産学官連携推進委員会(第34回) 議事録

1.日時

平成19年8月29日(水曜日) 13時~15時

2.場所

キャンパス・イノベーションセンター(国際会議室)

3.出席者

委員

 白井(主査)、石川、石田、小寺山、小原、清水、高田、武田、柘植、西山、野間口、田村、西岡、松重、森下、三木、山本

文部科学省

 伊藤振興企画課長、佐野研究環境・産業連携課長、小谷技術移転推進室長、吉田技術移転推進室室長補佐 他

4.議事録

○ イノベーションの創出に向けた産学官連携の戦略的な展開に向けて審議のまとめ(案)について

 資料1、2に基づき、事務局から説明した後、その内容に関する質疑が行われた。

【主査】
 「イノベーション創出に向けた産学官連携の戦略的な展開に向けて」という、審議のまとめ(案)を最終的につくりたいということですが、前回いろいろ貴重なご意見をたくさんいただきました。また、大変皆様お忙しい中を、その後ご意見をお寄せいただいた方もたくさんおられまして、そういうことを踏まえて事務局で審議のまとめ(案)というものをまとめてもらいました。これは既に委員の皆様方には送付されていると存じます。前回からのいくつか修正箇所がありますので、それについて、これを主に中心にしながら説明をしていただこうというふう思います。

(事務局説明)

【主査】
 前回かなりいろいろな多様な御意見ですが、非常に重要なものがあったと思うんです。それをできる限り取り入れた修正というのでしょうか、それをしていただいたということになるんですが、何か御質問とか、御意見等々ございましたら、どうぞ。

【委員】
 大変充実した内容に完成されていると、まず思います。どちらかというと最初の原案というのは、少なくとも知的財産重点型だけだったものが、産学官の本当の目的からひもといて、当然その中に知的財産の人材という話も出てきますけれども、本当の意味の産学官連携ということからひもといてから、非常に充実したと思います。充実してから逆に今思いついて、どこかに書いてあるかもしれないんですけれども、事務局が気がついたら教えて欲しいんですけれども。言うならば、今までの大学のオペレーションの中でできなかった、十分でなかったものを今度やろう、国もちゃんと支えますと言っているわけで。エフォート管理を本当にきちんとやってくれた人が報われるような仕組みになっているか。きちんとコメントを出しておけばよかったんですけれども。例えば、最後の26ページのところには、今度の修文の中で、国の支援によって生まれた、優れた産学官連携の事例について、アプレーズしていて、今でも佐野課長がされていますし、こういう形でインセンティブを高める活動は大いに出ているんですけれども、会社でいうとサラリーに響いてくるんです。こういうことをきちんとやったかどうかというのは、人事課でもエフォート管理を行っています。そこまで書くかどうかは別としても、エフォート管理について、何かの記述がどこかにあった方がいい。むしろ大学の先生方、そのあたりの御意見を言っていただきたい。それは放っておいても良いのだというのかも。

【委員】
 例えば、知財であれば、発明者であれば報われます。ただ、柘植先生が言われるのは、むしろそうではなくて、それをサポートないしは推進していく体制のものです。確かに、今、言われると、そういう視点、余り強く出すと、またそれが学内でも難しいんですけれども、やはりちゃんと評価される、それも一つの評価だと思うんです。そういった面からすると、確かにこれを加えていただく方がいいのではないか。つまり、教育、研究、社会貢献、研究の場合はそれなりの評価はされます。教育についても、そういったものが評価されるようになってきた。こういう活動に対してはなかなか今のところない。例えば、大学の中でそういうプロフェッショナルというか、専門のところはある程度されると思うんですけれども、そうでない学部とかは、こういうお世話をする人の時間というのが、忙しい人に仕事が回ってくる。そうすると、研究、教育がおろそかになるという形で、3つの中の社会貢献が大学のミッションの大きな一つとなったとすれば、そういう評価も視点として重要ではないかと。あとは、給料にはねかえるとか、それは大学の姿勢であって、評価としては入れていただくのがいいんじゃないかと思います。

【委員】
 私はもう少し踏み込んで、方針に関してもあるんですけれども。教育・研究というのは比較的評価体系がうまくできてきましたので、社会貢献に関しては、知財本部とか、あるいはTOLに関わっているような職種としての先生方は考えますが、一般的な教員に関しては評価体系というのはほとんどないんじゃないかと思います。どちらかというと、余分なことをやっているんじゃないかという意識がいまだに強いと思いますので、報酬まで書くかどうかは別にしても、もう少しインセンティブを踏まえて、ある程度評価をしっかりするような仕組みの構築というのは書いてもらう方が助かると思います。最初のころは割とそういう議論を報告書に入れるというのは、確かに最近そういう評価はされているという前提になったのかもしれませんけれども、もう一度しっかり質の面も踏まえた形で評価をしてもらうということは大事かな、という気もします。ぜひその辺取り入れていただけるのであればお願いしたいと思います。

【委員】
 評価に関しては非常に大事な視点だと思っています。特に、こういう知財関係、産学連携関係の業務についている方々が大学の中でのポジショニングが現在それほど高くないと思います。そういった方々の背中を押すという面の評価、それから、もう一つはエフォート管理とか、そういった別の面の評価もあります。その2つの面で、評価は見ておく必要があると私は思います。
 同時に、やはり業務、戦略企画業務を中心にするような部隊のところの場合には、内部統制的な考え方がどうしても必要になってくるように思っています。これは現時点で大事なのかどうかわかりませんけれども、少なくとも業務上の内部統制の考え方をいろいろとすると、業務フローを明確にし、その組織内で透明化していくようなこと、それから業務記述書が当然それについていないといけませんし、リスクコントロールマトリックスも常にきちんと考えたもの、そういったものを今後つくっていくことが、評価ともやはり結びついて大事になってくると私は思っております。

【委員】
 私も前の3人の委員とほとんど同じ意見です。やはり、物事を推進するためには人事が一番重要で、人事ということは評価ですから、評価をしない限り構成員の意欲がなくなるということですから、非常に重要だと思います。
 それから、この中に書いていただいて非常に重要なこと思うことですが、私の大学もそうですが事務職員の担当が、2、3年毎に部所が変わることの問題点です。事務職員がせっかく産学関連である程度プロになったと思ったら会計担当や学生課に変わるとかということが起こっています。知財や産学官連携部門は一般の事務部門とは異なり高度なスキルを必要とする部門なので、産学官連携担当者についてはローテーションとか、たらい回し人事を頻繁には行わないことが重要と思います。特に、国際関連事務処理について私どもの大学でも強化しようと計画していますが、国際的な知財になると更に高度なスキルを必要とします。多分1年ぐらいアメリカに派遣しようと計画していますが、このように折角長い時間をかけてスキルアップした人材が、ほかの部門に配属されたら役に立たないし、人材育成に要した費用が無駄になるということがあります。このような人事の流動についてここに新しく書いていただいたので非常にいいと思っていますが、それを強調していただければと思っております。

【主査】
 大学からはそんなところでございますけれども、何となくおわかりいただけるでしょうか。ちょっと微妙な問題を含みますね。どういうふうに表現すればいいのか。ただ、少しそういうことを、はじめにのところの考え方とか何かで、若干数行でそれを記述すること、こういうことは今後一層問題になってくる。プラスの面で携わっている人にインセンティブを与えるということもあるし、一方で安心して仕事ができるということも非常に必要なので。かといって非常に自由な発想でこれをやれと、これも一生懸命そう書いてある。そうすると、そんなもの一体管理できるのかという問題があるんです。管理はしていないんだけれども、出てきたものは非常にいいものはいいなりに評価してやるんだというようなうまい仕組みができなければいけないんですが、なかなか言うはやすくて、結構難しい。各大学で就業規則等の形でベーシックなところはもちろん押さえられているんですけれども、一番肝心な中身についてというと管理していないという、企業と非常に違うところですね。

【委員】
 主査と事務局に私は御一任します。

【主査】
 今の問題は少し前向きになるように、ちょっと加えさせていただく。

【事務局】
 エフォート管理という問題は、総合科学技術会議等でもいろいろ御指摘をいただいていまして、例えばもっと突き詰めていくと規制改革会議などは大学の会計自体を教育と研究に分離してしまって、それで教員の給与等もきちんと分けていく、そういった中でエフォート管理を徹底させていくんだといったような主張も見られますけれども、大学関係者の中では、本当に教育・研究というのが一体的に行われている中でそのように分離などできるのだろうかといったような疑念もございまして、中央教育審議会、大学分科会、あるいは文部科学省全体としても、かなり大きなテーマとして扱っていかなければいけない問題だろうと思います。
 ただ、今回御指摘いただきましたように、教育・研究と社会的価値の創造の3要素の中で、研究とか教育のみならず、3つ目の要素についても評価していくという視点、これは大変重要な視点だと思いますので、そういった視点をこの報告書の中に盛り込ませていただきます。具体的にそれをどうエフォート管理して、どうやって評価していくのかというのは、また次の課題とさせていただければと思います。

【委員】
 今、法人になって、私は研究者ですけれども、経営とかですごく忙しいんです。これは知財にとって物すごく大事でありますけれども、どこかに書いてあったように、大学の本務というのはやはり自由な発想に基づいた新しい、本当に革新的なことをするんだというのが任務ですから、それを忘れてはまずいと思うんです。しかし、一方で、先ほど皆さんおっしゃったように、具体的なお金で何かプラスした方が簡単かなという気もするんです。本当に出てくることがありますから。そういう場合に何もないというのもかわいそうだし、といって評価というのもなかなかこれは難しい問題ですから、ぽっと出たときには何かぱっとお金で解決するようなことをやった方が、むしろ割り切れるような気がします。
 一方、やはり大学人は本当に新しい研究をすることに、今は本当に忙しいというのを何とか振り払って、集中しないとだめになりますので、そこら辺のバランスをぜひとって書いていただければと思います。

【主査】
 割に機械的に書ける範囲で、この精神自体は僕はいいと思うんです。ですから、エフォート管理と書くのかどうかわからないけれども、そういうインセンティブ、システムもある程度ないと、みんな疲れてしまうということは確かにあるんです。ほとんど今そういうことによって何か待遇、金銭的な面で待遇されているというのは、特許の実施したときのちょっと分け前があるとか、それ以外は多分どこの大学もないんじゃないかと思います。やればやるほど疲れるようなシステムになっている。
 ほかにいかがでしょうか。

【委員】
 国の支援の在り方のところで少し、事前に御意見を出しておけばよかったのでしょうけれども、一つ意見がございますので、申し述べたいと思います。
 25ページに、特に「具体的には」という形で、3つの記載がされています。これは国としての重点的な支援政策と私は理解しておりまして、これ自体は非常に時宜を得たものだと思っております。ただ、この今回の答申全体を通じて、大学の自立的、効率的、いわゆるこのキーワードから浮かび上がってくることは、大学の多様性を片一方で促進するということがございます。そういうことを考えますと、いわゆるグッドプラクティス支援型のものというんですか、こういったものをもう一つどこかで、どの程度の比重にするのかは別として、国の支援の在り方として入れておくというのはあるのではないかと思います。既に教育関係でのグッドプラクティスはありますけれども、これによって非常に大きく具体的な取組が展開しているという事実もございます。そういったことも大学の自主性、多様性というのを促進する上で、知財、産学連携関係のグッドプラクティス型のもの、そんなに大きな規模である必要はないと思いますけれども、創設していくような方向というのもあるのかなというふうに思っております。

【主査】
 今の点は何かほかに御意見ございますか。

【委員】
 基本的な質問になるかもしれないので申しわけないんですけれども、私も大学発ベンチャーのプログラムオフィサーをしている立場から言うと、そういうところの仕組みを変えなければならないところがいっぱいあって、それがここでいえば25ページの、今、言われた起業相談、こういうところの強化が書かれていますので、我が意を得たりと思っているんですけれども、私の知りたいのは、ここに、この報告書に書かれるということと、今後そのことが実現するためにどう動いていくのか。つまり、だれが宿題をとって、いつまでに、何をするのかということがなければと。私は外資系にいたからそう思うんですけれども。外資系は、必ず課題があったときには、その課題を解決するために、こういう組織をつくって、いつまでに何をする、こういうのを書かないと、単なるお念仏かと言われるんですけれども。そういう意味で、大変いいことがいっぱい書いてあるんですけれども、それの実現に向けて一体どういうプロセスが今から回り出すのかなというところを知らないので、教えておいてほしいなという、そういう意味でお聞きしたんです。

【主査】
 これも答えにくいところもあるけれども。

【事務局】
 この報告書を産学官連携推進委員会の先生方の総意ということでまとめさせていただきましたら、私ども文部科学省といたしましては、この精神に基づき、平成20年度概算要求に向けた新しいプログラムを月末には財務省に提出させていただいて、年末までの政府としての予算案の作成に向けて関係当局等と調整しながら、協議を進めていくという形になります。まず直近のアウトプットとしてはそういった形がございます。
 それから、また国の支援の中で書いていただいております宿題として、国の方で調査、情報提供を行うとあげていただいております取組につきましても、これも私どもの方で必要な調査、その結果を大学等に、期限は明記できていないのですけれども、そんなに遠からずきちんとさせていただくということだと思います。そしてまた、晴れて平成20年度の予算案が成立して、こういった精神に基づいた新しいプログラムができましたら、当然それは最後の取組で書いてございますように、その支援によって生まれた優れた産学官連携の事例については、きちんと評価を行って取りまとめ、情報発信していこうと思っております。
 また、これとは別に、既に行っております、こちらにも書いております大学知的財産本部整備事業、この事業は、今年度をもって終了いたしますので、この事業につきましても当然終了いたしましたら、その5年間の成果につきまして、私どもの方できちんと評価をして、情報発信していこうと思っております。
 私ども文部科学省としては、そういった宿題をいただくといった形になります。

【委員】
 すごく明確で、よくわかりました。期待しています。
 ところで、そのプロセスの中で、予算の問題だから、落ちていくものと、採用されるものがありますね。そういうものは委員に対して、これはこういう形でいけるようになった、これは落ちたというふうに、落ちるのはやむを得ないと思うので、そういうフィードバックがあればもっとうれしいなと思います。

【事務局】
 それにつきましては、来月になりますけれども、例えば上部委員会に当たります技術研究基盤部会、その他の場を通じて、委員の皆様方にも、この委員会の報告書を取りまとめていただいた成果として、まず文部科学省内では少なくとも概算要求という形でこういったものを出しますという報告、これは部会の委員でない皆様方には個別に御報告するようにさせていただきたいと思います。

【主査】
 ちょうど予算が切りかわる時期に入るということで、このレポートもそのためには非常に重要なんだけれども、いずれにしても概算要求ということでまとめて既に文科省としては頑張っているということですから、今のようなことで、進捗状況は暮れにならなければ終わらないわけだけれども、それまでに結果が出てくればまた皆さんにお知らせして考えていただくということです。ほかにはいかがでしょうか。

【委員】
 全体的にはイノベーションの創出という形で、改めてどういうイノベーション、ないしはどういう方向にイノベーションが出てくるのか。これはまた大きな議題になるんですけれども、この分野で、特に今回国際的な産学連携という形で加わっているんですけれども、今まで国内で大学を含めてそういうのを整備してきた。それを国際的に、これは自然の流れだと思うんですけれども、その国際が今までの国内の産学連携だけではなくて、国際的にもう少し何かちょっとつけ加えたらいい。それは個人的な意見かもしれませんけれども、今、求められているのは、例えば地球環境であるとか、そういうグローバルな問題に対するイノベーション、これは単に経済的なものだけではなくて、広く求められる。いろいろな政策面はあるんですけれども、具体的に、例えば温暖化を解決するためには技術的なバックグラウンドがないし、そういったものが進まない。そういったものをやるには、単に知財だけでもだめだし、いいことでもない。そういうような方向性が何か、出てくると、国際をやる意味が少し豊潤化するかなと。それは恐らく、予算を概算要求するのであれば、そういう意義づけがないともう一つ弱いと思うんですけれども。そういったところを少しつけ加えていただければ、ないしは検討していただければと思います。

【主査】
 要するに国際的産学連携というのは何を言っているのか。

【事務局】
 国際につきましては、今回は昨年の8月にまとめていただきました審議経過報告の、要はダイジェスト、要素、中身をこちらに書かせていただいております。私どもとしては、昨年の8月の段階に委員の皆様方に大学との国際的な産学官連携かつ強化ということで、具体的な背景や考え方から整理いただいておりまして、確かにこちらの報告書のみを見ればそのあたりの要素が薄いというのはあると思いますので、先ほど紹介しませんでしたけれども、資料の2の参考資料の中で、この審議状況報告についてもきちんと紹介し、補足させていただくというような形をとらせていただければと思いますけれども、いかがでございますでしょうか。

【主査】
 16ページのあたりに若干似たような記述があるから、そこのニュアンスを少し修正すると、今の松重委員が言われたようなことを入れられなくはないですね。

【委員】
 恐らく、こういうような言葉の問題いろいろあると思うんですけれども、セキュリティーであるとか、そういったものに対して国際的な連携が今までいろいろやってきたというぐらいの、最初の意義づけの事例ぐらいでも入れたら、まさに参考事例としてはあるんですけれども。

【主査】
 どこかにそういうのをちょっと。

【事務局】
 わかりました。

【主査】
 ほかにはいかがでしょうか。

【委員】
 17ページ4の海外特許の戦略的な取得のところに係る観点ですが、これは書き込み方は非常に微妙なんですが、御存知のようにアメリカでは発明主義をやめて、日本と同じように出願主義に変わるということと、それからPCT出願に関して、従来のアメリカ型の分割に関してもかなり日本欧米型に今度変わるという話がほぼ決まってきたということで、大分海外の特許の状況というのが大きく今動いてきている状況になっています。御存じのように、三局でできるだけ統一しようということの中の一環なんですけれども、そういう非常に流動的に動いているというあたりもどこか書き込んでいただいて、海外特許に関して情報を収集するというところが重要な状況になってきたかと思いますので、何かそういう内閣官房知財本部等でやっておりますような動きも少しどこかに盛り込んでいただいて、できるだけそうした仕組みの発信なり、あるいは大学側でのそうした海外特許の状況をしっかりつかんでいくというあたりも少し書き込んでいただいたらというふうに思います。御存じのように、かなり急速に動きが今出ていますので、このあたりどうか、というふうに思います。

【主査】
 それでは、4のところにそういう動きについても、全体で情報交換する必要性とか、そういうのをちょっと入れたらいかがでしょうか。ほかにはいかがですか。

【委員】
 これは修文ではなくて、今後の委員会の宿題事項ということで私発言させていただきたいんですけれども、3ページの基本的な考え方の中で、今回私は非常に喜んでおりますのは、最初の3ページの1パラで、大学における教育と研究とそれから社会的価値の創造の3要素を一体化する視点に立って今後それを支える人材育成の強化が必要である。この基本的な考え方を何としてでも国を挙げて少しずつ推進していくということで、それが最後の27ページの「おわりに」というところで、本委員会でも今後必要に応じて等々というフォローアップ、ここで教育・研究、そして社会還元、ここの適宜検討していくことという、この適宜検討の仕方をぜひ佐野課長、設計してほしいんです。恐らく、私は教育再生会議は教育再生会議で、教育のところをきちんとフォローアップを地域支援で回してくれると思いますし、研究も総合科学会議でやってくれると思うんですけれども、社会還元というイノベーション、この3要素がどういうふうに回っているかというのは、少なくともこの産学連携の委員会がイニシアチブをとらないと回らないのではないかと思います。そういう意味で、最後の今後の方針の本委員会のことは、この最後の4行は非常に大事であって、どうやってこれを具体的にしていくのか。場合によっては、教育再生会議に対してだって要望するかもしれませんし、そういうような視点で、少し時間がありますので、設計して、また委員会の議題に乗せて、こういう設計でいきたいというような話も皆さんの意見を盛り込んでいけたらいいなと思います。

【主査】
 大変貴重な御意見だと思うんですが。産学連携というのは非常に狭い範囲でとらえるより、もうちょっと広い範囲でとらえていこうという御意見、前回もそういう御意見が非常に多かったと思うんですが、そういう修正が大分加わったんだけれども、確かにそう言われれば社会貢献、社会貢献というんだけれども、大学が社会貢献する、いろいろな要素があると思いますけれども。しかし、教育・研究全体から社会貢献していく、もちろん単純に産業界に何か知的成果をただ出すというだけではないとらえ方というのはありますね。そういうようなニュアンスが若干加わっても、従来の考え方、大昔の考え方と少し違うんじゃないかという気もするけれども、大分正道になってきたんだと思えば、その方が私もいいような気がする。
 先ほど松重先生も言われたんだけれども、例えば環境問題一つとっても、環境処理技術みたいなものも確かにそれはそれなりに非常に重要だということだけれども、本当は社会システム全体をどうしたらいいかを提案することの方がよほどイノベーティブであるということになりますね。ですから、ちょっと問題を大きくとらえることも大学では非常に重要な役割だと。この中にも社会科学とか、人文科学とかも大事で、そういう分野もこれから大いに社会との連携で入ってくるだろうことは一文入っているはずなんだけれども。その意味合いの中にはそういうことも含まれてくるのでしょうね。ほかにはいかがでしょうか。大変貴重なご意見だと思います。

【委員】
 24ページの「2.国の支援の在り方」の節の始めに、「多様な財源を確保し、自立的、効率的な運用を行うことを基本としてかんがえるべきである。」という文章があります。一方、現在私の大学を含めてほとんどの大学における産学官連携関連経費は、国からの産学官連携関連事業受託費や各種補助金と大学の自主財源(ライセンス収入と共同研究・受託研究のオーバーヘッド(間接経費、管理的経費)の一部)で成り立っています。
 産学官連携関連の事業推進にはかなり経費が必要となりますので、産学官連携本部の自主財源であるライセンス収入だけで黒字になることはどこの大学でもほとんど不可能な状況にあります。後半の共同研究・受託研究のオーバーヘッドに関しては、大学当局から結構遠慮しながら貰っています。国立大学法人化を契機に国は大学に対して教育・研究と共に産学官連携等の社会貢献の推進を推奨していますが、交付金としての増額は全くありません。このため、現在行われている産学官連携支援事業が終了すれば、大学の産学官連携活動は失速する可能性が高いと思われます。このような事態を避けるためには、先程の大学本部の自主財源である「共同研究・受託研究のオーバーヘッドの一部を産学官連携活動の財源に充てるべきである」などの勧告を国から大学に提言する必要があると思います。
 国の産学官連携支援事業が継続している間はまだ大学の産学官連携活動の推進は可能ですが、これらの国の事業がなくなると失速する可能性があるように思います。このため、産学官連携活動のための大学内における財源について具体化した表現をしていただければと思います。

【主査】
 非常に本質的なところかなと思います。従来余り大学での社会貢献というのはそれほど表に出る議論をされなかったわけだけれども。

【委員】
 特に今年度の特に推進する項目である国際化を推進するためには、国内で産学官連携活動を推進よりははるかに多くの経費が必要であります。国際化を推進するためには何らかの手当てがないと、言うだけで実効が上がらないような感じがします。

【主査】
 社会が大学から何かを期待するなら、それにかかる費用といいましょうか、対価というのは当然支払わなければいけないんだけれども、必ずしもそこら辺がまだ仕組みがすっきりできていない。それはおっしゃられるとおりだという気がします。そうすると、何かそれを助成している国のお金が無くなったらそれが終わるのではないかという、今までも盛んに危惧されてきたことで、それは何か書きにくいけれども、ちょっと。

【事務局】
 実は7月25日の小委員会の段階では、自己財源というような言葉も入れておりまして、そこにつきまして前回の委員会で三木先生からも御指摘いただいて、知財本部が、これは民間企業でも同じという御指摘もございましたけれども、黒字になるとか収支を均衡させるというのはまずあり得ない。それは知財本部だけで何らかの財源をとってきて、それをやっていくんだという趣旨に誤解されたら、これは非常にマイナスだという御意見がございました。各大学で、例えば国立大学でしたら運営費交付金は退職金と特別教育研究経費以外は渡し切りの交付金ですので、それは各大学の自由裁量で使っていただく経費ですけれども、あるいは私学は経常費用で、1割ぐらい。それが国が支援しているのかというお叱りをいただくかもしれませんが、そういった国からの基本的資金ですとか、基盤的な資金ですとか、先ほどお話のあった間接経費、そういったものを各大学がきちんと、大学が特色ある教育・研究活動を展開していく中で、その一つの重要な手段として産学官連携活動というのを位置づけていただいて、大学自体が、知財本部だけではなくて、大学全体として多様な財源を確保していただいて、それを進めていくんだと。そういったところに国としても、先ほど申し上げました国際ですとか、ライフサイエンスといった特定の課題、あるいは事業化支援といったものについては、それは国としても政策的なことですので、大学としてはあえてチャレンジされるにはリスクが高いところについて、きちんと支援させていただきます。こういった議論を踏まえてこの記述はここに至っておるというのを補足させていただければと思います。

【主査】
 ストーリーはわかります。ストーリーというのはストーリーであって。

【委員】
 学内で遠慮しながらではなく、堂々と使える財源として認知させたい。このための交付金が増えるというのは考えられない。学内における産学官連携活動の位置づけの明確化とそのための財源として、例えば共同研究・受託研究のオーバーヘッドの一部とか、などの例示を入れていただければ非常に肩身が狭くならない気がします。

【委員】
 私も、ここは審議案のまとめということに関しては、いろいろ申し上げたことも含めて非常にいい形でまとめていただいたと思っております。まとめ案に手を入れるとか、入れないということでとはなくて、先ほど松重先生のお話にあった今後を含めて、二、三点申し上げたいことは、この会議も含めて、私はいつも産学官連携については同じことを繰り返して言っているので、そういう意味では若干まとめ方も含めたトーンについて、先ほどの西岡先生に対する答え、これは間もなく実際には概算要求という、これは予算になるわけで、国策としての具体的なプログラムにかわっていくわけですけれども、いつもそこで気になっていることは、前書きには激しい国際競争にさらされる中でと、この一言でいつも終わっていて、現実には国際競争という面で見たときに、本当に各国においてはどういうことが行われていて、よって日本はここに資源をもうちょっと、ここを強化しなければいけないという具体性が、この後概算要求の後ヒアリングもやったりすると、ほとんどそれが欠けているんです。企業ですと、他社との比較も含めて、ここをやらないと負けてしまうとか、うちの会社はここが強いからやるんだという、そういう具体的なデータがないと何も投資の決定とかできないはずなのに、国の予算というのは、最初、今日我が国はとか、激しい国際競争のもとではと書いた以降は、ほとんど何も書いてなくて、こういうことが必要であるという予算提案になっているんです。
 ところが、この報告書の中でも、いろいろなシンクタンクというか、研究部門があって、こういうふうに委員会ではなくて、恐らく、そういうところで調査、スタディがされているはずだと。いろいろなところのデータを見ると、いろいろな調査がされているわけなので、もう少しそういうものが、議論や何かのところに上がってきて、今の国際情勢において日本はどこをもっとやらなければいけないんだというトーンを強めていかないと、トータル国の政策としては的確なものにならないんじゃないか。そういう意味で、国際競争というようなことから、国策としての表現というか、この委員会も含めたやり方の問題が一つ、フラストレーションとしてあるんです。
 それから、これが全体に文科省主導下のせいであるんですけれども、産学といったときの産についての分解度が非常に低くて、よろず産業は、というふうになってしまっていて、この審議案のまとめはタイトルは勇ましくて、イノベーションという言葉が出て、かつ戦略的な展開という、このタイトルからすると、もうちょっとこの中には日本のこれから進むべき産業ということと、これは本当にここに出ておられる経営幹部の方がいらっしゃるような、日本が現在これまで強かった産業、でもこれも安穏としていられないという、そういう産業分野における人材育成や、あるいは産学連携の在り方というのと、実はここにはだれもいない。21世紀、日本が本当は新たな産業を興さなければいけないかもしれないという、そういう産業というのは違うと思うんです。そういうところが得意なはずのお役所は、どちらかというと見えている産業の方に非常に包括された、このままでは負けてしまうとか、半導体をどうするんだということに割と包括されていて、本来ベンチャーなどは、今の大企業ではないような新しい産業を生んでもらうような期待も含めてやらなければいけないんですけれども、そういう意味でも、若干全体の底上げという意味ならわかるんですが、いよいよ第2、第3ステップに入ったときには、どこかから文句が出るかもしれないですね。うちの産業はどうしてくれるんだ。いや、だって世界の大企業が3つもある、その産業のことなんてこんなところに書かなくていいでしょうという、むしろだれも注目していないような産業とか、そういうようなことがどこかで出てこないと、戦略にはならないんじゃないか。それが2点目です。
 3点目は、やはり社会還元につながる話としては、クラスターということは非常に大きくて、今、日本の最大の課題の一つは、地方の疲弊というか、国が完全に南北に分断されているみたいなところがあって、今回の選挙でも大きな争点になったわけですけれども、これをまたばらまきに戻さないためにも、イノベーションとか、産学連携は重要なんですけれども、やはり多分そこを踏み込むと、ここだけでは議論できなくて、税制も含めて、理研も随分いろいろな地域から誘致や一緒にやりましょうとお誘いがあります。でも、全部が国の中央のプログラム、お金をもっていきましょうというのが中心で、自治体自身にそれだけの力、創意工夫する余地を持たされていない状況もあるので、本格的に戦略、イノベーション、国のためを考えるのであれば、科学技術を越えるかもしれないけれども、こういうところからそういう提言をして、自治体に税源とか、裁量の余地を与えるようなことと相まって、こういうことをすると、クラスターというのが成功する。多分今度の概算要求に文科省は知的クラスター、経産省は産業クラスターと、また予算が上がってきますけれども、それを成功させるには、やはり前提としてのもっと地方分権というのがいかなければいけないというようなことを、どこかでやっぱり言い続ける必要があるんじゃないか。その3点、コメントさせていただきました。

【委員】
 今、武田委員からすごい難問を投げかけられたわけですけれども、この解を求めるための私の提案は、イノベーションは文科省だけは出来ない、今日の資料の6ページで、経産省とか、ほかの省も含めた俯瞰的な見方をし始めた。これは画期的で、前回の委員会で生駒先生は「産連課を解体したら」と言われましたが、解体しては困ります。現在の産連課は、こういうふうにイノベーションを上流から下流までの視点で入れ始めていますね。ですから、ぜひ今の武田委員の3点にわたる御発言は、私が先ほど言いました最後の「教育と研究と社会貢献=イノベーション」、この3要素をどういうふうにインテグレートして回していくかという設計の中に、既にほかの省の活動に対しても視点を持っていることが6ページにありますから、今の武田委員からの御発言内容を私なりに言うと、先ほど私がお願いした「教育と研究と社会貢献=イノベーション」のインテグレーション実行の設計、すなわち、この3要素の一体的な回し方の設計の中に組み入れていくと、多分これは時間的にも空間的にも必要な設計の中に入れていくと、武田委員の御発言の解は求めることが出来るという提案です。

【主査】
 ほかにはいかがですか。

【委員】
 先ほど武田委員が御発言になり、私も少し気になっていたところは、例えば特定研究分野における産学連携活動の課題ということで、ライフ、ソフト、大学発ベンチャー、こういうことにカテゴリー分けされているんですけれども、もう一つカテゴリーの分け方としては国際のいろいろな広がりからくると思うんです。そのカテゴリーの分け方の中で、例えばライフサイエンスにおいて、そこでの国際という部分が、例えば現在でもバイオリソースの争奪戦というのは一部あるわけでして、これは文部科学省のやっている事業だと思いますけれども、たしかナショナルバイオリソースプロジェクト、この場合には非常に国際的なMTAの問題とか、いろいろな問題が入っております。そういう、ここに書いていることがある面でいうと医学、医療のところに若干特化されていて、もっと大きな、ほかの問題を項目だけでも入れておく。国際的視点を書き込んでおくというのはあるような気がいたします。
 それから、例えば大学発ベンチャーにしましても、国際的にビジネス展開できる大学発ベンチャーをつくるためのというような、もっと大きな位置づけから書かないと、今の不足している部分をただ記載しているという感じになるんです。将来の戦略というタイトル、目標ということを考えると、ほんの1行ぐらい加えるぐらいでも済むのかなとは思うんですけれども、そういうカテゴリー分けの重なり合わせというようなところを少し加味すると、よりそれぞれの分野の方々、そこのところを重点的に読むことが非常に多いこともありますので、理解をより深めやすいようになるんじゃないかと思います。これは今回この中で書いていただきたいという意味では必ずしもないんですけれども、そういう視点も持っていくことが大事ではないかと考えています。

【委員】
 これは、今、審議のまとめという話だと思うんですけれども、それにしても、今、武田委員が言われたようなことが、そういうことをどうするんですかという、どこかであの話こういうふうにしようと思うんだというような御提案があればいいなというふうに思いました。
 もう一つは、私はこの資料をいただいて、よくできている文章を読むのは大変だったんですけれども、あれっと思ったところが1カ所ばかりありました。まことに大したことではないんですが、気になったんですけれども、3ページの一番前に、厳しい国際競争の中で独自の研究成果からイノベーションを創出することを認められている我が国、独自というのはだれなのかという話と、次のページをめくりますと、4ページに、一方、目を世界に転じればグローバルなイノベーション戦略が要るんだと、こう書いてある。ということは、この3ページの独自の研究成果からイノベーションを創出というのは、厳しい国際競争に私たちはいるんだから、自分たちだけでイノベーションをやっていかなければいけないということを求められていると思っているんですか。私たちそうは思っていなくて、だからこそ、もっとグローバルに動かなければいけないと思っているんです。だから、3ページを読み出したら、そのときに国粋的だなと、もっと外に開けよというのを一瞬思ってしまうというのは、ちょっと損だと思うなという印象を受けました。

【主査】
 自分たちだけの、という意味ではないとは思うけれども。

【委員】
 独創的がいいですかね。

【委員】
 具体的にいうと、知的財産はやはり独自に生み出して、グローバルにそれを展開していく。

【委員】
 それをやるときにグローバルに生み出していってもいいわけでしょう。そういう意味ですね。ちょっと気になりました。

【主査】
 ほかにお気づきの点が、御発言のない委員の方で何かこの際、せっかくのまとめを随分時間かけてやりましたし、事務局も随分頑張ってくれたと思います。

【委員】
 先ほど戦略的というのがありましたけれども、私は本文の中に何度も出てくる、日本の大学が画一的にやるというよりも、各大学みずからの特徴を生かした書き方があるでしょう。そういう意味も込めて、戦略的というのが入っているのかなと思っていたんですけれども、それでよろしいんですね。それだとしたら、この前の鳥取大学の話もありますし、大変結構なことではないかと思います。
 それから、いろいろ重要な分野があるというお話でありましたけれども、イノベーションはどこから出てきてもいいわけで、イノベーションが出てくる環境をここで全体として整えて、将来のイノベーションにつながる活動を応援するというのがこの方向づけだとすると、せいぜいこういう書き方になるのかなと思います。いろいろな分野を言い出しますと、経団連でもカバーしている。それぞれの企業分野が重要なイノベーションがありますので、特に活発な領域とそうでない領域、いろいろあるわけですけれども、各大学をカバーしておられる文科省としては、こういう姿勢の方向づけみたいなものでいいんじゃないかと思います。別に文科省の回し者ではありませんけれども、という気がして、参加させていただきました。

【委員】
 まとめについてはすべてのことが入っているんじゃないかと思います。ただ、これまで、知財本部事業を見てまいりますと、最初のステージでは大学は何もなかったんです。大学に対してこういうファンクションを持て、大学の中にこういう環境を整えろ、そういうことできたんです。これからは第2ステージに入っていきます。今回の報告書を見ますと、うまく書かれていますけれども、大学に対する要請がこれからも中心になっています。ただ、先ほど来、武田委員とか、委員のお話を伺っていましても、個々の大学で解決できることを越えた問題がたくさんある。例えば、ベンチャー支援の仕組みや、人材育成の話とか、要するに国が正面から取り組むべきインフラとか投資などの連携の基盤となる共通事項です。実際にこの報告書を展開していく段階において、これを本当にうまく動かしていく上では、その基盤となるインフラや、投資、人材育成等の共通部分にもぜひ目配りして、展開していただくことが必要ではないかと思います。

【委員】
 前回も欠席しまして、特に意見を申し上げていないのでありますが、今後の展開とか、知財の発展系を考えるときに、思うことが若干ありますので、申し上げます。特に人材についてですが、産学官の連携によって人材育成するときに、具体的にどうやったら良いのか、今までも産学連携人材育成をやっているという見方はもちろんあったわけで、今後はどういうような仕組みで人材育成をやるか、具体的な課題としてさらに踏み込みが必要ではないかと思います。それは今後の課題だと思っておりますが、経団連等でも検討しておりまして、やはりもう少し産学の人材の交流をしないといけないと思っています。特に学から産への人材の動きが非常に鈍いという問題に対して、ピンホールでもいいから一穴をどうあけられるかというようなことを今検討しておりますので、その辺が今後の展開として次に向けての課題ではないかと思っております。
 それから、今後いろいろなことをやっていくときに、人材としての倫理観といいますか、そういうものをちゃんと備えるということを基盤的に考えておかなければいけない時代になっている。もちろん大学も企業も、あるいは連携するに際しても、この辺の感覚の部分をもう少し取り上げておくということが必要だと私は思っております。次回への課題としてその辺の検討が必要だと思っております。
 以上です。

【委員】
 せっかく来ましたので、一言。先ほどから大学に対する期待ということで、非常にたくさんのまだ案件が残っているということでした。例えば評価の問題とか、財政的な基盤の問題とか、それぞれの大学で非常に努力はしています。ただ、速度が遅いということです。ただ、そういうことに対するプレッシャーといいますか、支援といいますか、そういうのを書き続けるということは非常に大事なので、この案全体を通してそういう適切な支援になり得ると思っております。
 ただ、ちょっとだけ、ライフサイエンスの部分でわざわざ特定の研究分野ということでライフサイエンスという分野を特に取り上げられて、例えば欧米が新薬の開発は11、12、日本は4個、それで実用化研究の基盤が十分整備されない、この辺までくると、私は具体的に何か例えば新薬の開発の治験というところが日本では非常に難しい状況で、新薬の創出についてもうまくいっていないということのように思います。私は半分ぐらいはその原因があると思うんですけれども、それはもっと組織的に大学として、あるいは公的な研究機関として取り組めるような整備、これは先ほどの省庁の枠組みでいいますと厚労省に入っているので、文科省の起案としてなかなか難しいところがあると思いますけれども、これは委員が勝手に言ったというスタイルで、そういうところに一石投じておいて、いずれ波紋がまた広がる。現場のお医者さんは非常に苦労していまして、例えばここに臨床研究の意欲が生まれる研究体制の整備が非常に遅れていると書いてありますけれども、つい最近聞いた話では、各学界、医学界でもたくさん学界がありまして、非常に努力されております。案もいい案ができつつありますし、そういう意味でこういうところで、これはプレッシャーというか、支援をかけていくということは、そういう動きも促しているわけなので、私はぜひ治験などを一言で触れて欲しいと思います。前の書き方からすると当然それが出てくるような文脈になっているのが、いきなり知的財産、有体物の活用体制というようなことになってしまっているので、そういうようなことを入れたらどうかなという気がしています。

【委員】
 ここに書いてあること自体は私は賛成というか、特に異論はないんですが、ここの中で、背景的に考えておいていただきたいことが一点ありまして、それは、イノベーション創出に向けた人材、イノベーションを創出し得る人材を、こういった中でどうやって育成していくかということなんです。大学は大学なりにちょっとした反省もあって、それは社会の価値をどうやって生み出すかということに余り関心を払ってこなかった。それが今関心を強く払って、それをどうやって次の人材に対して伝えていくかということがあって、それを産学連携の中でやったときに、産業界の方が今までの産業界のロジックの中でやられてしまいますと、学生には実は逆効果でありまして、あんな会社には行きたくないという話になってしまう。実際、私が一番今危惧しているのは、成績のいい、あるいはこういったイノベーションを創出し得る元気な学生の多くは日本の企業に行かずに、そういったイメージを持った国外あるいは外資系企業に流れているわけです。そうではない、教科書に書いてあることをそのままやるような学生が普通の企業に行っているので、これから日本の産業の衰退を招くのではないかという大きな危惧を持っています。
 それは、生き生きとした産業界のイメージを大学の学生、あるいは教官もまだ勉強不足ですから、大学の教官や学生に生き生きと伝えていただかなければいけないし、イノベーションを生み出すんだという意欲を学生や教官に伝えていただきたい。ところが、伝えられるのは、企業はこんな戦略の中でやっているんだ、これをやりたまえという話になって、企業が持っている教科書を押しつけるだけという話になるんです。これを、産学連携の中でうまく、日本全体の人材の育成を考えた場合に、そういう人材を縮小再生産というか、悪い人材が悪い人材を教えているというような考え方を断ち切って、違うステージにもっていく、いいサイクル、スパイラル構造をつくっていかなければいけないと思います。それをこの中から生み出すんだということが最も重要ではないかと思うんですが、それを書くのは非常に難しいと思うので、これに書いていただきたいとは言わないんですが、背景にはそれがあって、私もここ数年非常に危ないと思っております。企業の方はいい人材を入れていただいてとおっしゃるんですけれども、いい人材ではないんです。いい人材はみんなもっと魅力的なところへ行っていますので、ぜひともそこはお考えいただきたい。
 それから、我々が反省するのは、我々の卒業生が企業側にいるんです。その卒業生が産学連携に対してかなり狭い考え方を持っていたりすると、もっとちゃんと教えておくべきだったかなという反省もちょっとあって、ある企業に至っては、おたくの企業の産学連携に対するコンセプトは何ですかという質問に対して、我が社のコンセプトは不実施補償を払わないことですという答えをするような企業もまだあるんです。ですから、我々にとって人を育てるということに対して産業界と一緒になってやるべきことなので、一緒になってイノベーションを生み出せる人材をつくっていきたいなというのが背景にあるということが非常に重要だというふうなことをコメントとして述べさせていただきます。

【委員】
 非常に重要なポイントだと思うんですが、私その点に関しても14ページに、組織的、戦略的な共同研究等の推進という表現になっているんですけれども、ここに特に赤字で加えた新たな修正のところに、大学等における最新の研究動向等について、大学と企業の関係者が情報を共有できる場を設けるなど、つまり共同研究だけで産と学が接点を持つと、本当に研究の現場、企業でいうと研究所のあるローカルなところが交流するという話になってしまって、前からこの席で言っているんですけれども、それこそ会社の経営のトップの方と教授の交流、いろいろな階層で日ごろの交流を活発にしないと、今、言った、まさに石川先生がおっしゃったように、人材育成という大きな問題を考えると、就職のときだけ急に企業が出てきていろいろな企業説明しているという、そういう状況とか、それ全般考えると、共同研究が一番大事な産学連携の接点であるという考え方は改めていって、前にも例を出しましたけれども、MITやスタンフォードは、共同研究で企業から金を取ろうとしないんです。そのかわり、CTOブリーティングだとか、何かそういうふうに、そのかわりこの分野、燃料電池の一番の先生方を3人集めて講義してあげます。最近の燃料電池の動向についてとか、マルチメディアとか、将来のモバイルの動向についてスペシャルレクチャーセミナーを今度土曜日やりますから企業の経営者は出てきてくださいみたいなことで会費を取ったりしているわけです。そういうところから日ごろ接触点があると、今、石川先生がおっしゃったように、企業の本当に経営者の顔も見えてくるし、企業のトップの方も、大学の人たちはこういうことに関心を持っているんだという、何かそういうことで、せっかくここの産学官連携の戦略的な展開の方向というところの(2)に情報共有ということを非常に強く書いていただいているのは、そういう観点を若干、もう一段、共同研究というと本当にスペシャルな、そうしたら会社のトップなどは、おれはそんな専門的なことはわからないよ、よきにはからえという世界になってしまうので、もうちょっと交流とか、連携の接点の拡大みたいな方向で扱っていただければいい。
 それで、石川先生が言うような、それが人材育成とか、人材交流にもつながる。先ほど西山委員が言われたように、人材育成や人材交流ということも含めた組織的な連携というような、そういう方法があるんじゃないかなと思いました。

【委員】
 改めて報告書を見ると、非常に現実的で、方向性も出ていると思います。一番最初にいろいろ議論したイノベーションの創出、途中で議題を変えたんだと思うんです。つけ加えた。確かに、こう見ると、はじめにとか、基本的な考え方で、12カ所出てくる。最後の方になるとだんだんなくなってきて、3のイノベーションのタイトルはあるんですけれども、内容にはないし、国の支援の在り方にもないし、おわりにもイノベーションは全然ないんです。改めてこれを議論するわけではないんですけれども、国の支援の在り方の最初ぐらいところに、大きな流れの中で産学官連携についてのこういう施策をやるといったときの位置づけをされた方が、これは報告書ですので、いろいろな側面が出てくるといいんじゃないか。そうすると、最初にばっと出て、しりつぼみというところが少し防げると思いますし、その意味で、こういうふうな大学の支援、知財の支援、地域振興の支援、そういうものがある程度改めてわかるのではないかなと思いますので、どうでしょうか。

【主査】
 実は、大変本質的な皆さんがお感じのところが多いということは、前回もそうだったし、今日はさらに具体的で、深いお話を伺ったのではないかというふうに思います。ただ、今回のまとめは、それなりにこれまでやってきた作業の一つの、文科省の担当としても、この委員会の役割というのをやや限定的にとらえないと、これは発散していてもなかなかできないので、具体的な作業として、あるいは予算上それはカバーする範囲といいましょうか、その範囲でこれをある程度まとめていただいているということはあろうかと思いますので、今日いただいた御意見で、うまく盛込めそうなところは少しニュアンスとして入れさせていただいて、最終まとめということにさせていただきたい。時間も限られているものですから、内容については私にお任せいただいてよろしいでしょうか。
 では、そういうことで、これは事務局なかなか力作で頑張ったので、さほどの修正はちょっと難しいかもと、こう思いますが、一応まとめの趣旨というところを御理解いただいて、今回はこの辺でまとめさせていただきます。
 ただ、今日いろいろなお話を伺っていて、この委員会の性質というのがこういった観点についてまとめていく、そのための議論をしていただいてきたということなんですが、ここにお集まりの皆さん方がお感じになっていることは、もう少し産学官連携、あるいは大学の社会貢献といったものは一体何なのかということについての、むしろストラクチャーとか、日本の社会の在り方として戦略的に考えるんだったらどういうふうにしていったらいいか。大学はどういうふうにあった方がいいし、もちろん大学は多様であっていいけれども、こういうようなファンクションがあれば一つの社会貢献になる。その社会貢献のやり方みたいなもの、それをやりやすくする、あるいはこれは大学の中のシステムも変えなければいけないことも確かにあるというような議論、そしてまた、一方で大学にしてみますと、例えばこれは科学技術研究が主に初めから話で始まっているわけだけれども、実際は大学の研究費は少ないんです。極端に少ない。アメリカのそれなりの大学と比べて、先端研究をやっているようなところでいうと5分の1か10分の1か、大体そんなスケールなんです。ですから、そこで生まれたものが、初めはもちろんある。ないわけではなくて、あるんだけれども、本当にそれだけを移転するとか何か、そういうことによって、社会貢献が非常に企業からありがたく、そのとおりと、ちゃんとお金も払ってこうだと、ゆったりと流れるというふうになかなか現実には日本では今まだいっていないという事実があると思うんです。今、我々高等教育予算で、公財政支出、幾ら何でもGDP比で0.5パーセントはひどいだろう。これはせいぜい1パーセントぐらいにして、アメリカだったらそれこそいろいろな形で、イナーメントとか、いろいろな形で入っているわけです。あるいは個人で寄附する人もいる。そういうようなことの結果として、非常に大きい研究資源の差がある。これを構造的に変えるというのも、一つの日本としては課せられていることだと、全くそのとおりだと思うので、そういうあたりについても、この委員会の役割はちょっと違うように限定しているんだけれども、本当は皆様方、そういうところをどういうふうに変えれば現実に大学の社会貢献というものがある程度スムーズにいく。いきなり飛躍することはできないにしても、最低限こういうことが必要なんだと。
 それから、人材育成におけるアンマッチの問題というのは、本当はお金の問題ではないかもしれない。大学のシステムもあるし、企業側のこれまでのうまい具合に人が来てくれればいいと言っては何ですけれども、とれればあとはうまく使うからというような、今でもまだそういう雰囲気だし、そうすると、そこら辺はやれる余地はあるのかもしれない。
 最近アメリカなどでも相当奉仕的というか、いわゆるインターンシップとは違って、いろいろ大学の学生にも非常に実践的な教育の機会をつくるとか、そういうこともやっていますね。したがって、大学というものが教育という面でいうと物すごく開かれた格好になってきていて、学生もそれを享受するというようなことにどんどんなって、変わってきている。ですから、どうもいろいろなところがそれぞれの自分のところを囲い込むのは得意、文科省は文科省で囲い込むし、厚労省は厚労省が囲い込むのと似て、大学は大学で全部囲い込むし、企業は企業でというのがどうしてもそのくせが抜け切れないというところが日本には非常に大きいんじゃないかと、改めて思います。先ほど委員も言われましたけれども、まさにグローバルに開かないといけない。そうでないと、イノベーションというのはかけ声であっても、なかなかいかないのかなという、そんなところにきている。そういう構造について、皆さん方多分もっと語りたいということだと思うので、これはどういうふうにすればいいのか。この委員会の役割ではないのかもしれないんだけれども、チャンスがあれば思いのたけをぜひ皆様方に幾つか項目、こういうことをまとめておくべきだというようなことがあれば、何か事務局で考えていただいて、そういうチャンスをつくれればというふうに思います。差し当たってこの要旨はこれでまとめさせていただきたい。
 ありがとうございました。ぜひそういう機会をつくって、せっかくのこれだけの皆さんの貴重な時間をいただいて集まっていただいていますから、そういうような、日本全体にもうちょっと次の段階というか、これからもっとやらなければいけない方向性というものをこの委員会としても少しでも示すことができたら、その方がいいのではないかなという気もする。
 それでは、この報告書は9月4日に技術研究基盤部会があります。それから、9月6日に総会というのがあって、ここで報告されるということですので、若干マイナーな修正は加えられると思いますが、それをもって報告させていただきたいと思います。

 「産学官連携推進委員会(審議のまとめ)」については、主査一任となった。
 事務局より、今後審議のまとめについては、公表の後、技術・研究基盤部会、総会に報告される旨の説明があった。

お問合せ先

研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室

(研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室)