのではないだろうかというふうに考えます。今後は海外の大学との紛争とか大学のPCT出願が各国出願に変わってきますので、このあたりの費用の問題を含めてどこに出して、どこに逆に出さないかといったような考え方もやはり必要になってきますので、ぜひ早急に支援というものが必要じゃないかというふうに思います。
 それから、直接は関係ないのですが、先ほど言われたアラブのお金というのは、結構バイオ領域にも実は聞こえてきていまして、嘘か本当かちょっとわからないのですけれども、ある国からお金を出したいという話が来ています。それが本当にいいのか悪いのかよくわからないところもあるのですが、実際に詐欺話なのか本当なのかよくわからないところもあって、若干情報収集には注意をしなければいけないのかなという、どうしようというよりも少しウォッチする必要があるのかなという気がしています。それからもう1つは、日本の開発ベンチャーと連携したいという話が中国から多く出ていまして、これも知的財産の取り扱いがはっきりしない中で一方的に出して、こちらが損をするという状況になっても、面白くないかなというふうに思っていますので、まだ現時点でどうこうという話ではなくて、少し状況に関してやはりウォッチしておくような必要性はあるのではないかなという気がしております。
 それから2番目の「イノベーション創出に向けた産学官連携の深化」ですが、こちらに関しても今回、マッチングファンド等も始めるということですけれども、やはり本格的に企業の、特に大学発ベンチャーと大学との関連というのをもう少し深い関係にしていかなければいけないのではないかと思います。若干、利益相反を含めたところで腰が引けているところと、逆に深くなり過ぎているところといったようなアンバランスさを感じますので、このあたりも知財本部あるいはTLOの手助けも得ながら少し環境整備といいますか、特にせっかく成果があったのにもかかわらず、あまり実態としてはそういうケースが出てきていないという状況がありますので、海外の事例研究も含めてもう少しモデル的な大学というものを増やしていく必要があるのではないかというふうに感じています。
 最後の「大学・地域の組織的・戦略的な対応の強化」なんですけれども、これは地域によっては非常にうまくいっている地域も増えてきたのではないかという印象を持っています。ただ反面、事業を始めた当時から比べるともう学部長が代わられたり、それから学長が代わったりとか、当初始めたときの認識を持った先生が退かれたり、あるいは場合によっては、これはよくあるケースなんですけれども、方針がひっくり返ったりとかそういうケースも出てきていまして、実際に知財本部の事業を見ていましても最初の熱気がないようなところも多々見受けられるような印象を受けています。やはり知財本部事業あるいは知的財産事業含めて恒常的に評価をする中で、最初の熱気なりあるいは最初のモチベーションというものを維持するような形での何か政策的な配慮というのも必要ではないかという気がしております。
 ちょっと雑駁な印象で申し訳ないですけれども、かなり状況としては進んできた中で、ある意味、でこぼこが目立っているところを少し配慮する必要があるのではないかというふうに思っております。

委員
 嘘か本当かわかりませんけれども、やっぱり100億とかの単位で日本のそういう技術に投資をしたいという話は出ています。あと、イスラエルが結構、もともとイスラエルというのはヨーロッパの大学に技術を持ってきて、大学ベンチャーみたいに成功しているのが結構多いのです。最終的にアメリカとかヨーロッパにそれをまた売るというケースが増えていまして、かなり日本の大学の技術には注目しているという話で、ウォッチしているレベルではあるみたいです。実際に出資とかそれを買う買わないというところまではいっていないみたいですけれども、ただ、日本の金融界の方が現地でそういうファンドを日本向けに作ろうという動きをしている人も結構いらっしゃって、金額の桁が、どうも石油の状況から比べると桁が2つぐらい違って、そんなに安いのでいいのかという話もあるとかいうふうな噂は聞こえてきています。でも、それが本当なのかどうかはわかりませんけれども。ただ、シンガポールの実際のファンドは、日本のベンチャーに投資をしているケースもかなり増えてきていまして、これも気をつけなければいけないのは、シンガポールに会社をつくるのが条件なんですが、そうしますと、知的財産そのものを取っていくケースというのも、今後やはり出てくるかなと。それ自体悪いかどうかという問題点はあるのですけれども、中国のケースもそうなんですけれども、お互いに出資をしている中で逆に中国でその開発をしないかとか、かなり甘い蜜も見せながらの話の中で正直、本物、にせものがよくわからないですね。我々が見ていても。こういう動きというのがうまくいい方向だけの話ならいいのですけれども、何かスキャンダル的な話になると、また後々やっかいなので、そういう意味でちょっと状況として心の片隅ぐらいには見ておく必要があるかなという印象を持っています。今すぐどうこうということはないと思いますけれども。

主査
 こういうのは一般的には民間企業の場合にはそういう情報を経産省とかそういうところで何か情報があるとか、ないとかということはあるのですか。ある国からこれだけ投資するけれどもそれは信用できるのかというか、そういうのはわからないですね、大学なんかではそんなもの調査できないものね。

委員
 あと、軍事関係のところもちょっと心配しているんです。かなりやっぱり脇が甘いといっては怒られますけれども、大学の技術って意外に転用できるものがないことはないんですね。そのあたりのところ、今のところは具体的にどうこうというところまでは全然いっていないんですけれども、ただ先ほどお話ししたように注目されているのは確かなんです。そういう意味ではある意味、日本の産学連携が根付いてかなりシーズがあるというのは個人でも捉えるべきだと思いますし、反面やっぱり日本的な常識では考えられないような話がちょっと聞こえているのも事実なんです。で、このあたりはちょっと正直わかりません。ただ、そういう動きの中で何か変なことがあれば、やっぱり考えていく必要がどこかでは出てくるのかなと。今すぐ先ほどのお話みたいにどうこうという話ではないと思います。

委員
 おそらく具体的な話としては来年ぐらいはもう何かあると思った方がよろしいのではないかと。イスラエルのファンドの話は、たまたま昨日聞いて、ジョイント・ベンチャーでやるんだという話を担当に聞かされました。それからさっきのJPD、Intellectual Venturesの話はもう既に営業に入っていますので、何でも話をしてくださいと、何でも買うみたいなことを言ってました。
 これは、マイクロソフトのCTOの方がやられたファンドですね。1,000億ぐらいやってどうも30年ファンドとかも持っていると。だからあまり焦らなくていいんだみたいな話をしていらっしゃる。見かけ上はそんなに額は必要ないと言っているので、あまりリスクを感じないように見えるのでいいなって見かけは思うんですが、いろいろ企業の人と話をして、何かデリバティブなんかが関係しているんじゃないかとか、いろいろ推測ですけれども。

委員
 まず、最初に国際的な云々とこの紙にありますように、こうなっていく必要性はあるのかもしれないが、それぞれのところで、これは随分温度差があると思います。前回この会議で日本の企業が、国内の大学に出すお金と外国の研究機関に出すお金は、外国へは2倍になっている。この比率は変わっていない。中身を調べる価値があるのではないかと、こういうことが指摘されたのですけれども、なぜ今海外に対して展開しなければいけないのか、これはやっぱりどこかでしっかり説明しなければいけないのではないかという気がします。
 ちょうど1年ぐらい前ですか、日本企業の外国機関へ提供している研究費について、多分日本の企業の子会社に対するサポートとかそういうのが入っているのではないかという議論が出たようなことを覚えているのですが、もしその後、このデータの詳細がわかったのであればちょっと教えていただきたいと思います。
 それから2番目は正直いって国際的にやることは、私どもも必要だとは思っていますが、何が大事かというとやっぱりお金なんですね。要するに日本の企業をいじめるための大学の知財活動ではないだろう。国際的に生かすための知財活動だろうと。お話はよくわかるのですが、これを実際にやるためには一体どれくらいお金がかかるか、例えば1件の特許だってヨーロッパへ出すと国内指定だけで約700万、800万くらいお金がかかり、今の各大学の知財本部とかTLOの状態で本当にできるものかどうか、そこはスキームをもう一回見直す必要があるのかなと思います。JSTが非常にいいことやってくださっているのですが、どうも我々から見ますと例えば、そのセレクションだとか調査とかそういうものに非常に手をかけておられて、これも必要だとは思うのですけれども、真水の分がそのために少なくなっているのではないかという気もちょっとしております。それから、そもそも産学の問題の発端はバイオとITです。新しい分野を大学が拓いたと、こういうことがバックグラウンドになっておりますので、本当にその新しい分野を拓くような、そういう類のものがJSTにちゃんと出ているのか、これはいろんな話を伺うわけですが、ある大学はすべてJSTにまずお願いしてみるとか、そんな話も一方では聞いております。JSTのスキームはいいことなのでそれをうまく有効に生かせるように、具体的な目標に合わせて例示していただくといいのではないかなと思っております。
 それから、専門人材の必要性は本当にそのとおりだと思うのです。ただ、専門人材は必要なのですが、ちょっとこれは中身を読ませていただきますと、外にいるそういう人を使える、そういうシステムを組めというふうに見えます。本当に特殊な専門分野はそれでいいと思うのですが、今、大学とか知財本部とかTLOで求められているのは、組織を継続的に強くしていく、そういう人が必要だということだと思うのです。今、確かに文科省をはじめ経産省も派遣というスキームでこれをやってきていただいているのですけれども、派遣ですとこれは定着しないのではないか。それぞれの組織を強くしていくためには、そのそれぞれの組織が自分たちの構想を持ったうえで人を養成していく、その構想に対してちょっと補助をするという方が本当の意味の人材育成につながるのではないかなと、こんな感じがしておりますので、派遣スキームに加えて組織自体が継続的にそういう人をつくっていく、そういう側面からもうちょっと考えていただけるといいものになるのではないかなという感じがしています。

委員
 今のお二人の視点、必ずしもその延長線ではないのですけれども、渡部先生の報告とそれから資料4の論点の中の意義に関連して私の意見といいますか、考え方を少しお話させていただきます。国際的な産学官の連携活動の強化の件なんですけれども、ここでキーワード的に出ております基本特許ということが私もいろいろ考え方を展開していく中で非常に重要だと思うのですけれども、この基本特許というのは言葉は簡単なんですけれども、意外と実態はそれほど簡単ではない。すなわち、企業的な視点からいいますと、結局技術テクノロジーロードマップ的に、どのようにその技術に基づく事業化を進展していくかということを中心に考えないと基本特許というものはわからない。研究開発の段階で一番先端的に重要だと思っているものを基本特許というのであれば簡単なんですけれども、実態はそれではなかなか評価が上がらないというふうに思っています。テクノロジーロードマップなどを考慮しながらこれを決めて、中心的な対策をここで打っていくということについては、私は当然そうあるべきだし、重要なことだと思っています。企業の観点からいいますと、このように国際的な産学官の連携活動を強化する目的は何か、そういうことを次に整理していく必要があると思います。国的には意図しない技術流出防止のために戦略的に提携を組んでいくのか、あるいはもっとインフラ的にイノベーションの観点から国際的なベースでいろいろな積極的な施策をとっていくということなのか、さりとて3番目には国際的な競争力のために、先ほど申した基本特許などを海外にまで、すべての国というのは難しいと思いますけれど、押さえていくためにその前提として、共同研究やあるいは将来的にはライセンス提携まで含めて国際競争力、すなわち競争力、排他力ということをも目的とするのか。この考え方をしっかり整理しませんと提携の仕方が非常に難しくなる。3点目には、実は日本の歴史をたどってみますと、外国とのいろいろな技術提携あるいは共同研究開発をする目的は、後発的だった段階では技術導入の手段だったんですね。ジョイント・ベンチャーもそうでしたし、国際的な共同研究開発契約も先進側からの要請でそのようになっている。ところが、昨今の状況を見ますと、例えば中国その他の国から日本の大学または日本の企業に対して、非常にラブコールがあるゆえんは、もしかしたら日本の技術が欲しい、日本が外国先進企業の技術が欲しかった時と同じような意図、戦略が潜在的にあるかもしれない。従いまして、先ほどどういう目的でということを3つ申しましたけれども、そのことは、相手国、相手企業、相手大学によって違うと思うんですね。とりわけ中国等については、技術導入の手段として、共同研究やあるいは企業でいえばジョイント・ベンチャー方式などそういうこともありうるということを、これは一例として申し上げて、幾つか抽象的に申しましたけれども、要は国際的なレベルでイノベーション志向か、意図しない技術流出防止志向か、さらに国際競争力、すなわち排他力などを考慮して積極的に先手を打っていく目的なのか、そういう整理をきちっとする必要がある。そして、その中でやはり基本特許を押さえていきませんと、コストパフォーマンスもありませんし、戦略志向には合わない。そういう中で具体的な展開としては相手国、相手大学、相手企業によってそれぞれ、今一例だけ申しましたけれども戦略は違うと思いますので、そういう整理をして国策的にも、あるいは各大学、各企業としても施策をとっていくべきだというふうに思っております。

委員
 私も大学TLOで実際に技術移転に従事して感じたことは、、大学で研究者が大発明だと思ってもそれを事業に結びつけるときの、戦略というものを研究者は頭に描いていないものですから、その特許出願という具体的なステップを踏もうとすると、もうすぐそこで壁にぶっかっちゃう。では、そういうものがわかる民間の人材を連れてくればいいかといいますと、そう簡単ではありません。実際にはどういうふうにやったかというと、可能な限り早く国内の特許を出願して、それをベースに企業に、ある程度のリスクは承知でいわゆるライセンシングをしてしまって、企業の事業戦略に沿って国外特許出願も含め、企業に特許出願をお願いすることを優先しました。もちろん権利は大学に保留するわけですけれども、そこの辺の交渉はなかなか難しい話ですが大学、企業双方に納得いくように交渉します。ある意味でいろいろ考えても大学だけでグローバルな特許戦略をたてたり、実施することは財政的にも非常に難しいというのが現場の話です。実際に大学の場合はどうやったらうまく研究成果を国内企業と、これは外国でもいいのですけれども、企業に技術移転するかが重要なのです。国内といいましたけれども、別にそうでなくてもかまわないのですけれども、産学連携をもっと密な協力関係に持っていくことを考えた方がよいのではないかと思います。大学が独立して完璧な知財部をつくるというのは大学にとっても企業にとっても得策でないと思います。

委員
 まったく私も同感でして、海外出願の目的は何なのかということ。これをどう使うのか、先ほどありましたようにグローバルビジネスを多用する日本の企業にライセンシングするためにこれをやるんだとしたら、そのフェーズでやはり出願するということでないとおかしい。ただ、基本特許というのは言われたように、後になってあれが基本特許だとわかることがほとんどで、最初から基本特許とわかるものはほとんどない。それから流出防止のこと。こういったこともありますけれども、気になっていることを申したいと思います。実は、今大学でも海外のいろんなところで、特に中国なんかで多いと思うのですけれども、展示会とかをやっているんですね。先ほど渡部先生の資料の中にも契約関係もなく光触媒関係のベンチャーが中国で10社以上、20社かもしれないと。本来産業競争力強化法とかこういった法律というのは、日本の産業をどうするかという、そこに目的があったはずでして、日本の産業界にとって本当に必要な施策は何かという中で国際特許出願のことも考えないといけない。これが抜けてついつい大学は自分たちがこれはいい研究だからということで国際特許出願にいこうという、このところは防がないといけないと思うんです。これはコストとの関係ではよくよく議論すべきことだと思います。
 それから幾つか危険な要素としまして、大学に留学生とかエクスチェンジプログラムでどんどん送りたいという、私ども西日本の大学なものですから、中国、韓国の大学からものすごいオファーがあるわけです。で、よくよく聞いてみますと、その大学院生は1年前までは企業にお勤めだった方、その人を日本の大学の大学生に送ってくる。そして大学の方はその人を先生方がやっている共同研究プロジェクト、これにまた参画させるわけです。そうしますと、日本の企業の戦略的な部分がいつの間にかしり抜けしてしまうという恐れがあるということを幾つかの大学との交渉の過程で私も学部長時代に経験したことがございます。そういったところを、やはり海外戦略を考えるときには不正競争防止法だけではなくて、もっと裏で起こっている水面下のことも政府の方でも把握して、これはどういう形で表現するのかというのは、非常に難しいのですけれども、その辺のところも必要だと思います。
 それと大学自身がオープンリソースで海外も含めて学術的な分野では共同しながらやっている、これは当然あるわけです。ところが、そのときに知的財産まで含めたオープンリソースマネージメントができるかというと、これは現状ではほとんど不可能に近い。そのときに企業が絡んでいない場合のパブリックな問題はいいのですけれども、企業も絡んだプロジェクトになった場合の問題がここにもう一つあります。ですから、海外との共同研究で資金を入れていくということは、これは大学にとっても非常に魅力的なことなんですけれども、そのときに必要なある種のガイドラインというのはあるはずです。この部分はもう少し今後議論を深めていただきたいというふうに思っております。

委員
 私は法曹の立場で、現場でベンチャー企業のお手伝いとか、それからバイオでは国際特許とかそういうのに関係しておりますけれども、ここ数年の実務の経験を経て本当に感じるのは、とてもいいシーズでベンチャーを作られて、資金も集まって、やってみると、結局行き着くと欧米の持っている基本特許にぶつかって、そこが壁になる。そして、ライセンスの交渉をして非常に辛い思いをするとか、あるいはそこのビジネスがストップしてしまうとか、そういう例が非常に多い。多分その大きな企業の立場からロードマップとかされると思うのですが、ベンチャーの立場から考えると、そういうロードマップの次元ではなくて、もう自分の目の前に立ちふさがる基本特許というのがそれはもう厳然としてある。このプレッシャーというか存在感はすごく大きい。これを何とかどこかでクリアしていかないと、結局日本には小粒な周辺技術の開発だけやってIPOも難しい、場合によってはM&Aされればラッキーというベンチャーがたくさんできて終わっていく。それはもうイノベーションではない、単なる技術発展の一過程をやったに過ぎない、そういうことになりかねないと思います。では、翻ってどうやったら日本に基本特許がたくさん集積して、世界的に強くなるのか。むしろ欧米や中国やいろんな地域の企業が日本の特許を買わなかったらやっていけないというふうになるかというと、なかなか大変だと思うんです。現状でいうといろんな大学の話を聞いていると、「いや、なかなか海外に出すたまがないんです」というようなお話が多くて、本当にそういういいシーズがごろごろ転がっているという状況ではないと思います。やっぱり日本でもやっているナショナルプロジェクト、例えば文科省の関係でいうとオーダーメード医療もそうですし、ゲノムネットワークもそうですし、経産省の関係でも平面パネルもそうだったし、いろんなことをやっています。そこには巨額のお金がついて、非常にいいシーズができてきていると思うんです。そういうのをもう少し技術移転の中でも生かしていくべきだし、そこでの相互関係というのをもっと強めていったらいいのではないかと思います。それが次の2番の地域のイノベーションの話につながるのですが、私は、単発の技術移転はイノベーションではないと思うんです。単なる成果物の移転、やっぱりイノベーションというためには知的クラスターみたいな、ある程度クラスターができて集積度が上がって、そこで一つの産業ができるくらいのパワーがないと、イノベーションとはいえないと思うんです。私は、イノベーションの専門家ではないので、先生にお聞きしなければいけないのですけれども、そこまでパワーがなければいけない。そうすると、例えば、大学がコアになる技術移転でも例えばクラスターの中で集積度を上げるための技術移転は何なのか、あるいはクラスターで生きていく大事な技術移転は何なのか、それによって基本特許というのはどう活用されるのか。さらにいえば狙い撃ちでドカンと送り迎えがついて、ものすごいパワーがそこにできるというところにいかないと、今私たちが苦労している目の前の欧米の基本特許という状況は多分ずっと変わっていかないのではないかなという気がしています。だから新しい科学技術基本計画でも地域というものが出てきていますけれども、それを単なる地方とかエリアということではなくて、やはりクラスターとか集積度という観点から考えて整理していくと、そして技術移転をそれに組み合わせていくことが非常に重要かな、という気がします。
 最後にマネージメントの方の話なのですが、私も全く同感なのですが、やはり日本にはプロジェクトディレクターとかそういったマネージャーという方が非常に少ない。大きなお金と人事の責任を全部背負った、責任を持った方が非常に少ない。だからクラスターが集積度の高いものが出来上がっていけば、当然その費用はマネージャーにいくわけです。そのマネージャーというのは、やはりお金と人事を握ってやっていく人がいるわけです。優れた研究者や優れたビジネスマンの方からそういう方をどんどん輩出して、大型のクラスターを仕切っていただくというところがイノベーションにつながって、ひいてはいいベンチャーにつながるのではないかなという気がしております。以上です。

委員
 幾つか今までのお話と重なるかもしれませんけれども、今日のようなこういう立派な資料が例の科学技術基本計画なんかも含めて委員会に山ほど出てきて、そして今日の論点が出されている。しかし非常に違和感を感じる部分は、多分この資料の背景にはいろんな調査やいろんな検討があった上で書かれているとは思いますが、戦略の欠如という点です。企業の場合は企業としての生き残り、勝ち残りの戦略なくしては生きていけないのでもう単純明解に、その戦略がpoorであるかどうかは別にして、戦略なしの事業計画というのはないですから、その戦略に沿って何が大事で、あれまで手出したいけれどもなかなかあそこまでは金もないし、出来ないなというプライオリティもついてくるということなんです。今日のような議論というのも、当然国家の戦略があって、25兆円という巨額なお金を使って、もう少しはっきりとした戦略なしではいけないと思うんです。社会主義国は社会主義国で、純資本主義国のアメリカもまた国益ということでやってくるわけなので、日本も科学技術創造立国というからには、国としてどこが強くてどこが弱くて、どこを強くするとどうなるのかということがベースになって、もっと戦略がくっきりしていないと、ここに書かれた論点についての議論でもいろんな意見が出てしまいます。では、どういうふうにくっきりさせるかといったときに、私、昨年京都の第4回産学官連携推進会議で講演をしまして、そのときに申し上げたのですけれども、第一期産学官連携でよろず日本における産学連携の問題点が明らかになりと、大学も国立大学法人ができ、いろいろ迷走もあるかもしれませんけれども、随分成果が上がって、日本が動いたじゃないかと。それから企業も、まだまだいろいろありますけれども、目が覚めてきたかなと。だから、産学連携は、次の段階に入ったと。そうすると、次は業界によって全然抱えている問題が違う。特に、今日採り上げている知財なんかも、エレクトロニクスやITの分野においての問題点と、バイオの知財の問題とでは、同じテーブルで議論すること自体が時間の無駄じゃないかというぐらい、私は違うと思っています。そういう意味で、産学連携の産というのを大まかに言って、今、日本が立派な世界企業を持っている産業界と、日本が弱い産業、これからの新しい産業をはっきり区別して議論をする必要があると思います。特にライフサイエンス或いはバイオですが、みんなどの国も、バイオこそ21世紀の国家戦略だといって力を入れているわけですけれども、それではお宅の国はバイオでどんなふうになるつもりなのということについてあまり答えがない。バイオってやっていくとどんな産業が生まれるのか、でもそこを各国は知恵比べをしている訳です。もう自動車産業とかエレクトロニクス産業のように世界で競争している立派な日本企業があるという業界と、まだ見えていない産業とでは、大学の役割も違うと思いますし、産学連携のやり方も違うと思うので、そこの分解能をもうちょっと高めた上でこういう議論をしないと、いろんな意見がどれもみんな正しい意見なんですけれども、あまりプロダクティブな議論にならないのではないかなということで、まずそういうことを本当はちょっと整理していただきたい。
 きょうの一番目の論点の「国際的な…」というのは、私は賛成です。こういうことを議論すること自体が重要だと思います。さもないと、国のお金をもらっていい研究をした結果、外資と組んでは国賊だと言われるのではないかといった話さえ出て来ることがあります。こういう議論をしっかりしておくことが重要だと思うのです。
 戦略的にどうするかという先ほどのお話ですが、はっきり言って先進国との連携の話と、アジアの諸国との連携の話はもうまったく違いますけれども、それ以前に第一期産学連携の場合と同じように、大学に一回お勉強してもらうという意味ではいいのではないかと思います。外国企業からそれでは共同研究を受けてみましょうと、そしたら外国企業は日本の企業と違ってこういうことを要求してきたよとか、日本の産学の間でもめた不実施補償に対して外国企業は何と言うかとか、違いを知るだけでも有意義だと思います。これは、外部で聞いていた話と、自分自身が当事者になって体験することとでは格段の違いがあります。レッスンなしに賢くやろうと思っても多分できないと思いますから、そういう意味においては今日の一番目の「国際的な産学官連携活動の強化」というのは、いっぱい空振りしたりホームランが出たりするかもしれないという楽しみも含めて、ただ「深入りしてはいけないよ」って、どこかで見ていてやり過ぎないようにしなければいけないと思うのですけれども、まずはレッスンという意味では価値があるのではないかな、ということは感じております。それからここでは国際的な産学官連携が、いきなり基本特許とか知財の問題に焦点が当てられていますが、産学連携のレッスンという意味での取組はもっと多様にあるべきと思います。知財についてだけ申し上げますと、エレクトロニクスとかITとかあるいは従来の工業製品に関わる知財戦略と言ったときには、日本の企業も散々痛い思いをしましたし、弁理士の方も国際的な勉強をされておりますから、それほど大きな問題があるようには思いません。ところがバイオは、はっきり言ってこれはどうしたらいいのかと今いろいろ考えているのですけれども、大問題です。まず、特許のルールがどうなるかわかりません。分かりやすく言えば、グローバルスタンダードだと言って自国のルールをがんがん世界に押しつけている国があるわけです。そこがルールをまたこれからもどう変えてくるかわからない。かつて、我々がソフトウェアは特許にならないだとかアルゴリズムはならないよというように教わって来たのに、突然ルールが変えられてきて痛い思いをたくさんしてきているわけですが、バイオになるともっと起きてきます。遺伝子特許も最初は特許にすると言っていて降ろしてきました。最近ではタンパク質の構造データをどうするかとか、治療はどうするかとかのいろんな重要な問題についてグローバルというか世界が納得する公平なルールを今決めてあるならば良いのですけれども、どんどんグローバルスタンダードは変わる恐れがあります。このような状況から、例えばバイオの特許というのは日本に出すことよりも先に第一出願国をアメリカだというふうにするような対策が必要ではないかと、そうでないと何のためにやっているかわからなくなるのではないかと思います。製薬企業もこれまで何度かそういうことを試しています。多くは、日本出願のクレームをきちっと書いておいて、これを英訳して、それからアメリカの本格的な現地人の弁護士にやらせてブラッシュアップして出願している。これでは危ないと思うんです。法曹の方いらっしゃいますけれども、特許に限らず法制度そのものが日米で全く違います。世界で一番厳密に法典主義を保持している日本と、訴訟によって判例も含めて、その時点での環境でベストのデシジョンをする米国のそれとでは、根本から違っていてこれは特許も同じです。日本ですと一応審査官が特許性をしっかり調べて、これは特許だといって登録をするという考え方と、米国では、まず特許にしておいて、利害関係がおきたら訴えが出て来て、出てきた人たちは利害があるから一生懸命調べて資料を持ち出して、「ああー、そうですね、これ特許にしちゃいましたけれども、特許性ないですね」と、バサッとやられる。だから、米国に出願したら登録になった、よかった、よかったでほとんど先へいって価値を失うケースがやっぱりある。特にバイオはこれから危険だと思います。医療行為は、日本では特許にしませんけれども、もう既にアメリカは認めていますし、その特許の認め方も違っているという状況の中で意味のある特許を確保するためには、第一出願国のアメリカにおいてしっかりとしたクレームを書いていくというようなことすら必要ではないかと思っています。このように知財の問題は、分野によっても違う問題がたくさんあるという状況を踏まえて、総理大臣の下での会議があるのでそこで議論をしていただいて、国としての施策を出して頂きたいのですが、ここでの提案は、今言ったレッスン1という意味で大いに価値があるのではないかと思います。

委員
 基本特許に関して、私自身は実際に産学連携の実務に携わっておりまして、感じていることは最近、産学連携に携わる人材自体はレベルというか知識が上がってきて、いかに国際化、次の国際化に何していくかという議論にはなっているのですが、一方で研究者の方が遅れをとっているのではないかと感じます。基本特許を取っていくためには戦略性という意味で産学連携に携わる人間が、そういう知識をもって戦略的に取っていくということがあるのですが、一方で研究者にそういう意識があるのかというと、少し立ち遅れているところがあるのではないかなというふうに思っています。というのは、もともと制度的にもなかなか日本では難しいところがあるのではないかということも考えております。というのは、やはり総合科学技術会議の方で、最近では特許の出願自体も数から質へというような視点があるかと思うのですが、まだまだいろいろ研究者の方々は、数で評価されていることが多いのではないかと思っています。実際に研究助成金とかそういうものを申請するにあたっては、業績ということでカウントされますので、どうしても数であったり、論文、学会発表ということで公表はしていかなくてはいけないというような必要性があるのですが、一方では、こういう産学連携の視点からいくと、公表しないできちんと特許を取っていきましょうと、矛盾というかうまくかみ合わないところが、どうしても生じてきているというのが現状です。実際に、そういう基本特許を本当に取っていくということであれば、いろいろな業績の評価というところに関しても、やはり質というかきちんとレビューができるような評価システムがないと、やはり数で勝負ということになってしまうのだと思います。ですから、研究者の認識というか国際的に基本特許を取っていくという体制にあったような研究体制にするためには、やはりそういう評価システムであったり、研究者へもう少しそういう国際的に特許を取るためにはどういう戦略、特許化、特許に対する意識というのを少し高めていく必要もあるのではないかと思います。
 あと、2のイノベーションのところで、産学連携ということなので、どうしても産学共同研究にいかにつなげるかということがあるかと思うのですが、バイオの分野では比較的大学の研究のレベルは、非常に高いと思います。学学間でも共同研究によってもかなりそのシーズの育成というかインキュベーションということができると思うのですが、そういうところで実際にお金がつくというのはなかなかないんですね。そういう産学連携でシーズ育成ということでJSTから育成資金というのは出るのですが、ここの研究をこちらの研究室で開発したらもっと面白いことが出来るのにというところで、研究資金というのは年度毎であったりということで、すぐに迅速な研究資金を調達するというのが難しいのではないかなと思っています。ですから、もし学学の共同研究であっても、何かそういう研究の助成というのができるのであれば、そういう資金自体も考えていただければと思います。具体的には例えばバイオの分野でいきますと、TRといいましてトランスレーショナルリサーチみたいなああいう視点ですと、やはり大学内での研究のレベルは高いので、大学間での共同研究においてもすごくいい成果を見出すことができると思いますので、ぜひそういう取組というのも検討いただければと思います。以上です。

委員
 もうほぼ言い尽くされている方が多いので、あえてと思うのですが、1つだけかなり自分に関係が深いところで、2のイノベーション「創出に向けた産学官連携の深化」の中の課題の一番最後の大学発ベンチャーのところなんですが、やはり大学発ベンチャーの創出も数はそろったけれども、やはり光と影があって、今こそ本当に質というものを求められて、先ほどおっしゃったように、本当にもっと地域とまとまって考えていかないとせっかくいい技術もこのままであったらイノベーションは起こされないのではないか。大学発ベンチャーも啓蒙的なものが少し出てきたと思いますので、段階ごとによって違う、その段階というものをもう一度見て、段階ごとの支援の仕方とか、細やかさというものをもっと持っていただきたいということを、やはり伝えていただきたいということと、やはりフォローアップの機能があまりにもちょっと無さ過ぎるなという気がいたします。フォローアップ的な機能、つまりそれはトータル的にいうと戦略を持ってやっていくべきだということだと思うのですが、全体的にそうなんですけれども、特にやはり大学発ベンチャーというのはこのままでいくと、あまりいいイメージというか、いい声もあまり私の方に届いていないものですから、出来ればせっかく出た機会ですので、続けていただきたいというのが切なる思いです。あと、私たちの今度の学会のもしかしたら学会誌に載るかもしれないのですが、その中のおもしろい論文の一つに5つか6つの国の大学もしくは研究機関が技術移転をしたベンチャーの機関の研究をしている先生がいらっしゃいまして、そういう論文もぼちぼち出始めてきておりますので、せっかくですからなるべくいい形でみんなで持ち上げていきたいなと思います。それがしいては先ほどの資料3の「大学・地域の組織的・戦略的な対応の強化」の方にもつながる戦略で出てくるのではないかなと思いますので、簡単に一言だけそれを付け加えていただけたらと思います。

委員
 ちょっと細かいことですが、私のローカルな経験の話なので、おしなべていうことはできないと思いますけれども、先ほど出願とか質の問題、基本特許の話でありましたが、企業経験者からしますと、特許というのは開発や研究をやっている人間にとってみるともともと非常に重要ですから、そういうマインドはあるんです。そういう意味では大学はこれからという感じですが、今日の資料の中にも出願件数という統計はすぐに出てくるのですが、特許の検索件数という統計を出していただけないかなと。というのは、どこかで見たことがあるのですが、日本は出願大国だけれども検索においては後進国なんですね、つまり人の特許を見ていない、調べていない、ガンガン出しているというふうに見える統計を見たことがあるのです。そこで、私の周囲の一流の研究者に「他人の特許を調べたことがありますか」と聞くようにしています。基礎物理から工学までいろんな研究分野ごとに全然違いますから、特許がとれる分野と特許なんて関係なくノーベル賞を狙ってもらいたい分野を一律に言ってもしようがないので、特許の大事さも含めて必ず聞いてみます。すると、企業の研究者と違い、他人の特許を読んだことがある研究者が少ないので驚いています。そこで必ずお願いしています。本当にまじめに研究をしている人でしたら他人の研究論文を読みます。それからちゃんとしたレビュー誌に論文を出すためには当然参考文献をちゃんと書かないといけません。ですから、自分が参考文献に挙げている、その一番気にしているその人の名前でもって特許検索してください、そしてその人がもし特許を書いていたら、その人の論文と同じようにその人の特許を読んでください、ということをお願いしているんです。なぜかというと、ほとんどそうやっておられる先生がいないのです。企業ですと、先ほどの話ではありませんが、もう痛い目に合ってですね、カリブ海にヨットを浮かべて何百億取っていった人もいますけれども、その英文の特許は散々読んでですね、これがどうして特許なんだとか言いながらも、要するに特許というものを読んでいます。若いころから読まされるのです。だから特許の書き方というレッスンを受けてクレームの書き方とか一般的な講義だけ受けて、特許を書いてもそれこそハウツーではありませんけれども、そんなことやっただけではとても強い特許は実は書けないのです、分野ごとに違ってその分野で基本特許とか人がアッというような特許というのは、「あっ、こういうふうに書いてあるのか」、これは間にコーディネータとか弁理士とかどんなにサポートを付けても発明者本人が、「私の今回考えたものはひょっとするとこういう宝になるかもしれないよ」という意味でのレッスンがないと、幾ら手塩にかけてもなかなか難しいのです。大学の先生方は他人の優れた論文は、学生とか若い人の教育で一生懸命読ませるのですけれども、その論文を書いた人の特許があったらそれも付録で読ませるということを奨励する必要があると感じています。まず、先生自身が読むということから私は始めるべきではないかと思います。またそういうことを促す意味でもし特許検索件数の統計がありましたら示して欲しいということでございます。

委員
 簡単に2点ほど。この論点の中に書かれていますけれども、かねて気になっていたのは、大学知財本部とTLOの関係をもう少しよりよくというような執筆をされて、場合によっては一本化もどうかというような大変結構なことだと思います。資金とか支援の体制が他省庁にまたがることだと思うので、今までは大変こういうことは我々から見ても難しいことなのかなということに言及されているのでうまくいくような支援措置をやっていただきたいなと。
 それともう一点、直接のイノベーション創出ということとはやや離れるのですけれども、利益相反というようなことが書かれておりまして、産学連携にかかわらず研究にかかわる不正であるとか資金の問題であるとかということで社会的な問題を起こす例が散見されていて、揉め事が起こればマスメディアとしては報道するということですけれども、せっかく盛り上がっている機運をごく一部のことで水は差したくないとはいうものの、社会の見る眼も厳しくなるということは現実としてはあるわけです。各大学はそれぞれルールづくりが進んでいるとは思うのですけれども、それが本当に機能しつつあるのか、実態的に効果を発揮しつつあるのか、その辺のところ行政として支援できるところがあるのかどうか難しいところかもしれませんけれども、今後一つの重要な観点かなと思いますので、意見を述べさせていただきました。

委員
 先ほど基本的な戦略は何ですかと、これは確かにそのとおりなんですが、私、そこに関して単一の評価軸で考えない方がいいよということを言っております。それは、例えば産業界への貢献だけで考えるのはやっぱり足りないし、時間軸も多様な視点もあるし、そこは今回の多分一番重要な論点のような気がします。

主査
 大学におられる方と企業の方とで若干はやっぱりニュアンスの違いの強度もあると思うんです。いろいろあるけれども進んできて、例えば地域なんてことになってくると、もうちょっと幅広い色々な意味での社会的な影響ということを考えていった方が、実際は意味があるのではないかというようなお考えも若干あるし、一方で国際なんて言ってしまうと、もっとちゃんと戦略をはっきりしてくれなければ全然何やっているのかさっぱりわからんと。それもちょっと立てられないのだったらしようがないけれども、まず勉強してみなさいということになってしまうのかもしれないけれども。
 そういうところと、それからそんなことは大事だとは思われるけれども、それを面倒見られる人は現実にいるのだろうかという大学側の現実に実務をやっている側から言いますとね、まあ、おっしゃられたとおりだなというふうに思うのですが、ここら辺を乏しいチームとお金の中でどういう具合に塩梅して戦略としていけばいいのかというのが、ここでの議論、これはないからだめ、できないと言ってしまっても白旗になってしまうので、それなりの今の状況をもう少し詳しく、これまで私の耳に入ってくるのは業種とかそういうものに対してあまりちゃんと勉強していないのではないかと。何でも産学連携だと言っているけれども、現実にこういうものはこういうふうにやるとそれなりの効果が上がっているとか、これは非常にやり方とか業種だけではないかもしれないけれども、その内容によってこういうやり方はそんなに努力なくたって非常に効果を上げている、それからこれはやってみたけれども大風呂敷だけども全然うまくいかないというものももちろんあるわけで、そういう分野は、現実にもうちょっと大きい仕掛けでやらないと成功しないのかもしれない。そういう戦略的な差が非常にあるんだということは、もう皆さん最近では非常に痛感されていると思うんですよね。それを整理している時間が今まであまりなかったということもあって、マップとか何かいろいろ言ったのだが、マップも理論的には綺麗かも知れないけれども、それよりもうちょっと現実に成功している例とかそういうところからきっちりした情報をまとめ上げていった方が近いのではないだろうか。今出来ているのは大した量出来ていないですよ、その大学でやっている産学連携とかTLOというのは。さっきの件数から見たってね、産業界が出している特許の数と比べたら全然これはもうまるで勘定にならない、1社でどっかでやっているのと、それよりも小さいかもしれないという状況なのだから。そうすると、それを我々は生かすために、現実に生かしているところもたくさんあるとすれば、それはどういう例であって、どういう分野だからこういうことが現実に可能になっていると。その技術の内容に非常にディペンズするかもしれないけれども。そういうようなちょっと我々は漠然とし過ぎているかなという気はします。
 一方で、教員の方について言われたのは全くそのとおり。話題が特許のことなどは、大学の中ではほとんど評価されません。あんな変なことやっているやつはだめだとか何か言われちゃうぐらいだから、そういう問題点は今でもあるわけでこれはどうするかです。それからJSTでやられているものは非常にいいのですが、それを現実に意味あるものにつなげていくようなガイドを本当にしているのかどうか。要するに、戦略になっているのだろうか、というような観点からももうちょっといろいろ意見をいただくというのも大事ではないでしょうか。ですから、JSTで扱われたようなものの内容というものをプロの方に少し見ていただくというのも非常に役に立つことかな。成功例、失敗例というものをもうちょっと専門の方から分析していただくというのも非常に今になってみると、もう大分時間立ちましたから相当積んでいる。そうすると少しやっている担当者が、なるほどと、じゃあ、我々もそこら辺を真似するかとか、あるいは外から支援するとすればバイオ関係などというのは、じゃあ、どうやればいいんだろうというような少し戦略が出てくるのではないかなという気がするのです。本当はお金があまりないんです。やっぱり大学はものを作って売らないから、どう考えたって研究には投資が来ない。企業は戦略をもって開発をやってそれを商売につなげるわけですから、だから当然投資は出来るわけで、そこの投資にしろ特許にしろ、何にしろ、その知財をつくるところの意味がまったく違うわけであって、これをどう考えるのか、社会としてどう考えるかという根本問題があるのですが、あまりそれを言っていると何も始まらないから、まず文科省、その他持っておられる予算を有効に生かすためにどうすればいいかというところに徹しないといけないだろうから。そういう意味で今後また作業が進められれば大変ありがたいというふうに思います。
 今日は、非常に有効な意見が出たと思うので、うまくまとめていただければありがたいと思います。ちょうど時間になりましたので、とりわけ何もなければ終わりたいと思います。

お問合せ先

研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室

(研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室)