産学官連携推進委員会(第28回) 議事録

1.日時

平成17年7月29日(金曜日) 15時~17時

2.場所

コンファレンススクエアM プラス ミドル1

3.出席者

委員

 白井(主査)、北村、清水勇、武田、田村、森下、小林、清水啓助、本田、三木

文部科学省

 清水研究振興局長、藤田研究振興局審議官、根本研究環境・産業連携課長、伊藤技術移転推進室長、工藤研究環境・産業連携課長補佐、笹川技術移転推進室長補佐 他

オブザーバー

説明者
 小寺山九州大学副学長、石田凸版印刷株式会社相談役

4.議事録

  • 議事に入る前に、白井主査の指名により、安井委員が副主査となった。

(1)「産学官研究交流促進等のための検討会報告書」について

  • 資料2-1、2-2に基き、「産学官研究交流促進等のための検討会」主査である小寺山九州大学副学長より説明があった後、質疑応答が行われた。
    その内容は以下のとおり。

(◎・・・主査 ○・・・委員 △・・・事務局 □・・・説明者)

委員
 民間と大学との間が非常に活発になってきたこと、これは非常にいいことだと思うし、ぜひ強化していっていただきたい。ただ、活発になったといっても、大学の研究費は大体3兆5,000億円位であるのに対して、民間企業から入ってきているお金は900億円であり、たかだか全体の3パーセントを切るような状況ではないかと思います。諸外国を見ると、やっぱりそんなに民間からは入っていないようですが、アメリカでも、民間資金の比率で比較すると、日本の少なくても2倍から3倍は出ています。こうした状況では、産業界が大学の研究を刺激するように研究費を増やすことを考えないとしようがないという気がします。ぜひ民間が大学と一緒にやる、大学に委託するとか、そういうインセンティブが産業界に働くようなメカニズムを創ること、これが一番大事じゃないかと思います。先ほどご説明ありましたように共同研究をやりまして、その特許の扱いをどうするかとかいろんな議論が出ていますね。大きな額でそれを議論するのはよくわかるのですが、本当に少しの寄附に近いような研究費で角突き合わせているというのは、正直言いましてちょっと異様な感じもします。国としては民間が大学との連携を促進するようなインセンティブを考え、産業界は目先の利害ではなくて、やっぱり少し長期的な視野に立って、大学の研究パワーを強くすることが、日本のためになるんだというようなキャンペーンをはっていただけるといいような気がします。

説明者
 ありがとうございます。まさしくおっしゃるとおりでございまして、大学の方から見ますと、例えば日本の企業が海外の研究機関に出費している研究費というものは、国内の大学全部に出しているものの倍以上あるわけです。研究レベルからいいますと、日本の大学はご存じのように結構トップクラスにあるのに、なぜ、日本の企業にもっと出さないのか。この問題はこの検討会の中でも非常に大きな議論になりました。やはり1件当たり200万でずっと推移していくというのは、ある意味でいうと投資をしているという意識ではなくて、お付き合いしているという感じのものが非常に強いんですね。本気で研究投資を大学に対してもするというような本格的な取組みをもう少ししていかないといけない。大学側から言いますと、我々の反省点として、今までビジネスというかきちんとした管理もなしに研究者個人に任せていたところがありますので、大学の先生というのは企業から見ると何か結構気楽な人が多い。お金は出してもらったけれども、期日まで期待したような成果が出てこなくても平然としているというような状況は、大学としてこれからは改めていきましょうと。きちっと管理して企業があてにできるような体制をとろうということを考えております。それと同時に、もう少し企業の方にも大学の使命、大学を育てる、大学を大きくしていく、大学を立派なものにしていくという意識も持っていただきたいと思っています。

委員
 特に税だとかそういう支援措置が必要ではないかと思います。日本企業の国内の大学へ出している研究費に比べ、外国の研究機関に対する研究費は倍以上で、その格差は全然縮まっていませんね。これはやはり非常に問題だと思うのですけれども、本当に日本の大学と向こうの大学の問題なのか。これだけグローバル化してきていますので、企業は自分たちの研究所を海外に設けていますよね。例えば南米であれば南米のユーザーに向けた研究を立ち上げるわけです。日本の企業が外国の研究機関に出している内訳というのも、一回よく分析していただくと非常にいいと思うのです。要するに日本の大学に対する倍以上のお金が外国の大学に出ているという話が先行してしまいますと、本当におかしなことになりますので、よく分析して頂けると良いですね。

説明者
 その点は私も関係者より注意を受けました。かなり雰囲気的な問題の取り上げ方があるのではないか、企業が海外にお金を持っていくときに、自らの作った会社の研究所みたいなところに送っているのもその額に入っているので、必ずしも海外の大学に全部いっているわけではない。検討会でもそういう話が出ましたけれども、でもかなりの部分大学にいっているのではないかという話はそのときも出まして、もう少しよく調べてみますということにはなっております。いずれにしても、日本の大学との共同研究の1件当たりの金額が一向に大きくなっていかないことから、やはり共同研究に対する見方が従来どおりの見方できているということは多分事実ですので、そこら辺を打破したいというのはこの検討会でも議論されました。

委員
 私、3月まで日立の産学関連におりました。産といっても、日立は総合電機で、他に車もあれば繊維もある、鉄もあれば船もあれば製薬もあって業種もいろいろあります。やはり本当にこの問題をきちっと考えるのであれば、きちっと見ていかないといけないんだと思います。私は全業種の中でもエレクトロニクス、ITという分野のまた一企業の体験だけのお話です。今、大学からよくそういう、日本の大企業は海外の大学には出すけれども日本の大学には出さないのはけしからんというお叱りを受けています。しかし、非常に狭い私どもの状況だけで照らしても、少なくとも我々の事例には当らないご批判も随分あるなと、勘違いもあるなと思います。他の業界だとそうなのかなと思う部分もありますが、限られた経験だけで申しますと、日立グループとしては、海外の研究所に出しているお金は別にして、海外の大学に出しているお金と日本の大学に出しているお金は、大学が法人化される前の2003年ベースで、倍ではありませんけれども、海外に出している方が若干多かったかと思います。しかし、法人化されてから、別に日本のお国のためというのではなくて、必ず我々日本企業に跳ね返ってきますから、日本の大学に対してもっと積極的にやるべきだという方針で日本の大学に出す総額を倍増したんです。その結果、民間企業から日本の大学全体に出ているのは、200億ぐらいですか、そうだとすると日立グループだけで10パーセントはいきませんけれども、結構大きなパーセンテージになってしまうというぐらいは出しています。その総額はその時点で日立製作所が海外の大学に出している額を超えました。その後、ここからは予算枠も含めて日本の大学と海外の大学をともかく差別するのをやめようということになりました。1年目は差別して、逆差別で日本の大学に、しかも1件当たり1,000万以上という条件を付けて二十数件出しました。瞬間では逆差別をしてですね。そういうことも必要であろうということでやりました。今年から私も離れましたので来年がどうなるかわかりませんけれども、基本のルールを今度は同じ予算枠の中で研究所から提案をしてもらって、どこの大学とやりたいという内容を査定して決めますので、その結果また元に戻ってしまうかもしれませんし、一層日本の大学の割合が増えるかもしれません。そんな状況の中で私どもが感じた問題を言いますと、日本の国立大学が法人化する前の話ですが、若干私立大学も何かそれに倣ってきたところがある気がしますが、大学にお金を出させていただいているのであって、1件1,000万以上の研究費を共同研究に出すということ自体が非常に制度的にも難しくなっていた。国立大学はまだ法人ではありませんでしたから自由な契約もできない。要するに大学は、何か教授がやっていることで変なことをやらなければ、やってもいいけれども、でも大きくなるとそれは何だというようなことで監督はされるわけですが、お金をくださいとはもちろん言わないし、もらっただけの事をしますとも言わない。アメリカの方はくださいと言います。ですから、私もアメリカの責任者だったときも1件5,000万以上、スタンフォードのネットワークの研究にポンと5,000万出さされました。でも、それはパッケージになっていてですね、これを出すとこんなメリットがある、例えばお宅の会社からもし留学生を出したかったら2人まではただで入れてあげますとか、いろいろとメニューになっている。つまり大学が積極的にくださいと言っていたのに対して、日本の大学はあまり出してもらっては困るとか、出すことを許すとか、申込書に記入しなさいという、そういうスタンスだった訳で、それでもって日本の企業はけしからん、外にはたくさん出すのになぜ日本には出さないんだと教授の方はおっしゃるので、だいぶこれはずれているなということがあります。その辺が今どれだけ変っているかということ。もう1点気になるのは、やはり、出すお金が何に使われるかということを言ったときに、大きく出て行くのは、設備に使うお金と、人に使うお金と、それから材料や何かでランニングしていくのに使われるお金で、この3つの要素のどれかにもよるんですね。少なくたっていい研究ができるのもあります。しかし、その中で一番気になるのは人に出すお金なんです。人件費がかかれば月に二、三百万は軽く吹っ飛んでいきますから、1年間で先ほど私が言った1,000万なんてすぐ飛んでしまいます。今までそういう要求があまり大学から無かったということは、大学にとって人件費は払っていただかなくても結構ですという仕組みになっているんですね。別にいい悪いではないが、ただ気になるのはやはり大学のある先生の業績を見ても学会の活動やお付き合いからしても、ぜひこの先生にこの問題については一緒に共同研究をしたいということ、先生個人のバリューに対して我々なりに近づいていくわけですけれども、でも先生は忙しいですね。会社の研究所は24時間研究をしておりますけれども、先生に24時間研究をしていただくわけではありません。当然指導者であって、実験をする方は他にいるはずなんですね。その顔が見えないと先程いったように期限までにできるのかなとか、これだけのことをお願いして大丈夫かなとか、そのクオリティーということはいろいろ心配になってくるんですね。これがアメリカでいうと、当然リサーチアシスタントというポストがちゃんと制度としてあって、その仕組みが日本の中でつくれるんだろうかと。昨今、大学院のドクター課程の強化だというのでまたインターンシップとか企業にいろいろお話がありますけれども、そのドクターコースあたりの人が、本格的にお金をとってきちっと毎日毎日あるところの研究をするというようなインフラというかベースが無いままですと、なかなか火つけてみようと思っても燃え上がらないんじゃないかなという気がしています。一方で、企業はそのドクターコースの人は役に立たないと思ってあまり採用しないというところも、いろいろな要素はありますけれども、今のように博士課程、マスターになるとトータルで5年間の授業料から生活費から全てどこかから持っていらっしゃいという状況の中で敢えてやれる方というのは、もともと親にお金があるとか、どんなアルバイトをしてでも将来学者になろうとかいう人にしか開かれていないので、将来は企業に行って活躍したい、だけどもっと電子工学を身につけた方が得そうだからといっても、大学を出て企業に行けば毎月二十何万の初任給とかが貰えるというのに対して、こっちはゼロで結婚もできないという状況を放置したまま、インターンシップを少々活発にするとかいっても、所詮企業に行ってみようかなという人自身がこのルートに入ってこないのではないかと思います。ですから、今の全体の話の中で、共同研究の大型化というのは必要だと思うし、大型化されるためにはその大型な研究ができるリサーチスタッフというものを一般の先生が抱えておられることが重要で、そのリサーチスタッフというのは当然学生なのであるから、お役所には学生は授業料を納めるものであって、学生は働くはずはないという感覚がまだあるのかないのかわかりませんけれども、こういう状況のままでは回らないのではないかというのが、私の実感です。

説明者
 検討会でも同じことが議論されました。いろいろと共同研究の受け入れについての旧国立大学時代のひどい例もありまして、過去には寄附金をさせていただくという感じで寄附をさせる。もっとひどい例はその寄附の納入が約束より遅れると違約金というか延滞金を取られるような話もあったぐらいです。そういうことについては随分法人化前後に変りました。我々も前後の書類を見直しまして、そういう怪しげなものは無くなりましたし、知的財産本部ができて共同研究などを積極的に取り組むということをしている大学にあっては、もう本当にお客様と大学なんだという感じでやっておりますので、第1番目のご指摘につきましては、全大学がそうなっているかというのはなかなか難しい面もあると思いますけれども、早急にここ二、三年で全部変ると思います。それから2番目の問題ですね。九州大学の例で言いますと、共同研究等にあたっては人を付つけるというのが第一番です。というのは工学系の研究で、それは他の大学でも同じだと思います。そういう意味でポスドク等を付けるということはやっております。ただそのポスドクについても、工学系でポスドクとして残っていて社会的にメリットがあるのか、キャリアアップに繋がらずに、ただ就職が無くてぶらぶらしているというように捉えられており、やはりもう少し研究、研鑚を積んでいるという見方がないと、ポスドクの確保も難しいということが1つあります。それともう1つは、大学院の学生そのものに給料的に払うというのは、従来の学生への教育という観点で見ると制限が大きいのです。何時間以上アルバイトさせたらいかんという、特に留学生については入国条件のビザに関連してくるので、そういう制限があります。それから我々もいろいろ工夫しようかなと思っておりますが、例えば共同研究において、雇用ではないが、学生に対する奨学金を出すというような工夫ができないかとかいろいろ考えています。やはり現実にはそういう制度上の問題があるわけです。学生にどんどんお金を払っていると、この学生は勉強せずにバイトばっかりしているんですかという評価が、大学の中でも学務課あたりは産学連携とはちょっと離れていると思いますからそういう批判がくる。それでも、やっぱり学生にとっても実際の企業から出てきたテーマに取り組むというのは非常にいいことで、少なくとも工学系の学生にとっては大きな刺激になるわけですから、そういう工夫はしないといけないなと思っています。

委員
 自分の先生の指導下で研究をしていることが学業をおろそかにしてバイトをしているという指摘があること自体が、私には理解ができないですね。

説明者
 そうですね。けれども対価を貰うと、まずそうなるのです。

委員
 それでいて何かスターバックスで働くのは奨励されて……。

説明者
 その辺はおいおい法人の中でも変ってくると思います。今、多分法人の中でマネージできることだと思います。

委員
 我々共同研究等いろいろタッチしていますけれども、ほとんどの企業は、要するに自分達でやるよりも安くできるという、こういうスタンスに立っているところが多いと思います。なんとなれば今ご指摘があった、要するに人件費がかからないと。やはり一番大事なのはその共同研究の中にリサーチアシスタントを雇用することと、それからオーバーヘッドをいい形でつくっていかないと健全な形にならないと思います。だからぜひ日立の新しい試みを実らせていただき、みんな日立になってくれればいいのですけれど。日立はこんな立派なことをやっているという情報を発信して、産業界のマインドを変えて欲しいですね。

主査
 国の競争的資金も同じで、今、国の競争的資金に関しては、僕はしつこく言っているんですが、貰って、専任教員がそれに参加したら、その労働賃金が一部分でも払えるようにして欲しいと、それでなければ十分には研究できませんと。産業界からもまったく同じです。100万円でも教員は相当まじめにやるわけですよ。しかしその人の人件費は学生がみんな負担しているのだからそんなもの全然間尺にも合わないし、とんでもない考え方なんだということを言い続けているんですが、産業界には今のところほとんどそれを理解していただけませんね。これは是非理解してもらいたい。要するに大学に出したら安くできるんだ、そのかわりどうせろくな成果も持ってこないだろうということなのだと思うのだけれどもね。そういう意識で今までずっとやってきているから、これはもう根本的に仕事をやる関係になっていないですよ。だから大学には今1,000万出したと、1,000万はたしかに我々もそれだけいただけたら嬉しいと思うけれども、人件費を考えたら1,000万なんかでできるはずがない。ちょっとしたシンクタンクに何か調査してくれと頼めば、まず2,000万とか3,000万とか要求されるわけでしょう。それと比べて何と我々は安いんだろうという、そういう感じなんですよね。しかもポスドクを使ったり、ドクターの学生なんかを使っていて、夜中までやらなければいけないんです。それでも二、三百万円ですからね、だからこれはおかしいです。それではどうしたらいいのかということなんだけれども、まず、大学の方に問題があるとすれば、仕事を受ける状況になっていないこと。確かに今知財センターとかいろいろできました。できたけれども、そこで本当に契約できっちり仕事を組んで受注したことになっているかというと、これははっきり言ってそうではない。誰かが、私受けますよと言ったと受けるというのはどういう意味であるか。今は、ベストは尽くすけれども、そこそこのお金だからそこそこでやるというような関係なのです。基本的に知財センターというのは人を動かす人事権が無い、だからここが根本的にだめなのです。そうするとまともに仕事を受けることはできないはずだから、大学というのはなかなか企業から見たときには研究を発注しにくい場所だと思います。たまには有益な意見を言ってくれるかもしれないから、まあ、付き合うけれどもという、そういうような関係で今きていると思います。

委員
 私、この報告書に書かれている個別の項目はある程度そのとおりだと思いますけれども、トータルで見た時にどうしても別の視野を加えた方がいいかなと思うことがございます。それは、企業はやはり成長モデルに従ってシナリオを書いて進んでいるわけですが、片一方の大学の方は当然自己評価のモデルをもってそのシナリオを描きながら、当然バリューというのがそこにあるわけで、パッケージ化するのがいいかそれともポテンシャルを示す形がいいのかどうであれ、そういう商品というものをはっきり意識しないといけないというふうに思います。その時に産学連携というのは基本的には2つのパターンのビジネスだと思います、大学から見ると。1つは提案型のビジネス、もう1つはソリューションビジネスです。これをはっきりと類型化して意識しない限り産業界から見るとわかりにくい状態が起こっている。そこは大学側の方でももう一段努力をする必要がある。それを大学の自己評価モデルの中に位置づけていくという、これはグローバルに見ると、その問題が意外と大きな問題だというふうに私は感じております。これはコメント的な意見ということでございます。

主査
 今のご意見も、大学の知財センターが形式的にはできた、窓口機能はできる、だけどそれからライセンスだとか何だとかそういうことばっかり盛んに言いました。そういう整理は僕はできたと思っています。だけど今おっしゃったようなこととか、それから戦略ですが、戦略なんかはまだ無くて、そういう意味ではこれからの課題だと思います。

説明者
 1つだけ言わせていただくと、国立大学の法人化の影響というのはものすごく大きなものがあります。先ほどの人事権が無いということも、確かに総長といえどもある特定の教員をつかまえて、この研究をしなさいというようなことをいうことはできないわけですけれども、国立大学法人は今ものすごく急速に変りつつあると思います。雰囲気的に今いろんな大学でやはり総長はかなり強いリーダーシップをとっていて、こういう問題についてはぜひ我が大学としてやっていきたいというようなことを言ったときに、かなりの指導性をもう既に発揮しつつあると思います。例えば産学官連携について我が大学は重点的に取り組みたいのでというような話があって、それを現場が受けて、十分検討しつつあります。それで必ずしも満足ができるような、100パーセントパーフェクトなところはないと思いますけれども、私はかなり急速に変りつつあるというふうには感じております。

主査
 さっき言った人事権ということの意味は、とにかく誰かが仕事を受けた、そしたらその方はそれを実行できるような状況におくという運営管理の問題ですよね。

委員
 単純に共同研究というのはそこだけ取り出してというのはなかなか難しいんじゃないかと思います。経営をするのか、できるのかということが問われているんです。経営をするといっても、決して利益を追求することだけが経営ではありませんから、もちろん営利企業は利益を追求するように経営をするわけですし、大学は大学としてブランドを上げ、クオリティーを上げていくために経営する。大事なのは教育というクオリティーをどう上げるか、教育のクオリティーを上げれば間違いなくブランドが上がって、いい学生が来ればまた企業も注目しますということでいえば、全部がこう絡まっている。その絡まっているということを理解して経営をしないと、1個1個当たってもっと教員を増やそうとかやってもなかなか大変ではないか。これは時間がかかる面もありますけれども。

主査
 それは全部総合できれば企業との共同研究とか、受託研究の方ではそういう流れですね。

委員
 おっしゃるとおりです。経営が本当にできるのかということにかかってきているわけで、そのことについて私としては非常に楽観視していて、第一期中期計画が終わるころにはほとんどもう出そろってくるのではないかと思います。

主査
 でも、またそこが問題なのですよ。国立大学法人というのは人はかなりたくさんいるでしょう。だから今みたいな問題は国立では今のところあまり起こらないのです。要するに人件費はただで困ってないところがあります。私学は人件費くれなかったらできません。

委員
 正直な話、国立大学より私学さんが大変じゃないかなと思います、大騒ぎになって……。

主査
 もうそうです。

委員
 お金の流れはどっちに向かって流れているんだとかって見てきますから。

主査
 だからどっちに出すのかといったら国立に出せばいいに決まっています。その方がクオリティーも高いし、いい先生が現実におられるしね。いい道具も持っているし、だから当然だと。しかしそこの格差というのは日本の中で今後どうするのかというのは非常に大きな問題ですね。例えば中小企業との共同研究では両方の問題がある。特に私大なんかは中小企業とやった方がいいんだけれども、しかし実際にやってみるとこれがまた結構厳しい。企業側は100万円だって大変だから厳しく評価する。企業側には一人だけは猛烈に高レベルの人間がいて、その人たちに役に立つようなことはなかなかできるようなものではない。本当にやり出すといろいろ問題が起こってくる。

委員
 この報告書の検討会でもたいていは時間になかなか終わらずに、非常にたくさん意見も出ました。私は何か雰囲気的に非常に明るいなと。むしろそれは議論が多いからなのですが。

主査
 明るいのだけれども死にそうだという感じですね。(笑)

説明者
 いや、それはそうですけれども。

主査
 大変すみません、いろんなことをおまとめいただいておきながら勝手な議論ばかりしました。しかし、本当は厳しい。次の段階では、本当はこうじゃないと無理なんだということが出てくるのではないかと思います。

事務局
 政策的には今日頂戴したようなことを踏まえて、我々ももちろん念頭においている部分もございますので、今日の議題の3番目になっていくかと思いますが、大いにそのあたりを踏まえて、またご意見を頂戴できればと思っています。

主査
 今回のレポートに入るかどうかは別として、整理のどっかで取り上げておくことは非常に必要だと思う。では、それをお願いできますでしょうか。

事務局  はい。

(2)「大学知的財産本部中間評価結果等について」について

  • 資料3-1、3-2に基づき、「大学知的財産本部整備事業」中間評価結果及び「スーパー産学官連携本部」選定結果について、事務局及び大学知的財産本部審査評価小委員会副主査の凸版(とっぱん)印刷株式会社相談役石田氏から説明があった後、質疑応答が行われた。
    その内容は以下のとおり。

委員
 プロパテントではなくて、プロイノベーションという御指摘ですが、大学はプロイノベーションに向かっていると私は思います。ジョイントリサーチについて、日米の大学で活動に差があるとの指摘がありましたが、この問題は日本の法制とアメリカの法制は違っていて、アメリカの法制は、共有特許について大学と企業はそれぞれ自由に扱える。共有特許に関して制限している日本の特許法73条の3項での現正がないので、アメリカの場合は日本みたいにがちゃがちゃする必要は全然ないのです、そういう法制になっていますから。そのバックグラウンドの法制をまず、本当にどっちがプロイノベーションに向いた、どっちが技術移転に則したものか、そこを一回詰める必要があるのではないかと思います。

説明者
 73条の3項の改正問題まで決定すると……。

委員
 アメリカの場合は、日本の73条の3項は無いわけでして、ないところのアメリカの大学の状況と縛りがある日本の状況ですと、これはやっぱり違ってくると思います。だからベースとなる議論を合わせた上でご指摘されるべきではないかと思います。73条の3項の是非を一回俎上にのせるべきではないでしょうか。どっちがプロイノベーションに向かうのか、どっちが技術移転を促進させるのか、ということではないかと思います。

説明者
 そうですね、共同研究開発契約の他の条項との関係もありますけれども、73条の3項については共同研究開発契約に入る段階で特約しておくとか、そういう時代だと思いますね。

委員
 日本の場合は法律的にそれが担保されていますから、それがスタートポイントになるわけです。アメリカの場合はそれが無いですから違うスタートになる。ベースの違いがあるにも関らずアメリカはうまくいっている、日本はどうしてこんなことでもめるのだと言うのは少しおかしいと思います。まずベースを合わせた上でこういう議論をすべきではないかということです。大変恐縮ですが。

説明者
 そうですね、わかりました。大学の視点から見ますと73条の3項は、はっきり言ってアメリカの大学と日本の大学との競争力という意味ではハンディキャップです。

委員
 私自分の経験を通して申し上げると、いわゆる大学TLOで実施している技術移転事業と新たに知財本部を設立して実施している特許管理、リエゾン等産学連携事業が必ずしも一元的に管理、運営されてないところに問題があると思います。本来、大学で一体運営されなければならないものなのですけれども、時系列的にまず技術移転機関としてTLOが設立され、後から知財本部が遅れて設立された大学が多いところからこの問題が顕在化しました。ある期間が経てば両者は当然融合していくと期待しています。この時系列的なゆがみは解消できると思う理由は、いままで個人的関係ではありますが、日本の大学の多くの研究者は、産学連携を実施し、経験していること、特に、それぞれの学会が産学連携推進に非常に大きな役割をしていたことが挙げられます。大学、および企業の研究者のお互いの信頼を醸成する場として学会の存在があります。たとえば、半導体の研究に関しては、応用物理学会などが実質的な産学連携で研究のマネージメントをやっていたんですね。ですから産学連携を効果的に行うには、その経験を活かし、初歩的なマネージメントの整合だけしっかりとれば、私はうまくいくのではないかというふうに今でも信じているわけです。ここで、産学連携のための大学と企業のマネージメントの整合というのは、大学における最高責任者である学長が責任と権限を一元化して繋ぐことだと思います。現在、多少混乱はあっても、組織と組織が責任をもってあたれば、日本の産学連携は旨くいくと思います。

説明者
 ちょっと補足させていただきます。先程の報告の中でも細かいことを言えずにしまったのですけれども、今の点を含めて3点補足させていただきますと、この産学官連携の中で知財本部とTLOのこの組織の整合性、これについてかなり中心的な問題でありました。それが機関帰属という観点からうまくいけばあまり問題ない。しかしその機関帰属も中途半端で、TLOと知財本部がパラレルに走るということについては整備という観点からは懸念があるという点が1つでございます。それと大学が共同研究開発を企業とする時に、先ほどの73条の3項の問題もあるんですけれども、やはり日本の制度と外国の制度は違いますので、そういう制度の違いなども考慮して、国家的なレベルで産も学も、もう一つ工夫をしなければならないのではないかというような問題が2つ目。そして結論として、この産学官の連携をうまくやるために法律論や権利論が先にあると、これはいかがなものかと。プロイノベーションというようなことを先ほどキーワードで出させていただいたのもそういう趣旨でございまして、法律論や権利論が先にありきということでは本当はよくない。整備自体も、もっと経営的なグロスの考え方でないと、ということがございましたので補足を。

委員
 他の会社や他の業界は知りませんが、日立のケースで言いますと、大きく知的財産の扱いが違います。先ほどの議論と違っているのは、スタンフォードやMITその他に1件当たり5,000万以上を出しても知的所有権を企業側が主張できたケースは1つもありません。日本の場合はそこを非常に主張ができる。逆にいうと、欧米並みにして大学が、特に大学の成果はみんな大学よというふうにすればいいのか。実は日本の企業としてみれば日本の大学だと話もし易いし、もっといろんなことをやってもらえる、しかも特許権についても企業に少し認めてくれているというところが、やっぱり大学の経営として私は強みにするべきだと思います。アメリカの大学にはもう特許権を日本の企業は主張しないで、日本の大学に主張するなんて、という議論を始めてしまうと、私はいつも言っているんですが、将来はアメリカから貿易摩擦ではないけれども日本はずるいと、日本の大学と企業はぐるになって、本来は国民の税金を使ってやったものを、企業とのちょこっとした共同研究でも企業にライセンスしているのはあれは汚いと言われるぐらい、強く、一緒につるんで強くなるべきだと、なまじアメリカのルールにしてますます変なことにするよりはなんていうことを申し上げたんですが。日立では申しわけありませんが、年間5,000万出しても一切企業側に特許の権利を主張できたケースはほとんどありません。今、日本の大学には500万レベルでも共同研究でやったもので、日立側に発明者がいればそれは当然日立に権利がありますということを主張させていただいておりましたので。明らかに差別的な、ただアメリカの場合の5,000万というのはさっき言ったようにいろんなほかのメリットを例によって上手に謳っていて、謳っている以上はそのサービスは求めればしてくれる。ただ遠いのでうっかり求めないと結局ボーナスポイントと同じで1年間使わずに終わってしまうというケースもかなりあります。ですから、現地に研究所を持っていない企業はメディアラボとかもそばにいて、ボーナスポイントが利用できればお得かもしれませんけれども、ためているばっかりで使わなければいかんと。

主査
 そこの問題はうちでもあります。金銭的には正直いって全然マイナーな話ではないか。ケース・バイ・ケースだっていいんだと言っているんだけれども、これが企業はまた難しいことおっしゃるんですよ。もう全然つまらないことも。大学が特許の公開をして、みんなで使えばいいじゃないと考えると、いや、それを製品化すると、自分のところに独占的な使用権をよこせとかいうことになってくる。勝手に使えばということにすれば、見返りは全くない。それから日本と外国との違いね。これから中国の方はどうなるんだろう。

委員
 中国の方はもっとすごいでしょう、何もないでしょう。

主査
 だからどうするんだと、(笑)おそらくこれからめちゃめちゃ問題が起こるから、研究に入れないんだよね。初めからその話ばっかりやっていて。愚かすぎるのですかね。まあ、どうせ大して払ってくれない。

委員
 金額的にはですか。

主査
 ライセンスなんていっても、どうしてそんなに1円や2円にこだわらなくてはならないのでしょう。

委員
 実際そういう成果出るかどうか、それもわからないんだから。

主査
 だけどこれはちゃんとしておかないと。とてもうちでは許可はおりませんと言われますからね。それからさっきちょっと気になったのは、そういう経験者というか必要な人材を内部育成していかなければいけないというのは、全くおっしゃられるとおりだと思うけれども、現実に一個一個の大学ができるでしょうか。企業ほどそれで儲からないんですよね。今のところは、大体研究というものは商売になりませんよ。将来はわからないけれども、研究でちゃんと儲かるような戦略を立てろという話になるけれども、何かどうも遠い22世紀ぐらいじゃないかという感じがするのでね。(笑)そうしますと、公開制とか何とかということにも関係するんだけれども、そういう人材も共同的なところがもっとあってもいい。本当のプロはシェアしてもいいのかもしれない。まさに学会はそういう場所だったと思うんですよ。紛争解決には本当のプロみたいな人、レベルの高い人を階層的に配していた方が、僕はいいんじゃないかという気がします。

委員
 その人材については、「将来を見通した内部人材の計画的な養成」、だと思います。やり方は、今おっしゃられた方向もあるかもしれませんけれども、現状はどうなっているかというと、公的な支援により派遣を受けています。一番大きな産学官連携コーディネーター、それから、特許流通アドバイザーとか、今活動している人材はそういうところから派遣された人です。このモデル事業が終わった後まで知財事業を大学に埋め込んでいくには、大学内部でこうした人材を養成しなければなりません。となると派遣、これも非常にありがたいんですが、これに加えて各大学がこうした人材を採用したら、それに対する助成を少し考えてもらうと、そういう人材を長く大学でちゃんとポストを与えてやっていけると。だから派遣プラス大学がこうした人を入れたらそれに対する助成に一部切り替えていただくと、将来根づいていくんじゃないかと勝手に思っているんですけれども。派遣事業が終わったら、知材事業が終了となったら、今盛り上がったものが数年たったら全部いなくなってしまう。そうであるなら、そういう人材を各大学が養成するインセンティブとして、こういう人をとれば幾分か助成していく、こういうプログラムはできないですか。

事務局
 大学によっては、国の方から常勤のスタッフを丸抱えでは位置してもらった方がよいところもありますし、大学で置くスタッフの配置に対し国の方から助成する方がよいというところもあります。資金助成の方が大学としてはいろいろとやりくりし易いということがあるかも知れません。それは今後の検討課題というように認識しています。

委員
 そういう人をとればその人の給料の一部を何年間は面倒をみてあげる、そうすると採用したら後は、学校は古い社会ですからすぐ首切れませんから、その人を生かすことにもなりますし、定着するんじゃないかと心秘かに思っています。

主査
 民間からそういうところにどれだけ協力すべきかという問題もあると思います。2つあって、1つは民間からもお金を出してやるから国も協力して、要するにマッチングファンドみたいな制度で助成をしていく。逆に大学と組んでやったらそこからむしろオーバーヘッドでもとって、それで全体のシステムがうまく動くようにみんなでそういうものをつくっていくという姿勢も必要だと思います。要するにそういうところはお金がかかるんです。

事務局
 民間から大学の方にきている資金は額が小さいですし、そこからオーバーヘッドをとっても、共同研究等を支える人たちの経費を捻出することもなかなかできない状況です。民間から大学へいくプロジェクトが大きなものになるように努めつつ、その間は大学に対し体制的な整備を支援する、という両建てで考えていくことが必要かと思います。

主査
 何でも国から補助金を貰うというのではないですが、そういう事業が意味があるなら、お金を出すべき。できるだけ効率的にそれをやるような仕組みが必要かなという気がする。

(3)「今後の産学官連携の推進方策について」について

  • 資料4、5、6-1、6-2、7に基づき、「知的財産推進計画2005」及び「今後の産学官連携の推進に係る検討課題(主なもの)」等について事務局から説明があった後、委員による自由討論が行われた。
    その内容は以下のとおり。

委員
 資料7の2の2のところですが、室長のお話でも意識はしていただいているようなんですけれども、やはり私ども銀行なんかで見てても、地域によっては特にここに書いてあるとおり中小企業側で産学連携の非常に強い要請があるにも関らず、評価にも出ていましたけれども、なかなか大学の方とうまくいかないというケースも散見されます。あるいは地域の国立大学の場合そういう学部が無いとか、ある研究をしている人がいないとかそういうこともあります。それから、今日お聞きしている範囲では、地域の国立大学の、知財本部ですからちょっと違うのかもわかりませんけれども、評価が高いところはみんな大都市圏で、スーパーも大都市圏ですから、この辺に対して具体的な支援、強化というところを、ぜひお考えをいただければ。少し地域を連携してほかの隣の県だったらやっているとか、そういうこともあるでしょうから、そういうことをお考えになったらいかがかなと思います。

主査
 非常に根本的な問題で、産学連携というときに産業界は個々の企業の利益追求というのが非常に明解にある。だけど学側は自分の大学をという、確かにそういう動機づけでやっているかもしれない。世の中に役に立てばいい、という観点からいうと、もっと連携を考えるべきでしょう。一大学でできないことは山ほどあるわけですよ。そういうことのコーディネーションは、なかなか大学間でも難しい。例えばうちと慶應さんとで何か連絡しますかといったら、まず絶対競争しかしない。

委員
 そんなことはないですよ。

主査
 アメリカでは必ずしもそんな連携というわけでもないかもしれないけれども、日本ではどうなんですかね。競争的競争的という言葉が非常に流行していますからね。

委員
 大きなプロジェクトを起したらどうでしょう。

主査
 よくわからないのだけれども、そんなのではやる気起こらないということでしょうか。

委員
 ちょっといいですか。1、2、3、4ときているのですが、この中に全部入っているのかも知れないですが、一つタイトルを加えたらどうか。先ほど来のお話を伺っていると、その知財をつくることは随分出てきましたよね。今最大の課題はこれをどうイノベーションにもっていくかと。IPをどうイノベーションにつなげるかと。そういう項目が一つあってもしかるべきではないか。1、2、3、4と並ぶような項目として。具体的には文科省はじめ一生懸命やっているマッチングファンだとかインキベーションするためのプログラムもあれば、ベンチャーを通じてそれを発展させるメカニズムもありますので、これらをひっくるめて「知財の実用化の促進」といった大きな旗印にすると、玉か砂利かよくわかりませんけれども、貯まった知財が生きていく一つの流れになるのではないか。

委員
 個人的な総括ですけれども、第1期でこれだけの状況にきたのでいろいろ問題も明らかになったし、でも対話の場もいろいろあるしと、ですからあまり心配しなくてもいいんじゃないかという面もある。一方で心配しているのは、やはりアメリカ型とか何とかいってまたキャッチアップ型になって日本は遅れている、頑張らなければいけない、追いつけというところについては息はついたと。しかし追いついたのではだめで21世紀の日本自体がこれによってトップワンになっていくための施策を打たなければいけないとしたときに、第2期の産学官連携のフォーカスを、生命科学の「死の谷」の克服というようなクリアなものを出して未来志向でやる必要があるんじゃないかと思います。申しわけありませんが、エレクトロニクスとかIPとか自動車とかはもう企業は世界企業です。ですから得だと思えばやるし、やる力もあるし、これだけ産学官連携を盛り上げればあとは自分たちで解決できるはずで、国がよってたかってどうしたこうしたということをやる必要はないし、それがまた悪いところだと思います。だけどほっておくと今度は医療とか21世紀のライフサイエンスの世界が実はお役所も含めて随分問題です。それから外国語のカリキュラムも十分じゃない。イノベーションの今一つのフォーカスはライフサイエンスなんですね。これは決して一部の生物学だけではなくて物理からあらゆるものが導入されるのに、学生にちっともそういうことを教えていないから相変わらず工学部は機械工学を教えていますし。一般論の産学連携でやるのも一つですけれども、こういうものも含めてちょっと未来志向で、しかも日本が本当に勝ち残っていくためのフォーカスというのを一つ掲げていくという視点が必要ではないかなということを、ちょっと個人的には思っております。それで教育から産学連携から研究から、一つある意味ではライフサイエンスに焦点を当てていく必要があるのかなと思います。あの京都会議の主催に厚労省も加わっていただいてとまで言いたかったんですが、下手すると日本はそこで出遅れるんじゃないかと思います。

主査
 いや、もう出遅れている。

委員
 出遅れていますね。世界ではそこに今加速度がついているから。今工学から情報からあらゆるものがやっぱりライフサイエンスというテーマでまたイノベーションをするんじゃないかと思います。新しい産業も、新しく中小企業も大企業もなく起きてくるのではないかなという視点で、みんなもう一回、そのいままでの経験を、日本人の英知を使ってライフサイエンスを切り開かなければいけないのではないかということは、次どこかで議論していただきたい。

主査
 僕は競争はすごく、それは当然やらないといけないと思います。強烈な競争になる部分があっていいと思うんだけれども、競争に力を使っていくのではなくて、何かちょっと横のところで猛烈に何かやたらとやらないと研究もできないというような感じを持つ。

委員
 楽しくないですね。

主査
 楽しくない、全然楽しくない。昔の方が全然楽しかったと思います。若い人なんかもそういう感覚が若干あるんじゃないかという気がします、自分のキャリアプランもあるし。

委員
 日本全体が成長して、高度成長でエレクトロニクスも伸びていたからおもしろかったので、引き続き楽しくやるためにも今度はそういうライフサイエンスとか新たなイノベーションに夢をもって、それで組み立てていかないと、という気がしています。

委員
 私、非常に賛成でして、やはり2020年ぐらいから今を見るという視点を持たないとだめなんだと思います。今までは過去と現在から近未来の政策を出しているところがあって、ここはちょっと問題があるのかなという感じがしています。最近でいうと経済産業省さんの方でやられた技術戦略マップ、サイエンス型イノベーションマップなんて本当はもうちょっとやってもいいんです。もう少しこう未来から見るようなことが文部科学省の政策の中に入ってくると、これは学生の教材としても非常に役に立つし、ありとあらゆるところで役に立つわけですね。

主査
 そうですね、大賛成ですね。

委員
 そういうことはいかがでしょう。

主査
 経産省も文科省も、両方やったらいいけれどもね、だけど文科省から見たらこういうふうに見なければいけないというのがある。経産省は明日食わせなければいけないという観点でそれはおやりになる。だから今のサイエンスイノベーションマップなどというのは文科省がやるべきことで、経産省がやるべきことでないとまでは言わないけれども、ちょっとニュアンスが違いますよね。そういうような発想がやや我々は貧困なのかなと反省しなければいけない。

委員
 産学連携の話になると感じるのですけれども、話がみんな内向きでローカルになっている。産学連携事業は、企業活動、学会活動と同様に、グローバルで国境なんかないと思われるのですが、産学連携という表題が出ると極めて国内の問題に限定された議論になりがちです。それは全くまずい。経済活動がこれだけグローバルになっていたら産学連携にも、必ずそういう問題が出てくるので、そこをやっぱり取り上げないと楽しくはならないんじゃないかと思います。この中にも何かそういう指摘はしたので書いてはあるんですけれども、世界を相手に我が国の科学技術、教育を担っている文科省が進んでそのグローバルなテーマを取り上げていただければ、若い人も積極的に参加すると思います。

主査
 それでは、一応今日はこれで終りにします。ありがとうございました。

5.今後の日程

 次回については今後日程調整を行う旨、事務局より連絡があった。

お問合せ先

研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室

(研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室)