産学官連携推進委員会(第27回) 議事録

1.日時

平成16年11月17日(水曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省 10階 3会議室

3.出席者

委員

 末松(主査)、市川、北村、小林、清水、川崎、白川、田中、田村、吉田

文部科学省

 丸山大臣官房審議官、清水研究振興局長、小田研究振興局審議官、森振興企画課長、根本研究環境・産業連携課長、伊藤技術移転推進室長、笹川技術移転推進室長補佐、鎌田研究環境・産業連携課長補佐、室谷研究環境・産業連携課長企画官、上田科学技術・学術政策局計画官付補佐 ほか

4.議事録

○ 「第3期科学技術基本計画の策定」について

  • 資料1、2に基づき、第3期科学技術基本計画に対する文部科学省の対応状況等について事務局から説明があった後、委員による自由討論が行われた。
    その内容は以下のとおり。

(◎・・・主査、○・・・委員、△・・・事務局)

委員
 産学のパートナーシップの確立、それに向けて大学側がいろいろな努力をする。企業側もそれに意識を持つということ、大変結構なのです。けれども、企業から研究費を支出する割合が日本向けが外国向けの半分程度であり、それを高めなければならないという発想は、これからの科学技術の国際化の中では、むしろ逆行なのだろうという気がします。少々乱暴な言い方ですが、それでは結局、終戦直後のバイ・ジャパニーズ政策と同じなのですね。企業は命がけで生き残り、発展をかけているわけです。そうしたときに、それに貢献するところへ研究費を支出し、また共同研究をやろうとする。そうした場合、日本の大学は一体、知の生産において、どれだけの貢献を世界にしているのか。仮に貢献するなら大学がほとんどだろうということで、論文の比率で見れば、わずか8パーセントのシェアなのですね。8パーセントのシェアでありながら、日本への研究費の支出は3分の1ぐらいあるということは、ある意味ではすばらしいことです。民間の企業は、大変に日本の大学のことにご配慮いただいていると、あえて言うべきなのです。
 何が言いたいかといいますと、ここでは「知」=(イコール)製品でございますけれど、日本製品を買ってくれというポリシーではなく、買う気を起こすような知を大学が生み出していく仕組みを、もう少し徹底してつくっていかなければいけないと考えます。
 ですから、ここでいろいろ提案されている大学における産学連携を促進するための手だては、見かけ上の産学連携の促進ではなく、知を生み出してそれをサービスするという本質的なところに貢献する形にしていただかないといけません。今後、例えば中国やシンガポールが既にそうですが、そういう意味で貢献し始めているところへ、どんどん生き残りをかけて民間は移っていくんだと思います。
 もう一つ、これはデータの読み方の問題ですけれども、共同研究が件数でふえてきている。この件数だけ見るとそうかもしれませんが、金額を見ると200万ぐらい。200万ぐらいというのは、大変失礼ですけれども、私が現役だったころ、もう20年前ですけれども、その頃に企業からちょうだいしていた額とほとんど同じなんですね。これで本当に共同研究なのか。共同研究であるとすれば、本当は何千万という単位なんですね。そういう面を見ないと本当の共同研究とは見えていない。恐らくそれを考えれば、資料2-1の図表3の、海外と日本の大学の比率ぐらいまで落ちていってしまうのではないか。こういう数字を眺めますと確かに進展しているようには見えるんですけれども、その実質というのは、もう少し考えた上で意思決定をしていかないといけないのではないかという気がします。
 また知の還元と創造という循環、このプリンシプル自体は大変結構なことだと思います。その好循環を明らかに阻害するポリシーというのが、日本においてとられています。それは研究開発の試料、あるいは方法等が知的財産権をとっているときに、その効力が大学の研究にも及ぶようになってきたということです。確かにある意味で産学連携等でもって、大学が産業と連携をとり、知をビジネスに変える方向に動いていったとする。ビジネスをやるのなら当然に知的財産権の効力が及ぶよというのはわかるのですけれども、それは結局、これまで大学が例外措置をとっていたことによって、少なくともビジネスになる以前の部分でスムーズに研究が進められたことを阻害するわけです。そのループを阻害するポリシーが一方において動いている。この会議においてもその状況の報告がございましたが、これはゆゆしき問題だという気がいたします。ですから、今後、それに対して文部科学省としてはどういうふうに対処していくか、これはかなり本質的な問題として注意を要するという気がします。

主査
 どうもありがとうございました。3点、ご指摘をいただきまして、私も大いに先生のお考えに賛同するところでございます。
 最初の点では、データの中に、例えば大学における研究費の中に企業が占める割合は何パーセントかというようなのも入れておいていただけると、先ほどのご議論にも、大いに加速しなければいけないと思います。それから大型の共同研究ですね。確かにつき合いなのか、本当にやる気なのかというあたりを区別することが大事であろうと思われます。
 それから最後の、これは非常に大きな問題で、実は産学連携を妨げるようなポリシーが動いています。特許システムによってうかつに研究ができないというようなシステムが一方でつくられるということになると非常にぐあいが悪いですね。また、ここでご指摘になっておられますけれども、寄附についても、なかなか寄附ができないというシステムになっていて、産学連携がしにくいことをしっかり書いていただく。
 もう一つ、産学連携の場合にバイドール法がいつできたかという表がちゃんと書いてありますけれども、それでわかるように、アメリカは25年前で、日本はまだ5年目です。韓国も出ていますけれども、このようにいつごろから始めたかということとの関連が非常に大きいんじゃないかと思います。そこの対比がはっきり分かるようにお書きになるとよいと思います。第3期計画でも、「これは少ないじゃないか」というようなことに対して、「いや、整備との対応でいくと、アメリカの何年ごろに相当します」という観点を入れた方がいいんじゃないかという気がしました。

委員
 産学官連携が目的化してしまっているような気が全体としてしたんですが、ただ、今回提示された資料の中で、2-1についていえば、4ページの中の、「出口を踏まえた戦略的・組織的な共同研究の推進」の「2.」で書かれている点は、非常によいシステムだと思うんです。これを組織単位ではなく個人単位でできるようになれば、日本の新領域創出型の研究を産学協働でやれるのではないかと思うんです。これはJST(科学技術振興機構)主催でやりました社会技術研究フォーラムの中での国際シンポジウムで、NSF(アメリカ科学財団)の方からも説明がございました。いわゆるナノ・バイオ・コグニッションという3つの領域を連携した形で共同ラボを人中心でつくっているところで、そのための支援制度というのをやっているのですが、そのあたりを参考にされて、こういう協働のあり方の構築を進めるのが非常に望ましいと思います。既存の古い領域の中でがむしゃらに行っても二番煎じか三番煎じにならざるをえず、しようがないのではないか。国費を投ずるまでもないという気はしますので、こういう点は大事かなと思います。
 それからややネガティブなんですが、企業に対して何か言うべきだ、という点について率直に申し上げると、我々の領域を超えるところで行われている現在の企業会計のやり方であれば、長期的な投資は企業はできないわけです。したがって、大規模設備投資を必要とする新技術の導入というのは、どの企業も、特に大企業であればあるほどひかえているわけです。現在の経済財政諮問会議はそういう企業財務環境をつくりつつあるわけです。そういう中で、こういう長期的視点に立って、大学と共同研究で将来の投資をしましょうというのは、どだい、平仄が合わない。
 また、ここではいろいろ産学官について企業の方が意見をおっしゃっていらっしゃるんですが、例えば経団連のメンバーの中で現場を知っている人はどれくらいおられるんでしょうか。成功した企業の社長さんのお話を聞くと、ほとんど「私は現場百遍」ということをおっしゃっているわけです。ということは逆に、現場を知らなくて社長をやっているような方が産学連携を言っても、現場とは随分意見が違うのではないか。要するに現場でどういうニーズがあるかということを知らない人が産学連携をおっしゃっても、先生方にとっても迷惑ではないかという感じが私はします。もう少し企業経営者自身が技術に対する目をはっきり持つようにする。そのためにMOTであるとか、MBAだとか、いろいろなトレーニング方法があると思うんですが、そちらの方ももう少し強く、ここでは訴えてはいかがかな、と思います。
 以上ですが、産学連携、要するに純粋な企業からの研究資金で一生懸命やろうとしている努力に対し、大きい制度がそれをできにくくしているという社会環境についても、今度の基本計画では取り上げていただいたらいかがかなと思います。

主査
 これは、1番目には、新しい共同体というものをこれからつくってほしい、そういうものに10年先の投資を向けるべきではないかという、大変重要なご指摘でございます。
 それから2番目としては、先ほどの委員もおっしゃったことに対する違った角度からの切り込みかと思いますが、企業の方々は本当に現場を知っているのだろうかということ。これは大学の観点から言いますと、何か大学で新しいことをやったときに、むしろ外国の企業の方が飛びついてくる。そのような現状が現に起こっているということに対し、企業が国内の大学と連携を促進することが望ましいけれども、大学や企業の研究を妨げる方向に今現在行こうとしているのではないかということに対して、しっかりした提言をすべきではないかということです。非常に重要なご提言だと思います。どうもありがとうございます。

委員
 私事で恐縮ですが、今度、産学連携を主体にして、知の創造の方よりも、むしろ知の成果を守る方の独立行政法人に移りました。まだ日が浅くて学習中なのですが、大学で産学連携をやって、それから特許庁関係の仕事に移った最初の1週間の生々しいインプレッションがあります。先ほどの委員がおっしゃったような、いわゆる形態のない「知」というものを商品化したり、権利化したり、売買するという話というのは、物を売るときと大分違っていて、権利を確保するとか、「出口」の方にかなり難しい問題がたくさんある。しかも、これはこの国単独でやる話ではなくて、全世界が協調しながら机の下では足の蹴飛ばし合いを行っているというか、いわゆる利益がもろに拮抗するようなところがあります。実は私自身、大学で契約は必要だと言いつつも、縛れば今度はどこまで縛っていいのかというような、そういう点に対する演習を恥ずかしながら私もやってきておりません。ですから制度的にはわかるし、心情的にもわかるんですけれども、商売となると、心情的・定性的では済まなくなる点がある。知の「入口」の検討も必要ですけれども、これを活用するための「出口」の方、民間の方々はそれで現在戦争のようなことをしているわけですけれども、「知」をつくる側も「出口」に至るまでのループを確立する必要があるんじゃないか。それが第一印象です。では、それを守る一番の橋頭堡である特許庁が、特許庁だけでアイソレート(孤立)してできるかといいますと、難しい。これだけ普遍化し、特に大学が入ってくると、大学の研究者の方々のマインドや国際的な活動の仕方とか、全く階層が複雑になってきて、それを一貫する話はよっぽどそれぞれの立場の人が集まって知恵を出し合わないと、そう簡単にはいかないだろう。これは全く私自身の1週間での印象ですけれども。ただ、これをやらないわけにはいかない。特に「出口」で本当に経済効果を出すか出さないかという話は、非常に重要な部分だと思います。産学連携をやってきた本人として、第3期基本計画では、これまでちょっと不十分だったと思う点、例えば大学における知財・知的情報の活用や調査とかというものも、ハードウェア面で見てれば図書館には科学技術情報の端末が入っていて、LANで一気に閲覧できるのに、特許情報は見られないとか、まだ不十分なところが随分あります。そういう点について、これからやっていけば埋まるところがいっぱいあるような気がします。ぜひその辺を協調して、「入口」から「出口」まで一貫した形でやらないと、一種の施策にはならないんじゃないかと。これは全く準備もなく、最初の出口を扱う総本山に入っていったものですから、まだ生々しいうちに、私の受けた印象として発言させていただきます。

委員
 先ほどの事務局のご説明を聞きまして、非常によくつくっていらっしゃると思いますが、少し歯がゆいなと思う点があります。例えば資料2-1の4ページの、先ほどから出ているところですが、(1)の「1.」「2.」「3.」とありまして、その文章の最後が「取り組みを推進する」とか「構築を目指す」という形になっています。もっと具体的にこうやりますというところが見えると、非常に議論ができるのではないですか。基本計画としてそこまで踏み込んで書けないという点があるのかもしれませんが、それがありませんと、読んだ方は「ああ、そうですか。結構ですね」で終わってしまう。これは第3期ですから、過去の経験をふまえて、ここが核心だということは、みなさんほぼおわかりだと思うんです。最後におっしゃったように、1つは人材だと思います。既にコーディネーターが全国に1,600人ぐらいいらっしゃいますが、しかし本当に大事なのはキーマンとして動ける権限を持ったコーディネーターです。この人がリーダーシップを発揮して活動すれば、例えば(1)の「2.」の、先ほどの委員がおっしゃったような点についても一気に組織ができるはずです。逆にそうでありませんと1つも動かないわけです。既にそういう時期に来ているのではないかと私は思います。そういうところに本当に予算を投下するのか、どうやってキーマンを引っ張り出すのか、具体化する段階ではないかというのが私の印象です。まず、その点だけ最初に申し上げたいと思います。

主査
 権限を持ったコーディネーター、決められるコーディネーターというのが必要ではないかと。これは大変重要な話です。それから具体性。基本計画も1期、2期ときて、大分見えてきているので、具体性の書き方が問題かもしれません。かなり具体的な表現をとられる必要もあるといこうことですね。

委員
 資料2―1の5ページ、6ページの人材というのは、今おっしゃられましたように非常に必要なんですけれども、例えば、私は公立大学に移って驚いたのですが、国の方が非常に整備を進めているにもかかわらず、地方の公立大学は全然進んでおりません。兼業もやっと認められたところです。例えば人材交流するためにNPOをつくろうとしているんですけれども、すぐ県の方から横槍が入りまして、これではできないのではないかというように、いろいろ足を引っ張られております。これは国がやることではなく、私どもが努力して是正するべきことだとは思いますけれども、そういう事実がある。こういうこともお調べいただいて、公立も含めまして大学全体にも基本計画の方針が浸透するような施策を何か考えていただければ、と思います。

主査
 大変いいところをご指摘いただきました。国は進んでいる、私立大もどんどんやっているというのに対して、公立大が進んでいないというのは、私も非常によくわかります。

委員
 多分、公立大は何もわかっていないのだと思います。国でどう起こっているか。そういうことを言うのは私1人ですから非常に苦しいんですが、何もわかってないですね。

主査
 これはぜひ、具体例として取り上げていただきたい。

委員
 以前この会議でもお話した兼業の件についても、それはもう知事に直接言いなさいということで、それをやって、やっと実現できたような次第です。県庁の係官というのは3年ごとに変わっていますから、何もわかっていないという、この事実をご存じいただきたいと思います。

委員
 感想的な話で申しわけありませんが、全体の流れとして、時系列的には大分進んできたと思います。しかし国際比較すればまだまだ揺籃期であるということでこの文章を見させていただくと、まさに揺籃期的要素が非常に多いと思うのですね。
 といいますのは、例えば産学連携でも、大企業がやる場合と中小企業がやる場合とでは全然形態が違いますし、ベンチャーでやるのか、共同研究でやるのかでも全然違いますし、ベンチャーの見方でもいろいろな多様性があるわけです。ですから、それを一生懸命できるだけ整理して書かれているのはよくわかるのですが、現状は多様性があり、しかもまだカオスの状態です。その状態からオーダー(秩序)の状態に移っていく過程にあるときというのは、政策は基本的に規制緩和しかないわけです。オーダーができていない、見通しが立っていないときに、下手な規制といいますか、下手な誘導策を行うのはかえってマイナスになるかと思うのです。
 ここに書かれているのも、精神は大体そんなところだと思うんですが、誘導策として、例えば助成金を与えてスタートアップさせるという施策を行えばうまく飛び上がるかと思ったら、お金を与えたためにかえって飛び上がれないということもあるわけです。そういった助成金制度の場合、現状との対応というのはさらに難しいと思いますけれども、そういう整理をトライ・アンド・エラーでずうっとやっていかないといけない話なのかなと思います。基本はカオスの状態にあるのだから、いろいろなものが相反してくるわけです。おのずからできていくように、できてきたものは大事にしておくというスタンスでまとめていただければ、外国並みになるのはまだ時間がかかるかもしれませんけれども、時系列的にはかなり進むのではないかと思います。

主査
 揺籃期ということで、しかも相手が大企業、中小企業、あるいはベンチャーで全く対応が違うということですね。

委員
 ベンチャーもつくり方、いろいろでしょう。大学の人がベンチャーをつくるといっても簡単じゃないですから。ちょうどうまく銀行出身の人とか、比較的若手の人とか、そういう方と非常にうまく組んで成功した例はよく聞きます。ただ研究した、それでみんな集まって会社をつくった、といっても、それではなかなか簡単にいきません。そもそも研究資金をもらって研究している人は資金繰りなんて考えたこともないわけです。会社で一番重要なのは資金繰りで、資金繰りがとまると、すぐつぶれます。そういったベンチャーと産学連携とは随分性格が違うわけです。ベンチャーの場合、研究費を立てかえないといけないわけですから、接点はできる限り広く持つということが重要かなと思うのです。

主査
 規制緩和や、いろいろな誘導策があだにならないような、柔軟な誘導環境をつくっていただきたいということだと思います。事務局として、この点はどうぞよろしくお願いします。相談に行けば何かできるというようなところになると、非常にいいんではないかというご指摘だと思います。

委員
 資料2-2の2ページあたりの、ベンチャー企業の文化をつくるというような点は非常にきれいにまとめられていて、わかりやすいのです。けれども、具体的にどうやって、どう目指すかということが問題の中の1つになるかと思います。ぜひその起点の1つとしてのチャレンジといいますか、一度やったという、試みを行ったということに対しての評価ポイントを高くしてあげてはどうか。例えば、ベンチャーといってもどういう形でかかわったかも含めて、大学の技術が何らかの形で移転した時点で評価のポイントにするとか、そういうことを具体的に、小さなことからでいいですのでやっていただかないと。結局は結果があまり大きくならなかったり、結果をだれも知らなかったから、技術移転の事実は自分だけしか知らなくて、世間的には駄目だという形にしますと、本当にチャレンジし、試みようとした方が、「あれ? これじゃやりがいがないぞ」ということで退いてしまうと思います。そこの部分をどういう形にして言葉にするべきかわからないのですが、もう一つポイントの柱として立てるぐらいの気持ちでお願いしたいと思います。ぜひチャレンジし、何かを試みたということに対してのポイントというのを出していただきないな、と思っております。例えば韓国あたりのベンチャーの数がかなり多いので驚いたのですけれども、多分この辺は、自分たちの技術をポーンと相手が活用してくれたことだけでよし、としている部分がすごくあると思うのです。いつか店頭公開のときも、そういう感覚でいらっしゃるんですね。自分たちのものを違う人が勝手にM&A(吸収・買収)でやってくれることをポイントにして、技術が活きたということで宣伝にしているのですね。そのように、どういう形でもいいから活用され、実用化されたということにもっとポイントを置けるような仕組みといいますか、視点というものを、最初からいただくとありがたいなと思います。

主査
 実際にチャレンジをした経験、あるいはそれが本当に活用された経験を大いに生かすべきだということで、まことにごもっともです。同時に失敗したら失敗したということだけではなくて、経験を活かして次にチャレンジができるような、そういう仕組みが欲しい。1回失敗したからこれは駄目だ、ということではなくて、1回失敗したという苦い経験を持っているからこそ、次はもっとうまくやれるだろうという、そういう活かし方をお願いしたいということだと思いますので、事務局として、どうぞよろしくお願いします。

委員
 少々視点が違うのですが、文部科学省の所掌だろうということで。実は産学連携をやっていますと、企業側の方の人材育成にも関与する機会が多いのですが、日本の人口分布がこの10年で強烈に変わるということを企業の人たちは非常に心配しています。日本の場合、人材の獲得競争に対して国内だけに目を向けているのでは限界があるとすれば、企業の常識だと、やはり人材活用はアジアに向けてグローバルに動いているということになるのが現実です。ややもすると、こういう計画に書かれるものはみんな国の内側のベクトルに向いてくるのですけれども、事実はグローバルな人材獲得競争に向いている、というふうになってくる。特に地場産業的に物づくりをしている中小企業のようなところの、大企業が国外に出ていっちゃうとどうしても自分も出て行かざるを得ないような立場の人たちが、どうやって人材をいろいろなところから集めるかというのは深刻な問題であると、よく一緒に産学連携をやっていて聞くのです。
 実はアジアに限って言えば、日本の大学はアジアから留学生を受け入れて、その人たちが帰国して随分ビジネスをやっているんですが、なかなか出身の日本の大学との連携を活用しようという積極性がなく、淡泊な面があります。向こうの方も、ある意味でせっかく日本に来て勉強して、少なくともランゲージバリア(言葉の障壁)がなくなっているという方々が、ビジネスチャンスを求めているんですが、欧米の大学ではギャザリング(会合)等のケアが非常にあるのに対して、これは自主的に各大学がやればいい話なんでしょうけれども、国内大学ではその努力がなかなかビジネスにまで及んでいない。そういう人材育成という意味からも、もう少し開かれて、国際的な戦略とまではいかなくとも、ネットワークをどうやってつくるかということも議論に入れていただくと、企業の方々とのインターフェース(媒介)になるような気がするのですが。

主査
 留学生をもっとうまく活用していただきたい、外国に帰った人たちにもきちんとネットワークを絶さないでやっていただきたいし、国内もそうしてもらいたい、ということですね。産業界が優秀な留学生を採用するということが、いい留学生が日本の大学に来るということになると思われますので、そういう点も場合によっては、どこかで触れておいていただいて。グローバルな人材獲得競争をやっているんだということは大事だと思います。もちろん男女共同参画というのは1つの大前提だと思いますけれども。

委員
 1つ、ぜひ基本計画の中に取り入れていただきたい提案なのですけれども。日本にも産学連携で大変うまくいっている事例がいっぱいあるわけです。好例としては、JSTが中心になってやっています井上春成賞というのは、まさに産学連携で両者を表彰している事例です。それから、それに政府の制度はどういうふうに係わったかというのも、そういう賞を対象にしてみ見れば分かります。実はあまり係わっていない方がうまくいっているケースが多かったりしますが。
 それから、具体的に産学連携で大きくなった事例というのは、一つは既に文化功労者になられています光触媒の方の例がありますし、それから古くは日本の半導体産業なり、ソニーが伸びた前提としての当時の電総研を中心とする、いわゆる電子工学屋さんたちの献身的な集まりの会があったりしたわけです。産学連携は日本では育たないみたいなことばかり書かれていると、ちょっと齟齬があると思います。むしろ文部科学省としては、こういう具体的ないいことをやってきたじゃないですか、というのをはっきり認識した上で、なおここが足りないのだ、という言い方にしないといけないと思います。3期計画になれば結果を問われるんだと思うのです。1期、2期では残念ながら好例はないのです。数は増えても、トピックになるTLOができたわけでもありませんし。率直にいって、むしろそれ以前にそういういい実績が出てしまっている。そこのところをよく第3期計画の前提として考えられてはいかがと思います。以上、提案です。

委員
 今の委員のお話とも若干関連するんですけれども、米国において確かに産学連携が急速に立ち上がってきた。外から見ますと、バイドール等の制度的なものしか見えないのですが、実は先日、米国のある大学で技術移転を専門にやっている方々と話す機会がありました。その際におもしろいことを言うな、と思ったのは、米国の大学で、企業の使い物になるような研究が急速に進展し始めた一番の根っこは何かというと、民間が基礎研究から手を引き出して、その人材が大学に流れたためであるそうです。有名なところではIBMがそうですし、ベル研究所、最近ではルーセントテクノロジー、ああいったところがそうで、ああいった方々が西部にまで動いてきたということがあるわけです。したがって、大事なことは技術的な発展のためになるものは一体どういうもので、それがどういうプロセスでビジネスにつながっていくかということをわきまえている民間の方が大学にどんどん入っていく、そのことがものすごく大事なのだと思います。
 日本も、総合科学技術会議あたりが、できるだけ人材の流動を、ということを言っていますが、それはなぜか大学間等で、できるだけよく人材を回しなさいというだけにとどまっております。こう言っては何ですけれども、世の中のものを知らない人間が、ものを知らない場所を回っているだけだという話になるわけです。
 したがって、第3期計画では具体的にどこに組入れるかわかりませんけれども、そういう流動化を支える仕組みですね。現在、そういうものが多少はあるんですけれども、民間で使い物にならなくなった老人が大学に行って、余生を過ごしているというのが実態なのです。大変失礼な言い方かもしれませんが。もちろんそうではなく、東芝から遠く外ヘ行かれた方もいらっしゃいますから、例外があることは認めますけれども、そうではなくて、現役でばりばり仕事をしている方が大学に行って、その人が仕事をできる環境を大学の中につくってやる。そういう流動化促進をサポートするシステムが、私は大事ではないかと思います。

主査
 企業で実際に業務あるいは研究に従事した人が大学に移り、大学では素直にやれない研究をどんどん立ち上げ、企業と連携をしながらやっていく。こういう例も非常に多いわけで、IBM、それからかつてのベル研究所ですね。ベル研究所はやり過ぎて、結局かなり大学にとられて、研究所自体は弱体化したのですけれども。日本も、今やまさしくそういう時期にありますから、企業の優秀な若い方を採用できるといいますか、そういう意味で流動性は大いに確保すべきではないかということには、大賛成でございます。
 それから日本はどうも産学連携がうまくいっていないということに対しては、先ほどの委員がおっしゃっておられた意見に賛成です。例えば、実は日本の学会というのは毎月1回開かれていて、あれは大変よい、世界に例のない産学連携の仕組みだと思うのです。これはもうずっと、特に戦後の時期には学会を中心にした産学連携が猛烈に行われています。これは非契約型なものですから、記録には何も残らないんですけれども。しかし、あれが産にも学にも非常に活力をお互いに与えていた。この委員会でそういう非契約型のことを申し上げますと、せっかく産学連携をやろう、まだうまくいかないから頑張ろうという前提に水をかけてしまいそうなので、そういうことは発言いたしませんでした。けれども、委員の方々もそういう趣旨のことをおっしゃいますので、やはり日本の過去、戦前も含めてですが、戦後も非常に実はある面でうまくいっていたのですね。そういう非契約型の日本流のやり方でうまくいっていたということは一方で認めた上で、契約型については法的な整備や社会的なコンセプトの問題もあって遅れてきて、現在立ち上がってきているのだと。そういう記述がありませんと、幾らやってもだめだというふうになると、これはちょっとまずいのではないかなという気がいたします。ですから、過去うまくいったということはぜひ取り上げていただいた上で、もう実績はあるんだと言っていただきたい。私は逆にいいますと、実はバイドール法成立には、戦後の日本の産学連携が相当影響を与えたのではないかと思っています。それからヨーロッパのエスプリとか、EUができた後の大学と産業界の共同研究というのも、日本の産学連携が非常に強い影響を与えた。彼らが現実にそう言うのです。ですから、そういう影響を与えたということをぜひどこかに書いていただいた上で3期計画に臨んでいただきますと、実積がきちんと別の形ではあって、それをさらに活かそうという迫力が出てくるのではないかと思います。ですから、これはぜひよろしくお願いをいたします。

委員
 先の委員もおっしゃられましたが、資料2-2の11ページのグラフを見て大学発ベンチャーの数だ、と言ってしまうのはどうかと言う気がします。実は学生、院生あるいは卒業生の起業したベンチャーというのは、我々でもわからないぐらいあるのです。そして、最近はかなり急激に増えています。実際に、関西でそういうベンチャーの審査委員会をやり、支援しますからというと、どんどん応募がきました。全部に行き渡らないのは当然なのですが、実際、具体的に皆がもうベンチャーをやっているわけです。ただ、それが会社組織になっているのか、アルバイト的にやっているのかは、千差万別ですけれど。しかし、非常に面白いアイデアを持ってやっているのは事実です。そういう点ではベンチャーと言えるだろうと思うものがあるので、どれぐらいまで把握なさっているかなんですが、これは大学でも把握できていないのが現状です。しかし、何かきっかけがあって、ベンチャーのコンテストをやりますよというと、一気に集まってきます。そういう点の把握をしておくと、もう少し認識が違ってくるし、数だって一桁ぐらい増えるのではないかという気がしなくもないのです。
 もう1点は人材交流ですが、大学から見ていますと、企業から来られる方は任期制やその他の制度を使ってかなり増えているのですが、大学の先生が企業へ行くのは制度の不備等のために非常に難しい。ですから、企業から来られた方も、企業のことを何も知らない大学の先生集団の中に入ってしまい、動きがとれなくなってしまいます。そういう点で、大学から中堅の先生が1、2年企業へ行って、本当に企業を身をもって体験してくるような相互流動性がないとだめではないかというのが私の意見です。

主査
 ベンチャーの数は見かけよりもっと多いのではないかということですね。データを少し集めていただきたいということ。それと、人材交流で企業からは現実に本当にいい人が、大学に現在来ている。しかし、逆に大学から企業へは行っていない。これは卒業生はどんどん企業に行きますけれども、先生が行って、企業の経験をして帰ってくるというのがあまりない。アメリカですと、夏休みが2カ月もあり、その間の給料を払ってもらえないので、企業に行って給料をもらう自動的な産学交流が行われています。そのような形で企業側に採っていただけるような制度も必要ではないかということでございます。

委員
 11ページのベンチャーの国際比較表というのは、なかなか印象的だと思うのです。日本と韓国で10倍違う。一桁違うというのは印象的です。我々もよくベンチャーの関係でアメリカやドイツの例というのはよく耳にするんです。それだけに、では韓国は何があるのかというのは調べていただいたらおもしろいのではないかと思います。これだけ数が大きくなったのには、多分何かがあったのでしょう。それが第1点です。
 それから、助成のあり方というのが、スタートアップのとき、力がないから何か助成してやるというのは重要なことだと思うのですね。助成金だとか工場を貸すとか、いろいろなことをやっていますよね。大体3年ぐらいをめどにしてやるわけです。3年目ぐらいが、大体ベンチャーとの解約の時期で、解約のときに放り出される。じゃあ、これを5年にしたらよくなるかという、それはまた、助成をしたために5年目が最悪になるというようなことがなきにしもあらずです。ですから助成のあり方というのも、うまく民間資金とスイッチできるような形が良いのではないか。一方で出してちょん切って、一方で民間式のキャピタルを用意する。単純にちょん切るだけではなくて、うまくキャピタル資金が入れるような制度にできないかなと思います。
 それから話は変わりますが、研究者というのは基本的にビジネスはできないわけですね。だからビジネスが出てきたときに、研究者が一緒になって仕事がやれる仕組みをつくるということが基本中の基本だと思うのです。ビジネスをやれる人を育てるという教育ですね。最近ビジネススクール流行ですから、そういうものの成果が出てくれば、また世の中は変わってくるかもしれませんけれども、そういう教育は必要かと思います。

主査
 韓国で何があったのかという、これは非常に近い国ですが、確かに多い数ですね。実は韓国が、例の経済的危機に陥る前にすごく産学連携をやったんですね。大学院にどんどん寄附した時期がありました。あるいはそういうことと関係があるのか、お調べいただけたらと思います。

事務局
 そのあたりは私どもで調べまして、ご報告させていただきます。

主査
 どうもありがとうございます。それから、ベンチャーというのは3年が山で、これが支援の仕方に非常に柔軟に、実質的に対応をしていかないといけないのではないかということですね。ケース・バイ・ケースで全部違うのだというご指摘、これも非常に重要だと思いますし、それからその場合、科学技術という視点だけではなくて、ビジネスができる人材育成が必要ではないかと。これは本当に貴重なご指摘をどうもありがとうございました。

委員
 産学官の成果をどう見るかというのは、多分ベンチャーだけで見られないところが相当多いのではないかと私は思いました。というのは、ベンチャーというのは正直いって、別に大学発に限らず、日本の場合かなり難しいというのが現実でございます。大学発ベンチャーはだんだんよくなっているというお話でしたけれども、正直いってまだまだ相当厳しいのではないかという印象を私は持っております。なぜかというと、別に大学発に限りませんが、ベンチャーで非常に技術をお持ちの方とか、研究的に水準が高くても、事業として成功していくためには、そのときに売れるかどうか、販売力といいますか、ちょっと大学でやっていることとは違った観点が非常に多い。ここのところで相当難しい点がある。
 それで私どもも、例えばファンド等にも係わっておりますが、そういうファンドを実際にやっていらっしゃる方から見ても、先ほど補助金から民間資金に接続する方法はないかという話がありましたが、ファンド自体は今現在日本にできつつあります。ですから資金的には大分できてきていると思うんですけれども、では選択するときはどうかというと、やはり売れるものをつくっているベンチャーを選ぶ。それから、例えば売れるところにうまくアライアンス(協定)の意図を込めてというか、そういうところで選択されます。そのときに技術が高くても、たまたま売れないというものが結構あるようでございまして、そのために失敗してしまうということがあるのだろうと思います。
 企業側も産学官に期待しているところというのは、新しいビジネスチャンスをすぐ得たいということもおそらくあろうと思いますけれど、もう少し基礎的な研究を自分たちでなかなかできなくなってきたのも事実ですから、そういうところを一緒にやって、将来に備えたいというところもあろうかと思います。ですから、成果を必ずしも大学発ベンチャーだけで見ずに、いろいろなところに、例えば企業の研究所の方と大学の先生とで論文を出されて、海外で非常に高く評価されているとか、あるいは、それが10年後に成果になることもあるわけです。そういうことも含めてとらえられたらいいのではないかなと思います。

主査
 ベンチャーの場合には、かなり売れるベンチャーといいますか、そういう販売力を持ったベンチャーが支援されているということ。それからベンチャーで産学連携の成果を量るというより、もう一つ大事なのは、産業界においては大学の基盤的、基礎的な萌芽的研究に期待をしているというところが多いので、そこを少し長い目で、きちっと評価をしなければいけない。このことはこの資料のどこかに書いてあったと思うのですが、そこをもう少し強調してほしいと思います。

委員
 これは半分受け売り的な話になりますが、こういう会議で議論しているマクロな政策というのは、それなりに国の標準として、いろいろな配備をして議論されるのですが、実際に例えば産学連携をやるなり、知財を活用するということは、ローカルで地域に密着した話なのです。これは知的クラスターの議論でもよく出てくる話なのですが、ミクロとマクロというのはオートマティックにつながるかというと、視点が全く違うので誰かがスペシファイ(明確化)してつなげないと、なかなか上の思想が下に浸透しない。今、いろいろ新しいところの活動の状況を聞かされているのですが、例えば休眠知財の活用なんていうとローカルで、鳥取県と東京都では全く違う状況です。同じパターンの人が東京都で成功をして鳥取でも成功するというのはあり得ない、というぐらい、地域の特徴に根差した話です。産学連携も全く同じで、ある意味でマクロな政策を活用するために、受け側のミクロな施策を打っている、という形が良いのではないか。マクロが全くわからないというのでは受けようがないという、そういうことで草の根の活動を援助というよりは、独自に努力したところに、それこそ選択と集中という形でいわゆる勝ち組をつくっていくのだと思うのですが、そういうときに、そちらのミクロなものとの密接な会話がないと。やり放しで、ではどうなったかという話になると、先ほどのような“金の切れ目が縁の切れ目”になって、そこでベンチャーと同じようにすべてが終わってしまうということになるのではないかと思います。ですから、実はこういう会議でも現場で動いている人たちの意見を吸い上げるというのが、多分この次のステップでは重要になってくるのではないかと思うのです。これは全く受け売りの意見で恐縮なのですが。

主査
 確かに、ミクロとマクロ、それから地域差というものが、大変重要である。確かに産学連携というのはさまざまなものがあるわけですから、産学だけではなくて、産だけではなくて官、またいろいろな社会や地域のガバメント等、いろいろな主体があると思われますので、要は柔軟な見方が必要なのではないかと考えられます。

委員
 ベンチャーだけではなく中小企業支援ということで、各自治体等がいろいろなアドバイスを幾つか持っているわけですね。あれを伺うと、いいようで悪いような気がするのです。何でもただで供給してくれるわけです。経営コンサルタント業界というものが育っていかないわけです。後援会としては、アドバイスで高い給料をもらっているのです。ならどうするのか、というわけにもなかなかいかないのですが、ただの相談をやめてしまえ、というわけにもいかないのだけれども、ただでやるということはマイナスの面もあるということを認識しておいた方がいいのではないかなと思うのです。

主査
 ただで支援すると人は育たない、ということですね。

委員
 その産業に入って儲けようという人が出てこないわけですから。

主査
 きょうは議論に出たかと思いますが、もう一つ、博士人材の層の薄さといいますか、この層の人材が日本は圧倒的に少ないのです。ドイツに比べると半分ぐらいなのです。ですから、そういうこともかなりポイントかと。先ほど人材育成については別にやるので、この場ではあまり取り上げないというふうに事務局がおっしゃっておられましたが、博士人材が自分で動けるという意味で、あるいは割とベンチャーをやったりすることが多いのではないか。ドイツなどがそうですね。ドイツは特に卒業生を自分の大学に置いておかないで、という形になりますから、ついでにベンチャーをやろうとかというので、どんどんベンチャーが出てくるわけです。そういう博士人材の層の厚さの問題と、仕組みの問題が関係するかと思います。

委員
 さっきの実例で、アメリカで電話の使い方を効率化して随分利益を上げた人がすぐ独立してコンサルタント業を始めて、いろいろな会社に電話の使い方を教えて本人も儲けられるわけです。そういう職種といいますか、自分も儲けて、またそれを活用することによって儲けるという、そういう企業支援型の層がでてこないと。お役所が窓口に座っていて、「どうしましょうか」といってやっているのでは、あまり効率が上がるような気がしないのですね。

委員
 先ほどの事務局のご説明で、もっと企業にも注文を出したら、という説明があった、そのラインの1つですが。ベンチャーの数が書かれているのですが、ベンチャーキャピタルの動向というのを書いていただきたいのです。ベンチャーキャピタルが公の資金を使っている国なんていうのは日本だけだと思うのです。大体、ばくちのお金でやるのが当たり前、あるいは篤志家が自分個人の財産をリスクをかけて出すお金で、アメリカの場合、現在、ベンチャーキャピタルが余っているようですね。それで世界に資金の市場を求めてきているわけですから、日本にも、もし、いい種があれば、アメリカのベンチャーキャピタルが入ってくるということになります。
 ただ問題は、これは別の場で非常にネガティブに働くのだと思うのですが、企業倫理やコーポレートガバナンス、あるいは技術者の倫理等の別の世界で動いている問題が、大体こういうことをやろうとしている人たちの、どちらかというと手かせ足かせになっていく。そういうトレードオフの関係があちこちで制度としてできるので、その企業のみならず、そういう制度との関連におけるトレードオフの問題を十分留意する必要があるということを、どこかに認識論として書きこんでいただいた方がいいのではないかと思うのです。すべて善の、よいことだと思っている人だけでやっているときはこのとおりだと思うのですが、裏から見る人がいるわけですから、そこのところが日本の場合には陰湿で、やりにくい雰囲気をつくっていることにもなる。また、それが今度は公に技術屋倫理とか何かということで醸成されてくると、非常に難しい問題です。キャピタルの問題と社会的なモラルといっておきましょうか、そういう問題の2つの面を、やる方からは要求として出しておいていただいたらいいと思います。

主査
 どうもありがとうございました。その点は非常に重要な点でございます。

委員
 海外に対する日本の企業の投資が非常に多いという中に、多分、研究者を派遣するお金が入っていると思います。例えばスタンフォード大学で、この間、聞いたのですけれども、研究に来れば1人5万ドル取るんだそうです。多分、先の委員のおっしゃる統計の中に入っていると思います。ところが、日本の大学は、我々、非常にたくさんのお金を社会人ドクターからもらっているんですけれども、そういう金額は入らないのですね。ですから、ある意味では、産学連携といいましても、向こうではリサーチメンターといっているのですけれども、産業界が日本の大学に博士の学生を派遣するとか、研究員を派遣するという、そのことももっと強調していただければと思います。それは非常に進んでいると思いますので、その記述がちょっと足らないのではないかと。そういう産学連携もありますということが重要だと思いますので、ぜひお願いします。

主査
 産業界からの日本の大学への派遣、これは相当の数あるんじゃないですかね。研究生としての派遣。

委員
 それを入れると、かなりの数になるかと。

主査
 普通は研究生というと、日本ではほとんど産学連携にはカウントされませんし。

委員
 それから税制の問題で、事務局のおっしゃっている税制、これは本当に実現するのですか。かなり強力にやらないと、なかなか実現しないと思いますが、。

事務局
 昨年度ようやく実現し、ただ、これがどの程度効果があるのかとか、使い勝手がいいのか等を一度、調査をしておりまして。

委員
 学生として送ると本当に研究いたしますし、彼らもお金を出しますから、そういうのを税制に組み入れると、もっと進むと思いますけれども。

委員
 私自身は直接現場実態に詳しくないものですから、印象になりますが。ここ数年、こういう場に携わって、非常に気運が盛り上がっているということがあるのですけれども、それが広がりとして、世の中に広がっているのかというようなことでいうと、いまひとつの気がします。自分の周りでも、昔よりはこういうことを理解する人が増えてきたのですが、東京のこういう会議で議論していることが、末端で本当に理解されているのかというと、そうではない部分がたくさんある気がします。大学でも、理工系学部が大きな大学組織の一部であるということもあって、著名大学の先生と話していても、学内の理解は言うほどではないんですよ、という話をよく聞きます。
 そういうことで、第3期計画に向けて、こういうことの大事さというのを主張し続けるということは大変必要なことかと思います。ある意味お役所もそうだと思うんですが、情報発信をもっとうまくするといいのではないか。今回の会議は非常にいい資料がついていますが、こういうものが、例えばインターネットで知ろうと思えば誰でも知ることができるとか、大学側にしても、こういう試みをやって、大学発ベンチャーであろうと研究であろうと、こういうふうにうまくいっていますよ、というたぐいの情報を、広報紙でもいいしインターネットでもいいし、情報発信を相当本気でやっていただくのがいいのかな、と思います。それを伝えるのがメディアの仕事だろうということは言えるのですけれども、伝える側の人の数もごく知れたもので、どこかでアンテナに引っかったことをもとに、原稿を書くなり世の中に伝えるということでしかないのです。ですから、いろいろな局面で情報発信を心がけていただきたいなというのが、要望でもあるのです。

主査
 情報発信をきちんとやる。これはかなりお金が要る問題でございます。ですから、そういうことに関してもしっかりした予算をつけていただいて、ちゃんとした、わかりやすい、専門家ならわかるだけではなく普通の社会人にわかるという、そういう情報発信を心がけておきたい。また、資料はたくさんお持ちなので、こういうものをどんどん出していただくようにお願いしたいと思います。

事務局
 いろいろ貴重なご指摘ありがとうございました。実際上産学連携の現状を見るときに、さまざまなデータ・指標というものを見ながら、ある部分でひとつの方向性を持つインパクトを出すために、確かに非常に乱暴な整理をしていたのだな、ということを思います。少しデータの資料、あるいは指標の整理の仕方、現状、どのように把握するかということについて、もう一度、吟味をさせていただこうかと思います。
 それから、第2点目で、人材問題について大分ご議論いただいたのでございますけれども、私ども、今、多少迷っている部分がございます。と申しますのは、いわゆる産学連携のフレームの中でとらえるときに、産官学連携のフレームの中で幾つかのアスペクトがあるのです。1つは教育の需給のギャップです。産業界から今求められている人材は、例えばMOT人材はどうか等、そういう需給ギャップで求められている人材に対するアプローチがございます。もう一つは、今、例えば高等教育局でいろいろ検討されているように、むしろ教育あるいは教育のプログラムそれ自体において産学連携をどう進めていくかということです。例えば大学院生を入口・出口も踏まえて、もう少し総合的に育てるための長期インターシップをシステムとして、パートナーシップを組んでやっていこうとか、あるいは大学院ドクターのあり方として総合性とか、さまざまなニーズギャップの問題に対して、カリキュラムをもう一回、分野ごとに全体として体制を見直そうと。これは高等教育の方で現在進めておりますし、またいろいろな人材に柔軟に対応するに当たって、学部とか大学院に限らない、いわゆる1つの柔軟なエクステンション(拡張)の仕組みをもっとつくるべきであるいうのもあります。これは恐らくシステムの問題で、産業界の方々と協力しながらプログラムをどうやって組み立てていくか考えるという、いわばそういう意味での産学連携というケースです。それからもう一つは、今回特にご議論がございましたように、人事、人材交流の部分でもございます。このあたりは専門職大学院の中身の話として、理論と実務のさまざまな交流の中で新しいベースをつくっていこうよということで、企業から大学へという方々が、ここ数年のタームで言えば、相当に、特に法人化を契機として増えているということが言えるのだろうと思います。場合によれば企業に行ったり来たりするという、例えば名古屋の赤崎先生が大学と企業を行ったり来たりしながら研究を行うという、そういう良い意味での土壌づくりというのがなかなかシステムとしてできていない。それをどんな形でつくっていくかというご提起もありましょうし、まさに流動性の問題、任期制の問題等いろいろな問題も絡んで、むしろ企業と大学のベースになる人の交流の部分をどうするのかという、そこの問題だろうと思います。
 もう一つ、例えば留学生が実際上、なかなか日本の企業には就職できないというのが留学生側の悩みであります。企業の方に聞きますと、「いや、オープンなんだけれども来ないんだよ」という議論があったり、なかなか難しかったりします。日本に留学して帰った学生をどうケアするかというような動きでありますとか、最近の、例えば中国、韓国の状況の中で、東大と東工大が清華大学と組んで新しいGWP(Grobal Ware project=国際化推進計画)のプログラムをつくって、むしろ今後の関係を見据えた新しいプログラムを、どちらかというとかなりビジネスベースで一緒にやっていこうという動きもあります。つまり日本の大学のオフショア(国外での)プログラムをいわば制度的に道を開きましたので、それで思い切って出ていこうという動きもあります。今、フェーズとして幾つかの面があり、産学連携というタームの中でどこまで人材委員会と兼ね合いながらご議論いただくか、もう一回そこは整理させていただきたいと思います。

主査
 まとめていただきましてどうもありがとうございました。結局、大学と国といいますか、国にもいろいろサイドがありますし、研究サイドもあれば行政サイドがありますが、それと企業とが本当に一体感を持って本音できちんと議論して、短期に本当にいい業績を上げていくための本音の意思疎通といいますか、それがひとつ非常に重要ではないかというふうにおっしゃられたと思います。その辺も、強調していただければと思います。

○ 「その他」について

  • 資料4、5、6に基づき、「17年度概算要求のポイント」及び「大学知的財産本部審査小委員会の改編」について事務局から説明があった後、委員による自由討論が行われた。
    その内容は以下のとおり。

委員
 大学知的財産本部審査小委員会については、ここまで動いているわけですから特にどうこうということはないのですが、通常の評価論の原則からいいますと、採択を決めた人がその結果を評価するというのはいかがなものか、ということになっております。

主査
 私もその点は賛成です。ここは事務局でご考慮いただきたい。

事務局
 委員の人選につきましては、またご相談させていただきながら、採択時とはイコールではないような形で、外部的・客観的な評価ができる体制を考えていきたいと思います。

委員
 評価される方は大変ですね。本当の仕事をやるよりも、評価の資料をつくるのが大変だと思って、ちょっと同情します。

事務局
 ご報告でございますが、前回6月末にこの会議を開きましたとき、利益相反への対応について大学の取り組みが若干遅れているし、そこは大学に任せるというところもあるけれども、もう少し後押しするようなことを考えてはどうか、というご指摘を多々ちょうだいいたしました。私どもも、そのご指摘を踏まえまして、既に終了いたしましたが、8月3日に「利益相反マネジメントを考える会」という会合を開きまして、さらなる取組みの促進や、既に進んでいる大学のグッドプラクティス(良い事例)の紹介をしながら取組みを促す機会を設けさせていただきましたところ、全国から約400名の大学の関係者が集まっていただきまして、ご議論をいただきました。
 その後の状況でございますが、数値的には、まだこれから統計をとろうと思っておりますけれども、秋以降、各大学で、相当この問題についてしっかり取組むということで、ポリシー策定、またマネジメント体制の成立に取組んでいるというような状況でございますので、一点ご報告をさせていただきます。
 もう一点、同じく6月の会議の際、「イノベーションジャパン2004」という大きな全国的な大学見本市を、今年度経済産業省とともに実施をさせていただくというお話をご紹介させていただきました。当見本市にご出席いただいた委員の方もいらっしゃるかと思いますが、9月の28、29、30と東京国際フォーラムを3日間借り切る形で大きな見本市を実施させていただきましたところ、3日間で3万5,000人にわたる大学関係者、また企業の方々も相当たくさん来ていただきました。アンケート調査等行いましたけれども、企業も研究所で実際に研究を担当している方々にたくさんご来場をいただきました。これは、1つのきっかけにすぎないわけでございますけれども、こういう形で少しずつ、産学の対話も含めて情報発信を進めさせていただきたいと思っておりますので。今後ともご指導のほどよろしくお願いしたいと思います。

5.今後の日程

 次回については今後日程調整を行う旨、事務局より連絡があった。

お問合せ先

研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室

(研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室)