産学官連携推進委員会(第33回) 議事録

1.日時

平成19年8月1日(水曜日) 15時~17時

2.場所

ルーテル市ヶ谷センター 第1・第2会議室

3.議題

  1. 地域における産学官連携体制の強化
    1.「北九州市の産学連携の取り組み」
     〔北九州市産業学術振興局新産業部 松岡俊和部長〕
    2.「休耕田を利用したホンモロコ養殖」
     〔鳥取大学 林喜久治理事(地域連携担当)、斎藤俊之准教授、有限会社内水面隼研究所 七條喜一郎代表〕
  2. 今後の大学等における産学官連携活動の推進施策について
  3. その他

4.出席者

委員

 白井(主査)、秋元、石川、石田、小原、清水、武田、柘植、野間口、平井、本田、松重、森下、山本、渡部

文部科学省

 徳永研究振興局長、佐野研究環境・産業連携課長、小谷技術移転推進室長、吉田技術移転推進室室長補佐 他

オブザーバー

説明者
 北九州市産業学術振興局新産業部松岡俊和部長、鳥取大学林喜久治理事、斎藤俊之斎藤俊之准教授、有限会社内水面隼研究所七條喜一郎代表取締役

5.議事録

(◎…主査 ○…委員 △…説明者 □…事務局)

(1)地域における産学官連携体制の強化について

  1. 北九州市産業学術振興局新産業部松岡俊和部長から資料2に基づき説明があった。
  2. 鳥取大学林喜久治理事、斎藤俊之斎藤俊之准教授、有限会社内水面隼研究所七條喜一郎代表取締役から資料3‐1、3‐2、3‐3に基づき説明があった。 その内容は以下の通り。

1.「北九州市の産学連携の取り組み」

委員
 私も一度伺ったことがあるのですが、各研究機関の間での垣根がないんですね。垣根がなくて、オープンな施設に全部集まっている。だから、いいプロジェクトがあればそれぞれの特色を生かした連携が図られるのではないかと感じていました。ただ、いいプロジェクトをだれがイニシアチブを持ってやっていくのか、どうマネジメントしていくのか、この2つが重要であると思ったんですが。イニシアチブはやはり市の方がとっているんでしょうか。マネジメントはどういうふうになっているか、その辺をちょっと教えていただければ。

説明者
 答えから申し上げますと、イニシアチブは市の方がとってございます。というのが、私ども従来の産学連携機関というのはコーディネートという言葉を使っているんですけれども、つなぎ合わせるということ、コーディネートということをやっているんですけれども。ある意味でやはり大学が本当に持てる力を発揮していくという意味では1つ方向性という部分をみんなに共通の志というものを持っていただくという、これは非常に有効な手段だと思ってございます。そのあたりについて私どもから地域政策としてこういうものをやっていきたいということを示すことによってみんながその気に各大学も、また企業もなっていただきまして、非常に活力が出てきたという点でございます。その面では私ども現在の産学連携機関というものを従来に比較してより責任を持った連携機関として取り組んでいく、またイニシアチブを図っていくという考えで今進めてございます。

委員
 15ページで象徴されますような地域クラスター形成ですが、本当にこれはまさに知の創造を社会経済的な価値につなげる場として非常に私は大切なことをおやりになっているなと思います。
 2点ほど非常に関心を持ちます。1つは、この15ページに書いてありますように、継続的な、と書いてありますね。大学シーズと産業ニーズを継続的なイノベーション、つまり10年後も20年後もこの構造が保たれるためには、左の大学が産業と一緒にやっていくスパンの活動とともに、10年ぐらいはかかる基礎研究をきちんとやってくれているか。やってくれるためにはやはりこういう場で得たニーズでバックトゥーサイエンスを科学研究費のような資金で、競争的資金ですけれども、とっていく。この辺のメカニズムが働いているのか、単なる5年ぐらいのディスチャージのシーズとニーズのマッチングなんていうことだけではないメカニズムが働いているかどうかがね。
 ちょっと気になるのは、例えば10ページなんか見ると、外部資金の獲得、これはプロジェクトの採択でこれは非常に良いのですけれども、外部資金の中にはやはり例えば基礎研究の資金の科学研究費もあれば基礎研究の外部資金もあるわけでして、もうちょっとそういう基礎研究の資金もこういうメカニズムのこういう場からバックトゥーサイエンスに戻ってきたんだという実績を大学の先生からも把握して、こういう中に加えてもらうと安心できるのですね。
 もう1つは、このニーズとシーズの交流の場で育った大学の学生、特にドクターコースの学生は、ポストドクターのような、中途半端と言うと語弊があるのかもしれませんけれども、そういう形を経ずに、教職なら教職あるいは産業なら産業の中ですっとドクターの課程が3年終わった途端に適材適所に当てはまるんじゃないかと考えます。だから、こういう産学交流の場で育ったドクターがポストドクター問題のような問題に遭遇していないエビデンスをトレースしていただくと、ポストドクター問題の解決の1つのお手本ですよと、そういうふうに言えると思います。
 今お答えにならなくてもいいですけれども、今後マネジメントの中には今の2点をぜひ大学と一緒に組んでトレースしてほしいです。

説明者
 よろしいですか、ちょっとだけ。基礎研究から私ども応用研究まで、例えば基礎の部分に関しましても今回文部科学省さんからご採択いただいた知的クラスター、この中にまさにアプリケーションというものを見すえた中でそこの基礎の部分をしっかりやっていこうと。そして、私どもが準備している資金の中で応用研究をやっていき、そしてさらに言えば、経済産業省さんの地域コンソー事業ですね、あのあたりでまさに製品化というものを図っていくふうな、そうした1つの流れを私ども研究の中で今整理をしてございます。
 それから、後者でございますけれども、私ども産業界との議論の中で、いわゆるドクターとかそういったところのまさに活用というんですか産業界としてのそのあたりについてもちゃんと議論をやってございまして。我々も産業界との議論をやっている限りにおいては産業界もちゃんとオブリゲーションを持ってくれと。そしてその中にポスドクとかそういった問題に関しても彼らもソリューションを提示していただきやっていくんだということを、現在も議論は継続中でございますけれども、今のご期待に沿えるように頑張っていきたいと思います。ありがとうございます。

委員
 簡単に質問をしたいと思います。北九州の例、今紹介があったように非常に発達しているという感じですけれども。同じような例がピッツバーグに鉄鋼の都市からよみがえったというのがありますね。今施策を聞きますと市が600億円用意したと、用地とかいろいろそういうので、それで年間25億ですか。これはいわゆる持ち出しの部分といいますか支援の部分であって、いつごろ経済的にも自立できるのかというイメージを持っているのかということ。ピッツバーグの場合はいわゆる今までの鉄鋼産業と違うものを起こしてきたと。それからベンチャーを持っていった。今回の場合は、自動車というのは非常に現実的なんですけれども、ある面ではもう既に成熟に近いところかなという気もします。だから、テーマ自体がやはりもう少し長期的なものも将来的には必要かなと。幾つかの研究会があるんですけれども、そういったところの出口イメージとか、先ほどもあったように、マネージングをどうされるのかがキーポイントになるかなと思いますけれども。お考えを伺えればと思います。

説明者
 後段の将来的な展開という点でございますけれども、私ども今回いろいろ取り組むに当たって、例えば車という現実的な話ではございますが、実は産業界のニーズを受けると同時に、並行しながらやはりフューチャープロジェクト、これに関して取り組もうということをやってございます。これはバイの関係ではなくてみんながグルーピングになって。1つの、これはまだアイデア段階でございますが、学研都市全体をトップという形の中で今から車の通信が社会インフラとの間の中でやっていきます。そういったところに実際に町中の車という位置づけですね、そういったものを図っていくとか。非常に産業界ではまだ取り組めないようなそういったできるだけ10年先、20年先を見すえたプロジェクトというものを同時並行としてやっていく考えです。それから、私どもいつ我々がお金を出さなくて済むのかというところでございますが、これは私の私見でございます。いつまでに自立しなければならないというところに追い込んでいくと逆に非常に縮こまった動きになってしまうのではないかと思ってございます。これは私どもの数十億という単位の投資というのは将来にわたっての北九州の基盤でございます。そこが形づくられる、そういったところを見通すまでは私どもは投資をしていく、それだけの価値はあるのではないかというふうに考えております。当然彼らにも自助努力というものは求めてはまいりますが、やはり北九州の将来を期待しているという分野もございますので、余り縮こまらないような枠の中で絞っていきたいなと思ってございます。

委員
 私ども理研も神戸であるとか和光とか地域クラスターに貢献しようということでやっております。地域産業を活性化するためには表と裏の手当てが必要と思います。表の面では、今日のお話のような大学と企業との様々な連携や国のプロジェクト等、テーマ毎に何をやって何をやってとこれは非常に大事だと思います。同時に裏の面としてその地域に集まって来た人たちに焦点を当てた手当てが重要です。各種のプロジェクトは、従来のように終身雇用ではない場合が多いので、転職も含めてこの地域に来れば職の心配はないんだといった環境作りです。それは必ずしもキャリアサポートとか就職斡旋だけではなくて、コミュニティ作りです。例えば昔で言えば飲み屋かも知れませんが、今ならフィットネスクラブだとかあるいは働く女性のための保育園であるとか、そういったようなコミュニティの施設を通じて、人の出会い触れ合いを増やして、ここでたまたま私は大学に勤めている、私は企業にいるという人たちが、そういうトップダウンの国の事業だとかトップダウンのお金だけではなくて、ボトムアップ、草の根のところで、あれ、お宅の会社に最近そういう職を求めているんですかとか、うちの亭主はそろそろ首になりそうよとかそういう会話ができる場をやはり自治体が積極的にプロモートしていただくことがないと、全部何か大きなプロジェクトが来て、企業も景気がよければ投資みたいなことだけでいってしまうと、なかなかその地域が育たないんじゃないかと思いますので。ぜひ自治体の方にはそういうコミュニティづくりの方も目配りいただきたいと思います。

2.「休耕田を利用したホンモロコ養殖」

主査
 これはどういう田んぼでもできるんですか。

説明者
 平野部は無理です。山間地なんです。なぜかといいますと、平野部の水田地帯は8月末から9月になると水路に水がなくなるんです。水を落としますから。そうすると、1年中水があるというのは中山間地の山からの下がり水が1年中少しずつでいいから流れているところということで、結局谷間です。

主査
 水が流れてないと魚が生きてられないということですね。

説明者
 はい。

主査
 なるほど。何かほかにご質問等ございますか。

委員
 1つだけ。こういうようなことを始めた結果、いわゆる大学に入学してくる学生に何か変化が出ましたか。あるいは水産学科。

説明者
 2年前だったか、推薦入学がありますね、推薦入学を受けに来た学生が面接でこのホンモロコの話をした学生がおったというのは聞いてます。それは受からんがためにインターネットで調べて言ってるんだと思うんですが、そういうのが1例僕は聞いてます。あと入学にどうとかこうとかというのは聞いてません。

主査
 お二方、今日ご一緒に見えてるんですが、何かコメント、つけ加えることございませんか。よろしいですか。

説明者
 私も3年前まで県の職員であったんですが、やはり小さな過疎県、農業県で休耕田の問題って非常に大きな問題になってます。高齢化の問題。これが中山間地でこのホンモロコをやれば、お金がもうかるという話ではないんですけれども、水田の保全管理、それから高齢者の生きがい対策。それから、収穫時期になりますと過疎というか集落から出ておった息子やあるいは孫が収穫作業を手伝いに帰ってくるという意味で、都市と農村の触れ合いということにもなっております。生産額がどうのこうのというような話ではないんですけれども、地域を守っていくという意味では非常にユニークな事業だというふうに我々は思っておりまして、これが地方大学あるいは農村地域に存在する地方大学の1つの生き残り戦略ではないかなというふうに、産学官連携というよりも私は地域貢献ということでこの事業を応援しているところでございます。

委員
 大変失礼ですけれども、これは今珍味というか珍しいからということで高く売れると思うんですけれども、これどんどん広がっていったら当然値崩れというか安くなってくると思うんですが。今、お米よりも2.5倍だから非常にいいけれども、安くなるというジレンマがありますよね。だから、ビジネスモデルとしてはどうなるんですかね、鳥取県としては余りやり過ぎると。そういう話じゃない。

説明者
 その話なんですけれども、これ非常に甘味があって骨が柔らかくて非常においしいんですよ。食べさせるとみんなおいしいと言うんですよ。それで、これをインターネットでネット販売してみたんですよ。まず引っかかってきません。

委員
 だから、まだまだ販路は広がるということですね。

説明者
 引っかかってこないということは、結局シンポジウムを企画したことがもうそれなんですよ。全国にホンモロコという名前を知らしめることがまず一番と。そういうことからいくと、岡山県で今年8件増えました、鳥取県じゃなしに。それから、島根県でも1人、それから新潟でも1人やりたいという人が出てきまして。去年新潟でやったらもう収穫して1週間で全部完売したということです。だから、まだまだです、これは。先日も、ちょっとメーカーの名前言いませんけれども、食品会社が佃煮にしたいということで、生産高はなんぼあるんだとか食品会社の部長さんが鳥取県に視察に来ました。そういうことで、販路はあります。

主査
 多分需要を当分は満たさないぐらいなんだろうな。

委員
 私も大変独創的な着眼点というかすばらしいお仕事だなと思ったんですが。モロコと言えば琵琶湖ですよね、有名ですからもっともっと生産しても大丈夫だとは思うんですが。むしろこの独創性を主張する意味で、鳥取モロコとか隼モロコとかいって全国にさきがけたんだと、そういうことでブランド戦略でおやりになったら。今地域ブランドの時代ですから。

説明者
 それその佃煮、八頭郡ですからヤズッコと名前を。そういうふうに考えています。

委員
 地域活性化の、産学連携という点では非常にすばらしい例だと思いますね。

(2)今後の大学等における産学官連携活動の推進施策についての審議

 事務局より資料4‐1、4‐2、5、6に基づき説明があり、委員による自由討議が行われた。その内容は以下のとおり。

委員
 1つ。3ページの3.の新たな展開の方向で、提案ですけれども。必要ということがたくさん書いてあるのですけれども、重要な事項をメジャラブル(計測可能)にするにはどうしたらいいかまで掘り下げる必要があると思います。例えば一番私気になっていますのは、2つ目の○(まる)の産学官が相互の立場を理解、尊重した上で対話、これは当たり前の話ですけれども、これが実現されるには何をメジャラブル(計測可能)にするかというところまで掘り下げないと念仏になってしまう。つまり、ジレンマがあるわけです。今日の事例発表のように、産業側が迫れば迫るほど大学の方は短期的な話に対応せざるを得なくなってきているわけです。一方ではやはり持続的なイノベーションといったらやはり基礎研究をきちっとやっていくのだと、そこに裏づけの競争的資金は何かというと科研費とかいろいろな。そういう戦略的・組織的な連携によってのこのあたりを具体的にどういうふうな組立でマネジメントされたか、されないかということをメジャラブル(計測可能)にしていく作業が必要です。このまとめの段階でできなかったら次への課題としてでもメモしておくことが必要だと思います。この指摘点はこの2つ目の○(まる)だけではなく、全体的にそう感じたのですけれども、特に私としては持続的なイノベーション能力という面を達成するための施策としてはこの2番目の○(まる)が非常に大事だなと思ってピックアップしました。

主査
 何か事務局。

事務局
 資料4‐2の本文の方でございますとそれは10ページのところが該当する記述でございまして。さらにまた先生方のご審議も賜ってもっとより具体的な方策が書ければとは思いますが。9行目のあたりでございますが、まず企業等において明確なニーズと研究開発戦略、商品化プラン、マーケティング等の中長期的なビジョンをもって大学等へのアプローチを行っていただくということを1つの具体的な考え方としてはご提示いただきましたので、またご審議を賜って何か得ることはできるかと思います。

委員
 今、事務局の回答で骨子案に比べまして詳細な報告は2.5倍ぐらいになっておりますので、多少補強してご理解、把握いただければと思います。
 それで、今指摘ありました詳細な報告書の10ページのところにご指摘の点、多少敷衍して報告してありますが。多少補足しますと、このご指摘いただきました問題は小委員会でも大変重要な議論がありました。すなわち、大学の機能、役割あるいは本質的なものをしっかりと、すべて共通ではないにしても、整理した上で、産学の連携を考えていくべきだと。抽象論的にはそういうことでございます。しからば大学の機能、役割というものが一律に論じられるかというとそうでもなくて、結局テーマごとに違うかもしれないしということで非常に悩みの多いところでございまして。詳細な報告の10ページのところに多少その辺が敷衍して報告してある状況でございます。非常に重要なご指摘ですので、回答も抽象的で申しわけございませんけれども。何か小委員会の副主査、松重先生、何かコメントございますか。

委員
 今、副主査が説明されたとおりで、小委員会でまさにそのところ議論しました。やはり、これはケースバイケースもありますし、それから分野ですね、これ例えば医学、薬学領域の分野であるとか、それから非常に近い分野であるとか、これによっても違うと。それを実質化するといいますか実行化するというのがまさに今問われていることで。これも単に唯一の回答ではなくて、我々も議論がなかなかまとまらなかったんですけれども、やはりその大学に応じて企業との連携の中で考えていこうと。そういったものを重要な視点として取り上げたということで。まだちょっと具体的に今はまだ落とし込めていないところなのかと思いますけれども。

委員
 今の議論に関連して前にもこういう席で申し上げたことあるんですけれども、産学連携が進展しているかどうかというと必ず出てくるのが共同研究の件数とか共同研究によって得ている大学の資金の額とかという指標です。日本の戦後の高度成長の中で次第に産学というものの間に距離ができてしまったことに対して、当面は産と学が共同研究みたいな格好でという目の向け方は非常に重要だと思うんですけれども、お互いを知り合った次のステップは、学は学の価値、産は産の価値を認め合った産学連携へと進むことが重要だと思います。共同研究というのは1つの目的に両方が力を合わせるというニュアンスが非常に強いんですね。そうすると、すぐ出てくることは、企業側のニーズに対して大学側が分担して何か協力をするという、それはそれで重要なことなんですけれども、産学連携はそれがすべてではない。私ども理研は基礎研究ですので、もちろん企業との共同研究が生まれればすばらしいんですが、むしろ交流研究というか、基礎研究をやっていることに企業が価値を認めて付き合いたいと言って寄ってくるし、寄ってこられた企業の方の話を聞いてみると、何、企業ってそういうことを一生懸命やってるの、ということをまた知ることが研究者の側にも役に立つという連携が重要と考えています。そういうことの価値をお互いにもう少し認め合えるような活動を次の段階では産学連携で追求しないとやはりどこかで無理がくると思います。先日も、大手製薬会社の会長から、理研は薬のことなんか考えなくていいよと、ノーベル賞を取ってくれよとこういうお話がありました。それは、追求すべきもの、価値の尺度は、サイエンスというのはやはり発見することであり、新しい現象を見つけることであり、イノベーションというのは今度はつくること。だから、その交流をどれだけ活発にするかという方向をだんだんうたっていく必要があるんじゃないかなと思います。今まで余りつき合いがなかったから、お互いがまだお互いの力とか価値観が理解できないが、もう少しつき合いが深まったらむしろ違うことをやっているからつき合おうよというフェーズに入ったらいいんじゃないかなと思います。

委員
 私は9年間ほどこの産学連携というのに携わってきて、ちょうど今年3月で離れました。やってるときから、自分達が課題として感じていることと議論されていることと随分しっくりしないことがいろいろありました。この産学官連携のどこに重点を置くかは組織や人によって随分違うんです。産学連携の上流部分といいますか前半部分は研究に関するところであり、下流部分が出てきた研究成果をさらに発展させる、うまくいけば実用化するところです。単純に言えば2つの視点によって分けることができる。
 最初のフェーズのところは今、武田先生もおっしゃいましたように、新しいものをつくり出すためにはどうやってやったらいいか、共同研究とかコンソーシアムの在り方はどうするのか。大企業でやる場合と中小企業でやる場合と違う、分野によっても違う。一方、生まれた研究成果を基に、それを発展させるには、どうやってそれを支援するのか、ライセンスで行くのか、共同研究か、ベンチャーで支援をやるか、いろいろあると思います。何か産学連携と一言ですべてを言ってしまっているので、ときとして議論がかみ合わないところも出てきているような感じに受けています。今ここでの議論でも最初の研究のところに焦点を当てた議論と、後の方の議論といろいろありますので、単純に、フェーズごとに分け、それぞれのフェーズで課題を整理するともうちょっと問題がすっきりしますし、総花的でなく、今何にウェイトを置くべきかということがはっきりしてくると感じます。

委員
 私ども非常に注目しているのは、理研の共同研究、産学連携、これ非常にうまくいっているんですね。ただ残念ながら、まだライフサイエンスでは余り実績が出ていないと。でも、ほかの分野では非常にうまくいっているというので、今日ちょっとご紹介がなかったのが残念かなと思いますけれども。一度やり方というのはこのプロジェクトというかこのチームでも考えてみるべきではないかなというふうに思います。本題に戻りますけれども、1つ非常に小さいことですが、逆に意味は大きいのでございますけれども。まず1番の我が国の産学連携の戦略的な展開云々というところ。一番最後の○(まる)のところ、「その際、産学官が連携して知財リーダーの育成に一層取り組むことが必要である。」と。それから本番の方にも同じような表現が最後に記されております、4ページにされておりますが。前の委員会でも言いましたし本日の北九州地区のところでも非常にうまくいっていると。それは柘植先生も質問されましたけれども、人材の育成と同時に確保ですね。その人材がきちっと本当に安心してやっていけるか。本当に日本としてその人材を確保できるかが大事なので、どうも育成育成に走らないで、確保という言葉を入れていただきたいと思います。中には入っているところもあるんです。だから、育成というだけのところと育成・確保というのがどうも統一されていないので、確保というのをぜひ入れてほしい。逆に言えば、私も以前乱暴なことを言いましたけれども、本当に確保できて自分のやりたいことができていいポジションがあり、収入もよければ育成しなくてもどんどん外国からもどこからも集まるし、みんなその領域で研鑽していこうと思うわけなので。やはり確保という言葉をぜひ、日本として確保するという言葉を全体のトーンとして統一していただきたいなということが1つあります。
 それからもう1点は、ライフサイエンスのこと等非常によく言っていただいているんですが、それと同時に大学の産学連携のことも非常に大事なんですが。要するにさっきご質問のあった、どうしても出願件数とか契約件数など、数字に走ってしまうんですね。でも、これはやはり質というものが非常に大事だし、その質というものがサイテーションであるのか。基盤技術であれば、基盤的な研究であれば皆さんが使ってくれる、認容してくれるというサイテーションが大事なのか、あるいは本当に1つの研究でも飛び抜けた実施料なり研究費をとれるというようなそういうものなのか。質というものをどうやって評価するのかは別としても、ただ件数と実施料収入だけでの統計をとってしまうとどうしてもうまくいかないんじゃないかなと。場合によってはティピカルなものを1つ、2つでもいいですが、こういうものがあるんだよというような例示をつくられたらいいのではないかと思います。
 それから、3番目でございますけれども、これは7ページの4.の国の支援の在り方というところがございまして、2つ目の○(まる)の最後の方に、「我が国の国際競争力の強化のためにも不可欠。」知財人材ですね。それから、「国としも、各大学等における特色ある多様な取組を積極的に支援すべき」である、というときに、これも先ほどの問題とちょっと関係するんですが。やはりどういうものが基盤研究であり、イノベーションにつながるかという評価があって、それについてめりはりをつけたような国のサポートというものがどうしても必要になるのではないかと思います。そうしないとどうしても数字で総花的で動いてしまうんです。どうもその辺がちょっと全体を考えてしまうと不明確だなと。特にライフサイエンスみたいにロングスパンで物事が動いている場合についても、どこに国としてサポートしていくんだということも大事でしょうし、それから例えば大学のTLO、ベンチャー等を考えても、先ほど武田委員の言われた製薬会社会長の話ですが、薬なんてやってくれなくてもいいけれども、本当にプラットフォーム技術をやってくれということが多分これは本音だろうと思いますね。だから、この前もちょっと例を出したかもしれませんが、出願件数、論文件数が多くてもちっとも産業に結びついてないような分野、ノーベル賞をもらったようなRNAiというような技術をやっている大学もあります。そういう意味ではやはり質であるとか、どういうところをサポートするのか、これを考えていかなきゃいけない。
 もう1点、ライフサイエンスの場合特にお願いしておきたいのは、ここには書いてございませんが、やはりそれに研究費を投資する、あるいは研究をしてもらうということについてお金であろうと、研究成果であろうと、国なり国民の意識をまず改革してもらいたい。なぜかというと、これもご存じのように、アメリカにVIO、バイオインダストリーオーガナイゼーションというのがあって、これは非常にベンチャーの千何百社、2,000社ぐらい入っております。黒字は数社です。ということは、成功確率は零点一、二プロ、二、三プロです。そういうところにライフサイエンスの基盤研究があり、実際に花を結ぶときにはそのぐらいの確率しかいかないんだということをきちっと研究費を投資する場合、それから国民の皆さんが考える場合、その意識というものを、特に産業分野、ライフサイエンスではお考えいただかないと、これは大きな間違いになる。
 そうしないと共同研究、研究費はすべて外国の方にいってしまう。そういうところでやはり夢を追っていくというような感じになると思うので。この辺のところもやはりきちっと書くというかご認識されたような形の方がいいのではないか、というふうに思います。以上です。

主査
 はい、ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。どうぞ。

委員
 資料4‐1、4‐2の表題について少し違和感がありますので述べさせていただきます。2の(3)および3の(3)では「ライフサイエンス分野等」と書いてあり、この節はライフサイエンス分野に関する記述が主体のように感じられますが、実際の内容はライフサイエンスだけではなくて有体物およびソフトウェアなど他の分野に関する事項も多くの記述があります。このままだとライフサイエンスしか書いていないような感じがどうしてもするので表題を変えて頂きたい、というのが私のお願いです。

主査
 (3)の表題ということですね。

委員
 そうです。2の(3)および3の(3)の表題です。私もこの場ですぐに良い案を提案できないのですが。

主査
 要するに(3)の内容はいろいろもっと広く含んでいるということですね。

委員
 そうです。

主査
 では、それはちょっと考えて。

委員
 今回から初めて入れていただきまして、ライフサイエンス系の基礎をやっている遺伝学研究所というところにおりますのでちょっととんちんかんなことを言うかもしれませんが。先ほどから話題になっていますけれども、ライフサイエンスのことが(3)に入っていますよね。その中で今ちょっとお話がありましたけれども、有体物のことが入っています。特にこれ管理強化をしようということで、これはある意味では当然なんですけれども。先ほどお話がありました中ではRNAiというようなことは実は本当に基礎の基礎から出ておりまして、実はそれは有体物を本当に自由にやりとりするという風土から出ているんですね。これはまあ古き美しい時代の産物とも言えるんですけれども、これ余り強化をしますと程度問題というのがありまして、アメリカでもそうですけれども、一時非常に強化されまして、それを追って日本も強化しているわけですけれども。さらに法人になって大学の持ち物であることで、そのやりとりが非常に困難になっている場合もございます。これはそうすべきものもありますし、そうするとかえって基礎研究、まさにイノベーションの原泉であるところを枯らしてしまうこともあるんですね。そこら辺をちょっと、これは行け行けドンドンで管理強化すべきとそれは当然なんですけれども、少しそれはものによってあるいは研究段階によって、分野によって違うということもちょっと触れないと片手落ちになるのではないかというふうに感じました。ライフサイエンスのところでありますけれども。そこら辺は何か、書きようが難しいと思うんですけれども、ぜひお願いしたいと思います。

委員
 今のお話に関連しまして、総合科学技術会議のリサーチツールのところで2つガイドラインが出ていますから、むしろその辺を踏まえて、特に上流というかそういう非常にアイステージな研究のところについてはやはりそういう研究を活性化するというような形で考えられたらいかがかと思います。

主査
 ここで基準を議論するわけじゃないんだけれども、そういうようなことをちょっと文言に考慮すべきことを少し精密に書いて。ほかにはいかがでしょうか。

委員
 審議のまとめの中身を今さらどうということではないんですけれども、日本の科学技術のかなりの投資がライフサイエンスという分野に投じられているということとイノベーション創生ということとを大きく見すえると、非常に気になることがあります。ライフサイエンスが基礎科学としてどんどん進んでいった結果、イノベーションに結びついて世の中の役に立つのは薬とか医療であるというトーンが非常に強いことです。薬や医療の革新に結びつけることは、非常に重要なことですが、ライフサイエンスの進展がもたらすイノベーションのポテンシャルは、例えば今日、本当にいい例が出たと思うんですが、養殖魚という水産の話ですね。あの中には環境の中における生態系の話とかいろいろ出ているんですね。実はライフサイエンスは、農業とか水産業とか林業とかいう分野に大きな革新を生む可能性を持っている訳です、日本が自国の中でお米をつくるための農業ではなくて、今後砂漠の上で収量をあげるとか地球温暖化にどう関係するかということも含めてイノベーションを生み出す。エネルギーもこれからは生物資源からつくろうとしているわけですね。こういう時代になっているからこそ各国はライフサイエンスというのを戦略分野だと思って研究をし、イノベーションをうたっている。ここの席でもよく申し上げましたが、日本ではすぐイノベーションというと工業製品、電気製品とかIT最後には医薬品とかへ結びつくようなイメージが非常に強いんですね。これはどちらかという、後ろ向きとは言いませんが、現状頑張ろうというのに近くて、未来の先取りになってないんじゃないかと思います。
 特に日本は資源がないから技術創造立国を目指すと言いますが、確かに石油を始め天然資源はありません。しかし、これは20世紀の視点で、21世紀にライフサイエンスの研究がものすごく進、むと、先程の秋元委員のお話のRNAiじゃありませんが、多様な生物の膨大なデータやモデル生物のバイオリソースを持つと、生物資源大国になります。他国でこれからバイオを使った何か植物をやって、そこからエネルギーを出そうといったときに、日本の知識と、パテントとなるかどうかわかりませんけれども、リソースがないと画期的なそういう植物がつくれない。現実に穀物メジャーなんかオイルメジャーと同じようにそういうことで動いているわけです。ですから、何か日本では産業というといまだに工業製品のところにばっかり目を向けて、そこへ結びつかなきゃいうというのですけれども、そこの窓をもうちょっと開いていただいて、文部科学省ですから出口は農水省でもどこでもいいと思うんですよね。何かその辺も少し産学官連携でも、大学でもそうですよね、別に工学部だけではないわけですから。ぜひそのライフサイエンスという視点から見たときにも出口は実はものすごく広いんだと。そのイマジネーションが欠けていると、日本はまたまたいい研究をしていたんだけれども、おいしいところはみんな賢い他国に取られちゃうと。ちょっと余計なことかもしれませんけれども、全般に議論がものづくりということも大事なんですけれども、そっちへ戻っちゃっている。なぜこんなにライフサイエンスに研究投資しているんだという点の認識が弱い感じがするんですが。

主査
 どこかのファンディングの在り方にも関係しているような気もするけれども。

委員
 このまとめの全体に対してなんですが、あと柘植さんのおっしゃったことの持続的なというところがかなりポイントだと思うんです。知的財産整備事業が19年度で終って、その先にどうつなげていくかというのが一番のキーポイントであって、それに対するこれまとめであるべきなわけですね。そのときに、これがこの先も持続的にどうつながっていくかというのを具体的な施策としてまとめていく必要があるのではないかというふうに思います。その点を、メジャーを、とおっしゃるんですが、ほかの方のご意見の中にも多様性ということを維持していくことがどうしても必要で、多様性を維持していくというものに対してメジャーをどう持ち込むかというのは非常にものすごく難しいので、そこは大変工夫がいるのではないかと思います。例えば基礎と応用をどうするんだという話、それを例えばパーセントで指示するなんてばかげた話であって。あと、先ほどの議論で大学も基礎をやれというんですが、東京大学は私が産学連携を担当していた期間中、東京大学が基礎を捨てるとは一切言ったことはありませんと何回も申し上げているんですが、企業の方は大学はもっと基礎をちゃんとやってくださいとおっしゃるんです。我々基礎を捨てるとは一回も言ってないのになぜそういうふうに誤解なさるのかというところもあります。企業のトップの方が基礎をやるべきだとおっしゃっている企業に限って知財部の人はもっとうちの言うことをやれというふうに議論して。そこいらは、ちょっとどうすればいいかという案もなしに発言するのはちょっと失礼なんですが。多様性、ケースバイケース、こういったものをうまく広めていくというのをどうやって政策誘導、施策誘導していくかということだと思うんですね。
 1つ光明が見えるのは、私のところですとプロポリス21といって企業といろいろな話し合いをして、ケースバイケースをちゃんと吟味した上で、その吟味した内容に合った形の共同研究をやりましょうというのを始めたんです。それから、京都大学はコンソーシアムなんかもやっているし、あと九州大学は今日小寺山先生いらっしゃいませんが、それなりの組織連携をしている。こういったものをエンカレッジすることではないかというふうに思うんですね。その全国的にやっているのが文部科学省がやっている産学共同シーズイノベーション化事業で、これをもう少し理念的にもっと推薦すべきなんですね。顕在化ステージというのが百何件あって、この中でどういうマッチングをとり、どういうプランニングをし、話し合いをしていくかが実は最も重要で。そこでどういう吟味をするかというのを我々が経験的に習得していくのがいろいろな多様性を維持したものを持続的にどうするかというところにつながるんだと思うんです。柘植さんのおっしゃるメジャーというのをどうするかというのだけが何かアイデアがなくて困っているんですが。

委員
 私は石川先生と基本的に産学連携のコンセプトは全く同じものを持っていると思います。さっき私はメジャー(物差し)ではなく、メジャラブル(計測可能)と言ったんですが。メジャラブル、ちょっと別な言い方をすると企業で言うと「見える化」するということです。産学連携を「見える化」したときに、産業側から見るとAプロジェクトがうまくいってどうだという話になるのですけれども、大学からしてみたらそれをうまくこなしながらもう、石川先生おっしゃるように、大学の本来のものの見方にもう一回バックトゥーサイエンスも含めてこうなっていますよと、そういうことを「見える化」してもらえば今の問題に対してかなり安心します。
 それは先ほどの清水先生がおっしゃったのかな、各フェーズごとに分けて議論したら良いのではないかということとも同じだと思います。バックトゥーサイエンスに戻ってここまで、これはもう10年先のお話で科研費の世界に戻ってやっていますよと。同時に、プロジェクトとしては短期的にはこういうことをしましたということを、「見える化」する。メジャー(物差し)を出せというのではなくて、そういうことを私言ったつもりです。
 もう1つだけ加えると、人材育成の話で、私は人材育成の方の委員会の方も主査しているもので。特にドクターの間の3年間、人材育成の修行の場として産学連携のスキームがものすごく役に立つと思います。私自身もかつて課程ドクターでそういうことを体験してきた。1ページの基本的な考え方の中に高等教育における産学連携の役割が産学連携の基本的な考え方の中での位置づけがちょっと薄いと思います。
 それから特に3ページでは、例えば3ページの下に国際的に通用する知財人材の育成という中で、ポスドクを活用していく、これは非常に大事なもので知財問題の場でも議論されていると思ます。高等教育を受けている間、特にドクター3年間の間の知財をOJT的に1つのケースでも携わるか携わらないかによってものすごくドクターが後で産業にいったときの素養が違うのです。修士を出た学生は企業に入った途端に知的財産で徹底的に教育されるに対して、課程ドクターの間に3年間全く無菌培養されてしまっている。これは本当に問題です。せっかく産学連携の中で知的財産というものがされているわけですから、そこにポスドクではなくてドクターの課程の中で学生が知的財産問題にエクスポーズ(曝される)されるようなOJT的な教育、これをぜひ3ページのところでも私は触れるべきではないかと思います。いかがなものでしょうかね。

委員
 さっき私が申し上げたかったことは石川先生が代わりに言ってくださったので。これを受け入れる各大学の立場ですと、じゃあ第2フェーズ、知財本部は一体何に焦点置いているのか、ちょっとそういう意味で、やはりめりはりをもうちょっとつけていただいた方が良いのではないかと言いたかったんです。これは石川先生が言ってくださった。
 ただ1つ、ここには力のある秋元委員がおられまして、ライフサイエンスの問題はその重要性が明確に指摘されています。しかし、ITも日本は今、ものすごく弱いと思うんです。グーグルにしてもヤフーにしてもアマゾンにしてもみんなすべて向こうの企業であり、日本のネット企業の影は薄いです。ITにも重点を置いていかなきゃいけない。ITは、柘植先生からお話ありましたように、ビジネスモデルとうまく組み合わせていく事が大事であり、そういう人材をつくっていかないと知財を生かしていけないわけです。人材というのは、当然知財人材ということでさんざん言われていますけれども、もう少し融合した広い意味での人材という形でくくっていただくといいと思います。また、ITに関しては単にソフトウェアの管理云々しか書いてないので、例えばITもライフサイエンスと並んでやはり重点を置いていただきたいと思います。

委員
 非常にこの審議のまとめ、いろいろな論点拾って非常にすばらしくまとまっていると思うんですが。戦略的な展開ということで1つの区切りになるまとめだと思う。ちょっと過去を振り返ってみると、私はTLOをつくる委員会のところから議論には参加していますけれども、当時から議論があってこの中にないのというと、例えば最初のころは税金の問題なんかも議論しているんですよね。例えばTLOとかそういう組織をどうやったら非課税法人にできないのかとかそういう議論も実はあったりしたんですね。それからあと、エクイティのハンドリングの問題で、対価としてのエクイティ、そういったものを管理する仕組みをどうやったらつくれるか、そういう議論がある。それから、もう武田委員からもご指摘ありましたけれども、最初は種苗法どうしようかという議論もあったんです。実は農水省が外れていた関係でこれ入らなかったんですけれども。種苗法とか水産系の技術をどうしようか、そういう議論も実はあったんですね。
 だから、そういうものは実はこの中には却って見通しとしては抜けている気がするんですが。それぞれ非常に難しい部分があって、かなり戦略的という意味で、今後将来本当によく研究していかなければならないという気がします。
 将来に向けてというと、これは非常によく論点としては全部網羅されていると思うんですが、これ本当に戦略的かというとちょっと疑問が残るんですよね。言い方はちょっと悪いですけれども、いずれも今まで議論されてきて、もう十分議論されてきていることをリスト化しているという感じがします。アメリカの例をとれば、やはりバイドールにしても何にしても、ヤングレポートやその前のカーター大統領のときもそうですけれども、非常に委員会ですごい戦略的なドラスティックな展開をつくっていったというのがありますね。それに匹敵するものがここにアイテムとしてあるかというと若干欠けているかなと。私がそういうことを今ここで何か言えるかというとなかなか言えないんですが。ちょっと席上つらつら考えていたところでは、例えば最近知的クラスターの申請なんか見ても思うんですが、大学間連携って結構重要だと思うんですよね、地域における。実はこの九州なんかでも考えられていますし、四国は既に大学連携走っていますけれども、もっと大学間連携のことは進めていいと思いますよね。University of Californiaみたいな形の大学間連携もありますし、あるいはもっと別の形の連携もある。そういうのをどんどん進めていってほしい。それから、もっとドラスティックに言うと、例えば人材であれば海外に行って活躍している日本人の産学連携系、テックトランスファー系の人材は結構いるんですよね。そういう人をどんどん、中国政府がやっているあれじゃないんですけれどもね、どんどん呼び寄せて日本に帰ってきてもらって、ポジションを与えてどんどん活躍してもらうとか、そういうのもやったらおもしろいかなという気がしますね。例えば私の友人でカリフォルニアにいるベンチャーキャピタリストは、もう日本には帰りたくないと。日本に帰ったってどうせ上場しにくいし、やりにくいし、もう日本へは帰らんと言っているわけです。そういうのを首に縄つけて引っ張ってきて、お前、日本でやってみろと、日本を変えてみろと。何かそういうことをやると人材も随分変わるんじゃないかなという気がしますよね。それから、人材においては秋元委員の意見と私同じなんですけれども、どんなにいい人材を育成しても、どんどん本当に最近はトップ人材というのはアメリカのグーグルやらが、みんな引き抜いてもっていっちゃいます。やはり人材育成したものをどうやって日本の企業や大学に定着させるのか、そういう手法が極めて重要だと思うんですね。育成するだけだと多分抜かれて持っていっちゃう気がします。最後に、これはちょっと武田委員の意見とは反対になっちゃうかもしれませんけれども、日本の大学ってまだ当事者性が若干薄いんですよね。要するに一法人として社会の中で生きていく当事者性が。私は弁護士なので契約的な面からよく見るとそうなんですけれども。それはアカデミアとしては非常にすぐれているところもあるんですが、反面、もう少し一社会的存在としての当事者性をつくった方がいいと。つまり、これを言うと語弊あるかもしれないけれども、やはり研究者の方が最後教授会でいろいろな仕組みを通してマネジメントしていくだけじゃなくて、本当にやはりマネジメントのプロが大学を経営して、その人たちがしっかりした部下を使って知財戦略をやっていく。あるいはテックトラスファー戦略をやっていくという仕組みがなければ、やはりいつでも人が変わればどんどん戦略も変わりますし継続性もないですし。本当に社会的な当事者性が薄いのではないかなという気がしますね。だから、産学における問題というのは結局どんどん進んでいくと最後は大学の在り方、大学改革にも進むんじゃないかなという気もします。以上です。

主査
 非常に悲観的意見も出ましたけれども。(笑)それも盛り込んでいただかなきゃいけないんだけれども、どういうふうに盛り込むか。何かカウンターの意見はございますでしょうか。

委員
 今までの議論もそうなんですけれども、こと報告書というかこれの位置づけなんですけれども。つまりもっと科学技術とか大学の在り方まで問うのであればもうちょっと本格的な議論が必要かもしれませんね。産学官という形でイノベーションという形であればもうちょっと今日の意見も含めてちょっと深堀りがつけ加えられるかなと。
 その1つの視点は、今日も事例があったんですで、地域の振興というのですね。あれは自治体が出されているんですけれども、これを国が出すというか、国の予算全部国から少額というよりも地域に分散すると。地域の状況に応じて、例えば先ほど鳥取大学とかそういうもの、お金はそんなになくてもかなり影響力があるような、それはいろいろ多様性の1つだと思うんですね。それからもう1つは、大学の在り方で基礎基礎と言われるんですけれども、決して、我々もそうですけれども、それを話しているわけではない。むしろちょっとカウンターパートで、企業の在り方の、企業のR&Dの在り方も、日本として本当にキャッチアップの時代と違うんだというところの認識があるのかどうか。つまり、大学に期待されているのが技術的なものだけじゃなくて、本当に喜ばれるのは企業の中でできないような視点であるとかそういったところなんですね。だから、それが出てくるようないわゆる武田委員が言われた交流の場とかそういったもの、それからあと人材、これはそんなにいらないと思うんですが、そういうふうなコーディネーションの機能をもっと強化すれば実質的なものがあがるだろうと。それから、大学との共同研究の事例が数年前は包括連携という形でいろいろな大学が数字は出したんですけれども、それの実質はどうなのか、これの検証も必要なんです。つまり、いい事例をやはり抽出して、それを伸ばすことが非常に有効的になるのではないかなと思います。そういった面からすると、やはり産業構造とか、いろいろ関わっているので、やはりもう少し深堀りは必要なんですけれども、現時点でこの報告書の位置づけが来年度に向けてなのか、これからの5年、10年なのかとちょっと私も理解できていないんですけれども、その中間的な位置づけであれば、先ほど言われたところの視点も含めてまとめることになるのではないかなと思っています。

委員
 全体の報告書の中で戦略という言葉をかなり使うようになったというのが今の位置づけをあらわしていると理解をしています。今まではやはり産学連携と知財の問題について、今の問題に対応してきたわけだけれども、それがあるレベルに達して戦略ということによって、多様性という言葉で代表されるようないろいろな価値観の議論の中でこれからの方向性をはっきりさせないといけないというところに至ったんだと思います。例えば、本当にそういう議論をするのであれば大学と企業との関係に最もこれから影響する長期的な環境の変化というのはやはり少子高齢化だと思います。そもそも学生がいなくなるわけで。働き手がいなくなると。そういうことを考えると、例えばそういうところから出てくる戦略というのは何かというと、先ほど北九州の事例でありましたけれども、外国人留学生が来るような環境をつくって、その人たちが日本の産業にどうやって貢献できるようにするかということもやはり産学連携の話題です。実を言うとそういうことは今まで余り、議論されてきていない。これ非常に難しい問題がありまして、不正競争防止法など今強化をしている中で、留学生の問題、それを産学連携にどうやって生かしていくか。1つは産学連携はもともと技術を移転するだとか共同研究のポイントだとかそういう「点」的なものからだんだん人材育成だとか多面的なもの、多様性という言葉はあるんですけれども、もう1つは「多面的」になってきているということで、そのことによって戦略的なことを考えないといけない段階に達しているというふうに思います。
 ただ、今回の報告書に関してはちょっとそこの手前で、そういうポイントに達してきているということの中で多様性という言葉で評価のいろいろなものをつくって底上げをしていこうということであると思いますので、それはこのレベルで私はいいと思います。今後そういうようなことも含めて少し長期的なことを俯瞰して産学連携も考えていくステージに入っているのではないか、というふうに私自身は理解いたします。

委員
 今日はじっくり聞かせていただこうと思って来たんですけれども。産学連携、私は全体としていいまとまりを見せてきたなと思っているんです。何年か前から京都の産学連携会議なんかの足跡を見てみますと、ここに事例集がありますけれども、かなり年を追って変わってきているな、進歩してきているな、という思いでおります。先生方、非常に根源的なところから考えられる方と、こういう動きを一応踏まえて、現実的に考えておられる方で大分意見が違ってきているなと、そういうフェーズ分けを事務局の方でよくしていただいた方がむしろいいんじゃないかな、という気がします。大変今日は勉強になりました。先ほどソフトウェアのライフサイエンスの話のところで、どうしてITがないんだとかほかの分野がないんだというお話がありましたけれども、私はやはり日本が発展してくる過程で、ITも含めた工業的な、ものづくり的なところですね、これで産学連携というのは非常に進んできた面が多くて、知的財産立国云々となったときにやはりそこのところに焦点が当たるというのは否めないと思うんですね。しかし、そういう尺度ではライフサイエンスというのは語れないという要素を多分に持っていると思いますので、ライフサイエンスだけをここに切り出して論じてあるというのはわかるような気がするんです。従来の知財制度、特許制度とかそういう概念ではありませんのでね。ITとか何とかはここに論じてある一般論のところですべてエネルギーもこれからの環境も論じられる問題ではないかなと思いますので、こういう捉え方でいいんじゃないかなと思います。ですから、全体としては今の時代のフェーズによく合った形でまとめていただいているというふうには思います。
 1つだけ意見を言わせていただきます。先ほど室長の報告のところで、産と学の間の資金の問題がありましたけれども、非常に具体的な話で悪いですが。あれには前回奨学寄附金は入っていないという局長の方からお話があったので、それを入れるとかなりの額に修正されるんだとありました。こういうまとめ方をするのであれば、奨学寄附金を入れた場合はどうなるんだというのを捉えて、さらにその奨学寄附付金が分野で言えばどういう分布をしているんだと。それこそそのときはITだ、エネルギーだ、ライフサイエンスだといってもいいと思いますね。奨学寄附金が是か非かと。あれはある意味では日本的なソフトパスの産学連携の1つの形だという見方もできなくはないわけで、特徴かもしれない。あれがだめだとしたら、それをできるだけやめるような提案をしなきゃいけないし。あれに意味があるのであれば、それなりに分析して評価してみるというのも現実の姿を見る上で大変私は重要なのではないかなと思って。そこのところはぜひ一度研究してみていただけたらと提案したいと思います。

主査
 今日いただいたご意見の中で、とりわけ非常に具体的なたくさんの重要なことがあったと思うんですが、1つはやはり一応ワンフレーズ終って次のフェーズで一体何をやらなきゃいけないと思っているかという、その意識のところは少し確かに新鮮味というのかな、割に実力のある国立大学プラス実力のある企業かどうかわからないけれども、とにかくそういうところでの産学連携はそれだけ育ってきたということだけは非常によくわかるけれども、今日鳥取大学のご発表がありましたけれども、そういった地域の問題だかと何とかで、大分新しい切り口もまた出てきていると思うんですよね。ですから、そういうところが少し目立つように、今度はこんな方向に展開したいんだよというかするべきだよというような今日ご意見もあったと思うので、そういうものをちょっと表現として散りばめていただいたら、見る人は、ああ、なるほど、少しは委員会も真面目にやっておるというふうに。

事務局
 産学連携というのはもともと発生的には個別大学と個別企業での努力ということで展開してきましたら、私どもの政策もどうしてもそういう個別の大学と個別の企業ということを念頭に置いた施策展開とか方向性を考えがちですが。今だんだんそういうことでなく、今日例えば柘植先生とか武田委員からも出た意見というのは、どちらかというとそういういわば大学間、大学全体的なところと特定の産業界みたいなフェーズの問題もあるわけで。そういう問題を例えば北九州市のようにいわば個別の大学によらず地域全体の中での大学間グループと産業グループの間の関係で捉える問題と、それから個別大学の努力、個別企業の努力によっている問題とあるわけで。少しこれからの方向性ということになると少しそこら辺はきちっと分けて、いわば全体の産業界と全体の大学界の間での関係をどうするのか。それに対してそういうフェーズを単に個別の大学だけに負わせるのかということで。こうなってくると本来経済産業省かどちらかというと商工会議所とか地元の経済界を使って自らその間を繋ごうという努力をされてきたわけですから、そういったものをきちっと評価をしなければいけませんし。一方でまた個別大学的ないわば取組をやっていくというフェーズも必要になる。そういうその点も含めて少し整理をさせていただいた方が正直なのかなと思うのであります。

主査
 そうですね。従来型のところは大分確かにきたと。そうすると日本の産業構造全体、地方をとにかく殺さないようにする、地方の大学も殺さないようにするためにどうしたらいいかというあたりの認識がちょっと重要になってきているから、そんなことも少し入れてもらったらいいんじゃないかなと。特になければこれで終わりたいと思います。
 今日はありがとうございました。

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