産学官連携推進委員会(第25回) 議事録

1.日時

平成16年4月20日(火曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省 10F 1会議室

3.出席者

委員

 末松(主査)、川崎、北村、小林、清水、白川、田中、田村、平井、吉田

文部科学省

 結城文部科学審議官、丸山研究振興局審議官、井上科学技術・学術政策局次長
 田中研究環境・産業連携課長、伊藤技術移転推進室長、
 笹川技術移転推進室長補佐、鎌田研究環境・産業連携課長補佐
 杉江研究環境・産業連携課専門官 ほか

オブザーバー

説明者
 瀬戸小樽商科大学助教授、西尾富士通総研主任研究員、藤田東北大学助教授

4.議事録

○ 「知的財産の管理・活用の具体的在り方」について

  • 資料1‐1に基づき、「知的財産の管理・活用の具体的在り方」の報告について東北大学の藤田助教授から説明があった後、委員による自由討論が行われた。
    その内容は以下のとおり。
    (◎・・・主査 ○・・・委員 △・・・事務局 □・・・説明者)

主査
 これは今後の産学連携手法の構築のモデルということで、大変重要なポイントを列記していただいておりますが、ご意見、ご質問をいただきたいと思います。

委員
 この調査そのものについては非常に緻密にやっておられるのですが、少しこの調査を離れて上位概念で若干整合性がどういうふうにとられるのかという点について、お伺いしたい。4ページの機関帰属、これは知的所有権の機関帰属、それとそれにかかわった人材がA大学、B大学、C大学、あるいは民間企業等に異動する場合、一方の政策では人材異動を促進することによってCOUをつくるとか、あるいはそういう効率的な研究開発を促進しなさいと言っているのですが、大学という機関側から見ると、ある特許権を持っている方が余り簡単にあちこち動かれるということについてはネガティブにならざるを得ないですね。そういう点でどういうふうに考えたらいいのか。これはA大学とB大学との異動のあったところで、機関間で特許権の売買をやるというようなことも1つの解決方法なのかもしれませんが。
 もう1つは、基本的にこの場合に知財を大学が所有することによって何らかの収入を得ようとしているわけですが、一方では産業活力再生法による日本版バイ・ドールということで、国のお金でやられた特許についてはできるだけ廉価で開放しなさいということが、政策としてとられている。そうすると、確かに産学官連携を行う上で、ここで検討されたようなルールづくりは必要なんですが、そういう上位の政策概念とどういう形で行政当局が調整を図るかという問題意識が必要だと感じます。本件の調査自身は大変な問題を指摘していただいているのだろうと思いますし、大事なヒントだと思いますが、そちらの点も気になります。

主査
 2つとも大変大事なことですね。できる人だけは、本当は大学にとどめておきたい、流動性からは離れたいということなんですが、それは流動性に反するじゃないかということ。そして、せっかく国のお金を投資して取った特許はできるだけ廉価で開放するという政策もある。この辺は、報告書の議論の結果として何かございますか。

説明者
 報告書の委員会でも非常に重要で難しい問題ということで議論されました。権利の帰属は完全に発明の完成時の大学に帰属すると決めてしまおう、これが原則である。まずここをはっきりしようということです。それで、人材の流動性を阻害しないためには、大学間でのライセンス契約とか、その場合に余り高額なライセンス料をかけてしまいますと流動化を阻害しますので、大学間の協力が絶対に必要である。それから、2点目のバイ・ドールの関係で大学の発明をなるべく安価に産業界へ、ということなんですが、大学の方も法人化されまして、かなり財政的には厳しく管理されています。共同研究に関して何もその大学に経済的なメリットがないと、なかなか研究が促進されないのではないかということもありまして、その辺のバランスが大事だと思います。大学にも経済的な収益を考える、これは非常に重要だという議論がありました。

委員
 5ページの(3)の改正案、幾つか非常にいいことを書いておられると重います。ただ、いろいろな裁判事件等を考えますと、例えばポツ2ですけれども、「特許法35条4項で、明確化する。」こうありますが、だれが明確化するのですか。要するにこうやってほしいという希望を言っておられるのか、それともだれがこういうことをするか想定しているのか、素朴な疑問があるのですが。

説明者
 今まで特許法の35条の条文には相当な対価を算定する際の考慮すべき事情として、使用者が発明によって受けるべき利益と、それから使用者の貢献度というこの2点だけが規定されています。今度の法改正では、これ以外にもう少し具体的に幾つか規定しようということになっていますので、発明者の報酬等をもう少し具体的にこの条文に入るてはどうか、とここでは言っております。

委員
 それは提言ということでしょうか。この報告は、どういう立場にあるのでしょうか。

説明者
 これは法律で条文に決めることになります。ただ、その前に使用者と従業者が自分たちで合理的な契約をした場合、それは尊重されます。それが合理的ではないと判断されたときに、裁判所の裁判官がこの条文に基づいて対価を算定します。

主査
 ちょっと質問と回答が行き違っているようですが……。

説明者
 失礼しました。この法改正については、審議会や特許庁等で、現在準備をしているところだと思います。

事務局
 だれが決めているか、検討しているかと言えば、特許庁で特許法にはこんな形で書こう、という考え方で進めているかと思います。

委員
 この報告は参考にしておられるのでしょうか。

事務局
 今国会に特許法の改正案がちょうど提出されておりまして、その中に委員のおっしゃったような追加の文言を盛り込んだ条文が出ております。

主査
 質問は、その追加が適切に反映されるようにお願いしたいということですね。

事務局
 考慮される事項というのは、書かれております。

主査
 これは後非常に大きな影響を、既に及ぼしているわけです。その辺の対応は、難しいですね。

事務局
 ちょっとよろしいでしょうか。先ほど委員が先ほどおっしゃった日本版バイ・ドール法で国が得た委託開発等の特許を産業界に廉価で開放するようにという点です。理解が間違ってなければ、日本版バイ・ドール法は大学等が国の委託費でやった成果は実施機関に委ねるという趣旨だったかと思います。今までは全部国が引き上げていたのだけれども、それは活用という観点からは必ずしも適切ではないので、実施機関に委ねましょう、ということです。そういうことですので、廉価で開放しなさいというところは、日本版バイ・ドール法では追及していなかったのだろうと思います。

委員
 産業活力再生法のときは、大学の法人化問題は議論としてはあったのですが、まだ国立の機関だったからそういう形になるわけですね。大学法人になれば、私人になるのですが、科学研究費補助金にしろ運営交付金にしろ、国費であることに変わりはないわけです。使う者が法人化しているだけなので、それをどういうふうに考えたらいいのか。文部科学省が委託費としてやったものが大学の帰属になるというのは、法人になったのだから、それはそれで1つの解釈だと思います。しかし、法人である大学が自ら国費によって得た研究成果はすべて大学のもので、日本版バイ・ドール法の対象技術ではないと考えられるのかどうか。その点は必ずしも定かでないような気がしているのです。もしわかれば、教えていただきたいと思います。

事務局
 基本的には、その委託契約で生まれた特許を受託者側に移すという考えですので、一応バイ・ドール法の対象というふうに解釈できるのではないかと思います。それで、少々あいまいですが、バイ・ドール法ができる前も、工業技術院時代等はかなり廉価で、実施許諾を一応やっていたらしいのです。けれども、実際に国のお金で、国の財産として処分していく際、いろいろ手続き上面倒だったり、なかなか実効性がないという面がありました。そこで、日本版バイ・ドール法を適用し、基本的には一定の条件のもとで相手に譲り渡すことができることにした、というような背景だったと記憶しております。

委員
 日本版バイ・ドール法ですが、条文上の法律の理解をもう一回きちんとしなければならないと思っております。私の認識としては、ここに書いてあるような機関管理あるいは管理・活用の在り方というのは、バイ・ドールのベースをつくる、インフラの話だと思っているのですね。大学として運営費交付金とか、あるいは大学が自分で得たお金で知財を得た場合、どういうふうに管理して活用しようかという話だと思っています。ですから、原則としてはバイ・ドールの話とちょっと違う世界のことだと思っているのです。バイ・ドールのことは、これは国という1つのグラントを与えるものがあって、それを受ける大学というものがあって、この大学がグラントによって得た知財をどのように活用するか、これを国に返すべきなのか、それとも自ら保有して活用すべきなのかという話だと思っています。だからこれはフェーズが若干違うと思うのです。これを混乱すると、大学が自ら血と汗で得た知財を、お金を得てそういう知財を活用して、それがあたかも国のグラントだったからバイ・ドールで処理しなさい、同じような感じでやりなさいというのは、ちょっと違うのではないかという気がしております。ただこれは、法律上のチェックをもう一回しなければならないかなと思っていますが。それで、ちょっと先ほどの委員の最初のお話に戻らせていただきたいのです。人材の流動性の問題と機関帰属の原則は、これは非常に難しい問題をはらんでいるのですが、機関帰属にすれば人材の流動性が害されるとかいうのは、そういう可能性もあるのですが、すべてではないと思うのです。むしろ、各大学が独自にすばらしい産学官連携ポリシーを設けて、例えば東京医科歯科大学が50%教員にお返しするというようなポリシーをつくられたようですが、自らの価値をどんどん高めることによって、教員にとって、研究者にとって魅力のある大学になるというふうになれば、むしろ人材の流動性を活かして、自分の大学にどんどん教育者が集まるわけです。ですから、今後そういう大学の自由な公正な競争というのを前提に考えれば、むしろ人材流動性が図られれば、それによって恩恵を被る大学もあるわけです。そこは様々な側面がありますので、もちろん害する面もあるかもしれませんけれども、両側から考えなければいけないと思います。

主査
 どうもありがとうございました。この議論は現在藤田先生のほうでおまとめいただいておりまして、今後取りまとめられた報告として出るかと思いますけれども、既にこれだけの議論を呼び起こす非常に重要なポイントがいくつもあります。最後に何かありますでしょうか。

委員
 大学の中でも議論したのですが、産学連携で開発して特許を取る。向こうは専用実施権が生じる。そういう分け方をする。それはいいのですけれども、向こうが実施しないとき、それをどう取り戻すか。契約の中で何年以内に実施しない場合には全部引き上げるとかする等、そういうことが必要ではないかという議論があったので、その点もこの報告の中に記載がもあれば、と思った次第です。

主査
 今までは、むしろそういうことが非常に多くて……。

委員
 塩漬けにしてしまうことが多いらしいのですね。

主査
 そうならないように大学としてのウオッチが必要だ、ということですね。

委員
 実はこの報告で一番大事なのは第3章なんだと思っております。具体的に大学で管理をするときに、一番障害になっているのは、それをバックアップする財源の問題なんです。実はこれは、非常に早急に解決しなければならない問題です。私も弁理士会等をずっと回っているのですが、現在はアカデミックディスカウントということで、この5年間、弁理士の方々に汗を流していただいて、さらにこれからもアカデミックディスカウントが続くというのは、普通の社会通念からかなり外れた話でございまして、この財源をどういうふうにやるか。アメリカのように仮出願がうまく使えるところはいいのですが、ヨーロッパや日本は出願体系が違い先発出願主義ですので、とにかく出さなければならない。こういう全くフェーズの違うことで、本質的に財政をうまく支援することを何らかの形でやらないと、テイクオフするときに非常にトラブルになると思います。機関管理をするところで一番の障害になっているのですが、この辺はどういうふうに……。

主査
 これは伺っておく、ということにさせていただきたいと思います。当然議論されていると思いますが、多分これは一番問題であって、そこで振り分ける作業が一番キーポイントになるわけですね。ですからその辺は十分……。

委員
 どこかで発言しておかないと。

主査
 つまり、あらゆる発明を全部出すわけにいかないから、どこかで振り分けなければならない。それが一番キーポイントのポリシーになると、こういうことですね。

委員
 それ以前に財源が保障されてないというところから出発しているということをご理解いただきたい。

主査
 財源から来ているわけですね。

委員
 そうです。人件費も含めてですね。すべて。

主査
 その辺はちょうどよろしいと思います。

○ 「利益相反・責務相反への対応」について

  • 資料1‐2に基づき、「利益相反・責務相反への対応」の報告について富士通総研の西尾研究員から説明があった後、委員による自由討論が行われた。
    その内容は以下のとおり。

委員
 この報告が完成すると、それを参考にいろんな大学が動くと思います。現に法人化されているわけなのですが、これの前段階の報告書で利益相反・責務相反の重要性が指摘されていて、実際の現場の動きとして、既にポリシーを明確にして対外的に表明しているところもあるかと思います。その進捗状況はいかがなのでしょうか。どの大学もみんなこれからポリシーをつくろうとされているのか。

事務局
 現在の状況でございます。私どもの方で知財本部を整備しております43大学・機関等におきましては、基本的に利益相反ポリシー等は既に半数以上の27の大学等がつくっております。実際にこの4月から運用が始まっているような部分だと思いますけれども、まだ残り16大学等については検討中という状況でございます。今回報告いただいた部分につきましては、ポリシーを作成した後も、実際にそれを運用する上でこうした方がいいのではないか、というようなご提言をいただいておりますので、既にポリシーをつくっているところにも大変参考になるのではないかなというふうに思っております。

主査
 これは先ほどの委員の報告と非常に強く連携していくと思いますので、ある時期に、後はお考えになるのでしょうか。一緒になって議論するという……。

説明者
 恐らく報告書としては別で、ただ東北大学にて検討しておりますので、東北大学の方では2つとも参考にされているということだと思います。

委員
 大変貴重な、様々な細かい点までをまとめていただいているのですが、ちょっと簡潔にしていただいた方がいいかと思います。何か、やはり難しいような気がしますので。なぜこういうことを言うかといいますと、アメリカでは責務相反・利益相反のルールが整備されて以降、それまで非常に産学連携が進んでいたのが、非常に大学が冷たく、厳しくなったという話を、いろんな人から聞くからです。それによって、産学連携が必ずしも今までどおりにいっていないということも聞いております。例えば中国においては、今までかなりルーズにやっていたのが、責務相反・利益相反のルールを整備されることによって、大学を去っていく先生もいたようです。これまで産学連携というのは、行け行けどんどんで来たのですが、その逆のところに差しかかっているのだと思います。なるべく産学連携を真に進めるような意味のルールを、わかりやすくしていただきたい。これまでは、必ずしも大学の責務を感じずにやってきて、行き過ぎというのも確かにあります。それは必ずしもよくないことですので、かなり制限しないといけないのですが、もう少し簡潔にしていただいた方がいいのではないか、と思うところがたくさんあります。その点、要望させていただきたいと思います。

説明者
 これは最終的に、大学が自分の価値をどこに置くかというところが1つのポイントだと思います。またアメリカでも、70年代の後半から産学連携が非常に盛んになってきたわけですが、当初からこういった問題については、国が何かするのではなく、全国レベルで産業界と大学が集まって、いろんな会議で検討行っているわけです。要するにアメリカは、別に最初からいきなり行け行けどんどんでやっていたわけではなくて、最近急激にブレーキをかけているわけでもないというのが、もう1つのポイントです。それから中国におきましては、大学の制度や先生の給料(待遇)の問題があります。給与は低いわけです。それと、兼業で行う場合の収入の差という面もあります。それらと利益相反、責務相反の問題を一律に議論することはあまりよくないのかな、という気はしております。利益相反の規定は産学連携のブレーキではありません。この点は、先生方に理解していただけるように、学内での説明が必要かと思います。

主査
 検討会に実業界の方は余り入っておられないような気がいたしますが。

説明者
 産業界の方は、ほかにメーカーの方が入っています。ただ、この話を産業界の人と広く議論するには、認識に少々ギャップがありますので、対等な議論をするところまでは現在至ってないと思っております。

委員
 「学内での対応」のところの(3)のすぐ上に書かれているところですが、「従わない人が出てきた場合にどうするか」という罰則規定は、これは大学では大変なんですね。だからといって放置していれば、問題を持ったまま大学が運営されるということで、インテグリティに反することになります。罰則規定の問題は、事例や経験を積み重ねていく以外にないのかなとも思いますが、これは非常に悩ましい問題だということだけ申し上げておきます。

主査
 幾つか意見が出ましたのが、今後のご検討に反映をさせていただきたいと思います。私は利益相反・責務相反でもう1つ大事なのは、先ほどの委員が言われたように、本当に純粋な気持ちで産学連携をやっている大学内部の人を大学がちゃんとかばうという姿勢ですね。今までは問題になると、かばわないで放り出してしまうことがあった。それを避けるためのルールではないかと思いますので、これは大学の任務なんだということ、しかし一定の制限の中で行ってください、ということをぜひ明快に書いていただければと思います。

○ 「大学発ベンチャーマニュアル」について

  • 資料1‐3に基づき、「大学発ベンチャーマニュアル」の報告について小樽商科大学の瀬戸助教授から説明があった後、委員による自由討論が行われた。
    その内容は以下のとおり。

委員
 最初に大学発ベンチャーを戦略的に5つつくったけれども、このうち3つはもう2年でつぶしてしまう。そういう戦略的に廃止するというのも、この最終11章の廃止方向の中では検討されているのでしょうか。

説明者
 もちろんです。商業的な意味で廃止するときに、ネガティブな廃止と、積極的な廃止というのがございます。別に赤字を出しているとか、何か技術開発上のトラブルが起きているという意味ではないのですが、1つの会社に集約するとか、M&A(合併・買収)を通じて部門売却するとか、そういうポジティブな意味での廃止も大いに入ってきます。

委員
 ベンチャーの場合、成長のフェーズによって戦略等が変わると思います。この場合は特に税務のところでは、成長期とか安定期等に分けていらっしゃると思うのですが、この成長戦略に伴う財務資金の調達のところは、成長によってどう戦略を分けていらっしゃるのでしょうか。また、最後のところでおっしゃられたように、機能を統合してリエゾン設立として地域活性化というのは、皆さん今うたっているし、慣れてきたと思っています。まさにそのときは、メンバー等、人の問題が非常に大きいと思うのですが、その辺どのようにお考えでしょうか。

説明者
 まず、財務についてはおっしゃるとおりです。古典的な教科書のとおりの部分と、大学発ベンチャーはあえて株式公開の道をとらないことが好ましいという企業の形態も、ときどきあります。なぜかというと、基本的な特許を持っていて、この特許を企業とともに社会に売渡すわけにはいかないという場合もあるからです。だからあえて非公開という道をとる。そうすると、最初はどうしても資金が必要だからお金を入れるのですけれども、あるところで非公開モードに移すという作業が必要になります。ですから、税務に関しては古典的な教科書の適用をできたのですが、財務の部分は本文の中でさまざまな想定をするケースで、ただし我々の視点は1本でして、大学発の技術が我が国を救えるのだという、そのために大学の研究者の視点からしか書かないというのに徹しています。申しわけないけれども、ベンチャーキャピタル等の市場関係者の方々は、我々からすれば使わせていただく環境であって、大学のことを優先して書いているのでこういう書き方になっています。もう少しで報告書は完成しますので、ぜひごらんいただきたいと思います。2つ目におっしゃっていたリエゾン・オフィスは、だれでもやりたいのだけれども、その人材をどうするか、ということだと思い増す。最後の12ページの下のシートの課題6に、こう書いてあります。「小樽商科大学では、平成16年4月、つまり今月より国内初のビジネススクール(専門職大学院)アントレプレナーシップ専攻を開校しました」。日本で専門職大学院のビジネスのジャンルで認められたのは、小樽商科大学と香川大学の2校しかありません。秋から一橋大学と神戸大学も加わると思います。大学発ベンチャーを含むビジネス創造の担い手育成、すなわち、アントレプレナーの養成を開始しました。しかしながら、戦略的商業化のためのパーツ、ファンクションが同一地域の比較的狭い地域で競争ないし共存しあっているものの、統合されてない問題がある。つまり、大学院は今までプロフェッショナルを集めて寺子屋のような大学院をやってきたのですが、莫大なコストをかけて7~8人しか入学しないのに、二十何人の教官が教えに行ったのです。小樽から札幌まで40キロ離れたところに。しかしもうこんな寺子屋をやっている場合ではないということで、年間35人受入れて、その修士を出していく。その際に4つのモデルコースうちの1つに、大学発ベンチャーの経営人材・担い手ということを強く意識したコースをつくっていて、恐らく35人のうちの6~7人はそれを選択していくはずなのです。私たちは積極的に地元にある北海道TLOや北海道大学の知財本部、及び大学の事務職員の方で研究協力室関係の人に大学院に来てくださいと呼びかけています。大学院に夜間来ることによって、昼間やっている仕事が大学院で戦略的に統合されるようなビジネススクールというものを目指して現在行っています。しかし、この答えが出るには恐らく5年から10年かかるだろうと予想します。

委員
 私も数多くのベンチャー、大学発ベンチャーにかかわっていて、その中には無事株式公開をしたところもあります。公開できずに去っているところもありますけれども、その経験からいって、非常に大学発ベンチャーは難しいのですね。弁護士も弁理士もそうですけれども、あるいはベンチャーキャピタルの専門家等、いろんな専門家の力を借りながらやっていく必要がある。端的に言うと、大学内で扱える問題ではないというふうに感じるのですね。これはもう経験的なところですのでご容赦願いたいのですけれども、そういうふうに肌で感じます。それで、大学でできるとすればインキュベーションの初期段階だと思います。学内インキュベーションの段階であれば、共同研究を行ったりできるし、大学がかなり関与していけると思うのです。ある時点から大学から離していかないと、かなり難しいと感じています。現在の大学のスタッフの陣容から考えて、非常に難しいなという気がするのです。この報告書の最後の方を見ると、カナダのUILOを目指すような形なのでしょうか、私もまだ完全に理解していないところがあるのですが、このカナダ方式は日本ではつらいのではないかなという気がします。カナダ型ではない日本型を模索しないと、備えにならないかなという気がするのですが、いかがでしょうか。

説明者
 私も社会人になって20年のうち、半分を電力会社で半分を大学ですごしました。心から大学のことをリスペクトして、我が国の教育研究基盤が強化されなければいけないと思っています。そのためには、知の力のスタート点に大学がなければいけないというのはきっとみんな共有していると思うのです。ではその次に、商業化するときにどこまで大学が関与できるのか、またすべきなのかという点については、私は基本的に今ほどの委員のおっしゃるとおりだと思っています。つまり民間の商業活動に対して大学ができることには限度があって、大学の先生はサイエンティフィック・アドバイザリー・ボード等の立場になって、取締役や監査役は別の者に任せるというのが一番いいと思うのですね。ただそのときに問題となるのは、今まで余りにも日本の国立大学の研究者はただで社会や産業界に利用されてきたと思います。驚くほど、恐らくほとんどお金を払われずに発明者として特許の出願者になっていなかった。わずか10万や20万円のいわゆる発明対価を得ることも、まるで罪悪のように思いながらやってきたわけです。もし資本の論理に組み込まれて大企業の一部になっていったら、大学は前よりもっとひどい状態になるだろうと思います。故に、大学という存在を守りながらどうやって円滑な商業化を進めていくのか。これは結論になりますが、弁護士や会計士や大企業の人間、またキャピタリストでもいいのですけれども、絶対に大学やアカデミズムに対するリスペクトを忘れない心を持ち続ける人がいるならば、私は大学の研究資源の商業化を全部民間に任せていいと思います。しかし今の日本の社会では、それほど大学をリスペクトする風土ができていないのではないか、と思うのですね。だから大学が商業化に対して関与コミットせざるを得ないのは、過渡的な段階であると思います。ですから、一刻も早く大学に対して、自分の職業のうちの10分の1ぐらいは、ボランティアでなくてもいいのですが、特任教授や客員教授という形で大学のために働きますという宣誓をしてくれる民間人をたくさんふやさなければいけない。法人化されたことによってそれは可能になったと思いますので、私は大学のために働いてくれる民間人をどんどん大学に入れていく必要があるだろうと思っています。これはきっと過渡期の話で、20~30年たったら完全に民間に任せられるだろうと思っています。

委員
 ベンチャーをつくった立場から少し申させていただきたいのですが、今おっしゃっていたのは特許ありき、何かの技術ありきという、そういう発想が多かったように思います。しかし、我々の場合は研究開発能力ありきで始めておりますので、そういう意味で、会社は収入を得るためには商業化を前提で研究開発していくしかないわけですね。その場合には、技術モデルの段階から資金を得るのに、2年ぐらいかかるわけです。今ですとベンチャーキャピタルはたくさんおりますけれども、我々がベンチャーをつくった初めのころはベンチャーキャピタルがない時代でした。ですから報告書をまとめる際に、そういうベンチャーもあるということ、それから資金を獲得するのに2年もかかったとか、そういう研究開発能力という、大学の持っているもう1つの知的資産を利用する研究開発を通したベンチャーもあるという立場からのコメントも書いていただければと思います。

説明者
 誤解がないように申し上げますと、この報告書に書いてあるのは、知財を売る会社ではなくて、研究開発をする会社がほとんどです。別に特許があるからビジネスができるなどとは思ってはおりません。研究開発の資金を民間から調達しつつ、IPO(株式公開)やM&A(合併・吸収)をどういうふうに想定するかということがこの基本的な論調です。

主査
 どうもありがとうございました。大変重要なご発言をいただきました。特に大学が今まで社会から使われ過ぎてきたというご指摘は、全くそのとおりだと思います。今まで、特に国立大学はそれが任務だと思ってきたわけですね。ですから事務局側におかれましても、そういう事実があったことを前提で今こういう議論が行われているということは、反映していただくよう努力していただきたいと思います。当然そうお考えだとは思いますが、こういう機会にあらためて世の中に周知を図るようにお願いしたいと思います

○ 「国立大学法人の出資」について

  • 資料2、3に基づき、「国立大学法人の出資」について事務局から説明があった後、委員による自由討論が行われた。
    その内容は以下のとおり。

主査
 資料4の国立大学におけるライセンス対価としての株式取得について。これはお金を出して株式を取得するということと、もう1つはライセンスを与えるから、そのかわり株を下さいという形、つまりお金を出さないで取得するということを含んでいると考えていいのですね。

事務局
 直接ここの文言で書かれている部分はライセンス対価としての株式取得になりますので、主に想定しているのはむしろお金を出さないで、技術を渡してというところになります。

○ 「その他」について

  • 資料4、5、6に基づき事務局から説明があった後、委員による自由討論が行われた。
    その内容は以下のとおり。


主査
 大学発ベンチャーで採用されている総人数は何人か、というのはどこを見ればよろしいのでしょうか。

事務局
 この調査で冒頭に書いてありますが、647社の大学発ベンチャーに質問紙票を郵送したのですが、そのうちの232社の回答ですから、そういう意味で総数は正確には出ないと思われます。ただ、232社の回答に関しましては、社員数は1社あたり平均9名となります。

委員
 この大学発ベンチャーの調査というのは、今後とも16年度、17年度と調査フォローされていくのですか。

事務局
 少なくとも16年度につきましては、引き続き筑波大学に調査をお願いをしているところでございます。

委員
 こういった調査は、特に大学発ベンチャーを通していかに国の雇用や税収に寄与しているかということを国民に明らかにしていくという意味で、非常に重要だと思うのですね。そういう意味で、例えばあるベンチャーがある大きな製薬会社にライセンスアウトする、その結果、ライセンシー(特許実施者)の会社がかなり大規模な売上げを上げていて、何百億円ぐらい上がっている。これによってある意味、国民の福利厚生に寄与していると言えると思います。そういう数字が出てくると、非常にアカウンタビリティー(説明責任)を果たす意味でいいと思うのですね。だからベンチャー自身の売上げだけではなくて、その波及効果としての産業インパクト、特許によってライセンシー(特許実施者)が上げている総売上げ等を見ていったらおもしろいのではないかなという気はします。

事務局
 この調査自身はいわゆる起業のところに着目をしている調査でございますので、この調査自身の中には入ってはきてないかと思います。それらについては、別途事務局の方で必要なデータをとり、今後とも今ご指摘のあったような形で、いかに社会に有効に、積極的に貢献をしているかということについてアピールをしていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

主査
 ただいまの委員のご意見は大変重要だと思います。ベンチャー以外の調査につきましてもぜひお願いをしたいと思います。
 次に試験研究の範囲、これは大学で研究するときに非常に重要なことです。実は、私はこういうことを考えたことはなく、研究するときは論文を読まないで始めて、むしろ成果が出てから読めというようなことを言っていた人間です。ゆえに、こういうことを厳密に適用されますと大変困りますが、幸い先ほどの説明ですと、やや広くこういう例外事項をといいますか、とらえられているという、最高裁の判断だということで安心をしております。

事務局
 ここは私どもとして、少々願望もこめて解釈している部分があるかもしれません。やはり非常に厳格に解釈される研究者の方々がいらっしゃるのも事実ですし、非常に厳密に解釈すべきだという主張をされている有識者の方々がいらっしゃるのも事実でございます。そこの調和を何とかとれるような形で、私ども文部科学省としては大学を所管し、研究を振興するという観点から、言うべきことは言っていきたいと思っております。私どもが言ってもなかなかインパクトが弱いところもございますので、ぜひご指導をお願いしたいと思っております。

事務局
 今の点は必ずしも大学だけではなくて、試験研究全体に対して言えることです。特許庁のこういうワーキンググループが1つの結論といますか、報告書を出されたということは事実としてある、は既に公表されている。それを受けて大学あるいは研究機関にどういうメッセージを出していくのか。総合科学技術会議でご検討していただいているわけですけれども、その結果はおそらく5月中旬ぐらいには出ると思います。そういうことを踏まえて文部科学省としても、どういうメッセージを大学の研究者の方々に出していくのか、これはこの場でも十分ご議論いただきたいと思います。また、そのために必要な調査もあわせて行っていきたいと思っております。

主査
 先ほどのお話ですと、明らかな研究開発で、もう既にわかっている分野についてさらに進めていきたい、しかも企業と関係があるというようなところは十分注意した方がいいだろう、と。しかしそれ以外のところで何かおもしろいことをやろうというときに、いちいち調べてから研究を始めなければならないとなると、これは大変なことになりますし、無駄なことになると思われます。ですから、その辺の意見ははっきり述べていただきたいと思います。また、同時にネットワーク時代ですから、特許情報等が世界を含めて割合と簡単に手に入るような、インフラストラクチャー(最低限の社会基盤)ですね、そっちの整備もこういうことに関連してぜひお願いしたいと思います。これはだれでも簡単に手に入るようでいて、現在の特許情報を得ようとすると必ずしも容易ではないですね。かなり大変だと思いますので、そういう方面もひとつお願いしたい。

5.今後の日程

 次回については今後日程調整を行う旨、事務局より連絡があった。

お問合せ先

研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室

(研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室)